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2015年1月12日(月)
日本経済は成人したか アトキンソン社長の断

ゲスト

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝代表取締役社長
藻谷浩介
日本総合研究所主席研究員

英国人元アナリストが斬る 日本の“不良債権”問題
秋元キャスター
「アトキンソンさんは日本の文化財の修繕、補修に取り組んでいますが、かつてはゴールドマン・サックスに勤務されていて、1990年代、日本の銀行の不良債権について当時、政府や銀行側が数兆円と見積もっていた不良債権を20兆円と分析、発表したことで猛烈な批判を浴びたそうですけれども、当時、どんな状況だったのですか?」
アトキンソン氏
「もともとオックスフォード大学日本学部で、専攻が日本経済の戦後の発展だったんですけれど、日本に来てバブルがちょうど終わったところで、外国人として、はやい人では1989年1月でバブルが崩壊していると思っている人がいたんですね。少なくとも1989年の終わり頃にバブルが崩壊しているとは認識はしていましたけれど、日本国内といいますか、たとえば、日銀史を見てみますと、バブルの崩壊が1992年となっています。ですから、外資系と言いましょうか、当時は、その後、ゴールドマン・サックスだったんですけれども、不良債権問題は1989年でバブルが崩壊しているので、2年間経ったところで、当然このぐらいの金額でしょうと。それに対して国内は崩壊していないということになっていますので、この2年間のギャップから、そういう摩擦が始まったんですね」
反町キャスター
「それは発表されたわけですよね。日本には不良債権が20兆円あるんだよと。その時、国内での話というのは企業家、財界諸々を含め、日本の役所も含め、その話は皆そうですかと受け止めてくれたのですか?」
アトキンソン氏
「いや、もう全然ですね」
反町キャスター
「どういう反応だったのですか?」
アトキンソン氏
「当時は無限な成長をする日本経済の妄想の真ん中でしたのでオフィスの外側に朝から晩までうるさい音が聞こえてくるような実態にもなっていました」
反町キャスター
「街宣車?」
アトキンソン氏
「ええ。銀行のところに行って、反日派と言われて」
反町キャスター
「日本の勉強をして日本に来た。そういうことでよろしいのですか?」
アトキンソン氏
「そうですね」
反町キャスター
「日本に来て、研究して、リサーチをして、レポートを出したら、何だこれはと。あなたは反日かと言われていたわけですよね」
アトキンソン氏
「ええ」
反町キャスター
「日本を嫌いになりました?」
アトキンソン氏
「嫌いにはならないですけれども、これが難しいところなんですよね。たとえば、現在流行のおもてなしと言っても、個人個人のおもてなしというのは、海外の評価は非常に高いんです。1対1の関係、個人は。要するに、海外の観光客、対組織となりますと、日本のおもてなしというのは融通がきかないということで、最下位ではないですが、下から何番目という評判ですよね。自分は日本に来た時に、日本人の友人とか、周りの人達との付きあいで、(日本に)非常に魅力を感じたにもかかわらず、銀行という組織が相手になると、嫌いになるような場面も結構ありました」
反町キャスター
「組織としての日本、個人としての日本の違いということですか?」
アトキンソン氏
「簡単に言えば、自分との付きあいで嘘をつく、1対1の(個人との関係で)嘘をつく日本人はほとんどいないんですね。ただ、企業となると、いや、そういうの記憶にございませんとか、いや、そういうことはしていませんとか。あなたが言うような不良債権は絶対にありませんということを言われる。忘れられないんですけれど、うちの銀行にあなたが言うような不良債権の金額は絶対にないので、それを示すためにアメリカのニューヨーク・ストックエクスチェンジに上場させたということを言われて、その2日後、その銀行が倒産をしてしまいました。完全に粉飾決算をして、真っ赤な嘘を平気で言って、2日後、倒産という、そういう違いが出ているのではないですか」
反町キャスター
「日本で、自分の意見が受け入れられなくて、嫌になって、イギリスに帰ろうとは思わなかったのですか?」
アトキンソン氏
「思いました。その時期はありましたけれども、その時、非常に親しい友人に、日本人は銀行とか、そういう人だけではないですとか、日本に良いところがあるのではないかと。長年、日本に住んでいるにもかかわらず、伝統的なところとか、普通の町の人達とは接していないので、伝統的なもの、せっかく住んでいるので何かやればいいのではないかということを言われて、それでお茶をやりだした。お茶をやりだせば、自分の先生との関係や、いろいろなことがあって、こういう素晴らしい世界があるんだなと思って。昼間は銀行で嫌な毎日を送っていて、先生と一緒に茶室に入って、メールもないし、FAXもないし、嫌なことは言われませんし、優雅な時間、それで過ごしていって、その心の豊かさというのですか、日本の良いところを体験していたんです」
反町キャスター
「それで自分のバランスをとって、日本に長くいることになったと」
アトキンソン氏
「未だにいます」

金融マンから文化財修繕へ 日本の文化財の魅力
秋元キャスター
「もともと金融の世界にいて、それから、日本で茶道に没頭されていたというアトキンソンさんですが、日本の文化財に興味を持たれるようになったきっかけというのは何かあったのですか?」
アトキンソン氏
「文化財に興味を持ってやり出したわけではないんです。1回、ゴールドマン・サックスの不良債権の時代です。やっと終わったんです。言うのはあれですけれど、1992年に描いたシナリオ通りで、2000年のあたりでいきなり動き出して、あの当時、1992年のはやめにやれば、少なく済むし、はやく終わると言って、ゴールドマン・サックスは、やり出せばすぐ終わりますよ、ということを言って、日本を潰そうとしているゴールドマン・サックスと言われていたのですが、いきなりやり出せば、自分としてはアナリストとしてやり出せば絶対回復するということで、改正書を出して、ゴールドマン・サックスのお金で三井住友銀行に投資をして、1つの小さい支えにもなったんですね。どんどん良くなっていくということで、最初に銀行のリセッションを出した。最初に強烈な銀行の改正書を出した人物です。それが全部終わりまして、自分としてこのキャリアは終わりましたということで、1回引退したんです」
反町キャスター
「引退?会社を辞めたのですか?」
アトキンソン氏
「辞めて、復帰するつもりはなかったんですね。お茶をやったり、書をやったりとか、第2の人生、遊んでいました」
反町キャスター
「その時点で、アトキンソンさんは、一生遊んで暮らせるだけの蓄えがその時にはあって、働かなくてもよくなっていた」
アトキンソン氏
「まあ。それで、たまたま軽井沢の別荘の隣に、小西さんという別荘があるんですね。うちの会社の中身をちょっと見てもらえないのとか、助言してもらえないのと言われて、何をしている会社なのか全然わかりませんし、実際に行って、あまりにも向こうが熱心にいろいろ言ってくるので、1回見に行きますと。現在の(会社は)日光東照宮ができた時にできた会社で、ずっと漆を塗って、彩色して、飾り金具をやっている会社ですけれど、全国の最大手の会社でもありますし、伏見稲荷大社さん、出雲大社さんとか、平泉の中尊寺金色堂とか、そういうような有名な神社、仏閣や、香取神宮さんとか、鹿島神宮さんとか、ほとんどが小西美術の仕事ですね。そういう会社があるんだなと思って、ちょっと見て、銀行をあまりいいとは思わなかったんですけれど、こういう文化財の会社というのは、それはちゃんとやっているでしょうという期待感があって、実際に見れば、あまりいい状況ではなくて、銀行とあまり変わらない状態であったんです。(私は)はまりやすいタイプなので、結局月2日ぐらいが週1回になって、週2回になって、3回になって、知らないうちに、いきなり社長をやってもらえないのと言われて、社長になったんです」
反町キャスター
「隣の(別荘の)小西さんに社長になってくれと」
アトキンソン氏
「そうです」

自社をどう立て直したのか
反町キャスター
「日本の古い神社仏閣の修理をほぼ一手に引き受ける、いわば独占企業だとすれば、ちゃんと仕事をしていれば収入もあるし、技術者を抱えていれば、独占性も高いし、非常に強みもある会社ではないかなと思うんですけれども、悪かったというのは、バブルの時代だから、たとえば、不動産投資をやっていたのですか?」
アトキンソン氏
「そういうことはまったくありませんで、実際の仕組み自体が、あまり良くなかったんですよね。誰が見てもおかしいところがいっぱいあったのですが、なぜかそういうところは何十年間放置されたままで、直そうとしない。自分が入ってきて、そういうのを1個1個潰していって、それで変えていったんですよね」
反町キャスター
「神社仏閣を修理する会社に何か魅力があったわけですよね。何が魅力だったのですか?」
アトキンソン氏
「魅力というか、やっている仕事は非常に素晴らしい仕事ですけれども、歴史に残るというのは大袈裟ですけれども、そういう仕事はなかなかないですよね。ただ、1番のポイントだったのは、それを実際に、冬寒くて、夏暑くて、ほとんど外で厳しい仕事を黙々とやっている職人がおかれている環境が良くなかったことが、自分が社長を引き受けた最大の理由ですよね」

“職人”の問題点
反町キャスター
「環境が良くないというのは給料の話ですか?」
アトキンソン氏
「給料というよりは、たとえば、いろんなことがあって、流行もあったと思いますけれど、自分が入った時に40%の職人が非正規で、パート扱いみたいなことにされていました。先ほど申し上げたいろんな細かいような無駄というか、職人部門の個性ではなくて、本部だとか、いろんな腐っているところがあったりして、それで無駄な経費がいっぱいかかっているんです。ああいうのを全部、インターネットの時代でもありますし、昔のやり方でやる必要はないので、職人部門を守るために、それ以外のところを徹底的にコスト削減やって、経費にお金をかけないようにしたとか、いろんなことをやって、職人を全員正社員に戻しました。10年近く昇給がなかったのにもかかわらず、いろいろなところで改善をしていって、生産性を上げていけば、予算が増えない中で、5年間で毎年毎年昇給もしています。研究もやりまして、設備投資もやって、それで職人の仕事の安定性というのか、正社員にすることによって、これは良い話ですが、ベビーブームが起きているんですね。本当に、毎週のように第2子ができましたのでということで。正社員になって安定的な環境で技術を磨いていって、素晴らしい仕事を残す仕組みに変えることによって、皆さんが前向きになっていって、本当に好循環が起きています。自分が銀行を辞めた時に、小西美術を見て、文化財の世界というのはきれいな聖地だと思っていたにもかかわらず、必ずしもそうではなかった、銀行とあまり変わらない。ただ、やってみれば、いつも思いますけれども、トップがあまり改善をさせないのかもしれないんだけれども、(日本は)基礎ができている国ですよね」
反町キャスター
「日本は?」
アトキンソン氏
「たとえば、文字が書けない人がいっぱいいるのかと言いますと、ほとんど皆さんできます。計算はちゃんとできます。さぼらない。やれと言えばちゃんとやります。腕を磨けといえば磨きます。上が変わることによって、あんな力が出るとは思っていなかった。それによって自分の日本に対する考え方が根本から変わったんです。やろうと思えばできるのではないのかということで、証明していたんですよね」
反町キャスター
「神社仏閣の修理をする業者の、会社の社長になられた時に、一番大切にされたモットーというのは、この4つ、力、知識、情熱、知恵だということですけれど、これはどういう意味ですか?」
アトキンソン氏
「実際に5年間の改革の中でよく聞かれるのは、何が決定的だったのかと、決定的なものは1つもなかったんです。強いて言えば、正社員にしたということで、プラスの効果が大きかったんですけれど、細かい、小さな問題を解決しても、毎日のようにやることによって、5年間も経てば、若い人も増やして、設備投資もやっていて、過去にあまり相応しくないような工事を無償で、それを全部やり直しして、昇給をして、正社員にしたと。にもかかわらず5年間の利益の平均が前の5年間の平均より84%増えています。なぜそう増えたのかというのは、どう考えても、コストばっかりかけていますけれども、なぜそうなったのか。簡単ですよ。生産性が本当に激変をしてきたんですよね。生産性が良くなった理由がいくつかあるのですが、1つとしては、この業界では、若い人が入らないということを言うんですね。実際には予算が決まっています。神社仏閣の数というのは、そんなに増えません。そうしますと席の数が決まっています。明治元年ですと日本人男性の平均寿命というのは、平均ですけれども35歳。大正元年40歳ですよね。現在80歳近くです。席の数が決まっています。寿命が延びれば延びるほど若い人が入らないではなくて、入れないんです。譲ってもらわないとなかなか席が空かないですね。同時に、生涯現役のつもりで、言うのあれですけれど、いつまでたっても去っていってもらえないという傾向がないわけではない」
反町キャスター
「でも、ベテランの古い人には技術があるのではないですか?」
アトキンソン氏
「その問題ですけれど、若い人、この素晴らしい職人というのは、簡単に言えば、4つが揃っている人を言うんです。力があって、情熱があって、知識というのは、要するにknowledgeですよね。知恵というのは、wisdom。だから、こう修理をすればいいと言うんだという、こういうものを修理するのですというのではなくて、こういう微妙なところで、知恵を持って、要するに、その時、その時加減することですね。若い人というのは力と情熱を持っているんです。この2つ。ただ、知識と知恵がないです。上の世代に行きますと、極端に上の方に行きますと知恵と知識がむちゃくちゃあります。ただ、情熱と力がないです。体力が、どうしても70代とか、60代というのは、どうしても体力が落ちます。ただ伝統的な業界ですので、年功序列で毎年毎年上がっていって、給料も上がっていきます。そうしますと、いつまで経っても上がりっ放しで、上の方の世代から若い人を雇って、ちゃんと技術が継承されるようにしなさいと言われたんです。何だけれど、給料はごく一部の人が、何割の給料、予算を使っています。そうしますと、この問題をどうするのか、たとえば、同時に親方制度ですから、責任者は年配です。皆年配に譲ります。ただ、情熱と力がなくなっていっていることによって、なかなかどうしても素晴らしい仕事を残したいという意欲が、多少劣ると言うことで、品質が下がるというような傾向も見られました」
反町キャスター
「でも、それをやると、要するに、職人の間にいわば革命を起こすようなものではないですか。そうすると親方が若い連中を引き連れ、小西では仕事をやらないよと、どこかに行っちゃう。そういうことにはならないのですか?」
アトキンソン氏
「問題をどうしたのかというと、上の世界には去っていってもらいたくない、知恵と知識あります。ただ、現場の責任者はそれを譲ってもらいたい。同時に若い人が入るように、減給に応じてもらいたい。一般企業と同じように50代の半ばぐらいで、そこから緩やかに減っていって、定年退職をすれば、翌日からドーンと減るという形で、その予算で若い人を雇って循環をさせるんです。それによって、48歳だった平均年齢が、現在37歳の平均年齢まで下がった。上の世代がどこかへ行ってしまったことによりできたことではなくて、ほとんどそのままで若い人を入れたことですよ。どういうことなのかと言うと、先ほどの話と一緒で上の世代を切ることによって解決するというのは簡単ですが、これでは経営と言えないですね。これはシンプルアンサーです。その人達を残したままで、若い人が入れるような形に持っていくこと、それで日本人の平均寿命が延びることに伴う経営問題ですね。年功序列というのは40歳で他界してもらえば、会社はそのまま循環するんです。年功序列で情熱と力が減っていく問題が表面化してこないです。戦争が終わって、平均寿命が延びることによって、力と情熱が低下する問題が表面化してきた」

老舗企業の英国人社長が斬る 高度経済成長といまの日本
反町キャスター
「日本型経営として年功序列とか、終身雇用、これが日本の経済成長だというものがあったのですが、それはやめた方がいい?」
アトキンソン氏
「実際問題としては先ほどの不良債権もそうですけれども、私が感じるところですよね、どちらかと言えば、日本は結論有りきの妄想の考え方が多い」
反町キャスター
「どういうことですか?」
アトキンソン氏
「たとえば、高度成長の時期を真面目に分析しますと、ほとんどの場合、おっしゃるように日本はジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時には持ち合い制度、結果ですとか、いろいろなことを言われました。バッジをつけているとか、朝こうやっているとか、いろんなことを言われていました。外国人は漢字を勉強すれば頭の構造が良くなるとか、そういう本もありました。いろんなことを言われていたんですけれども、そうすると妄想と言いましょうか…たとえば、1969年に日本はドイツ経済を抜いて上にいったんです。その時に、こういう理屈があったんです。ドイツ経済は技術大国。日本経済は、ドイツ経済を抜いた。ですから、日本は技術大国であるとなったんですよ。ただ、哲学の勉強をすれば、そういうような、要するに、2つの必ず因果関係のないようなものを並べて結論づけるというのはやっちゃいけないことです」

GDPと人口増の関係
アトキンソン氏
「人口とGDPの相関関係はすごく強いんですね。地球上で1億人以上の国家というのは、11か国しかありません。当時としては先進国で1番大きい国はアメリカで、2番目に人が多かった国は日本です。3番目はドイツで、その続きだったんですよね。要するに、人口が多かったんです。ですから、諸外国、先進国と同じような1人あたりのGDPになって、たとえば、イギリスは5000万人だったと思いますけれども、日本は1億3000万人になりつつあるところだったので結局は上になることは間違いないですよ、人が多いですから、同じ生産性になると仮定しますと。それは日本の技術がすごいからドイツを抜いたのではなくて、ドイツは8000万人で日本は1億3000万人だから、それで技術のドイツだから、日本はGDPの総額が大きいから、そうなったのではなくて、人が多いから。1人あたりの技術力を見ていないです。だから、総額が多い。それは人口が多いからということを無視して、ドイツは技術大国だから日本は総額が上になったのだから、技術大国であると。実際には、この分析はどこにもされていないようですけれども、そもそも戦争になる前、日本は実は世界6位の先進国だったんです、GDPで。実は江戸時代でも同じような地位だったんですよ、すごく高かったんです。明治になった時につくっているものを入れ替えただけですけれど、もともとのGDPとしては地球上で、すごく高いところにもともとあったんです」
藻谷氏
「イギリスのエリザベス女王の頃ですね。イギリス人は500万人、日本は当時1500万人でした。既に3倍いて、だから、当時の植民地主義のもとでは、誰も日本を植民地にすることができなかったんですね。江戸が終わった時に3000万人まで人口増えていまして、当時のヨーロッパのほとんど普通の国よりも全然大きいので、そう簡単に日本は侵略できない。ちなみに戦争が終わった時に、日本国内にいた日本人は7200万人。それがそのあと、戦争が終わってからほぼ1.9倍に増えた。ところが、そのことを日本人自身が知らないですよね。1億人のままみたいに思っている人が多いのではないでしょうか」
アトキンソン氏
「同じ民族で、こんなに増えた先進国は存在しません。結局1人あたりをそのまま持っていって、人口があんなに増えると高度成長になりますよ。なぜかと言うと人口高度成長ですから。ですから、経済高度成長にもなります。実際には、ドイツを抜いた1969年、日本のGDP総額ですから。名目総額がドイツの名目総額を抜いた年が何の年なのかと言うと人口が抜いた時です」
反町キャスター
「日本型経営がいいとかは関係ない?」
アトキンソン氏
「たまたまです」

アベノミクスへの評価は
アトキンソン氏
「たとえば、失われた20年と言いますけれど、実際の1人あたりの名目GDPは減っていないです。景気は、人口が増えないから、名目GDPもしくは実質GDPの総額が増えるか、減るかということだけです。人工が増えない中でGDPをプラスにもっていくのは簡単なものではないです」
反町キャスター
「日本政府は現在それをやろうとしていますよ」
アトキンソン氏
「アベノミクスに対しても良い悪いと言っているではないですか。ただ、500兆円ですから1億人を超える地球上で11か国しかない極めて経営しづらい国なのに、500兆円というのはそのへんの5兆円とか、10兆円の国ではないです。そうすると500兆円を、たとえば、1%増やしても5兆円です。それは普通の小さい国の1年分のGDPを増やすことです。たとえば、サッチャー政権の大改革というのは12年かかりました。レーガノミクスというのも、だいたい効果が出るまで7、8年かかるが、それが10年かかっています。安倍さんは2年ぐらいしかやっていないのに、500兆円を動かさないといけないのに、それが良いとか悪いとかと言っているのは、これも妄想の世界ですよ。うまくやっていたとしても、すぐにその影響が出てくるのかというと出てきません。同時に、人口が増えない中でGDP総額を大きく成長させるということは物理的に無理です」

これからの日本の成長分析“観光立国”
秋元キャスター
「これからの日本にとって期待できる分野は?」
アトキンソン氏
「これまで国内市場で経済を発展させてきた日本です。その間に1つの大きなマーケットを開拓していないんです。そのマーケットというのは観光ビジネスですよね。世界で見ますと、これは国連の数字ですけれども、全世界のGDPに占める観光業というのは9%。それに比べて日本は2%。そうしますと。2%の貢献度合いを9%までもっていくことによって、500兆円に対してだいたい8%弱の成長率が期待できます、40兆円。すごく大きなマーケットができるんですよね。実際問題としていろんなことをやらないといけないんですけれど、全地球上で9%の貢献度合いですが、先進国はだいたい皆、9%前後です。そんなにバラつきはないです。同時に、日本は観光立国を実現していくための資源というのは、ほとんど既に揃っています。条件としてはだいたい4つの条件があると言われています。1つは天気。暗い、寒いはあまり人が来ない。その次は食事。その次は文化。4つ目は自然です。よくよく考えれば、日本は沖縄もあれば、雪もあります。あまり知られていないのですが、1㎡あたりに対する植物、動物の種類の数は日本が世界一です。日本は全部揃っているのでやろうとすればできます。ポテンシャルは持っています。これまでは、それに対して全然力を入れてこなかったから、現在はできていないということを言われても、できていなくて当たり前ですけれども、やろうと思えば時間がかかりますが、いろんな課題も抱えていますが、これ以上に増える可能性のあるところはあまりないです。同時に、もう1つのポイントがありますけれど、観光業というのは世界一伸びている業界でもあります。ですから、9%に遅れをとっている部分を伸ばしていくだけでなくて、世界一伸びている業界は観光業です。最近イギリス政府が出している観光戦略ですけれども、2013年~2025年にかけて観光業収入を2.7倍に持っていこうと。既にもともとの考え方を上まわっているペースで実現されていっていますので、おそらく2.7倍ぐらいまではいけると思います。そう言う意味で、日本も農業もあって、いろいろなものでたくさんのことをやらなければいけない、500兆円の経済ですから。これまで1番力を入れてこなかった世界一の伸び率、同時に貢献度合いが非常に高いもので、このままこの課題に取り組むことによって、ある程度極端な言い方かもしれないけど、第3の矢イコール観光業だと思います」

“観光立国”には何が必要か
秋元キャスター
「日本が観光立国になるために必要なことは何でしょうか?」
アトキンソン氏
「ホテルがない。新幹線は正確に動くと言われますけれど、正確に動くかもしれないけれど、極めて高い。たとえば、東京から出雲大社に行くために行ってくるだけで、格安で行けば、ほとんどロンドンまで行けます。6~7万円かかります。ですから、交通機関をもう少し…人が増えれば値段を下げてもらわないと困ります。ホテルの実際の数も足りません。部屋のいろんな値段もありません。食事は割と揃っています。あと多様化しなければいけない。ですから、先ほどの話みたいに、どうすればいいのですかという質問には、簡単には答えられません。ビーチリゾートもつくらないといけない。文化財も、ちゃんと整えなければいけない。食事はだいたい大丈夫ですけれども、英語の問題もある。あとは日本人のためにできている国ですので、いろいろなロジスティックスと言いますか…そういうことをやらなければいけないです。くだらない例ではあるのですが、たとえば、成田から出発する飛行機というのはだいたい7時45分ぐらいが始発だと思いますけれど、最初の成田エクスプレスが成田に着くのは7時15分、間に合いません。最後の着陸する飛行機は、観光客も来ていますけど、その飛行機が着陸すると最終の成田エクスプレスは行ってしまっています。こういうのは全部揃わなければいけないですよ。自分はいつも思いますが、たぶん昔、外国人は来なくていいという考え方があったと思いますね。日本人の入国手続きのためにたくさんのカウンターがあるんですけれど、大行列をつくっている外国人のため(のカウンターは)数か所しかありませんね。なおかつ海外の一般的なファーストライン、ファーストクラス、ビジネスクラスの人達、優先的に出て行く、入っていくためのものもないです。こういうものを全部考えなければいけないと。英語の表記はほとんどどこにもないです。あるとすれば、なぜかネイティブの人のチェックを入れていませんので、英語は英語ですけど、通じない英語になっている。これはチェックしないといけない。日本は、たとえば、観光客1300万人となっていますけれども、京都の文化財、伝統技術、美術館を訪問する外国人の数はだいたい25%ぐらいです。イギリスはだいたい80%、フランスは90%、イタリアはほとんど100%。秋葉原とか、100円ショップではお金を落とす仕組みができていますけれど、文化財に行ってちゃんとお金を落とせる、落としてくれる仕組みができていません」
反町キャスター
「見るだけではダメなのですか?」
アトキンソン氏
「見るだけでは満足しません。これは大事なポイントですが、ご自分でお客さんを接待するコツを考えていただければ観光業はよくわかります。ただ、見せれば良いということであれば短期間で終わっちゃいます。京都に行けば数をこなせば1日、2日間ぐらいはできます。ただ、長期滞在してもらわないと毎年3000万、5000万の人が来るとなれば10年で何億人ぐらいになりますか。リピートも増やさないといけないと。日本に来てサーッとまわって全部終わりですと言って2度と来ませんとなったら3000万人に1回到達するかもしれませんが、そのあとは減っていきます。ですから、継続的にした考え方に変えていって、1週間京都に行く。ご自分で亭主として努めて行った時に1週間ぐらいの観光資源がある。伏見稲荷大社に行けば1日いないと1週間の時間の配分にはならない。たとえば、奈良に行けば、3日間、奈良にいるというコースを組んで、そうなら春日大社に1日いないといけない。1日いるという考え方からするとどうすれば1日楽しんでもらえるかというと、食べるところ、休むところ、お茶をするところ、何か説明するところ、文化財とか、イベントものがないと1日にはならないんです。そういう発想の転換が必要ですよね」
藻谷氏
「こういうことはお客さんをやっているとわかる。接待される側だといかんのは、バブルの時もそうですけれど、自分は業者だ、旅行業、観光業をやっていますという人がこれまでの発想でやるとおそらく行かない。実際、自分がお客としていくらお金を使ったか、洋服を買っている人が洋服屋をやるべきで、自分が旅行をしている人間に入れ替わる必要があります」

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝代表取締役社長の提言:『観光客5000万人・地域デザイン・文化財修理予算200億円へ』
アトキンソン氏
「国の大きさからすると観光客は5000万人の目標を立てた方が相応しいと思います。先ほど話がありましたように観光業というのは、文化財をもっと解説した方がいいですねということで、抽象的な話ではなくて、地域デザインで、どこそこの地域に何日滞在できるために総合的なデザインをする。どこに泊まる、何を食べる、どこに座るとか、全面的にやった方がいいと思います。文化財のところで日本は投資してこなかったんです。観光資源のかなり重要な役割を果たすべき日本の素晴らしい歴史だとか、精神だとか、いろいろなことを理解してもらうために、楽しんでもらうために、お金を落としてもらうところであると思います。投資をしてもらわないと利回りが期待できません。イギリス人が文化財に使っている予算は1人あたり780円。金額として500億円。日本は1人当たり64円で81億5000万円。私としては200億円ないと、綺麗な状態でわかりやすく、皆に楽しんでもらって、満足してもらって、お金を落としてもらわないと、来ても意味がない観光業になりますので、落としてもらうために200億円の予算に持っていかなければ観光立国は実現できないと思います」

藻谷浩介 日本総合研究所主席研究員の提言:『素直に聞いてわかったら実行!』
藻谷氏
「実に正しいことをおっしゃっているので、事実これが儲る話ですよ、ビジネスにとっては。国にとっては、諸外国が著しく低いのを増やしたって絶対おかしくないはずですよ。全員わかっているはずです。ただ、ああだこうだ理屈を言ってやらないのですが、これはやった方がいい。特に観光事業の方は人間を入れ替えて投資をすべきですね。これが1番伸びしろの分野で、日本の内需拡大の最大のポイントです。ちなみに、政府もそう言っている。ただ、実際にやるのは民間ですよね。民間の方は素直に聞いてわかったら、実行ではないでしょうか」
反町キャスター
「政府主導でやれることには何があるのですか?」
藻谷氏
「政府はやると言っているので、そのこともあって、わからない民間の方もそうかなと思っているので、政府の役割はそこで終わっている。正確に言うと、旅館業法とか、岩盤規制があります。旅館業法は非常に問題です。規制が多くて自由に営業ができません。イノベーションができません。ですが、主に民間の問題です」