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2015年2月20日(金)
“イスラム国”戦力考 空爆&地上戦で効果は

ゲスト

佐藤正久
自由民主党国防部会長 参議院議員
黒井文太郎
軍事ジャーナリスト
岡部いさく
軍事評論家

“イスラム国”戦力分析で読み解く攻防の現状と未来
遠藤キャスター
「イラク、シリアを中心とした過激派組織である、“イスラム国”を名乗るグループが活動するエリアでの最新の戦闘状況をまとめた勢力図ですが、ウィキペディア外国語版でまとめられているもので、ゲストの黒井さんもこの勢力図を参考にされているということですけれども、なぜこの勢力図なのでしょう?」
黒井氏
「他にも英米のメディアとか、研究機関が出していますけれど、結構はやい時期から、そうやってシリアとイラクの内政に関しては集合地といいますか、現地発の情報で、細かくウィキペディアの方で、こういった勢力図を発表しています」
遠藤キャスター
「まずこの地図の色分けを説明いたします。中央のグレーの灰色の広い範囲が“イスラム国”の実効支配する地域です。この“イスラム国”を取り囲む勢力が、イラク側では右下の赤い色、イラク政府軍。右上の茶色、オレンジ色っぽいところですが、イラクのクルド人組織です。一方、シリア側、こちらでは多くの勢力が入り組んでいるのですが、左下の青色がアサド政権を支えるシリア政府軍。緑色が反アサド政権を掲げる反政府武装勢力。クリーム色、小さいのですけれども、ここがアルカイダ系の武装勢力ヌスラ戦線。シリアの黄色の部分がシリアのクルド人組織となっていて、それぞれ地域の中にある濃い色の、非常に細かい点々ですけれども、点々の部分、それぞれの部隊の分布を表しているという勢力図です。黒井さん、こうやって見てみますと“イスラム国”は未だに広範囲を実効支配しているというふうに見えるんですけれども、勢力の現状としては、現在どうなっているのですか?」
黒井氏
「“イスラム国”は、昨年6月に勢力を広げまして、8月から空爆をうけて、おそらく6000人から7000人ぐらいの戦闘員が死亡したと言われているんですけれども、当初から現在に至っても2万5000人から3万人ぐらい、おそらく戦闘員だろうということで、その亡くなった分は新たに補充されているというんですね」
反町キャスター
「今日はイラクの部分とシリアの部分を分けて話を聞いていくのですが、シリアの部分、イラクもこうやって見てみると三つ巴ないしは三竦みと言っていいような感じ。もしかしたら2対1かもしれないんですけれど、シリアの方が、色が5色もあって、シリアはどう見たらいいのか。まず全体像としての基本的な戦力構成だけ、ちょっと事前に教えていただけませんか?」
黒井氏
「水色のところが政府軍ですけれど、政府軍も人数が結構、増えたり、減ったりしまして、現在だいたい地上部隊が8万人から10万人ぐらい。他に民兵、いわゆる政府側の民兵もいるんですけれども、それもおそらく10万人ぐらいはいるということです。そのうち、いわゆる精鋭部隊が5万人ぐらいということで、シリア全体でいうと人数は少ないんですけれども、圧倒的に武器を持っているということです」
反町キャスター
「守っている政府軍が強い?」
黒井氏
「強いということです。グリーンのところは反政府軍、これはもう一派ではなく、何十というグループがあるんですけれど、彼らを全部あわせるとおそらく14万人、15万人ぐらいではないかと言われています。彼らはとにかく人は多いんですけれども、武器を持っていないという部分と、かなりバラバラに動いていると、統一した組織になっていないということで、北の方はちょっと苦戦をしています。ほぼ政府軍と反政府軍の戦いというのがシリアで、実はメインの戦いで、南の方は結構ヨルダンを中心にアメリカが訓練して、武器とかを渡していますから、かなり現在盛り返しつつあるという」
反町キャスター
「そうすると、緑の部分というのは、いわゆる反政府、シリア政府に対する反政府武装集団と言いながらも、彼らはアメリカに支援されている?」
黒井氏
「されています。実はこういうきれいな色分けではなく、実は入り組んでいます。それぞれ中に兵隊が入っていますので。ヌスラ戦線もここだけではなくて、結構南の方にいたりするんですけれども、彼らはおそらく1万人ちょっとですが、非常に戦闘力の強い、外国籍の兵士が多いんですけれど、強いということですね。クルド部隊はクルド人の多い北の方で数万人ぐらいはいるだろうと言われているんですけれども、実際その戦闘を見ていると、そんなにはいないのかなという感じがします」
反町キャスター
「現在の話を聞いていると、色で言いますよ、青色と緑色が戦っている。クリーム色と青色が戦っている。でも、ヌスラ戦線と反政府勢力は戦っていない?」
黒井氏
「時々、変な緊張状態にあるんですけれども、基本的には水色に対して、政府軍に対して共闘作戦をしています」
反町キャスター
「でも、一緒の軍隊にならない?」
黒井氏
「ならないです」
反町キャスター
「別ですね?」
黒井氏
「時々、緑色の一派をヌスラ戦線が襲撃をしたりする事件も起こっています」
反町キャスター
「クルドが4ヶ所に点在していますけれども、クルド人部隊は、要するに、青色のシリア政府軍と戦っているのですか?それとも“イスラム国”、ISと戦っているのですか?」
黒井氏
「基本的にはISです。ここは独自の勢力でもともとはアサド政権とそんなに関係は悪くなかったんですけれども、要は、グリーンの反政府軍とのライバル関係であったんですが、現在とにかく“イスラム国”がきていますから、ISですね。そことの戦いがメインになっています」
反町キャスター
「そうすると、シリア政府軍は反政府勢力とも、ヌスラ戦線とも、“イスラム国”とも戦っている?」
黒井氏
「そうです」
反町キャスター
「けれども、クルドの人達とは戦っていない?」
黒井氏
「ここはケースバイケースで、時々、緊張状態にはなります。ただ、メインの戦いというのはどちらかというとクルドとシリア政府は遠いと言えます」

広範囲を“イスラム国”が実効支配 イラク・シリアの現状
遠藤キャスター
「国内でも非常に複雑ですけれども、こうした状況の中、さらに対“イスラム国”の国際的枠組である有志連合のうち、12か国は生来の決意作戦と名づけられた作戦に参加して、5日までに2294回の空爆が対“イスラム国”に行われています。岡部さん、昨年から空爆が行われていますけれども、この作戦の性格と狙いというのは、全体としてどのように分析されますか?」
岡部氏
「参加している国のうち、イラクに参加しているのと、シリアに参加しているのとがくっきり分かれているんです。イラクでの航空作戦に参加しているのが、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ベルギー、デンマーク、フランス、オランダ。NATO諸国です。それに対してシリアでの爆撃はもちろん、アメリカがやっているんですけれど、今度はイスラム教国、UAE、バーレーン、ヨルダン、サウジアラビアとくっきり分かれているんです。これは目標の性格によるものなのかと思ったんですけれども、実はそうでもないわけです。もっと大きな政治的な理由があるんです」
佐藤議員
「先ほどのアメリカとか、NATOとかのイラクに対する空爆というのはイラク政府からの要請です」
反町キャスター
「イラク政府が国内にあるISの軍事拠点を叩いてくれと頼んでいる?」
佐藤議員
「そうです。と言うことで、それを根拠に我々の空爆は正当だと。アメリカも、それで行っています。ところが、アメリカのシリアの方の空爆というのは、彼らの説明によると、これはイラクが“イスラム国”によってやられていると。イラクを助けるための集団的自衛権だという理屈と、もう1つは、ホラサングループというシリアの中に反政府組織があるんです。ホラサングループは、アメリカでのテロをやると標榜をしていましたから、自分の個別的自衛権。アメリカを守るためにも、シリアに対して空爆するんだという自分達の説明をやっているんです。それを応援しているのが今回、アラブ諸国の方ということで、非常に色分けされていると。現在NATO諸国の、ヨーロッパの国々はシリアに対しては空爆をなかなかできないと。そういう自分達の法的、国際法上の理由がなかなか見つけにくいというのがあるんです」
反町キャスター
「たとえば、オランダとか、イギリスとか、フランスとかというのは、“イスラム国”への空爆に関しては、イラク政府からの応援要請があるからできると。イラク政府から、我々の領地に侵入してくるISの、シリア国内のISを叩いてほしいという要請はイラクからは?」
佐藤議員
「できないでしょう、そこは。別な国ですから。シリアの国ですから。そこは」
反町キャスター
「できないですか。明らかにシリアからきているけど、よその国だから?」
佐藤議員
「国際法上どういう根拠があるかという、アメリカにしても個別自衛を使っていますけれども、そこまではないと」

イラクにおける攻防の現状
遠藤キャスター
「“イスラム国”と闘ううえで、アメリカがさしあたって重視しているのが、イラクにおける、イラク政府の失地回復ということですけれども、先ほどのパネルに主な地上戦の戦闘地域を×印で書き込みました。黒井さん、地上戦の攻防というのは現状どうなっているのですか?」
黒井氏
「たとえば、モスルがあるんですけれど、ここは現在、IS側が押さえていまして、クルド部隊が攻め落とそうとしているんですけれどもなかなか難しいと。今年の春から、モスルの攻略作戦をやると言っていますけれど、逆にアルビル、これはクルド側の中心地ですが、こちらはIS側が落とそうと攻撃をかけていると。キルクーク、油田地帯で大事なところなのですが、ここもクルド部隊が押さえているんですけれども、ここもIS側が攻撃をかけていると。1番問題なのは、バクダッドの近くまで来ているんです。ISはとにかく、チグリス川とユーフラテス川があるんですけれど、ここが1番のメインのルートで、特にユーフラテス川からどんどんバクダッドの近くまで押していくということで、先週ぐらいから問題になっているのは、ここに小さな町、バクダディという町があるんですけれども、ここをIS側が落としまして、すぐ近くにイラクの政府空軍基地があって、そこでアメリカの海兵隊が訓練しているんですけれども、ここが危なくなったと。ここが落とされると、もうほぼ、“イスラム国”のアンバルシュというのがあるんですけれども、ほぼ全滅状態です。ですから、ここは現在ポイントになっています」
反町キャスター
「バクダッドまで、すぐそこまで来ているわけではないですか?現状、バクダッドが陥落のリスクというのをどう見ていますか?」
黒井氏
「まだバクダッドは大丈夫だと思います。ただ、バクダッド近くまで来たということで、それで昨年の8月にアメリカが焦って空爆に出たということです」
反町キャスター
「アメリカ側の空爆の評価への記者会見を聞いていると、我々はやったと。いつもの映像を公開して効果的に落としているという印象があるんですけれど、どうも今の話を聞いていると、ISが押しているように聞こえるのですが」
黒井氏
「昨年6月にすごく押したんです。このへんにいたグループなど一気に広がったんです。ここはもともとなかったんです。アルビルも近くまで来ていましたから、全部落とされるというような勢いだったんです。それを空爆でやめさせたのは事実です」
遠藤キャスター
「続いては、有志連合によるイラクへの空爆について聞いていきます。イラク側への空爆作戦にはアメリカを中心とする欧米8カ国が参加し、モスルやキルクークなどを重点的に攻撃しているんですけれど、岡部さん、イラクにおける空爆の特徴というのはどこにありますか」
岡部氏
「有志連合、アメリカ軍は爆撃機は使う、戦闘機、攻撃機は使う。ヘリコプター、無人機まで。とりあえずアメリカ空軍の持っている航空戦力のセットをフル投入しているように見えるんですけれども、実はシリアの航空作戦を含めての話ですけれど、1日あたりの攻撃は多くないです。多くて30未満。少ない時には十いくつしかないと。だから、湾岸戦争ですとか、イラク戦争の時に比べて航空作戦の規模が小さいですね。これもシリアでの航空作戦を含めての話ですけれども、アメリカの得意のトマホーク攻撃というのが実は最初のごく初期にしか行われていない」
反町キャスター
「巡航ミサイルを使っていない?」
岡部氏
「ええ。と言うのは、トマホークミサイルというのは何が得意なのかというと、場所がわかっていて、正体のわかっている目標に対する攻撃が得意です。航空作戦のイメージになるんですけれども、本来航空作戦ですと、戦略目標、たとえば、精油施設、ISにとっては資金源になります。ごく初期に攻撃し、そのあとパタッとやらなくなっちゃった。だから、やるべき精油施設、攻撃できる目標はもうやっちゃったということですね。本来でしたら、湾岸戦争とか、イラク戦争時は、司令部ですとか、弾薬とか、燃料の集積所。つまり、戦闘部隊の戦力の元を断つという航空作戦を行ったんですけれども、どうも今回はそれを行っていない。本来ですと輸送。前線に物資を運ぶ輸送を断って、前線部隊を立ち枯れさせるという作戦ですけど、それもどうも発表には表れてこない。と言うことは、つまり、やっているのは近接支援。実際に前線で戦っている部隊を叩いている。実際の発表を見ていますと、機関銃陣地をいくつ壊した。ISの持っているブルドーザーをやっつけたという細々したものしか出てこない。イラクでの、現在モスルですか、そこらへんの航空作戦もわかるんですけれど、つまり、そういう前線で戦っている的を1つ、1つ攻撃していくというのは、将棋に例えると、せっかく飛車、角を持っていながら、相手の出してくる歩を1つ1つとっている」
反町キャスター
「非効率的ですね」
岡部氏
「そうです。しかも、IS側にはいろいろな国から志願兵が集まってきている。ISは歩に事欠かないわけですね。つまり、次から次にくる、その歩を1つ1つ航空攻撃で叩いているという非常に効率の悪いやり方をしているわけです」
反町キャスター
「それはつまり、言われたように、たとえば、司令部とか、燃料とか、弾薬とか、輸送路とかというのはわからない?」
岡部氏
「ええ。あってもごく少規模だろうと。かつての湾岸戦争時のイラク軍のような大きな軍隊だったら、戦車を動かすだろう。それから、戦うだろう。燃料や弾薬を大量に運ばなければならなかった。だから、そうすると輸送を叩くのも効果があったのですが、今回はどうやらそれがない。つまり、“イスラム国”というのはこういう統一的指揮や、組織的な補給で戦っている部隊ではなくて、細かいグループがそれぞれ現地で調達をし、たとえば、食料は地元民から貰って食べているとか。いわゆるこれまでやってきた航空攻撃の通じる相手ではないようだという印象があるんです」
黒井氏
「IS自体は結局、町の中に分散していますので、民間人が住んでいますから、ISだけピンポイントにはできないですね。ですから、本来であれば地上部隊が入って、それを小規模の空爆で援護をしてもらって攻めていくんですけれど、地上部隊はないですから、空爆だけでやるというのは考えられないと。もちろん、根絶やしと言いますか、町ごとということであれば可能ですけれども、そういうことは国際世論が許しませんから」
反町キャスター
「そうすると、攻め手がないとは言いませんけれども、非常に苦しんでいると。こういう理解でよろしいのですか?」
黒井氏
「全体の中を攻撃するというのはそういうことです。ただ、前線で反対する戦力があって、ぶつかっているところでは空爆が活きていると。それ以外のところでは限界があるということです」
反町キャスター
「それが岡部さんが言った、火砲とか、車両とか、物資とか、陣地とか、いわゆる最前線、フロントラインだけの空爆しか現在のところできていないというのは、こういうことになるわけですね?」
黒井氏
「結局、最前線ならば、住民の人もどんどん逃げてしまいますから、ISが部隊を布陣するわけです。攻めてきますから。そういった情報がドローンという偵察機で入れば、そこに入って空爆をしていくということはやっています」
遠藤キャスター
「イラク国内よりもさらにやっかいと言いますか、状況が複雑なシリア国内の現状ですけれど、黒井さん、シリア国内での地上戦、×印がありますが、どのようになっているのでしょうか?」
黒井氏
「メインはどちらかと言うと、アサド政府軍と反政府軍の方が激しいですけれど、今回IS…」
反町キャスター
「青色と緑色の戦いですね」
黒井氏
「はい。ちょっと複雑になるので、今回ISに限って言うと、首都であるラッカに対する、ここは空爆です。地上戦というのは、アインアルアラブは一応取り戻しましたが、まだいます。まだ戦闘が続いています、周辺で。それから、アレッポの近くまでいますので、見づらいですけれども、黒い点が結構あっちこっちに、そういったところが地上戦。それから、東北部ではクルド部隊とISの戦いが起こっています。こういうところはシリアの政府軍下の空爆、ISに対して全包囲的に戦闘は起こっていて、さらに中央部ホムスの近くまで出張っています。天然ガスの油田があるんですけれども、そこはもともと政府側が持っていたのですが、そこもとっちゃいましたから、それもまた前線になっています」
反町キャスター
「この飛び出ている部分です。これは“イスラム国”が、シリア政府の支配領域、楔のように入ってきている。こういう理解でよろしいですか?」
黒井氏
「そうです。ここもあっという間にきました」
反町キャスター
「今、言われたガス田はこのあたりにあるのですか?とにかく資源を狙って、1点突破でここに入ってきているという、こういう理解でよろしいのですか?」
黒井氏
「そうです」
反町キャスター
「1つ聞きたいのは、シリアは先ほど聞いたように、5つ巴になっているわけではないですか?」
黒井氏
「はい」
反町キャスター
「空爆参加国、有志連合というのはISを叩くとアサド政権のためになるという、アサド政権のために空爆するという、こういう理解になるのですか?」
黒井氏
「アサド政権のためではないですけれども、結果的にアサド政権に手を出さないという、オバマ戦略でやっていますので、結果的にそうなっちゃっています」
反町キャスター
「したくないんだけれども、なっちゃっている?」
黒井氏
「そういうことです」
反町キャスター
「それは空爆参加国、有志連合の国々、5か国、アメリカ以外は湾岸諸国ですけれど、この国々とアメリカの間では、シリアのISに対する空爆というのは、アサド政権を助けるものではないんだよ。ISを叩くためだと。ないしはアサド反政府勢力のものではないんだと。そういう、ちゃんとした合意というのは皆の間で共通認識はできているのですか?」
黒井氏
「ここはこちらもそうですけれど、基本アメリカです。あとはお付きあい程度で、アメリカがやっていることに、要は、アメリカ1国だけでは現在、国際社会の批判があるので、お願いして付きあってもらっているという段階です」
反町キャスター
「筋が通ったという言い方は変ですけれども、ちゃんと目的を持って、皆さん、空爆されているんですよね」
黒井氏
「要は、ISがとにかく勢いがありますから、それを止めるということです」

米…地上部隊派遣を検討 今後の対“イスラム国”戦略
遠藤キャスター
「地上部隊の派遣、オバマ大統領が大きく舵を切った背景にはどのような想いというか、危機感があると思われますか?」
佐藤議員
「オバマ大統領にとっては、イラクからの2011年の撤退を非常に大きな成果として国民に訴えたわけです。ところが、そのあと彼の予想に反してイラクがこういう状況になってしまった。そのためにここでISに対して強い姿勢を見せないとどうしようもないと。地上部隊というのが1つの鍵になりますから。これからもそれを攻略するという時に、イラクあるいはクルドの地上部隊だけでは心もとないわけですよね。つまり、特殊部隊を使って、こういう誘導とか、あるいは救出とか、あるいは要人殺害とか、そういうものについて限定的ではあるけれど、今回勝負に出たということでしょうけれども、ただ、議会の方がそれを承認するかどうかはわかりませんから。逆に民主党の方は、地上部隊の派遣はダメだというグループもいれば、共和党の方はまだまだ手ぬるいと、もっと大きな地上部隊を送るべきだと主張しているグループもありますから。これはどういうふうに議会で承認されるか、見通しが立っていない状況です」
遠藤キャスター
「地上部隊が派遣された場合ですけれども、何をターゲットに、目標にどんな作戦が展開されると思われますか?」
黒井氏
「ですから、そういった町を1つずつ奪還していくと。これまではディフェンスだったんですけれど、これからオフェンスに入って、立て籠っている敵を撃破していくということで、もちろん、イラク政府軍を中心にやるんですけれど、彼らだけでは力量的に難しいということで、いわゆる情報面のところ、偵察機をいっぱい飛ばしたり、グリーンベレーを潜入させたりといろいろやると思うんですね。おそらく作戦面でもオブザーバーという形で関わっていくと思うんです。ただ、それで済めばいいんですけど、そうやってアメリカの兵隊が入ってきますから、たとえば、そういったイラクの政府軍もろとも包囲されるとか、ありますので、そういった時に、何かあった時に、バックアップで救出に行けるという体制は、最初の段階では発動しないですけれども、準備は必要だと思います」
反町キャスター
「当初は特殊部隊と監視団とか、軍事顧問団、何かベトナムとか、全部そのパターンですよね。またその道にアメリカは向かいつつあるのか、そこはどのように見ていますか?」
黒井氏
「そうです。ですから、とりあえずイラク政府軍に全部やってもらえれば、それでアメリカも楽なので、それを育てるということをこれまでやってきた。ただ、それだけではなかなか埒があかないので、おそらく戦闘のある種、指揮系統部分にアメリカは入っていくのだろうと思いますね。それがうまくいけばいいですし、時間はかかると思うのですが、アメリカはとりあえず昨年の6月以前に戻したいという…」
反町キャスター
「それはどういう意味ですか?」
黒井氏
「とにかくバグダッドとアルビルが危ない、モスルは昨年6月にほんの1週間、10日ぐらいの間でできた出来事ですから、それ以前にまでは戻したいということですね。要は、イラク政府軍というのは指揮官がうまくないわけです。ですから、そこにアメリカのプロがついて、いろんなレベルで、後ろで助言していくということがあれば、イラク政府軍もそれなりに装備は持っていますから、そこそこいけると思います。ただ、オフェンス、ディフェンスの話があって、これからは攻めますから、かなり民間人の犠牲が出るということは予想されます。イラク政府軍に任せちゃうとこの人達は結構、容赦なく、いきますので、そういったことが国際的に報道されるとアメリカに対するやり過ぎだという声も出てくる可能性がありますから、それはどういう戦況になるかということでまだ流動的ですよね」
佐藤議員
「今回のアメリカの決議案というのは地上部隊、小規模の特殊部隊を投入すると言っても、3年の期限つきなんですよね。3年で終わるかというのは誰も予測できなくて、仮にモスルを奪還して、イラクの灰色の部分をなくしたとしても、シリアが残ってしまうんですよ。そのあとの復興とか、復旧をうまくやらないと、“イスラム国”の方が良かったと。シリアの方からどんどん入ってきますから」

“イスラム国”世界拡大への懸念 過激派組織にどう対峙?
遠藤キャスター
「“イスラム国”とつながる武装集団、これらの組織と“イスラム国”の本体との実際のつながりと言いますか、関係というのはどのぐらい実際にあるものですか?」
黒井氏
「“イスラム国”の参加組織というよりは、便乗した人達がほとんどですけれども、中には、たとえば、リビアのように、リビアはシリアからの内戦にかなり入っていましたから、帰った人も相当いるということです。ただ、基本的に現地の反政府の人達が自分達の勢いをつけるというところで、“イスラム国”は現在非常に勢いがありますから、その名前に乗っていこうという流れですね」
反町キャスター
「“イスラム国”を叩く、掃討するという話をずっと聞いてきたのですが、同調する集団が世界中にじわじわ広がる中で、“イスラム国”を叩くことによって、イスラム過激派の動きが世界的に収まるのか、はっきり言ってしまえば、ビン・ラディンを殺害したところでアルカイダは消えたのかという同じ質問になるんですけど、どう見ていますか?」
黒井氏
「ある程度はこういったものは流行しますので、暫くは続くと思います。ただ、“イスラム国”にだんだん勢いがなくなれば、そういったテロとか、いろいろなところもなくなりはしないですけれども、少し減っていくことは減っていくと思うんですね」
佐藤議員
「私は違った見方をしていて、今回の“イスラム国”のやり方というのは、考えてやっているように見えてしまうんですね。まさにグローバルジハードという、グローバルで聖戦をやるんだという流れの中で、いろいろ過激派が出てきたわけですけれども、テロリスト集団で初めてこんなに領域を持ったのはISですよ。そこを本店とすると、そこからある程度便乗というか、支店を、どんどんフランチャイズを出しています。今回のリビアの例を見ると、結構シリアの方から幹部が何回もリビアに行って、調整した形跡があるんですよ。テロをやって映像を出したと。非常にタイミングがよくて、しかも、メッセージも今度はローマを狙うぞと、十字軍に対する攻撃を、リビアを使ってやるんだと、考えてやっていると。さらに、よくDABIQという彼らの英語の広報誌、これを使ってヨーロッパとか、各国のイスラム社会、あるいは移民の町に対してのテロを呼びかけている。同時に今度はこういうのが出てるんです、これはフランス語の広報誌です。これは何かというとエッフェル塔です。エッフェル塔にISの兵士が立っていると。これではフランスでのテロを呼びかけている。そういうふうに考えながら、自分達の支持者、仲間を増やすと、あるいはそういうフランチャイズを出しているということもあるので、そんなに簡単にこれを殲滅というのは難しいと私は見ています」
反町キャスター
「武力で解決できると思います?」
佐藤議員
「難しいと思います」
反町キャスター
「どうしたらいいと思います?」
佐藤議員
「ただ、本店は潰さないといけない。これがある限りはそこを拠点としてどんどんフランチャイズを広げるという努力もしますし、インターネットを通じて自分の支持者、いろいろな国々のイスラム関係の人間、あるいは反政府の人間をリクルートできますから、本店のイラクとシリアの部分はターゲットとして殲滅しなければいけないと」
遠藤キャスター
「本店を潰すということはバクダディ氏を殺害するということですか?」
佐藤議員
「バクダディ氏だけではダメでしょうね、黒井さん」
黒井氏
「そうですね。他にもいっぱいいますので」
反町キャスター
「組織を壊滅することが必要ということですね。今日の話を聞いていて無理だというのが個人的な結論に近いのですが」
黒井氏
「組織をなくすことはできないのかもしれないのですが、たとえば、2000年台のアルカイダのように、組織は残っているけれど、勢力をどんどん軍事力でもって押さえていくというのはある程度はやらなくてはいけないし、ある程度はできると思います」
反町キャスター
「“イスラム国”単体は押し込むことができても別の組織が誕生するのでは?」
黒井氏
「それは暫く続くと思います。特にリビアは現在、内戦状態に実質なっています。それと、ナイジェリア、イエメン、この3か国はミニ“イスラム国”のような状況になりつつありますね」
反町キャスター
「抜本的な解決に向けて日本の人道支援外交が期待できるのかどうか?」
佐藤議員
「1つの見方として、仮にイラクの北部を解放したとしますよね。イラク北部のISの支配地域をいかに復興するか。国際連帯の側につけば、こんなに幸せになるんだなということを実感すれば、それはかなりの効果が出ると思います。時間はかかると思います。問題の1つは、精神的なジハードという部分の根本に貧困とか、自己実現とか、そういうところがありますから、今回、オバマ大統領が仕切った首脳クラスの国際会議でも議論があったようですけれども、そういうところから入らないと、長い戦いとしてはもたないと」

佐藤正久 自由民主党国防部会長の提言:『撲滅離反』
佐藤議員
「私はISの本店のイラクとシリアの過激派を撲滅しないといけないし、と同時に2万人、3万人を支えている多くの市民がいますよね。これを、離反させるということをカウンターで、国際連帯でやらないと絶対できませんから。それを国際社会はやるべきではないかと思います」

軍事ジャーナリスト 黒井文太郎氏の提言:『イラクとシリアに介入!』
黒井氏
「佐藤さんがおっしゃったことの続きですけど、それがまず大前提としてあるのですが、それだけでは元の木阿弥にどうしてもなってしまうので、何で彼らISがこれだけ強くなったかというと、シリアにおいてはアサド政権の暴力があり、そうして内戦化したから、アサド政権を何とかするという国際社会の努力が必要。これがなければ解決しないと思います。それから、イラクもいわゆるシーア派中心の政権がスンニ派の人達を暴力的に抑圧したというのがありますから、現在アメリカは応援していますけれども、ある程度国際社会が介入して、そういった抑圧がなくなるようにという努力を国際社会がすべきだと思います」

軍事評論家 岡部いさく氏の提言:『爆弾では…?』
岡部氏
「提言と言うよりは非常にネガティブなことで申し訳ないのですが、現在やっている航空攻撃は結局、有志連合の国々としてはこれしかやることがないわけですね。自分達の兵隊を送り込みたくはない。そうすると、爆撃するしかないんですけれども、では、爆弾でこの問題は解決するのか。現在ISを支持している人達のハード&マインドをもっと平和な方向に向けるというのは爆弾では達成できないですよね。だから、これについては本当に人道支援の効果というのをうまく見せられるのかどうか。そちらの方の、国際社会の意志と覚悟にかかってくるのではないですか」