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2015年1月27日(火)
ゲーム・SNS光と影 孤立と依存と自己顕示

ゲスト

樋口進
国立病院機構久里浜医療センター長
近藤昭一
玉川大学大学院准教授

深刻化するネット依存 現状と対策を徹底討論
秋元キャスター
「小中高生のスマートフォンを含む携帯電話の所有率から見ていきたいと思います。小学生で36.6%、中学生51.9%、高校生になりますと97.2%とほとんどの子が持っている状況になるわけです。厚生労働省の研究班が2012年におよそ10万人の中高生を対象に行った調査によりますと、インターネットへの依存が極めて高く、病的に使用と考えられているのが、男子では6.4%、女子では9.9%。これは数にしておよそ52万人の中高生にインターネット依存の疑いがあるということです。さらに、予備軍的存在、不適応使用も合わせますと、男子のおよそ2割。女子のおよそ3割が危険領域にあると考えられているんですね」
反町キャスター
「日常生活においてどのくらいの現象なのかというと、始終手離さないとか、どういう症状なのか。具体的にどういうところまでいくと病的な使用にあたるのかという、何かあるのですか? 具体例みたいなものは」
樋口氏
「基本的には、なければならない特徴というのがあるんです。たとえば、ネットの場合には病みつきになってしまって、とり憑かれるみたいな。それが1つと。それから、コントロールがうまくできない、使用のコントロールが。たとえば、自分で始める前に、このぐらいにしておこうと思っても実際それよりもはるかに超えて長くやってしまうとか。あとはやめると禁断症状が出てくると。禁断症状というのは多くの場合はイライラしたり、やる気が起きなくなって、ふて寝してしまったり。実際我々の病院に入院された患者さんを見ていますと、入院して始めの2週間ぐらいは、本当に何もしなくて、意欲がなくてという状況が続きます」
反町キャスター
「でも、そういう人はネットゲームをやっている間はもちろん、元気なのでしょう?」
樋口氏
「ネットゲームをやっている時は元気ですけど、すごく疲れますから、終わったあとはグタッとなるんですけれども、ネットをとられてしまった。つまり、使えなくなる状況になってしまったという状況になるとイライラするとか、あるいは意欲がなくなって、ふて寝してしまうとか、こんな状況が続くんですね」
秋元キャスター
「近藤さんは中学校の教諭としても生徒指導をされていましたけれども、子供達を取り巻くインターネットの環境というのをどう見ていますか?」
近藤准教授
「大変魅力的ですよね。そこに入り込むのは当然でしょうね。本当にゲームの精度もすごいです。それから、気楽につきあえますよね。ゲームもありますし、ゲームにも当然お喋りができるわけで、チャットもついている。ゲームの中では役割がちゃんと用意されていて、ランキングされ、自分の役割や、そのことによって自分の達成感みたいなものを疑似的に体験できるわけですね。同時に、インターネットの中のゲームだけではなくて、人と関わることが広範囲に様々にできる」
反町キャスター
「ゲームの中でやっている人間関係、人との関わり、どういう意味ですか?」
近藤准教授
「同じチームを組んで1つの目標に向かっていく。たとえば、戦闘ゲームであれば、それで周りを助けられたとか、作戦を練るとか、そのことが成功して、うまく砦を攻められたというようなところになってくると、その達成感や役割によって皆から賞賛されたり、認められたりということが現実ではなくてゲーム世界の中でできあがっていく。そういう中で目標は達成されて、要するに自己確認ができちゃう」
反町キャスター
「でも、実名ではないですよね?」
近藤准教授
「実名ではなくて」
反町キャスター
「偽名というか、いわゆるゲームの世界における通称。会話と言っても、そういうゲームの中に限った会話で、たとえば、それ以外の学業のこととか、恋愛のことだとか、家庭のこととか、そういうプライベートな話をするように、そういう会話は成り立つのですか?」
近藤准教授
「ゲームの場合は割と少ないんですけれど、それはSNSとか、その他、様々な書き込みだとかで、そういう深刻な問題も相談できる、これは依存度が高い。文科省が平成25年にやった調査の中で、高依存と低依存と問題なしの子を分けた。高依存の子ほど、深刻な問題もネットで相談できる」
反町キャスター
「誰かわからない人に、偽名同士で?」
近藤准教授
「メールでメッセージをやりとりしている人が、どういう人からわからないであるとか、つまり、自分が本当にリアルに知りあっている方ではなくて、そちらの方がいい?」
樋口氏
「仮に、我々が治療を進めていって、ゲームをやめようじゃないかと。ゲームのアカウントというのがあるのですが、アカウントを消そうじゃないかという話になった時…」
反町キャスター
「参加資格がなくなる。ゲームへの参加をやめようと」
樋口氏
「そうです。それができれば非常にいいんですけれど、その時、彼らが何を言うかというと、ゲームはいいと。だけど、仲間とは別れたくないと言うんですよ。だから、ゲームというのは、ゲームの面白さプラス、人との関わりの二重の拘束力があるんですね。だから、なかなかこれから抜けられないという感じですね」

中高生への影響と男女差
反町キャスター
「男女の比率ですが、これまでは中学生、高校生がメインだったのが、女子と男子でいうならば、それはどういう状況ですか?」
樋口氏
「先ほどの調査では、女子が9.9%。男子が6.4%でしたけれど、実際に、我々の外来にお見えになるのは、男の子が6人ぐらいに対して女の子が1人ぐらいですね。それはなぜかというと、たとえば、どういう状況であるかというと、ゲーム機というのがありますよね。あれでやるか、または専用のパソコンでやるわけです。そうすると、ゲームをやる状況だとどうしても外に出られないんです。ゲームに熱中すると閉じこもってしまうと。引きこもりになってしまう。そうすると、その間、食事もしないとか、場合によってはトイレにも行かないとか。部屋の中でトイレをするというのもあるんですね。そうすると、親から明らかにわかるわけですよ、おかしいと。だけども、SNSにはまっているようなケースの場合には、スマホを持って歩いている。1日スマホをずっと眺めているにしても、一応行動はそれなりにしていますから、親が決定的に、この子はちょっと問題だと、病院に連れて行かなければいけないレベルだとなかなか思えないですね」

男性のオンラインゲーム“中毒”
秋元キャスター
「どういう流れで、依存状態にまでたどりついてしまうのでしょうか。具体的な例は?」
樋口氏
「最初に友達とゲームの話をして、やってみようじゃないかと。それで友達との間でゲームをやっていくと。そうすると、だんだんゲームが、先ほど先生がおっしゃっていましたが、強くなっていったと。そうすると、もっと強くなりたいというのがあって、さらにゲームの時間を増やしていく。ゲームの時間を増やせば増やすほど強くなって地位が上がっていきますから。それでやっていくうちに、いろいろな新しいゲームのトリックみたいなものですね。そういうものがだんだん見えてきてますますはまっていくと。そういう状況ですよね」
反町キャスター
「ある程度までいったら何面クリアで終わりとか、何点とか、そういう終わり方をしない?」
樋口氏
「そういう終わり方しないですね。ずっと続く、延々と続くんですね」
反町キャスター
「いつまでも撃ち続ける?」
樋口氏
「そうですね」
反町キャスター
「どこまでも戦い続ける?」
樋口氏
「ただ、ある程度までいくと、さらにまた何か出てきて、それで永遠に続くし、たとえば、点数の上位の者に特別な優遇措置みたいなのがあってどうしてもあれがほしいとか、そういうことで子供達を惹きつけておくような装置がずっと続くわけです。絶えずバージョンがアップされる。何かしようと思うと、まずどこに連れていっていいかわからないと。つまり、ネット依存を診療してくれるところもなければ、相談してくれるところもないと。だけれど、最近になってやっとこういう依存の知名度が上がってきて、病院もあるんだということで、お見えになってくるようになったんですね。だから、家族が非常に困っていたということです。よしんば、医療機関があって、連れていきたくても、本人は動かないですから。本人は、たとえば、病院に行くといったらたぶん自分からネットを引き離すんだろうと思いますね。そうすると、それに対してはすごく抵抗をする。ゲームそのものがかなり暴力的なゲームなので、どうもそれに影響されて、ゲームに感化されて、暴力的になっているのではないかと思うんだけれど、たとえば、お父さん、お母さんが強引に連れて行こうとしたりすると、お父さんもお母さんも殴ったりして、家の中をボコボコにして、あまり暴れられると、お父さん、お母さんも(子供が)かなり大きくなっていますから、手を出さなくなってしまって、ただ、注視して見ているだけで考えちゃいますね。だから、家の中で、要するに、オンラインゲームが発端で、親子の関係めちゃくちゃになってしまうし、子供は学校に行かなくなるし、引きこもってしまうし、親は腫物に触るみたいな感じで子供さんを見ていく。そんな状況です、現実は」

中高生女子とSNS依存
秋元キャスター
「続いて、女子について聞いていきたいと思います。女子はSNSというふうに先ほど言っていましたが」
樋口氏
「女子も必ずしもSNSに特化しているわけではなく、たとえば、多いのはスマホを1日離せないと。LINEとか、いろいろなSNSがありますけれど、ゲームも入っているんです。それから、動画を見られる。そういう類のものを1日中ずっと続けていくというのがだいたい多くのパターンですね」
秋元キャスター
「SNSとか、携帯やスマートフォンで接続すること多いと思うのですが、学校にはどの程度スマートフォンを持ち込んでいる状況なのでしょうか?」
近藤准教授
「小中学校ですね、基本的に持ち込みを禁止するということが多いようです。親御さんが持たせるわけですから、こういうわけで持たせたいという場合には、学校内では預けましょうと。それを預けないでずっと陰で隠れてというのが多いですね。学校にもよりますけれども、高校はだいたい自主判断に任せているところも多いかと思います。小中は持ち込みはやめましょうというような動きですね」
反町キャスター
「女子の場合にはいわゆるLINEだなんだという、ネットワークの中における付きあいを非常に大切にするので、手放すということを、現場ではどのような状況だと感じますか?」
近藤准教授
「つながり依存という感覚でよく言われています。つながっていないともう不安定になる。落ち着かないところがあるんですね。ですから、学校では預ける。陰で隠れる以外は預ける。小中学校の場合には預けるから、救われている部分もあると思います。特に、家の中ですよね。保護者の方々が大変な思いでいらっしゃるのは、家庭の中で手を離さない。思春期の、青年期の子供ですから、人とのつながりがそこで保障されている。しかも、ネット上の知りあいとの絡みもありますが、いわゆる子供達によると、リアルな友達、現実に知りあっている同級生だとか、そういう人達と、ずっとLINEでつながっている。あるいは他のソフトでつながっている。ゲームでつながっている。そういうものとのお付きあい」
反町キャスター
「目を離せないということは、来たらすぐにでも反応をしないと、友達を失っていく、そんな厳しい世界なのですか?」
近藤准教授
「自分が存在していることの証みたいなものは、仲間みたいな、人とのつながりの中で感じようとする。それになかなかいけない。簡単につながれた、つながれたと。かつてありましたけれども、携帯を買ってもらったけれども、誰からもかかってこないという、これは随分前、ガラケーの時代ですけれど。皆に電話番号を教えてという状態で、かかってこない。そのかかってこないことが1つの自己確認の材料に。その延長線上に、現在の無料通話アプリの様々なもののLINEに代表されるものが毎日展開されていると。それを手離さないという親御さん達は、放任もありますけれども、真面目な親御さん達は、それを離しなさいと。それは子供にとっては大切な人間関係ですから。ちょっと既読とか、遅れるとか、だいたい2分以内にメッセージを返せということですから」
秋元キャスター
「返さないとどうなっちゃうのですか?」
近藤准教授
「現実上もあって、その中で、結局あいつはおかしいよねという話になってきて」
反町キャスター
「いじめのツールになっていますか?」
近藤准教授
「確かに。中学生の年代にとって厳しいです。だから、友達にする、しないとか、ブロックするとか、切っちゃうとか。誰を友達にするか選択をするのですが、招待をするとか、しないとか、そこから始まっていっちゃうんですね。あいつはいらないと。場合によっては、あいつはこうだから、外しちゃおうと言って」
反町キャスター
「ネットワーク上の人間関係が、そのまま現実、学校における人間関係と重なるものですか?」
近藤准教授
「そうですね」
反町キャスター
「問題はネットワーク上で外された人間は、学校でも外されちゃう?」
近藤准教授
「そういうことですね」
反町キャスター
「女子の中学生、高校生にとってはスマホを持ち歩いていることが自分の身を守ることになっていると」
近藤教授
「もう疲れ果てるんですよ。本当は、だから、規制をしてほしいという声も聞きますね」
反町キャスター
「それは子供の方が?」
近藤准教授
「うん」
秋元キャスター
「学校側はそれに対してどう対処していくのですか?いじめとか、仲間外れにつながるとしても、1日中、家でも起きている状況ですよね」
近藤准教授
「基本的に、無料通話アプリには入れませんよね。そうすると、グループであるだろう誰かに、お子さんと親御さんに話をして、実はこういうことだけれども、LINEの中を見せてくれないかと、教師はそこまでやるわけですよ。見せてもらって、これは…、そこからは教育ですよ。保護者が協力してくれないとこれはできませんよね。全部それを書き出すんですよ。書き出して全て現実の文書にしちゃんですよね。それをぶつけて、ご自分の責任、ご自分の在り方を考え直すという機会を、ネットワークの使い方を含めて、人間関係の在り方を含めて、自分の問題は何かということを、関係の子供達に突きつけて、わかっていくと。それで教育になっていく。その手前にネット世界があるので本当に手間がかかります」
秋元キャスター
「視聴者からの質問です。『ネットの中や匿名性のある方がリアルの友達より勉強や恋愛の相談もしやすいです。就職したら時間もなくなるし、携帯代などは自分が払うようになるので自分でコントロールできるようになる気がします。そもそもネット依存は病気ですか?』とのことですが」
反町キャスター
「バーチャルの友達と本当の友達のどちらが、こういう人はバーチャルの友達の方がいいじゃない、何が迷惑かかるのよと。これはどう説得するものですか?」
近藤准教授
「気楽でいいんでしょう。だから、そういう側面もあってはいいのでしょうけれど、だから、そのことによって現実に向きあうべき人。自分が本当に大切だと思う人との関係をどう構築するかとはまた別問題になりますね。そのことによって、たとえば、料理の仕方がわからないから、ネットで調べると。何となく気楽に付きあえて、こういう感覚を持っているんだ、女の子はこうなんだ、そういう情報収集には役立つんでしょうね。中には結婚した人もいるというから、オフ会などであってね。そういう発展があるということで、まったく否定はしませんけれども、ただ、小学生、中学生の視点から言うと、基本になる人との関係性をしっかりつくったうえ、そこをつくるべき時、一生涯の土台ですよ。その土台が弱くなってしまう。ある程度、成人になって、そういうものを現実とネット上の関係と、両方を併用していくということはあり得ることだと思います」
樋口氏
「依存に関して、一般的に開始する年齢と、その者の有病率がどのくらい依存になりやすいのかということが並行する。要するに、相関するという研究がいっぱいあるんですね。実はインターネットの場合、まだ研究が始まったばかりでそのあたりを示すものというのは、現在のところあまりないんですけれども、0歳から普通に使っていますよね。うまく使っているでしょう。ああいう類のものというのは、実は依存の中でほとんどないわけですよ。たとえば、薬物にしても、アルコールにしても、パチンコにしても、始めるのは20歳とか、それぐらいの年代ですよね。だから、幼児の頃からそういう依存しやすいものが将来どう影響するのかということについての研究、まだないですけど、非常に怖いのではないかなと思いますね」

中高生がのめり込む要因は
秋元キャスター
「なぜ依存をしてしまうのか。その要因を考えていきたいと思います。2012年に厚生労働省の研究班が調査した中高生の勉強以外でのインターネットの使用時間を見ていきたいと思うんですけれど、平日で男女ともに1時間以上2時間未満。この部分が最も多くなっているのですが、5時間以上という子供も結構いるんですね。この中高生がインターネットに夢中になってしまう要因、背景をどのように分析されますか?」
近藤准教授
「先ほど言いましたように魅力的ですよね。人とつながれますよね。楽しいですよね。無条件に楽しいと思う。大人が一生懸命につくっているやつですから、前提にそれが1つある。特に中高生で見ていくと、結局、自分に自信がない子供達が多いんですね。人を関わることに対して希薄化しているということが言えると思うけれど、そういう自信のない人との関わりの中で、先ほど視聴者から質問がありましたけれども、そういう世界の方が非常に包み隠さず喋っていける。そういう魅力的なものもある。自信のなさが、大きな引き金」
樋口氏
「リアルな世界の中で面と向かって話すのが怖いと。不安を感じると。だから、インターネットを経由して直接の対話がなければ、そうすれば、自分の思ったことが自由に言えるとか、そういう傾向を持っている方々もネット依存症に行きやすい」
反町キャスター
「樋口さん、面と向かって話するのが怖いというのは、それは学校とか、幼稚園とか、中学校とか、そういうレベルの話ではなくて、家庭の問題ではないかなと。基本的な人間の生活単位である家庭において向きあえるかどうかというそこから始まっているような。そんなことはないのですか?」
樋口氏
「そういうのを社交不安傾向と言いますけれども、言ってみればパーソナリティの1つみたいなもので、それがどのように形成されたのかというのはいろいろ議論があると思いますけれども、結果としてそういうような状況の場合には、ネット依存に行く傾向が大きいなということです」
反町キャスター
「そうすると、ネット依存の問題とか、その根本的な問題解決というのは家庭教育を何とかしようという問題になってくるのですか?」
樋口氏
「いや、それだけではもちろん、ないと思います。素質を持った、たぶん方々がいて、その人達はリスクが高いわけです。そういう方々に何かの負荷が加わって、それでネット依存にいきやすいという部分もありますけれど、それは全体の一部であって、多くの部分はおそらく素質と関係なく、何かの環境要因があって、それで依存が進んでいくのではないかと思われるんですね。ですから、両方とも考えていかなければいけないということだと思います」

韓国の現状と対策
秋元キャスター
「子供達のインターネット依存は海外でも問題になっているのでしょうか?」
樋口氏
「1番問題になっているのは、おそらく韓国と中国だと思います。インターネット依存は東アジアの問題だという人もいますけれども、だから、東アジアの人に何か遺伝子があるのではないかと。それはないと思いますが。韓国では経済的な大打撃が1990年代の終わりぐらいにあって、その時、打開するために、サイバーコリアということでITを中心に経済を立て直したんですね。その1つの弊害として、オンラインゲームのようなものが非常に活発につくられまして、それに依存する子供達が増えてきている。2000年の初めの頃には、それによって亡くなる方も出てきました」
反町キャスター
「子供がですか?」
樋口氏
「子供も大人もですね。理由は世に言うエコノミークラス症候群で全然動かず、ずっとネットをやっているものですから、血管の中に血栓ができてしまって、それで亡くなるケースとかですね」
反町キャスター
「何時間ぐらいでその症状が出てくるのですか?」
樋口氏
「亡くなった人のケースは86時間連続だと言っていました」
秋元キャスター
「その間、まったく動かないのですか?」
樋口氏
「ええ。ラーメン食べて、トイレにもほとんど行かないと。それから、ゲームにお金を使い過ぎてしまって、それを苦にして自殺するとか悲惨なケースが非常に多かったんですね。それで韓国の政府がこれは何とかしなければならないということで動き始めた。たとえば、全国に相談センターをつくって、ネット依存専用のです。全国の病院にネット依存専用に診てくれる施設というか、そういうふうなものをつくったりですね。それから、もう少し手前の段階ですが、レスキュースクールというのを始めたんですね。レスキュースクールというのは韓国で小学4年生、中学1年、高校1年の子供達に全国一斉にKスケールというインターネットのスクーリニングテストをやるんですね。それで依存の程度がある程度高い人に対し、おそらく政府がレスキュースクールに入るようなことを考えるわけです。どうするかと言うと、親御さんに病院に行ってほしい、病院に行って診断を受けてほしいと。あまりにも深刻なケースは病院に診てもらった方がいいと。だけど、そうでないケースではレスキュースクールに参加するということを親御さんが同意してくれた場合には対象になるわけです。夏休み、冬休みの期間に11泊とか12日で青少年センターみたいなところに子供達が20~30人集まって、そこに大学生のメンターと言って、言ってみれば指導者みたいなものですね。常に寄り添って、彼らの相談に乗ってくれる。その中で、いわゆるキャンプのような行事と治療的なカウンセリングをやっていくスクールですね。目的はネットを絶つことよりも、ネットと共存してうまく生きていける強い力を得ると。それが目的なようです。おそらく1年に1000人まではいかなくても、かなりの数の方がそのスクールに入っている」

中国の対応策は
反町キャスター
「中国はどんな感じなのですか?」
樋口氏
「中国は民間の会社が6か月ぐらい、現在言ったようなプログラムをつくって、中に入ってしまうと外に出られなくて、軍隊調で…中には罰則があって、本人が言うことを聞かなければ、電気ショックを与えたりするのがあって、あまり民主的な方法でやっているとは言えないですね」
反町キャスター
「自分でお金を払って、民間ですよね?」
樋口氏
「そうです。お金を払って、家族が連れてくる」
反町キャスター
「親も納得して、本人も承諾済みで…」
樋口氏
「正確な情報があまり伝わってこないので、そのあたりはわからない」
反町キャスター
「半年は長いと思うのですが、集中的に隔離して6か月間というのは。通院によってどうこうと考えた場合に、期間的なものはどう感じますか?」
樋口氏
「6か月は長いと思います。我々の病院で通常の入院期間というのは2か月ぐらいですけれど、それは、夜昼の逆転がひどくてどうにもならないとか、ご両親との間との諍いが大きくてうまくいかないとか、いろんなケースの場合に診ていますけれど、入院すると2か月間はネット断ちするわけです。先ほども申し上げましたけれども、ネットの中にどっぷりと浸かっていると頭の中がネット中心に動いていますから、まともな考え方ができないですね。ところが、入院してネットから離れる期間がある一定の期間あると、だんだん自分を取り戻してきて、自分の本来の生活とかしなければいけないことが自分の中でだんだんわかってくるんです。そういう状況を捉えて、退院したあとはどうしているかと、本人と家族を交えてしっかり決めて退院していくというそういうことですね」
反町キャスター
「再発はしないものなのですか?」
樋口氏
「依存ですから、再発のリスクは高いと思いますね。でも、少なくとも入院したケースの方が生活の向上はほとんどのケースで見られます」
秋元キャスター
「韓国、中国の取り組みをどう見ていますか?」
近藤氏
「プログラムを見させてもらったんですけれども、そこにはメンターという方と寝食を共にした信頼感が出てくるわけですね。ロッククライミングをやったり、バンドをやったり、様々な作業を共に、葛藤もあるわけではないですか。そういうところをともに乗り越えて、自然体験やら、人との関わり合いやら、目標を持って役割を果たして、信頼できる仲間がいて…これは人間性ができる基本ですよね。その中で最終的に子供達の自立の足場がつくられていく。だから、私は先ほどから申し上げている依存症の前段階である部分のところで、その部分を強めていかなければ、そこに吸い込まれてしまうよねというのが私の論拠ですね」
反町キャスター
「韓国の11泊12日のレスキュースクールを日本でもつくった方がいいという話はあるのですか?」
樋口氏
「実は文科省の委託事業で昨年1つだけ行われたんですね。8月の後半です。8泊9日で、場所は御殿場にある国の関係の施設です、青少年センター。参加した人は全部で10人参加して、大学1年生もいたと思います。男の子ばかりですけれど。そこで先ほども話があったメンター。これは教育関係の大学生だったんですけれども、1人に1人ついて、それで生活して、たとえば、トレッキングするとか、あるいは食事を一緒につくるとか、それからテントで寝てみるとか、いろんな活動にプラスカウンセリングがあったり、家族に対する対応があったり。8泊9日の最初と最後に家族会というのを開いて、家族に対する対応を、それから、認知行動療法を毎日やったんです。我々の病院から心理の先生が3人全部それに対応したんです」
反町キャスター
「認知行動療法とはどういうものですか?」
樋口氏
「認知行動療法というのは、そもそも依存になっていくのは、ネットに関する考え方が間違っているからだという仮定のもとに、それを1個1個検証しながら、修正していくというようなものですね」
反町キャスター
「現在その10人の方のフォローアップの調査というのはあるのですか?」
樋口氏
「調査はしていませんけれど、11月に1泊2日、1月に1泊2日で、同じ場所で同じメンバーで。初めは出るのが嫌で嫌でしょうがなく、ご両親に無理に連れてこられた状況だったけれども、でも、8泊9日のキャンプの終わりには、非常に来て良かったということでフォローアップキャンプも皆さんお見えになりました」
反町キャスター
「依存症から皆さんは脱出したということですか?」
樋口氏
「それはなかなか実は難しいです。と言うのは、依存症が8泊9日のキャンプで完全に良くなるのだったら、それは依存症と言えないかもしれないんですよ。だから、8泊9日のキャンプはあくまでもスタート地点で、それを契機にして、今後継続していきながら、彼らの行動が変わっていくように我々がサポートしていく。ただ、私がびっくりしたのは、来た時にはあまり喋れなかったんですね。ところが、8泊9日終わって、出て行く時には、すごく自分のことを喋れたり、人の話を聞いたりするんですよね。コミュニケーションのスキルがアップしたというのにはびっくりしました。だから、確かに効果はあると思うのですが、今度はどの部分を修正していって、どの部分を変えていくか。そのあたりを検討していくべきだと思うんですね」

日本の対応策は
秋元キャスター
「依存症にはアルコール、パチンコ、薬物、ギャンブル、たばこなどがあるのですが、これらの依存症に対する国の取り組みをどう見ていますか?」
樋口氏
「必ずしも十分と言えないですが、各々の国でいろんなことをやってらっしゃる。たとえば、アルコールを例にとると昨年アルコール健康障害対策基本法という法律ができまして、総合的にアルコールの健康問題に対策を立てていこうということなので、タバコももちろん、そうです。タバコの値段も上がったりしています。ですから、個々を捉えるといろんな政策がなされていると思いますね」
反町キャスター
「ネット依存には、アルコール健康障害対策基本法みたいなものがあるのですか?」
樋口氏
「もちろん、ありません。もちろんと言うのはネット依存の歴史は浅いですから。始まったばかりなので、これからという感じですね」
反町キャスター
「実際の働きかけは?」
樋口氏
「たとえば、我々医療の現場の話をした場合に、実は我々が使っている診断外来部の中にインターネット依存という言葉がないですよ」
反町キャスター
「病気ではない?」
樋口氏
「WHO(世界保健機関)がつくる国際疾病分類というのを使っているのですけど、WHOは何と言っているかというと、その他の衝動及び習慣の障害というのがあるのですが、これを使ってくださいと。現在から3年後に、国債疾病分類が改定されるんですけど、この中にインターネット依存とか、インターネット知能障害という名前は、現在のところは入らない。それに対して、我々は猛反発していまして、WHOと交渉しながら、何とかそれを入れていかないと、まず病気として列記して、そこになければ何もできないのだろうし、保険の問題もあるでしょうし、ですから、そのあたりも現在、一生懸命やっているところです。ですから、そこすらもまだいっていないという状況ですから、病気すらもないと、名前もない」
反町キャスター
「被害が生じていることにキチッと声をあげないというのは、たとえば、韓国におけるレスキュースクールが法制化されるとか、ガイドラインにのるのはなかなか難しいのではないか?」
樋口氏
「我々は医療者なので医療者ができることがあると思います。それは現実の状況を正確に評価して、それを公表していくと。そういうことだと思います」
近藤氏
「私が引きずっているのはその前段にある子供達で、行く末、そこに流れていくわけで、病気という認定がしっかりあるということは、そこから戻ってきますよね。何をしようと。現在はそこまでのものがなく、親御さん達がすごく悩んでおられるということでとまってしまっていますよね。何とかそこを救いたいですよね」
反町キャスター
「たばこは大人になってからみたいな規制、ゲームをやるにも何らかの規制があるべきでしょうか?」
近藤氏
「あるべきでしょうね。1つは家庭。家庭がどうあるべきかというと、現実が大切だということにしっかり向きあうこと。核になる人との向きあいというものを家庭と学校と地域社会がつくっていく。親御さんはお客さん意識が強いから、お客さんになっているとどんどん流されちゃう。つまり、人間の根本をどうつくるかという問題について、そこをしっかり押さえないと」

樋口進 国立病院機構久里浜医療センター長の提言:『ネットは現実生活のため!使用のルール作り』
樋口氏
「これまで見ていますと、ネット依存になっていくケースというのは現実の世界以外の楽しみを求める。ネットを現実の生活で使わないで、それ以外の楽しみを求めて、それにハマっていくのが原因になっているように思えるんです。現実の世界だけのためにネットがあるのだと思っていただきたいというのが、まず1つ。そうは言っても、使用のルールづくりがとても大事だと思うので、できれば家族の中でネットの使用をどうするかということをよく相談してもらう。そういう親と子のコミュニケーションがとても大事だと思います。もう1つは、社会人の方でもスマホをずっと見ている人がいると思うのですが、あの方々にも1度自分のことを振り返ってみて、自分はどの部分のスマホの使用を削れるだろうと、そんなことを考えていただき、自分なりのルールをつくってもらうといいと思います」

近藤昭一 玉川大学大学院准教授の提言:『身近な人々と向き合おう 失敗しても向き合おう もっとネットが楽しくなるよ』
近藤氏
「主に子供達、青年に向けた言葉ですけれども、ネットは道具ですよね。道具に振りまわされて、道具にハマっていても、そこには本当の充実は見つけにくい。逆に言うと、現実の身近な人と向きあう中で、しっかりとつながった中で、ネットを使うと本当に楽しいですね。そのことが逆転しないように子供達、青年の方々には捉えてほしいという想いで書きました」