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2015年1月23日(金)
人質VTR公開72時間 “イスラム国”と決断

ゲスト

小池百合子
自由民主党安全保障調査会副会長 衆議院議員
黒井文太郎
軍事ジャーナリスト
小原凡司
東京財団研究員・政策プロデューサー

期限迎えた日本人人質事件 どう機能?日本版NSC
遠藤キャスター
「今回の“イスラム国”による日本人人質事件は2013年12月に日本のNSC、国家安全保障会議が発足して以来、初めて日本人の人命がかかった事態となりました。NSC、国家安全保障会議とは国の安全保障に関する重要事項や緊急事態に対処を審議するために内閣に置かれています。中身は、平時から定例的に開催される4大臣会合。国防に関する重要事項を審議する9大臣会合。緊急事態に高度な判断が求められる重要事項を審議する緊急事態会合。これは総理、官房長官、総理指定の閣僚が一同に会するわけですけれども、国家安全保障局が新たに設置され、各省庁からの情報を集約、分析し、NSCに報告。また、国家安全保障補佐官を常設、総理に助言できるという仕組みになっています。今回の人質事件は、このタイミングとしては、NSCのメンバーである総理も外務大臣も防衛大臣も国内にいないという状況で発生したわけですけれど、NSCは十分にその時、機能していたのでしょうか?」
小池議員
「NSCは、その人がいる、いない。そういう閣僚がいる、いないにかかわらず、システムとして動くということが1番ポイントです。さもなければ、4大臣会合で角突き合わせてという、それが優先する問題ではなくて、どこにいたとしても、連携をとりながら、国家としての安全な選択をしていくかということですし、総理は中東で、外務大臣はヨーロッパで、というような事態でも、いつ何が起きても、国家としての決定が正しい方法の下で行われるというシステムですよ。ですから、今回、私は十分機能していると思うし、また、アルジェリアの人質事件もありましたよね。あの時に、先にNSCをつくっておけばよかったなと。あれを見ながら、私はつくづく思っていましたので、今回、私はちゃんと、NSCが既に機能していると。ただ、一番重要なのは、情報を収集、分析、共有ということで、これまで外務省です、防衛省です、皆が、警察もそうですね、それぞれがある意味、抱え込んでいたところですね。それを国家安全保障局に上げて、国家としての、情報共有をするということですが、今回は相手が相手だけに情報そのものが十分に集まっているかどうかというのについてはなかなか厳しいなと言わざるを得ないと思います」
反町キャスター
「もともとNSCは手足が少ないと言われているではないですか。現状においてはいかがですか?」
小池議員
「現在67人ですか。ただ、世界各国のNSCを見ましても、そんな大きい規模ではないですよ。規模の大きさよりも、機能を重視するということで、外務省からの情報、防衛省からの情報、それを引っ張ってくる機能さえあれば、人数ばかり大きくしたからといって、それで良しということにはならないということで、私も最初から小ぶりでいいと。第1次安倍政権の時にまさしく私自身、国家安全保障担当の首相補佐官をやっていまして、この法律案をつくる、下準備などをさせていただいたので、よく覚えていますけれども、いずれにしても情報が肝になるということは、今回の問題でも1番の重要なポイントではないかと思います」
反町キャスター
「この場合、NSCが機能する場合、情報をとってくるのはもしかしたら、日本の在外公館とかそういうところではなく、他国から貰う、そういうところになりますよね?」
小池議員
「そうですね。現実的にはそうです。だからこそ、ヨルダンに本部を置いて、それから、トルコとの連携をとり、近隣の国々、さらには米英、イギリス、アメリカなどの国々から情報を提供していただいているということで、NSCで日々の連携、特に、谷内局長ですね。いろいろなNSCのカウンターパートがいるわけで、そことの連携を確保できているということは、私は今回ちゃんと機能しているということになると思います」
反町キャスター
「小原さん、NSCの機能、今回の事態において、NSCに期待するもの、こう機能してくれたらなというもの。こういう機能を果たしてくれたら、アルジェリアの反省が活かされているなと感じる部分、期待する部分は何かありますか?」
小原氏
「NSCに期待する最大のものは省庁間の横串を刺すことですね。情報共有というのは過去なかなか省庁間で難しかったということがありますので、NSCがそうした体制ではなく、政府の中で一元化をするということですが、手足がという話がありましたが、それはNSC本体というよりも日本全体として情報を収集する能力。これは、各省庁の情報部門等に関してですけれど、まだまだ強化する必要があるだろうと思いますし、今回、ヨルダンであったのも、現在シリアに大使館ありませんので、ですから、ヨルダンということ。そういった選択になったという側面もあると思います。また、ヨルダンに情報が集まっていると思いますけれど、そういった情報をもらう、あるいは協力を要請するにしても何も見返りなしということは普通ない。それは何かの交換になるわけですが、日本が何を持っているのかというと…」
反町キャスター
「何が出せるのですか?」
小原氏
「まず現在のところは支援ということが考えられます。そういった意味では周辺国とのそうした情報交換ですとか、その協力を得るという手段はある程度は持っている。ただ、日本は、自分で情報を収集する能力は欧米諸国に比べるとまだまだ弱いと思います」

事件の背景と最適な対応とは
遠藤キャスター
「今回、現地でいろんな情報があったり、また官房長官は、その情報の信ぴょう性がわからなかったりとか、いろいろと交渉が難しい中、特に相手が“イスラム国”だと、なぜこんなに交渉が難しいのでしょうか?」
黒井氏
「“イスラム国”のやり方というのはある程度わかるので難しいとはあまり思わないですね。ですから、彼らの要求を飲むかどうか。その1点にかかっていまして…」
反町キャスター
「2億ドルは払えませんって」
黒井氏
「金額は交渉の材料ですね。ですから、“イスラム国”の側としては、交渉というのはイコール金額交渉という考え方だと思うんですね。日本の方としては、自分達のことを説明して、敵対ではないんだということを、交渉だと思って、そこに溝があるんですね。ですから、それをまず決める。表へ出さないですけれども、実際それを出す気があるのかというのを、この72時間で決めなければいけなかったんですね。ですから、こういう会議ができたというのは、総理大臣が決めなければいけないんですね、その部分というのは。ですから、決めるための判断材料を出すということ。この会議の1番の存在意義ですから、たとえば、要求を飲んだ場合のメリット、デメリット。飲まなかった場合のデメリット。そういったものの材料を出して、判断をしてくださいというのが、このものですけれども、そのもとになる“イスラム国”の狙いは何だという部分ですね。情報を集めるという部分では、まずその部分が引っかかっていますよね」
反町キャスター
「引っかかっているというのは、相手の本気が読み切れているかどうか。そこがポイントというわけですね?」
黒井氏
「そうですね。ですから、それは本当に、たとえば、中東を研究している人の中でも意見は全部分かれるぐらい判断材料が少ないものですから。それをどういうパーセンテージで、優先順位を、可能性が高いんだということを、ちゃんと上まであげて検討しているかどうかというところまでいけているのかどうか、私はわからないですね」

どう作用? 積極的平和主義
遠藤キャスター
「今回の日本人人質事件は、安倍総理が中東を訪問している、まさに、そのタイミングで起きました。今回、安倍総理の訪問のスケジュールですが、まず16日にエジプト、17日にヨルダン。18日にイスラエル。20日にパレスチナ。それから緊急帰国というスケジュールになったわけですけれども、安倍総理はこのエジプト訪問中に難民への支援を表明し、その後ヨルダンでも、このようにインタビューに答えています。現地の新聞社に対するインタビューですが、『ISIL(“イスラム国”)は国際社会の重大な脅威である。日本は積極的平和主義の下、非軍事的な分野で力強く支援していく。ISILと闘う周辺各国に総額で2億ドル程度の支援を実施する』と。新聞のインタビューに対してもこのようにコメントしているのですが、素朴な疑問なんですけれど、額を敢えて総理が口にする必要というのはあるものですか?こういう会見の場で」
小池議員
「言った方がいいでしょう。逆に。これを口実にしてISILにとっては、これを引っ張ってきて、こじつけているわけだけれども、圧倒的多くのイスラム諸国のイスラムの人達は一緒にがんばっているんだなと思っているわけで、ISILのことを遠慮して、何も言わないということだったら、ある意味、行く必要もないといっても言いかもしれません。現在、世界はそれと闘っているという、国際社会の重大な脅威という人々が、圧倒的多数ですよね。ISILという過激派集団は、それにかこつけたということなので、そこばかりにあまりにも気を遣うということは、私は本末転倒だと思います」
反町キャスター
「“イスラム国”と闘うということを、中東に行って、難民支援を表明する以上、“イスラム国”と対峙する姿勢を総理が表明するのは当然だというのは、よくわかるんです。ただし、今回のケースで言うと、人質が押さえられていて、しかも、昨年10月から身代金の要求が日本側、家族に突きつけられて、それは外務省まで届いているというふうに、少なくとも我々は考えているんですけれども、その情報は総理まで届いていたとした場合、現在総理がイスラエル、ないしはカイロで敵視するという表現を使おうとしている対象が日本人2人を人質にしているんだということを知ったうえで、ここまで言っているのと、知らずに言っているのとでは全然意味が違いますよね?」
小池議員
「当然、御存知なのではないでしょうか」
反町キャスター
「知っていますよね。知っていて、総理が言うということは、かなりの覚悟を持って、カイロ、イスラエルでこの発言をされたと思った方がいいのでしょうか?」
小池議員
「その他の国々、人質として捉えられている国々のリーダーも同じように言うと思います、基本的には」
反町キャスター
「そこは、要するに、非常に際どい話ですけれども、1人、2人の人命が抑えられているという現状に対するリスクと、中東まで日本の代表として行って難民支援というものを表明する時に、その元凶である、敵であるISILというものをきちんと名指しで批判すること。これは総理の頭の中で必ず天秤になっていたと、思うんですけれども、そのへんの総理の判断はどういうものだったと感じますか?」
小池議員
「それはご本人に聞いていただければと思いますけれど。いろんなことを総合的に考えて、このメッセージにつながったと思いますよ。当然、そうだと思います」
反町キャスター
「黒井さん、現在の話をどう感じますか?」
黒井氏
「その犯罪組織に日本国民が囚われ、身代金の要求が来ているという情報が耳に入ったと思うんですね。それに対して、身代金交渉をするの、しないのという話で動いているだろう。それと、難民支援とか、世界が、中東が困っているのですから、そこに自分達もある程度、貢献しないとという世界的な流れがありますから、今回の“イスラム国”に対して闘う国という言葉は、それほど突出したものではないという判断だったと思うんですね。だから、これが自衛隊を送り込んで空爆に参加するという時には、腹をくくるというのはあると思うんですけれど。この言葉が“イスラム国”に利用されるというところまで事前に思ったかというのは、そこまで考えていなかったのかなと」
反町キャスター
「イスラエルが、エルサレムで、今回の人質事件で、会見した時の写真です。これは別にメタニアフさんと2ショットの会見の時の映像だったら、イスラエルの国旗と日の丸の2つを背景に喋る。これはわかります。これはそうではなく、総理が1人の会見ですよね。場所を借りてということはよくわかるんですけれども、写真のイメージはいかがですか?」
黒井氏
「これが“イスラム国”に関してではなくて、“イスラム国”は基本的にはパレスチナのことも言わないですし、それほど関心を持っていないんですけれど、今回もこれについては言っていないですよね。それよりも、むしろフランスの風刺画で問題になったような、世界のイスラム教徒と他の世界がちょっとナーバスになっている。そこに対するイメージとしてはちょっとタイミングが良くなかったですね」
小池議員
「私はこの写真、総理官邸からの、ロゴを持っているということでいろいろ考え方があると思いますけれども、これよりもホロコーストミュージアムに行って、キッパー(ユダヤ人伝統の帽子)というあのシーンを非常に気にしましたね。これはイスラエルですよね。一方でキッパーというのは、ユダヤ教そのものになってくるわけで、このお星さまもそうですけれども、私は外務省が中東訪問に総理がいらっしゃる前に、中庸という言葉を柱にしますということとかがあって…」
反町キャスター
「中庸という言葉は、イスラム教にとって重要な言葉ですか。そうではないという人が今週の出演者に何人かいたんですよ。イスラム教に中庸という言葉は…」
小池議員
「たとえば、忍耐は美しいという言葉があるんですね、彼らが使う言葉。よく使うというか、そういう美しい言葉があるんだけれども、決して忍耐強くはないですよね。理想として言うけれども、たとえば、イスラム教であれ、キリスト教であれ、唯一神ということですから、アラーの他に神はないということをとにかく言うこと、信じることがイスラムの1番の原点なわけですね。義務なわけですね。ですから、in betweenというのは基本的には彼らにはないですね」
反町キャスター
「中庸はない?」
小池議員
「非常に現実的な判断をすることもあるんですけれど、基本的には中庸という精神をなかなか彼らに本当に理解をしてもらうのは難しいことだと」

積極的平和主義の今後 国民はどう理解?何を覚悟?
遠藤キャスター
「安倍政権の外交を象徴するキーワードとして、積極的平和主義という言葉が度々出てくるんですけれども、そもそもそれはどういう意味なのか。総理の言葉について、このように説明しています。『国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、日本はアメリカと手を携え、世界の平和と安定のため、より一層積極的な役割を果たしていく』と総理自身、2年前ですね、発表しているわけですが、積極的平和主義という言葉が今後国会においても1つの議論というのか、“イスラム国”の標的になってしまったのではないかと話される可能性というのは出てきますか?」
小池議員
「私はないと思いますけどね。むしろこういう具体的な事案が、前に4類型がありましたよね。アメリカのどうのこうのね。だけれど、こうやって1つ1つのケースが、1つの現実の事案になって、その時にどのように対応するかという中で、何が問題であったかということが、これでまた1つ明らかになっているわけですね。情報の問題が出ているわけです。ですから、私はこれで現在起こっていることによって、積極的平和主義を唱えたから、こういう問題が起こったとか、これを変えるべきだということが国会内でそういう反対の声が出るというよりは、しっかり議論をしましょうという、そういう方々が多いと思いますけれどもね」
反町キャスター
「でも、文言にあるように、日本はアメリカと手を携え、世界の平和と安定のためにより一層積極的な役割を果たしていくという、この言葉と、たとえば、テロとの戦いに対して、積極的な役割を果たしていく、というカイロでの発言。ISILと対峙している勢力に積極的に支援していく、基本的なところは全部、同じ延長線上にあると思うんですよ。そう考えた時に、我々かもしれないが、もしかしたら、それを国民に訴える(のは)政治の側かもしれないし、それを伝える我々かもしれないし、それを最終的に受け止める国民かもしれないのですが、総理がやろうとしている積極的平和主義、現在やらなければいけない役割はこういうものであって、これを果たさないと日本の安全が積極的に保障をされないというものでもあり、それの見返りとしてこういう覚悟も必要だよという、そういう議論がどうも足りないような気がするんですけれども、そこはいかがですか?」
小池議員
「それはまさにこれからの国会において具体的な法整備も進んでいるわけですから、それで国会でわかりやすいところで審議をするという。閣議決定、勝手にやったではないかとおっしゃいますけれども、これから具体的な事案をベースにしながら、法案についての審議をするということで、まさに国民の皆さまに見えるところでやっていくことが、意味のある法整備につながると、私はかえって、そちらの方は思いますね」
遠藤キャスター
「安倍政権の積極的平和主義、さらに、その外交ですね。この進め方というのはどう見ていますか?」
小原氏
「まず平和主義に積極的とつけたことが、これはもう日本が覚悟したんだということを言葉で示すことなのだろうと思いますし、その意味では、安倍首相の各国での発言というのは一貫していますし、このスタンスを明確にするんだと。そもそも現在の脅威、国際社会の外から来るんだということですし、また、それを日本は実はこれまで何も言いませんでしたけれども、外へこぼれるのを防ぐ、あるいはこぼれた人を救いあげる努力をしてきたのですが、それに一歩踏み込んで日本は外から実際に来る脅威に対しても、手段の問題は別として、実際に銃を撃つということにすぐに走るわけではないですけれども、明らかに国際社会の側に立って、これを守るんだと。そのためにリスクを負うんだということは、今回はからずも、明確になってしまった気がしますが、こうした覚悟については、国民がどこまでできていたかということは正直なところわからない。安倍首相はもちろん、それは理解をしていらっしゃると思いますが、ただ、だからと言って、これまで安全保障の議論をしなくてよかった日本。そのコンセンサスがとれるまで待つのかということですが、そうではないだろうと。こうしたことなのだということを示さない限り、国民はこれに対して議論することができないわけです」
反町キャスター
「たとえば、これまでの安全保障法制とか、基本的に言えば、朝鮮半島有事とか、尖閣とか、比較的領海周辺。身近な話だと、中国が来ているな、警戒しなければな、じゃあどうしようか。武装漁民が来た時どうしようかという議論の延長上にあったと思うんですけれども、中東はえらい遠いではないですか。ISILの言葉を借りても8500kmですよ。その人達までも対象にした議論をいうものに対しても我々は常に覚悟しなければならない。こういうことになりますか?」
小原氏
「それがまさに国際社会の一員であるのかどうかということなんだと思います。距離の問題はその認識が届くかどうかということで、関係してきますけれど、では、日本は中東で苦しんでいる人達がいるのを放っておくのかということですね。さらには、中東の情勢というのはもちろん、日本の経済にも大きな影響を与える。これは直接エネルギー資源の輸入だけではなくて、その地域の影響が、これはヨーロッパですけれども、そこは中央アジア等にも影響を与える、中国にも影響を与えるわけですね。それがまた間接的に日本の安全保障環境にも影響を与える。日本は鎖国でもしない限り、こうした国際情勢の影響から逃れることはできないわけですし、そのうえで、日本はこういった情勢に対して、どのように関わるのかといったことを考えなければいけないだろうと」

新たな脅威に日本は 問われる安全保障の形
遠藤キャスター
「通常国会で重要議題となると見られる安全保障法制ですけれど、今回の事態を受けて法制をどのように整えていくべきかというのは変わることはあるのでしょうか?」
小池議員
「基本的には既に体系と言いましょうか、これまでの安保法制懇のご提案や、さらには内閣の方で議論をして、それを結果としてまとめたもの、そこが骨格となって、今回肉づけという意味では意味があると思いますけれど、1つ1つのケースは具体的に審議する時の1つのアイテムになるかもしれませんけれども、基本の構成自体は変わらないし、むしろ今回のようなケースに適応できるような形に持って行くという意味で変わってくることはありません」
遠藤キャスター
「国民への説明の仕方については?」
小原氏
「まず今回の事案が影響するか、しないかについてですが、今回の事案に関しても日本はフルオプションで持っていないんです。そもそも軍事力の行使はしないわけですから、日本ができることというのはそういった意味では限られている。ただ、オプションとして持っていても、それを行使するか、しないかということは国民が決めなければならない。その意味でもそうした決定をする際には日本国民は覚悟がなければ決定はできないわけです。ですから、この安保法制を議論するにあたってはその意義です、技術的な意味ではなくて意義から議論してもらいたいと私は思っています。そうすることで初めて日本人がこの安保法制、安全保障に対する態度を変えると。この意味を理解することになるのだと思います。これは何で大きく変わるのかということは、これまで有事でしか自衛権は行使しないと言っていたものが、現在部分的ですけれど、これまでの判断基準では平時にも自衛権を行使するということです。グレーゾーンはよく有事と平時の中間という言い方をされますけど、これは以前の判断基準であれば平時です。有事でないからこそグレーという言い方をしていたのであって、日本人は平時にも自衛権を行使するのだと、これまでの判断基準であれば、そういうことを理解しなければいけませんし、意義を考えなければいけない。そのうえで日本人が自分で決めなければいけないことだと思っています。この平時の中でもグレーゾーンというものを決めてしまうと、その外は全部真っ白かと言うとそんなことはないわけです。グレーから黒まで全てグラデーションがかかっている。線を引けば必ず外側ができるわけです。ある事象を決めれば、その事象の周辺で起きる事象というのが必ずあるわけで、しかも、それを先に表に出してしまうということは相手がいることですから、わざとその事態に当てはまらないことを考えると。ですから、本来は平時全て自衛権が行使できるというオプションを持っていることが必要だと。平時の自衛権の議論というのはしなければならない。そのうえでこういった事象に日本は対処するのか、しないのかということを日本人が決める。それに対処する際には軍事力はどういった行使がされるのかというのはROE、これは普通の国では交戦規定と呼ばれていますけれども、それでギチッと縛る。こうすることによって軍事力の使用はコントロールされているわけですけど、そもそもそうした覚悟がない。議論ができないということではかえって軍事力が管理できないということにもなりかねないのではないかという危惧さえ覚えます」

新たな脅威と日本の選択 日米連携の今後は
反町キャスター
「日米ガイドラインの改定の方向性、テロとの戦いについては」
小原氏
「本来、ガイドラインの中で少なくとも日本側はテロとの戦いの中において、アメリカと一緒に、たとえば、中東地域において武力行使をするといったようなことは考えていないと思いますし、そんなことが反映されているとは思えないわけですが、こういった事案が出てきた場合に、この部分はもう少し協力を強化しなければならないという考えももちろん、出てくるだろうと思いますから、そういった意味では日本が鉄砲を撃つ以外の部分ですね。日本がこの事案があったからといって、すぐに他の国に行って、軍事行動を行うということはなかなか考えにくいわけですけれど、その他の部分での協力が強化された形で表現されるということになると思います」
小池議員
「今、小原さんがおっしゃったことに尽きると思いますね。それぞれ得意範囲もあるでしょう。それから、たとえば、日本のメリットと言いましょうか、中東におけるプラスの点は、これまでの中東の戦争等に直接コミットはしていない。自衛隊がサマーワに行きましたけれど、それは水の供給などのその後の措置でもって手伝いに行っているということで、ある意味ではよく言われるのは手が汚れていないという言葉がありますし、これまで日本がやってきたこと、これらを積み重ねていくと、アメリカには任せられないが、日本はできるという分野はたくさんあると思います。ですから、そういう意味ですぐに軍事的に一緒にという話ではなくて、そこは非常に多様な協力の仕方が私はあると思うんですね。ですから、今おっしゃったことも踏まえて、現場でこれからも積み重ねていくと思うのですが、今回、私はオバマ大統領の一般教書演説をずっと聞いて見ていまして、テロについても言及されていて、多くの連合国を率いて、というような表現があって、日本についての言及はなかったですかね。これからのオバマ政権というのはレガシーをつくるというか、そういうところに入っていて、どうもキューバの方に行っちゃうのではないかと思うんですね。ですから、リバランスとか、アジアに重心、リバランスですけれど、そういったことよりも、むしろ彼らアメリカこそが内向きになっていくのではないかなということをちょっと心配しています。それで実際にヘーゲル国防長官から今度カーターさんに変わるというようなことで、どうもそのあたり向こうも日本のことをいろんなことで心配するのかもしれないけれど、私は政府にいないから言うけれども、アメリカの方の最近の国防であるとか、外交であるとか、ちょっとクエスチョンマークだなと思う時はありますね」
黒井氏
「自衛隊がたとえば、空爆に参加するようなことでもない限りはまだ外野の席だということですね。ただ、積極的平和主義と言っていますから、ある程度はお金を出し、コミットしていくというのは、もう世界の趨勢と言いますか、ほとんどの国が、多くの主要国がやっていますから、日本はそれなりに大きな国なのにこれまでほとんどやってきていないんですね。閉じこもっていたというのか。そういうものが出てきた時に、軍事的なものでない限りは、それほど嫌われることはないとは思うんです」

多様化する脅威 日本の対応能力と死角
反町キャスター
「テロに対する備えは、軍による対応なのか、警察による対応なのか?」
小池議員
「たとえば、対北朝鮮のテロ行為、ミサイルであるとか。一般にテロというと国ではないことが多いわけで、テロの脅威はこれからますます多様化していくと思います。武器なども小さくなって、いろいろなやり方で航空機の爆破などもあるでしょう。一言で言えば、やっかい。それこそ積極的に平和主義のもとで国際的に協調していくということに尽きるのではないかと思うんです」
反町キャスター
「日本がとるべき備えはどういったものがいいと思いますか?」
小原氏
「1番大事なのは情報ですね。もちろん、オプションとしては実力行使ができた方がいい。そういったものがあって初めてしないということが言えるのであって、できないのとは違うわけですが、日本が1番弱いのは情報だと思っています。世界各国の情報機関が分析するにあたっても、使用する情報の90%以上が一般情報、公開情報ですね。これをいかに活用するかによって、得られる情報は格段に変わってきます。現在はあらゆる情報が売られている時代です。それをいかに使うかといったことが重要になります。その中で問題だと思うところに、ヒューミントですとか、会話を傍受するようなコミント、シギントですね。そういったものを組み合わせて、対応していくと。実は情報というのは高く売れるんですね。中東に対して日本は東からのアプローチになるわけですが、西からと、これは欧米ですが、同じである必要はないし、あるべきでないのではないかと思っています。日米同盟自体が相互補完的であって、同じことをすることではないですね。たとえば、西から武力でいって、東からも武力でいくとまったく同じことになってしまうわけですけれども、日本は現在この地域で何が起きようとしているのかということから分析を深める必要があるのではないか。日本はこれまでも(中東に)援助してきているわけですが、それをさらに効果的に援助等を行う。国際社会からこぼれる部分を少なくする。こうした努力が日本のできる1番大切なことなのではないか」

小池百合子 自由民主党安全保障調査会副会長の提言:『情報・情報』
小池議員
「たくさんあるんですけど、今日はこの流れから情報・情報。本当はもう1つ書きたかったのですが、スペースなくなっちゃった。情報の収集、分析、発信、両方ですね、双方向、日本の情報発信はISILよりうんと劣ります、その意味では。ですから、情報をいかにして収集して、それを理解して、そこから決断を導いてということと、それから、日本がもっと海外に発信をしなければならない。情報というのはインテリジェンスとインフォメーションと両方です」

軍事ジャーナリスト 黒井文太郎氏の提言:『外に目を!』
黒井氏
「非常に日本は内向きな意識が多いと。テロが起きれば日本では巻き込まれないようにとかですね、当事者感が非常に少ないです。日本の安全保障もこれまではアメリカに守ってもらうという、非常に当事者感があまりなかったのかなと。どういう政策をこれから進めていくのかというのは皆さんで話しあって決めることですけれども、そのもとになる意識が、もうちょっと外の方に目を向けて、どう決めるにせよ、外の情報にちゃんと向きあってから話しあってほしいなと思います」

小原凡司 東京財団研究員・政策プロデューサーの提言:『国の在り方の議論』
小原氏
「今回の事案をきっかけにしてということでもありますし、日本は現在安保法制の話もあり、これは日本の在り方自体を決める議論であると。これまでとは変わるのか、変わらないのか。そうした生き様ですね。日本がどういった国でありたいのかということを考えなければいけない時期にきているんだと。そういった議論をすべきだと思います」