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2014年10月22日(水)
経済成長への司法改革 世界に勝つ法律家養成

ゲスト

川村明
国際法曹協会(IBA)前会長
相澤英孝
一橋大学教授

世界の弁護士が東京に集結 ビジネスとしてのアジアシフト
秋元キャスター
「現在、東京で国際法曹協会、IBAの年次総会が開催されているんですね。そのIBA東京大会の概要です。世界130か国からおよそ6300人の弁護士が参加しています。日本からもおよそ650人の弁護士が参加していて、ディスカッションや交流が行われているということですね。具体的にはアジアにおけるM&A。アジアへの投資とアジアからの投資、アジアでの仲裁をサポートするための法廷訴訟の利用。国境を越える紛争における和解交渉など。多岐にわたるテーマで意見交換が行われているということです。川村さん、今回は東京で初めての開催ということで、アジアが主要なテーマの1つになっているとは思うんですけれども、国際的に活躍する弁護士にとっても、現在アジアが大きな活躍の場となっているのですか?」
川村氏
「そうですね。アジアは、法律問題ではやや遅れていた地域だったわけですが、現在はまったく話が違いまして、特に、グローバルファイナンシャルクライシスというのがありましたね、経済破綻。あれでヨーロッパが非常に揺らぎまして、ビジネス発展する場所でなくなった。ファイナンシャルクライシスが起こるまで非常に大きく発展していたヨーロッパの大ローファーム。大弁護士業界が新しい場所を求めてアジアへ向かって動き出した。のみならず、アジアでも法律、法の支配というものが進んで、ビジネスの道具としての法律。これが非常に認識されるようになって、アジアでも弁護士業が発展するのだと。その時に東京でやったものですから。非常に関心も高く、史上最大の数の弁護士達が東京に集まってきたと。こういう経過ですね」
相澤教授
「リーガルサービスですね。法律家のサービスというのは、ビジネスが大きくなれば、そこについてくるわけですね。そうすると、国際的に現在アジアが発展していると。そうなると、当然そこのリーガルサービスが大きくなってくるし、それから、経済が発展すれば、国が近代化してきますね。どうしても法治国家にしないと。ですから、日本は明治時代、すごく偉かったのは、日本の近代化の時に、日本の法制度はすごくきちんとしているんですね。現在でも、私は日本の法制度はすごく良くて、きれいにできた法制度。それを明治時代につくって、外国人が来やすいように、そういう意味で近代化をしていくと。これがたぶんアジアでこれから進んでいくだろう。そうなればリーガルサービスは当然、アジアに向かって広がっていくということになっていくのだと思うんですね」
秋元キャスター
「最近アジア企業による国際的なM&Aですとか、国際的な訴訟が増えているんですね。日本の企業で言いますと、サントリーホールディングスによるアメリカの大手メーカー、ビーム社の買収。その額はおよそ1兆6000億円に達しています。そして、ソフトバンクによるアメリカ3位の携帯電話会社スプリント・ネクステルの買収。こちらの額は1兆8000億円でした。また、中国のインターネット通販最大手のアリババグループは今年アメリカ市場に上場し、史上最大規模の調達額を記録した上場として大きな話題となりました。さらに、韓国のサムスン電子は、アメリカのアップルと長い間、特許を巡る法定闘争を続けているということですが、このようにアジアの企業を巡る大きな案件が次々と生まれているわけですけれども、河村さん、日本の弁護士はこうした大きな案件にどう関わっているのでしょうか」
川村氏
「いずれも大なり小なり関わっているんですよ。日本の法律が関わる部分が必ず出てきますからね。その部分については日本の弁護士が関与しています。しかし、間接的に聞いていることではありますが、サントリーの場合も、ソフトバンクの場合も、全体を取り仕切った法律事務所は、必ずしも日本の法律事務所ではなかったと。ああいう大きなディールを掴む、世界中に広がるものを、これをまとめる、取り仕切る能力。これはなかなか大変なもので、時間をかけてやっていられませんから、さっとやらなければならないので、難しいですよ。勝手にこんなことを言っては、日本の弁護士の友人達に叱られるかもしれませんが、まだ、日本の法律事務所はそこまで組織力を伸ばしていないと言わざるを得ないと思いますね」

企業と弁護士の国際化
反町キャスター
「問われているのは、弁護士の個の力なのですか?それとも組織の力なのですか?何が問われているのですか?」
川村氏
「こういう話で出てくると、組織の力です。個の力も大事ですけれども、組織の力ということでは日本の法律事務所は今一歩と言えますね。どんどんキャッチアップしているところですね」
反町キャスター
「それはどういうことですか?」
川村氏
「大ローファームとして伸び始めたのが、そんなに昔ではありません。強いて言えば、今世紀に入ってからと。それまでは昔ながらの、前世紀の末頃、大ローファームでも50人から55人の弁護士でやっていたんですよ」
反町キャスター
「それは世界中、どこでも?」
川村氏
「いやいや」
反町キャスター
「日本の話?」
川村氏
「日本の大ローファームでも55人ぐらいでやっていたんです。現在は450人から500人というところも出てきている。10倍。ですから、この10年、今世紀に入ってからの進歩、発展だと言ってもいいんですね」

世界の弁護士の現状 英米系巨大ローファーム
秋元キャスター
「日本の弁護士事務所は、まだ規模が小さいという話がありましたが、実際に世界の法律事務所、売上げランキングですけれども、これを見てみますと、2013年のデータですが、1位は、アメリカとイギリスの法律事務所が合併したDLAハイパーで、弁護士数が4036人と、売上げは日本円にして、およそ2586億円ですね。以下、10位までアメリカとイギリスの法律事務所で占められているんです。ちなみに、日本で最も大きな法律事務所、西村あさひ法律事務所。こちらは473人と。ちょっと比較してもかなり数が違うなという印象を受けますけれど、川村さん、なぜアメリカ、イギリスの巨大法律事務所が世界のトップを占めているという現状があるのでしょうか?」
川村氏
「いろんな理由があります。英米のリーガルシステム。これは非常に優れたもので、そのうえに英語という、圧倒的に有利な武器を持っています。教育も進んでいます。素晴らしい人達ですよ。それに加えて、経営の改革を進めてきましたね。1980年代、レーガンという人は、経済のソフト化と言い出したんですよ。パテント中心とかね。それから、サービス中心。その結果、当時進行していたウルグアイラウンド、貿易交渉で、サービス自由化の契約を打ち出したんです。組織的に貿易自由化の中にリーガルサービスを入れてきたんですね。まさに、あの時、日本に、外国弁護士制度というのがあるんですよ、それを日本政府に突きつけて、弁護士マーケットを開放しろと言ったのは、政策の一部だったんですね。つまり、自然にこうなったのではないと。自然にこうなるような強さもあったけれども、こういう世界的に法律業務を拡大させるためのことがアメリカ政府の通商政策のトップに来たんですよ」
反町キャスター
「国家戦略だったのですか」
川村氏
「国家戦略だったんです」
反町キャスター
「アメリカはわかるのですが、何でイギリスがくっついてきている?」
川村氏
「イギリスが数年遅れで、1990年頃、当時のサッチャー政策で、これを入れたんです。政策を打ち出して、新しい法律を入れて、もっと重要なのはイギリスの場合は、EUというのがありますが、EUの通商自由化政策の中に、サービス貿易、サービスの自由化、つまり、イギリスの法律事務所が自由に、ヨーロッパ全体で活躍できるようにしたんですよ。つまり、イギリスのローファームのマーケットだと、ヨーロッパ全体が。それがただ1つの理由じゃないけれど、そういう両国の国家戦略によって起こった出来事だとも言えると思いますね」
反町キャスター
「上位10社が、全部イギリスかアメリカというこの状況。独禁法とは言いませんけれども、イギリス、アメリカによる世界のリーガルサービスの寡占状態、独占です、事実上。これは何か支障は起きないのですか?」
川村氏
「もちろん、起きたんです。先ほどのグローバルファイナンシャルクライシスに至る、10年もかからなかったんだけれども、7年、8年。この両国の法律事務所の国際通商利益が急速に伸びたんです。年率平均7%で、これをトレードインリーガルサービスというのですが、リーガルサービス貿易というんですけれども、その金額が年率7%で、リーマンブラザーズの事件が起こるまで増えていたんです。他の国を見たらどこもそんなところはなかったんです。英米だけ、そこが伸びていたんですね。これは、僕が勝手に言っているのではなくて、WTOのサービス理事会ですが、そこが報告書を出しているんですよ。2008年か、2009年。そのへんにグローバルファイナンシャルクライシスのことを反省して、報告書をまとめたんです。発見したんです。英米の法律事務所だけが急速にこの期間だけ伸びたと。だから、その結果、悲惨なことが起きているのは英米かと。英米ではないかと。ギリシャ、それから、イタリア、スペイン、と言うことですね。それは、僕がまた勝手に言っていることではなくて、ドクター・スティグリッツがグローバル主義に、いろいろ批判的ですね。あの人が確か2002年に本を出しまして、その中で情報の不均衡が、いずれ世界的な破局をもたらすよと書いているんですね。情報の不均衡というのは情報ですが、リーガルサービスというのは情報の戦争です。リーガルサービスの不均衡が結局、大きな負担をリーガルサービスの不足しているところに押しつける結果になるのではないかと。そう言われてみれば、思いあたる節もないではないと。つまり、金融商品というのは全部、イギリスの法律家、アメリカの法律家でガバニングローというんですけれども、その英米のやり方で広がった」
反町キャスター
「英米のローファームによる寡占というのが、様々なデメリットを発生しているのではないかという話。どのように感じますか?」
相澤教授
「私は、寡占というよりはこのローファームは結局、アメリカはもともと規制があまりないわけです。イギリスは司法改革をやって規制緩和になったわけです。要するに、コンペティティブですよ。コンペティティブにすると伸びるんですよ。それは、閉鎖的にしているところは自国のマーケットにシュリンクしているわけじゃないですか。そこを国際化していけば、当然のことながら、国際競争をやっているところは伸びますよね。それと1つの側面は、先生がおっしゃった面もありますけれども、英米の事務所というのは、国内でも皆競争しているんです。激しい競争をしているわけです。そうすると、どうしても目を外に開く。国内のマーケットではなく、外へ見ていくと。競争をしているから、どんどんレベルが上がると。そういう面もあるのではないかと思いますね」
川村氏
「日本の弁護士も競争していますがね」
相澤教授
「競争しているんですよ、もちろん、競争しているのですが、英米に比べると競争の度合というのは…」
川村氏
「違う意味でね」
秋元キャスター
「閉鎖的という部分もあるのですか?」
相澤教授
「英米の社会は皆、特にリーガルサービスでいくとすごい。アングロサクソンの世界はすごいです。なぜ現在の制度で、日本で規制緩和が必要かと言っているかというと、競争をしないと社会は伸びないです。ここがリーガルサービスに出てきたのではないかと思います」

外国人弁護士の受け入れ
秋元キャスター
「先ほどはイギリス、アメリカはどんどん競争していく、外に出て行くという話がありました。日本は競争が少ないのではないか、外に向いていないという話もあったのですが、逆に、日本は外国の弁護士をどのぐらい受け入れているのかということをちょっと見ていきたいんですけれども、2014年の数字です。386人ということで、これは何だかそんなに多くないのではないのかなという気がしますけれども、川村さん、どうですか?」
川村氏
「1990年代は80人ぐらいで、ずっと推移していたのが、今世紀に入ったところで急速に増えてきて、それで400人近いと、5倍になっているんですね。ところが、他方、日本の法律事務所は、先ほど申しましたように前世紀、だいたい50人から55人(規模)、1つの法律事務所でね。それぐらいだったと思うんですけれども、それが現在大きいところは四百何十人、500人近いと。10倍近いということはその間の発展ぶりは見るべきものがある。日本の法律事務所は急速に、近代化し、組織を拡大した。組織が大きくなりますと、経営、マネージメントというものが必ず必要。そういうものを導入し、進展しようとしていると。特に最近、日本の法律事務所が海外に支店を設けて、若手の意欲のある人をどんどん出していますよ。たいしたものですよ。主としてアジアですけれども、あちこちに10ぐらいの支店を出しているところがいくつかありますね。そうすると、そこに2人か3人の若い人が行く、経験を積んだ人が増えていっているわけですね。そういう意味で、外国人弁護士の事務所も発展している。だけど、日本のリーガルサービスのマーケットもそれ以上の速さで発展しているということが言えると思うんですけれどもね」
反町キャスター
「その意味でいうと、日本における外国人弁護士の活動に関して、自由度は十分確保されていると考えてよろしいのですか?」
川村氏
「それはまた難しいご質問で、答えにくいのですが、完全に自由とは言えないと思います。いろんな制約があって、外国人弁護士の側でもやりにくいと思ったこともあるでしょうし、日本の弁護士が外国人の弁護士の人と一緒に活動を発展させようとするのに、障害があるなと思うことがあろうかと。まだ自由化の余地はあるかと、私は思いますね」
反町キャスター
「外国人の弁護士を日本に入れる時にどういう問題が現在生じているのですか?」
川村氏
「彼らの活動は、本国法、アメリカの弁護士はアメリカの法律しかできません。イギリスの弁護士はイギリスの法律しかできませんという制約があるんです。先ほどから見てきているように、国際的な案件というのは、一国の法律で解決できるものはどんどん少なくなっていて、日本の法律、中国の法律と入り乱れるわけですね。そういうものを、能率的に解決するというのに困難があるかもしれません。それで不自由していると、そこにぴったりの人材を集めにくいということがありますよね。だから、人材を確保する苦労もあるだろうと思います」
反町キャスター
「それは、たとえば、日本の企業が海外に出る時に、ないしは外国企業を買収したりする。逆の場合でも結構です。日本に投資して、日本の企業を買収し、日本と合弁する時に法律の素地としては日本の国内法の知識も必要ですし、アメリカだったら、アメリカの国内法の素地も必要ですし、国際法があるなら、国際法に対する知識も必要になりますよね」
川村氏
「そうです」
反町キャスター
「そのバランス、3つの知識を、全部とりあえず持ちあわせた人というのは、これは1人でやるのはまた大変ですから」
川村氏
「あり得ない」
反町キャスター
「いろんな人と共同してやっていかざるを得ない?」
川村氏
「そうです」
反町キャスター
「共同で、日本の弁護士と外国、アメリカならその法律に精通している弁護士と一緒にビジネスを展開しやすい素地が現在の日本にあるのかどうか、そこですよ」
川村氏
「相当程度にあると私は思いますね。現に、相当程度にファンクションしていると思いますね。だけど、構成上、一定の限度がありますから、ちょっとまだ不便はあるかもしれません」
相澤教授
「実は外国人弁護士を認めるということ、それから、現在、共同事務所を開く、これは従来の閉鎖的な弁護士会の体質から言うと革命に近いと。法律家をしていると思うぐらいですけれども、たぶん法律家以外からすると、まだまだという面があるかと思うんですね。つまり、弁護士というのは、日本の法律は日本人の弁護士しか、しかも限られたエリートの社会だというところでやってきたのが、外国人に少し広げたというのは、一歩ですけれども、今、先生がおっしゃったように、これから国際的な案件をやるのに、十分にこれができるかと。つまり、弁護士法上の問題が、問題なく共同でうまく仕事ができるかというところは考えていかないといけないんだろうと思いますね」
反町キャスター
「そうすると、国際的なビジネスを展開するために、日本の司法制度、法曹界といってもいいかもしれません。その市場の開放度。これにはまだまだ検討すべき余地があるのかどうか。そこはいかがですか?」
相澤教授
「私は、開放しないと、本当に日本の事務所の、これから先の競争力がついていかないと。それは現在で言うと、日本人は日本のマーケットは守りつつ、外国に出ようとしている。それではなかなか真の実力はついてこないのではないかと思いますね」

世界に通用する弁護士へ 養成制度の現状と課題
秋元キャスター
「弁護士資格を得るまでの流れの中で、企業法務等の勉強はどこですることになるのでしょうか?」
川村氏
「それは法科大学院だと思うんですね。司法修習の1年は基本的に裁判教育です。民事弁護、刑事弁護、検察、民事裁判、刑事裁判に現在も分かれていまして裁判修習1年。ですから、六法を中心の勉強、書類づくりの訓練といったことになっているようですね。すると、先ほどから話してきたリーガルサーチを学ぶ場所ではどうもない。そうすると、ロースクールで学ばないといけないと思うんですね。しかし、そのロースクールは、今や司法試験の合格率に運命を握られている。それでリーガルサービスの教育をしても、司法試験の合格率は上がりませんから。そんなことはやっていられないねというので、未だに裁判教育を受けただけの弁護士が続々とマーケットに送り込まれているという状況です」
反町キャスター
「深刻ですよね」
川村氏
「よくないと思いますね。それぞれの弁護士が自分のキャリアをどのように発展させていくか。どこへ行って仕事をするか。それぞれが自分で考えると。ロースクールも当然、キャリアデベロップメントの指導をしなければいけない。そこでリーガルサービスの訓練が行われる。その訓練のことをローヤリングスキルと呼んでいるんです。これは弁護士として必要なスキル、法律の知識でもなく、文章をつくる能力でもない。依頼者のために問題にぶつかり、その問題を解決するためのいろんな方法。交渉とか、裁判以外の方法とか、あるいは契約。そういったことを自分で企画して、依頼者のためにサービスをする。ローヤリングスキルと言います。それは日本では教育される機会が非常に少ないと。意識している学校はたくさんありますけれども、十分なローヤリングスキルの教育は行われていないと思いますね」
相澤教授
「日本の教育は、大学のところに法学部というのがあるんですね。法学部4年、法科大学院でも法学部出た人は2年、司法修習と都合7年も法律の教育をしている。これはたぶん世界に類を見ない長い教育ですよね。しかも司法試験が難しいわけです。合格率の高いところでも5割ぐらいしか受からない。そうすると、司法試験に受からないと仕方がないから、そこだけをずっとやっているわけですよ。どんどんどん狭くなっちゃうし、法科大学のロースクールだって自分のところの学生が法科大学院は出たけれども…なんてしたくないのではないですか。法科大学院を出たのに弁護士にもなれないとはしたくない。皆がそちらを向いちゃうので、なかなか法科大学院は…。私は、たまたま大学で演習は、学生にここは司法試験に役に立たない演習ですよと言って、授業をやっているのですが、それはなかなか難しいと思うんですよ。ですから、そういうところに来る人達は、かなり自信がある人達が来て合格率も実は高いんですけれどもね。そこは、私は弁護士になったあとに何をやることが必要かを教えるわけですよ。弁護士になるまでは六法をできないと受からないよと。六法だけ知っていて仕事になるかと。試験科目外で皆さんは仕事をするんですよということを学生に理解してもらう。たとえば、そういう意味で、国際化というのは英語の文型を実は少し読ませたいんだけれども、学生に余裕がないですよ。そういうところで現在の制度自体の問題が出てきているのではないかなと思いますね」
反町キャスター
「それは、どこからあらためていけばいいのですか?」
相澤教授
「自分がどういう弁護士になろうかという意識でやってくることが必要。とにかく司法試験という意識を変える必要がある。そのためには、普通に勉強してきた人は受かるという仕組みにしないと」
川村氏
「現時点では逆向き、人数を減らして優秀な教育を強めて、より優秀な人を輩出するようにしようと。日本の裁判の助けになるようにしようという考えだと思うんですね。ただ、それでは違うことをやる、新しい分野に乗り出していく、ましてや国際分野に乗り出していく弁護士を大量に生み出すのは不可能ですよね」
反町キャスター
「弁護士を専門化するニーズというのは十分あると感じますか?」
相澤教授
「マーケットは、実はサプライ側、供給側にも影響されるんです。皆で競って、供給が増えてくると隅々まで行き渡っていきますよね。そうするとジワジワマーケットが大きくなっていく。人数が少ないと、こういうものにはサービスをしていかない、だから、大きいところ、たとえば、M&Aとか、そういうところに現在でも行くんだけど、だんだん仕事が広がっていく。国際的なこと、たとえば、イミグレ、アメリカでは専門化しているんですけど、日本ではまだまだそこが専門化して、そこで仕事が成り立つかどうか。たとえば、よくあるんですけれど、独禁だって独禁を専門にしているかと言ったらごく少ないわけです。国際的になると、通商をやって、仕事として成り立つかというと…そこは皆でやって広げていくと、こういうこともやっていく。新しい問題を取り上げても仕事として…ですから、医療も高度化していくことによって医療はずっと広がっているではないですか。お医者さんが高度化して診療が広がっている。医療財政を圧迫はしているのですが、よりよい医療を受けられるようになっている。だから、皆で良いサービスを提供していると企業に対しても国民に対してもよりよいものが提供できるようになるのではないか」

グローバル社会と弁護士 日本の国益を守るには
秋元キャスター
「国益に関係していることを象徴する裁判が今年3月にありましたが、オランダのハーグにある国際司法裁判所で行われていた、日本が南極海で行っている調査捕鯨に関する裁判の判決です。敗因は何だと考えますか?」
川村氏
「敗因は、私は現時点で携わっていませんので、立ち入った事は言えませんが、若干感想はあります。この事件はもともと我々の世界でよく言う負け筋の事件で、とても難しい事件ですよ。なかなか勝てない。だって、判決があった頃でもテレビを観ていると、鯨料理の料理屋で食べている人が、あんな判決が出るとこれからは食べられなくなるじゃないか、と言っているんですよ。あれはまるで調査捕鯨ではなくて、商業捕鯨であることの証拠をテレビで放送しているようなもので、そんな状況下で、あの事件を弁護した人達は苦労したと思うんです。しかし、1つ、気がついたことがあるんです。あの判決書、長い文ですが、代理人の名前がズラッと出ているんです。よく見てみますと、オーストラリアの代理人、これは全部、法律家か弁護士です、ほとんどが。イギリスのバリスターとしては非常にシニアな高位のバリスターであることを示す肩書きを持った人がズラッと…法務大臣のような人も入っているのですけれどもね。プラスしてイギリスのバリスターが何人かの専門家が入っている。日本の代理人にはイギリスのバリスターもいらっしゃることはいらっしゃる。だけど、圧倒的にほとんどが外務省の有名な国際法の専門家。それから、学者ということで、陣容がころりと違う。それが悪かったと、私も断言はできないけれども、訴訟の駆け引きに重点を置いた取り組みではないなと。外交の駆け引きというものもあるし、絶対的な真理というものもあるし、そういう意味では、立派な日本の取り組みで、言うまでもなく日本の代理人の人達はすごく優秀な人です。出席された代表の方もすごく優秀な人でよく知っています。しかし、法定の駆け引きはそれで十分だったのだろうかと。と言うのは、法定の駆け引きで、長けてきた人は非常に少ないというのが、私の印象です。そうすると、日本の弁護士力、法律力というものが、ああいうところまできちんとカバーするようにできているべきだったのではないだろうかなと。ちょっと岡目八目というか、傍観者の発言で、問題があったらお詫びしたいのですが、それを感じました」
反町キャスター
「陣立てに対する考え方が日本は筋が違っていたということですか?」
川村氏
「筋が違っているとまで言えないにしても、重点は法の正義に置かれ過ぎていて、法廷における駆け引きは脇に置かれていたのではないかなと」
相澤教授
「たとえば、WTOで紛争解決手続きをやっていますよね。日本はもちろん、負けたケースもありますけれども、勝っているケースもあるわけです。ですから、必ずしも対応できていないわけではなくて、これだけを取り上げられるとちょっとかわいそうかなと、日本の国際的な紛争解決能力というのは。ただ、先ほど申し上げましたように、日本はこれまで、たとえば、仲裁における、投資法協定における仲裁はあまりやっていないんですよね。そうすると、そこの部分はやっているところにいわば経験値として一日の長があるというのはそうだと思います。ただ、WTOを見ていますと結構がんばってダンピングなんかで勝ったりしているわけです。そこはリーガルなマーケットで、そういうところできちんと国際的に主張するところは主張するということに、少しずつ進みつつあるのではないか。そういう意味でWTOに行って紛争解決ですという時に、きちんとやるということが少しずつできている、良いことだと思いますよ」

川村明 国際法曹協会前会長の提言:『日本の国際法律力』
川村氏
「昨日、国会議員会館の国際会議場でIBAの専門家を招いて、自民党、あるいは政治家の方々、官庁の方々と議論の会をしました。それは、日本の国際的な法律力を発展させる戦略をどうするか。非常に高度な議論で、私は感銘を受けました。今や日本の国際的法律力、これが日本の企業や人々の国際化の鍵になると思います。そういう意味でこういう提言をさせていただきたいと思います」

相澤英孝 一橋大学教授の提言:『自己研鑽』
相澤教授
「私は弁護士さんがどれだけ自己研鑽を積んでいくかということだと思います。実は私の勤めている大学でも、いわば弁護士になった人の教育もしているのですが、そういう自分で高めるという意欲。まさにボーイズビーアンビシャスの気持ちを皆が持って、若い人が勉強してくれることによって、我々の国際力というのも上がると思っています」