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2014年11月24日(月)
総選挙“論点”は何か アベノミクス徹底検証

ゲスト

伊藤元重
東京大学大学院経済学研究科教授
熊谷亮丸
大和総研執行役員チーフエコノミスト
小幡績
慶應義塾大学ビジネススクール准教授

総選挙の争点“アベノミクス” 第1章2年間の結果は
秋元キャスター
「総選挙の争点、アベノミクスについて検証をしていきたいと思います。まずアベノミクスが始まって、およそ2年ですけれど、その間に日本の経済がどうなったのかというのを見ていきたいと思うのですが、まず株価は安倍政権発足時から7000円以上高騰しています。円相場は30円以上、円安になっています。消費者物価指数は上昇。賃金も上昇し、雇用も改善しているのですが、実質賃金がマイナスで推移していまして、物価の上昇に賃金上昇が追いついていない状態ということになります。伊藤さんは、これらの数値を見て、アベノミクスの2年間をどう評価されますか?」
伊藤教授
「アベノミクスの効果だけなのか、日本の経済がその間に少し上がり調子だという議論があると思うんですけれども、基本的には大きな成果が出たと見ています」
反町キャスター
「現在、野党がよく批判するような実質賃金がどうこうというものを、多少目をつぶってでもトータルパッケージとしてはうまくいっている?」
伊藤教授
「実質賃金についてはだいたい物価が上がっていく過程ではどうしても賃金が遅くなってきますから、それをはやくいかにできるかという意味では、課題が残っていると思いますけれども、ある意味、想定された部分もないわけではないということです」
秋元キャスター
「小幡さんはアベノミクスの2年間をどう評価されますか?」
小幡准教授
「成功だと思います。これはまさに予想された結果が起きているので、成功だと思うんですよ。つまり、ほとんどは金融政策ですから、金融政策で株高、円安、ただ、実態経済は特に何も変わっていないと。上がった部分もあるとすれば、民間サイドだけによる景気回復とか、2011年からの震災からの回復トレンドがあったとか、世界経済の影響とか、そういうことだと思いますね。それで金融政策が効いた理由は、デフレ脱却という呪文ですね。デフレ脱却という呪文が効いたんだと思いますよ。扉を開いた、デフレ脱却と言って。中身は金融緩和で、何で今回開くのか。ここは専門家でも議論があって、量的緩和をすれば、お金がいっぱい流れるから、景気が良くなるという単純な議論から、でも、実際には銀行から外にお金が出ていないので、実質金利はもともと同じ水準なので、何が変わるのかというと、雰囲気ですね。だから、呪文ですよ」
反町キャスター
「その雰囲気をつくるために、金融緩和が必要だったのですか?口だけで言っているだけではダメだから、何かあるのですか?」
小幡准教授
「だから、金融緩和自体は、中長期にコストとリスクを高めるので良くないと思うんですけれども、ただ何もなく、ただ開けゴマと言っても開かないので、説得力のある呪文でないといけない。それには異次元緩和で、必要だと思うんですよ」
熊谷氏
「短期的に見ると、アベノミクスで光が当たっている人と、そうでない人がいるわけですね。私どもが計算をしてみると、アベノミクスの円安によって、マクロ、国全体で見れば、3兆円の経常利益が上がっている。ただ、大企業が2.5兆円上がって、中小企業が0.5兆円しかない。それから、製造業が2.2兆円で、非製造業が0.8兆円だということがあるわけですし、また、大都市の富裕層は株の値上がりなどで非常に良くなっているわけですが、地方の低所得者の方は厳しいということですから、その意味では、短期の課題としては、こういった地方の低所得者の対策だとか、ここをきめ細かくやることが必要になる」

現在の日本の景気は
反町キャスター
「この間、国会で議論になっていましたけれども、企業内留保が、アベノミクスが始まって、この1年半だかそこらぐらいで、二十何兆円増えているというので、麻生財務大臣も、これは問題だみたいな話をされているではないですか。労働分配率が変わっていないにもかかわらず企業内留保が増えていて、賃金にまわさないのはけしからんという議論が出てくる。これはどう思ったらいいですか?」
伊藤教授
「まさに現在の政権の中で考えているのが企業の利益の一部、あるいはかなりが賃金にまわってくれば、それが好循環にまわってくるだろうという意味で、そこは非常に、彼らは鍵だと思っているわけですよ。ですから、企業が溜め込むというのは、日本の経済全体が循環するうえで好ましくないと。そういう発言だろうと思います」
反町キャスター
「実際、企業内留保は現在増えているわけですよね?数字のうえでは」
伊藤教授
「そうですね」
熊谷氏
「これは決して賃金を払っていないからではなくて、設備投資をしていないと。こちらが中心なわけですね。ですから、その意味では、データで見れば我が国の労働分配率は概ね横ばい圏。もしくはちょっと下がったぐらいの感じであって、どんどん下がっているという話があるのですが、それは、たとえば、1997年の金融危機の時とか、リーマンショック。こういう時は労働分配率というのは、不況期には跳ね上がるのは当たり前ですね。ですから、そこから下がっているというのはフェアな議論ではなくて、均してみれば、だいたい企業が儲けた分は、ほぼ個人に対して分配されている。むしろ、問題は設備投資などをあまりやらないから、内部留保が積み上がっている。そういう意味でいうと、実は設備投資がなぜ出ないかというと、調べてみると、企業の期待成長率。企業が、たとえば、3年先にどれぐらい成長を期待しているかという、これが実は設備投資の先行指標ですね。ですから、3本目の矢の成長戦略をやって、企業が成長できるというような期待をつくる。その意味では、金融政策に一定の効果があって、着実に現在、設備投資も出てきていますので、全体としては良い循環に入っていると。現在、働いている人の賃金はまだ大きく上がる状態にはなっていないわけですが、ここに雇用者数をかけると、これまでの失業していた人が働くようになって、賃金の総額で見れば、ほぼ一定の割合で分配を受けているということです。ただ、その中で政労使で賃上げの要請というのがあって、これは、一定の呼び水効果が存在する。たとえば、1%、4兆円、雇用者の報酬が増えたとすると、増え方の中身によって、消費に与える影響が違ってくる。たとえば、ベースアップによって4兆円所得が増えると、私どもの計算では、5.3兆円ぐらい消費にまわってくる。他方で、ボーナスで4兆円増えたとしても、ほとんどは貯蓄にまわってしまって、0.7兆円しか消費が増えないわけですから、これはあくまで呼び水効果として、まずは好循環をつくるために、政府と企業が話しあって、余裕のある会社はなるべく賃上げをしてくださいと。ただ長い目で見れば、3本目の矢の成長戦略をちゃんとやらない限りは持続的には賃金は上がらないということです」
伊藤教授
「賃金についても、雇用が強くなければ、無理やり賃金が上がるわけではないんですけれど、雇用が締まってくれば締まってくるほど、この先、賃金がマーケットの中で上がってくることが期待できるわけですから、そういう意味で、雇用が現在強くなっているということは、これは単に一部の上位10社だけが非常に良いという世界ではなくて、それに加えて、経済全体にじわじわと広がってきていると。そういう感じがします」
反町キャスター
「何年待てばいいのかという質問はまずいですか。染みてくるのがどのぐらいか」
伊藤教授
「ある時、面白いと思ったのは、ある証券会社と話をしていて、アベノミクスのちょっと前、安倍内閣というより、民主党政権の最後の時に日経平均は8000円だったわけですよ。それが1万6000円になって、良いかなと思ったら、何ではやく2万円にならないんだって、皆言うんですと。あるいは女性にしっかり活躍してもらうために保育園をどんどんつくらなければいけないと。実際できているんですよ。ところが、保育園がどんどんできてくると、自分の子供も預かってもらえるのではないかと期待感が生まれるんだけども、残念ながらダメな人もいる。何をしているんだと。でも、数年前だったら、そういうことも諦めちゃってという形で、だから、経済政策はすごく難しくて、まったく動かないと期待感も下がっちゃうんですけれど、ある種少し動き始めた。あるいは小幡さんの言葉を借りると、1年前よりも増えたのですかね。だから、変な期待感が非常に広がっちゃったんですかね」
小幡准教授
「GDPの推移のグラフを見ていただくと、アベノミクスというか、安倍政権が成立し、バーンと上がって、これが呪文で解けた部分もあるし、財政出動もドバーッとしたので、だいぶかさ上げされていると思うんですけれど。1-3月期、いわゆる駆け込み需要と言われる6.7というところと、その反動で減ったと言われる-7.3を均して見ると、要は、ずっと下がってきているわけです。ドカンと最初に短期でおいしいところを持っていって、かさ上げして、あとはちょっとやり過ぎちゃったから、実力通り落ちてきたわけです。日本の実力は潜在成長率がちょうどゼロぐらいと言われていますから、ゼロぐらいが良いところです。それなのに、5.6とか、3.2とか、成長し過ぎちゃったから、疲れて下がってきたので、景気循環で言うとピークアウトしてきたので、これから景気からという意味からすると、現在まあまあ良いと思います。昨年は良すぎてもうびっくりするぐらい良すぎた。これからはちょっと悪くなるんですね。だから、アベノミクスの効果は最初に驚かせたと。それでかさ上げをしたと。それが全てですし、そういう政策ですから。もともと金融政策は財政をドーッと最初に動員してということで」
反町キャスター
「そうすると、小幡さんは日本に経済成長を期待するのは無理である?」
小幡准教授
「いや、ところが、そうであるにもかかわらず…」
反町キャスター
「無理だとは思っていない?」
小幡准教授
「思ってはいない。まったく思ってない。むしろ日本経済の未来はこの3人の中で僕が一番ポジティブ、明るく思っています。なぜかというと、皆さん、循環の議論をしているんですよ。経済と言うのは、昔、私、伊藤先生の教え子というか…」
反町キャスター
「ゼミ生だったのですか?」
小幡准教授
「ゼミ生ではない。要は、経済は景気循環という部分と長期の成長トレンドという部分があって、景気循環という部分は需要サイドです。だから、デフレギャップというのは需給ギャップのことで、需要が足りなくて、皆はつくりたい、働きたいのになかなか売れないから、失業をしちゃうとか、設備も遊んでいると。これが需要不足。ずっと需要不足だった。ところが、失業率はほぼ完全雇用ぐらいの3.6%と。これ以上下がらないぐらい下がっている。有効求人倍率が上がってすごく良い、と言うことは、景気循環からすると現在はだいぶ良い状態です。需要不足という問題は解消しました。今度は成長戦略が大事だというのと、一般的には、そういう言い方ですけれども、要は、供給サイドで、日本がもっと良いものをたくさんつくれるかと。世界中に売れるような良いもの、良くて、いいものを、たくさんつくれるかというところにかかってきて、それが落ちちゃってきているわけです。それは人口も減っているから、総量で、働く人数が限られていれば、減りますよね。現在、人口の半分しか働いていないわけですから。高齢化が進んで。それは下がってきている。そうしたら、人の質を上げるしかないわけではないですか。ところが、ここ10年間、ずっと不況だったから、人への投資をせずに、非正規雇用というのは、賃金が低いというのも問題ですけれども、要は、単純作業ばかり、バイトだったらやらせても、全然成長機会がないわけです。勉強になる仕事じゃないから。今日より明日の方に、お前、なかなか成長したな、と上司に言ってもらえることもなく、単純作業だけ繰り返す。人が成長しないから、経済全体も成長しない。人への投資が足りないと。これは長期の成長の問題だと、供給力という言い方をします。長期の方に話がいかないと、短期の循環の議論で、これで好循環と言っても、循環自体はもう好循環です。総悲観論を脱却したんだから。現在循環していないところは、循環の問題ではなくて、地方は、若い人が公共事業の仕事だったら、今年はあるけれど、来年あるかどうかわからない。俺の人生はあと40年働くのに、公共事業で40年、食っていくとは思えないと。そうすると、それ以外に、もし仕事がなければ、東京に行ってチャンスを狙うかと。出てきたものが、非正規雇用で何もなくて、そこにいたというのは口実ではないですか。だから、地方をどうするという議論はあとですることにして、公共事業、短期のものを与えてもしょうがない。短期で景気が良くなりますけれども、長期に見通しが立たなければいけないので、そういうのをするのと、コツコツと長期の成長力を上げていくしかなくて、そちらの方に舵を切らないとアベノミクスは、短期の需要の話ばかりなので、ダメだということですね」
反町キャスター
「それは、つまり、成長を目指すにしてもやり方を間違えているという。アベノミクスのここまでの2年間はどうでしたという話で、小幡さんは先ほど、ここまでは良かったという話だったではないですか。でも、そもそも最初の方向が間違えているという話でしょう?」
小幡准教授
「そうです。そもそも間違っていて、目的地が違うので、短期の収益しか考えていないから、それは達成したので、目的が達成したから成功です。だけど、行く方向がまるで違いますから、成功しても日本経済は別に良くならない」
反町キャスター
「国会とか、政治のレベルにおいて小幡さんが言われているような長期の本当の、小幡さん的に見た真の成長戦略、成長方針。国会において議論されていませんよね」
小幡准教授
「されていないですね。だって、関心がないから」
反町キャスター
「関心がない?政治家がそういう長期ビジョンに関心がないということですか?」
小幡准教授
「そうですね」
反町キャスター
「伊藤さんはそう感じますか?」
伊藤教授
「わかりませんけれども。1つだけちょっと気になったことがあるのは、GDPの数値を見て悪いのですが、2013年の1月から9月までのGDPよりは、実は駆け込みを含め、今年の1月から9月のGDPの方が高くなっているんですよ。ですから、均して見た時に、もちろん、ドーン、ドーンときていますから、下がっているように見えるのですが、もしこのあと、少し回復していくと、結果的には消費税を乗り越えて、GDPは伸びていくということが十分考えられると思いますので、あまり現在足元の数字だけで悲観的になるというのはちょっと危険だと思いますね」
反町キャスター
「小幡さん、総理も官房長官も言うのですが、安倍政権というのは財政再建と景気回復の二兎、二匹のウサギを負っているんだと。それを実現するんだと。いわゆる、政権、官邸の言っている方針と、現状、ないしは安倍政権の打っている政策をどう感じていますか?」
小幡准教授
「二兎を追っているとは到底思えないですよね。とにかく景気最優先。短期の景気最優先で、あとのものは全て先送りということだと思いますね。それは、選挙で勝ちたいとか、ポピュリズムというところが1つですけど、もう1つあるのは、アドバイザーのアドバイスを受け、安倍さん自身が誤解していると思うのは、黒田日銀総裁もそういうことを言うのですが、黒田日銀総裁はクリティカルモーメントと言うんです。デフレ脱却のクリティカルモーメントだから、ここで期待インフレ率を下げたら大変なことになると。せっかく1回、経済のレールに乗っていて、右上がりのレールに乗っていて、ここで原油の価格が下がっちゃったから、インフレが下がってポコッと落ちかけた、もう1回戻さないと。これで落ちたら、一生このレールに乗れないと。安倍さんもそういうふうに、どうも思っているみたいで、せっかく20年続いたデフレを脱却する、最初で最後のとてつもない大チャンスがやってきたと。これを取り逃がしたらもう一生戻れないみたいなことをよく言うじゃないですか。演説は大げさにしても、あれが間違っていると思うんですね。そうではなくて、日本の実力は下がってきちゃって現在横ばいだから、もしどうしても成長率を上げたければ、底を上げていかなければならないので、これはぐるぐるまわせば、右に上がっていくという時代ではまったくないし、景気循環の話でもない。そこの誤解が安倍さん、あるいは安倍政権にあるんだと思いますね」
反町キャスター
「経済成長の神話みたいなものから解き放たれていないイメージですか?」
小幡准教授
「右上がり高度成長から昔に戻るんだ、円安にして輸出をどんどん伸ばすと。大企業でも昔からがんばっている企業が円高のために苦しんできたから、円安にして元に戻してあげます。世界は変わっているので、グローバルだから世界に生産基地をつくっているからと。ソニーは円安だから今や損が増えているぐらいですから、まったく変わっているわけですよ。だから、新しい現実に直面しなければいけないのに、成熟経済だから、数字的にはゼロ成長だけれど、質を上げていくと。だから、それを誤解しているか、古き良き時代を夢見ているかだと思うんですね」
反町キャスター
「熊谷さんは、日本は成熟経済だから、右上がりの成長はないのだから、二兎を追う設定自体が無理であるという小幡さんの話はいかがですか?」
熊谷氏
「アベノミクスは、あくまで3本の矢ですね。3本目の矢のところで、成長戦略をやると。これは現在のところは具体的には踏み込めていないところはありますが、少なくとも、メニューとしては60年ぶりの全中の改革だとか、法人税の減税だとか、非常に意欲的なメニューが並んでいると。ですから、その意味ではもちろん、金融緩和に少し負荷がかかり過ぎている。2本目の矢で、耳の痛いことを言って社会保障の徹底的な合理化をして、財政の規律を維持する。3本目の矢で、岩盤規制を緩和して、徹底的に成長をする。私は、2本目、3本目で足らざるところはあると思いますけれども、基本的な方向性は決して間違っていないのではないかと思います」
反町キャスター
「まだ右肩上がりの経済成長の夢を持っていても我々は大丈夫ですか?」
熊谷氏
「もちろん、高度成長の時のように10%ですとか、そういう成長は難しいと思いますが、ただ普通の国が普通に成長できるぐらいの成長。それはおそらく名目で3%というのが1つの目標になると思いますから、そこを目指して、金融緩和だけではなくて、財政規律と成長戦略をパッケージでやっていく。ですから、足らざるところをこれから埋めていくという作業だと思います」
伊藤教授
「今の議論でちょっと気になるのは、成長というのと物価が少し上がっていくのとを分けて議論しなければいけないと思うんですよ。我々が本当にしみじみ感じたのは、デフレの下で財政再建は無理ですよ。大学ではそうではないですよ。大学では、増税して社会保障を切ってしまえばうまくいくと言うんですけれども、実際にはデフレで税収が減っていく時に本当にできますかと。ですから、実は物価が下がっていくのを上げていくというのがスターティングポイントで、今回の安倍政権の隠れた成果は、そこにあると思うんですよ。数字を1つ申しますと、2012年の民主党政権最後の時は、税収は42兆円そこそこで、新たな国債の発行高がそれよりも多いわけですよ。だから、税収よりもたくさん、新たな借金をしているわけで、ところが、2年経って税収が見込みで50兆円、約8兆円増えているわけで、国債の発行残高も少し減っているということで、そういう目で見ると、物価が上がって多少成長スタートが上がるんですけれど、経済の財政再建、1つのスペースができたと思うんです。そのうえで非常に重要なこと、ある程度、投資にお金がいかないと経済が伸びていかないと。どこで投資にお金がいくかというと民間の貯蓄からいくわけですけれども、そのためにはこれまでのように、民間の貯蓄が国債を買って、国の借金の穴埋めをしていたのではどうにもならないわけですよ。だから、一方で、政府は財政赤字を減らしていく中で、その空いた分だけのお金が民間にまわっていくというのが、たぶん財政再建と景気の好循環だろうと思うんですよ。だから、そういう意味で、どちらも片方だけやるというのはほとんど不可能で、もちろん、そのうえでさらに成長戦略で、実際の成長ができれば、さらにベターですけれども、ただ、その前段階として2%ぐらいの持続的な成長が実現するかという、物価上昇を実現するかというのが、財政再建にとっては非常に重要なポイントだと思いますね」

第2の矢 財政政策
秋元キャスター
「アベノミクス第2の矢の効果についてはどのように?」
熊谷氏
「もちろん、呼び水効果として一定程度必要だったと思いますけれど、ただ、1本目の矢の金融政策は大胆な金融政策。他方で2本目の矢は機動的な矢ということですから、短期で出してもいいわけですが、中長期の規律をちゃんと維持できるかどうかということがポイントになる。もう1つは、現在公共事業を脱して景気を支えようとしていますが、12兆円ぐらい滞ってなかなか景気を支える形になっていない。人手不足の問題があるわけですね。ただ、私は産みの苦しみだと思っていて、要するに、これまで賃金の非常に低い業種というのがたくさんあったわけですね。外食ですとか、建設とか、ITとか。そういうところで賃金が徐々に上がってきますので、日本はデフレから脱却すると同時におそらく2、3年でみれば、この人手不足の問題は解消してくるだろう。いずれにしても短期で大盤振る舞いをすることはできませんので、良く言われるミッシングリンク。道路の中で一部だけ通ってないと、全体の効果がなくなるというようなピンポイントでビーバイシー(費用対効果)を見ながらやっていくというような姿勢がかなり重要ではないか。足下は財政規律が緩んでいる感じがします」
伊藤教授
「自民党でも、たとえば、子育て世代、あるいは所得の低い層に配慮せざるを得ないと思うんです。消費の伸びを見た時に、そのあたりの人達の伸びしろが非常に低いわけですから。それから、公共事業がまさに熊谷さんがおっしゃったように人手不足とか、いろんなものがあってなかなか公共事業を打とうと思ってもそれが実際の需要につながりにくいということが事実ですから。そう言う意味では、選挙の前後で、どういう景気対策が出てくるのかというのを見ることが非常に重要だと思います」
小幡准教授
「バラまきなので言い方悪く言うとワイロですよね。だから、自民党は自民党の支持基盤に間接的なワイロを配り、民主党は民主党の支持基盤に現金でワイロを配る。それはあまり良いことではないんですけれども、政治だから起こり得る。ワイロの研究が経済学ではありまして、現金ワイロのほうが効率的ですよね。役に立たない橋をつくってもらっても、仕事が多少きますけれど、橋が残っちゃうではないですか。本当は要らない、無駄でしょう。それだったら100億円現金でもらった方が効率的だと」
反町キャスター
「ふるさと創生1億円バラまき。あれはどうだったのですか?」
小幡准教授
「あれはいいんですよ、無駄がない」
反町キャスター
「伊藤さん、あれは良かったのですか?」
伊藤教授
「使う側の資質の問題ですよ」
小幡准教授
「経済学的には効率性が損なわれていないということです。だから、1億円を配って喜ぶんだったら、それをモノでやるのだったら100億円ぐらいかかるわけではないですか。1億円の効果を出すのに。だから、ワイロを最小限に済ませるためには、現金の方が効率的だという議論は経済学上あります。ただ、社会的にとか、政治的にそれがいいという議論はなかなかしないと思うんですけれども、基本的には無駄なので財政政策は基本的に縮小して、景気対策は基本的に先進国で材料が足りないので、基本的には普通の景気対策は金融でやって、財政は健全化というのが普通の世界の流れで、リーマンショックの時はドカンといかないといけないのですが、普段の景気の微調整は金融政策。財政は再建して、しっかりお金を貯めて社会保障に使うというのが普通だと思うんですよね」

第3の矢 成長戦略
秋元キャスター
「成長戦略をどう評価しますか?」
伊藤教授
「昨年6月の成長戦略の評判はあまり良くなかったです。外国の投資家に日本はやはりできないのではないだろうかと言われた時に私は反論したのですが、日本はどこかにある専制国家ではありませんよと。トップがこちらに向いたら皆こちらを向く経済ではない。日本経済の主役は民間ですよ。ですから、仮に政府の政策が多少ブレても、民間が動けるかどうかが非常に重要だと思うんですよね。成長戦略は何かと言うとたぶんそういうことだと思う、つまり、民間がもうちょっと投資したいとか、もうちょっと技術革新をしたいとか、あるいは人をもう少し雇いたいとか、そういうことができるのかどうかが重要ですから、たとえば、稼ぐ力というのは非常に大事だと思います。それと、もう1つ是非強調したいのが第3の矢は成長戦略だと誤解している人がいるんですよ。民間投資を喚起する成長戦略と書いてあるでしょう。成長戦略と書いちゃうとこれはサプライズ政策です。規制改革だとか、あるいは減反政策をやめるとか。こういう政策はもちろん、大事ですが、たとえば、減反政策をあらためたなら、来年から日本農業が見違えるように良くなるわけではないですね。何年か時間がかかるわけです。それを現在からやらないといけないのは事実なのだけど、現在の日本、特にアベノミクスが数年の間、いかに上に経済を持っていくか。消費と投資と輸出が伸びていくために何ができるか。だから、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の議論というのはいろんな議論をされているんだけれど、ボトムラインのところで何がポイントかと言うと、これだけ積み上がった金融資金をもうちょっと活性化させるために動かないだろうか、そのために何がいいのかと、おそらくGPIFがいいのかはわかりませんけれども、でも、そういう流れの中で議論されていると。法人税の引き下げもそうですね。法人税率を引き下げるということはもちろん、長期的な政策ですけれども、それがまさに日本の政策がビジネスをむしろ高めていくような方向に向くかどうか、ある種の試金石みたいなものになってきているわけで、結論から言いますと、民間がこれでしっかり通しましょうというような政策にいけるかどうかが大きなカギになると思います。だから、成長戦略ではなくて、民間投資を喚起する、当面はね」

人口減少・少子高齢化… 将来を見据えた政策は
秋元キャスター
「人口が減少する中でこれからどんなことが必要だと思いますか?」
熊谷氏
「まずは徹底的な少子化対策をやって人口減に歯止めをかけるということですが、これは数十年かかるわわけですよね。ですから、その意味で言えば、社会保障の仕組みを持続可能な形にしていく。そのためには支給開始年齢を70歳に引き上げるとか、もしくはマクロ経済スライドをちゃんと発動するだとか、耳の痛いことを言って社会保障をやっていく。もう1つは、徹底した成長戦略の強化。ここが1つのポイントだと思います」
反町キャスター
「たとえば、解雇規制とか、ゾンビ企業をもっとはやく淘汰させるべきだとか、競争原理の強化ですよね。そういったものというのはどうしても特に選挙の時期とか政治は踏み込めないではないですか。そういうところをもっと踏み込まないと、ここの位置には上がれない、こういう理解でよろしいですか?」
熊谷氏
「そうです。結局金融緩和に頼り過ぎてしまっていて、2本目の矢の財政のところを言えば、社会保障への切り込みが甘い。3本目の成長戦略は、なかなか既得権に切り込むことができない。ですから、アベノミクスは方向性が正しいわけであって、むしろ2本目と3本目の矢をさらに強化をしていく。これがポイントだと思います」
伊藤教授
「私は、経済産業省の稼ぐ力創出研究会というのをやっているんですけれども、日本の企業を見た時にいわゆるG企業、いわゆるグローバルに競争している企業。これも大事ですけれど、ローカルで活躍している企業が非常に多いんですよ。病院だとか、医療だとか、流通だとか。非常におかしなことが起こっていて、いわゆる経済環境を、あまり景気が良くない感じが非常に強いんですけれども、人手不足ですよ。リーマンショック後ではなく、10年以上、人手不足ですよね。そうすると、普通景気が良くなるから人手不足になるんですけれども、景気が悪くて人手不足になっているのはどういうことかと言うと、生産性がなかなか上がっていないのか…本来であれば、新陳代謝が進むべきところが出ていないんだと思います。ただ、チャンスがあるとすれば、人手不足の中であるから、少し大胆な改革をして、たとえば、いくつかの企業が再編されたとしても、雇用にあまり悪い影響が出ないかもしれないという意味では、第3の矢をしっかりやって、成長戦略、規制改革をやるということが重要だと思います。それは解雇規制かもしれない、あるいは労働の流動化の改革かもしれない。農業改革かもしれない、医療や介護の改革かもしれないし、現在がそういうことをやるチャンスだと思います」

伊藤元重 東京大学大学院経済学研究科教授の提言:『成長戦略の加速 社会保障改革』
伊藤教授
「選挙が終わったあとで、次のステージでやるとすればこれしかないと思う。痛みを伴う改革ではあるんですけど、これをやることによって流れを大きく変えてほしいなと思います」

熊谷亮丸 大和総研執行役員チーフエコノミストの提言:『第3の矢 (成長戦略) + 低所得者、地方に配慮』
熊谷氏
「私も基本的な考えは伊藤先生と同じ考えですが、重要なのは3本目の矢の成長戦略の強化をして、もう1つは社会保障をちゃんとやること。ただ、短期的に見るとアベノミクスで光が当たっている人と、そうではない人がいますので、そこの部分で低所得者の方とか、地方に対してきめ細かい配慮をしていく。これらがポイントだと思います」

小幡績 慶應義塾大学ビジネススクール准教授の提言:『年金改革』
小幡准教授
「本当は長期に人を育てるということで、地方は人手不足ですから。地方で人を育てる人を育てる。つまり、医療のスタッフを育てる人を育てて、地方に根づかせる。学校をつくって、若者を育てる人を育てる学校の先生の学校をつくる。そんなことが良いのですが、直ちにということだったので、年金改革。これはすぐにできます。社会保障の中で年金が一番簡単です」
反町キャスター
「具体的にはどんなふうに?」
小幡准教授
「給付3割カット。制度改革をするのだったら個人年金方式ですね。つまり、自分の年金は自分で積み立てるとしていかないと若者としてはやっていられない。だけど、移行するには二重の負担がかかるんですけれど、そこは消費税と、特別国債、そこは財政の手当ては必要ですけれども、これをやらないと、将来デフレだからインフレになれば、急に明るくなってお金を使うのではなくて、将来が不透明、将来が不安定、不安だからで、将来で一番不安なのを解消できるのは年金ですよ。年金はこうなると決めてあげないと。社会保障は、医療とかは難しいんですよ、医療制度も含めて。年金は政治的には難しいのだけれど、切るだけですから簡単に言えば。それをやるしかないですよね。あとは個人に移行できればしたいということです」