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2015年1月21日(水)
日本人2人拘束を公表 “イスラム国”狙いは

ゲスト

佐藤正久
自由民主党国防部会長 参議院議員
山内昌之
東京大学名誉教授
保坂修司
日本エネルギー経済研究所中東研究センター副センター長

“イスラム国”日本人人質事件 日本はどう対応すべきか
秋元キャスター
「“イスラム国”側から発表されました声明の内容ですけれども、この内容を見て、まずどのように感じましたか?」
山内教授
「日本はこれまで中東地域においては、少し欧米、特に、アメリカやイギリスとは違うと見られてきました。実際、中東各国の中における対日感情というのは大変良いものがあったわけです。ただ、それは一般の通常の国家と国民のレベルにおいてであって、いわゆるテロリスト、この場合、“イスラム国”ですが、そうした人達の場合には当てはまらない、当然のことですが。“イスラム国”をテロリスト国家、テロリスト組織と定義しておくとすれば、彼らによって、日本は欧米と同じ次元に位置づけられたと。十字軍という表現が入ったりしているのは、これまでになかった特徴だと思いますね」
保坂氏
「これまで“イスラム国”、いわゆる過激派と言われる人達が出していく声明の常套的なものだと感じます。十字軍という言葉も、まさにそうですけれども、彼らが西側欧米に対抗する時には、ほぼ必ずと言っていいほど、十字軍という単語を使ってくるわけですね。実は、日本は、特に2003年のイラク戦争以降、佐藤先生がいらっしゃいますけれども、自衛隊のイラクへの派遣以降、アルカイダ、当時はイラクのアルカイダですけれども、を含めて、日本はアメリカ、ないしはその傀儡達に従う存在であるという位置づけがありますので、“イスラム国”とアルカイダは現在、対立していますけれども、その位置づけ自体は踏襲していると見ていいと思います」
反町キャスター
「72時間以内に2億ドルというのはどうするのですか、我々日本政府としては」
佐藤議員
「総理が言われたように、1番大事なことは人質の人命救出を、最大限においていますから、いろんな関係で、これからコンタクトをしようという努力を現在やっていると思います。今回、官房長官が言われましたように、1つの期限、目安として23日の午後2時50分頃と言われていますから、これまでの間に、総理が言われるように、いろいろなチャンネルを使いながら、犯人グループ、“イスラム国”とコンタクトをするという努力を続けるということだと思います」
反町キャスター
「日本と“イスラム国”の間のチャンネル、パイプ、あるのか、ないのか、答えにくいと思いますが、サモアにいた経験から推測するには何かあるのかどうか。どう感じていますか?」
佐藤議員
「私はゼロではないと思っています。イスラム社会、一般的ですけれど、地縁、あるいは血縁というものが非常に濃くて、そういうルートを使うと、意外とコンタクトがしやすいという部分があって、私がイラクに派遣された時も、日本人の方が何回か人質になりました。特に3人の方が、拘束された時に…」
反町キャスター
「高遠さんの時ですか?」
佐藤議員
「はい。3日以内に自衛隊が撤収しなければ、殺すぞという声明があったんですね。その後いろんなルートを使い、聖職者とかを使って、コンタクトして、結果的に3日ではなくて、1週間後に解放されました。日本の外務省のロビイストと言われる方々は皆さんが思っていらっしゃる以上に優秀な方がいるんですよ。日本人の一般が考えているよりも優秀な方もおられますので、彼らは日頃からチャンネルを持っています。いろんなチャンネルを使いながら部族長とか、有力者と直にやっていると思います」
山内教授
「佐藤さんは当時隊長で、地域における拉致された同胞の釈放にあって、同じようなイスラムの地域共同体という広く言えば、その中での部族的結合や地域的結合の中の、彼らの中の信頼関係や地縁、血縁的なつながりの中で交渉をしたりするということ、どちらかと言えば、通常、私達が考えている日常の生活の論理のある種延長的なところがあったわけです。ところが、現在の“イスラム国”というのは、そういう日常的なレベルから、かなり乖離した、いわば思想、イデオロギー。テロの集団で現実に内戦、戦争が終わっている集団です。しかも、構成員がシリア、イラク、いろんなところに海外から来ている。中東の他からも。さらに、ロシアからも。それから、ヨーロッパからも来ていると。こういうようなところに交渉のパイプを求めて入っていくというのはイラクの場合のケースと違って、相当困難が予想される。たとえば、具体的に申しますと、“イスラム国”が成り立っている基盤は何かというと、たとえば、石油だったら石油だとする。そうすると石油を実際に密輸しているから、その密輸相手、地域、相手国。そこがいったいどこなのか。そこでそれをやっている人間達は誰なのか。こういうところのパイプを求めていくというようなことはひそかには成り立ち得ることではないかと思います」
佐藤議員
「イラクとまったく同じとは思っていませんが、今回彼らがよって立つ基盤というのは、スンニ派地域の部族長の支援なくしては、彼らの活動は兵站が成り立ちませんし、さらに、今回のいろんなグループが外国から入ってくるルートとして、トルコ経由というのがありますから、そうすると、トルコにもチャンネルを持っている(という人達が)、日本もおられますし、シリアの方にも大使館勤務をした人達が結構おられます。現在でもローカルスタッフがシリアにも残っていますから、いろんなチャンネルがあるのではないかと。決して太くはないかもしれませんけれども、切れ目はないと」

勢力拡大…どこまで続くか?
秋元キャスター
「アメリカのシンクタンクの、インスティテュート・スタディ・オブ・ウォーによりますと、今月15日時点の“イスラム国”の勢力図はシリア、イラクにまたがっていて、だんだんと勢力を拡大しているようですが、“イスラム国”が実効支配している地域、“イスラム国”支援地域ということになっているんですけれども、あらためてになるのですが、“イスラム国”はいったいどういう組織で、何をしようとしているのでしょうか?」
山内教授
「簡単に言いますと、“イスラム国”という名前が非常に独特ですが、“イスラム国”というのはもともと組織で、組織の名前にして、国家の名前になったということですね。元来はイラクとシリア、イラクとあるいはヨーロッパ、レバントと。それの“イスラム国”という名前だった。シリアとイラクの両方にまたがり、本当はイラクのアルカイダ系の組織から発展した。イラクの発展がとまって、後になって内戦中のシリアに本拠、活動の中心を移して、そこで成功をして、逆に今度は帰ってきて、イラクをこのようにして支配するようになったと。もともとはこの組織というのは、基本的に言えば、昨年の6月にカリフというイスラム予言者の代理人ですが、7世紀の。そういうカリフという制度を、彼らなりに主観的に復活して、そういう従来の国境を否定したイスラムの、もともと共同体というものをそのまま国家とするという、こういう考え方がスンニ派に大きな広がりをつくろうとしている。そういう独特の組織ですね。つまり、これまでのいわゆるイスラムを、テロリズムにしていくような団体というのは、こうして自立して、自分達が独立の国家というものを持つには至らなかった。しかしながらこの組織はそこからシリアとイラクという名前も外しちゃって、単に“イスラム国”になったというのは、名実共にそれがカリフ国家を成立して、“イスラム国”家というものになったというものの象徴的なものとして組織名を変えていった。いずれにしても、もともと組織の名称であったものが、実態としても、国家の名称になっている。この2つのつながりがあるというのが非常にユニークなところですね」
反町キャスター
「たとえば、税金をとるとか、通貨があるとか、教育制度があるとか、そういうものというのはこの中では整ってきているのですか?」
山内教授
「大変重要なことですね。国と宣言しましたけれども、基本的に言えば、疑似国家ですよ。まだ、それはどこの国も認知していないし、おそらく認知しないでしょう。ですから、疑似国家だから維持しなければならない。その1つは、非常に不完全であっても官僚制とか、議員とか、行政機構、徴税権も行使しているし、それから究極的な模倣の死刑などを宣告する。そうしたことをやっていると。ただ、テロリストだからということではなくて、彼ら自身の主観的なイスラム法に基づく国家と運営していると。それは疑似国家に過ぎないにしても、石油などを生産、製油して売却することによって、国家財政の一端にしている。それから、他の様々な教育や貨幣などについても不十分ですが、イスラム教育やイスラムにかかわるものに特化したわけではないけれども…」
秋元キャスター
「一方で、今回注目されているのは“イスラム国”ですけれども、その他にもイスラム過激派といわれる組織があるんですね。先日のフランスのテロ事件では、犯人がアラビア半島のアルカイダと、それから、“イスラム国”に影響を受けていたということが伝えられていますし、アメリカ同時多発テロを実行したアルカイダ。こちらもまだ影響力を保っているということなんですけれども、保坂さん、これからの組織との関係というのはどうなっていくのでしょうか?」
保坂氏
「9.11を実行したのがアルカイダですね。これがいわゆるグローバルテロリズム。あるいはグローバルジハード主義という、ある意味、本家本元ですけれど、しかし、実はアラビア半島のアルカイダ、あるいは“イスラム国”とは、イデオロギー的には非常に大きな違いがありまして、先ほど、山内先生の方からは“イスラム国”は疑似国家という話をされていましたけれども、実はアルカイダというのは、それとは全然逆に、国家志向がないですね。実はアルカイダはもともとアフガニスタンを本拠地にしていたわけですけれど、実は、当時、アフガニスタンを支配していたタリバン政権がありましたけれども、そこの一軍事部門です。従って、彼らにとって国家元首というのはタリバンのリーダーであるムラン・オマルという人ですね。国家の一部門に過ぎないと。しかし、国家の一部門に過ぎないアルカイダから、アラビア半島のアルカイダ、イエメン支部ですし、“イスラム国”もアルカイダのイラク支部を含むグループの連合体なわけですね。つまり、これで大きな矛盾がはらんでいるんですけれども、国家であるはずの“イスラム国”の上部組織であるアルカイダは国家ではなく、タリバンという国の一組織。こういう矛盾をはらんでいる中で“イスラム国”の力がどんどん大きくなってくる。最終的にはアルカイダと“イスラム国”というのは仲違いして、“イスラム国”側から、アルカイダに対して、お前ら、一機関に過ぎない、一組織に過ぎないのに国である我々に文句を言うのは何ごとだという形で、最終的には分裂していくわけですね」
反町キャスター
「“イスラム国”がアルカイダから、のれん分けされたような組織からスタートしたとして、国というものを標榜、目指したということは背景には何があるのですか?」
保坂氏
「イエメンのアルカイダもそうですけれど、実はアルカイダは非常にグローバルな組織で、もともと彼らが標的にしていたのは、外から“イスラム国”の世界に入ってきて、攻撃をする、あるいは占領する。そういう異教徒ですね。そういう人達に対して攻撃を加えて、イスラム世界から駆逐する。それがまさにアルカイダのグローバルジハード主義。ところが、イエメンのアルカイダ、あるいは“イスラム国”というのは、実はローカルな組織です。イエメンの、あるいはイラクの、シリアの国の中で、それぞれの政府と戦う。最終的には政府にとって代わって自分達が支配をする。だから、ローカルな組織というのは、アルカイダの下にありながら、実は結構、国家志向が強いんです。だから、“イスラム国”の前身はもう1つあって、最初はイラクのムジャヒディン評議会という名前だったんです。それがイラク―“イスラム国”というふうに名前が変わって、これは2006年ですけれど、この段階で国家志向があったろうと思いますね。だから、かなりはやい時点でローカルな地域を支配するという意識はそれぞれあったと」
反町キャスター
「“イスラム国”はアルカイダみたいにテロリストを、9.11みたいに、アメリカに行って何かをしかけるような志向はしていない?」
保坂氏
「もともとは志向していなかったと思うんです」
反町キャスター
「もともとは志向していないけれども…」
保坂氏
「だたし、アメリカが攻撃してくれば、アメリカに対しては攻撃をします」
反町キャスター
「来た時に叩くのではなく、こちらから出て行くことも彼らは辞さない状況にもちろんなっているわけですか?」
保坂氏
「現状ではそうです。本来の、彼らの1番の敵は誰かというと、それはイラクのシーア派であり、シリアのアサド政権です。従って、我々はよく“イスラム国”の場合には、グローバルではなくて、グローカルという、グローバルとローカルがあわさったジハード主義という言い方をします」
反町キャスター
「現在、“イスラム国”を巡る戦争、戦闘状況というのはどういう状況ですか?」
保坂氏
「いろいろな見方があると思うんですけれども、私自身はそろそろ膠着状態かなという感じはします。既に“イスラム国”に対する注目がかなり集まっていまして、密輸に対する監視も厳しくなっています。“イスラム国”に流入する人達に対する規制も非常に厳しくなっている。たとえば、戦線が拡大すれば、それだけ前線に人を配置しなければならないわけで、必ずリクルートが必要になってくる。ところが、そのリクルートが途絶えれば、必然的に戦線は弛緩してしまいますから、そうすると、どうしても手薄になってくると。それで結果的には膠着状態という感じではないか」
反町キャスター
「“イスラム国”の兵士の充足率、充足率と言うと自衛隊の言葉みたいですが、充足率が低い?あまりうまく兵員が整っていない?」
保坂氏
「それは当然あると思います」
反町キャスター
「たとえば、“イスラム国”における兵士というのは、国内調達、ないしは海外からのリクルートによる新兵の補充の割合とかはわかるのですか?」
保坂氏
「基本的にはわからないです。もちろん、海外からどのぐらいの人達が、シリアに入ってきたかというのは、ある程度まではわかります。ただ、そのうちのどれぐらいが“イスラム国”に入ったのかというのはわかりません」
反町キャスター
「なぜ若い人達が、ヨーロッパの人達が行ったとか、行かないとかで、身柄を押さえられていますけれども、なぜ彼らは“イスラム国”に参加するのですか?」
保坂氏
「そこに大義を見出すということでしょう。シリア、あるいはイラクでイスラム教徒達が攻撃を受けている。誰かが助けに行かなければいけないという大義がそこにあるので、ですから、そこに行けば、おそらく欧米にいるイスラム教徒達は、シリアに行こうという人達は、何らかの不満を抱えているわけです。経済的な不満かもしれないし、政治的な不満かもしれないし。不満は何でもかまわないんですけれど、そういう人達が、その不満を一気に解消できる場として、大義を目指していくと。そこで戦って、キリスト教徒を殺せば、もしかしたらヒーローになれるかもしれないとかですね。いろんな理由はあるのだと思います」
山内教授
「若者がなぜ“イスラム国”に行くのかという問題。これは依然として大きな問題ですが、基本的に言うと、ムスリムが移住先、生まれた先がフランスの自由や平等や博愛といったようなものでも、基本的にこれまでムスリムとしての差別感、あるいは疎外感を味わっていると。それから、もう1つは、失業の問題。低所得の問題。そうしたことからすると、彼らは戦闘への参加。あるいは“イスラム国”への参加というものが、一種の就職、自分達の新しい生活の場でもあるという面もある。しかし、基本的にそれだけではなくて、2つ目には、歴史において、シリア、イラクというものの国境線をご覧になるとおわかりになる、直線で引かれている。これはまさに植民地主義の名残ですね。フランスとイギリスが引いた際の秘密協定というような。そうしたことによって近代から現代にかけて戦争が何回も繰り返され、たくさんの犠牲を出している。こういう屈辱感というものを晴らしてくれるようなことでいえば、歴史的に自分達の行為を正当化するような枠組みがほしい。その時に“イスラム国”は、昨年の6月にカリフ国家というのを宣言したと先ほど申しました。こういうカリフ国家という7世紀に遡及するようなイスラムの古典的な誇りとか、過去の栄光とか、そういうものを取り戻して、イスラエルも含めて、現在失われている、アラブ、イスラム世界の、新しい“イスラム国”にふさわしい領土を再回復していくということは、先ほどからの話にあるような、彼らにとっての大義と、若者達の新しい満足感。単にそれは物理的なことだけではなくて、精神的な充足感をそこに行けば与えてくれるんだという、このあたりが、2つ結びつくことによって、若者達はヨーロッパからダイレクトでロシアのチェチェンやチェルケス、コーカサスから、あるいは中東、アラブのずっと西のマグレブから。もっと他のアジアからも、と惹きつけている。ただ単にテロだからというだけの問題ではない。何者かが潜んでいるというところが厄介ですね」
反町キャスター
「イスラム教徒の人達に、カリフ制の復活を標榜というか、謳いあげて国を建てることが、どれほどのインパクトがあるのか。どれほどありがたい、すごいことだ、行かなくちゃと思うのか。そこはどう思ったらいいのですか?」
山内教授
「カリフ制というものについては幻想、あるいはそういうものがありますけど、しかし、アブバクル・バグダディ。この人が、カリフ国家ができると言ったことを、今おっしゃったように、ありがたや、ありがたやと捉えるかどうかということは別問題ですね。違うと思います」
保坂氏
「カリフという名前を聞いた時に、イスラム教徒の人達の心の琴線に触れるものというはたぶんあるんだと思います」
反町キャスター
「どういうものだと思ったらいいのですか?イメージがわからないですが」
保坂氏
「たとえば、バクダッドというのはある意味、カリフ制の絶頂期を体現したわけですね。アッバス朝を壊したのはモンゴル軍であり、そのモンゴル軍をバグダッドに引き入れたのが、その当時アッバス朝の大臣をやっていたシーア派なわけです」
反町キャスター
「何世紀の話ですか?」
保坂氏
「13世紀です。ただ、それはそのまま現代に当てはまるわけです。今日のイラクにいるシーア派の人達がアメリカ軍を、異教徒を引っ張ってくる。イラク、バクダットに引っ張り込んでくる。アメリカ軍の中にも、シーア派の人が、それをそそのかしている連中が、亡命イラク人がいたわけです。まったく同じアナロジーがここで繰り返されるわけです。これは非常にスンニ派の虐げられたと考えられている人達にとっては腑に落ちると言いますか、非常に響く問題だと思います」

日本はどう見られているか?
秋山キャスター
「“イスラム国”が日本を狙い撃ちにしていたと見ていいのでしょうか?」
佐藤議員
「今回の動画を見ると、安倍総理のエジプトでの演説というものを1部使っていますよね。考えると、安倍総理が今回中東に行ったというタイミングにあわせて、この人質のカードを使ってきたという見方もできなくはないのかなという感じがします」
反町キャスター
「安倍総理の17日のカイロでの発言というのは、1つのトリガーなのではないかという見方がありました。『ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します』。たとえば、難民・避難民支援をやるという、そこの部分と、“イスラム国”と戦う周辺各国に支援をお約束します。ここの部分が引き金を引いたのではないのかという分析をする人もいます。総理のカイロでの発言、これは引き金になるようなものだったのですか?」
保坂氏
「引き金というよりむしろ利用されたということだったんです。2億ドルというのはまさにその部分です。なぜそう考えるのかと言いますと、“イスラム国”のこれまで出してきた様々な声明、あるいは機関誌等を読んでも、日本に関して触れていることはほとんどないですよ。もし本当に日本を標的にするぐらい敵視しているのであれば、どこかで言及してもいいはずですけれども、ほとんどまったく言及してない。単語すら出てこないと。たとえば、湯川さんが誘拐された時も、その直後に英語のダービックという機関誌があるんですけれど、その雑誌でもまったく一言も触れられていないわけです。一方、欧米人の人質に関しては非常に詳しく載っている。つまり、本来は日本というのは彼らのスコープの中には入ってなかったと。そう見た方がいいのではないですかね」
反町キャスター
「入ってなかった日本がいきなり急浮上してきたというのはどうして?」
保坂氏
「それは捕まえたら、それが日本人だったということだと思います」
反町キャスター
「そちらが先なのですか、捕まえてみたら、日本人だからこれはお金になるかというところで今回こうなった?」
保坂氏
「お金の問題になるかどうかはわかりませんけれども、少なくとも日本人の人質をカードとして使うんだったら、いつなのか、つまり、捕まってから今回オープンになるまで随分時間がかかりましたから、おそらくそのタイミングを伺っていたとも考えられるわけです。先ほど佐藤先生がおっしゃられた通り、安倍総理の中東歴訪にあわせて、こういう話が出てきたので、タイミングとしては彼らから見れば、カードの切りやすい場所であったと考えてもいいと思います」
反町キャスター
「難民支援、避難民支援ということを総理は言っているではないですか。日本はこう言っているわけではないですか。それが、たとえば、十字軍であるとか、そういう言い方をしてしまう。“イスラム国”が今回展開しているロジックというのはあまり気にしなくていい単なる言い訳か、そこに彼らが言わんとしている部分があるのかどうか、日本に対してですよ。どう見たらいいのですか?」
保坂氏
「日本に関しては、これまでの論調、他のアルカイダの論調を見ても基本的には極めてずさんです」
反町キャスター
「日本政府がやろうとしていることを理解していない?」
保坂氏
「ある程度は理解していますけれど、表面的で彼らに都合のいい部分だけを切りとって、そこを批判する。その裏の部分に関しては言わない。実際アルカイダであったり、“イスラム国”だったりに拍手喝采する人達も別に元の日本の政策についてきちんともう1回調べ直してみようという人達はほとんどいませんから、とり上げられた部分だけで判断をしてしまうわけですよね」
反町キャスター
「そうすると何をやろうとしても、たとえば、日本側がやっている中東における展開をやろうとしていることは、善意であろうとなかろうと、彼らから見た時に都合のいい理屈をつけて全部そう解釈されてしまう。そういうことになりますか?」
保坂氏
「そういうことだと思います。まさにこの声明というのはそういう部分ですね」
山内教授
「ジョーダンタイムズという各国を代表する新聞でも今回のことについて安倍さんはその任期において最初の経験ではなくて2回目の人質の問題に直面したと。従って、1度目というのは、アルジェリアにおける人質問題で、ここで10人の我々の同胞が犠牲になったわけです。今回それに続いて2回目だということで、今回が初めてということではない、そのあたりは有識者達は冷静に見ているわけですね。従って、安倍さんが何しようが、いろいろなことで“イスラム国”が、自分達が持っている人質を有効に政治利用するというのが彼らの常套手段だから。そういうことにある意味一対一的に対応していきますと、まさに“イスラム国”の思うつぼにはまりかねないということでもあるのではないでしょうか」

“イスラム国”との向き合い方
秋山キャスター
「日本の常識が通じない“イスラム国”ですけれど、日本はどのように向き合っていくべきなのでしょうか?」
佐藤議員
「今回の事件を受けて、右往左往するのは良くないと思っています。これまでと同じように中東諸国に対しては平和外交をやっていく。人道的な支援を継続するということが1番大事であって、今回の要求を受け、右往左往するのは1番良くないことではないかと思います」
反町キャスター
「我々は“イスラム国”とどう向き合ったらいいのですか?」
山内教授
「結局“イスラム国”というので、疑似国家だけれど、ですから、これは基本的にはテロリズムと、ジハード、聖戦、そういう非常に特異な団体ですから、向き合っていくというよりは、日本は今回の人質問題を除くと直接“イスラム国”に隣接している国でもないわけですね。ですから、我々としては“イスラム国”そのものと対決するというようなことについてのメッセージ性よりむしろ必要なことは、それによって出されている犠牲者や難民達、そうしたことに対する日本外交の伝統的な柱である人道支援、難民救済支援、こうしたことを柱にむしろ組み立てていくべきなのであって、あともう1つ、国際的なテロの否定と、それとの対決というようなことは、2つあわせると、冷静に対処する、これに尽きるのではないでしょうか」

佐藤正久 自由民主党国防部会長の提言:『不変不屈』
佐藤議員
「今回こういう事件が起きたからといって、日本の政策を絶対に変えてはいけない。人道的な観点の支援というのは継続すべきですし、またそういうテロには屈してはいけない。不屈の精神が大事だと思っています。こういうことをやったら、テロリストが人質事件を起こすかもしれないからやめようとか、そういうことをやってしまったらテロリストの思うつぼなので、そこは負けずに、しっかりと我々のやり方を貫いていくということが大事ではないかと。冷静に不変不屈という形で行きたいと思っています」

山内昌之 東京大学名誉教授の提言:『冷静に対決』
山内教授
「これは対処という言葉でも良かったのですが、対処よりはもう少し意志を示してもいいのではないか。人質、拉致された人達の救出、それから、人命尊重。そうしたことも含めて、基本的に言えば、本来これは共存する対象ではないですね、“イスラム国”は。ですから、対決という構図を持ちながら、そこでいろいろなやりとりの中で人質、我々の同胞を救っていく。それには冷静さが必要だ。しかし、基本的な立場として、彼らのそういう一方的、かつ暴力的な論理を許してはならない。この2つの意味を込めたわけです」

保坂修司 日本エネルギー経済研究所中東研究センター副センター長の提言:『情報』
保坂氏
「私は実は二十数年前にイラクで人質になっていまして、湾岸危機の時だったのですが、その時に何が1番重要かというと情報。正しい情報をどうやって入手して、それをどうやって分析し、発信していくかということを痛感させられました。それは9.11以降、一連のテロの中でも最も重要な部分は情報ではないかと思っています。特に日本の場合は軍事、武器、そういう点では制限があるわけですから、日本、あるいは最前線にいる日本のビジネスマンにとって1番重要な武器はおそらく情報だと思っています」