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2015年1月8日(木)
曽野綾子×山本晋也が語る戦後70年と危機感

ゲスト

曽野綾子
作家
山本晋也
映画監督

曽野綾子×山本晋也 どう見る未年の日本
秋元キャスター
「2015 年は未年です。戦後の未年にどのようなことがあったのかを見ていきたいと思うのですが、1955年、自由党と日本民主党が合同した自由民主党と、左派と右派が統一した日本社会党が誕生、いわゆる55年体制が成立しました。1967年に第3次中東戦争が勃発しています。1979年にはイラン革命によって、第2次オイルショックが起こりました。日本も原油価格の高騰と共に大きな騒動となりました。トイレットペーパーがなくなったりしましたよね。1991年、湾岸戦争が勃発しました。また、ソ連が崩壊し、冷戦が終結しています。日本では湾岸戦争後、初めて自衛隊が海外派遣され、ペルシャ湾で機雷掃海にあたりました。ちなみにバブル崩壊も通説としてこの年とされているということです。2003年のイラク戦争が勃発しています。このように大きな動きのある年になることが多かった未年だったんですけれども、2015年の日本は、安倍政権が長期安定政権に入るのではないかというふうに見られる。一方で、世界ではイスラム国の問題など新しい懸念が広がっています。今年1年をどのように展望されていますか?」
山本氏
「寅さんが旅に出るとよくハガキを出しますね。よくテーブルにポコンと乗っている。そこにある字が書いてある、汚い字で。あれに反省と後悔の日々を暮しています。要するに、完璧ではない人間にとってはそうだと思うんです。毎年毎年。だから、できるだけ次の年は、現在、未年という年ですけれども、その年はなるべく良い年にしたいなという、自分の何か想いがあるだけで」
反町キャスター
「今年、何か仕掛けたいとか、個人的な何かはあるのですか?」
山本氏
「それは曽野さんとお会いして、マダガスカルに行って、しみじみ思ったことは、自分がやってきたことに対してこだわるのではなくて、やってこなかったことは何だったのだろうと。マダガスカルの医療支援みたいなことは初めての体験ですから、観光地巡りもしていないし。そういう意味でやって来なかったことに挑戦をしたい年にしたいということは…」
曽野氏
「何でも物事を継続して考えるものですから、今年になって急に悪くもならないだろう、良くもならないだろうと。根性が良くなることもないから、ほどほどで、ずっとつながっていって。ただ、私は、ここ1、2年、本当に日本は世界で最高の贅沢をしていると思うんです。庶民まで」
反町キャスター
「我々がですか?」
曽野氏
「そうです。それは第一に、水と電気が途絶えない。それから、交通が便利とかね。銀行員がインチキしないとか、お巡りさんが賄賂をとらない、いくらでもありますが、これだけ揃った国は本当にないです。ですから、これは私達の先人、同時代のおかげですね。ですから、それを私は深く感謝して、これを続けていくには、皆がどれだけの努力をしなければいけないかということに、甘くならないでいたいと思います。若い人達を見ると、そういうことを言いたいですけれども、言ったって無駄ですよね」
反町キャスター
「いや、その話を聞くためですので、よろしくお願いします」

マダカスカルで見たもの
秋元キャスター
「さて、今夜のゲスト曽野綾子さん、山本晋也さんは、昨年の11月8日から22日まで2週間に渡って、曽野さんが長年、取り組んでこられた医療支援活動のため、マダガスカルを一緒に訪問されたということですけれども、マダガスカルがどんな国なのか、ちょっと簡単に説明させていただきたいと思います。マダガスカル共和国はアフリカ大陸の南東にありますインド洋の島国です。人口は2290万人と。面積は58.7万平方キロメートルということで、これは日本のおよそ1.6倍だそうです。国民1人当たりの年間所得、平均でおよそ5万円という日本とかなり違う国なんですけれども」
曽野氏
「何のために行ったのかと、皆さんお思いになるかと。簡単に言いますと、2011年からですね、医療のない国にですね、医療設備もなく、技術もない、お金もない、そこにどんな病気もあるんですけれど、たまたま口唇口蓋裂と言って、口蓋も破れている子もいて、そういう生まれつきの子供がいて、手術すると治るんです。でも、そうしないと発音はうまくいかないし、子供の時はおっぱいがみんな出ちゃうと。手術してくださる専門のドクター達が日本中たくさん上手な方いらっしゃるんですけれども、たまたま私が存じあげた、昭和大学というところの病院の先生方で、専門の方が何人かいらっしゃる。それで昭和大学が医療班をつくって、マダガスカルに送るようにしてくださった。普通、皆さん、ご存じないと思う。私も知らなかったんですけれど、子供ですよ、全部。手術は。年の差は少しあっても。子供は全身麻酔です、必ず。大人だったらちょっと痛くても我慢しなさいというけれども、絶対動きますでしょう。だから、全身麻酔、まず麻酔器に付属するあらゆるものがいるようになって、でも、それで2011年、2012年、2013年、昨年で、4回参りまして、100人の子供を既に手術して、1人の問題もなくうまくいった。とっても。ただですよ。全部。貧しい子供を選んでやっている」
山本氏
「僕は1時間以上、こうやって上から俯瞰目で映像を撮っていまして。その手術の最中にまで停電するんですよ。手術室で、窓がある手術室はあり得ないでしょう。皆ライトを持っていますが、停電になるんですよ」
反町キャスター
「これ偶然ですか?」
山本氏
「いや、毎日停電があるんですから」
曽野氏
「雨季です。私は言われていたんですね。ドクター達がどうせ毎日手術されるんだから、外行かないんだからいいですと言ったら大変な間違いで、落雷です、毎日。豪雨がきて、落雷して、停電ですから」
山本氏
「この雷なんてものは…。人生で雷が怖いなんてことは1度もないんですよ」
曽野氏
「懐中電灯で手術しているんですね。懐中電灯よりもっと困るのは、麻酔器が止まっちゃうんです。
秋元キャスター
「この時の、停電の時は麻酔器が止まっちゃっていますか?」
曽野氏
「麻酔器は手動でやったんですって。いろんな薬を入れて、サクションで。吸引しなければいけない」
山本氏
「手動だから、この先生達は日本がとんでもないような状況になった時に、この人達だけは大丈夫です。懐中電灯やろうそくで、平気で手術しますよ」
反町キャスター
「電気がとまっても、平気で手術しますね」
山本氏
「手術します。僕は目の当たりにして見たんですね」

世界で見た貧困と豊かさ
反町キャスター
「手術は口に傷ができる、割れている子供達の手術の他にも、たとえば、マダガスカルで他にどういうものを見ましたか?」
山本氏
「あと学校を聞いても、学校がないと言うんですよ。学校がないという町はないだろうと。マダガスカルで、2番目の町ですね。アンチラガというのは。アンタナーマリボ。曽野さんがマーケットとか、観光地みたいなところにまったく興味を示さないんですよ」
反町キャスター
「行って楽しいところに行っていない?」
曽野氏
「見せてあげなかったんです」
山本氏
「温泉もあるし、ちょっと行ってみようと言えないんですよ。それで1時間以上歩くんですね、マーケットを。凄まじいものを売っているんです。僕らはわからないけども。食べて良いのか悪いのかがよくわからない。だけど、その中をずっと歩いている時に、1つだけ感心したのは、店と店の間で小学校2、3年ですかね、勉強をしている子がいたんです。初めて見た勉強をする子供。あのマララさんが言っている、ワンブック、ワンペン、ワンノートで。その女の子にはティーチャーがいないだけです」
曽野氏
「学校へ通えない、親も望めないんです。畑させなければいけない。牛を飼って、羊を飼っているしかない。牛なんかめったにいませんね。だから、そういう仕事をさせるから、学校にやれないのが、普通のこういう貧しい国の実態ですね。学校はどこかにあるのでしょうけれど、来ない子がいっぱいです」
反町キャスター
「子供達の様子をどう見ましたか?」
山本氏
「明るくて、目がきらきらしてね、何て言うんだろう、日本にいないです。ああいう子は」
反町キャスター
「それはどう見たらいいのですか。貧しい国に行って不幸な様子を見てきたのかという角度ではないのですか」
曽野氏
「ないです」
山本氏
「これも行ってみないとわからないので」
曽野氏
「子供は何人かとお母さんに聞くと、12人とか、14人で、この子が最後の14人目よと言うのがいっぱいいますね。珍しくない。17人もいたんです。日本でおっしゃったように、子供が産めて育てるような境遇をつくらなければ、子供を産めないというのは、まったく違いますね。昭和大学から一緒に行った医学生の何人かいらっしゃる学生さんが、その中の4人いて2人の人の発表会があったんですけれども、あんな貧しい中でも、12人と14人と産んで、楽しそうに子供を慈しんで育てている。だから、日本の言っていることは嘘ですね。政府の言っている(ことは)本当に嘘だということがわかります」
反町キャスター
「年収5万円で学校に行けなくても不幸ではない?」
曽野氏
「全然違う。幸福は学校だけではないですから。それぞれ幸せがあるということを発見していることにおいて、日本人よりずっとすごいですよ。個性的です」
秋元キャスター
「周りの環境の違いというのもありませんか?」
曽野氏
「環境もあるかもしれませんね。でも、皆が幸せなんです、ここの国では。もちろん、食べられない子もいるからね。それを何とかして救おうというのが、いろんな人達がやっていることですけれども。でも、日本みたいに大学に行けなかったから、それだけでもう一生終わりだなんて発想は、ここの国には全然ないです」
山本氏
「ないですね」

現在の日本は豊か? 貧しい?
秋元キャスター
「ここから日本の話を聞いていきたいと思います。まずこちらのデータですが、日本の相対的貧困率。相対的貧困率というのは、仮に国民の所得を順番に並べた時に、所得の半分に満たない人の割合。2012年の場合は、日本では年間の所得が122万円に満たない人の割合ということになります。日本ではこの貧困率が右肩上がりです。2012年にはデータがある1985年以降、過去最悪の16.1%と。およそ6人に1人が貧困層ということになりますけれども、これはOECD加盟国34か国中29位。つまり、5番目に悪い数字ということになりますね。曽野さん、日本では近年、貧困層が増えているとか、格差が広がっていると言われていますが、日本は貧しい国になってきているのですか?」
曽野氏
「違いますね。貧困と言う言葉がぐちゃぐちゃになって使われていると思いますね。つまり、こちらの貧困というのは、水が出ない、水道の恩恵を受けていない。電気は毎日停電ですからね。それもありますけれども、電気も引かれていない。盗電しているんですよ。東京電力ではないですよ。電気を盗むんです。盗電する。それでも、盗電した分を払う、家主から払わなければいけませんから。そういうのも一切ない。今晩食べるものがない。それから、濡れて寝ています、アフリカでは。しばしば。屋根が、雨がザーッと漏れる。私が知っているシスターのところに保育器、赤ちゃんを入れる、あれを送った時に、立派なカーテンボックスに入ってきます。それをほしがった未亡人がいたんですよ。シスターが何のために何に使うのと言ったら、何のためだと思いますか。子供のうえに、雨の日、ザーッと雨がかかるんですって。だから、あれを切り開いて、子供の上にかけて、カーテンですよ。雨に直接当たらないようにしてやりたいと言ったと。それほどの貧しさだから、犬と違って人間は、屋根の下に寝ていると思っていますけれども、特殊な人以外は。そんなことはないです。今晩食べるものもない。学校も行けない。いろんなことで。だから、そういうものを貧困と。それは、つまり、高いレベルの人の中間かどうかというので、比較貧困ですね」
秋元キャスター
「相対的なことですね」
曽野氏
「衣食住がないんです」
反町キャスター
「そういう意味でいうと、現在の日本で、たとえば、貧困とか、貧しさを議論することというのは、曽野さんから見るとおかしいということになりますか?」
曽野氏
「あなたのところ別荘何軒あるの、うちは一軒よ、という感じ」
山本氏
「一軒しかない方が貧しいことになるんでしょう」
曽野氏
「そうですね」
反町キャスター
「ただですよ、そうは言っても、日本という社会の中における、貧困、豊かさと貧しさというのは…」
曽野氏
「感覚的な貧困ですね。感覚的には正しいと思うんですね、比べれば。あそこの家には何がある、うちはないということですからね。だから、正しいこととは思うのですが、絶対的な食料にかけられるお金とか、教育がどれだけとか、義務教育をやっているかということだったら、全然、比較にもならないと思います」
反町キャスター
「山本さんはマダガスカルに行かれ、マダガスカルの貧困、日本の貧困、いろいろ感じる部分あると思うんですけれども、どう比較整理するのですか?」
山本氏
「要するに、日本の場合、貧しさは物質的なことよりも、欲求とか、自分の欲望を満たされないということに、そういう面での貧しさみたいなことを言う。だから、十分痩せていて、これ以上ダイエットする必要がない人が、まだダイエット何キロしなきゃとやっているでしょう。ああいうことが、僕はこの国の貧しさだと思いますね」
曽野氏
「精神的な。自立していないですね。人と比べているわけでしょう」

戦後70年・何を見失ったか
秋元キャスター
「ここで戦後70年の主な出来事をまとめたんですけれども、終戦直後の焼野原から始まりまして、20年足らずの間に復興を進めて、1964年には東京オリンピックを開催します。高度経済成長を迎えた日本ですけれども、1968年には世界第2位の経済大国になります。その後、バブル景気、それから、崩壊を経験しまして、失われた20年と言われる低成長時代には大きな震災も経験をしました。そして、再び、東京オリンピック、パラリンピック招致に成功しまして、2020年と、その後に向けてさらなる発展につなげていくということができるのかが問われているわけですけれども、お二人は、日本の変化を見つめてこられましたけれども、終戦直後と、それから、現在の日本人とで精神的な面で、こう変わってきた。変質してきた部分というのはあると感じますか?」
曽野氏
「変質したというよりも、私は貧しさと貧困により得をしたと思っているんです。私は1945年に、命の危険は、明日まで生きていられないだろうと思いながら、苦しい思いも度々しました。それから、本当の飢餓ではありませんけれど、明日のご飯があるだろうかと。洗濯石鹸がないとか、着る服がないとか。そういうのを知っていますから、衣食住というものに対して、衣食住があって、食べるものがあって、着るものがあって、それで屋根がある。それがどんなに幸せかということがわかるんです、実感として。ですから、現在ありがたくてしょうがない」
反町キャスター
「非常に厳しい体験があればこそ、現在の幸せがあるとすればですよ、僕は昭和39年生まれなんですけれども…」
曽野氏
「お気の毒です」
反町キャスター
「曽野さんから見ると、たぶん秋元さんはもっとかわいそう。要するに、幸せが感じられない世代になってしまうわけですよね」
曽野氏
「そうです。現在の教育が、もっと与えようと。いいこともあるんですけれどね。もっと理解されるようにしてあげよう。チャンスを与えてあげよう。そうではなく、人間は貧乏だけれども、できることがあるんです。子供というのは貧乏でなければ増えません。はっきり申し上げて。貧困な状態でないと増えないです、子供というのは。だから、子が育てられるようないい環境にしないで、もっと食べるものもなく、もっと家も狭く、貧乏になっていたら、子供が増えます。でも、政府はそんなことは言いません」
反町キャスター
「言いませんよね」
曽野氏
「はい」
反町キャスター
「だって現在、政府は少子化対策で、子供を、だから、1.43とか、1.6とか、増やそうと言っているけれども、別に貧乏になれとは言いませんよね」
曽野氏
「そうです」
反町キャスター
「貧乏になって子供を増やそうとは、絶対、政府は言いません」
曽野氏
「現に飢餓地帯に行きますでしょう、そこで受胎率が上がるんですって。それは主として危機感を感じるらしいんですよね。だから、受胎する。私は、貧しくなったら、セックスどころでないだろうと思っていた。そうではないんですって。受胎率が上がって、増えるんですって」
反町キャスター
「その危機感が受胎率につながっていく?」
曽野氏
「そうです」
秋元キャスター
「動物の本能的な」
曽野氏
「そうです」
山本氏
「そういうものが人間にはあるらしい」
曽野氏
「そういうことを政府は認めないし、一般もとんでもないと」
反町キャスター
「現在の日本で人口を増やそうなんて無理だと」
曽野氏
「無理だと思います、私は」
反町キャスター
「無理ですか?」
曽野氏
「はい。もう無理だと思います。国民が豊かさを求めて、もっと制度を良くして、もっと豊かにしても、子供は絶対増えません」
山本氏
「僕が秋元さん世代に敢えて言いたいのは、もっと若い人にも、自分が1番好きなんですよ。いや、これは頷かなくても聞いていただければいいです。だから、妊娠すると10か月という妊娠期間、これはもう自分であって自分でないですよね」
秋元キャスター
「そうですね」
山本氏
「と思うんですよ。お腹に子供がいて、どんどん。それから、5、6年以上育児で、これは自分であって自分でないですよね。だから、そういうような状況は、自分で自分がかわいい、自分が好きな人にとって良くない。最悪のことではないですか」
曽野氏
「そう言いますよね、はっきりね」
山本氏
「そう言ってくれれば、その通りだよ。代わりに俺が産んでやろうかと。医学はそのうち代理出産とか、いろんなことで進歩していますから、老人もそのうち老人でなくなるんですよね。現在、医学で若くしちゃっているから。あまり少子化心配することないと。その代わりは年金がいらないから、生涯働かなくてはいけないかもしれないですけど。だから、そういうことで、女の子の場合は、大好きな自分を、どうしても妊娠ということとかで、犠牲にしたくないというのが本音にあるのではないかと」
反町キャスター
「それが日本の少子化の根底にある?」
山本氏
「だと思うんです」
曽野氏
「私もそう思います」
山本氏
「これは誰も言わないし、マスコミも言わないですよ」
曽野氏
「聖書に、受けるより与える方が幸いであるという言葉がある。すごい言葉ですね。2000年も前、もっと前からあったんです。受けるより与える方が幸いであると言ったら、何も資本家の金持ちのために働くことはないとか、そういうことになっちゃう。でも、人間の尊厳というのは受けるより与えることですね。だから、それは子供を育てる時にはぶつぶつ言いながらも、親が皆、自分をある程度、犠牲にしてやりますね。そういうことを認める、哲学的背景がないんですよ」
反町キャスター
「現在の日本にはない?」
曽野氏
「ないです」
反町キャスター
「それはどうしてそうなってしまったのですか。と言うより、もともとあったのですか、日本には。要するに、言われたような、受けるより与えることが幸せだ。それはキリスト教の教えですよね。日本にはあったのですか?」
曽野氏
「それは教育勅語なんかありましたでしょう」
山本氏
「ありました。戦前の名作の映画を観ると、皆子だくさんでしょう。映画を観ると。子供のない家庭なんて言うのは、小津さんの映画であり得ないでしょう」
曽野氏
「アラブは現在でも、子供がないというのが一番不幸なことなんですね。これは、別な意味がちょっとあるのでしょうけれども。ですから、人に与えるということが、人間の尊厳であるし、また満たされる1つの大きな要因だということを、学校が教えなければ、親が教えればいいですね。私なんかに言わせれば」
反町キャスター
「その親も、戦後70年経つと、曽野さんの原体験にあたるようなものを、僕にしても僕が感じないままにここまできて、自分達の次の世代、その次の世代に伝えていけないではないですか。そうなると日本はおしまいかと。こういう話になってくるわけです」
曽野綾子氏
「おしまいですね。私はそう思います」

“安心”を求める日本人
秋元キャスター
「日本人が安心を求めている傾向をどのように見ていますか?」
曽野氏
「バブル崩壊もありましたけど、1995年からだけでも3つあるんですよ、大災害が。こうハッキリしたことがあるのに、何で安心した社会をつくれと言うのか。できっこないに決まっているんです」
反町キャスター
「できない?」
曽野氏
「できません。それで安心してはいけません。私は、帰りに自動車事故に遭うかもしれないし、脳溢血になるかもしれませんでしょう。それは言葉としてないことですよ。概念としてないです。この間の選挙前から安心できる社会をつくれと皆さんはおっしゃる。あんないい加減な要求も、それを約束する政治家の嘘つきも私はないと思っている」
反町キャスター
「それは安心を求めることが間違っている?」
曽野氏
「安心できる生活なんてものはないです。まず病気があります。天災がありますね。それから、外敵。外敵は外の問題ですから。私は戦争もよく知っていますから、本当に戦争は嫌いですけれども、外敵は常にいます。侵入してくる人はいると思います。それから、雇用も、これは日本の経済だけではないわけでしょう。ですから、必ず危険はあるんです。だから、安心なんかは絶対にできないと私は思います」
山本氏
「(安心を求めることは)悪くないと思うんですよ。これを求め尽くしていくことが重要なことだと思います。誰がどうするかということ。僕は、テレビとマスコミの報道というのが、大幅に変わったんですよね。昔、ソクラテスが言っていたではないですか。俺はアブや蜂になると。馬のことをギリシャだと思って、馬を寝かせないように、いつもブンブン側にいると。つまり、マスコミ人、反町さんも、秋元さんも、いつもここでガンガン文句を言っていないとダメです。大衆は眠らせたらダメですから。放っておくと眠るんですから、大衆って。だから、いつもブンブン、ブンブン言っているんですよ。アブや蜂にならないとダメですよ。これが戦前とか、戦後まもなくの新聞を読んでいて、社会のこととか、いろいろ考えるのと大幅に変わったメディアの有り様ですよ。そう言うと責任は大きいですよ、親並みですよ」
反町キャスター
「幸せだから、現状に満足せよと言うことはやめた方がいい?」
山本氏
「それは言わない方がいい。ただ悲観的な言葉は言う必要はないです。いろんな討論会を政治家がやってきて結論を聞いたためしがないですよ。何を言っているんだろう、この人達は。あそこでちゃんと結論を言うべきですよ。皆さん、どうお考えでしょうかと、こんなアブや蜂は怖くないですよ」
反町キャスター
「それはメディア論ですね?」
山本氏
「そうです」
反町キャスター
「マスコミはもっと馬に怖がられるアブや蜂になれと?」
山本氏
「そうそう、いつも騒いで大衆を目覚めさせているということで、これが親の代わりをするんですよ、きっと」
曽野氏
「当たり前過ぎることです。誰も不安を求める人なんていないんです。だから、そんな当たり前なことを言っちゃいけないんです。必ず私が言ったように不備がありますから、だから、その不備と言うのは、人間社会で常になくすように、なくすようにすべきですね。今日できなかったら明日。明日1%できるようにしたら、明後日は1%。そういうものです。だから、努力はするけれど、安心はできないんです」
反町キャスター
「こういうのは国に頼るものではない?」
曽野氏
「自分でやりなさいと」

どう見る日本の出産と子育て
秋元キャスター
「理想とする子供の数を持たない理由としては、子育てや教育にお金がかかりすぎると。子供1人を中学3年生まで育てるには、1人当たりの子育て費用は、生活費、教育費など全部あわせると約1900万円、高校・大学に進学するとなりますと、公立でもさらに1000万円かかると。この状況をどう見ますか?」
曽野氏
「日本では大学へ行かないと就職に困るというのは昔から何十年と言われてきたこと。それは一応わかるんですけれど、マダガスカルの場合ですとミシェルという貧しい子に会って収入を聞いたんですよ。1日彼が儲けるのは75円です。妹と2人で暮している。いろいろ計算しましたら1人1年間、1200円でだいたい暮らせるんです。新しいシャツを買ったり、ハンドバッグを買ったりはしないと思いますけれど。そうすると、中学3年生までに1900万円かかる。これだと20万円以内でできる。そうでなければ人間でないように思うということが、向上心に満ち溢れているという言い方もできますが、思い上がっています。あなた達はそれでいいけれど、自分はダメなのよという言い方になる」
反町キャスター
「貧乏してでも子供を育てるくらいの気概がほしいという話になりますか?」
山本氏
「好きな女と一緒になったら子供ができるのは当たり前ではないですか。現在、働いている相当高額なマスコミ関係の一部の人は、年収1200万円から1300万円ぐらいいっちゃっていますよ、40代だと。でも、子供を生まないのは設備がどうのこうのって。そんなことはないですよ。自分がかわいいんですよ、はやい話が。育メンなんていうのも言葉だけが踊って、バブル崩壊も、バブルが崩壊している最中、誰もバブルが崩壊なんて言わなかったですよ。あとでマスコミがつけたタイトルですよ、映画の作品みたく。全部がタイトルです。実感がないでしょう。そういうもので、空白の何年。空白ではないよ、俺、一生懸命生きていたよ、あの時と思うわけですよ。だから、僕はマスコミは力があると思うから。少なくともキャスターやっている人達には、皆さんどうお思いですかなんてつまらないことを言ってないで、私はこう思う、この局はこう思っているから、こういう生き方をなさったらどうですかと言うことですよ。それをはっきりせえと。ソクラテスではないけれど、アブや蜂になれと。その役目があるというのはすごく現在重要で、親より必要なのではないですか。親の言うことより、テレビの言っていること、メールが言っていることの方が正しいと思っている若者の方が多いわけだから」

これからの日本人が生きる道
秋元キャスター
「今後は何を希望にして、何を目標にして、どのように生きていくべきだと考えますか?」
曽野氏
「私は、日本人は非常に優秀な民族、それは過去の歴史的に教育を受けたりしたこともありまして、それだったら持てる人ですよ。持てる人というのは、お金とか、財産のような気がするが、そうでなく、もっと別の資質を持っているんです。持てる人は全て与えなければいけないんです。自分だけでなく。だから、分け与える。アラブは自費ですからね。自分が貧しかったら食べているパンを半分食べないで旅人に差し出すという教育をしていますから。だから、必ず与えられているものを自分も伸ばすと同時に、半分そうでない人に、分け与えられる人になれというには非常に大きな問題だと思います。私は、途上国の子供達に何か言ってやってくれとよく言われるんです、神父さんから。そうしたら3つ言っているんです。すごく単純です。正直になりなさい。よく勉強しなさい。うんと働きなさい。この3つだけです、贈る言葉は。これを現在は言わなくなっちゃったと。昔は当たり前だった。正直でありなさい、よく勉強しなさい。(現在は)勉強しないです、意外と。それから、厳しく毎日、年寄りに言うんですね。我々は、どんなに歳をとってもお爺さんは山へ芝刈りに行きました。お婆さんは川へ洗濯に行きました。あれが原型です。だから、老人ホームに行って楽しようと思うなと。体が悪い方はもちろん、別です。でも、働ける人は毎日死ぬまで山へ芝刈りに、川に洗濯に、を忘れてはいけない。そういうものです、人間の生活。それ以上でもそれ以下でもないと思っています」
山本氏
「その通りで、生涯現役ですよね。やむを得ないですよね。老人は老人で自分がかわいいですからね。若い人は若い人で自分がかわいいんですから。こちらはもう子供を産む能力もなくなっちゃっているんだから、しょうがないですよね。つまり、皆ですよね、誰かに頼っているなら人と違うことを前提に自分のベストを尽くすしかないじゃないですか。それがある程度、皆行き届いた時に、お互いに顔を合わせた時に、おかげさまで…と。良い言葉ですよね。あの言葉が発せられるようなコミュニティが日本中にできたらいいなと思います」
反町キャスター
「あまり他人に期待しないでというように聞こえるんですけれど」
山本氏
「そうですよ、そんなに他人に期待して、国に期待して、どんどんこうしてくれ、ああしてくれと(言ったら)社会主義に戻っちゃうではないですか」

作家 曽野綾子氏の提言:『私は平和からも戦争からも学んだ』
曽野氏
「あらゆることから、人の立派さからも醜さからも学びました。感謝しています。職業柄、私はこれがうまく活きたんですけれど、私は何事も面白がり、意味があると思うタチなんです。悪にも意味がある。それをやっているだけです」

映画監督 山本晋也氏の提言:『マスコミはアブやハチになれ!』
山本氏
「仕事柄、三十数年、毎週生放送やっていますから、マスコミはアブや蜂になれ。ソクラテスが言っている言葉は正しいと思いますね。嫌な親父になっても、『嫌だな、またあいつ出てきたけど、良いこと言うんだよな』と聞いているような番組だったらいいのではないですか。ためになっているわけだから。大衆はダメですよ、眠らせちゃ」