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2014年12月22日(月)
再生医療“新局面”へ 研究トップが語る戦略

ゲスト

岡野栄之
慶応義塾大学医学部教授
塚﨑朝子
医療ジャーナリスト

日本のiPS細胞研究拠点 4分野で進む再生医療研究
秋元キャスター
「日本でiPS細胞を使った再生医療の研究が現在どういった状況なのかを見ておきたいと思います。文部科学省は、4つの拠点を指定しているんですけれど。まず岡野先生が拠点長を務めています慶応義塾大学では、事故や難病などで脊椎を損傷したりして失われた中枢神経を、iPS細胞を使って再生するなどの研究を行っています。ヒトのiPS細胞づくりに成功した山中伸弥教授が所属する京都大学ではパーキンソン病、脳血管障害などに有効な再生医療の研究を行っています。今年9月、高橋政代プロジェクトリーダーが移植手術を実施した理化学研究所では、目の網膜細胞の移植研究に力を入れていることです。もう1つ、大阪大学はiPS細胞を利用してつくられた細胞シートによる重症心不全への治療法を研究しているということですけれども、様々な分野で活躍されているということですが、国がこの4つの拠点を選んでいる狙い。それから、慶応義塾大学の位置づけ。このあたりを教えていただけますか?」
岡野教授
「この4つの拠点というのは、まずは、4、5年以内の間に最初のヒトへの応用。ファーストヒューマンと言っていますが、それを実現する可能性が高いということ、あともう1つ大事なのは、他に決め手となるような有効な治療法がない疾患を何とかこの再生医療で治していくと。その中でもiPS細胞を使った再生医療を目指していくというところを中心に、4つの拠点が選ばれたと思っています。この中でも中枢神経系、これは脳と脊髄をあわせて中枢神経系と言いますが、これまで再生しない臓器の代表格であるわけであります。ですから、私ども慶応義塾大学と京都大学。いずれも脊髄損傷、あるいはパーキンソン病という脳や脊椎という中枢神経系を対象としたやつが4拠点中2つ選ばれていて、いかに中枢神経系というのは再生医療の中でも重要なターゲットであるのかといったことを物語っているのではないかと思っています」

日本のiPS細胞研究の現状:『脊髄損傷治療』
反町キャスター
「脊椎と、たとえば、パーキンソン病の話をされましたけれども、再生医療という窓口からいくと、再生しやすいところからアプローチしていくのか。慶応義塾大学とか、京都大学がチャレンジしているところというのは一番高いところ、エベレストにチャレンジしているような印象があるんですけれども、慶応で言うなら、脊椎損傷医療に取り組むことになった、その経緯とか狙いとはどういうところにあるのですか?」
岡野教授
「まず比較的実現性の高い再生医療に関しましては別の研究プログラムというものが進んでいますので、文部科学省のiPS細胞拠点は、非常に難易度が高いけれども、だけど、何とか5年以内にやるという、なかなかお互いトレードオフになっているやつを、何とかまとめなければいけないという、なかなかツライところがありますが、チャレンジしているということはあります。何で僕達が脊椎損傷をやっているかと。私自身の人生と関係があるのですが、私の父が勤めていた会社の上司の方が脊椎損傷になって、車椅子の生活を送られたということです。私は慶応大学の医学部に入って、あるいは卒業する時にご挨拶に行ったのですが、僕みたいな脊椎損傷の患者さんを治せるようにしてくださいと言われまして、いつかそういったような研究に取り組まなければと思っていまして、だいたい大学を卒業して、暫く15年ぐらいは、僕は神経の発生の基礎研究をやっていたんですよね。15年ぐらいして、やっと人と関係するような成果が出始めて、そうしますと、脊椎損傷の患者さんからお手紙をいただくようになって、その方との会話を思い出しまして、これはやらなければいけないなということで、だいたい1998年ぐらいから、本格的な脊椎損傷の再生研究というものを始めまして、それを本当に実現するべく今回取り組んでいるということです」
反町キャスター
「iPSから脊椎に行ったのではなくて、脊椎をやっているところにiPSが入ってきたという流れですね?」
岡野教授
「そういうことです」
秋元キャスター
「脊椎損傷は、たとえば、どういう事故で、どうなってしまうのですか?」
岡野教授
「だいたい2つ重要なことがありまして、交通事故や、あるいはスポーツ外傷ですね。ラグビーで頭を突っ込んでしまうとかですね。あとはいろんなことで…大事なのは健康な人、特に若者が、普段病気と関係ない人が、突然この病気になってしまうということがあります。車椅子生活を余儀なくされるといろんなことが起きますし、こういった方々を救ってあげたいと思って研究をしています」
秋元キャスター
「岡野さん、この損傷からの時間によって、3段階に分けて研究を進めているということですけれど、その3つの段階が、急性期、これは脊椎損傷直後です。2つ目が亜急性期。これは損傷後2週間から4週間。3つ目が慢性期で、これは脊椎損傷後、長年経過という、この3つの段階に分かれているんですけれども、まず直後は、どんな治療を目指しているのですか?」
岡野教授
「脊椎損傷の直後は、機械的損傷によって本当に神経が断裂したり、死んだりいたします。それは損傷によって直接起きることですけれども、その後、いろんなことが起きて、さらに損傷部位が拡大していく。これが問題ですよね。これを2次損傷と言っています。その2次損傷というのは、本当に、秒単位では出血が起きるですとか、低酸素だとかですね。分単位、時間単位で、簡単に言いますと非常に強い炎症反応が起きて、その炎症が脊椎をどんどん傷つけていくといったことが起きています。ですから、その炎症を何とか抑えてあげるということが、第1になります。日本では現在、グルココルチコイドという物質を使った治療法が言われていますけれど、この方法について、実は安全性と有効性がかなり疑問視されていまして、実はアメリカでは承認されていないということがあります。それでよりよい治療法を開発しようということで私達は取り組んできました」
反町キャスター
「それがHGFという」
岡野教授
「そうですね」
反町キャスター
「ちょっと説明していただけます?」
岡野教授
「慶応の整形外科の皆と共同研究して、研究を進めてきました。当時、大学院だった北村和也君、現在准教授をやっています中村雅也先生との共同ですが、このHGFというのはヘパトトサイトグロスファクターという生理活性化物質です。これは大阪大学の中村敏一先生という方が見つけたんですけれども、もともとこの肝臓に対して働く作用がある物資として同定されてきたわけです。調べてみますと、神経に対して非常に強い保護作用、あるいは炎症を抑える作用、神経を再生するような作用があるということがわかりました。これを何か神経の病気に使えないかといったことで研究をやってきたわけです。ある会社が、このHGFというのを、遺伝子を組み換えて、本当にきれいにつくることに成功しました。これを損傷した脊椎のくも膜腔からカテーテルを入れて、注入をするといったことで、損傷というものを和らげると。炎症を和らげる。炎症を和らげることによって、本来死んでいくような細胞を死なないようにしていくと。さらに残っている神経細胞からも、実はさらに伸ばしてやると。このような再生を誘導する。このような作用によって、急性期の脊椎損傷のモデルに非常に有効ではないかといったことが考えられました。北村さん達は動物を使って、まずはネズミ、そしてサルで、このHGFを加えることによって、かなりの治療効果というものを認めることができました。私達は、PMDAと言いまして、新薬の開発を審査するところですけれど、ここに申請しまして、実際の治験というものを、薬事法に基づいた治験をやっていいかということを申請しまして、今年6月にゴーサインが出まして、この6月からHGFを用いました急性期の脊椎損傷の患者さんに対する治験を始めたところであります」
反町キャスター
「現在やっている治験の結果がデータとして整って、本当にいろんな人に対応できるようになるという、その時間的な経過。どのぐらい待っていれば、急性期はすぐ直後でないとダメだというにしても、直後だったなら、HGFによるケアを受けられるかもしれないとなるまであとどのぐらい待っていればいいのですか?」
岡野教授
「我々はフェーズ1、2トライアルと、フェーズ1、2A試験と言っていますが、安全性を、時期を見て、有効性を見ていくという方法で数十例の患者さんを対象にやっていくということで、現在のところ6例ということです。これはある程度、目標としている患者さんに達した場合、厳密にいろいろな指標を見て、安全であるのか、あるいは効いているかといったことを判断して、もし成績が良いようだったら次のステップへということになります。次のステップというのは、より多い患者さんに対して適用するということになっていくということです」

中枢神経系の再生
秋元キャスター
「亜急性期、損傷後2週間から4週間と。この時点での治療法。これは、どういうことになるのでしょうか?」
岡野教授
「まず私達はこのiPS細胞から神経の幹細胞というものをつくって、患者さんに2週間から4週間後に移植するということを行います。患者さんがおケガをされてから、皮膚の細胞、血液の細胞を採って、これをiPS細胞にして、神経細胞にするとどれぐらいかかるかというと、皮膚の細胞からiPS細胞までにするのは3か月かかるんですね。それから、このiPS細胞から神経の幹細胞にするまで、さらに3か月。これですぐに移植していいかというと、それはできませんので、いろんな形で安全性について調べる必要があります。ガンをつくらないかとか、変な遺伝子が発現していないか。あるいは、ウィルスに感染していないか。実はその試験というのは、だいたい1年ぐらいかかるんですよね、1年半かかるんです。そうすると、先ほど言いましたように、2週間から4週間の間に移植するというのはできなくなります。そうしたら、どうしたらいいのかといことで、京都大学の山中先生達がすぐにでも臨床に使える、いろいろなHGFで、人に対応するiPS細胞というものをつくっておくわけです。臨床で使えるiPS細胞をつくるわけです。我々慶応大学ではそれを神経細胞にしておく。さらに、安全性をきちんと確認しておくと、その細胞を凍らせてとっておくと。凍らす。患者さんが来たら、それをおもむろに溶かして、手術室で溶かして、患者さんに移植する。そうすると、患者さんがいつ来られても、いつでも移植できるように細胞をとっておくと」
反町キャスター
「自分の細胞から分離、培養したものではなくても効果があるのですか?」
岡野教授
「このHLA(ヒト白血球型抗原)というのは、そもそも輸血の時に、血液型の適合性。それが細胞移植における血液型みたいなもので、このHLAというのは形があっていれば移植できますが、あっていないと拒絶反応を受けてしまう。ただ、いろいろ複雑なHLAというのは血液型以上にいろんな種類がありますので、それにだいたいあるグループごとの、HLAのバンクというものをつくっておくわけです。それが非常に似ている、いわゆる骨髄移植の骨髄バンクみたいなものですね。ですから、ある非常に近いグループから移植していきますと、免疫型拒絶反応が軽いもので済むということが、予想されていますので、それごとにiPS細胞のHLAの接合部分に対応するようなものを山中先生達は何種類もつくっていく途中です。それが、彼らがやっていること。それを慶応大学に持ってきて、神経の細胞にしておくと。それで患者さんが来たら移植をするということ。そうすると、免疫型拒絶反応はごく軽いもので済むということが期待できると」
秋元キャスター
「脊椎損傷から長年経過した慢性期。これについてはどういった治療をされるのですか?」
岡野教授
「これまでの動物実験では、幹細胞移植だけでは慢性期の治療としては不十分だということがわかりました。瘢痕組織が神経、幹細胞を移植しても、その移動や注意力を阻んでいる。そこにいろんな物質があって、それが実際、邪魔をしていることがわかりました。神経の突起を伸ばしていくのを邪魔する物質に対する薬を、我々は製薬企業と共同開発することができました。そこで神経幹細胞移植で、薬を一緒に投与する。そうすると、神経の軸を伸ばしやすくできる。さらに伸ばしていった軸先が本当に運動機能に貢献するように今度は徹底的なリハビリテーションを行います。そうしますと、幹細胞移植、神経細胞の軸先を伸ばす。リハビリテーション。この3者を併用することによって単独の治療法ではなかなかうまくいかなかった慢性期の医療法に何とか結びつけていきたいと思っています。2つ以上組み合わせると、実際、慢性期に対しての治療効果が出てくると。これは動物実験でも確認をしているところです」
反町キャスター
「現状で言うと、動物実験のデータですよね。それを人間にあてはめた場合にはどうなっていくのかという、たとえば、プログラムにしても、それは具体的にはどういうイメージで、3つの方法の組み合わせるのか、人間に対してはどうなるのか?」
岡野教授
「現在のところはマウスで成功をしていまして、次はこれを猿でやって、人でどうやって外挿するのかということを決めて、7年後ぐらいには、ファーストヒューマンでしたいと思っています」
反町キャスター
「これはかなり難易度の高い…」
岡野教授
「難易度が高いですね。高いけれども、動物実験で結構、マウスの実験で良いデータが出始めていますので」
秋元キャスター
「塚﨑さん、今後、比較的はやい時期に、再生医療の臨床研究が始まりそうな分野には他に何があるのでしょうか?」
塚﨑氏
「まずパーキンソン病。ドーパミンという細胞がつくられなくなるんですけれど、それを再生する細胞。これは脳を開けないで注入するという治療で、これはかなり動物で良いところまでいっていますので、はやいと思います。もう1つ、澤芳樹先生がやられている重症心不全の。これはどういうところまできているかというとiPS細胞が世に出る前に、澤先生達は足の筋肉の細胞を使ってやっていたんですね。足の筋肉でも神経は、割と単純と言ったら怒られちゃうんですけれども、ここは拍動するということで、足の筋肉と比較的近いものがあるので、それでシート状にしたものを、心臓に貼りつけるという治療をやっていて、技術的にはかなり確立されたもので、心臓から胸を開けて貼りつけるものですけれども、ただ、要するに、神経がかなりダメージを受けた細胞でも治せないということがあって、それで細胞を補充しようということで、iPS細胞が出てきた。iPS細胞から心筋シートをつくってということででも、シートづくりを始めるんですけれども、これもまた心臓をつくるので、かなり多くて10億個必要なので、心臓というか、心臓に貼るだけのシートをつくるのに大量培養とか、そういうバックヤードを進めると。その他、諸々、クリアできれば、人に使うと。あとは、たとえば、目でも表側のレンズの角膜移植というのがありますけど、シート状にしたもので角膜をつくるということ。小さい臓器といったらあれですけれども、これは岡野先生が進めているもので、血小板とか、赤血球。それをiPS細胞でつくる。皆さん、何かあったら輸血を受けられますけれど、高齢化社会で供血者が減るということなので、それも1つの大事な研究で、これもかなりできているという感じですね」

再生治療のリスクは
反町キャスター
「iPSをかつてこの番組でやった時のポイントは、治療と癌化するリスクがあるという、そのところをずっとやったのですが、そのリスクは現在も状況は変わっていないのですか?」
岡野教授
「リスクがあるということを前提に、我々は準備をしなければいけないということです。これはサルではなくて、何で(人に)すぐにやらないのというところは、そこですよね」
反町キャスター
「癌化のリスクを低減するための新たな何かというのは出ているのですか?」
岡野教授
「3つほど提案がありまして、1つは、遺伝子レベルで癌を起こす遺伝子というのは600個ぐらいあります。そういったものにもし傷がついているとまったく使えないということになります。だから、まずiPS細胞の段階で、iPS細胞から僕らの場合、神経の幹細胞にします。癌を起こしそうな遺伝子を、徹底してDNAの塩基配列を調べます。癌を起こす遺伝子以外にも異常があるかどうかということをまず調べると。そこに入っていないものを調べるのが大前提です。それから、もう1つは、動物、特に免疫がないような動物に移植して、その動物が癌をつくらないかということをかなりの長期間。半年以上のものを見て、癌が起きないということを確認するということと、もう1つはどんな変な遺伝子でも通常、神経だったら、発現している遺伝子がわかるのですが、それ以外の変な遺伝子が発現していないということを見ると。だいたいこの3つを徹底的にやるといったことで、これは危なそうな細胞だ、これは使えそうな細胞という、かなり選別をして見ると。だいたいそのようなプロセスで、先日の高橋先生の臨床研究も一応、全ての項目で、これは大丈夫そうだと言ったことで、最終的に踏み込んだということですね」

iPS細胞研究最前線 新薬開発への利用
秋元キャスター
「新薬の開発にはどうつながっていくのでしょうか?」
岡野教授
「たとえば、アルツハイマー病の患者さんの皮膚、あるいは血液から神経細胞をつくる。真の細胞をつくることができるわけですよね。普通アルツハイマー病の方の脳をいきなり開けて、神経細胞がどうなっていますかと調べることはできないわけですけど、実際にシャーレに取り出して、病気になる前から、病気はどうやって起きていくかという病気のヒストリーを調べることができます。ただ、脳内に直接いかずともとれる。病気になる前から病気になる過程を見る。時間と空間を飛び越えた研究法だと」
反町キャスター
「それは、要するに、脳からとり出したのと似たようなものをシャーレで人工的につくることによって、治療する薬ができればいいというよな、実験台というか、土俵がそこにできる、こんな理解でよろしいですか?」
岡野教授
「そうです。アルツハイマー病の場合は、ベーターアミロイドが溜まるとか、いくつかの所見が言われています。これをバイオマーカーと言っています。これまでは生きている患者さんでしか確かめることができませんでしたけれど、我々はシャーレの中で、アルツハイマー病の患者からつくった神経細胞が、ベーターアミロイドというものを早期に正常の方の倍ぐらいのスピードでつくるということを見出すことに成功しています。これをできないようにする薬を開発すると、アルツハイマー病の治療薬に結びつく、そういうことが期待できるわけです」

創薬への利用
反町キャスター
「アルツハイマー以外に、人工的にiPSによって土台をつくって、新薬の開発が進んでいるものにはどんなものがあるのですか?」
岡野教授
「世界的にも進んでいますけれど、筋萎縮性側索硬化症という神経のALSです。難病中の難病と言われている疾患に関しましては、たとえば、ハーバード大学のグループと僕達もこれをやっています。それ以外にも、遺伝性の難聴で僕らのグループはこのiPS細胞から内耳、耳をつくる細胞に世界で始めて成功してまして、難聴の患者からつくったその細胞に対して非常に治療効果のある薬というのは、既に別の目的でもう売られている薬の中から見つけることができました。たとえば、糖尿病の薬とか、抗生物質とか、既に市販されている薬。これは安全性も確認され、いろんな目的のために投与され、使われている薬です。これをもともと難聴の目的ではないのですが、ひょっとして難聴を治す作用のあるものがあるかもしれない。それで既に承認されているような薬を集め、その中から難聴の内耳の細胞に対して働く薬、こういったものをスクリーニングし、承認されている薬の中から、治療効果のあるものを選んでいくというストラテジーで研究をやっています」
塚﨑氏
「たとえば、コレステロールが高い中高年の方が多いと思うんですけれども、青カビから、日本の遠藤章先生が発見したスタチンという薬があって、安全性も評価されて、効果も評価されているんですけれども、京都大学のiPS細胞研究所で軟骨無形成症というものに効果があるという。これを投与したらつくられないはずの軟骨が、つくられ始めた、そういう話が出て、スタチンというものはかなり世界中で評価されている薬なので、値段も下がっていますよね。つくられて長いので。そういう薬がどんどん新しい適用追加とか、そう言うのですが、どんどん夢が広がってくるというか。これまで安くなっちゃって、見向きもしなかったけれども、患者さんにとっては救いになる可能性があるということですね」

日本の再生医療研究の課題 諸外国の取り組みは
秋元キャスター
「アメリカの取り組みについては?」
岡野教授
「世界最初のiPS細胞を使った治療が日本で行われたわけで、その後、続々と脊髄損傷やパーキンソン病などで計画されていますので、かなり日本はリードしていると思いますけど、アメリカはどうかと言ったら、虎視眈々と次を狙って、かなり進んでいますね。特徴的なのは、NIHといういわゆる公的資金によるサポートではなくて、民間企業が結構やっているんです。ウィスコンシン大学がつくったベンチャーなど本当に治療用のiPS細胞をつくる。まさに京都大学がやろうとしているようなことをガッと金を集めてやろうとしていますから、我々にとってはかなり脅威です。本当に彼らに何とか越されないようにする。日本がリードするといったことも大事だと思っています」
秋元キャスター
「1番市場が大きいのはアメリカなのですか?」
岡野教授
「アメリカは大きいですね。新薬の市場としてだいたい45%、世界の。日本は9%と言われています。アメリカと日本を押さえると世界の半分は押さえられると言われています」

どうする人材育成
反町キャスター
「人材面でいうと、人の育て方については」
岡野教授
「人材育成はしっかりやっていかないといけないと思います。政府もそうですが、科学のコミュニティが人を育てるということをしないといけないと思います。特に、細胞を培養する人ですとか、さらには臨床の研究のデザインをする人が充実しないとなかなか本格的な臨床研究、治験というのは難しいです。人材が不足しているから、今回いろんな事件が起きたわけで、ここを充実させる必要があります」

関連予算は
秋元キャスター
「日本の再生医療関連予算は約151億円ですが、この予算では足りないと思いますか?」
岡野教授
「これは実際に再生医療をするための、それこそ細胞が本当に安全なものかということを調べたり、培養したり、そういったことに対する費用であって人材育成に使うのとはまた別であります。それはそれなりに、政府も理解して、予算をとり始めています。ただ、もっともっと急ピッチで人材を育成していかないと、なかなか今後も伸びていくということには追いつかないかと思います。そこらへんは政府だけでなく、大学、あるいは科学コミュニティが意識してやっていく必要があるのではないかと思います」

実用化への法整備
秋元キャスター
「医薬品医療機器法(旧薬事法)、再生医療等安全性確保法の2つの法の施行はどのような効果をもたらすと考えますか?」
岡野教授
「先日のサンフランシスコのミーティングでも、いろんな人が、日本での法律の状況を説明した、かなり大きなインパクトが残っていますね。アメリカの投資家も医薬品医療機器法というので、即承認がとれるんだということで、かなり注目をしています。一方、早期の承認で安全が確保できるかといったこともしっかりと議論しないといけないという声もあがっています。ですから、これは非常に良いシステムですけれど、ブレーキとアクセルをうまく使い分けていくことが大事だと思っています。一方で、その中で安全性をより担保していくというのが、再生医療等安全性確保法、この2つがうまく協調的に働けば、安全なものをはやく世界に出せるということになりますけれど、どちらかが効き過ぎて、どちらかが行き過ぎると、これがなかなか難しいので、実際に法律ができましたけれども、これをうまく運用していくというのがすごく大事ではないかと思っています」
塚﨑氏
「やはりバランスですよね。たぶん止まることもあるかもしれないし、引き返すこともあると思うんですけれど、私は報道する人間として、そういうネガティブなことを書きすぎないというのが…マスコミがすぐに再生医療はダメだとか、iPSはダメとか、そういうことにもなりかねない。何かが起こるかもしれないですね。現在、行われている臨床研究でも、そのへんは自戒を込め、我々もバランスをとっていかなければいけない。患者さんと言うか、一般の人々もバランスをとってみてほしいということですよね」

日本版NIH メリットは
秋元キャスター
「日本医療研究開発機構(日本版NIH)ができることによってどういうことが期待できるのでしょうか?」
塚﨑氏
「iPS細胞というのは、教科書を塗り替えるような細胞の時計を巻き戻したということで、科学的な成果ということではノーベル賞も受賞したということですけども、山中先生はもともと臨床医でありますし、これを最終的に治療に使って、患者さんに活かしてというところまでしたいというのがアレで、我々日本は、基礎研究はかなりのものがあるけれども、基礎研究の場合が多い。ただ、それを本当に治療までするということが、これまですごく苦手だったというか、なかなか治療にならなくて、再生医療で言うと人工皮膚とか、人口軟骨を承認するのにもすごく時間かかっていたりしたのですが、そういうので目利きがいるんですけれども…これは医療に、きちんと患者さんに使えそうだなと目利きをして集中的にそれを育てていく」
岡野教授
「もともと現在、iPS細胞拠点も、文部科学省は患者さんに投与する直前までの開発をすると。そこから先は厚生労働省の資金でやってくださいということでここまで珍しく再生医療で省庁の連携がうまくいっていたわけですね。それをロールモデルにして、全ての研究についてきっちり基礎研究から臨床にいくまで一気通貫でできることにしようということでこの機構ができたと、私はそのように理解しています。だから、私としては期待するものが大きいですね」

岡野栄之 慶応義塾大学医学部教授の提言:『先ずは安全確認』
岡野教授
「日本でいろいろな法体制など整ってきて、日本版NIHができて、非常に良い雰囲気になっていますけれども、ここで何よりも忘れてはいけないのが、『先ずは安全性の確認』だと思っています。これをなくして先に進めることはできませんので、これを第1に僕らは進めていきたいなと思っています」

医療ジャーナリスト 塚﨑朝子氏の提言:『希望』
塚﨑氏
「iPS細胞が出て、7年で人に投与され、iPS細胞はもうあるものだし、人にも使えるということがだんだんわかってきた。つまり、大きな希望だったと思うんですけれど、この希望の中には、先ほど岡野先生も言われた安全性とリンクしていて、これはこのまま順調にいくかというとまだわからないと思っています。立ち止まるかもしれないし、引き下がるかもしれないのですが、でも、これだけ大勢の先生も含めて大勢の方がやっているということが希望になるということで、我々は希望を持って、それを応援していきたいと思っています」