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2015年2月18日(水)
税制のゆがみとは 民間税調とは何か

ゲスト

山本幸三
自由民主党税制調査会幹事 衆議院議員
三木義一
民間税制調査会共同座長

税制が格差の根源? 民間税調が発足
秋元キャスター
「今月の8日に発足しました、今日、ゲストの三木さんが共同座長を務める民間税調ですけれども、どういう組織なのか。簡単に紹介させていただきたいと思うのですが、呼びかけ人は三木さんをはじめ、経済学者、税制、財務、法律の専門家の5人です。3つ柱を掲げていまして、1つ目が、格差を是正し、分厚い中間層を形成する税制と財政支出。2つ目が、グローバルエコノミーの時代における税制の公平性。3つ目が、社会保障と税、保険料の一体的改革と公平性、この3つを柱に掲げているのですが、与党の税制改正大綱が公表されている今年の年末に、独自の税制改正提案を公表するため、これから議論を積み重ねていく予定ということですが、三木さん、この民間税調は、政府税調ですとか、自民党税調とどこがどう違うのでしょうか?」
三木氏
「明確に違いがあるところはまず権限がありません。日本の税制のあり方というのは、日本の社会をどうするかということを決める、大変重要な問題ですね。それを一般の国民達が、私達が議論しないままに進められてしまっては困るでしょう。戦後70年が経ったんです。日本国憲法のもとで私達は主権者になっていて、私達が本来、社会のあり方を考えなければいけないわけです。誰から税金をとり、誰のために使っているのかというのは、政治の中心問題ですよね。ところが、この間、選挙の時になるとなぜかこの問題は外されて、与党になったところが、いろんなやり方がありますが、特に自民党さんの場合は与党の税調で、内部で結束が固いと思うのですが、中で議論をされて、いつの間にか決まっていく。決まったものだけが公表される。我々一般の国民はそれに従うしかないような感覚で、ずっと来ましたよね。でも、そろそろその税のあり方というのは、とても大事ですから、国民側からもっと意見があって、与党さんの意見も、1つの意見でいいと思うんです。でも、もう1つの考え方もあるので、これもきちんと選択をするような社会にしていかないと、日本の社会が変わっていかないのではないかと思ったわけです。本来、野党さんががんばってやってくれればいいことかもしれませんが、なかなかそうでもなさそうですので、私ども学者達が少し声を上げ、国民の人達に考えてもらうきっかけをつくろうと、こう思ってやったわけです」
反町キャスター
「既にある既存の党税調とか、政府税調に対する、足りない部分を批判し、足りない部分を補完するという立場なのか、今、言われたのは現在の野党では、そういう議論があまり行われていないという、野党の税に対する議論の深まりのなさに対する苛立ちなのか。どちらなのですか?」
三木氏
「両方あります」

格差は拡大しているか
反町キャスター
「格差の話をちょっと聞きたいんですけれども、モチベーションとして、現在、民間税調がやるというのは、現在アベノミクスの下において格差が広がっている、そういう危機感があると見ていいのですか?」
三木氏
「そうです。実感として、非正規雇用者も増えていますし、学生などと接しても、就職しても学生自身も昔のように安心できないような状況です。大学などの周りで見ても就職環境が非常に悪くなってきている。そういうのがひしひし感じられている状況にあるわけですね。そういう中で、昨年の自民党さんの税制改正大綱を見ますと、まだ経済成長できたので、これを進めていけば社会が良くなる。こういう前提の税制改正ですよね。果たしてそうだろうかという思いがあったわけです。(経済学者の)ピケティさんが、昨年来、本を出されて、日本でも翻訳されてブームになってきましたけれども、彼が言ってくれたのは、結局、消費社会というのは、資本利益率が普通の経済成長率よりも常に上まわっている。だから、何もしないと格差社会になってしまうんだということですよね。しかし、消費者社会の歴史を見ると、1910年から1970年ぐらいは割と格差が縮まっているんです。この時期を見てみると、税制のテコ入れがあったということが実証されたわけです。そうすると、私のような法律家にとっては大変勇気づけられていたわけです。これまでの税制を少し公平なものに、応能負担に、負担能力に応じて税金を払うようにしていかなければいけないよねと言っていましたけれども、その根拠は憲法14条、平等権、実質的な平等ということで言うしかなかったんです。そうしたら、彼らは世界的な実証をされたわけです。これは大変、私どもを勇気づけてくれたと思うわけです。資本主義社会というのは、先生と同じように良い社会にしていこうと、これからも維持していかなければいけませんよね。そのためには相対的に格差が小さい社会であることが安定する条件ですよね。私どもの小さい頃といいますか、少し前、1億総中流と言われた時期がありましたね。あの時期が永久に続くのかと思ったら、そうではなかったですよね。あっという間に変わっちゃいましたよね。それがなぜかと考えてみますと、1984年ぐらいからレーガン、サッチャー税制が入ってきて、それで全部、税率をフラット化し、資産課税がどんどん軽くなり、そこに消費税の率の追い打ちがかかるという中で、気がついたら、あっと言う間にこうなっちゃったんです。ですから、1億総中流の時代はまだ何か夢があったような気がするんです。少なくとも、そういう社会に、税制で少しでも近づけたいという思いが今回、強いです」

アベノミクスと格差
山本議員
「まったく逆だと思います。自民党税調で議論する時は、全部データがないとダメです。格差という場合に、どう格差が広がっているのかということをちゃんとデータを見るんです。そのデータを、一橋の森口先生とか、ちゃんとデータを示していますけど、日本の場合は戦後、超富裕層なんて増えていないと。問題は、貧困層がちょっと広がっていると。それは、私はデフレがずっと続いたから、賃金が下がり、失業者が増えて、その部分が広がったんだと。ところが、アベノミクスは雇用を増やし、賃金を上げることで、そこを底上げしているわけですから、1番格差を縮めるための政策だと。私は、安倍総理に自信を持って、がんばってほしいと、この前、予算委員会で言ったばかりですけれども。まったくデータから見る限りそうです」
三木氏
「アベノミクスのもとで、確かにアメリカほど酷くはないですけれども、日本における格差というのが広がっているという感覚が、生活の中にはあるんです。良いところは良いし、今度の税制改正も良い企業はより税金が安くなる。弱いところは、大企業でも所得のないところがお互いその分を負担していくような改正ですよね。そうすると、強いものがより有利になっていく。こういう構造が見えてしかたがないです」
反町キャスター
「そうすると、山本さんが言われたみたいに、スーパーリッチが増えているわけではなく、貧困層が拡大しているという、下に広がってきている。これはデフレの結果としてこうなっているという、この見方はいかがですか?」
三木氏
「それは自民党さんも下の層が広がっているということ自体認めているわけですよね」
反町キャスター
「それは認めています。それは貧困率16.3%、増えていますから」
三木氏
「全体的な給与所得者の平均収入もこの間、下がってきています。アベノミクスが少しがんばろうとされたのは、それはわかるのですが、それが本当にうまくいっているのか。一時期、そういう効果があったみたいですけれども、ただ、全体としては、なお下がっているのではないかと。そういう推測をしているんですけれども」
山本議員
「新規の就業者は100万人増えたんですから。これまで何も所得がなかった方、100万人の方が何らかの形で所得が得られるようになった。家計の金融資産を増やしているんです。140兆円、この2年間で増えました。そのうち、株の値上がりでと言われているのが50兆円ぐらい。あとはだいたいそういうふうに仕事が増え、賃金が上がったというように、増えているわけですから、アベノミクスこそがそれを助けているわけですね。これをしっかりやる。ただし、貧困層が増えてきたということは確かにあるので、それはデータで認識しています。そこは何らかのことを考えないといけないと思っています」
反町キャスター
「それに対する答えとして、いわゆる成長か、分配かと。その2軸の議論に現在なっているではないですか。山本さんは、アベノミクスは、僕の印象では成長論だと思っているんですけれども、アベノミクスの中に分配の理屈はあまり入っていないと思うんですけれど。成長か、分配か。たとえば、貧困層が広がってきた現在の日本に対しては成長論だけで対応できるのか、分配も必要なのかどうか。そこはいかがですか?」
山本議員
「両方とも必要です。私は選挙の時も、アベノミクスが第2段階に入るんだと。ステージ2に入ると。それは分配の話をしてきたわけです。ただ、成長をして、分配する元がなければ、分配しようがないですから。それを現在やっている。特に今回の税制改正ではデフレを脱却して、成長して分配を増やしましょうと。これから分配の歩留まりですね。これから分配を先ほど申し上げたように、貧困層を含めて、考えないといけないなと思っています」

資産課税強化の是非
秋元キャスター
「ここからは、公平な税制とは何かということについて聞いていきたいと思います。民間税調が掲げる柱の中に、格差を是正し、分厚い中間層を形成する税制を財政支出というのがあるのですが、先ほどから、名前が出ていますけれども、現在、日本でも話題になっているフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』でも、格差拡大と税制の関係をこのように読み説いているんです。歴史を検証すると、資本主義が続く限り、資本家は労働者より多くの利益を得るとしていて、資本家と労働者の格差は拡大し、世代を超えて受け継がれてしまうことがわかったとしています。そこでピケティ氏は、税制を通じて、富裕層の資産を再分配すべきということを主張しています。日本の税制を考えてみますと、世代を超えて受け継がれていく資産にかかる税というと主に3つがあるわけですけれども、取得金額に対し、最高55%かかる相続税ですとか、同じく最高税率55%かかる贈与税。そして、家や土地などにかかる固定資産税ですけれど、三木さん、こうした資産課税をさらに強化するべきだと考えますか?」
三木氏
「基本的に日本は少子化社会になってきていますね。そうすると、結局、相続によって承継される財産をいかに持っているかということが格差を生み出す大きな要因にもなってきているんですね。そういう中で、しかも、相続というのは本来、国の相続という制度のおかげで、人の物が自分の物になるわけですね。そうすると、新たな経済的な富が出てくるわけですから、それは相続という制度のおかげでもあるわけですし、金額の多い相続を受けた人は一定の社会還元をするというのが社会のルールだろうと思うわけです。そういう意味で、この相続税というものをもう一度、見直していくべきだと思っています。かつて英米でも第一次世界大戦直後あたりは財政再建の観点もあって相続税は70%か80%まで最高税率は開いていたんですね。現在までの間、何か相続税というのは終わった税制みたいに、世界中でやめていくんだというような議論が一時ありましたけれども、そうではなくて、むしろ日本のような少子化社会になっていく時はちゃんと相続税をきちんと適性化するということがとても大事になってくると思います。そう思って、今回の基礎控除の引き下げというのは、現行の基礎控除というのがバブル期につくられた、急に引き上げたものだったわけですから、バブルが崩壊していますから、そうであれば、それ以前の状態に戻すというのが健全な発想だったと思うんです。そうであれば、与党として筋を通して、おやりになればよろしいのに、何か相続税を負担するのが、一方で嫌だという思いがあるのか、贈与税の方でいっぱい抜け道をおつくりになっている。私はそれを見た時に、これは政府として筋が通っていないと思いました。やるんだったらきちんと…」
山本議員
「贈与税については、おっしゃるように、今回ちょっと優遇したんですけれど、我々はその問題も十二分にわかっていて、百も承知であったわけです。それはまさに自民党税調の基本的考え方の中にきちんと書いています。どういうことを書いてあるかというと、目下、デフレ脱却の経済成長によって、税制改正を含めて、あらゆる政策資源を集中投入するべき状況にあると。他方、税制のあり方に密接に関連するものであり、今後とも格差の固定化につながらないよう、機会の平等で世代内の公平の実現。簡素な制度の構築といった考え方のもと、不断の見直しを行わなければいけない。つまり、贈与税で我々が、今回やったのは、住宅については(消費税を)10%に2017年4月に上げますから、その時、消費税を上げると1番住宅と自動車に効くんです。特に住宅は大きい。ガタッと落ちますから。それを均すという意味で、10%に上げる時には、3000万円のところは見ないと住宅産業自体がガタガタになるということでやっているわけです。それから、教育については、現在お金持ちのお金が眠ってしまうのがデフレ脱却の経済に1番良くないので、とにかく限定して、期間を。その間にまけますから、しっかりお金を使ってくださいと。そして、デフレ脱却をして経済を再生すれば、格差が固定しないように次はちゃんと手を打ちますと。我々は百も承知でそういうことをやっているわけです」
三木氏
「今回も格差固定につながるということはわかっているのだけれどもという意味ですか?」
山本議員
「これを続けていけばね。これは期間を限定してやっていて、そこから先もきちんと考えますよということです」
三木氏
「でも、与党として国民に対してメッセージを出すのが税制改正ですから、この時に、矛盾するものを出したら、国民は与党が何を考えているかわからなくなってしまいますよ」
山本議員
「基本的な考え方を言っているわけですよ。これを読んでいただければ十二分にわかると思いますね」

グローバルな累進資産税
秋元キャスター
「民間税調でも2つ目の柱にグローバルエコノミーの時代における税制の公平性を掲げているんですけれども、ピケティ氏も、富裕層が海外に資金を逃避させている現状に対し、新たな税制を提案しているんです。グローバルな累進資本税ですけれど、不動産や金融資産、事業資産など全て例外なしに課税対象として、世界で統一された累進課税をするべきだと主張しています。それを行うためには、各国の政府による金融情報の共有が必要だとしているのですが、つまり、資産を持っているだけで世界のどこでも同じ税金がかかるという税制ですけれども、三木さん、この考え方についてはいかかですか?」
三木氏
「これが理想ですね。理想ですけれども、まだまだ距離がある。現実の国際社会の中では、課税、税金をかける仕組みというのは、基本的にそれぞれの国の専権事項ですから、国を離れて、他国のものについて手を出すというのはできないわけです。ですから、それを利用されて、日本で税率を上げると、民主主義のもとで投票したはずの人達も自分の税金が上がるとなると嫌だということで、シンガポールへ逃げちゃうわけですね。こういうことが平気で行われ始めてきたんです。最近は非常に強まっています。ですから、私どもが悩んでいるのは、たとえば、所得税ならもっと累進化、本来、理念としては、した方が健全だと思っているのですが、これを国際的なそういう歯止めを打たないままでやっても、結局、逃げられちゃうだけの問題が出てきます。ですから、きちんと国境を利用する手口というのを塞ぐことを考えながら、所得の課税の適正化をはかっていく必要があるのだろうと思っています」

国境を越えた税制の課題
山本議員
「それぞれ個人に毎年、世界中の資産を時価評価して、それにきちんと税金をかけていくというのは納税コストの大きさから考えてほとんどペイしないでしょう。そういうことをやろうとする時に、キャッシュが別にあるわけではないのに資産にかけることがありますから、そんなに高い税率はかけられないと思うんですね。そうすると、把握も、ちゃんとわからない。大して税収が上がらないという状況になってくると思うし、私は、理想論と言っても現実的に不可能だろうと思います。それより一生に1回の相続税だったら、その時だけはちゃんと調べますというのが、全部当局ができますから、それでやった方がいいと思う。ただ、金融情報を公開しようというのは非常に大事なことで、実はもう始まっています、OECDで。2008年スイスのUBS証券というのがあって、アメリカ市民の脱税防止をしなければいけないというので、アメリカ政府がスイスに情報を提供しろと要求をして、それをスイス当局も応じて、それがきっかけになって、OECDでそれぞれの金融資産について情報を提供しあいましょうということが決まりました。現在動き出しています。それに応じて、各国が対応する税制の国内制度をつくれということになっていまして、実は、今回の税制改正の中にも1億円以上の金融資産を持っているとしたら、それはちゃんとチェックしてとりますよということが今回入っているわけです。その一環です。その意味では、情報をきちんと交換しあうということまではできてきているのですが、それぞれの資産を全部時価評価してということでやるのはちょっと不可能でしょうね」
三木氏
「確かに現在の状況からすると、山本先生の言う通りだと思うのですが、ただ、日本の財務省やこれまでに自民党さんの行ってきた国際的な課税の問題についての対応というのは非常に遅れてきたのではないかと思うんですね。この数年ですよ、ようやくこういう問題に国際徴収共助が入ったりしてきましたけれども、従来は国境の問題に触りたくない感覚でした。それで遅れてきたというのが、現在のこの状況につながっていて、今後どうするかという観点に立った時には、これはせっかく今回少し踏み込んだわけですから、もっと積極的に対応をしていただきたいと思うんです。現在の時点では、各国がそれぞれの自分の利害関係だけで税制を決めるという、この状況は確かにそうです」
反町キャスター
「法人税にしたって、競争して…」
三木氏
「税の割引き競争をやっているでしょう。安倍さんも、だから、今回割引き競争に入っているわけです。そんなことをやって、どうして国際社会は健全になりますか。割引き競争なんてやっていくのならば、最後は法人税をとらない方がいいとなっていくわけです。そうしたら、誰が、どういう人達が税金を払うのかと言ったら、国内から移動できないサラリーマンの人と土地からしか税金をとれなくなっちゃうではないですか。こんな社会にしていいのですかということですね。だから、法人税の割引き競争も、自民党さんが本当だったら、そろそろ国際社会に呼びかけて、歯止めを打つとか、そのぐらいはやるべきだと思うんですよね」

所得税の累進性
秋元キャスター
「所得税率の推移ですが、どうして昔に比べて税率が低くなっているのでしょうか?」
山本議員
「高度成長の時には税収がどんどん上がっていましたから、減税政策ばかりがとられてきたから、それでだんだん下がってきたのだと思います。ただし、今度はデフレ経済になって、税収が足りないということで、今度は消費税を上げたし、所得税についてもまた少し上げなければいけないという方向になってきているんだと思います。昔は税収がすごく上がっていたから、減税をやる必要がなかったと。それから、景気対策。景気が悪かった時は景気対策で減税もやったということもあります。その時々の経済状況を反映しながらこうなってきたわけですけれども、私どものアベノミクスで経済が安定すれば、相応の負担はするべきではないかと、私は個人的には思います」
反町キャスター
「それは、税率を昔の70%ぐらいまで高めるという意味ですか?」
山本議員
「いや、そこは価値判断の世界になってしまうのですが、私は何となく活力という面から言えば、儲けた分の半分近くを税金でとられるよりは残るというぐらいの相場観ですかね。7割、8割となると、地方税もありますし、働いている意味がないということになっちゃいますからね」
三木氏
「日本の所得税の税率というのは、戦後、アメリカ軍のアメリカの政策で日本とドイツの超過累進税率がすごく高かった、終戦直後、日本は85%ぐらい。その後、日本は景気が回復してきましたから、税率を下げていっても税収は大丈夫だということで、自民党はずっとそうやって政権を維持してきて、何となく減税というのがトレンドみたいな、減税を言うのが正義みたいな感覚になって、こうなってきたわけですよ。だけど、本当にそれで良かったかどうかということを考えなければいけないと思うんです。税率のところでは、アメリカがそうやったのは、要するに、最高税率いっぱい所得がある人は、多めにとられることによって、そこで市民層に再分配をさせて、中間市民層をつくろうとしたんですよね、アメリカの政策で。それがある程度、成功して、いわゆる1億総中流の時代に突入していったのだろうと思いますね」
反町キャスター
「その意味で言うと、この税率というのは50%ちょっとぐらい?」
三木氏
「ピケティ氏は80%までとしていますが、そこまで(ではなく)、70%ぐらいまで負担していただいてもいいのではないかと思うのですが、と言うのは、70%だと、全部70%だと皆さんすぐ思っちゃうけれども、超過累進税率ですから、たとえば、1億円以上が70%だとすると、1億円を越えた部分だけですからね。そういう仕組みですから。全部根こそぎとるというものではないです。そこはよく誤解されていますので、その点を留意したうえで…1億円、2億円の所得のある方は働いて得るのですかね?総所得でしょう。日本の現在の所得税の税制でいうと、1億円を超えると税率下がっているんですね。株や何か配当が多いから。配当所得などは軽減税率がありますから。結果としてすごく安くなっちゃうんですよ、高額所得者ほど。それはあらためなければいけないこと。一般庶民が一生手にできないような所得層にはそれなりに負担していただいて、社会に還元していただいて、それで日本の社会が良くなれば、その人達自身が安定して生活し、子供さんに承継できるのですから、そういうふうにしてほしいと願っています」
山本議員
「閉鎖社会だったら買うかもしれませんね。グローバル社会になってしまったら、海外に行きますよ。それぐらい稼げる人だったら、国際的な活躍ができる人ですからね。そんなふうになったら、動けない人だけが残る社会になってしまうわけでね」

適正な所得税負担
反町キャスター
「国際的な共通性がある程度出てこないと、一国だけ累進性を強化すると結果的に金持ちだけが逃げ出す話…ここになってしまうわけですよね」
三木氏
「それはよくわかっていますよ。一応、そういうことについての歯止めの意識をしながら、原理的にここまではあり得るという話を申し上げた話で、私どものグループの中でも、所得課税というのがある程度適正化しなければいけないと言っても、現在先生がおっしゃったような現実がありますから、無理はできないと。そういう意味で、他の税制のところにウエイトを置いていかざるを得ないという意見も多いんですよ」
反町キャスター
「いわゆるタックスへイブン(租税回避地・租税避難地)とは言わないまでも、明らかに税制を下げることによって人を呼び込もうとしている国があるわけですよね。それがある以上、仕方がないなと諦める部分もあるわけですか?」
三木氏
「そういう政策が果たして国際社会で容認できるのかという問題になると思うんです。たとえば、アイルランドだって従来、法人税は一国の専権だとがんばっていましたよね。でも、現在は国際社会で非難されているではないですか。そろそろそういうことを国際社会で他の国のことを無視してやっていいという時代はなくなると思いますよ。個人課税だって、そういう問題が当然、今後出てくると思います。また、そうしないと本当にそれぞれの国の税制が相当悲惨なものになっていくと思いますよ。国際社会はお互い様でわかってくるはずだと、私は思っています」

消費税と格差
秋元キャスター
「消費税増税についてはどのように考えていますか?」
三木氏
「私自身いろいろ悩ましいところがあるんです。と言うのは、消費税がいろいろなデメリットがあるんですよ。ご存知のように、どうしても仕入れ税額控除の関係で言いますと非正規雇用が不利になるとか、いろんな問題がありますので、なかなか言いにくいところがあるのですが、ただ、現在の財政事情を考えますと、大きな目で見ると、我が国の財政の健全化を少しでもはかっていかなければいけませんね。これはかなり緊急の課題だと思っているんですね。そういう意味で、とりあえず消費税に依拠して、ここで税収を上げていくというのは、やらざるを得ないだろうと思っています。ただ、これに伴う逆進性の問題について、どういう手当てをしていくかということが問われるのだろうと思っていますね。公明党さんも軽減税率をおっしゃっていますが、これは大変いろいろな問題がありますので、我々は、これは大変おかしいと思っています。民主党さんは給付付き税額控除でしたよね、この仕組みも理念的には考えられるのですが、ただ、制度がすごく複雑になってきます、大変だなと思っています。もっと簡単なのは、先ほど来、皆さん思っているかもしれませんが、税は税としてとって、歳出のところで本当に透明化をして、現在、歳出でちゃんとやりますと自民党さんはおっしゃるのですが、それが見えないから。歳出のところできちんと負担した人達に見える形で、支出をして、そこで負担の不公平を歳出で調整をするということを本当に見える形でできれば、北欧型の社会への移行のステップになりますよね。そういう方向にいくのが1つの方向だろうと思っているんです」
反町キャスター
「それが日本でできない理由は?」
三木氏
「予算の支出が見えないし、これまで透明化してこなかったから、皆実感がないわけですよ。実際、税を上げてもそれに見合う、良かったなと思うものが、一般の普通の人達は感じられなかったわけですよ。税金は出したけれども、老老介護だったら自分達が負担しなければいかん、そういう形で税金を出した意味をここまでは感じられなかったのではないですか、これまでは。だからこうなっている。1番大事なのは、歳出の決定過程。何に使ったかのデータの透明度が日本は1番低いんですよ。OECDの中の予算措置をいろいろ調べた田中秀明さんがメンバーにいますが、彼は各国の予算の仕組みを調べて透明度を検討しましたけれども、日本は1番低い方ですね。わからないです。本当は政治家さんがいろいろな要求をしてきた時に、官僚の人達は不本意にならないようにやろうとするのであれば、透明性を出して不本意な要求を排除するようにしなければいけなかったと思うのですが、どうも日本の官僚は政治家と一緒になって政治家をしちゃったのではないか。だから、あまり透明にすると、知られたくないことを知られちゃうから透明にしたくないということで、これまできたのではないか。そんな気がしますし、現実に予算の執行過程と決定過程、それが我々にわからない、実感できない。私のように関心を持って調べようとしてもよくわからない。それが実際だと思います」
山本議員
「OECDの調査というのは1回OECDの官僚がやったんです、発表したら各国で総スカンくらいまして、それはおかしいと。議論百出して撤回されました。あらためてつくり直してみると、日本はそんなに遜色ないというレベルになっています。田中さんは最初のところしかいなかったので、その議論しかしていないんですけれども、それが1つ。先生がおっしゃったように、給付は財政の支出の方で本当に困っている方々、貧困層の方々にちゃんとできるという、ある意味で最も現実的ですぐにでもできるような話になりますので、私も現時点ではすぐに考えるべきではないかなとは思います。ただ、それをやる時には税務当局は所得税を払っている人しか把握していませんので、やるとすると市町村のところでやってもらわないといけなくなると。そうすると、この前の子ども手当て、児童手当のように、だいたい所得がいくら以下だったら来てくださいねと言って、来た場合にやっとわかるんですけれども、その積み重ねをしていかなければ、なかなか公平に支出ができないというところがあるので、ある意味でいうとマイナンバーがこの10月に配られて来年の1月から使われるようになりますから、それを活用して、所得税を払っていない人でも、ある程度の所得がだいたいくらぐらいかということがわかるというのがいいのかなと思います。それから、消費税は確かに欠点もあるのですが、逆に高齢者で所得がなく、所得税をまったく払っていないという人からもとれるという意味では、非常にバランスがとれている税金でもあると思いますね。基本的には福祉の方に使いますから、その意味で、消費税も捨てたものではないというところもあるということだと思いますが、その組み合わせですね」
三木氏
「給付付き税額控除も含めて、消費税をとったら、低所得者層に見返りを具体的に渡していくというようなニュアンスでおっしゃっているのですが、私が考えているのは、そういうことをやりますと、結局、低所得者層中心だけになって、一般の人達が税金を払っている実感が出てこないです。むしろそうなのであれば、税収分を、たとえば、子供の医療費については全て無料にしていくとか、そういう形で使っていく、その方が皆で共有できるではないですか」
秋元キャスター
「それはさらに税収が必要になりますよね?」
三木氏
「子供に限定していたら、さしあたりそうでもないみたいですね」
山本議員
「だから、子供の教育については無償化をやろうとしています。いっぺんにはできませんから、少しずつやろうと」
三木氏
「いろんなものを無償化するという、税で賄っていくという」
反町キャスター
「社会保障プラス1200兆の借金を返していかなければいけない。それも税で返していくということ?」
山本議員
「私はそういう考え方は受け入れ難いですね。人間というのは、国から何かをもらえば、だんだんダメになっていくんですよ。基本は自助の精神で、奮闘努力をして道を切り開いていく。これは明治維新の時に『セルフヘルプ』という本を皆読んだんですね。そこがなければ国家は衰退すると思いますよ。そういう活力のない社会にはしたくない。本当に困っている人にはちゃんとやると、だけど、そうでない限り基本は自助でやるんだと。税金を払うところには払ってもらうと」

山本幸三 自由民主党税制調査会幹事の提言:『活力と公正のバランス』
山本議員
「基本は自助の精神が大事で活力を失わないようにしなければいけない。そのうえで格差が開き過ぎないように公正さをはかっていく。そういう形の税制度にしたいと思っています」

三木義一 民間税制調査会共同座長の提言:『主権者=納税者』
三木氏
「テレビをご覧の皆さん。皆さんは納税者である同時に主権者ですよね。納税者が主権を持つという経験を持ったのはまだ70年ですよ、我が国の歴史の中で。我々は社会に対して責任を持ってどういう社会をつくっていくか決断をしていかなければいけない。その時に税金というのは大変な役割を果たすわけです。税金を出したくないのならば、小さな社会ですから、先ほどの自助努力になります。でも、社会を信頼し、税を出しあってセーフティーネットをつくっていこうというのであれば、大きい社会を目指すということになります。いずれにしても、私達は従来、税金のことから逃げてきましたけれど、もうそれはやめましょう。私達自身の問題として正面から是非考えていくようにしていただきたいと思います」