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2015年2月11日(水)
ユーロ危機再燃か ギリシャ対EUと日本

ゲスト

中島厚志
経済産業研究所理事長
マルティン・ポール
筑波大学准教授
村田奈々子
東京大学特任講師

揺れる欧州の政治・経済 ギリシャ支援交渉の行方
秋元キャスター
「現在、大きな山場を迎えているギリシャ債務問題の交渉の行方です。何をどう揉めているのか。まずはギリシャとEU側との対立のポイントをまとめました。現在ギリシャはトロイカという、EU(欧州連合)、IMF(国際通貨基金)、それから、ECB(ヨーロッパ中央銀行)から緊縮財政を条件に、およそ2400億ユーロ、日本円でおよそ32兆円ですけれども、これを借りています。32兆円という額は、ギリシャの2014年の国の歳入のおよそ4.6倍にあたる莫大な債務ですけれども、しかし、1月の総選挙で、反緊縮財政を掲げる急進左派連合が政権をとりまして、EU等に対して抜本的な見直しを要求しています。それに対してEUは継続が必要だと反対しています。このままでは、借りたお金は返せないと、ギリシャ側はこの2400億ユーロの債務を減らすように求めているのですが、これにはEUは応じていません。現在の支援策が今月末までの支援策ということで新たな支援策がまとまるまでのつなぎ融資をギリシャ側が求めているんですけれども、これに対しても、EU等は否定的な姿勢をとっているわけですが、ギリシャを取り巻く状況はかなり厳しいわけですよね。この緊縮は嫌だし、お金は全部返せないけれど、つなぎで、さらに、貸してほしいと、何かちょっと虫が良すぎるのかなという感じもするんですけれども」
村田氏
「お金を借りておきながら返さないというか、減額してくれというは、第三者的には非常に虫が良すぎるのは確かですけれども、現実にギリシャの国の中で生きている人にとってみれば、本当に生活が疲弊していまして、特に中下層のギリシャ人にとっては、日々の生活がままならない状況の中で、この5年間やってきたということもありますので。今回、反緊縮を掲げる急進左派連合が勝ったというのも、彼らが言っていることが本当に実現するかどうかということは客観的に見れば、理性的に考えると、実現がそんなに簡単にできるとは思っていないですね。けれど、5年間緊縮策に耐えてやってきて、逆に、景気が良くなるどころか悪くなっている。そういう中で絶対的に実現するとは限らないけれども、1つの変化を求めて、今回は反緊縮を掲げる急進左派連合が勝利を収めたということになると思います」
反町キャスター
「やってみるという方向が緊縮財政にサヨナラし、払えないと居直って、さらに、追加の追い貸しを頼むというこの姿勢ではなくて、たとえば、放漫財政が続いていた期間に、やたらと豊かな暮らしをした公務員とか、莫大な年金を享受した人達もいるわけではないですか。国内における格差是正とか、放漫財政の期間に儲けた人達から取り立てるという方向ではなくて、なぜEUにツケをまわすのか。この議論はないのですか?」
村田氏
「もちろん、現在、税金の財政の改革も進んではいます。けれど、結局もともと国民の3分の1が払うべき税金を払っていなかった国。それがこの2年間で変われるかというと、なかなかそうもいかない。そうやっている間にも景気は悪くなっていく。でも、返していかなければならないお金はある。あとEU全体の流れとして反緊縮ではもうダメではないかと言っている経済学者もいるわけですね。そういう流れの中で実際ギリシャが実験台みたいになっているわけですから、そういう中で現在、反緊縮として打って出て、民主的な方法で政権を握れば、ある程度の風向きが変わるのではないかという読みがあるのかと思います」
中島氏
「確かに現在のお話にもあったようにギリシャ経済はこの2年、3年で相当、緊縮の成果があがっているんですね。たとえば、財政再建で見ても、利払い費でさえ高いものですから、ちょっとこれを外して考えても黒字です。昨年、黒字になっているという計算ですよ。それから、緊縮政策も、たとえば、公務員が最大3割、給与をカットされているとか、年金の支給も最大で15%カットされているとか、実質賃金も国全体ですけれど、2割ぐらい、2000年比で下がっているんですね。ですから、ピークの上がっているところから見ると3割以上落ちているという状況がありますのでギリシャの国民にとってみたら、ここまでやったと。成果が上がってきたということで、少し見直しをしてもらっていいのではないかという気持ちがあると思うんですね。私はそう見ていますね」
秋元キャスター
「ポールさん、ドイツはギリシャの姿勢をどのように見ているのですか?」
ポール准教授
「ギリシャのやり方ですけれど、これまでですが、前政権がおそらく問題をつくってしまったのではないかと思います。そのために現在の政権が状況を変えようという形の策に出ているんだと思います。現状を変えようとしていると思います。そのために政権は現在権力をもって、いろんな問題を解決しようとしていると思います。チプラス首相が何をしようとしているのかということですけれども、国民の傷ついた心というのを治そうとしているんだと思います。先ほど、おっしゃられましたように、チプラス首相がそこのところを主張したいんだと思います。と申しますのも国民生活が疲弊してしまっているわけですね。成長を促したいと思っているわけです。さらに、またチプラス首相ですが、ギリシャだけではなく新しいヨーロッパの政策というものをつくり上げたいと思っているんだと思います。新しいヨーロッパの政策をつくろうとしているわけです。彼は大変知的な人物でありまして、教養もある人です。そういう意味で、体制の弱みがどこにあるのかというのはわかっているんだと思います。しかし、ギリシャが本当に何を意図するのかということは、私自身もわかりません。おそらく、チプラス首相は、とにかく私達に新しい資金は必要ないと言っています。しかし、反対に、私達に返済もしないと言っているわけですね。そういった意味で、私は、彼は勝負に出ているのではないかと思っています。賭けに出ているんだと思うんです」
反町キャスター
「ドイツ政府は、ギリシャの姿勢をどう評価していると見ていますか?」
ポール准教授
「ギリシャに対して、ドイツはギリシャに資金を提供しているわけであります。ギリシャは、資金は要らないと言っているわけですけれども、本当に、ギリシャが何を意図しているのかということを、ドイツの方で見守っていかなければいけないと思います」
反町キャスター
「見守るということは、ギリシャのやり方を暫くは支持するということになるのですか?どちらかというとドイツはギリシャのやろうとしていることに対して、批判的な姿勢もあるのではないかという印象も受けているんですけど、ドイツはギリシャがやることをそのままとりあえずやってみなさいという、そういう見守る立場ということでよろしいのでしょうか?それは果たして本当にユーロ圏全体のバランスのうえで、本当によろしいと、ドイツはギリシャの行動を評価しているのですか?」
ポール准教授
「ギリシャにとってのパートナーは、ドイツだけではありません。先ほど言われましたように、その他、第三者がいるわけです。トロイカがいるわけです。IMFもいますし、またユーロ圏もありますし、またECB(欧州中央銀行)もあるわけであります。ECBにおきましては、アドバイスする役割でありますけれど、そういった意味で、ドイツにおいてはその他の債権国と一緒に合意していかなければいけません。話し合わなければいけません。あるいは反対にギリシャが本当に全てのパートナーと話をしていかなければいけないんですね。ドイツは本当に一部なだけですね。ですから、ドイツだけが、唯一のパートナーではないわけです。ギリシャが何を要求しているかということを聞いて、それぞれのパートナー自身も皆異なって、理解があるわけですから、パートナー自身が考えていかなければいけません。行動をとるのはドイツではなく、ギリシャだと思っています」
秋元キャスター
「日本時間の明日の未明からベルギーのブリュッセルで、ギリシャ問題を協議するため、ユーロ圏財務相臨時会合が開かれる予定ですが、明日からはギリシャのチプラス首相が初めて参加するEU首脳会談が開催されまして、ドイツのメルケル首相とギリシャのチプラス首相の首脳会談が開催されるのではと言われています。しかし、交渉の時間というのは限られていて、今月末28日には、EUによる金融支援プログラムの期限を迎えるということです。中島さん、この交渉の時間は短いわけですけれども、交渉の行方はどのようになると考えますか?」
中島氏
「私自身は、交渉のやりようがあるのではないかなと。と言うのは、現在、お話があったように、ギリシャに対してドイツが中心かもしれないんですけれど、厳しい姿勢であろうと。他の債務国も耐えている中で、ギリシャに対して甘く、債務軽減をするわけにいかないところですが、他方で債務軽減のやり方というのはいろいろあるんです。たとえば、実際に返す年限を長くすると。返す金額は同じ。ただ、返す期間を長くすれば、1年ごとに返済する金額は減るわけですね。あるいはこれまでの金利はともかくとして、これから払う金利は減免してあげるというのがあるんです。ですから、金利を払わないということではなくて、払うんだけれども、極端に高い金利ではなくて、低い金利でもいいよというようなことというのはあり得ることなので、私は、交渉の仕方はあるんだと思うし、しかも、さらに加えて言えば、現在のお話に即して言えば、ともかく現在ヨーロッパ自体も景気が悪いわけですね。特にユーロ圏の景気はもっと悪いわけですよ。その1つの理由としては、南欧諸国は債務の返済で苦しんでいるところが、財政健全化を言われている。財政健全化を指標で見ると、アメリカ、日本よりはるかに良い数字が出ているんだけれど、さらに、そこにウェイトがある。そろそろ財政刺激の方向があっていいのではないかと。フランスもそういう立場に近いです。ただ、それをユーロ圏とか、EU全体のコンセンサスに持っていくのができていないんです。それは経済政策と経済と財政のバランスをどこでとるかという座標軸が、危機が終わったとすれば、もうちょっとバランスを経済成長の方に戻していいのではないかという、そういう議論が現在ある程度、背景にはあるし、そこについては、ギリシャだけではなくて、他の国についても、ややそういうものを支持する。フランスはそういう傾向が出てきていると思いますけどもね」
反町キャスター
「ポルトガルとか、スペインとか、いわゆる南ヨーロッパと言われる国々。たとえば、今回ユーロ圏各国がドイツを先頭に、ギリシャはいいやと。ちょっと大目に見てやるよとなった時に、他の国から、うちもということになるのか、ならないのか。これはどう見ていますか?」
中島氏
「なりますね」
反町キャスター
「なったらどうなっちゃうのですか?」
中島氏
「そこはレベルを揃えないといけないですね」
反町キャスター
「皆、将棋倒しでバタバタと借金踏み倒しになってくるのですか?」
中島氏
「踏み倒しではないですね。どうやって軽減策をやるかというところは。それはギリシャだけ極めて差がある形で優遇するというわけにはいかないでしょうね」
反町キャスター
「それはユーロ全体、ないしはヨーロッパ経済にとってはどういう影響をもたらすのですか?良いことですか?」
中島氏
「これは軸足をどこにとるかというのが1つのポイントですけれども、だけど、もう1つのポイントは、軽減した時、要は、誰が最大債権者だと。お金を出している最大の人は誰かというと圧倒的にドイツですよね。ですから、まさにおっしゃられたように、ギリシャにやったのと同列レベルでスペインにいき、ポルトガルにいき、等々なってくると、そこまで果たして認められるかというのはありますから、だから、交渉の余地というのは狭められるんですけれども、ただ、その交渉の余地がないということではないですよね。先ほど言ったように、少し軽減するというのは、実質的な軽減というのは、いくつか手法はあると思いますね」
反町キャスター
「ポールさん、現在ドイツの中で、その言われたような広がりですよね。ポルトガル、スペインにどんどん広がっていくのではないか。そういう懸念はそうなった時にドイツがどのくらいの貸出をまた新たにしなくてはいけないのか。そういう深刻具合、心配の具合というのは上がっているのですか?」
ポール准教授
「もし、そういうことになった場合ですけれど、ユーロのシステムというのは本当に終焉していくのでしょう。それは明らかに終わってしまうと思います。現在、ポルトガルですけれども、EUの金融安全網から外れたいと思っています。かなり成果は出ています。スペインにおきましても成果が出ていますね。そういった意味で、スペインとポルトガルにおきましてはおそらく選挙があるということ。もしかしたら、1つのリスクなのかもしれません。と言うのは、選挙の結果がどういうことになるかということですから、ギリシャの政権の行方にもかかってきます。もしギリシャの政権が成功するのだとすれば、ポルトガルとスイスの方に波及していくものと思われます。それから、重要なことですが、これから交渉していくという意味では、ギリシャと、その他の国々との交渉の行方を見ていかなければいけないと思います。また、ギリシャの政権というのは国民に対して約束をしているわけですね。ですから、本当に私達は債務をこれ以上返したくないと言っているわけです。その点も重要だと思います」
反町キャスター
「ドイツとしてはギリシャもポルトガルもスペインもそういったところの借金がどんどん減らされ、どんどん先送りされることについては…。ユーロ圏が終わると言われましたけれども、そのぐらいの危機感を持ってドイツは見ている。こういうことでよろしいですか?」
ポール准教授
「ちょっと誤解かもしれません。私は、ユーロ圏が終焉すると言いましたけれども、実際にそう思っているわけではありません。そうではなく、ギリシャというのがおそらく離脱するということを言われていますが、かもしれません。しかし、経済的に見ますと、これは比較しますと、日本のどこかの県が日本ではなくなるということ。そのぐらいの意味で、経済的にはそれほどのインパクトは大きくないと思います。ですから、ギリシャがもしも離脱したとしても、EUはどうにかやっていくことができると思います。しかし、政治的には大きな問題になってしまうというのがあるわけです。そのギリシャというのは、ヨーロッパに対して大変重要な部分であります。文化的にも重要なわけですね。ですから、ギリシャはEUに属しているわけです。多くのドイツ人達も、ギリシャがこのヨーロッパの中に留まるということを希望しているわけであります。これに関しましてはコンセンサスがあるわけです。重要なことは口の戦争と申しますか、売り言葉に買い言葉。こういったことをやめなければいけないと思います。あと、ですから、しっかりとした非公式な形で、おそらくカメラがないところで会議をする、議論をする、意見を交わすことが私は重要だと思っています」

EU成長は限界?今後は
秋元キャスター
「現在のEU加盟国と、統一通貨ユーロを導入している国です。1993年、EC(欧州共同体)から発展する形でEUが発足し、当初は12か国だったのですが、現在は、加盟国が28か国まで拡大しています。2002年統一通貨ユーロが導入されて、ユーロ圏は現在19か国に広がっています。実際に今年はEU各国の政治が大きく変化する可能性があると言われていて、4月にはフィンランドの総選挙、5月はイギリス総選挙、イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票が実施されると言われています。さらに、ポルトガル、デンマーク、ポーランド、スペインと、各国で総選挙が実施されるんですけれども」
中島氏
「EUはかつて統合拡大とか、統合というのは東の方ですね、ですから、EU加盟国がどんどん東欧諸国に増えていく。その拡大の中で、むしろ活力が上がって、求心力もあってEUに入りたいという国がヨーロッパの中で出てきてという好循環だったわけです。ところが、統合拡大も一巡してしまったと。どこに求心力を求めるのかというので、たとえば、通貨統合が出てきたのですが、これも現在、ちょっと行き詰まっているかのような動きになってきている。はや過ぎたかもしれない、通貨統合自体がですね。ということになった時に、中に入っているメリットというのは何だということです。ですから、経済的に国境がなくなりますから、自由に人の移動ができる。自由にビジネスもできると言って、おおいにメリットを感じる国は、EUとして参加したいということであっても、逆に、それだけでは飽き足らない国というのは今後、出てくる可能性はそんなにはないと思いますが、金融立国、いわゆるロンドンシティがある。これがGDPの4割ぐらいを稼ぐような、大変大きなビジネスの源泉になっているようなイギリスは、そういう傾向が強いと思いますよね」
反町キャスター
「EUの拡大のテンポ、それと現在の広がり。もともと、たとえば、東側がいて、軍事的な緊張感もある中で、こちらはまとまらなくてはいけないというところが、反対側がいないようになっちゃった中で、敵がいなくなった集団って脆いではないですか、一般論ですよ。そういう中で、EU自体が広がり過ぎてバイイングパワーがないのではないかと。だから、仲間を増やしてもしょうがないのではないか。そういう組織論にならないのですか?」
中島氏
「EUが求心力をどう持つかというところが、確かに先ほど、東方拡大だといったわけですね。ただ、それもある程度見えてきた段階で、次は何だという議論が結構あったんですね。その時に、要は、次はEUの社会化だと。要するに、社会化とは何かというと、社会保障とか、そういうもののレベルを、質を上げて、充実をして、むしろ統一的にEUの中で整備していくという、たとえば、そういう議論がされたこともあったと。いずれも各国の財政事情あり、経済事情あり、難しいんですよ。従って、現在私自身は景気が悪いから、このまま中にいるメリットはいったい何だという議論があると同時に、反移民は、まさにその反動になるわけですけれども。加えて求心力をどう突き詰めるかという議論がなかなか見いだせないできたという、この数年間が1つ、EUの当面の限界をさらけ出しているところはあると思うんですね」
反町キャスター
「縮小した方がいい、ギリシャが出て行くならしょうがないみたいな、そういう議論にはならない?」
中島氏
「それはない。むしろ方向性は欧州の統一、ですから、統合にありますので」
反町キャスター
「まだ拡大基調ですか?」
中島氏
「ですから、それは経済の規制をなくして人、物、金が自由に動けるというのがEU。その次に通貨を統合し、財政を統合し、1つの国として連邦国家としてというような形をつくっていくということで、事実上の大統領までつくったわけですね。そこまできているんですね。ただ、実態的に各国の人達自身がそこまで意識がいっているのか。それは大変好ましいことに、もう自分達の独自の国を捨ててもいいということには、全然なっていないわけですよ。ですから、その間、落差を埋める手立てが結構、難しいことになっていると思いますね」
村田氏
「ナショナリティクスというか、国民、国家というフランス革命以降にできた国の形を超えるところで、ヨーロッパ、EUというものを目指しているところが、国境というものを、経済がグローバル化して、経済の方が比較的国境は超えられたんですね。だけども、人の気持ちですね。ナショナリティ、自分は何ものであるかというところがなかなかそこが変えられない」
秋元キャスター
「そこはいつか超えられるものなのですか?」
村田氏
「いや、EUの目標としてはそういうところまでいきたいというのがあって、つい最近というか、EUで行っているユーロバロメーターという統計、半年に1回行われているのを、たまたま先日ちょっと見たんですけれど、面白いのは、あなたはどれぐらい自分のことをヨーロッパ人と思っていますかというアンケートがあって、ギリシャは非常に低いですね。ヨーロッパ人というよりもギリシャ人であると。でもって、一方、ユーロというお金はいいものかと。ギリシャ人は圧倒的にいいと言っている。面白いのが、デンマークですけれども、デンマークはユーロを使っていないですよね。クローネです。デンマーククローネですけれども、デンマークはヨーロッパ人としてのアイデンティティがユーロ圏の中で1番か、2番だったんですよ。1番、優等生的なのがドイツで、ユーロというものはいいものだと。しかも、自分達はヨーロッパ人でもあるという、非常に優等生的な回答をしているという、そういう統計が出ていて、だから、それぞれの国の枠組みはなかなか変えられないし、あとは経済状況、教育ですね。ユーロというもの。そのEUというものの、自分達にとっての在り方、教育というものが非常に大きいんだと思います」

ユーロ圏経済の現状と問題点
秋元キャスター
「何が原因で経済が停滞しているのでしょうか?」
中島氏
「全部を合成していますので、地域で分けなくてはいけないですね。比較的景気が好調であったドイツないしオランダといった国々と、それから、財政再建第1で、一時はマイナス10%の経済成長率をやってきて、5年間マイナスだったのはギリシャですね。経済成長が5年もマイナスだったんですね。そういうのが一緒になっていますので、そこは分けて考えなければいけないですね。ただ、足元の問題は昨夏ぐらいのウクライナ情勢の深刻化、ロシアへの経済制裁というのもあって、1番そこに面している、ドイツの経済が急激に減速したんです。従って、いわゆる二極化していてもリード役がいたのが、リード役がちょっと減速したものですから、全体的に悪くなっているというのが現状で、ただ、足元はそれに対していろいろなプラス材料が出てきて、1つは欧州中央銀行が全体を支えるために欧州中央銀行としては初めての大規模な金融緩和をやったということがあります。それに加えて世界全体で共有できる話ですが、原油安が来たと。さらにドル高というのが昨年から続いてきていますので、それと欧州中央銀行の量的緩和も含めて、ユーロ安が進んでいる。これも貿易とかにプラスになるということで、現状ではこれからの見方というのはさすがに底入れだろうということです」
反町キャスター
「ドイツが減速した原因というのは、たとえば、中国や他の国の減速がそのままドイツの輸出産業にダメージを与えたみたいな、そんな感じなのですか?」
中島氏
「ええ。幾つか理由があって、1つは輸出面でいうとおっしゃる通りです。最大の得意先は、輸出の6割は域内です。ところが、域内の国が財政再建最優先で景気がドイツよりもさらに悪いですから、これがなかなか輸出が増えるというより、輸出は減るという形になったりしているわけですね。それに対して域外4割の1番のお得意様が中国ですが、そこが現在、経済成長は依然として高い成長ではあるのですが、鈍化してしまっている。それ以外の国については、アメリカはいいですけれども、基本的にはむしろ東欧のロシアとか、そういう国に対して経済制裁ということなので、輸出環境が悪くなったというのもありますね」
反町キャスター
「南北問題を考えた時に、ドイツは、南北問題のメリット、デメリットを現状どう見ているのですか?」
ポール准教授
「ヨーロッパの中では常に格差がありました。それは国の中でもそうですね、日本でもそうだと思います。経済的に見ると、北海道を見て、その他の東京と比べると違うわけです。そういう意味で格差というのは、違いはいつもあります。違いがあっても私はいいと思っています。これは国民経済を見まして、国の中でも、国を越えた中でも経済的な違いはあるというのは当然だと思います。成長を見ていますと成長が低いような地域もありますし、また賃金が低いようなところもあるわけですよね。生産がすごく安いところもあると思います。そういったところでは、生産が安く出てくるような地域もあるわけです。これから将来的にいきましてもドイツは問題ないと思います。そういった意味で大きな問題はないと思います、違いがあったとしても。これまでドイツというのはおそらく2000億の貿易収支の黒字があったわけであります。つまり、ドイツの製品というのが世界各国に販売されていたということでありますね。ロシアの危機ということでも現在、輸出が少し減少しているということはあるかと思いますけれども、しかし、EU全体で見てみますと、2015年におきましてEUの成長率は1.3%を予測しています。また2016年は1.9%になります。これは中国の7%と比べますと、少ないかもしれませんけれど、しかし、熟成した国民経済からということで見ますとかなりいい数字だと私は思っています」
反町キャスター
「格差ということを考えた時、南北格差、ヨーロッパ域内に比べて南北格差を見た時に、ユーロ導入というのはギリシャにとって良かったのか、悪かったのか。良かったんだと思うんですけれども、当面は。現在になってはどうなのか?」
村田氏
「ユーロを導入してから、ギリシャのバブルが始まったと言えると思いますね。それ以前はバルカンの最南端の貧しい国というイメージ。実際そうでしたし、30年、40年も乗っているような車が走っているようなところでした、アテネであってもそれがユーロに入って、次の2004年のアテネオリンピックですね。あれを契機に主にドイツから様々な投資が、インフラも地下鉄をつくったり、新しい空港をつくったりということで、お金が入ってきた。あとはユーロ導入後、それまでクレジットカード持ったことのない人達が易々とクレジットカードがつくれるようになったと。パリやロンドンと同じような、いわゆるブランドのお店が町中につくられていた。ギリシャ人は何て言うんでしょうね、特に女性はゴールドの貴金属、大きいモノをちりばめて歩くというのが非常に好きでして、1980年代の日本のバブルの時期のように、ブランドのバッグを持って黄金の宝石をつけてというのが本当にオリンピック以降、見られるようになって、いったん贅沢を味わってしまったんですね。そこから現在、この状態になったというのがきついところ、いわゆるあとからEUに入った東欧諸国ですね。結局、ユーロ圏に入ったとしても、贅沢を感じるまでにまだいってないです。そこでギリシャがこういうことになって、ある意味、反面教師みたいなところがあると思います。ギリシャはいくとこまでいって、いきなり2001年以降、オリンピックを経て、10年弱の間にすごい勢いでバブル化というか、本当に贅沢な国民になってしまったというか、身の丈以上の生活をしてしまったと。そこから急に奈落の底に突き落とされた状況になっている」

ウクライナ停戦交渉の行方
秋元キャスター
「ウクライナの停戦交渉の行方をどう見ていますか?」
中島氏
「私は、どちらかというと経済からものを見ているのと、フランスに長くいたという立場で言いますと、確かに現在のドイツとアメリカの温度差というのはわかるんですね。なぜかというと、EU統合、欧州統合で、いわゆる欧州の中核として意識された地域はどこかというと、それはもともとで言えば、ヨーロッパというのは文明も、言語も、人種も1つだという原泉はギリシャとか、イタリアとか、そういうところ、ここから出てくるわけですが、それでいくと、たとえば、ウクライナ、ロシアは、宗教も慣習もキリスト教ではない。それから、文化圏としても、ローマの影響を受けている地域の外にあるという経緯があって、その意味では、むしろウクライナ問題というのはウクライナに判断させる問題であって、ウクライナとロシアの問題という色彩が強いんだろうかなと見えるんですよね。ですから、そこがむしろアメリカにとってみたら、ロシアがそういう形で出てくること自体が、世界の安定に寄与しないだろうという見方だろうと思うのですが、EU各国の首脳の見方からすれば、どちらかというとウクライナがロシアと調整をしてもらって、EU自体がウクライナに是非入らなければ困るという国としての位置づけとはちょっと違うんだろうと思います」
反町キャスター
「ドイツのスタンスをどう見たらいいのですか?」
ポール准教授
「ドイツの政策の目的というのは、第二次世界大戦のあとからでありますが、ヨーロッパが分裂することを阻止しようとしてきました。私自身も冷戦を体験した者であります。私自身、兵役をしなければいけませんでした。冷戦が終わったことを嬉しく思っています。現在、新しい冷戦があるという可能性ですね。つまり、ロシアとその他のヨーロッパという形で分裂が起きるのかもしれませんが、それは、ドイツの政策が目指すところではありません。経済的に見てもロシアにとっては資源をヨーロッパに輸出したいということであるかもしれませんが、ただ、政治的に見ると破滅的な状況になってしまうわけであります。軍事予算が全ての国で上がってしまうかもしれないですね。とにかく、ヨーロッパはこの2年間、ギリシャ危機、ユーロ危機など、そういった形で多くの危機を体験してきているということがあります。そういう意味で、ヨーロッパが分裂してしまうということに大変な懸念を抱えています」
反町キャスター
「ドイツとフランスは、ウクライナ問題に関しては政策の違いはないのですか?」
ポール准教授
「当然のことながら、EUの中でも少し意見の違いがあると言われています。微妙な違いはあるかもしれませんが、抜本的な違いがドイツとフランスの間にあるとは、私は思いません」
反町キャスター
「ヨーロッパの分裂というレベルの問題ではなくて、ドイツ一国の経済を考えた時にロシアとの関係悪化は避けたいと思っていると思うのですが、そこはいかがですか?」
ポール准教授
「当然そうです。ロシアはドイツにとりまして重要な貿易相手国になっています。現在のウクライナ危機を見てみますと新しいハイブリッド型の紛争というような形を見ているのではないかと思っています。誰と誰が交渉するのか、誰と誰が対立をしているのかということがわからないという意味で、状況が難しくなっていると思います」
村田氏
「ウクライナ問題に関してはギリシャがEUの共同歩調を乱す可能性が高い」
反町キャスター
「どういうことですか?」
村田氏
「ギリシャはロシアとビザンツ帝国以来、東のキリスト教徒というつながりで、心情的には非常に近いです。EUが自分達の言うことを聞いてくれないなら、自分はロシアの側につくと。親ロシア派の方に近づいて支援を求めると。財政支援というよりも、最終的にはそうなるかもしれないですが、EUが共同歩調でウクライナ問題について何かやろうとする時に自分はそれに同調しないというような姿勢を見せかけている。ウクライナ問題を取引材料として、EUの中でギリシャの主張を通そうというような動きが見られないわけではないし、そこはこれから注目していくべきところかなと思います」

村田奈々子 東京大学特任講師の提言:『ヨーロッパの虚構性』
村田氏
「日本にいるとどうしても日本とヨーロッパとか、日本とアメリカというふうに、ヨーロッパというのはあたかも一枚岩のような感覚を抱きがちですが、今日、皆さんとのいろいろなお話で出てきましたけれども、メルケルさんの言うヨーロッパとか、オランド大統領の言うヨーロッパとか、チプラスさんの言うヨーロッパというのはそれぞれ違った内容を含んでいるということを、日本でヨーロッパの国々と交渉する際に頭の中に入れていただいて、ヨーロッパというもの、EUというもの、ユーロ圏というものを見ていただきたいと思います」

マルティン・ポール 筑波大学准教授の提言:『Vielfalt ist Starke』
ポール准教授
「多様性ということです。私が思いますヨーロッパの強さというのはこの多様性、文化的、あるいは意見の多様性にあると思います。つまり、いろいろな多様性の中で常にバランスをとり、競争をつくり上げ、その言葉は私どもの強さだと思うわけです。たとえば、その中で先ほど話に出たようなギリシャの新首相、チプラス首相のようなケースが出てくるかもしれません。しかしながら、そのような多様性によって、強さができると私は思っていますし、新しい製品が出たり、新しい技術が出てきたりすると思っています」

中島厚志 経済産業研究所理事長の提言:『経済連携の強化』
中島氏
「現在のヨーロッパの中で、経済連携を強化しろということではなくて、日本とEUとで経済連携協定を現在交渉しているんですね。そういうものを通じて日本とEUというのは親和性があると思うんです。これまでの話でおわかりのように、EUとか、ユーロ圏というのは経済格差もあれば、中で構造改革もやらなければいけない、低成長に悩んでいる。それから、デフレの懸念も強まっているということで、マーケットメカニズム中心で勢いのあるアメリカと比べると、随分日本に近い同じような課題を抱えていて、しかも、どうやってEUを拡大させるかということをいうと、日本と連携があると彼らも広がる、日本にとっても広がるわけですから、そういう意味での親和性と互いの協調性というものが、うまく一体でできるのではないかということで、そういう問題を両方で協力しあいながら解決してくということができる相手だと思うんですね」