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2015年2月16日(月)
どうみるGDP速報値 円安の是非は 賃上げは

ゲスト

野口悠紀雄
早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問
片岡剛士
三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員

GDP速報値発表 “プラス2.2%”が意味するものは
秋元キャスター
「今日発表になりました2014年10月から12月四半期のGDP速報値を見ていきたいと思います。2四半期続きましたマイナス成長が今回は年率で2.2%のプラスとなりました。この数値をお二人に分析していただきたいと思うんですけれど、野口さん、この結果をどのように見ていますか?」
野口氏
「予想通りの結果だと思うのですが、図で赤い線がGDPです。これが実数です」
反町キャスター
「年換算したら何兆円にあたるかという数字ですね」
野口氏
「2014年のここのところ、実質GDPでピークになって、このあと、ずっと減少しているんですね。それが増加に転じたということですね。その原因ですが、この青い線が消費者物価指数ですが、それもここのところ下がっていたんですね。下がってきたのは、1つは、円安が昨年の夏までほぼ一定だったと。それから、原油の価格の下落もあるのですが、いずれにしても消費者物価が下落したんです。いったん下落してGDPが増えているんですね。これが重要なポイントです。つまり、物価が下落して、人々の実質所得が増えて、そのために実質が増えているんですね。それまでこの時点まででは消費者物価が上がってきているわけですね。これが実質上昇を遅らせて、GDPを減少させてきたんです。つまり、どういうことかと言えば、デフレ脱却により経済成長率が下がって、物価上昇率が下がって、経済成長率が上がったということです。つまり、デフレからの脱却ということを目的にする経済政策がそもそも間違っているのではないかということです」
反町キャスター
「アベノミクスが間違っているということになりますね。アベノミクスはデフレ脱却と経済成長を一緒にしようとしていますよ」
野口氏
「はい。デフレ脱却という目的が間違いであると、正反対であるということです。それが、ここで上がって、これが下がって、これが上がったということに」
反町キャスター
「物価の下落と成長の上昇というのが、これが本来あるべきパッケージだと。そういうこと話ですね」
野口氏
「そうです。これまでは逆だったということですね」
反町キャスター
「今回の2.2%という数字、この2.2%成長という大きさ、幅をどう評価していますか?」
野口氏
「過去の数字と比べて見れば、かなり高い数字だと思いますね」

GDP速報値“プラス2.2%”どう読み解く
片岡氏
「前期比2.2%成長といったものをどう評価するかということですけれど、私自身は、野口先生とは違って、ちょっと力不足だなという印象があります。もっと上がるはずなのではないかというところですね。今回なぜそうだったのかというところですけれども、先ほど、野口先生がお出しになった図のところでご覧になっての通り、2014年の1-3月期は駆け込み需要がありましたので、通常の経済成長よりもGDPは高いと。他方で、4-6月期は反動減があったので、こちらの部分は大きい、小さいという形になるわけですけど。だいたい駆け込み需要と反動減といったものが均されると。この平均ぐらいのところに、消費税の影響がなくなったとしたなら、GDPが戻ってくれるであろうという期待はあったわけですね」
反町キャスター
「消費者物価指数と実質GDPの真ん中ぐらいにくるだろうと。この線だと思った時にまだ伸びしろがあるであろうという話になるんですね」
片岡氏
「はい。そこの足りない分というのは、消費増税の影響が残存しているんだろうということだと思うんですね。2014年の1-3月期の平均と、4-6月期の平均の値を平均しますと、だいたい530・5兆円です。今回、1次速報値で出てきた2014年の10-12月期の値は525.8兆円ですので、ですから、4.2兆円強、まだ低いですね。仮に2014年の7-9月期マイナスが続きましたが、ここから先ほど申し上げた530・5兆円に戻るためにはどれぐらい成長率が必要なのかといいますと、これが年率換算すると6%です。ですから、V字回復、あるいは消費税の影響がない状態に戻るところを基準にすると、まだ消費税増税の影響が残っているのではないかという見方ができると思う。これは実質GDPの内訳を見ていっても、結構、明らかなところがあって、民間エコノミストの見通しが、年率3.86%という話がありました。政府発表が2.2%ということで、ズレがありますと。このズレがなぜ起こっているのかというと、これは民間消費の伸びが弱かったということです。個人消費は前の四半期、つまり、2014年の7-9月期と比べると、前期比で0・3%増ということで、これは7-9月期の、前期比と同じ伸びであったんです。家庭消費の内訳を見ていきますと、確かに耐久消費財は前の期と比べてプラスになりました。ですけれども、ただ、消費税が増税された直後の7-9月期の耐久財消費というのは、17、18%のマイナスだったんですね。そこから7-9月期も引き続きマイナスが続いて、そのあと戻してプラス0.7%ということですから、確かにプラスになったのは望ましいんですけれど、ほとんど耐久消費財の反動減からの戻りが非常に緩かったと。他の、たとえば、食料品ですとか、もしくは医療とか、サービス消費といったようなところも確かに上下はありますけれど、あまり伸びていない。もう1つの要因が、設備投資が弱かったということですね。設備投資は今回、前期比でプラス0.1%でした。その前の期はマイナス0.1%ということですのでほとんど横這いで推移していくということですよね。これは、たとえば、日銀の短観といったアンケートベースで、企業の方にどれぐらい設備投資を増やしますかとか、そういうサーベイ調査というものがあるんですけれども、こうしたところと比較しても、ちょっと伸びが弱い感じがしますね」
反町キャスター
「消費の伸びが悪かったということなどから、3.86%という予想は、実際、2.2%にとどまったということにすれば、その消費の伸びの悪さをどうしてエコノミストは読み切れないのか。ただ単に政府から出ている、ないしは巷に流れているデータから読み解くのが難しかったという、そういう技術的な問題ですか?」
片岡氏
「必ずしもそういうわけではないですね。消費のデータにつきましては、これは、大きく需要型、家計調査といったそういうもの。もう1つ、供給型と言われている売り手側の方の、百貨店の売上高とか、こうしたところがミックスされて集計されていますので、両者の数字というのは、これは事前に基本的に公表されています。ですから、あまり言い訳にはならないですけれども。ただ、昨年の消費税増税以降の動きというもの、なかなか消費が戻らないという話については、ちょっと楽観的な観測を、私は持ち過ぎていたなと思っています」

消費支出と賃金 賃金はいつ上がる
反町キャスター
「今度、もう1つのポイントです。賃金の話を聞いていきたいのですが」
秋元キャスター
「消費が伸びない理由の1つとして、賃金が上がっていないという話もあるのですが、1997年に消費税3%を5%に上げた時の実質賃金と、今回の増税時の実質賃金をグラフで比べたものですけれども、上昇率ですね、実質賃金、上昇率。どのように分析をしたら…」
片岡氏
「実質賃金と言いますのは、これは働いていらっしゃる方の平均賃金の伸びで、なおかつ物価上昇率を加味して計算をしているものですね。ですから、たとえば、働いていない方が新規に入っていたという形になると、これは当然、新規に入ってきた労働者の方というのは、それまで働いていらっしゃった方よりもたいてい賃金は低い状態で入ってくるので、だから、新規の雇用みたいなものが増えてきた時の、賃金の上昇率みたいな時、ちょっと見る時には注意が必要だと思います。実質賃金というのは、これは1997年の消費税増税時で、実質賃金をざっくりご覧いただくと、1997年4月前までは、前年比でプラスだったんですね。ですから、物価上昇云々はあるんだけれども、このあたり、0よりは上の方にきているということです。消費税が上がりますと物価が上がりますので、賃金の伸びが変わらないということになると、実質賃金は物価の伸びを反映する形で下落していくということで、前回もマイナスになっているという話があったわけですね。今回ですけれど、実質賃金、1人あたりの働いていらっしゃる方の平均賃金がマイナスの状態に突入する形で推移をした。その時には物価は確かに上昇基調にあって円安の一部、効果として出てきていたというところで上がっていたわけですね。ただ、この実質賃金が下がっているという状態の中で増税をしてしまったので、さらに、マイナス幅が高まるという話になっていたわけですね。2013年中の雇用の動きを見ていきますと、男性につきましては、団塊世代で退職をされるという方が、正規から非正規に転換されたケース。女性につきましては、30代ぐらいから40代といった主婦の方。主婦の方も、たとえば、パートタイマーみたいな、そうしたところが大きく増えています。そうした方々というのはおしなべて非正規雇用と言いますか、フルタイマーで。サラリーマンみたいに、そういう型の職種ではないですが、ただ、企業の労働需要が増えているので雇用されたと。こうした方々の賃金というのは、フルタイマーの方よりも水準は低い。ボーナスも当然ない、もしくは小さいわけなので、ですから、こうした総平均として見た場合の、実質賃金、名目賃金というのはどうしても上がりにくい状況ですよ。雇用の改善みたいな話がもっと続けば、もちろん、非正規から正規への転換も起こるのでしょうし、そうした意味でいうと、働いている方の平均の賃金が上がっていく可能性は…」
反町キャスター
「転換期だというわけですか?」
片岡氏
「ええ、転換期です」
反町キャスター
「そうすると、延長線上は明らかに上に上がっていく方向にあると見ている?」
片岡氏
「前年比ではそうですね。ですから、消費税の影響というのは、2015年4月以降、消費税の影響による前年比ベースで見た物価上昇率というのは剥落します。消費税の影響は残るんです。ただ、テクニカルには消費税による物価上昇率のプラスインパクトというのは剥落しますので、そうしますと、手取りの名目賃金が1%、2%というようなところが確保できれば、物価上昇率は、原油安もあいまって0%台半ばとか、もしかしたらマイナスに入るかもしれない、一時的に。そうすると実質賃金は平均的に実質賃金は伸びてくると」
反町キャスター
「ただ、前回1997年の引き上げの時には事前に、こういう高い賃金水準の上昇基調があって、今回はずっと、いわゆるマイナスの賃金がずっと続く中で、また、ここで3%消費税をかけたという、いわゆる前提条件として、どうだったのかという、振り返ってもしょうがないんですけれど」
片岡氏
「私は一貫して(消費税)3%から5%の時も、家計消費が当時伸びていないと。だから、2013年の景気は非常に強いと、皆さん、おっしゃったんだけれども、たとえば、2013年、暦年ベースの成長率は、これは実質で1.6%台ですけれども、そのうちの寄与度、成長率にどれぐらい影響するかと。民間消費が1.3%だった。だから、ほとんど消費税説明ができた。そういった状況で、賃金がよく上がっていないので、だから、物価が上がれば、実質賃金がということが批判を受けるので、やめた方がいいということを、これを政府の検討会でも話をしました。実際のところ、これは自慢するわけではないんですけれども、残念ながら、私が言った話その通りのことが起こってしまったわけですね。今回、消費税の再増税はなかったわけですが、ただ、8%に引き上げる、3%も引き上げるということをやったことによって、現在働いている方の平均の賃金レベルで見ても、前年比で、大幅に物価上昇によってマイナスになると。こういう状況が起こっているわけで。だから、そういった意味では、消費の落ち込みというのは、これは致し方ないなと思います」
野口氏
「2つ注意していただきたいのですが、まず実質賃金がマイナスになるということは、消費税を増税する前から続いているんです。それに伴って、実質消費が減少しているということです。ですから、これは消費税の増税とは別の問題であって、先ほど来、申し上げているように、円安によって物価が上がったことによる影響が大きいと考えています」
反町キャスター
「この引き上げ前の分ですね」
野口氏
「前ですね」
片岡氏
「このへんは、消費は下がっていないですけどね、実質消費は」
野口氏
「いや、11月の分から下がっているんです。もう少し割れていますけれどもね。もう1つ注意していただきたいのは先ほど申し上げたことで、実質賃金は上がったんです。上がったのは物価上昇率が下がったからである。先ほど来、ずっと言っている、強調している点です。このことの2つの点。当然のことですが、注目してください」

株価・為替と日本経済 株高が日本経済に何をもたらすか
秋元キャスター
「ここからは株と為替について聞いていきたいと思うのですが、株価とドル・円レートの推移ですけれども、日経平均株価、民主党政権時代に比べますと、現在、倍以上に回復しまして、今日の終値はおよそ7年7か月ぶりに1万8000円を超えています。円に関しても安倍政権発足後、円安に振れ、今日午後6時現在118円前後となっています。片岡さん、株価回復は日本経済に好影響をもたらすと考えてよろしいのですか?」
片岡氏
「まず1万8000円に達したということで、これは2007年以来ですかね。2007年と言いますのは第1次安倍政権の時なので、要は、そこまで株価が回復してきたということですね。回復してきたと申し上げたように、これは、たとえば、現在の株価の上昇がバブルであるとかという話ではなくて、常に経験してきた道ということですね。ですから、1ドル80円台だった時というのは、8000円とか、1万円を割れていたような状況ですね。これ自体はある意味、リーマンショック後の時からなかなか回復できていないという状況を示していたわけですけれども、ようやく1万8000円に乗せ始めたというところで、リーマンショック直前のところのあたりまで、株や為替というのが元に戻ったんだ。そういう認識を持っています」
反町キャスター
「政府の金融緩和によって、株高を意図的にドライブをかけて、そこが企業利益を生み、それがだんだんトリクルダウンというような形で下々にいくのかどうかというような話をもしやっているとすれば、そう見えるのですが、そういう株価を突破口にした景気対策。人工的な、人為的な株価政策と、それを突破口にした景気対策というのに対してはいろいろ異論もあると思うのですが、そこはいかがですか?」
片岡氏
「私自身、人為的だとかは見ていません。もちろん、笛吹けども踊らずという状況であれば、いくら政策によって何かしようとしても起こらないわけです。だから、これは民主党政権の時もそうでしたけれど、円高が起こりました。為替介入をしました。でも、まったく円安にはならなかったわけですね。これは笛吹けども踊らずの典型で、同じように株価も低迷をしていたわけです。ただ、今回の場合は2%のインフレ目標を達成していくんだというコミットメントがあって、それによってあまりに低く評価されていた日本というものが、これをリーマンショック前の状況に戻すという動きなので、ですから、もちろん、政策的な話はあるのですが、以前の状態に現在だんだんと戻ってきたと。こういう捉えた方がむしろよろしいのではないかなと思います」
野口氏
「日本の特に日経平均株価はほとんど為替レートと連動をしているんです。円安になれば、平均株価が上がり、逆なら逆と。これはこれまでもそうでしたし、今回の円安局面でも、そのようになっています。なぜ円安になれば株価が上がるのかと言いますと、輸出産業は、輸出のドル建ての価格をほとんど変えていないんです。と言うことは、円安になると円建ての輸出額が増えるんです。他方で、その原価の方を見てみると、輸入したものは価格が上がりますが、そうでないもの、特に自動車産業ですと、国内の労働力とか、そういうものが中心です。従って為替レートに影響を受けないわけです。従って売上げが増えるけれど、原価が上がらない。だから、利益が増えるんですね。日本企業の製造業の利益率は非常に低いです。営業利益率が2%とか、3%とか。と言うことは、売上げが2%増えれば利益が倍になってしまうということです。売上げの非常に小さな変化でも利益は非常に大きく変わってしまうんです。これが、円安が特に輸出企業の利益ベースを賄うんですね。従って企業の利益が増えていますと言いますけれども、これは企業の、特に規模によって非常に大きな違いあるんです、特に製造業にとって。製造業は資本金1億円以上の大企業で、前年比で利益が50%とか、60%の増加ですが、それ以下の中小、零細企業の場合には利益が数%しか増えていないんです。これが先ほど言いましたようにドル建ての価格を変えていませんから、従って輸出の量が増えないです。輸出の量が増えないということは生産があまり増えない。と言うことは、下請けから見ると自分が巻き添えになったということですね。先頭のメカニズムで中小企業に恩恵が及んでいないんです。トリクルダウンというのは正直ないということです」

円安の恩恵はどこに
反町キャスター
「円安というのは、日本にとって良い、悪いどちらですか?」
野口氏
「輸出産業は利益が増えるんだからいいんですよ。株価が上がるんだから、株を持っている人にとってはこんなにいいことはないですよね。何もしないで資産が増えるんですから。人によって利益を受ける人、利益を受けない人がいるというのが重要です」
反町キャスター
「その人によってムラがある時にどうしたらいいのか。円安自体は悪くないけれども」
野口氏
「そうは言いません。円安は過大だと、私は思います。ただ、この状況が続いて、円安にコントロールできなくなると、非常に危険だと思っているんです」
反町キャスター
「さらに進むと言っているのですか?」
野口氏
「そうです。危険です。ただ、その問題は別として、これまでの円安の効果も、人によって大きな違いがあるんですよ。だから、良いか、悪いかなんて言われたら、良いと思っている人もいるし、悪いと思っている人もいると。先ほど、申し上げたように企業にとっても輸出産業はいいと。だけど、小さな企業は、仕事は増えないんだから、原料代が上がって困るではないですか。そういうことが実際、生じているんです」
秋元キャスター
「円安によって格差ができると」
野口氏
「そう、格差が広がるということですね。それは間違いなく起きます」
反町キャスター
「儲かる人、不幸な人もいろいろいる中で、日本経済全体を考えた時に、円安というのは、総合評価としてはどうなのですか?」
野口氏
「総合評価としては、簡単に言えば、現在、日本は輸入額の方が多いんですから、円安になれば貿易赤字は拡大するんですね。そういう効果はありますね」
反町キャスター
「それは良くないという意味ですよね」
野口氏
「私は良くないと思いますが、ただ、どのレベルの為替レートが最適なレートかということを判断するのは非常に難しいですね。それは私にはわかりません。ただ、現在、起こっていることは、こういうことであるということは言えますね」
反町キャスター
「現在、起こっていることで今後の日本経済の成長を視野に入れた時には、マイナスであるという話?」
野口氏
「マイナスの面の方が強いと思います。特に所得分配を睨むというのは、非常に危険だと思います。もう1つは、円安が進むと、コントロールができなくなると、悪循環に陥るんです。将来、さらに円安になれば、資産が日本から逃避するわけですね。それによって、さらに円安が進みますね。そうすると、とめどもない円安が進んでしまう可能性があるんです。日本売りですね。その危険が見えてきたと、私は思っています」

金融緩和ラッシュ 世界経済の現状は
秋元キャスター
「アメリカが金融縮小に踏み切ったあとでの世界の金融緩和の動きは何を意味するのか?」
片岡氏
「足下の物価状況、もしくは景気状況といったところの、それぞれの事情があると思うんですけれど、判断された中で金融緩和に踏み切っているということだと理解しています」
反町キャスター
「日本はこの状況をどう見たらいいのですか?」
片岡氏
「金融政策自体は諸外国の状況を見て行う話ではないですね。ですから、日銀もそうですけれど、国内の物価上昇率というものを見ながら政策運営をしていく話ですから、現在話題になっていますのは原油安の影響ですけれども、これが、たとえば、原油安のみの影響で物価が下がっているという話なのか、そうではなく、たとえば、景気が弱い結果として物価が下がっているのか。仮に景気が弱いとして物価が下がっているということであれば、ここは対応しないといけないという判断を各国それぞれの中央銀行がしていくということだと思うんですよね」
反町キャスター
「政策連携とか、あまり関係ないのですか?」
片岡氏
「リーマンショックが起こった時に協調的に政策を行うことはありましたよね。ただ、各国の物価の問題と言うのは、各国の中央銀行の問題であるので、各国の中央銀行が諸外国の影響等を考慮しがら、自国の物価を見て金融政策を運営していくという話ですね」

緩和縮小したアメリカ経済は
野口氏
「日本が追加緩和をして、それから、ECBが初めての量的緩和に踏み切りましたね。他方、アメリカは量的緩和から脱却しつつあるということですね。正反対の金融政策。EUの場合に、物価上昇率がマイナスになってきたからだと説明されているんですけれど、あの政策によってプラスに転じるとはちょっと思えないんですね。ですから、私は本当の目的は日本の場合も、ユーロの場合も同じだと思うんですけれども、通貨安が目的だと思います。通貨を下げるということですね。それによって輸出産業に恩恵を与えようというのが本当の目的だと思います。私は注目すべきはアメリカがそうした中でアメリカだけが唯一金融緩和から脱却しているんです。これができるのはアメリカの経済が強いからですよね、だから、緩和を続ける理由がないわけです。それによってたぶん今後ドル高、ドルだけが高くなるという状況が続くと思います。ただ、それが政治的に何の問題にもなっていないわけです。これは30年前のプラザ合意の時と比べると非常に大きな違いです。あの時のことを思いだしてみるとドル高のためにアメリカの自動車産業がダメになって、アメリカが悲鳴をあげて、世界で省庁会議をやったわけでしょう。現在まったく逆のことが起きているわけですよ。つまり、アメリカの産業がいかに強くなったかということですね。ドル高になってもまったく問題にならないような、そういう強さになっている。産業構造が変わったという点が非常に重要ですね。つまり、ドル一強というのはアメリカ一強経済が今後、出現してくるということですね」
片岡氏
「私は、私自身はアメリカが予定通り利上げに踏み切るのかどうか、と言うのは、ちょっとまだ不透明な状況かなと見ていますね。もちろん、2014年、年末の時とかかなりアメリカは好調でした。ただ、最近だと強い指標が出てきていないといったところもありますし、たとえば、金融緩和をやめて出口にいきましょうといった時に必要になってくるのは、将来予想される物価上昇率。これはいろんな方法で推計されるんですけれど、これがFRBの場合ですと、だいたい2%あたりに安定していて、なおかつ2%よりもちょっと上がるかなということが見込まれそうな時は、1つ利上げをするタイミングになってくると思うんですね。もしくはアメリカの長期金利が上がってくると。急速に上がってきて金利が正常化するというタイミングが出てくるという話があるんですけれど、現在申し上げた予想される物価上昇率、それから金利といった条件を現在アメリカ経済は、私は満たしていないと思うんですよ。もちろん、調子が良いのは事実ですけれど、ただ、この状況の下ではやめに出口政策に踏み込む、金利を上げるということになると、アメリカ経済が腰折れする可能性というのは実はあるのではないかなと思うんですね」

今後の日本経済予測 アベノミクスに足りないものは
秋元キャスター
「安倍政権の経済政策に足りないものは何なのかについては」
片岡氏
「現在、何が起こっているかと言うと、今回のGDP統計からも明らかなように、消費税の増税の影響からなかなか抜けきっていないというのが、2014年の状態です。アベノミクスが始まって、1四半期が経ちました2013年の1月から3月期、総需要と総供給のバランスを示すデフレギャップというのがありますが、だいたい17兆円だったんですね。今回の結果を受けて、2014年10-12月期というのは、おそらく10兆円台から15兆円弱くらいなところですね。これは何を意味しているのかと言うと、要は、2013年から始めたアベノミクスという話が増税によって元の木阿弥になってしまったということを端的に示しているんだと思うんです。ですから、何をしなくてはいけないのかということで言えば、最初にアベノミクスで考えたデフレ脱却という話をきちんと強化をしていくということが重要だと思います。2015年の4月以降になりますと、前の年から始めた物価上昇率というのは原油安の影響もあって0%代前半に落ち込むということですね。ですから、2014年をインフレ懸念の時代だと捉えるのであれば、2015年は再びデフレ懸念の時代が起こる可能性が私はあるのではないかと見ています」
野口氏
「世界経済は1990年代に非常に大きく変わったんです。まず新興国が工業化した。それから、情報技術が転換したんです。それに対応できたのかどうかということが非常に重要です。日本は残念ながら対応できなかった。古い産業構造のままとどまってしまったわけです。先ほど、アメリカ側の一強体制になったというのは、プラザ合意の時と比べるとアメリカの経済構造は一変してしまったんですよ。それと同じような構造変化が日本はできなかったというのが非常に大きな原因ですね。従って足りないものは何かという質問ですが、1番重要なのは基本認識です。要するに、何が重要か。つまり、この変化というのは金融政策とか、あるいは物価上昇率をどうするかとか、そういうことでは解決できない問題である。経済の構造の問題、産業構造がどうなるかという問題であるということです。その認識の転換が1番重要です。高度成長期型の製造業のようなものを復活させていく、設備投資が70兆円になればいいとか、そういうレベルの話ではまったくないということが重要ですね。それから、財政再建の話ですけれども、2020年度で黒字化が無理であると。これは政府も認めましたね。ただし、重要なことはそれ以外にあるんです。それ以外にというのは、黒字化というのはプライマリーバランス。基礎的財政収支と言っていますが、つまり、国債費とかを除いたものです。だけども、問題は実は国債費です。特に金利が上がると国債費が増えてしまうということが問題ですよ。従ってプライマリーバランスだけを論じるのではなくて、全体の財政収支を論じることが問題ですね。これについても政府は試算をしているのですが、その試算によりますと国債残高の対GDP比は徐々に下がっていくとなっているんです。かなり最近から下がってきます、徐々にね。ただ仮定によっているんです、つまり、金利の見込みが低すぎるんです。現在日本の長期金利は非常に低いですよね。しかし、それが将来上がっていく。上がっていって、最終的には4%ぐらいまで上がるのですが…という政府の見通しですよ。しかし、それよりも前に、GDPの伸び率の方が2020年までは高いです。だから、GDPが増えて、金利が増えないということになっていることの必然的な結果です。仮定を変えれば変わってしまうんですね。さらに、政府の試算は2023年までなのですが、その後で問題がくるんです。金利があとから上がっていくわけですから、あとから国債費の残高が上がってくるんですよ。つまり、そういう意味で言うと、日本の財政は非常に深刻な問題を抱えていて、2020年に黒字化できないどころの話ではないんです。大変大きな問題を抱えている。ポイントは金利の見通しだということですね。現在が異常に低すぎて、それが正常化すると日本の財政はもとより、たぶん日本経済は戻らないだろうと考えられるんですね」
反町キャスター
「その時、金利4%で日本はどうなっているのですか?」
野口氏
「国債残高の前に国債費が払えなくなるんですよ。国債費が10兆円ぐらい。一般会計予算の10%ぐらいなのですが、現在0.6%ぐらいですね、それが4%になると、5倍、6倍ですね」
反町キャスター
「60兆円、毎年払わなければいけない?」
野口氏
「すぐにそうならないのですが、かなりはやく新しい金利に変わってしまうわけです。ですから、国債費が50兆円、60兆円になるということですね、100兆円の一般会計予算のうち。そういう財政はおよそ考えられないですね」
片岡氏
「4%ぐらいというのはどういう状況で起こるかという話をさせていただきたいのですが、潜在的な成長率が、政府は実質2%成長を目指していますので、そこで2%。将来の物価上昇率というのは日銀が2%のインフレ率をコミットしていますので、2%。足して4%というところがだいたいの基準になっていると思うんですね。この4%の金利になった時には当然実質成長率2%、物価上昇率2%、名目で4%成長しているという話が出ているわけです。そうなりますと、税収も現在よりも増えているわけですよね。ですから、国債費が仮に上がったとしても、それを税収である程度担保するのは可能。それから長期金利の拡大というものが、そのまま国債費の拡大になるかというと、それは違います。国債というのは、金利は変動金利ではなくて固定金利です。たとえば、国債を購入します、払う時には当然金利が動いているわけですけれども、買った時の金利で評価するわけですから、野口先生がおっしゃったことは、将来においてはもちろんあるのですが、現状、低金利で借りているものについては購入した時の金利で評価されてくるわけなので、将来上がったとしても、それをもって還さなければいけないという話ではありません。そういった意味では、金利が高まったのと同じ分だけ国債費が上がるという話ではない」
野口氏
「国債の金利の支払いですが、発行する時に市場の情勢を見ながら、利回りを決めるわけですよね。その利回りは市場金利が上がれば上がるんですよ。つまり、国が払う利払いが増えるということです。それはすぐに変わらない。借換債が新しい金利になっていきますから、徐々になってくるのですが、現在のペースで行くと、だいたい5年ぐらいすると9割ぐらいが新しい金利になってくるんです」

野口悠紀雄 早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の提言:『高い生産性の産業(をつくる)』
野口氏
「これは先ほど言いましたように、世界経済が大転換して、しかし、日本は古い。だから、生産性の高い産業が必要だということですが、もう1つ先ほど申し上げなかったのは、日本で現在唯一の成長産業というのは医療、介護ですよ。それが将来増えていく。労働の供給が減っていく。従って2050年ぐらいには労働力の4人に1人が医療介護の従事者になってしまう危険があるんです。たぶんそういう経済は維持できないんですね。そういう中で必要なのは、高い生産性の産業があって全体としての生産性の低下を防ぐ。これがこの意味です」

片岡剛士 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の提言:『アベノミクス再起動』
片岡氏
「アベノミクスという意味ではあと数年という話かもしれませんけれど、いずれにしても金融政策、財政政策、成長戦略という話は、日本を成長させるためのパッケージでは、これしかないのは事実です。ですから、これをいかに強化、発展させていくのかというのが問われるんです。それから、再分配政策をどうしようかという話はアベノミクスの3本の矢に入っていないわけですが、そこも是非やっていただきたいと思っています」