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2015年1月7日(水)
櫻井よしこの戦略提言 “情報敗戦”を超えよ

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト
秦郁彦
現代史家

なぜ今情報戦略が必要か
秋元キャスター
「戦後70年目を迎えた今年、なぜ日本に情報戦略が必要なのか。まず、そのあたりから聞いていきたいのですが、櫻井さんはどのように考えていますか?」
櫻井氏
「身近なことで言えば、慰安婦問題で、秦先生のご専門でいらっしゃいますけど、私達は濡れ衣を着せられて、最初はこんなバカなことは信じないと、たぶん、外務省なども思っていたんでしょう。でも、それがどんどん広がっていって、アメリカを舞台にして、中国が韓国を巻き込む形で、対日歴史戦争を展開しているわけですよね。ですから、南京事件のことにしても、慰安婦にしても、その他の多くのことにしても、我が国は情報戦でベタベタに負けているという状況ですね。だから、これからは情報というものにもっと目を向けないと、情報戦で敗れる国家は本当に衰退していくんですよ。だから、経済がどれだけ良くても、軍事がどれだけ強くても、情報というものがきちんと取れて、分析できて、それに対応できないと、その国の国益というものが、国民の安寧というものが損なわれていくと思いますね」
秋元キャスター
「情報戦ですが、具体的にどういうものか整理をしておきたいと思うのですが、まず諜報ですけれど、これはスパイ活動などで通常では入手できない情報を収集し、分析します。他国の諜報を防ぐということも含まれています。謀略は扇動、買収などを行います。その他ロビー活動などを行う宣伝などがあるんですけれども、秦さんによりますと、この情報戦というものは、このように主に分けられるということですよね。それぞれ国の関係において、どのような役割を果たしているのですか?」
秦氏
「戦後の日本は、この分けたうち、諜報の一部、文書、通信ぐらいまでは一応、手がけているんですね。しかし、謀略は頭から、これは専守防御。第九条を持っている日本として手を染めてはいかんという考え方なのでしょうね」
反町キャスター
「情報戦においても専守防衛ですか?」
秦郁氏
「そうです。それから、メディアは、新聞とか、雑誌とか、テレビとか、ネットとか、こういうものですけれども、これは黙っていても我々は情報を入手できるわけですね。そうすると、だいたい貴重な情報というのは、この諜報、英語でインテリジェンスというんですがね。このメディアの情報というのは大したことはないという、そういう考え方がありますけれど、私はそうではないと思いますね。問題はメディアにしろ、それから諜報にしろ、この入手した情報を分析し、評価をして、それを利用する、どう利用するかという。つまり、そこのところで分析が大事ですね。評価も大事なわけです。ですから、メディアでも、これは公開情報ですけれども、しっかりやれば、十分太刀打ちができると思うんですけれども、そのへんのところはあまり意識されていないのではないでしょうかね」

歴史にみる日本の情報戦 スパイ活動と日中戦争
秋元キャスター
「さて、情報戦略が国益に何をもたらすのか、歴史の教訓から、重要性を考えてみたいと思います。かつて日本は1937年に始まりました日中戦争から、1941年に太平洋戦争に突入し、戦争に敗れました。その一連の出来事の中で、最も有名な情報戦の敗北と言えるのは、1941年10月に発覚した、ゾルゲ事件です。1933年にドイツの新聞社の東京特派員として来日し、ドイツ大使館にも出入りしていたソ連のスパイ、ゾルゲが当時、近衛文麿内閣のブレーンの1人で南満州鉄道の嘱託だった尾崎秀美から、対ソ連戦に関する日本の方針の情報を入手し、ソ連共産党中央委員会に報告していました。1941年10月、ゾルゲ、尾崎らが逮捕され、国際的なスパイ事件として注目された。こういう事件だったんですけれども、このゾルゲによる情報の漏えいが、日本の対外政策にどんな影響を与えたと思いますか?」
櫻井氏
「盧溝橋事件、日清事変が起きて、本当に日本政府が何とかして極地で収めたいということです。参謀総長も、副参謀総長も、参謀本部の方は現地に戦線拡大は相成らぬということを指示するわけですよね。1937年7月7日でしたね、7月中に日本とドイツの間で、こういうような形で和平の条件で合意しましょうというようなことまで言っていたんですけれども、これをひっくり返そうとして動いたのがゾルゲと尾崎秀美ですね。彼らは、ゾルゲはドイツの人間として来ましたけれども、ソビエトのスパイだったわけですね。ソ連のために日中戦争をさせ、その隙間にソ連が入りこもうという戦略ですよね。だから、日中の和解のプロセスを、しかも、ゾルゲはその内閣の奥深く、近衛さんのアドバイザー(として)近くまでいくことができて、尾崎は、そのブレーンの1人だったわけですね。だから、内部情報というものがどんどんとれるわけですね。それをどんどんソ連に送って、日中の和解の動き。これは月曜日に半藤さんが言っていました。半藤さんが、日中戦争がどこかで収められていたとしたら、チャンスが1回あったんです。トラウトマン。この方、ドイツの大使ですね。このドイツの大使のために、いろいろ情報をあげていたのが、日本にいたオットさんという陸軍武官ですね。オットさんもゾルゲは定期的に会合をしていて、日中戦争の内部情報というのを分析していたわけです。だから、向こう側には全部こちらの調停をしようとする。これは和平をしようとする意図と、そのどのような条件で和平をいうかというのは全部わかっていたわけですね。それを次々に潰していくわけです、尾崎とゾルゲが一緒になって。だから、日中戦争を収めることができなかったということが、そのあとの太平洋戦争、大東亜戦争につながっていくわけで、日本にとっては大変な悲劇ですね。ノモンハン事件というのが出ていますよね。ソビエトと日本との戦いですけれど、あのような事件を、ソ連は、1939年とか、その前にも、2つ、3つの起こしているんですね。そこで日本の力を削ぐわけですね。それは中国の蒋介石の方に何となく余裕を与えるという路線ですね。この中にドイツも入ってくるわけですが、ドイツは日独で、防共協定を結んでいるわけですけれども、日中戦争を収めるために、トラウトマンが仲介をしようとするわけですけれども、その裏で蒋介石政権に、軍事的な支援を与えているわけですね。アメリカもまた蒋介石、国民党に、日本と折り合わないようにと。イギリスもまた、そのように働いていて、あの時の国際情勢というのは本当に入り乱れての情報戦で、ポイントは日本を戦わせて、弱めたいということですよね。ソビエトが時期を見て、介入をして、自分達の権益をそこで確定をしたいということですね。だから、私は日本が北に行くのか、南に行くのか。これはゾルゲが情報をとったということと、力を弱めさせて、それから、その戦いの泥沼に引きずり込むような形で、アメリカにも挑戦をさせて、石油を断たせて、南に行かざるを得ないという大きな流れに押し出したと思いますね」
反町キャスター
「秦さんはいかがですか、ゾルゲ事件の影響は」
秦氏
「要するに、結果から見ると、ソ連に攻め込む準備をしていたわけです。日本陸軍は。関東軍を50万人集中して、ドイツ戦が始まっていましたから、その行方を見ながらシベリアに打って出ようというつもりでいたのですが、どうも思ったほどドイツの進撃が進まないということもあり、冬が間もなく来そうだというようなこともあって、そうすると、南に行こうかとなっていくわけですね。それをいちはやく通報したのが、ゾルゲですよ。北はやめたと。だから、シベリアに打って出られるということは大丈夫だよと。そうすると、日本から挟み撃ちをされることを防ぐために、ソ連としては極東軍を持っていきたいわけですよ、主戦場のヨーロッパに。だけど、それができないというところで大丈夫だと。ですから、安心して…」
反町キャスター
「それは重要な情報ですよね」
秦氏
「そうですよ」
反町キャスター
「要するに、スターリンがヒトラーとのガチンコ勝負に向けて、戦力をそちらにスイングできる。こういう話になったわけですよね」
秦氏
「そういうことです。ですから、いろんな理由が他にもありますから、そういう北に行くのをやめたということを通報したのが、1番ソ連にとっては重大な収穫だったと」

情報戦略の遅れ
反町キャスター
「戦前の日本、いわゆる戦時下において、思想的にも、社会的にも、行動においても、様々な規制や監視の目というのが世の中に張り巡らされていたのではないかと、僕らは一般にそう聞いています。そういう厳しい社会情勢のもとで、なぜこのような大胆なスパイ行動が可能だったのか。それはどう見たらいいのですか?」
櫻井氏
「この頃の日本人、政府の要人も含め、情報というものに対してすごく甘かったのではないかと思うんですよね。もちろん、情報をとる、とられると。情報戦は戦われていましたけども、たとえば、ゾルゲをなぜあれほど信頼したのかとか、尾崎をなぜあそこまで信頼したのかというスクリーニングの方法というものが、すごくプリミティブと言いますか、うまくいっていないような気がしますね」
反町キャスター
「それは、秦さんどう感じますか。どうして厳しい時代に、あれほどのことができたのか。日本人の人の良さですか。それとも、政治情勢の変化があったのですか?」
秦氏
「形式的には、防諜は非常にうるさかったんですよ。だから、要注意人物のところはしょっちゅう特高警察や憲兵がまわっては警戒をしていたわけです。むしろ、他の先進国よりはるかに機密漏えいを防止すると。アメリカは大型の航空母艦1隻ができますと、つくっている最中から何月何日に進水すると。何月何日に海に出ると皆発表していたわけですよ。日本は戦艦大和を最後まで隠していました、国民に対して。零戦もあれだけ有名な戦闘機ですけれども、実際に新聞に零戦という名前が出たのは、昭和19年の末ですよ」
反町キャスター
「今言われたみたいに、特高だ、憲兵だというがガチッとしているんだけれども、それを1回破って中に入っちゃうと、意外とスパイにとっては情報をとりやすい社会だったと、そういうことですか」
秦氏
「そうですね、それと外国人というのはほとんど住んでいないのでしょう。敵性の人は戦争になると拘留をしています。スパイに入れないと。すぐわかるという思い込みがあるわけですよ」
櫻井氏
「尾崎は近衛の秘書と一高のクラスメイトですね。そういった人間関係で入ってしまう。そうすると、そこで全部の情報がとれてしまって、それがゾルゲに行ってしまう。もしくはゾルゲがドイツ大使館で、この日中戦争は全然収まらないよという予測を立てるわけです。他の人達は蒋介石政権は弱いし、すぐにこれは収まるはずだと、東京のドイツ大使館の人達、ドイツ大使を含めて考えるのですが、ゾルゲはそれと反対のことを言って、尾崎と一緒になって、一生懸命工作をして、日中戦争を長引かせて、泥沼に引き込むことをゾルゲは自分の使命と考えてやっていたわけですからね。その通りになって、ゾルゲの分析が当たったんだということで、いったんこの分析が当たったということが証明されると。日本側から全部信用されてしまった。ですから、先ほども申し上げたように、駐日ドイツ大使館のオット陸軍武官というのが、ゾルゲと定期的に会合して、全ての日中戦争に関する資料をここで論議してやるわけですよね。どんどん写真にとってモスクワに送っているわけです。だから、いったん中に入ってしまって、信頼を勝ち得た人は比較的、やりやすかった」
反町キャスター
「これは日本だけですかね。他の、たとえば、情報先進国と言われる国。そういう国があるかどうかわかりませんけれども。でも、情報に対して、より敏感な国というのは、言われたみたいに、1回インナーに入ってしまうと、何でもずぶずぶというのではなくて、それでも時々フィルタリングをかけてというのがあるんですか?」
櫻井氏
「私は、これは人間である限り、そういった癖はあると思いますよ。信頼した人に対しては信頼を持ち続けると。ただし、日本の場合はいったん決めたことはなかなか変えないんですね。だから、そこのところはあるのではないかと」
秦氏
「よく、そういうのは民族性だと、国民性だなんてことを言い出す人がいるのですが、それは戦前でもちょっと遡って日清、日露、この頃の日本軍の情報網というのは大変なものなんですよ。それで、1番有名なのは、明石元二郎の工作ですね、日露戦争の時に。それで当時、帝政ロシアには、フィンランドの独立派、それから、レーニン以下の革命派。これがヨーロッパの各地で機会をうかがっていたわけですね。そこに渡りをつけて、明石の偉大なところはそういう人達をうまく連絡をつけて、一同に集めたわけです。そうして、これでもって破壊工作をやるということで、シベリア鉄道爆破とか、ポーランド兵を満州の戦線で裏切らせるとか、それだけの活躍をしまして、この明石機関は100万円。現在だと100億円ですか、お金を投じまして、10万円の残金をきちんと領収書を付けて、返したという」
反町キャスター
「櫻井さん、ここまでの話はいかがですか?」
櫻井氏
「明石さんの働きも本当に凄まじいんですけれども、明石さんの前に福島という人がいたんですよ。これは明治の日本の情報組織を立ち上げた人、創始者と言われているんですね。ポーランドから馬に乗ってウラジオストックまで1人で、1年半かかったんですかね。行くんです。行くというのは情報を取りながらですね。当時の日本にとっての脅威はロシアですよね。ヨーロッパのその列強達が本当に死にもの狂いで戦いをしているわけですね。そのことをつぶさに、日本は極東ですから、知らんぷりでいいかもしれないですが、遠くヨーロッパで起きていることが自分達にも関わってくるんだということで、自分達の危機として捉える能力があった。その感覚の鋭さがあった」
反町キャスター
「そういう任務を帯びていたのですか。それとも、福島さんは自由に、自発的にやったのではないですか?」
櫻井氏
「任務を帯びていたんです。日本の政府が欧州はどうなっているんだということで」
反町キャスター
「馬でユーラシア大陸を横断しろという命令が下りたのですか?」
櫻井氏
「そういう言い方ではないけれど。欧州列強はどういう戦いをしているかというと波瀾万丈の情報というものをとって、どんどん日本に送るわけですね。そういう人達がいないと、そういった能力を発揮しないと国家というものが生きていけないわけでしょう。だって、日米関係だけ見ていれば生き残れるという話ではなくて、安倍さんは現在、地球儀外交で世界をまわっていますよね。中国は他国を攻める時に攻めたいと思うターゲットに直接は絶対に戦わない。周りから攻めるわけです。だから、1つの目的を達成させるために周りの状況というものをよく知るということが必要で、それは世界で起きている、いろんな危機が日本の危機にどうつながっているのかということに敏感に反応する能力というものを磨いておかないといけないわけです。そういったことを、私達はかつてできた民族だったんです」
反町キャスター
「かつてできたで、昔の人はえらかったで終わっちゃうと、そうすると、我々はできないなとなってしまう。そこはどうなのですか?」
櫻井氏
「かつてできたのは、日本は非常に必死に自分達の国の生き残りを、自分の力で担保しなければいけなかったでしょう。だけれど、大東亜戦争に負けて、アメリカに占領された時から、担保してくれる国としてアメリカが存在したわけです。だから、いろんな危機が自分に関わってくるというよりも、誰かが守ってくれる、1つクッションがあって、感じない。尖閣だって中国の船がほとんど毎日のように入っていますよね。誰がここで、日本の、東京でですよ、心配しています…あら、また入っている、嫌ねという話ですよね。こういうことではいけないということを、明治の人達はわかっていた。昭和20年以降の私達は考えないように目をつぶってしまっている。私達には能力があると思いますよ。ただ、危機感というものを政府が国民にどうやって喚起をするか。明治政府は、本当に自分達が大変な危機に遭ったけれども、国民もそれを知っていたから。だから、バルチック艦隊が来るぞというのを、見張っているということを民間の人がやったわけです。だから、そのような情報に対する誠実さといいますか、私は誠実さと呼ぶんですけれども、敏感さと言ってもいいと思いますけれども、それをもう1回取り戻す必要があるなと思っていますね」

暗号解読における失敗
秋元キャスター
「太平洋戦争において日本の情報戦略の弱さが影響を与えたのでしょうか?」
櫻井氏
「これは私が尊敬する田久保忠衛さんの言い方なんですけれど、この戦争は、3つに分けて考えるべきだと言うんですね。1つは日米戦争ですね。もう1つはそのヨーロッパで、ドイツとヨーロッパ、アメリカの戦争ですね。もう1つは日ソ戦争ですね。ソビエトとの戦争は、我々は完全な被害者という感じでしょうね。ここで情報のことを言いますと、第二次世界大戦という世界戦争の中で1番の悪役と言っていいのか、主役と言っていいのか、それはイギリスのチャーチルですよね。チャーチルがアメリカを引き込まなければ、自分達はドイツに勝てない。アメリカを引き込むために日本がアメリカに戦争を仕かけるような状況をつくった。これはルーズベルトもつくったんですよ。日本ももちろん、責任があるんですけれども。日本が真珠湾を攻撃した時にそれだけでは不十分なので、今度はチャーチルがドイツとアメリカを戦争させるために、ここにも引き込んだと。これは本当に血湧き肉躍るような情報戦というのが戦われているわけで、一番簡単に言えば、戦争が始まる前に私達の側、日本とか、ドイツの側は暗号システムを解読されてしまっていた。エニグマという暗号、機械ですね。それをナチスドイツはつくっていた。このエニグマというものをイギリスは手に入れるわけですよ、機械を。ドイツ軍はこの暗号システム機械を小型化して各前線に配置して、本部とヒトラーと通信できるように小型化するんですね。小型化されたエニグマの機械がベルリンのあるところである日大量に運び出されるという情報を得て、イギリスとポーランドが一緒になって襲うんです、ナチスドイツのトラックを。そしてこれを燃やすんです。ドイツの方は全部攻撃されて燃やされたと思うわけですが密かに1台だけ無傷のままポーランド人が手に入れるわけです。それをワルシャワからロンドンに運んで、この機械を徹底的に分析して、これをイギリスの強みとするわけですね。チャーチルはルーズベルトに、この戦争が始まる2年前に働きかけて、我々には2つ、あなた方にオファーするものがあると。1つはドイツの暗号システムを我々はほとんど解析していると。もう1つは、原爆の共同開発をしましょうということで、実はルーズベルトはこれに乗るんです。国務省にも内緒で乗るんです。そこから日本の暗号システムの解読も始まって、戦争が始まる前にはほとんどのものは読まれてしまっていたというような…」
反町キャスター
「日本の暗号もですか?」
櫻井氏
「ええ。もちろん、全てということではないですが、主なところは読まれていたというところがあるんですよね。ですから、情報戦において私達は手の内のほとんどを知られてしまっていた」
反町キャスター
「山本長官機撃墜とか、全部わかっていた?」
櫻井氏
「私は新潟県長岡の出身ですので、山本五十六長官のいた中学校、現在高校ですが、その卒業生で、後輩ですね。五十六さんの乗った飛行機、戦闘機は、編隊を組んで飛んでいるわけですね。そこに雲間から現れて攻撃を受けるわけですけれども、戦隊の先頭に乗っていたパイロットは戦後ずっといろんな情報を明らかにしなかったんですけれども、攻撃が始まった時に瞬時に情報が全部読まれていると感じたと言うんです。それはなぜかというと、弾が自分の機には全然こないで、長官機に全部向かっていったということで、だから、何番機に乗っていたということまできちんと把握されていたということを、私達は推測できるわけです」
反町キャスター
「この事実関係はいかがですか?」
秦氏
「これも非常に複雑ですけれど、日米開戦前までは日本の外交案は皆読まれていたと。日本の外交、外務省の」
反町キャスター
「戦争前からだだ漏れだったのですか?」
秦氏
「そうですね。昭和15年ぐらいから全部読まれていましたよね。それでマジックと名前つけまして、大統領以下限られた数人の重要人物にしか、それは回覧しなかったですね。ですから、日本の開戦通告、実際は最後通牒みたいなものですが、これは日本の大使館が読むより先に、アメリカは読んでいて、それで間もなく野村大使がそれを持ってくるということもわかっていたわけです。というようなことで、ただよく誤解されるのですが、海軍の暗号を破ったのはそれよりちょっと遅れてミッドウェー海戦の直前だったんですよ。(事前に)日本の暗号を読んでいたならば、ミッドウェー海戦も、真珠湾攻撃もわかっていたはずだというのですが、全部海軍暗号ですから、ほんのちょっとの差で読めなかったんです。しかし、ミッドウェー海戦の時にこれは全部解読をしまして、山本長官機の巡視予定も解読して、皆待ち伏せしたんですね。これに最後まで日本は気がつかないんですよ」
反町キャスター
「なぜ気がつかない?先ほどの櫻井さんの話にしても、アメリカの戦闘機が2番機の長官機を狙ってきている情報まできて、これはばれているだろうとは…」
櫻井氏
「こんなことは戦時中に言えないわけですよ」
秦郁彦
「と言うより陸軍の今村司令官がこれは読まれているに違いないと言って、中央に警告したわけです。ところが、陸軍と海軍の対立関係がありますので、海軍の方はそれでトップが通信担当の部長を呼ぶわけです。そうしたら、我々の暗号は非常にかたくて、そんなもの読めるはずはありませんと。専門家ではないから、海軍大臣はああそうかで終わっちゃうんですよ。私はよく言うのですが、陸軍と海軍で読みあいっこしたらいいのではないかと。そうすると、それは確かにその通りだというわけです」
反町キャスター
「陸軍も読まれていたのですか?」
秦氏
「読まれていました」
反町キャスター
「陸軍の暗号もだだ漏れ?」
秦氏
「そうです。これは昭和18年ちょっと遅れますけれど。陸軍は威張っているんですよ、俺達の暗号は大学院レベルだからアメリカもなかなか読めなかったと。しかし、それは海軍を優先するから先にやっただけの話だから、差はないと思うんですよ」

国際世論を味方にする策
秋元キャスター
「国家基本問題研究所シンポジウムでの小野寺五典元防衛相の発言です。『国連本部に国連総会の大きなロビーがあります。私はロビーの片方に、各国の代表を呼んで、ぜひ日本を支持してくれと、ドイツ、インド、ブラジルと手分けしてやりました。その真向かいのところには中国の代表が別な国の代表を呼んで、反対工作です。日本は、今までも応援してきたし、これから経済支援するから、という形でお願いをします。ところが、中国の代表は小切手を出して、いくらほしいですかと。本当の話です』と発言していますが」
櫻井氏
「小野寺さんの発言は、10年前のことをおっしゃったのですが。現在もまったく同じことをしているとは言いませんけれども、ありとあらゆる手を使ってやっていると思います。現在は小切手を出す代わりにアジアインフラ投資銀行とか、シルクロード経済圏、開発銀行など独自の金融機関をつくりました。その中でいくら投資の金を貸してやるとか、やらないということで、実際小切手と同じことをやっているわけです。私は自国の立場を有利にするための情報戦略にお金はつきものですから、それが洗練された形で与えられる、どれだけプリミティブな形で与えられるのかの違いはあると思いますが、これは現在でもどんどん行われていると思いますね。このことをできないのは、日本だけだと思いますよ、大国の中では」
反町キャスター
「日本はえげつない手は不得意なのですか?」
櫻井氏
「究極的にはお金の力をどの段階で使うか。1番効果があるのは直前に使うということですね。嫌なことですけれど、そういったものだと思います。日本はどこまでやれるかということも含めて、我々の国の品格として、どこまではやるけれども、どこから先はやらないというのを決めると同時に、その時のメリットとデメリット、私達が失うこともあるわけです。そこもきちんと計算に入れておかないといけないだろうと思います。日本はその体制も何も出てきていない。情報の発信も極めて不十分だと思いますね」

日本が今後やるべきこと
秋元キャスター
「人材育成については何から具体的にすればいいと思いますか?」
櫻井氏
「正直言って、いったん途切れてしまった情報の人材育成はとても難しいと思うのですが、そんなことを言っていられないから、やらなくてはいけないのですが、私は、まず大戦略を持たなければいけないと思っています。日本はどういう国になりたいのか。それを目指してどのように世界に働きかけていくのか。日中関係をよくするために、中国と日本を取り巻く世界に対してどう働きかけていくか。たとえば、安倍総理が今回、戦後70周年の談話を出すとおっしゃったわけです。アメリカの報道官がコメントしましたね。談話を出すのは結構だけれど、村山談話、河野談話を踏まえてほしいと。これはいかなることかと思っているんですよ。その翌日に中国政府がまったく同じことを言いましたね。つまり、ここには米中のある種の協調の土台ができあがってしまっているんですね。アメリカはわが国の同盟国ですよね。私達はアメリカを本当に大事な国だと思っていますし、私はアメリカを批判しながらも、現在、日本がとるべき選択肢は日米同盟しかないと心の底から思っていて、アメリカ人が大好きですよ。だけれども、政府レベルでは、日本に対して何であなたがそこをおっしゃるのということを報道官が言ってしまう。中国がそれに呼応する。このような情報に対し、きちんと日本の立場を説明して反論していかなければいけない。安倍総理は村山談話を引き継ぎますと言っています。新しい談話を出すとしたら、それを超えるものになるでしょうということです。村山談話を否定するわけではないです。アメリカに私達だけが悪いという権利があるとは私は思いません。戦争というものは両方にいろんな責任があるんですよね。そこを踏まえると、日本国に対して、同盟国であり、しかも、ロシアと中国が力による大戦略を展開して、世の中のルールを変えようとしている局面で、民主主義とか、自由とか、公正さとか、人権とか、少数民族の保護とか、こういった大事なものを守るといった共通の価値観を持っている日本国に対し、どうしてもう少し余裕のある見方をしないのかなと思いますね。これは日本人、日本政府がきちんと情報を出していって、アメリカに対して、静かに、冷静に話すべきだと思います。このようなやり方も情報戦略ですよ」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言:『大戦略の下で果敢に攻める』
櫻井氏
「大きな戦略を持って、それに向かって必要な情報をもっと積極果敢に発信していく。これまでの日本はあまりにも何も言っていませんからね。これまでとは180度違う方向できちんと事実に徹して情報を出していくことが大事だと思っています」

現代史家 秦郁彦氏の提言:『武力戦は専守防衛、情報戦は攻勢を』
秦氏
「情報戦は攻勢をかけてもちっとも構わないと。どういう攻勢をかけるのかということですが、現在、中国はアメリカに対して第二次大戦の戦勝国同士で仲間じゃないかと言っているわけです。韓国もサンフランシスコ講和会議に戦勝国として出してもらいたいという要求を出している。アメリカに断られていますが。今回もこれに便乗しようとしていますね。と言うことで、中韓の戦略は非常に功を奏しているかに見えますがレトリックでもっての勝利は長続きしないと。我々としては愚直ではあるけれども、歯に衣着せず、言うべきことは言っていくという、情報戦なら武力戦に発展するということはありません。ですから、しっかりやるという、その姿勢を持たないと人材も育ちませんよ」