プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2014年11月26日(水)
総選挙“論点”は何か 原発再稼働と各党公約

ゲスト

田中伸男
東京大学教授 国際エネルギー機関(IEA)前事務局長
吉岡斉
九州大学教授・元副学長

各党公約のエネルギー政策
秋元キャスター
「今回の総選挙におけるエネルギー政策についてですが、エネルギー、原発政策に関する各党の公約をまとめました。自民党は、原発は安全最優先で新規制基準適合の場合、再稼働としていますが、民主党は2030年代の原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入するとしていまして、脱原発を目指すとしています。その他、各党、再稼働反対、原発ゼロ、自然エネルギー大幅増、脱原発依存など原発を将来的になくしていこうという方向です。まずは、田中さん、今回の選挙、アベノミクスばかりが争点として注目されているのですが、エネルギー政策というのも経済に影響が深い問題だと思いますけれども、各党の公約を見ていかがですか?」
田中氏
「見ておもしろいと思いますのは原発が中心の話題ですね、エネルギーと言っても。従って、福島の事故があって、原発の安全問題がどうしても中心になるのはわかるんですけれども、それで全てのエネルギーについての議論を集大成しようとしても、それは無理ですね。ですから、世界中でいろいろなことが起こっていて、特に現在、中東でイスラム国が暴れまわっています。そうすると、あれがサウジに影響するとか、イランの問題を引き起こしてホルムズ海峡がおかしくなるとか、そういうグローバルな問題、それから、ロシアもそうですね、ウクライナの関係で制裁を受けていますので、ここからエネルギーが来なくなるかもしれませんので、ヨーロッパもそれを非常に心配をしているわけですね。アメリカはシェールガスがありますから、非常に上をいっているわけですね、強くなっているわけですけれど、これを日本が買ってくるにしても、そのコストはどうなるのかとか。エネルギーは日本みたいに資源のない国ではありとあらゆるエネルギー源を持って多様な形で持って、どれか1つダメになっても、こちらがある。こういうことで進めていかないとエネルギー安全保障が高められないわけです。その場合、それぞれにそれぞれのコストが違って出てくるわけで、そういう世界全体の流れの中で、日本がどうすることが、また、結構大きな国ですから、日本がどういう政策をとるかによって、世界における資源の値段にも影響を与えてしまいますので、そういうことも考え、視野に入れながら、エネルギー政策を国民にわかりやすく説明をして選んでもらうと。これが必要ではないかという気がします。ちょっと原発の安全ばかりを議論するのはいかがなものかなと」
反町キャスター
「エネルギー政策ではなくて原発政策。しかも、それが再稼働が是か非か。その1点だけに絞られているみたいなイメージで見ていますか?」
田中氏
「そう見えてしまいますね。ここの議論はそこからどうも出てきているような。国民もそれが心配だから、それについて知りたいということはすごくよくわかるのですが、そこだけでエネルギーの全てを仕切ろうとしても無理ではないでしょうか」
吉岡教授
「選挙の争点として確かに1つの中くらいの争点になっています。1つは、アベノミクスという言い方は安倍さんの個人的な言い方で、学問的にはそのような言葉を使うべきではないと思っていて、景気対策とか、生活、福祉とか、消費税とか、そちらの方の関心が原発より高いわけですけれど、原発もそこそこの関心があるということで、国民は見ているんだと思うんですね。ここで票と言うか、議席数が、それを1つの要因として大きく変わるならば、原子力政策というのに影響を与えることが大であろうと思っています。極論をすれば、政権が変わるとすれば、政権政党自体が変わるということですけれども、そうしたらまたゼロから可及的速やかにというような方針を政府が決めるかもしれませんけれども、その可能性もあるので、選挙には非常に注目をしています。私の原発についての見方ですけれども、エネルギーの10%ですね。それほどたいした量ではないと。9割が化石燃料とその他の水力、再生エネルギーとか、そういうので占められていて。ところで、2005年ぐらいの、日本のエネルギー消費のピークと(比べて)現在1割落ちているんです。1割落ちたというのはリーマンショックが最大の理由ですけれども。ですから、原子力分がなくなっただけと考えればいいんです。電力だけをとれば話は別ですけれど、化石燃料の消費は2000年代半ばに対して増えていない。温室効果ガス排出も超えていないというような。これからもっともっと下がっていくだろうと私は思っているので、原発がなくなったら困るとか、そういうことではなくて、化石燃料の削減もこれから自然減で減っていく。節約をすればもっと減る。その中から再エネはどのぐらい伸びるか。予測は違いはあると思いますけれども、化石燃料を減らしていくのに、再エネはどのぐらい貢献するかという問題であって、原子力か、再エネかという問題ではないように最初から思っていたし、別に原子力を止めるのに再エネが要るわけでもないと、両者を別の問題として考えるべきではないかと思っています」

エネルギー政策の行方
秋元キャスター
「日本の原発は現在、全て止まっている状態で、その分を他の電力が補っているというのが現状ですけれど、その内訳がどのようになっているのか。2010年までは火力が6割、原子力が3割だったのですが、2011年の福島第1原発の事故以来、電力量の構成比が大きく変わり、2014年の9月の時点で、原発はゼロに対しまして、火力が9割となっています。田中さんはほとんどの電力エネルギーを火力に依存している状態。これをどのように見ていますか?」
田中氏
「ちょうど日本が第一次石油ショック、1973年頃に、そうであったと同じ状態になっている。つまり、原発も止まってしまったために。従って、日本は現在、火力発電は、ガス、石炭。昔は石油ばかり焚いていたわけですけれど、それを多様化して、ガスにし、また石炭も焚いているという意味では多様化しているんですけれど、全部こうやっているがために、原発がないためのリスクの第1は、万が一、ホルムズ海峡で何かゴタゴタが起こって、石油からガスの一部が来なくなった時に、日本経済は破綻するようなインパクトを受ける可能性がある。一番大きなリスクは万が一、何か起こったらどうするということですけれど、現在日本の政府の関係者の人とも話すのですが、確かに、安倍さんはあちこちアラブの国に行ったりして外交をやっておられる。これは非常に正しいことですね。ただ、短期で何か起こった時にどうするかということを十分考えられているかどうか。一番いいのは原発の再稼働ですよ。それも安全審査が終わらない前に動かさなければいけないかもしれないですね。もしそれが起こったら。たとえば、(ホルムズ海峡封鎖と)なった場合。その時、動いていればいいですよ。結局、動いていないかもしれないですよね。そうすると非常時、そういうことをやる手段って現在ないです。我々はすぐ考えなくてはいけないのは非常事態の対策をきちんとやっておかないといけない。非常時にどうやって融通するとか、エネルギーの非常事態に対して、いろんな手を打っていく専門家集団がないんです、日本は」

原発ゼロのリスク
反町キャスター
「それは単にエネルギーについてですか。それとも、危機管理に対する広い意味?」
田中氏
「広い意味での危機管理を含む、エネルギーを含む原子力ですが、そういう危機管理体制をきちんとやる組織をつくれていないのが大きな問題だと思います。もう1つのリスク。IEA=国際エネルギー機関が最近、世界エネルギー見通しを出しました。その中で日本の原発が再稼働しないような、原子力が非常に低い用途しかなかった場合のシナリオを分析しているんです。その場合、彼らが言っている問題が3つあって、1つが現在の安全、非常時対策ですね。そういう安全保障上の問題が起こる。2つ目は、日本の化石燃料の輸入が増えますね。従って、貿易収支がもっと悪くなっていきますので、アベノミクスで日本経済を再興しようとしている時、さらに毎年余分に4兆円ずつも払っていくという、この負担が増える。これが大きな問題だ。3つ目のリスクですが、二酸化炭素の排出ガス。来年、COP21、パリで会議がありまして、日本も何らかの協力をしろと言われるんですね。特に、最近お聞きになられていますように、中国とアメリカが手を組んで、二酸化炭素を俺達はこれだけ減らすぞ、世界に先駆けて決めた。さあ、皆やれとこう言っているわけですね。ヨーロッパはできるんです。40%やると決めちゃいましたから。困るのが、原子力がない日本と、石炭をこれから燃やさなくてはいけないインドです。この2つの国が一番困ったことになるんです。そのリスクを、原子力をやっていないことによって日本は抱えながら走っているんですよ。世界中から糾弾される。もう我々は、ごめんなさい、福島で事故を起こしちゃったので、原子力はうまくいきません。許してください。二酸化炭素の排出が増えちゃうんです、と言っても世界は許してくれないと思います」
反町キャスター
「暫くは持つのではないかという話、その言い訳の時期は終わりましたか?」
田中氏
「3年も経って、またそれで、お前らいい加減にしろよと。何をやっているんだと言われると思います。特に、アメリカと中国がそうやってつるんで走っているのは、日本に対するプレッシャ―をかけようとしているんだと思いますよ」
吉岡教授
「地球温暖化に関しては先ほど、自然減という話をしましたけれども、自然減というのは長期的なトレンドで、わずか6、7年の間に10%減ったというのは、もちろん、製造業の国内での活動の低下というのが大きな要因。それと、燃料価格の上昇による、省エネしなければいけないのですが、そのドライブ。その3つから出たのではないかと見ていますけれども、今後は長期的なトレンドでどんどん下がっていって、製造業もそんな伸びる要因はあまりないと、私は…」
反町キャスター
「そういう雰囲気が続くと聞こえるのですが」
吉岡教授
「国内ですけれど、私は日本の方がまだ欧米より製造業の比率が高いですけれども、労働力でも、経済力でも2割をだいぶ割り込んでいますので、それが下がるのも自然のトレンドだろうと。自然減ではないんだけれども、製造業の減はまた自然のトレンドであって、復活というのは、高度成長期を思い出して、非常に難しいと」
反町キャスター
「エネルギー安全保障はいかがですか?散らした方がいいという、ホルムズ海峡で有事が起きたら、日本のエネルギーは止まるという、ここの部分はいかがですか?」
吉岡教授
「何か月もそういうような事態が継続するというようなことは果たして、あり得るのか。突発的にそういうことは起こるとは、私は思っていないですけれども、仮に起こった場合は、そういう問題が生ずるから、備蓄とかを、たとえば、ガスでも、そういう対策をとっておくことは必要でしょうね」
反町キャスター
「それもやっていないですよ、現状は。そうすると、原発は動かさない。ガスは備蓄しないという、そこのリスクというのは、吉岡さんも感じるのですね?」
吉岡教授
「もちろん、そうです。それだけではなくてコストの面で言うと非常に効率の悪い石油、火力、あるいはそれを石油危機に乗じてガスに転換したのが、すごく古いのが40年ものとか、そういうのがいっぱいあって、あんなので燃やし続けるというのはとんでもない話であって、あれをスクラップにして、新しい、はるかに有効利用のできるものに(する)。それも(エネルギーの)安全保障にとっては非常に有効ではないでしょうか」

原発再稼動と新規制基準
秋元キャスター
「原発ゼロのリスクについて聞いてきましたけれども、ここからは原発再稼働とその安全性について聞いていきたいと思います。安倍総理は記者会見でも原子力規制委員会の審査に合格した原発については再稼働を行う方針というのを表明しています。では、現在、原発の再稼働に向けた動きはどうなっているのかということですが、現在、再稼働に向けて原子力規制委員会による新規制基準の審査を受けている最中のものです。その中で、九州電力の川内原発、新規制基準の下での合格第1号となり、来年早々にも再稼働が始まる見込みとなっています。一方で、吉岡さんが座長を務めています原子力市民委員会は9月30日に新規制基準による審査について疑問を呈する声明を発表されているんですね。吉岡さん、この新規制基準に合格してもなぜ安全は保障されないのでしょうか?」
吉岡教授
「それは原子力規制委員会というのがどういう組織であるのかということを考えれば、自ずと答えが出る問題で、規制委員会は2012年9月に発足をしてもう2年。2年の機会に私達は声明を発したわけですけれども、あの組織は基本的に、保安院とか、JNSとか、あるいは安全委員会のスタッフが集まってつくられた組織で、基本的に、原発を再稼働させるというミッションが体に染みついているような組織ですので、ですから、既にある日本の48基が残っているわけですけれども、その全部の原発を再稼働できるように、ただ、多少いろんな安全装置や運搬できるものとか、固定式、そういうものを付けて一部耐震補強すれば、防潮堤をつくれば動かせるようにというような、そういう水準の基準を立てたわけです。でも、それではあまりにも甘いだろうと思われると困ると、私の想像ですが、いろいろ事細かい新規制基準に、事細かいルールを設定し、膨大なチェックリストをつくって、そのチェックリストをクリアするのに各電力会社は非常に手間取って、川内のチェックリストをつくるのに1年かかり、それに最初に合格するのに1年かかるという。そういう遅れを出したというのは基本的に肝心なところは規制を強化しないで、チェックリストを厳しくして、細かいことをやらせるという、それも新規制基準というものの性質であって、それで時間を要したという、そういうことですから、それによって新規制基準というのは、つまり、本質が甘いと思います」
反町キャスター
「厳しくなっているのではなくて検査項目を増やしただけだと。手間を増やさせて、量が増えているだけ?」
吉岡教授
「いや、だけと言っても言い過ぎですけれど、それはそれなりに安全性は強化されているけれども、細かく検討をしていくことは、多くの弱点が解消されていないと、私達は考えて、私自身もそう考えています」
反町キャスター
「原発事故に関しては、事故を起こさない対応と、起きたあとの対応。たぶん2種類、大きく分けてあると思うんですけれども、今の話を聞いているとどちらの方に今回、新規制基準に手抜かりがあるとか、緩いとか、どちらですか?」
吉岡教授
「新規制基準の特徴というのは、機械システム、それだけですよね。指揮系統とか、避難とか、それは皆丸投げしていて、機械装置の基準を満たすかどうかだけを審査しているんだけれども、それを厳しくすると、次々に落とさざるを得ない、原発を不合格にせざるを得ないから。たとえば、古いタイプの、何か起きた場合の格納容器が損傷を受けやすいとか、そういう古いタイプの原発を皆合格にする。あるいはたくさんの原発が1か所に何基もある。これは危険だと思うんですけれども、それを許可する。あるいは地下水が大量に流れていることが、川内もその1つだけれども、それも問題なしとか、そういうことになって規制基準そのものが非常に付属装置を付ければ通るような水準になっているものが、本質的に原発事故が起きるならば、とんでもないことに至るのを抑え込むための手段が講じられているようには、私には見えないということです」
田中氏
「新しい規制基準が、委員会でできて、世界一厳しいと言っておられますよね。それで私自身、100%絶対安全はあり得ないので、人間のやることですから、できるだけ厳しく、国際基準、水準から見て、IAEAなどが定めている、そういう基準から見て、それに十分あっているものをつくるのが実は日本のやるべきことだと思うんです。それは科学的に考えれば、当然どこまでやることが工学的にも、1番合理的な安全の基準かというのは考えられて、それを厳しくつくったはずなので、それで合理的に安全ですと判断を、今回、川内についてされたわけなので、それはそれでいいのではないかと。ただ、国民は安全と安心という言葉がありますよね。私は安心と安全は違うんだと思うんです。安心のために安全を際限なく強化していくと無駄なコストがかかるんですね。それは他の国は心配して見ているんです、日本を。安全にやってもらわなければ困るんだけれども、規制基準を不必要に強化することによって他の国にも迷惑を及ぼすことはしないでくれよと言っているんです。アメリカに緊急事態管理庁というのがありますが、あれを日本でつくらなければいけないんだけれども、3年経ってもまだできていない。専門家集団がいるわけですから、アメリカのシステムは万が一が起こったら、その人達がワーッと集まってくる。一朝ことがあった時に、原子力なら原子力災害にあわせた人が集まってきて、その人達が議論して、決めて、知事と相談しながら進めていく。これをはやくつくらなければいけない。他にも安心を高める方法はいろいろとあって、たとえば、フィンランドの原発というのは、原発の本社が原発の中にある。社長が常にそこにいるのだから、最も安全だろうと周りの人は思いますよ。そうやったからと言って、安全が高まったわけではないですよね。安心が高まった、全体に。これから東京電力が、たとえば、発電会社を分離していくのなら、本社はそこに置くとか、柏崎界隈に置くとか。そういうことを考えた方が安心のためのコストというのは、安全基準をべらぼうに厳しくすればいいというものではなくて、むしろ安心のための措置をキチッとやっていく方がむしろ国民は納得するのではないかと、私は思います」

再生可能エネルギー普及の壁 固定価格買い取り制度
秋元キャスター
「固定価格買い取り制度における買い取りの保留について、現在の事態をどのように見ていますか?」
吉岡教授
「太陽光発電の建設の契約は増えたんですけれど、2012年の制度導入によって、実際できている太陽光発電所というのは計画の十数パーセントぐらいで八十数パーセントはまだ動いていないわけですね。たとえば、50%が動くとすると、電力の中に占める比率は、日本全体では4%、5%ぐらいで、九州では特に高くて、その倍ぐらいになると思うのですが、だから、まだまだ余裕があると思っていたのでこの時点で買い取りの保留を行うというのはやや唐突に思える」
反町キャスター
「送電網、ファシリティが未整備だから足りないのですか?」
吉岡教授
「現在は十分足りています」
反町キャスター
「過剰防衛というニュアンスで受け止めていますか?」
吉岡教授
「そうだと思うのですが、本当に太陽光発電所が皆開業してしまうと、送電線がいろんなところで不足するだろうなということは私には容易に見えますので、問題提起をされたということ。できるたけ早急に合理的な送電するネットワークの設定とか、それに対するインセンティブとかを考えていけばいいのではないかな。いい機会だと思います」
田中氏
「最初から、私はこの制度を始める時に、値段の設定の議論をしている時に、IEAとして、現在これをやると、いずれこういう問題が起きると言っていたんです。まったく驚きではない。値段が高すぎる。送電網の整備をしておかないとせっかくつくっても必ず送れなくなって断る。そう成らざるを得ないと言ってきました。それから50Hz、60Hzの大きな問題にまず手をつけてやらないと2度とやりませんから、ああいったこともきちんと整備する。もう1つはソフトの制度の話で発送電分離です。そちらに向かっていよいよ市場改革をしていくのは大変結構だとは思うんですけれど、あれをやれば基本的に、送電を抑えている人達を規制してどうすれば日本全体に最も良い送電網で、そのための投資をどこで誰がやったら良いのかと。誰が負担をするかとしたうえで風力、太陽光をつくっていけば、それはうまくできるはずですよね。そのデザインもなく、さあ高いフィードインタリフを固定価格で買ってどうぞつくってくださいと言ったって、うまくいくわけがないですよ。こうなることは最初からわかっていたので、この制度の設計の間違いですね」
反町キャスター
「経産省は何を反省すべきなのですか?」
田中氏
「経産省が反省すべきは、政治とは言いませんけれども、非常に高い値段を最初につけて投資を促進しようとした。その意図は買いますけれども、そのための前提となるいろいろな物理的な系統の整備、制度の改革をやっていないままに走ったのが間違いなので、制度の方をまずきちんとやった方がいいです。たとえば、フィードに対するいろんなやり方があって、ブラジルの例が非常におもしろいんです。ブラジルはどうやっているかと言いますと、国として、たとえば、再生エネルギーはこれぐらいやりましょう、ガスはこれだけ使います。ある程度、どれだけの量の発電するかを決めて、そこでオークションにかけているんです。太陽光についてもセグメントでオークションかける場合もありますけれども、そうすると、その中で1番安い人からどんどんとっていけばいいわけです」
反町キャスター
「固定価格買い取り制度ではない?」
田中氏
「違います。これは量をまず抑えていって、値段を安くマーケットで決めさせる。固定価格買い取り制度の問題は、価格を国が決めて、量をマーケットで調整しようということですから、これはバーンと爆発させる可能性があるわけです。それかまったく出ない可能性もある。逆に量をもっときちんと提示して、マーケットが働かせて安い値段にする。ブラジルはどうなったかと言うと、ブラジルの太陽光で1番安いのはkWあたり9円ですよ」
反町キャスター
「日本は42円から始めましたよね?」
田中氏
「9円でできる…やろうと思えば。そういう制度設計を考えた方がエネルギー安全保障の観点からすると、原子力もそうやっていいのかもしれない。イギリスは実は価格で攻めていこうとしているんです。原子力についても、フィードインタリフみたいなものをかけようとしているんですけども、むしろ量をこれだけやる。1番安い原子力をつくる人は誰ですかというオークションをやってみるとか。そちらの方が全体のコストを下げていくのにはいいのではないのかなと私は思います」

『原発のゴミ』最終処分
秋元キャスター
「解決に向かわない原発ゴミの問題をどのように見ていますか?」
田中氏
「原子力をやると、使用済み燃料が出て、それをなんとか処理をしなくてはいけないというのは、最初からわかっていたことではあるんですよね。六か所で再処理をして、これから廃棄物をつくって、これを捨てる。取り出したプルトニウムは高速道路で燃やす。これを考えたわけですが、サイクルを。残念ながら捨てる場所がなかなか見つかりにくい。諸外国で見てもフランス、フィンランド、スウェーデン。限られた国で確かに見つかっているのですが、アメリカみたいに暫くとりあえずキャスクに入れて、使用済み燃料を原発のサイトに置いておこうと。そうすれば自分達は別にシェールガスもあるし、石炭もあるし、石油もあるから暫く放っておけばいいんだ、30年、40年は…こういう国もあるわけですよ。日本も一部、そうやって良いのかもしれませんけれども、それでは解決にならないので、本来このゴミの問題はきちんと解決する技術がある。統合型高速炉というのがあるのですが、これは米国がアルゴンヌ国立研究所で開発をした高速炉です。ナトリウムで冷却する高速炉なのですが、ちょっと違うのは、ウランの燃料が金属燃料である。酸化物ではない。それをうまく再処理する場所がすぐ原子炉の隣にあるんですよ。これは乾式再処理。日本の六ヶ所でやっている再処理とは少し違った技術ですけれども、この技術は燃料から電気分解でプルトニウム、それから、マイナーアクチノイドという非常に高い放射線の物質を一緒に取り出し、ウランも取り出して、これはもう1度高速炉で燃やせるわけですね。そのマイナーアクチノイドという超ウラン元素というのが、非常に放射能が高いために高レベル廃棄物になって10万年置いておかなければならない。六ヶ所の技術のピューレックス法というのはもともとプルトニウム爆弾を作る技術ですから、爆弾をつくるためには、できるだけゴミは取り出して純粋なプルトニウムを取り出すための技術です。従って高い放射能のものもゴミにしてしまうので非常に困ったことになるわけです。ところが、それをもう1度一緒に高速炉に入れて、燃やしてしまえば、それはゴミではなくなるわけですから。最後に炉から出てくるゴミは300年で放射能が自然ウラン並みに落ちると言われているんです。10万年と300年は大きい違いだと思いますね、ゴミの管理として。つまり、管理しておけば300年は経つ可能性があって、10万年という地層処分と言うから非常に難しいわけですから、できればこういう技術によって300年にしておくとゴミの処分問題がかなり楽になるのではないか。もう1つ、この技術として非常に期待できるのは福島第1で出ている燃料デブリです。いろんなモノが混ざって溶けている。あれを再処理する技術ですね、これ。アルゴンヌ国立研究所のアイダホに、アメリカはスリーマイルアイランドでできたデブリを持っていってるんです。とりあえずそこに置いてあるんですけれども、いずれアルゴンヌがつくったこの技術でゴミ処理をしようと思っているんですね。だから、そこに置いてあるわけです。福島の場合、どうしても福島県からゴミを持ち出してどこかに埋められますかと言うと、これは正直難しいと思います。そうするとこの技術をむしろ福島で実際に試してみて、デブリをうまく処理して、燃やせるものは燃やしてしまって、300年のものはそこで管理していく実験、この統合型高速炉。それから、乾式再処理ですね。この技術開発実証を福島でやったらいいのではないかと思います」
吉岡教授
「常に新しい炉というのは、提案され、しかし、消えていったということで、高速増殖炉というのは1950年代半ばぐらいから、研究炉、実験炉がつくられてエンリコ・フェルミの最初の実験炉が1958年ぐらいに動き出したと思うんです。それが電気出力6万5000kWで熱出力が20万kW。それがそれ以降、原型炉という次のステージで30万kWぐらいの、そこにいくつかの国がやったんだけれど、うまくいかなくて、次々に放棄していて、残るのはフルプルトニウムを利用した高速中性子で連鎖反応を維持してナトリウムで冷却するというのは日本だけになってしまったと。だから、半世紀やって成功しなくて、日本だけはやくやめればいいと私も思って、全盛期の末ぐらいから高速炉もんじゅの事故のあとの原子力委員会の委員をやっていたことがあるんですけれども、そこでも博物館にすればいいと言ってきたんですけれど、技術は基本的に共通で、5万kW熱出力というのは、フェルミ炉よりもっと発展段階より低い炉だと思っているので、研究ぐらいならやってもいい。数万kWぐらいなら大事故起こしても福島のようにならないという点でそれはそれで研究は否定しないけれども、うまくいくのは無理だろうなと私は思っていて、重要なのは、高レベル廃棄物の処分というのはそんなに重要ではなくて、1番重要なのは福島で飛び散った放射能をどうやって始末するのか、始末できないと思うんです。デブリというのは多分隔離管理を何百年やるしかないのに場所すらわかっていない。そういうことで、重要度で言えば、高レベル廃棄物の処分というのは何十年後にやればいいのではないのかなと」

田中伸男 国際エネルギー機関前事務局長の提言:『嵐の中のエネルギー戦略』
田中氏
「最近出ました、IEAの世界エネルギー見通しの日本に対する結論です。イラク中東の問題、ロシアの問題、シェール革命、原子力の問題。ありとあらゆる難題が日本のうえに降りかかってきているんです、エネルギーについて。それについて日本はいったいどう対応していくのですか。ちゃんと政府が政策で乗り越えていくのですかと。それとも成り行きによって、世の中の出来事によって、左右されるようなエネルギー戦略をとるのですか。どちらにするかハッキリしなさいという提言を言っているんです。私はきちんとこういう時にはリスクの問題を考え、原子力の問題も考えながらいったいどうするのか。日本の専門家が、政治がきちんと決めていかないと大変困ったことになる。と言う意味で東京は現在、嵐ですけれども、嵐の中のエネルギー戦略。これが現在の日本の抱える最大の課題だと思います」

吉岡斉 九州大学教授の提言:『経産省主導の政策決定の仕組み廃止』
吉岡教授
「あるいは解体と言ってもいいと思うんですけれども、どうもそんないい具合に私も最近出ているわけですけれども、結局、経産省が電力やメーカーやいろんなところの都合を聞いて、それらの意見を原子力関係者に都合のいいことを全部並べて、そういうアドリストをつくって、そういう中間整理案というのが現在出てきているんですけれども、事故前のエネルギー基本計画と瓜2つというか、具体的な規模とかが書かれていない点を除いて瓜2つで、むしろさらに保護を基本化していこうと、そういう内容なので変わる能力がないんじゃないか。これでは絶対変わらないのではないのかという確信を深めまして、だから、原子力村とか、エネルギー村とか言われますけれど、そういう形でやっていたのでは必ずそうなる。それとは違う仕組みが必要で、民主党はそれをやろうとして失敗をしたわけですけれど、何かあるのではないかと」