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2014年10月15日(水)
行列のできる豪華列車 『ななつ星』戦略秘話

ゲスト

唐池恒二
九州旅客鉄道代表取締役会長
藻谷浩介
日本総合研究所主席研究員

『ななつ星in九州』の戦略 高額でも人気の背景
秋元キャスター
「豪華寝台列車『ななつ星in九州』を紹介していきたいと思いますが、まず1泊2日と3泊4日の2つのコースがあります。1泊2日のコースは博多を出発して、長崎や熊本の阿蘇、大分の湯布院など北九州を周るものですね。3泊4日のコースは博多を出発して、大分の湯布院、宮崎、鹿児島、熊本の阿蘇など九州をぐるりと1周するものになっています。運行開始当初から大きな話題となっている料金の方ですけれども、現在来年3月から9月の予約を受付けていて、その料金が1人当たり1泊2日のコースで21万円~31万円、3泊4日のコースでは48万円~75万円と高額な設定となっています。にもかかわらず料金の高いコースほど人気だそうで、12月から来年2月出発分の平均倍率がおよそ33倍と。最高倍率はデラックススイートの12月9日出発、3泊4日のコースで、なんと268倍ということですけれども、唐池さん、『ななつ星in九州』の企画からずっとこれまで先頭に立って指揮されていますが、人気の理由はどこにあるのでしょうか?」
唐池氏
「ちょっと私もびっくりするぐらいの人気を現在いただいているんですけれども、お乗りいただいたお客様が良かったよとか、感動したよというお言葉をたくさんいただくから、それはわかるのですが、お乗りいただく前にこれだけの人気が出るとは、ちょっと想像以上のものを感じますね。ただ、この列車にかける私達の投入したエネルギー、いろんな気を、エネルギーを、この列車に投入しました。車両をつくるために、合計で何千人の職人さんがパーツをつくったり、あるいは組み立てをしたり、最後の数か月はほとんど徹夜で、1つ、1つ、これほど手をかけるのかというぐらいにエネルギーを投入しています。手間をかけていますよね」
反町キャスター
「2人で150万円ですよね。この価格設定は議論の対象だったのですか?それとも、最初からこのぐらいのところを攻めていこうという狙いだったのですか?」
唐池氏
「このラインで市場は受け入れてくれるだろうと読んでいましたけれども。半分は不安ですよ。半分は自信、半分は不安でスタートをしたのですが、1年前にスタートして、お乗りになったお客様から降りた瞬間に安いと。ほとんどのお客様がおっしゃる。安いと」
秋元キャスター
「それ以上のものがあるということですね」
唐池氏
「その証拠に、1度お乗りいただいたお客様の4人に1人は、次すぐ降りられたら申し込まれます」
反町キャスター
「同じコースを走るんですよね」
秋元キャスター
「リピーターになる?」
唐池氏
「リピーター。同じコースで。リピーター(率)が25%ですから」
藻谷氏
「たとえて言うと、飛行機のファーストクラスと考えてみた場合、おそらくアメリカ、ヨーロッパに行く場合に1人75万円から100万円ぐらい。乗ったことはありませんが、おそらくかかりますね。時間にして十数時間。そういうことに関してもたまに人生ももう少しだからいいよと言って、お金を払う方々が、ファーストクラスに乗るのが楽しみで、たとえば、ドバイにまで行くとか、そういう方もいらっしゃいますので、そういう方々が同じターゲットとしてお乗りになった時に、同じ値段で飛行機のファーストクラスに比べて、さらに、こちらの方がずっと味わい深いということをお感じになられたとすれば、繰り返し乗る人がいてもおかしくない。また、逆を言うと、これだけの料金をとっても、なかなかこれだけの豪華な内容を採算事業としてまわしていくのは大変だと思う。つまり、それ以上にお金がかかった電車だと思うんですね。ですから、高いお金をとるがゆえに、それにふさわしい内容の中身を準備することができ、それに応じ、さらに、良いお客さんがつくと。日本で長年やっている、いわゆるデフレというものの正反対。良いものを提供して、きちんとした値段をとり、さらに、それで値段を上げていくという循環です。これは金融機関や政府がすることではなくて、民間企業が自らデフレに対して解決されたプロジェクトですからね。お客さんのニーズが実はそこにあったということを証明されたと」
反町キャスター
「『ななつ星』は九州だけですよね?」
唐池氏
「はい」
反町キャスター
「たとえば、北海道まで走らせるとか、そういうようなプランというのもあっていいのではないかと思うのですが、そこはいかがですか?」
唐池氏
「多くの鉄道ファンの方からも言われますけれども、それは、まずしないですね。しないというのは、この『ななつ星』の1番の目的は九州を発信したいと。『ななつ星』を通じて、九州の魅力を全国に、あるいは場合によっては世界に発信できました。これまで東京のテレビを見ても九州の情報なんてあまり出てこなかったんです。ところが『ななつ星』の登場で『ななつ星』に関わる有田焼とか、湯布院のお宿とか、霧島のお宿、宮崎県の野菜とか、あるいは九州各地の食とか、あるいは名所とか、そういったものが取り上げられまして、『ななつ星』以上に九州各地が現在盛り上がっていると感じます。それが1番の『ななつ星』の目的なんですよ」

列車へのこだわりと地方創生
秋元キャスター
「『ななつ星in九州』の大きな特徴と言いますのが、徹底した地元主義を貫いているということですね。九州の7つの県を巡る旅、こだわりを追及した土地の味や名産品が満載です。車両の内装には家具の産地として知られます福岡県大川市の伝統工芸の大川組子が。洗面鉢が佐賀県有田焼の陶芸家で人間国宝だった14代酒井田柿右衛門さんの作品が使われるなど贅が尽くされているわけですね。バータイムで使用する酒器には400年の伝統を誇る鹿児島県の薩摩焼などが使われています。さらに、車内で提供する料理も老舗のお寿司、長崎和牛など、その他のものにもこだわっているわけですね」
反町キャスター
「すごく手の込んだ、大川組子…」
唐池氏
「福岡県の家具の都と言われる、大川の家具職人さん達が釘を1本も使わないで、丹念に細かい作業でつくり上げた、これを1つつくり上げるのにも何日にもかかるんですが、これはお客様、また車両を見て感動をする1つの大きなものですね」
反町キャスター
「こういったものが地域の活性化につながっていく。列車が、それを起こしていくというプロセスをどう感じますか?」
藻谷氏
「九州の大川であれば日本3大家具産地の中でも大きいところでして、あるいは宮崎は野菜の生産はおそらく日本一というわけで、昔からある産業ですが、いわゆる安い方へ、安い方へ流れて、せっかくのおいしいものを、素晴らしいものをつくる職人技も、つくったものも高く売れずに、つくっている側にお金が十分にいかないという、まさに、デフレの中に九州が、たぶん一番強く取り込まれています。賃金も安いですし、そういう時に一番お金にゆとりがあって、本当に人生を楽しみたい、1泊だけでも楽しみたいという人に向けて、1つ九州の最上級のものを、きちんとしたお値段で出しませんかという機会をつくることは、単に『ななつ星』に乗った方が楽しむだけではなく、本来これだけの値段で乗った人が、お金をこれだけ払ってですよ、これは安いといって帰られるという話を聞いた時、自分達がつくっているものは本当に、それだけの価値があるものをつくれるんだということを、関係している九州の産地の人に勇気を与えていると思うんです。ですから、それが道の駅でも繁盛する方向につながる。道の駅で同じ高い値段で売れないにしても、安くしてアピールするのではなく、これは本当に良いものだから買っていってくださいということでアピールをするように、九州の人達が変わり始めているとすると、これは本当に素晴らしいことですね」
唐池氏
「おっしゃる通りで、この組子自体も大川がずっと伝統的に維持してきた、継承してきた技ですよね。ところが、これを注文する方がどんどん少なくなってきたんです。高額ですし、手間がかかるし、おっしゃるように安い方へ、安い方へと流れていたのですが、その技だけはずっと継承をされてきたんですよね。それを『ななつ星』で、もう1度、復活させて、花を開かせて、それ以降、家を建てる注文もこの組子を組み込んでほしいという注文も増えたようですね」

手段から観光へ 転換の狙い
秋元キャスター
「実は『ななつ星』は突然誕生したというわけではなくて、それ以前にもJR九州はいろいろな観光列車を運行させているんですね。たとえば、博多と別府を結ぶ特急『ゆふいんの森』とか、宮崎と南郷間の『海幸山幸』、熊本と宮地間の『あそぼーい』など、そのネーミングもかなりユニークですけれども、人気の列車となっているんですね。こうした取り組みが『ななつ星in九州』に活かされているということですか?」
唐池氏
「そうですね。私どもでは観光列車とは言わずに、デザイン&ストーリー列車と言っていますけれども。デザインも立派なデザインを施して、列車自体に物語を備えたという列車をつくってきたんです。1つ、1つの列車には、それぞれ物語がくっついていまして、それが人気も呼んでいますし、長続きする秘訣だろうなと思います。デザインとストーリーというのは大事だなと思いますけれども、パイオニアが『ゆふいんの森』です。実はこれが走り始めたのが25年前ですから、これも私が手がけ、ネーミングしたんですけれども、その時の市場は博多から湯布院に列車で行く人がゼロ、お客様がゼロだったんですけれど、当時。特急で博多から湯布院に行く人はゼロという数字しかないですよ。存在しなかったから。だから、これはギャンブルでしたけれど、おしゃれな列車を敢えて投入して、そうすると、あっと言う間に超人気列車になりました。それが25年もずっとロングセラーで続いていまして、10年ぐらい前から、鹿児島、宮崎、熊本地域にいくつかのデザイン&ストーリー列車を走らせまして、これも全てヒットしまして、これがヒットしましたのは単にお客様が移動するためにその列車に乗るということではなしに、観光地、名所に行くためではなしに、列車に乗ることが目的になったのだなと」
藻谷氏
「JR九州の沿線はすごく不利です。東京の人には特に全くわからないと思いますが、九州の人はそもそも鉄道に乗らないんです。もちろん、高速道路が発達していますし、何より高速バスが日本で一番発達したところです。ですから、どこに行くにも、都市間は高速バス、あるいは普通自家用車というのが常識でJRさんはすごく不利でした。それから、九州の鉄道はカーブがすごく多くて、高速化できないんですよ。特急と言いながら、実は、各停よりも遅いスピードで走っているケースも多いです。ですから、ビジネス用にも電車に乗って行っても遅いんじゃないのと、東の方から考えると、あるいは関西あたりから考えても、考えられないぐらい悪い条件です。そこのところで皆の目が鉄道に向いていないところを、逆に、観光をテコに、むしろうちの地域の宝が鉄道だぞという方向でひっくり返すことができたというところが、これは九州が恵まれていたのではなくて、条件が不利なところを努力でひっくり返されたと」

JR九州の経営戦略 唐池流リーダーシップ
秋元キャスター
「車内向けの広報誌に唐池流いろはかるたを掲載されているんですね。『に』は日本一を目指すとあるのですけれど、九州の鉄道会社で、具体的に、何で日本一を目指されるのですか?」
唐池氏
「これは鉄道だけではないですよね。いろんな鉄道以外の事業も含めて、僕はJR九州の現在会長で、社長になったのは5年前。その前は子会社で外食の会社、レストランの会社の社長をやっていたんですね。4年ほど。その時に、九州内で細々と、いろんな店をやっていたんですよね。居酒屋とか、うどん屋とか、ラーメン屋。それは、僕が行く前は赤字だったんですよ。赤字を何とかしたいなと思って、赤字の時の社員というのは本当に元気がないです。元気をつけたい。元気をつけるには夢が必要だと。赤字会社の夢は簡単ですよ。黒字にするということが夢になる。だから、最初は黒字にしようということで、その通り黒字にしたんですよ。それで、黒字にした時に次の夢がなくなったんです。次の夢は何だというと、よし、食べ物屋だから東京に出ようということで、12年前に、東京の赤坂に『うまや』という店を出したんですよ。食べ物をやっていると、東京に出るということは夢ですよ。九州の地方で細々とやっているよりも、東京で勝負するんだというと夢になるんですよ。東京に出ました。そうすると、次の夢がなくなるんです、今度は。次は、よし、日本一になろうと捉えたんです。九州一だとそこで終わっちゃうんですね。日本一になろうとするからこそ、いろいろ考えるし、汗も流すのですよね。『ななつ星』は、それを超えて、世界一の列車をつくろうということになりました。そのレベルまで夢を見ないと、皆がエネルギーを出す分量が大きくならないと思いますね」

事業多角化の狙い
秋元キャスター
「実は、JR九州が鉄道の本業以外にも様々な事業を展開しているんですね。ホテルですとか、飲食業、ドラッグストアの経営、博多釜山間の海上輸送。さらに、農業も手がけていて、ニラや甘夏、さつまいも、ピーマンの栽培から鶏の卵までつくっているということです。博多駅や羽田空港で運営するレストランでは、JR九州の養鶏場で採れた卵を使った卵かけご飯がメニューに加わっているということですが、かなり、手広い感じがしますけれども、どうして鉄道会社が卵かけご飯なのでしょうか?」
唐池氏
「一番のもとは九州を元気したいという、私達の住んでいる、働いている、地域を元気にしたいということがあって、たとえば、駅ビルをつくる。駅ビルも駅ビルだけ儲かればいいとか、お客様がたくさん入ればいいという発想は捨てましたね。駅ビルと周辺の町が一緒になって元気になる方策を探っています。それは、要は駅前広場ですよ。駅前広場がきちんと周辺の町から入って来やすい、あるいは駅前広場から周辺に町の商店街にも回遊しやすい、その起点であり、終着点である、そういう駅前広場。博多駅もそうですが、本当に町に出たくなるような駅前広場です。駅とか、駅ビルだけで完結する1つの箱の中で完結する事業というのは、お客様のリピーターもほとんど出てこないし、記憶にも残らないですよね。これが、たとえば、高度成長時代だと熱海とか、別府の温泉地のように巨大なホテルで、全てをホテルの中で抱え込んじゃうんです。お土産物屋も、スナックも、カラオケも、エステも、全部ホテルの中にありますと。そうすると、別府のあたりも、町の商店街が皆シャッター街になっちゃったんですね。町を歩かなくなったから。別府は15年前から志のある人が何人かいまして別府は町を歩いていただく町にしようということで、15年前から取り組んで、昔の温泉、湯治場のような石畳にして歩いていただこうとか、ボランティアガイドをつくろうとか、そういうことで歩いていただく別府の町として現在、再生しましたからね。そういうことで取り込んでいかなければいかんですよね。駅ビルもそうですよ。1つの箱に取り込んだからね、とにかく商圏というのは、その周辺の人達が来れば良いというなら、駅ビルだけでいいのですが、たとえば、アジアとか、遠方からとか、これからどんどんお客様が九州にも入ってきますから。そういったお客様を考えると、駅だけではなしに、駅もそうだけれども、福岡でいうと天神にも回遊していただこう。あるいは福岡だけではなくて、福岡から3泊も4泊もされますからね。アジアから来られた方は。そうすると、熊本、大分と巡っていただいていいわけです。だから、駅の箱に閉じ込めないという発想は私どもの駅ビル哲学ですよね。それから、同じようにドラッグストアとか、飲食業も、町づくりをしていこうという発想ですよ。町の賑わいをつくろうということで、いいお店をつくったり、あるいはマンションをつくったり、住居をつくったり、ホテルをつくったりして、その町に賑わいをつくっていく。これが、私どもの会社の使命ではないかと」

JR九州の経営戦略 事業多角化の狙い
反町キャスター
「JR九州にとって本業はどれくらい大事なものですか?」
唐池氏
「当社の全ての事業のインキュベータが鉄道です。要するに、孵卵器と言いますか、孵化器と言いますか。いろんな事業が未熟な時期もありました。それを鉄道事業が、たとえば、鉄道をご利用のお客様が立ち寄るお店とか、鉄道がなかったらあり得ない事業がいっぱいあるんですよね。鉄道以外の事業と言っても、鉄道に依存したと言いますか。鉄道があったればこそ、その事業が成り立つという事業がいっぱいある。私どもがやっている、たとえば、もともと国鉄時代からキヨスクという売店がありました。これは現在も私どもが継承していますけれども。キヨスクは鉄道のお客様がちょっと駅で買い物をするとか、タバコを買いたいとか、新聞を買いたいという需要にあった店ですよね。古くからあるんです。鉄道と共に発展してきた事業ですよね。それから、立ち食いのうどん屋さんとか、立ち食いのラーメン屋さんとか、これも駅には欠かせないアイテムです。それから、パン、ベーカリーですよね。朝、夕はサラリーマン、OLの方でお店の中がごった返しますけれども。朝、夕一番お客様が多いのが駅ですよね。その時にお買いになるのに、パンが多いんですよ。そうすると、駅には必要な事業ですね。鉄道のお客様にとって必要な事業が自然と発展してきた、キヨスクなり、小売りなり、飲食なりが。ドラッグストアを最近、M&Aで私どものグループに入れたんですけれども、これも駅と親和性が強く、駅に馴染みやすい事業ですよね。旅の途中でちょっと薬を買いたいとか、化粧品を買いたいという方にとって大変重宝なお店でありまして、こういった鉄道に欠かせない、鉄道の側にあったら便利な事業が自然と発達してきまして、それに加えて、さらに町づくりということで、それを面としてもう少し広げていこう。町全体の賑わいをつくり出すためにはマンションもつくっていかなければいけない。ホテルもつくろう。農業もやっていこうということで地域を元気にすることがまわりまわって鉄道のお客様が増えるということ。鉄道のお客様が増えると、それらの事業のお客様も増えていくんですよね。だから、独立して、それをやるわけではなく、全部関連して展開できるということで、鉄道以外の事業も力を入れているわけですね」

JR九州の今後の展開 鉄道の未来は
秋元キャスター
「JR北九州は2016年に上場を目指していて、売上げを着実に伸ばしています。2016年には鉄道外収入を60%超にしようと。2013年度の鉄道事業だけを見ますと、営業利益が156億円の赤字です。この鉄道事業を黒字にすることはなかなか難しいということになるんですよね?」
唐池氏
「私どもの大きな目標として鉄道事業の黒字化を目指していまして、これは今年、来年という時期では無理ですけれども、はやい時期に鉄道事業の黒字化を目指しています」
反町キャスター
「鉄道事業の黒字化は、今日話を聞いていると、こだわらなくてもいいのではないかなというのは勝手な想像ですけれども、ここは巨額な赤字にならなければ、そこそこ維持ができれば、それによるネットワーキングの延長線上のビジネスを展開していくという発想ではないのですか?」
唐池氏
「鉄道は150億円の赤字ですけれども、それ以外で補って全体としては200億円ぐらいの黒字になっているんですけれども、赤字だと、どの事業でも働く人は、何がしら元気がないですよね。元気にするためには企業というのは、どの事業でも黒字にしなくてはいけないですよね。私どもは、鉄道も黒字、その他でもたくさん稼がせていただこうということで、もっともっと強力な会社をつくり上げていこうと思っていますので、まずはこの数年以内に鉄道事業の黒字化を目指していろいろ手を打っています。鉄道はもう成熟産業の1つに入ってきていますね。これから飛躍的に売上げを伸ばすのは難しいとは思いますね。鉄道は維持というよりは、少しでも売上げを伸ばしながら、効率化、コスト削減をこれから4、5年で全力投球していきたいなと。鉄道の得意分野と言うのは、都市間移動と、大都市を中心とした通勤・通学層。もう1つ、私どもは観光列車、観光部門を持っています。この3つがこれから柱になっていきます。(九州は)人口の規模も、都市の配置もオランダとそっくりです。オランダは鉄道が発達している国ですから。九州のように人口が100kmごとに数十万の都市があるということは、鉄道にとって都市間輸送の得意な人口配置になっています。私どももこれからいろいろなやり方を進めていけば、都市間輸送に適した九州の特徴をいかんなく発揮できるかと思います。福岡市を中心とした都市圏輸送も私どもの稼ぎ頭ですから、ここは大事にしてきめの細かいダイヤの設定とか、サービスの充実をはかっていくということになります。もう1つは、アジアの人を中心に海外からのお客様が激増しています。『ゆふいんの森』という列車が実は現在、お客様の6割以上がアジアの人です。乗りますと、アジア各国の言葉が飛び交っています。そういうアジアの人を意識すると、観光列車、デザイン&ストーリー列車というのはかなりこれから中心になっていくなと。これも育っていくということで、観光列車、デザイン&ストーリー列車というのは、鹿児島とか、熊本とか、要するに、福岡から離れたところにあります。福岡空港というのは、アジアから入ってくる玄関口ですから、そこから離れたところに楽しい列車が走っている。そこまでの移動も鉄道で行っていただくようになるんですよね。この都市圏輸送、都市間輸送、観光部門の列車、この3つで鉄道事業をきちっと構築していく」
藻谷氏
「お話を伺って思うのは、鉄道は本来、なかなか採算がとれるものではないし、人口減少社会においては成熟産業です。日本以外のほぼ全ての国では公費を投入して道路と同じように基盤は少なくとも公費でやって、上の運行を民営化するとか、そういうやり方をしているし、日本も道路はそうですよね。税金を年間十何兆円も投入して、維持しています。その中で敢えて九州という、本来鉄道利用者が比較的少なかったところで、この鉄道を何とか採算事業に持っていくというのは非常に大変なことです。JR九州さんがこれまで何もされていなかったなら余地はあるのですが、おそらく全国のJRで最もありとあらゆる手段をとってこられた。さらに、駅ビル事業や外国人観光客の増加、これはアップサイドだと思うのですが、JR九州さんが何とかこれを黒字化目指してがんばられるとしても、日本全体で言いますと道路と同じで基盤の部分については鉄道の方が道路より効率的ですから、より面積も小さいわけなので、そこにある程度、道路特別会計などの国の税金も…。ある程度線路の方には道路とイコールフィッティングとよく言うのですが、道路に投じている程度、もしくはそれより少なくとも純粋民間ではなく、ある程度公共インフラにお金を入れ、ローカル線を維持して運行の方は民間会社が効率的にやるというやり方も考えていくべきだと、私は年来思っているんです」

唐池恒二 九州旅客鉄道代表取締役会長の提言:『氣』
唐池氏
「これは昔の氣という漢字ですけれども、中に米という字が入っています。普通はメが入っていますけれども、もともとの古い漢字だと米が入っている。なぜ米が入っているかと言いますと、大地のエネルギーを吸い上げて農産物としてつくり上げられたのが米なんですよね。米には大地のエネルギーのもとが凝縮されているんですよ。だから、氣という言葉を言う時には、中に米を入れるんですね。そこから始まりまして、氣というのは宇宙万物エネルギーのもとだと広辞苑にも書いていますけれども、人間が元気よく活動する時に氣がみなぎっています。あるいは寂しく活動している時、元気がないというのは、氣が薄まっていくんですよね。人間も人生も仕事も、そして町づくりも全て氣を充満させて、満ち溢れさせると、必ずそこには元気が出てくるし、商売だと繁盛するし、町だと賑わうし、企業だと業績が良くなる。氣がもとだと思いますね」

藻谷浩介 日本総合研究所主席研究員の提言:『お客様を掘りおこせ!』
藻谷氏
「日本はよく言われますが、1600兆円の金融資産ですとか、900兆円ぐらいの現預金とか、貯金があると言われています。ところで、日本中のモノの販売を合計してみると140兆円ぐらい。貯金の5分の1から10分の1しか売れていない。逆に言うと貯金している額の1%だけでもモノを買いに行っていただくと、実は、お店の売上げはバブル期を上まわったりするんですよ。ですから、お客様の懐にお金はあるんですよね。ただ、それを企業側が全くとりにいけていない。今日の『ななつ星』の話というのは、九州全体の地域振興ですけれど、コストダウンによる地域振興ではなくて、お客様の懐に眠っているお金を世界中から掘り起こして、地域の良いものを買ってもらって、地域を元気にするというプロジェクトでしたね。ぜひ他の会社も同じようなアップサイドのことができないかを考えていただきたいと思うんですね」