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2015年1月30日(金)
『人質交渉期限』超え 緊迫続く解放交渉の行方は

ゲスト

大野元裕
民主党参議院議員 中東審査会客員研究員
吉村郁也
危機管理アドバイザー
山内昌之
東京大学名誉教授

日本人拘束事件 死刑囚との交換交渉膠着
遠藤キャスター
「まず1月20日、動画で72時間以内に2億ドルを要求してきました。24日には今度は静止画と音声で湯川氏殺害を示唆し、リシャウィ死刑囚の釈放を要求してきました。27日、同じく静止画と音声で今度は24時間以内のリシャウィ死刑囚と後藤さんの交換を要求。昨日、文字と音声で日没までにリシャウィ死刑囚と後藤さんの交換準備を要求してきました。期限から21時間近く経過した現在も動きはないんですけれども、大野さんは、“イスラム国”側の要求の変遷というのをどう見ていますか?」
大野議員
「最後のところが若干ポイントかなと思っていますが、英語だとわかりにくいのですが、3行目のところに、サジダ・リシャウィと交換をするために用意ができている、準備ができていることが、日没までと言っているんです。準備ができているというのが、実はポイントで、素直に読めば、交換の地点までその身柄を持って行くことなのかもしれないし、あるいは準備とわざわざ書いていること。つまり、日没までに交換をしなければならないのではなくて、準備ができていることが条件だということ。つまり、それは交渉が整うとか、あるいは交換の方法とか、そういったことを含めてですけれども、準備ができたのかどうかということを、“イスラム国”側からヨルダン側に投げかけているというのは、非常に興味深いところだと思います」
反町キャスター
「少なくともこの4段階の変化を見ると、目的が金なのか、人なのか。最初はお金だったけれども、途中から人に代わってきている印象が、見た目でいうとあります。“イスラム国”は、これは狙い通りなのか、それとも場当たり的に、その場その場で、要するに、国にとっての最大のメリットを得るにはどうしたらいいか。この場面では金を要求するのがいいのか、この場面では人を要求するのか、この場面ではヨルダン国の威信を傷つけるのがいいのか。その場その場で判断して舵を切ってきているのか。どのように見ていますか?」
大野議員
「アラブ人の交渉のメンタリティというところを考えると、大きく風呂敷を広げてドラマティックに、たとえば、極端な話、女性が値切り交渉をするのに最後泣いたりしますから。そこまでやりますから。そういうドラスティックな方法をとります。しかも、最初は高い球を投げると。その高いボールというのが、72時間以内に日本円にして240億円。普通考えると、なかなか妥協ができるところまで持っていくことすら難しいぐらいの金額。その時は、皆お金だと思っていても、私もそう思っていたんですけれども、それが交渉とかではなく、突如として、湯川さんは残念なことになりましたが、本気だぞということを示しつつ、違う条件に変わったとすれば、お金はもちろん、彼らはほしいと思うんですけれど、もしかすると、本音は最初からリシャウィ死刑囚、あるいはリシャウィ死刑囚を含めた“イスラム国”の捕囚となっている人達の解放なのかもしれません」
吉村氏
「リシャウィの釈放のことを絡めたことは、私は、1つの増幅効果、この事件の。日本のうえに、さらに、ヨルダンを絡ませて、解決をより難しくして社会的反響性というか、国際的な反響性を増幅させる狙いがあったのかと。それから、後段になってきますと、私は人質の交渉、身代金の引き渡し、身柄にしてもそうですけれども、場所が1番、現場に1番リスクがあるんです。交換の場所、身代金を受けとる。それは検挙する側からすると、それが最高のチャンスです。いろんな意味で、その場所というのは1番リスクが伴うから、その方法を進めるだけでも、通常は1週間、2週間、場合によっては30年前の事件だと6か月間かかったわけです、交渉も。ある日、突然どこどこに来いと言ってくるわけですから。そういったことも考えますと、まだそういう過程にあるんだなと見ています」

ヨルダン政府が抱える内情とは
遠藤キャスター
「“イスラム国”の交渉の鍵を握る国の1つであって、日本政府の現地対策本部が置かれているヨルダンの概要がこちらです。シリア、サウジアラビア、イスラエルなどに挟まれた中東の心臓部とも言える地理的な要衝で、国王による立憲君主制。人口はおよそ645万人で、その7割以上がパレスチナ系住民です。面積は日本のおよそ4分の1、イスラム教徒が9割を占めています。周辺の国々と異なり、原油を産出しておらず、衣料品の輸出などが主な産業です。また、対“イスラム国”有志連合に参加し、空爆にも参加しているというのがヨルダンです。山内さんはこうしたヨルダンの内情が、今回の“イスラム国”との交渉にどんな影響を与えると思いますか?」
山内教授
「ヨルダンという国家における最大の(問題は)、国王の問題というよりは、君主制、王政の維持ですね。ところが、ヨルダンは人口の70%とも言われていますが、パレスチナ人が多い。そうしたパレスチナ人にとっての王政というのはまた微妙な問題がある。こうした要件で、国家を成り立たせて、いろいろな多面的な要素と、ヨルダン政府に国王との関係に対して不信感を持たせていく。ヨルダン国王の支持基盤でさえ、ヨルダン川東岸の部族出身者。部族社会の出身が今回の空軍中尉だったわけです。そうした人達、空軍中尉の解放を巡って、父親をはじめとするヨルダン川東岸のまさにヨルダンの軸になっている地域。その人達が国王の宮殿の前で異議申し立てをし、いろんなリクエストをしています。死刑囚をまず解放しろと。こういうようなことというのは従来考えられない、考えづらいことだった」
反町キャスター
「たとえば、(パイロットの)お父さんは、息子の命を助けてくださいというようなレベルだと思っているんですけれど、そうではなく、単なる助命嘆願のレベルではなくて、反政府デモの力を持ちかねない。そういう意味ですか?」
山内教授
「結果としてそういう方向に行くと困るわけですよ。もともとそうではないんですよ、彼ら。だけど、子供の、つまり、ヨルダン国民に忠実な、ヨルダン国民の英雄を救うこともできない国家、あるいは国王というのは、先君、フセイン国王と比べた場合に、著しく統治能力が落ちるのではないかという疑問が出てきている。そうすると、国王自身の、そういうヨルダンにおける統治の正当性に関わってくるわけです。そこにパレスチナ人達の不満やイスラムの人達と結びつくと国王を支えている基盤というものの1つが確実に失われていくという、非常に危険なリスクをはらんでいることなのではないでしょうか。ヨルダンの抱えている人口構成上の問題、あるいは社会問題上の最大の問題、パレスチナ問題もそうですが、難民問題。これはイラク難民がおよそ40万人。それから、シリア難民が現在の段階でもって70万人はいるとされている。この難民をどうするか。パレスチナ人、ヨルダン川東岸のもともとの部族民。ヒジャーズ党に由来する王室の忠実な人達。これらから成り立っている国家をいかに統合をしていくか。これはアブドラ国王が1番苦慮しているところで、そのためにいろいろな国内的な手を打ってくるのですが、その打っていく中には、新しく“イスラム国”との人質問題というものが生じたというのが現状ですね」
大野議員
「経済のところがたぶん1番大きくて。その中の一例でいうと、イラク難民の方は投資を持ってきたので、現在でもヨルダンのアンマンの大きな投資物件というのは、実はイラク人が持っていたりするんですね。ところが、シリア難民というのは着の身着のまま出てきた人達が多くて、先ほど、山内先生がおっしゃったように認定されている難民だけで十数万人。それプラス40万人、50万人と言われていて、この方が問題です。よくマフラク難民と言われて、実は難民認定されていない、難民キャンプにいなくて、そのへんで仕事を見つけるために、現在油価が下がって、経済が悪くて、それでなくても悪い中で、実はヨルダン人の就職口を全部奪っちゃっているんですね。その結果、いわゆる失業率がどんどん増える」
反町キャスター
「アメリカに入ってくる違法移民みたいな、きちんとしたルートではないんだけれども、肉体労働的なところを皆とっていっちゃって、結局はアメリカの労働者が職を失っていく。そんな現象が現在起きているということですか?」
大野議員
「それは違います。経済難民というのは経済的なインセンティブから来るわけですが、シリアにはいられないんです。いられないから仕方なく出てきている。ところが、着の身着のまま出てきて、難民認定すらされない。先ほど、人道支援の話がありましたが、十分な国際社会の支援も彼らには行き渡らないとなれば、当然、働かなければいけない。学校すらもちろん、子供達は行けない。そんな中でお父さんはどうするかというと、それまでにどんなに学があってもですよ、どんなにそれまでのキャリアがあったとしても、靴磨きだか、ゴミ拾いだかわかりませんけれども、そういった仕事をやる。パレスチナ人を含めたヨルダン人の中で1番最下層の本来、不満を持ちやすい人達の仕事がなくなると、結果としてもともと不安定だったヨルダンの内政というものがもっと不安定になる。そこに国際社会がどうするかということで言えば、アメリカもそうかもしれないし、日本に対する期待も、実はヨルダン王政というのは現在、強く抱いていると思います」
反町キャスター
「そういう、まさに、基盤が脆弱に現在なっている中で、先ほどの山内さんと同じような、現在ヨルダン王政とか、ヨルダンがもうやらなくてはいけないことは、パイロットの命と、日本からの支援、さらに、非常にわかりやすく言うと、たとえば、何らかのリシャウィ死刑囚の後ろにいる後藤さんの生還ということになれば、当然、そこの背景には日本のヨルダンに対するさらなる支援というのが見えてくるわけではないですか。どちらなのか、両方なのか」
大野議員
「これは綱渡りで、進むも地獄、退くも地獄ですね。つまり、パイロットを仮に死なせてしまった。しかも、その時にヨルダン王政が何もしなかったという印象になると、当然の話ながら世論の反発がきます。さらに、リシャウィ死刑囚を解放してしまったとすると、2005年の時のインパクトというのはすごいです。私もヨルダンには長く住んでいたんですけれども、当時も、現在も名残がありますが、ホテルにバリケードが築かれるとか、すごくインパクトがあるんですね。その人を野に放って、仮にその影響が再びくるとすると、遠い日本にいくでもない、アメリカでもない。隣のヨルダン。そういう恐怖感をまた巻き起こす。従って、こちらに行くも地獄。しかしながら現在のまま、内政の状況でいくと、油価がすぐに上がって、誰かが手助けしてくれないとなると、実はじわじわと自滅の方向にいくかもしれない。そういった両方、どちらに進むも、退くも地獄の状況がヨルダンの選択肢です。従って、日本も優先させたい、パイロットも優先させたいと。それが現在のヨルダンの状況だからこそ、そういったデモが来ると、王宮で王様がご家族を招き入れて、それをテレビで映し出すとか、そういった少しでもガス抜きの方法を現在、積み上げているというのがせいぜいできていることなのではないでしょうか」
吉村氏
「アラブの春に続いた、イラクの崩壊がありました。そうしますと、この地域において西側諸国にとってヨルダンは最後の橋頭保、ここが防護ラインだと、最後の。大野さんがおっしゃったように非常に内政的にも難民の問題もあって苦しい状況になってきている。ここで西側諸国は何としてもヨルダンを支えなければならないという状況だと思いますね。ところが、今度の人質事件のハンドリング次第では、激震が走るでしょう。そうすると、ヨルダン国内でも液状化が起こってしまう。そうなってしまうと非常に難しい状態、局面に入っていくと思うんですね。だから、現在のヨルダンのおかれている立場というのは人質事件、それから、増幅した日本人の人質事件とも絡んだ中で世界的な注目を集めていますけれども、そういった域内の将来に渡る安定。こういったものに対する影響。現在、過渡期にきているような気がします」
反町キャスター
「その意味で言うと、ヨルダンという国がもしも、たとえば、真空管化した時にどう崩れるのかと考えると、中東全体の安定に大きな危険性をもたらすとすれば黙って見ているわけがないのは、たとえば、アメリカであったり、黙って見ているわけにいかないのはシリアに手を突っ込んでいた、たとえば、ロシアだったり、そういうロシアとか、アメリカという国が今回のヨルダンのいわば苦境に対して見える範囲で、ヨルダンと“イスラム国”の交渉をアメリカが手伝うかはわかりませんが、でも、パイプがあればするでしょう。そのへんのロシアとか、アメリカとか、ないしは過去に人質事案に絡んだフランスでも、スペインでも構いませんけれど、そういった国々が事件に関与している可能性。絡むとしたらどういう形で絡むのか。どう見ていますか?」
吉村氏
「前のビン・ターラル・フセイン国王の時代には域内のメディエーター、調停者としての役割をずっと果たしてきたんです。それを支えてきたのがJIDとか、素晴らしい情報機関。そういったところが内政の基盤を支えてきた。ところが、今回、これが崩れた、全部ドミノ的にいってしまう形。だから、周辺諸国が、欧米諸国も日本も含めて、ロシアを含めてかもしれませんが、そのことは読んでいると思います。だから、そういう状況を生んではいけないという危機意識、問題意識は共通認識としてあると思います」
反町キャスター
「それは黙って見ているわけではないという、そういうことですよね?」
吉村氏
「はい」
反町キャスター
「ただし、見えるようには出てこないというのも、またそれは事実ですか?」
吉村氏
「そうですね。それはそれぞれの利害関係と思惑ありますから、それは、トルコはトルコの思惑はあるでしょう。そういった中で微妙なバランスが動いているのではないかという気がします」
秋元キャスター
「山内さんは、大野さんと吉村さんの話を聞いていかがですか?」
山内教授
「シリアやイラク、ヨルダンという国も、オスマン帝国の中にあったわけです。帝国が1922年、1923年に最終的に崩壊しますが、この崩壊の過程というものが、トルコでは共和国ができたのに対して、こちらではいわゆるサイクス・ピコ協定というイギリス、フランスの押しつけた協定をもとにして現在の国家がつくられている。ですから、トルコは共和国としてかなり安定化していくというのですが、他のところは人為的な国境だったためになかなか安定性が少ないと。帝国の崩壊過程がまだ完全には終了していない。ですから、オスマン帝国の解体過程が完全に終了していないということの混乱、そのあとに出てくる新しい秩序というものが、十分に国民達や住民を納得させるものになっていない。その1番大きな被害者、象徴する被害者がこれまではパレスチナ人だったんですね。そういうパレスチナ人が多く住んでいて、さらにいろいろな点の矛盾が出ているのがヨルダンだと。その矛盾が現在ある面、表に出てきているというところがヨルダンにとって、非常に苦しいところだろうということだと思います」
反町キャスター
「でも、100年も前の話ですよね」
山内教授
「でも、歴史というのは、1世紀の単位で考えをもたないとダメですね」
反町キャスター
「逆の言い方をすると、人為的な線を引かれて、皆さんご不満があるのでしょうけれどという意味で、シリア、ヨルダンと分かれたとしてもですよ、100年経っても未だに100年以上も前の部族のつながりとか、その当時のオスマントルコ時代のものにもとづいて皆さんのメンタリティがあるとすれば」
山内教授
「それはあるとは言っていません」
反町キャスター
「あるとすれば、要するに、この100年の間、シリア、ヨルダンという国は国家としてのアイデンティティの確立とか、全然成功していなかったということじゃないですか。国としての統治ができていないから100年以上も前からの問題を引きずっているというこういう理解でよろしいですか」
山内教授
「それは現在の中東、特にアラブのレバント地域の抱えている苦悩ということでありますね。“イスラム国”が新しくつくられたサイクス・ピコ協定による、現在の中東の国境を真っ向から否定した。否定して、とかく国境を消滅させる、無視するという実態的にあうところでは成功をしている。そのことに対してのある種の痛快感。ある種の共感のようなものがまったくないかというと、そうではないんですよ。ただ、実際、彼らがそうしたことをしながらも、統治の行為としていえば、暴力とテロであって、それから、戦争や内戦というものを手段にしている。これは良くないと。しかしながら、もともとアラブ人が抱えている中東の分割の不条理というものについての疑問に対してある程度、“イスラム国”が1つの異議申し立てという面もあるんですね。そこが複雑なところです」
大野議員
「“イスラム国”が、一方で非常にご都合主義のことをしているんです。つまり、欧米列強がひいた国境云々という話もあるんですが、その一方で、たとえば、極めて初期に“イスラム国”は自分達が考えるシャム。要するに、最初はイラクとシャムの“イスラム国”という名前で始まっていますから自分達が支配する地域の地図を出しているんです。シャムというと、現在“イスラム国”の支配地域がありますが、現在の“イスラム国”の支配地域がだいたいこういうところですが、北イラクの地域、それから、トルコのアナトリアという地域、あるいはレバノン、パレスチナ、ヨルダン。こういったところは、概念としてはシャムに入る、入らないという議論があるんですね、これまでも」
山内教授
「でも、普通は入れないよね」
大野議員
「でも、アバウトですよね、議論として。ところが、彼らはきれいに北イラク地域とか、それを除いたところを最初から出しているんですね。つまり、トルコとは喧嘩しませんよ。レバノンとは喧嘩をしませんよ。北イラクとも喧嘩しませんということを、最初から宣言して出しているので、実は既存の引かれた国境のうえで彼らはISIL、最初の、あるいは“イスラム国”というのを立てているので、要するに、近代に対するアンチテーゼを装って、イスラムを標榜しながら非常に政治的です。ポイントは何かというと、なぜこの地域かということであって、それはイラクで、特に中部を含めて不安定が続いていると。シリアは内戦状況にあった。要するに、こういった不安定な状況を彼らは利用をし、そこに国というか、家を建てるということができた。たとえば、先ほどの話でもヨルダンとか、トルコで、たとえば、“イスラム国”はすばらしいですかと誰かに聞いたら、ほとんどの人は全面否定だと思うんです。ところが、イラクに快進撃をした6月頃には、実は私の友人で、会社経営しているやつもいるんですけれど、自分の会社の社員が有給をとって、“イスラム国”にボランティアに行っているんですよ。つまり、それはマリキ政権がひどいと、当時の。現在はマリキ政権ではないですけれども、それに対する自分達の境遇を変えなければいけないということで、有給ととってボランティアに行って、また帰ってきているんです」
反町キャスター
「ボランティア、つまり、戦争するということですか?」
大野議員
「その通りです。もともとその人は兵士ですから。イラクは大きな軍を抱えていましたから。シリアも同じです。アサド政権に対する勢力の1つとして期待する人達がいた。つまり、バックグラウンドが不安定です。それが、たぶん“イスラム国”のポイントであって…」
反町キャスター
「そうすると、イラクとか、シリアとか、それぞれの国の現在ある政権に対する不満を持っている人達の受け口として膨らんできたという意味?」
大野議員
「イラクは確実にそうです。だからこそ1か月の間に、こちらから入って来て、モスルを陥落させ、バクダッドの側へ行って、ファルージャとジャマディーを通って、再び今度キルクークに行って、ここで彼らは1回バツをつけるのですが、シンジャールに戻るという、これを約2か月の間にやっているんです。こんなことは普通は考えにくいですよ。それはその間に軍事的な量だとか、恐怖政治ではなくて、別の理由が大きく影響したと考えていいと思います」

ヨルダン政府の対応は
大野議員
「ヨルダンの国の成り立ちという形で見ていると、行政府と国王府、王宮というのは若干距離があって非常に大事な案件は王宮が握りこんでしまうんです。情報省を含めた行政の人達というのはいわばその次にいるようなイメージがあって、従って、たとえば、経済危機が起きるとすぐにでも内閣等は国王によって更迭させられてしまう。そういったことはよくあるパターンなので、これだけおそらく内政に大きな影響を与える案件ですから、国王がおそらく実際に指揮をしている可能性が高いと思います」
反町キャスター
「こういう時、たとえば、“イスラム国”との交渉や情報収集にあたる情報機関があるとすれば、普通だとそれだったら、国防大臣や情報大臣のもとにそういうものがあるのではないかなと思うんですけれど、組織的にはもしかしてその情報機関というのは国王直属の機関だったりするのですか?」
大野議員
「総合情報庁というのでしょうか。それが国王直轄の機関として機能していて、それは単純に対外情報だけではなく国内の安定もありますから、それも含めて王室の存続が彼らにとっての最大の命題であって、政府ではないです。王室の存続が最大の命題」
反町キャスター
「そうすると、今回の情報大臣のコメントというのはこれだけ見ていると、いかにも空中戦の話ばっかりで、実際に水面下でガチッと握って進んでいたらとても言えないような話を表で言っているわけではないですか。これだけを見ているとヨルダンはあれだけ言っておきながら、“イスラム国”と水面下のパイプを持っていないのかよというぐらいの。要するに、水面下のパイプがあれば生存確認ぐらいは普通するでしょうと。それを言えない、できていないということは、水面下の話はできてないという印象を受けてしまうんですけれども、そう思わない方がいい?」
大野議員
「要するに、これは表の顔で裏では何か進んでいると考えた方がいいと思っています。たとえば、国王はこれまでこの件に関して表で何も言っていませんよね。従って、とても言えないような状況の話はとても言えないんだということだと思うし、一方、中山外務副大臣が誰と会っているか。現地に現在、中山外務副大臣がいますけけれども、状況をよく見ていると、最初に会ったのはハサン王宮府室長ですね。つまり、王宮とやっているんですよ。ただ、プロトコルの問題があるので国王とはやっていないかもしれませんけど、そういった意味では何処と実際にやっていて、ただし、もちろん、情報大臣が言っていることは、彼らの意向を受けているのでしょうから、嘘でも何でもないわけで、そういったところは少し我々としても、二重の行政の成り立ちがあるということは頭に置いといた方がいいかもしれません」
遠藤キャスター
「なぜ“イスラム国”は証拠を出していないのですか?」
吉村氏
「それは私も違和感があります。なぜかというと人質交渉の時の条件というのはまずは生存確認です。それが確認できなくて、何で条件交渉かなという気持ちが基本ですね。それが出てこないというのは、私は理解に苦しむ。なぜなのかなと。それはまったくわからないです」
反町キャスター
「理由として考えられるのは何ですか?単純に言うと既にパイロットは殺されているのではないかという見方もありますよね」
吉村氏
「そういう見方も出てくるのでしょうけれども、じゃあそんなことで解放交渉にヨルダン側が乗るかというと、先ほど話が出ましたけれど、一方では一部情報があるのかもしれないと思うところもあります。ただ、確実に生きた状態で交換しなければいけない。そういったところの完全な保証がとれるまでは、そういう話は出せないですよね」
反町キャスター
「“イスラム国”がカチッとはっきりさせない理由はなぜだと思いますか?」
吉村氏
「そこが今回の事件の不思議さ。どこに目的があるのか。真意はわかりません」

トルコ協力の可能性
遠藤キャスター
「今回の人質事件にトルコがまた加わることになりましたが、トルコにとってはどういった意味が。トルコにとっては巻き込まれたということなのか」
大野議員
「一言で言えば、トルコとしては、自分達は関与したくないというのが正直なところではないかと思います。もちろん、これまでのトルコの南東部の事情を考えれば、トルコの南東部というのは、最近トルコは目覚ましい発展を遂げてはいますけれど、経済的には南東部というのは一番厳しいところであって、北イラク、あるいは“イスラム国”と言われる領域との密輸とか、そういったものを黙認している、たとえば石油もそうですが、そういったところである程度1番経済の悪いところが、安定しているようなところもありますから。トルコとしては、“イスラム国”の影響がトルコ側に来てしまうことも困るということで、従って、国際社会とともにテロと戦いながらも有志国の空爆には参加しないとか、あるいは密輸を黙認するとか、あるいはそのトルコ側で毎日入り込んで様々な物資をやりとりしていますから、そういう意味でトルコ側から“イスラム国”側に影響することについても黙認をしているというのが、現在のトルコの状況だと思いますので、そのような状況に面倒なことはおそらく持ち込みたくないというのが本音ではないかと思います」

“イスラム国”の脅威 今後の中東情勢は
反町キャスター
「トルコから見た時に、トルコにとって“イスラム国”とクルド問題はどういう状態がいいのか。今回の人質問題に絡んだことでプラスになるのか、真逆の問題なのか?」
山内教授
「非常に冷たい言い方と言いますか、ひとまずは人質問題のことを切り離した場合、トルコにとって最大の選択は現在置かれている状況の下ではクルドとイスラムとの抗争、これがかなりのところで続く。トルコに波及しない状態で、クルドも勝たず、“イスラム国”も勝たずという状態に持っていくということが理想的な…」
反町キャスター
「両睨みの状態でトルコが鍵を握るような、イニシアチブを握るような状態が望ましい?」
山内教授
「つまり、トルコ東部のアナトリアの南東部に波及してほしくないんですよ。ですから、あくまでも紛争はシリアとイラクの中にとどめてほしいという形にもっていく。2番目は、それに関して、エルドアン氏が大統領になりまして、非常に強力な大統領権限の行使、従来型とは違うんですね。今年は憲法改正して大統領権限がもっと実質的に強いものになるということも囁かれている。ロシア・フランス型、アメリカ型に近づくだろうと。その時にエルドアン大統領は権力強化のプロセスとして、“イスラム国”とクルドの対立。現在、中東で起きている状況に対してある種のメディエーター、ある種のそういう仲介者として親オスマン外交の総括を含めて、何が可能かということをじっと見ているのだろうということだろうと思うんです。ですから、そのプロセスの中で、今回の日本人人質問題、あるいはヨルダン人の空軍中尉の解放問題が1つの駒、カードとして使えるかどうか。おそらくある程度は使えると判断しているんだろうと思うんですね。そういう段階だと思います」

トルコと“イスラム国”の関係
吉村氏
「1984年から1988年までイラン・イラク戦争がありました。8年間消耗戦をやったわけですよ。それで落ち込んでいった。トルコにとって、PKKというクルドのテロ組織があるんです。非常に内政上の問題ですが、だから、クルドが非常に大きな力を持つとまた困る。それから、“イスラム国”は過激な原理主義組織がダーッと拡張するのも困ると。消耗戦でうまくやっていることの方が、それぞれに国境接していますから、通貨交通はあるし、貿易もあるんです。そういったものをうまくバランスをとりながらやっていくという中東ならではの動きがあり得るのではないかと思いますね」