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2014年10月24日(金)
習政権“権力闘争”は 日中外交と経済リスク

ゲスト

興梠一郎
神田外語大学教授
リチャード・クー
野村総合研究所未来創発センター主席研究員

中国4中総会終了 中国の権力構造は
遠藤キャスター
「昨日閉幕した4中総会ですが、これは中国共産党の中央委員会が毎年開く全体会議です。この共産党の会議で中国の課題に関する重大な決定が下されるのですが、ちょっと複雑な中国の権力構造を見ていきたいと思います。まず5年に1度開かれる、共産党全国代表大会。いわゆる党大会です。共産党中央委員会の委員が任命されます。中央委員会による総会、今回の4中総会もここにあたるんですけれど、そこで決定されたことが、習近平国家主席を長とする党の最高指導部と政治局に上がります。これを受けて、共産党の指導部から中国の国会にあたる全人代に政策が下ろされ、政府にあたる国務院、中央行政省庁と下りていくわけですけれども、この何ともわかりにくい力関係、権力構造をどうやって捉えればいいのでしょうか?」
興梠教授
「まず国務院というのは、ついでですけれど、中央政府ですね。中央人民政府。だから、基本的に全部、党主導というか、憲法でも条文に中国共産党主導というのは書き込まれているんです。そこを書き変えないと、いくら法治だ、何だと言っても、結局は、共産党の手のひらで、あらゆることが行われるんです。ですから、名目上は全人代、議会と言われていますけれど、70~80%は共産党の幹部ですから、そういった党主導型の国家なのでしょうね」
反町キャスター
「日本の構造を考えたなら、たとえば、官僚機構があって、官僚機構が日本の状況を把握して、政策を練り上げ、それを国会なりに上げ、そこで審議が行われて、政府はそれを応援する。そういう吸い上げて、情報が集められて意思決定している。その形でいくと、中国のこの流れというのはどこが最終的に意思決定しているのか。それに対するチェック機構があるのかどうか。これはどう見たらいいのですか?」
興梠教授
「結局、日本の霞が関にあたるのは国務院。中央政府なわけです。そこに行政官庁が、何々省庁があるわけですね。そこが李克強氏という、いわゆる胡錦濤閥の共産党青年団出身の人が首相で、総理をしていると。でも、彼は共産党のナンバー2に過ぎない。共産党のランクの方が大事です。そうすると、ナンバー1は誰だというと習近平氏ですよ。習近平氏は、党書記になって以来、あらゆることを全部、自分でやり始めているわけですよね。今回も法というものも自分でやろうとしているわけです。インターネットまで自分で管理しようとする。つまり、李克強氏、いわゆるリコノミクスという経済政策、ひと頃言われましたけど、そこも実はもう習近平氏にお株を奪われているわけです。そういったことで最後に決めていくのは党最高指導部ですし、その中で現在はとにかく党総書記ですね。国家主席というのは行政ですけれども、党総書記の習近平氏があらゆることを現在決めつつあるんですね」
反町キャスター
「皇帝みたになものですか?」
興梠教授
「エンペラーですよね、長い歴史でいう」

法的事項をどう読み解く
遠藤キャスター
「今回の4中総会で出た結果の要旨の抜粋を、ここで紹介したいと思います。まず中国の特色ある社会主義法治理論を貫徹。法による政治を全面的に推進。党の指導が法治の最も根本的な保証となる。公正さは法治の生命線であり、司法活動への監督を強める。法律に基づき一国二制度を保障し、香港の長期的な繁栄を維持、平和的な祖国統一を進める。法的手段によって国家主権と国家の正当な権利を守るなど、とあります。興梠さん、全体像としてはどう読みとればいいのでしょうか?」
興梠教授
「中国の特色あるとか、社会主義とか、ああいう形容詞が冠でつくと、これは共産党がやるという意味ですよ。社会主義という意味ではなくて、共産党が主導する法治理論ですね。特色ですよね。中国流の法治主義です。それが顕著に表れているのは、党の主導というのがやたら出てくるんです。すごい数。全て単なる法治ではなくて、共産党が主導した法治である。ですから、我々が理解している法の支配とか、全然違うということですよね」

中国で法治は可能か
反町キャスター
「中国の特色のある社会主義法治理論。いきなり何かわからないのですが、これは何を…」
興梠教授
「コミュニケを細かく見ていくと今回の文章の中には全部は出ていないんですよ。しかし、前から議論されているのは規律検査委員会がありますよね。これが、要するに、虎とか、ハエを捕まえて、今回は虎をいっぱい捕まえた。人事のところでもやってもいいんですけれども、そこに王岐山氏というのが最高指導部の中にいるわけですね。序列で言うと最後から2番目です。この人が切込み隊長ですね。実は習近平氏と王岐山氏は昔からの友達ですよ。文化大革命の時に同じ布団をかけて寝たなんていう逸話があるぐらいですから。2ショットの写真もたくさんあるんですよ。だいぶ前に撮ったやつ。つまり、習近平氏は、王岐山氏のいわゆる規律検査委員会の権力を絶大な権力にしたいわけですよ。それを彼が直接2人で切り盛りして徹底的に政治的ライバルを潰していくということですね。その意味での法です」
反町キャスター
「そうすると、要するに、社会正義とか、何だとか、公正とか、そんなのではなくて、ここで言っている社会主義法治理論というのは王岐山氏の率いる中央規律検査委員会の権力を強め、結果的に、反習近平の人達をやっつけるためのスローガン?」
興梠教授
「そうですね。地方の規律検査委員会というのは地方の党の支配下にあるわけですよ。北京の中央の規律検査委員会の言うことを聞かなかったんですね。匿ったりするわけですよね。党書記のお気に入りの人がなって、これを直接支配したいんですよ、分断して。だから、規律検査委員会というものの他に、いわゆる反汚職局みたいのをつくろうかなんて話もあるんですよね。あとは政法委員会というのを、周永康氏がやっていましたけれども、実はあらゆる司法関係を支配しているわけですよ、公安とか。そこも実は今度は習近平氏が兼任しようかという噂もあるんです。つまり、法は、共産党を含めた意味での法、共産党も法の下にあるのではないですよ。法は、中国においては、秦の始皇帝の時代からずっと統治者が使うものです」

周永康前常務委員の処分は
遠藤キャスター
「昨日閉幕した4中総会ですが、今回の1つのポイントとなるのが、周永康前常務委員の処遇だったわけですが」
反町キャスター
「最高指導部のメンバーだった周永康前常務委員を巡る問題ですけれど、周氏の家族が石油や金融などの分野で巨額の利益を得ていたのではないか、薄熙来元重慶市党委員会書記と共謀して政変を企てた疑惑もあるのではないかと。いろいろ出ているんですけれども、興梠さん、習近平総書記が周永康氏の問題を取り上げ、彼を集中的に追求した、その狙い。これはどこにあると見たらいいのですか?」
興梠教授
「自分の権力固めですけれども、院政を敷いている、いわゆる江沢民氏。彼に対する当てつけであるわけですね。彼らは派閥を解体しているわけですよ」
反町キャスター
「周永康氏という人は、江沢民氏の一の子分みたいなのですか?」
興梠教授
「そうですね。江沢民氏に近いのは、国家副主席をやってきた曽慶紅氏とか、いわゆる石油閥でもあると。こういった人達を、要するに、習近平氏がこれを叩くことによって、見せしめでもあるんですよ」
反町キャスター
「誰に対する?国民に見せてもしょうがないですよね?」
興梠教授
「共産党の地方のリーダーとか、政治局とか。胡錦濤氏もそうですよね。これはここまでやってしまうんだぞということですよね。ですから、これが大虎ですね。そうやって自分の権威を樹立していくと。同時に派閥を解体することによって今度はいわゆる最高指導部の中に自分(側)の人間を植えていくというプロセスですよね。本丸である江沢民氏は絶対にやれないですよ。あまりにも権威があり過ぎて。元総書記をやるというのは相当無理ですから。そうすると、ちょっとワンランク下の部下をやっていくという」
反町キャスター
「周りの手足、枝葉を全部落としていってしまおうと、そういう流れの中の、これが大きな枝だったみたいな、そんなイメージですか?」
興梠教授
「昔、毛沢東が言っていたみたいなタケノコの皮を剥ぐというやつです。タケノコの皮というのが部下です。タケノコの皮はどんどん剥いでいったら中は何も残らない。こんな小さいものになっちゃう。そういう言い方があるんですよね。あとは壁を掘るとか。丸裸にしちゃうんですよ、本丸を。要するに、部下がいない司令官なんていないだろうと。司令官をやるの難しいじゃないですか」
反町キャスター
「それは毛沢東、周恩来、つまり、中国における権力闘争。政治の…」
興梠教授
「定石。だから、すぐわかります。やっているなと。秘書とか、奥さんとか、お兄さんとか、企業家を、そういうところを捕まえて徐々に徐々に攻めていく。いっぱい証拠を固めていくんですね。場合によってはつくりますよ。最後にやっちゃう場合もあるし、現在悩んでいるんですよね。どう処分するか。ちょっと先延ばしになっていますが」

習近平氏と江沢民氏の関係は
反町キャスター
「今回の会議でも彼に対する処遇が発表されなかったことをどう見ますか?」
興梠教授
「いろんな言い訳も流れているんです、実は。もう中央委員ではないのだから」
反町キャスター
「いいじゃないかと」
興梠教授
「うん。でも中央委員会で正式に発表するのがこれまでのやり方でしょうから。そうすると、江沢民氏が1回死んだと言われているのに、蘇ってきているわけでしょう。たとえば、夏ぐらいには中国の広東省広州市の新聞で、共産党が検閲している新聞ですよ。共産党の新聞で8月30日。漫画が出たんですよね。要するに、西洋はどうやって抗生物質の乱用を制限しているかという、学べという内容で。中国は抗生物質を使い過ぎる。何もここで死にかけたカエル(江沢民氏を想起させる)を引っ張り出してくる必要はないわけです。点滴にも見えるわけですよ。実はこの時、江沢民氏は病院で瀕死の状態だという噂がネット上にも流れていたんですね」
反町キャスター
「何の新聞ですか?」
興梠教授
「これは広州市がやっている共産党の新聞ですよ」
反町キャスター
「共産党の新聞が元国家指導者を、何かからかうような、揶揄するような、こんな漫画を出しても問題ないのですか?」
興梠教授
「結構、当時は江沢民氏の女性関係とか野放しになっていました、ネット上で」
反町キャスター
「このカエルみたいな、これが江沢民氏だと、すぐわかるのですか?」
興梠教授
「結構わかる人も、現在はいますよ。カエルの人形の絵や写真がネットで流れると。あとカエルがひっくり返っていて、隣で江沢民氏が海で泳いでいて、ひっくり返っているのを並べる。結構それを削除をしない。削除しないというは大事です」
反町キャスター
「中国のネット文化においては危ないものはすぐ削除されますよね」
興梠教授
「そうですね。削除しないというと多少意図があるという」
反町キャスター
「江沢民氏のおかげで権力を得て、その力も借りながら権力を得たあとに、江沢民氏を切っていく、ギアの入るところ、ギアチェンジをシフトするところ、それは何がトリガーになってシフトするのか。それはどう見たらいいのですか?」
興梠教授
「2年前の党大会で、総書記になる、ならないという時に薄熙来氏の事件がありましたよね、重慶の。薄熙来氏と周永康氏は組んだわけです。周永康氏の政法委員会書記は、いわゆる公安とか、司法を管轄している組織のトップだったわけですよ。絶大な権力を持っていた。その後釜に薄熙来氏を連れてきたかったわけです。これは江沢民氏、周永康氏、薄熙来氏となっているわけです。そうすると、習近平氏にとっても脅威になったわけですよ、その時点で。薄熙来氏がそこに来ると、薄熙来氏は、あわよくば、総書記の席、ポストも狙っていましたからね。そうすると、胡錦濤派と共闘を組む、共通の利益が生まれたわけですよ、対江沢民で。2013年の1年間は組んだんですよ」
反町キャスター
「1年間の限定ですか?」
興教授
「最近。1年前から最近までですかね。最近では、胡錦濤派もやり始めましたよ、明らかに。そうすると、これはもう江沢民派閥はある程度やったと。江沢民氏もおそらく自分の家族でもない、元部下がやられてもしょうがないかなと。しかし、自分の子供だけは守りたいというのがあるんですよね」
反町キャスター
「江沢民氏にしてみれば」
興梠教授
「そうですね。上海で手広く商売をやっていますから。そこで何らかのトカゲの尻尾切りみたいなのがあったのかなと」
反町キャスター
「取引があったのかなと」
興梠教授
「そうですね。矛先は、既に2017年の党大会に向けて、胡錦濤派の方に切り込んできています」
反町キャスター
「権力闘争というのは、誰が国家主席になっても、何年か経つうちに、毎回、起きるものなのですか?」
興梠教授
「毎回起きますよね。必ず薄熙来氏みたいなのが1人、政治局委員が見せしめになりますよね。たとえば、江沢民氏が天安門事件の時に上海から北京に連れて来られて、総書記になったと。その時に北京にいた陳希同氏という、これが言うことを聞かないわけですよ、古株だから。自分が総書記になると思っていたわけですよ。天安門事件の時に、音頭をとってやっていましたから。ところが、江沢民氏にお株を奪われたわけです。江沢民氏の言うことを聞かないから、陳希同氏を汚職名目で捕まえたんですよ、政治局。2006年ですか、上海のトップの陳良宇氏。これは江沢民氏が将来、総書記にしたかった人です。これは胡錦濤氏がやっつけちゃいました。汚職名目です。党大会の度に政治局委員、将来、総書記になりそうな人がやられるという慣習」
反町キャスター
「指導者が変わる度に、法治主義というのですか、中国は?」
興梠教授
「その時は、法治とは言っていないんですけれども、汚職と。汚職は一番相手を捕まえるいい口実ですよね。国民も納得しますからね」

習政権の基盤は整った?
クー氏
「私が知っている限り、周永康氏の話はもっとはやく片づく話だったと想定していたと聞いています。どういうことかというととにかくネガティブキャンペーンをやって、習主席は非常に国民の支持を得ていますから、何人か余計な人間をどけて、それで自分達のことをがんがんこれからやりたい。ところが、周永康氏という方が、本来であれば、党の意向は絶対的に守らなくてはいけないですから、『すみません、私がやりました。ごめんなさい』と。左遷させられる。こういうシナリオを描いていたという話ですけれど、何を間違えたのか、この周永康氏という方は『俺1人でやったんじゃない。あいつもやった、あいつもやった』と言って、ばらしてしまったんですね。ばらしちゃうと上の方まで、たとえば、鄧小平ファミリーだとか、胡錦濤関係者とか、江沢民氏、全部引っかかっちゃって、ハエも叩くし、虎も叩くと言っているところに。全部やらなくちゃならなくなるわけですよね。これが3月ぐらいに本来、片づくはずだった周永康氏の話が、そこから、グワーッと延びちゃうわけですよ。それで、名前が挙がっちゃう人達、こちらは長老ですよね。そうすると、長老から言うと、我々が習近平氏、あなたをここのポストに入れたんですよねと。それが我々に向かってくるとは何事だと。ふざけるなということになるわけで、これが権力闘争を非常に難しくしちゃった。だから、今回の4中総会で外交の話が出ていないじゃないかと。そんな状態ではないですよ、まだ」
反町キャスター
「その余裕はない?」
クー氏
「外を見る余裕は全くなかった。だって、長老、全部、敵にまわしちゃったような形になってしまったわけで、そこからいろんな応酬が行われるわけで、一応、北載河という、長老と現政権の方が集まって意見交換をする場所で、一応、形は整ってきたのかなという意味では、大変、波乱の大きい政権の誕生だったという気がしますね」

香港への対応は
遠藤キャスター
「さて、今回の4中総会の報告でも、香港のデモについての言及がありました。あらためて見ますと、法律に基づき一国二制度を保障し、香港の長期的な繁栄を維持、平和的な祖国統一を進める、とあるのですが、その一方で、法的手段によって国家主権と国家の正当な権利を守ると、一見、矛盾しているというか、相反するこの2点ですけれども、興梠さん、習国家主席は対香港デモについてはどのように対応をしようと」
興梠教授
「法治というスローガンなので、ここに法に基づきというのを入れましたよね。つまり、これは、デモで道路を占拠したのは不法行為だと、前から言い続けたわけですよ。だから、法を振りかざして、そういうやり方ではないよという、一国二制度をやるけれども、法律は守りましょうよねと言い方ですか。最後の法的手段によって国家主権は多少、安倍総理もよく法の支配と領土問題(という)。多少は入っていますよね、国家主権」
反町キャスター
「外交的なメッセージも、ここに多少入っているかもしれませんね」
興梠教授
「そうかもしれませんね。これはいわゆる、いつも、そういうふうに日本側に主張されているので、自分の方も多少はそれを入れたのではないですか。領土という言葉は出てこないにしても、それはあるかなと思うんですね」
反町キャスター
「主権を守るという意味で言うと、ここで言う法的手段とはどういう意味なのですか。武力、軍事力、強制力?」
興梠教授
「軍事力は使えませんということはアピールしているんじゃないですか。実際、どうかは別ですよ。現在、国際的に、そうやって日本にプレッシャーを、南シナ海もそうですけれども、じゃあ、ここで言っておかないといけないと」
反町キャスター
「話しあい路線をアピールしている?」
興梠教授
「話しあいとは限らないですね。一応、法は守りますよと。外交面では。それで、たとえば、外資系企業に対してもと、全文を読んでみると書いてあるんですよ。中国における権益をちゃんと法で守りますと。これは最近、外資叩きをすごくやっちゃったので、欧米の商工会議所は嫌がっているんです、中国の投資環境が悪くなることを。だから、それも多少意識しているかもしれない。香港についてはですけれど、デモに対する、これは言い方でもありますよね」
反町キャスター
「法律に基づき、一国二制度を保障しながら、香港の長期的繁栄を維持し、平和的祖国統一…できるのというところから入るんですけれども」
興梠教授
「いや、私は返還の時、香港にいましたので、大きく変わったんです、雰囲気が、香港の。中国の津波のように押しかけてくる影響力ですかね。二制度の壁というのは、がっちりあったわけですよ。香港が圧倒的に発展していて中国が遅れているという。それが中国のGDPが日本を抜いて、どうの、こうのと。中国の夢だ、何だとなってきた時に、中国の観光客が香港に大量に行けるようになったと。いっぱい粉ミルクを買って帰ったり、不動産も買ったり。そうすると、香港の若い人達にはもう夢がなくなっているんですよ。自分達の空間というものがどんどん狭くなってきている。不動産価格も、猛烈に上がっていますし。それが一種の中国の、香港に対する影響力の拡大という意味ですよ。そこで、自分達の利益を守らないと、現在の行政長官、トップは完全に北京の、いわゆる傀儡だという見方が強いから、それでワンセットで、梁振英長官をクビにしろと。1人1票、完璧にやらせろと。こうなっているんですよ。つまり、自分達の権益を守りたい。これは、返還当時そこまではなかったんですね。中国の経済力が、ガーッとついてきて、共産党の方も、すごく気持ちが大きくなっているというのが実はあるんですよね」
遠藤キャスター
「これはどうやって収束させるのですか?香港の件は」
興梠教授
「収束は、平和的解決か武力的解決しかないのではないですか。平和的解決というのは、彼らが現在考えているのは、自制自滅作戦と言って、学生達が自分でデモを始めたので疲れて自滅していくと。これをずっと待っていたわけですよね。ところが、旺角(モンコック)という地域では、いろんないざこざが起きて過激な人達もかなり出てきているというので、なかなか落としどころがない。ただ、学生も、必ずしも学生達が全部のデモをコントロールしているんじゃないです。だから、唯一のリーダーというのもいないわけですよ。あとは絶対に中国が受け入れられないのは、1人1票で、自分達のリーダーを、直接選ぶということですね。これは、中国は絶対させないわけですよ。そうすると、学生が求めている要求を受け入れられないという出発点がある。対話をやっても先延ばししかないですよね。現在、そういう状況ですよね」
反町キャスター
「クーさんは、香港はどうなると見ていますか?」
クー氏
「おそらく中国側の解釈は、自分達は法に則って、つまり、基本法というのが、香港の返還の時にイギリスと中国の間で決められたわけですが、我々はこの通りにやっているんだと。あんた方でルールを変えようとしているのではないかという、おそらく発想で見ていると思うんです。中国もある意味ではすごく香港には神経を使っています。ここまでやるかと思うくらい使っているところもある。たとえば、香港の道、まだクイーンズ何とかとか、キングズ何とかと書いてありますよね。全く変えていない。普通だったら、占領国が入ってきたら、道の名前なんか変えますよね。全然変えていない。でも、中国の歴史から見れば、あんな屈辱的な名前はないはずですよね。だって、阿片戦争で獲られて。阿片戦争で獲った国の王様の名前とかがついているわけですからね。それに敢えてタッチしないというのは、そこまでやってしまうと、もう香港の人達が逃げ出しちゃうかもしれないという、そういう配慮はあるんですね。香港というのは、中国から逃げ出してきた人達がたくさん住んでいる場所でもありますから、ちょっと変なことをやれば、そういう人達が猛反発するから、香港から皆出て行っちゃったら香港はただのちっぽけな町になってしまうわけで。そういう配慮は一生懸命にやっているつもりなんですよ。逆に、香港の人達からしますと、先ほど、興梠さんの話にもありましたけれども、自分達は中国の先を行っているんだと。もっと先を行かなくちゃいけないという認識が実はあるんですね。私も、現在叩かれている、行政長官のスピーチを聞いたことがあるんですけれども、我々が中国の先を行くんだと。我々が中国にいろんなものを教えなくちゃいけないんだと。この方は、ずっとこういうふうに言っていたんですね。だから、そういう発想というか、この考え方が香港の人にありますから、それで、民主主義も一歩先に行って当然だろうと。これが、中国に対する1つの道筋を我々が開拓していくんだという発想が、また香港の人にはあるんですよ」
反町キャスター
「そうすると、台湾の人達は、現在の中国、北京と香港の対立を、一国二制度が自分達に対しても向けられるわけではないですか。どう見ているのですか?」
クー氏
「台湾の人達はこんなのは絶対受け入れられないと。最初から一国二制度なんて自己矛盾だという発想。台湾は完全に大陸から独立した形で、もう何十年もやってきて、皆さんも自信を持って国家運営をやっている。どこにも帰属していない。そういう国に対して、外からのプレッシャーがかかってくると、それは皆さん反発しますよね。だから、政府は中国だと言っているんですけれども、一般の台湾の人達はなかなかそれを受け入れられない。馬英九政権の時でさえ、自分は中国人ではない。台湾人だという数が、猛烈に増えているんですね。と言うのは、中国と接触すればするほど、どうも俺達違うなという認識が拡大していて、これはおそらく、香港の人達も同じだと思うんですね。全く、接触がなければ、同じ中国人だと言われてもそれ以上は考えないで済むわけですけれども、先ほど、興梠さんが言われたように、これだけ中国人が入ってくると考え方も違う、マナーも違うし、いろんなところで違いが出てくる。俺達はちょっと違うねと。同じことが台湾でも起きていますね」

減速する中国経済
遠藤キャスター
「中国の急激な景気減速の要因はいったい何なのですか?」
クー氏
「ここにきて、中国ではこれまで無限にあると言われていた労働力がかなり逼迫してきています。中国には13億人も人がいるのだから、労働力は無限にあるのではないかと一時我々も多くの人も思ったわけですけれども、本当に30年ですね。ここが全部当時の工場に吸収されてきたということで、そうなりますと、これまでは低賃金ということで全世界から工場ががんがん入って来て、日本もアメリカも台湾も香港の業者も皆中国でモノをつくっていたわけですけれど、それは低賃金というのがまず基本にあったわけですね。それが現在ここにきて崩れていると。崩れるとどうなるか、他にもっと低賃金のところがたくさんあるわけですよ。東南アジアにも。そうするとそっちに向かうか、それとも中国にあるところをアップグレードするかということになるわけですが、アップグレードをするには相当な金がこれから必要になってくる。外資系の多くの企業が変なワイロをとられた。これまで低賃金の時はそれでも少し払っとけと我慢していた部分がこれだけ賃金上がってきますと、他の選択肢も考えなくちゃならなくなると。そういう時の不透明ないろいろな干渉が官僚やいろんなところからくると、もうこんなところでやっていられないと。ベトナムにもっていっちゃえとか、あっちへ持ってこうと、こういう議論になるわけですね」

リコノミクスは失敗だったのか
反町キャスター
「いわゆるリコノミクスというのはどういうものですか?それは現在、どういう評価をされていますか?」
クー氏
「先ほど申しましたように中国はつい最近まで農村に大変な過剰労働力があった。こういう人達は賃金を払えばいくらでも町に集まってくるわけですね。それを労働曲線というコンセプトで説明しますと、農村に労働力がいっぱいある時は無限に人が集まりますから。これまでの中国はそのへんにあったわけですよ。そうすると、何もしなくたって儲かる世界ですね、資本家からしてみると。そうすると、儲かりますからもっと皆さん投資しますね。そうすると、労働力が枯渇するところを超えていきますから、枯渇する部分を経済学ではルイスの転換点と言いまして、そうなってくると、今度は、賃金が増えていくわけですね。大きな賃金負担ということになりますと、企業はよほどアップグレードして、生産性を上げないとこんな賃金払えなくなるわけです。つまり、ちゃんとアップグレードしないと、誰もそこに投資しなくなっちゃうという問題があって、リコノミクス、または習近平氏が量よりも質だと言っているのはこのことを言っているわけですね。もうアップグレードしないと我々はやっていけないよねと」

低迷する経済にどう対応
反町キャスター
「社会の内圧が高まってくる時に、北京の中央政府はどう対応をすると見ていますか?」
興梠教授
「香港がモデルケースですよ。香港が抱えている問題と全く同じです。要するに、金持ちと共産党が結託して、エスタブリッシュメントをつくっているということですよね、不動産の開発をやるとか。若い人達は家も買えないと。貧富の格差も広がっていると。今回の単純な民主化運動ではないですよ。経済的な要因もかなり入っている。香港では自由にデモがやれるわけです。中国だと、反日デモは、警察は知らん顔してやらせますが、ああいったデモはあっちこっちで起きてくる可能性あるわけですよ。だからこそ分断しようとしているわけですよ。絶対にそれが中に広がらないように。今の話を聞いていると、香港が先取りして始まってきているというのがあるので、それは背筋が凍るような思いをしているのではないですか。実際に中国の中から応援する声もかなり上がっていて、次から次へ捕まえていますよね、ネット上で書き込んでいる人を。これは構造的な問題で一党独裁体制の中で、人権とかを擁護するということはまずできないわけです。既に賃金の未払いに対するストライキみたいなものも起きていますし、集めると相当な数です。もう始まっていると思います。共産党が一番恐れているのは、本当の意味の左翼が出てくるということです。ポーランドのワレサーとか」
反町キャスター
「自主連帯論争みたいな」
興梠教授
「そうです。共産党は実際、共産主義でありません。猛烈な開発独裁資本主義政党です。権力者資本主義と中国でも呼ばれているんです。権力を使って金儲けしていると。それが法の支配です、いわゆる法律まで支配する。ですから、本当の意味の共産主義者が出てくるかもしれませんよ、労働者の中から」

今後の日中関係に変化はあるか
反町キャスター
「習近平氏が持っているリスクを我々はどう見ればいいですか?」
興梠教授
「習近平氏が現在のやり方でいくと、徹底的に潰していくしかないんですよ。限りなく潰していく」
反町キャスター
「どこかで手打ちできないのですか?」
興梠教授
「だから、どこかで彼がブレーキを自分でかけないとダメでしょうおそらく。それは対外関係もそうですし、対内関係でも緩和しないとやっていけないですよ。それがいつくるかというのがポイント。そこで彼が緩めたら今度はやり返されちゃうんじゃないかというサイクルに入っていますよね。日本にとってどういう意味があるかいうと、彼が強大な権力を握って、全てを彼が秦の始皇帝のように上から命令していくというシステムになった時に、これも力による支配ですよね、結局。民衆が目覚めちゃっているわけですよ。ここがかつての中国とは違うんですよ。ネットでどんどん情報を広げていって、たとえば、万単位の人間が簡単に集まっちゃうんです。環境デモはあちこちで起きています。となると、民衆の基盤が違う。これを安定した政権にするためには民意が政治にしっかりと反映するようなシステムをつくらなければいけない。結局、どういうことが起きるかというと、こうやって賃金がどんどん上がって労働者が減っていって、権利意識がどんどん高まっていくとどういうことが起きるかというと、民主化ですよね。韓国も経験しました。それを押さえ込もうとすると、おそらく労働運動が拡大していくかもしれませんよね」
反町キャスター
「中国における労働運動?」
興梠教授
「そうですね。そういったいわゆる新左翼というか、毛沢東の御真影を担ぎ出してきて、町を練り歩く人達が出てくるかもしれませんよ」
反町キャスター
「文革みたいになるのですか?」
興梠教授
「文革というよりも農民と労働者がくっついて、もう1回共産革命やるということですよ。それが起きると、現在いる共産党の支配者達は、今度はターゲットになるんです、お金持ちだということになって。現在の共産党は本当の共産党ではないですから。共産主義に全然関係ないことをやっていますから。そうなった時にはいわゆる極左ですよね。極左勢力みたいなものが国民や労働者の中で組織化されていくと、非常に危ないことになっていきます。対外的に非常に愛国心だとか、そういったものを使うようになりますよね。最悪のシナリオでしょうね」

興梠一郎 神田外語大学教授の提言:『党意≒民意』
興梠教授
「党意というのは私達が見ている中国、いろんな発言があったり、反日デモがあったり、それと民衆の意見というのは必ずしも一致してないということですよ。だから、そこをしっかりと区分けして見ないと、たとえば、日本に買い物に来ると。1年に何回も買い物に来て、スーツケースいっぱいに化粧品から何から買って帰っていくと。爪切りまで買って帰っていくと。こういった人達は日本が非常に好きで、日本に旅行に来ると安全で、食べ物も美味しいし、お母さんと娘だけでも旅行できるところだと、こういうのがかなり中国でも広がっているんですよ、中間層ならびにそういった人達に。でも、テレビで見ている中国、メディアで見ている中国は事件が起きた時にクローズアップされるので、それは尖閣問題とか、こういったきな臭い話ですよね。それで往々にして共産党の立場が全面に出てくると。そこを区分けして、しっかりと見ていくというか重層的に中国を見ていくというのが一番良い方法かなと。それを混線させない」

リチャード・クー 野村総合研究所未来創発センター主席研究員の提言:『200年ぶりのチャンス』
クー氏
「これから15年の中国というのは200年ぶりに中国が一流国になれるかなれないかの瀬戸際にあるんですね。過去30年間の中国の経済成長というのは人類史上最大最高の経済成長だった。あんな短い時間でこれだけの人がリッチになったことは人類の歴史の中でなかったことなわけですが、あと15年がんばれば、一流国のレベルに中国が達することができるんですよ。たとえば、人民元が年間3%上がってGDPが6%伸びていけば、15年、20年すれば、1人あたりのGDPが3万ドルに近づきます。でも、ここでしくじったらこのチャンスはなくなってしまう。この200年というのは中国の人達は酷い200年を体験してきたわけで、列強にやられ、日本にやられ、内戦をやって、それで文化大革命と酷いことがずっとあって、ようやくこの30年ですよ、ブワーッと中国の力が一気に出てきたという。まさにこれを延長して中国をしっかりした国際社会の中に持っていこうというのが習近平氏の目的なわけですから、それを日本側からも、また海外からも、あんた方、確かにそうだけれど、200年ぶりのチャンスだよね。これにマイナスになることはやるべきではないよと。どういう意味でマイナスになるかというと、たとえば、尖閣の問題、フィリピンやベトナムのあんなことで、外資が怖くなって逃げ出しちゃったと。そこで5年、10年が失われたら、このチャンスは2度と来ないわけですから、現在の人口動態から見ても。だから、本当に中国が200年待ったチャンスが現在目の前にあるのに、そんなつまらないことで、これを放棄しちゃうのですかと。こういうメッセージが出せればいいと思いますね。この15年で私は中国の社会も大きく変わると思います」