プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2014年9月30日(火)
日中経済復活なるか 訪中団理事長らに問う

ゲスト

林芳正
自由民主党参議院議員 日中友好推進事務局長
岡本巌
日中経済協会理事長
津上俊哉
現代中国研究家
朱健榮
東洋学園大学教授

日中経済の現状と今後 汪副首相との会談
島田キャスター
「先週の水曜日に、岡本さんが理事長を務められ、大企業のトップらでつくっている日中経済協会の訪中団が、北京で汪洋副首相と会談をしました。岡本さんは、実際にその場にいらしたわけですけれど、どんな雰囲気で会談が行われたのですか?」
岡本氏
「訪中団の皆様は、中国の市場というものを引き続き、重視する一方で、中国が幾多の課題に直面をして中国経済の先行きにある種の不安を抱く、あるいは法の支配とか、知的財産権とか、大気汚染とか、中国のビジネスの環境についての懸念というのを、一方で持っていらっしゃるんです。会談におきましては、私ども日中経済協会が毎年、委員会で提言というのをとりまとめているのですが、これを汪洋副総理にお渡ししながら、日本側のこうした期待とか、不安とか、あるいは懸念を率直に述べました。それに対して汪洋副総理からは大幅に会談時間を延長して、非常に丁寧、かつ詳細に日本側の意見に対するお考えというのをお話いただいた。そういう会談でした」
反町キャスター
「汪洋副首相からは具体的に日本の経済団に対して、たとえば、いわゆるチャイナリスクに関してはどう説明があって、中国に対して来てください、経済投資をしてくださいという、そのへんの話にはどのような具体的なお話があったのですか?」
岡本氏
「大きく3点ありました。1つ目は、中国経済の先行きに対してスローダウンするけれども、改革と、若干の刺激策によって今年の成長目標7.5%の達成を、自信を持って示された。いわゆる最近、ニューノーマル、新常態といわれている中速度の成長が持続するということについて、自信を持って語られているのがありました。2つ目は、改革を進める。これは既得権益とか、調整が伴いますので、中国の中でいろんな議論とトライアル、試行を重ねながら、現在改革を着実に進めていく。これからスピードアップするという、そういう意欲のある話。それから、3つ目は、ビジネス環境の改善ということについて、大変詳しい話がありまして、現在、中国は市場機能を重視するという、この一連の改革をやっているんです。そういう中で、たとえて申しますと知財権につきまして中国にとって今や生産年齢人口が減り始めていますので、労働生産性を上げなければいけない。そのためにはイノベーションをやらなくてはいけない。そのためには知財権の保護というのが、中国自身にとっても現在非常に大事になってきている。そのために、知財専門の高等裁判所を、中国もつくるということで、広東、北京、上海ですが、3か所を、まずつくるということで、ちょうど日本が数十年前、東京高裁に知財の専門部を設けましたが、中国が、そういうことに乗り出している。それが1つありまして。それから、法治、ルール・オブ・ローということについて、10月には四中全会、第4回中央委員会全体総会というのを予定されていて、そこでルール・オブ・ローに関して大事な決定をする予定であるということをおっしゃいまして、中国の、いわゆる市場経済を法律で律するということに向けて相当のレベルアップを目指すというお話がありました」

ハイレベル経済対話 再開は
島田キャスター
「今回の会談の中で、日中ハイレベル経済対話の再開について、中国側がそこに触れたのですけれども、これは日中の閣僚が経済分野について意見交換するもので、日本から財務大臣、経済産業大臣、農林水産大臣などの閣僚が参加し、過去3回開催されているのですが、日中関係の悪化を受けて2010年8月を最後に中断しています。今回、汪副首相は会談の中で、日中ハイレベル経済対話の再開については早期に開催できるよう期待していると意欲を見られたわけですね。それに対して菅官房長官も次回会合を早期に開催できることが望ましいと歓迎したというような次第ですが、汪洋副首相に渡された、提言書、これは後ろをみると、中国語でも、中身も同じように書かれている。汪洋さんはたぶん事前にお読みになっているということだったのですが、この中に、日中ハイレベル経済対話の早期再開と、日本側からも言っているんですけれども、ニュアンスとしては、汪洋さんはこれをお読みになって触れたのか。それとも自身がすごく意欲を持っていると言ったのか、どういうニュアンスだったのですか?」
岡本氏
「そこの区別というのは計りかねるところがあるんですが、いずれにしてもサプライズの発言であると思いました。ご案内のように、日中のハイレベル経済対話というのは、政府も、それから、経済界の立場からもかねてから早期に再開するようにということで、中国側に提案をし、要請をし続けている話ですが、そのことについて会談の最後ですが、汪洋副総理の方から前向きなご発言があったものですから、私どもも驚くと同時に、歓迎し、期待をしているところです」
津上氏
「中国は日本との関係改善、政治関係の正常化をとにかく模索をしようと、模索をしていることがはっきりしていると思うんですね。ただ、そのことをもって、首脳会談まで行くなと即断できるかというと、まだそこのところまで、これは間違いなくいきますよと太鼓判を押せるかというと、そこまでいかないのではないのかなと。その場合には、言ってみれば、首脳会談はお預けだけれど、閣僚レベルの交流はやっていいことにしようではないかというところまで、規制緩和というところで今回は終わったということなのかもしれません」
朱教授
「日本側からの、経済界からの要望に対して、中国は真摯に受け止めて答えたと、これが1つのメッセージ。当然今回、日中関係重視、日中首脳会談に期待というところの、前向きの意味もたぶん含まれていると思いますが、ただ、ハイレベル会談というのはすぐということはあり得ないので、やるとしても来年の話なので、これから、首脳会談は首脳会談で詰めていくと。経済界、政府間のいろんな交流、そのものは重視していくと。また、おそらく中国のメッセージがもう1つ、私の理解では、入っていると思うのですが、日本の一部の報道では、現在の中国は完全に日本そのものを軽視している、無視していると。そうではないと。日本政府との、各閣僚との対等の交流も回復する用意があるんだという。もちろん、それはいろんな障害要因を取り除く必要があるんですけれど、日本を重視しているところは変わっていないんだと。そこのメッセージは私は込められていると思います」
島田キャスター
「中国は変わってきたのですか?」
朱教授
「ええ、私は、7月の周永康事件の後、習近平主席は明らかにいろんな新しいことで、これから新しい枠組みを、これから数年間に渡るやり方を、1つずつつくっていると。対米関係でも、南シナ海でも、対日でも、国内の政策でも、これまでの1年半あまりは、言ってみれば、そのための障害、国内の汚職腐敗対策とかをやったわけですけれども、これから建設的な制度づくりの方に向かっていくと思います」

日本の対中直接投資減少のワケ
島田キャスター
「日本の対中直接投資をグラフにしました。この投資額はいったん少し減っているんですけれども、2010年頃からグッと増えてきました。しかし、2013年は減少したわけですけれども、この日本の対中直接投資の半期分、1月から7月の前年同期比を見てみますと、マイナス36.3%。3467億円なんですけれども、こんなにも減っているんです。岡本さんはなぜ現在、対中直接投資がこんなに減っているのか。どのように見ますか?」
岡本氏
「まず1つが、経済的要因として、中国の人件費、それに連動する社会保障費。それから、為替が、人民元は高くなり、円は安くなるという為替レートの変動。そういうビジネスコスト関連の要素と、中国経済の、先ほど申しました先行きに対する一部に不安があるということとか、ビジネス環境という面で、先ほどの法治とか、あるいは知財とか、そういうことを含めたビジネス環境というものの改善に対する現状が自分達のところまでいっていないという、そういう経済要因が1つ目。もう1つは、両国の政治、外交関係というものがかつてなく厳しい状況にありますので、それが影響を与えているという部分も否めないかと思います」
島田キャスター
「もう1つデータがありまして、日本企業、製造業ですが、投資したい国ランキングが国際協力銀行の調べであるのですが、1位がインドネシア、2位がインド、3位がタイで、中国は4位です。5位がベトナムです。この中国の4位。前年は1位だったのが4位に転落したんですけれども、津上さんはこの理由は何だと考えますか?」
津上氏
「2012年に1位だったのが、2013年に4位になっただけではなくて、過去4半世紀、ずっとぶっちぎりで1位だった中国が初めて、突然、4位に滑り落ちたんですね。と言うことで、まずショッキングなニュースだったんですけれども、岡本理事長が言われた通りで、これだけパッと見ると、脊髄反射で、日中関係がこうだからねということが結びつけやすいのですが、必ずしもそうではないんです。人件費の上昇が激しすぎる。やっとのことで雇った、その従業員も半年経つか、経たないかで、辞めていっちゃう人間がたくさんいるとか、販売競争が厳しいとかですね。そういう本当に自分のビジネスの、切実な問題というのが前面に出ているんですよ。政治に対するという不安、あるいは治安の問題、そういうところももちろん、入っていますが、比重から言うと、商売の先行きは、企業にとっての本来のところの方がずっと大きいですね」
反町キャスター
「13億人のマーケットで、車は売れる、衣料は売れる、そのマーケットとしての、売り場としての中国力はいかがですか?」
岡本氏
「その点について、中国のGDPは現在、アメリカ、ヨーロッパの半分強の規模で、かつ、ADB(アジア開発銀行)の予測によっても、今年とか、来年とか、7%台の成長を続けると。アメリカ、ヨーロッパが3%とか、1%とか、そういう成長率の見通しの中、反町さんおっしゃいましたように、中国のドメスティックマーケットの伸びというのは、日本企業にとっても、あるいは欧米企業にとっても、これは皆同じように大事なマーケットとして期待をしています。そこでビジネスをやるということについて先ほど申しましたような一連のビジネス環境の改善というのが進むということになってくれば、輸出志向のビジネスは別ですが、中国の内需を見込んだビジネスというのは十分伸びていく可能性というのはあろうかと思います。今回の訪中団の皆さんも、中国のこれからの経済の先行きに対して汪洋さんをはじめ、お会いした経済関係省庁の幹部からこういうことで改革をやっていくから大丈夫だよという話を聞き、法治なり、知財なり、そういうことを含めた(話を聞いた)。もう1つは、リージョナルな経済連携協定がどんどん進んでいきますから。米中の間で、投資前の内国民待遇とか、ネガティブリスト方式を含む、ビジネス環境をつくるという話もアメリカと中国との間で進んでいますから、そういうものが逐次、我々も同じように進展するというようになってきますので、そういうことを睨みながら、実は、JBIC(国際協力銀行)の調査もそうですが、具体的なビジネスプランを持ちながらの海外投資という点では、なお中国がトップクラスだという。それから、少しロングレンジで見た時のターゲットカントリーとしては、中国は引き続き、インドと並んでトップクラスという、そういうJBICの調査結果でもありますので、中国に対する一連の、冒頭、申しましたようなところの改善が進むなら、その見届けができれば、投資が回復していくという可能性はあろうかと思います」
反町キャスター
「確かに1位から4位は製造業ですよね。たとえば、先ほど言われた、マーケットとしての中国を意識するのであれば、製造業でなくて、いわゆる流通や小売、サービス業の対中進出というのが、これから増えていくのかどうか。業種による濃淡がこれから出てくると。こんな感じでよろしいですか?」
津上氏
「そうですね。業種というよりも個別企業でしょうね。事業がうまくいっている会社、たとえば、個別の会社の名前は出していいかわかりませんけれど、ユニクロというのは現在どんどん店舗展開をしていますよね。これは出せば、その分儲かるからですよね。それから、製造業の方では、自動車はとにかく年間2000万台の新車が売れるマーケットで、世界中どこにもないですから、ここに背を向けて、顔を背けたら自動車のグローバル競争に負けてしまいますからね。そうやって見ると、個別企業としてここは絶対に捨てないと。もっといくという会社があるというのは当然のことだろうと思うんです。ただし、比較の問題でいうと、5年前は『猫も杓子も状態』というのがありましたから、それはなくなってきたのかなと」

中国の対日投資増加のワケ
島田キャスター
「逆に、中国の対日投資について、2008年までは0のところをちょっと上にいくぐらいだったのですが、2009年にマイナス135億円ということであったのですが、これがグッと伸びて2010年に276億円のプラスになって回復。その後、このようになっているんですけれども、2013年には138億円と回復しました」
岡本氏
「中国のヨーロッパに対しての(投資は)毎年100億ドル強、アメリカも年々増えて、最近で50億、60億(ドル)まで増えていっているかとは思いますが、そういうのと比べた場合の日本の数十億円とか、百億円強というのはすごく低いレベルかと思います。ケタが違いますよね。昨年増えたというのは、業種で見ますと非製造業が138億円のうちの111億円ということで、新聞報道も含めて伺うところの、たとえば、メガソーラー発電でありますとか、あるいは不動産の案件であるとか、そういうことが増えているかと思いますが、中国の人達の話を聞いていますと、さらに、これから本腰を入れて増える方向にあるのではないかと思います」
反町キャスター
「アベノミクスの1つの柱として、外資の呼び込みだと一応なっている。法人税を下げるや何やかんやで、外資が日本に来やすくなると、一般に出てくる外資には、中国を排斥する、排除する理由はたぶんないですよね。でも、僕らが普通、中国の日本に対する投資は水源地の土地を買い漁っているとか、そういう怪しい話ばかり、僕らに注目されて、すぐにこういう話になるけれども、日本の経済を考えた時に、中国からの投資をどう見ていますか?」
林議員
「FDI(直接投資)を増やしている中で、当然、どこの国からもいろんなものが入ってきて、活性化することは基本的なことだと思います。ただ、日本のFDIに、少ないのは、競争が厳しすぎてなかなか日本に投資をして、その競争に打ち勝って、収益を上げるというのはなかなか難しいのではないかということと、それから、人口が減っていきますので、市場として、将来、有望かと。先ほどは5番目までに入っていましたけれど、外国に有望だから行くのであって、日本のどのマーケットのどの部分が有望かというところが、まだはっきりしていないというところが、全体として(ある)。そういう意味では、中国というだけではなくて、全体のFDIをどうやって増やしていくかということは、投資家から見てこの分野は有望だと思ってもらうということがまずあって、それで入ってきやすさ、わかりやすさということもあわせてやっていかないといけないということだと思います」
反町キャスター
「そうすると、中国だからという、よくある警戒心を露わにするような対応ではなくて、国債を買ってもいいじゃないか、日本の資産を買ってもいいじゃないか、日本の企業、中小企業をいくら買収してもいいじゃないかと。こういう姿勢で日中関係を進めていくべき要素が現在ここにあると感じますか?」
林議員
「そうです。中国だけを区別する必要が全くないので、たとえば、水源地だったら、そういうものは届出制にする規制は別途やっています。これは中国でなくても、他の国でも同じように必要規制はやるけれども、ちゃんとしたビジネス投資は同じように還元していくことだと思います」

中国の日本市場の見方
島田キャスター
「中国にとっての日本への投資、日本は投資先としてどう映っているんでしょうか?」
朱教授
「私は、その点で現在、中国の対日の風向きが変わっていると感じるものがあります。日本への観光客も今年前半、8割増えた。対日投資というのは、私もいろいろ中国の、また、在日の中国人企業家にいろいろ聞いたのですけれども、東京オリンピックというのが1つのチャンスだと。中国のビジネスマンもそれは見ていると。当然、円安というのが、投資しやすいと思う。もう1つ、実は日本の中でまだ十分に気づいていないことですが、中国は市場が大きいですけれど、中国の企業家から見ていても、日本のせっかく良いものがあっても中国で売れていない。むしろ我々中国企業が、日本企業と組んで、日本の中でつくって中国で売ると。中国人だったら中国市場で売るということのコツをわかっているわけですね。そういうような形のいくつかの話を最近聞きました。あまりにも具体的な話になっちゃうんですけれども、最近は日本から紙おむつですね、中国ですごく売れていて、輸出ですね。そうすると、中国企業も日本で協力して、つくろうと。それ以外に中国市場の現在の問題というのは食品の安全の問題、安心の問題。メイド・イン・ジャパンというのが安心、安全であると」
島田キャスター
「中国の人は、日本のものが意外と好きですよね」
朱教授
「その通りです。これまでは、ただ購入と。現在は、むしろ中国企業も、日本でつくって、あるいは日本の企業と組んでつくって、メイド・イン・ジャパンのものを中国で売ると。こういうことを含めて、本当に政府はこれを、しかし、それをするのは、日本の企業の保守性は正直に言って、地方になると、中国から来るとどうなのかなという部分と、法人税のこともあるのですが、一方で、中国の企業も日本でどうやってうまくやっていくかわからない。経産省はこれまで外国からの投資のために、双方の教育、いろいろなプログラムは用意をしたと思うんですけれども、本当に投資を受け入れるためにも、日本の企業がどう対応すればいいのか。中国企業が日本でどうすればいいのか。そこの教育というのが必要だと思います」

首脳会談開催の可能性
島田キャスター
「先週、岸田外務大臣がニューヨークで王外相と会談しました。これは首脳会談への布石と見ていいのでしょうか?」
林議員
「当然、そこを目指していろんなことをやっていく中の1つということは言ってもいいと思うんですね。先ほどハイレベル経済対話の話がありましたが、見方によっては岸田大臣と王さんの会談があったあと、今度は皆さんが行かれてそんな話が出てきたと。少しずつ階段を昇っている感じはしますけれども、ただ、先ほど津上さんがおっしゃったように、だからと言って普通に階段を一段ずつ昇っていくと自然に頂上に辿り着くというほど、簡単ではないので…。どこかで階段が途切れているということはないと思いますが、上に行くほどだんだん空気が薄くなってきて昇りにくくなるというのはTPPの交渉で甘利大臣がおっしゃったことですが、難しさは上にいくほどあると思います。中国はトップと外務大臣の間が開いていて、政治局員、常務委員とたくさんの方がいらっしゃる。我々が思うほど、そこは近くないということを知っておかなくてはいけない」
朱教授
「この2、3年ずっと日中間でこんなに激しく論争しあった問題をケロリと忘れて、ただ、そこに行くというのはちょっと難しいので、そのための準備というのはまさに階段のところは、やや高い階段はまだ残っているのではないかな。ただ、現在、双方ともその階段を、問題を乗り越えるために真剣に面と向かって交渉しているというのは間違いないと思います」
津上氏
「ぜひ実現してほしいなと願っているんですけれど、7月7日の盧溝橋の記念式典がありました。それから9月3日は、日本が降伏文書に調印した対日抗戦の勝利の69周年。この2つの機会に、習近平自身が日本に触れる重要講話というのをしているわけですね。その語調というのはかなり厳しい。ただし、少し斜に構えてこれを別のアングルから読めないかなと読んでみると1つ気がつくのは、侵略の歴史を否定するというのは、絶対に許さないということ以外は何も言っていない。そこにフォーカスをぐっと絞っているということに気がつくんですよね。これというのは重要なポイントとして認識しといた方がいいと思うんですね。と言うのは、7月というのは特に集団的自衛権の真っ最中だった。これを日本の軍国主義復活のあらわれだとか、アジアへの野望がどうたらこうたらと、そういう言い方で日本を叩く材料にしようと思えば、そういう言い方ができた。だけれども、過去の問題と言っている。9月3日のもう1つの演説の中では、これはある意味つくり話という批判もあるんですけれども、敢えて少数の日本軍国主義者と、それ以外の日本人民というのは別々にすると考えなければと。そういう1972年以来の古いフィクションを敢えて踏襲しているんですね。これは国内的に、中国の中で何も言わなければ、反日世論みたいなのがいろいろあって、突き上げをくっちゃうので、先手必勝で論点をバシッとトップが設定しちゃったと。異論を許さずという格好で、交通整理をサッとやっちゃったということかもしれない。日本に対して1億2000万人全体を敵にまわして何もいいことはない。だから、敵と味方はちゃんと分けるという配慮があるだろう。歴史問題というところ1点に絞っていれば、世界中のほとんどの国は賛同してくれるわけです。それは侵略の歴史を否定するのはよくないということですよね。これは逆に領土を何とかかんとかを言い出すと、下手すると、中国よ、お前が言うな、と言われちゃうかもしれない。いろんな配慮でそういうような対日論調という主席の講話というのは非常に重みのある文章で、はっきりと決めているというのは重要なメッセージだと思う。ただ、それだけに侵略の歴史を否定することは許さないという1点に絞っているだけに、靖国参拝というところは最後のところをあと一歩乗り越える。双方にとって相当ハードルが高いのではないかという気がするんですよ」

関係改善なるか
島田キャスター
「習近平国家主席は今月3日に『侵略の歴史の否認や歪曲、軍国主義の再来を決して許さない。黒いものは1万回言っても白には変わらない』と発言しています。日本の1億2000万人全てが敵ではないよというメッセージがあるとのことですが、いかがですか?」
朱教授
「まさにその通りだと思います。中国で言う二分論というのは、あくまでも99.999%の日本人を敵とはみなしてないということになるんですね。要するに、基本的に全日本人の中で一部中国への侵略の戦争、互いの損害を受けた戦争を否定されたり、戦争を美化したりということは許さない。許さないというのは国内の問題でもあるわけです。中国の中で多くの人にとって日本とのあの戦争は二世代前の話だったと。ただ、ついこの間、中国の東北部で、化学兵器、日本軍がかつて遺棄したものがまた松花江の大きな川の底で見つかった。毒が漏れている。言ってみれば、中国にとって戦争は過去の問題ではなく、まだ現在進行形のものもあるわけですね。この発言というのは、ある意味で、中国国内向けに、我々は過去を忘れていないと。一方で、日本国民に対しては習近平さんの発言では、我々は一度も日本国民を敵と思ったことはないと、9月3日の発言の中で言っているわけですね。それとともに7月7日に前向きな話があまり盛り込まれなかったのですが、9月3日には日中の4つの政治文書を我々も堅守していく。4つの文書の中には日中が互いに脅威とみなさない。未来志向でアジアに共に貢献していく。そういう内容も含めているわけですね。そういう意味で歴史の問題は、中国国内向けに日本の軍国主義、皆さんこれ以上心配しないで、我々政府も責任を持って対応すると。一方、中国国内の一部のドラマが日本人全体を歪曲するような、そういうところに対してはやはりダメと」
反町キャスター
「林さんはいかがですか?中国側の日本に対する見方は?」
林議員
「習近平国家主席がまさに決まるタイミング。胡錦濤さんがまだいらっしゃったタイミングで尖閣の問題が起きてしまったということで、トラウマがあったんだろうなと思います。日本に近いと見られることが、中国国内で実は足を引っ張られる要因になったと。そういうまずいタイミングでああいうことがあったということだったと思いますが、ここへ来て習近平さんの足下が固まってきつつあるのだろうなと。従って、そういうことをあまり気にせずに、未来志向で先輩方が築き上げたベースに乗って、しっかりと経済の事情もありますから、寄っていくということは足下が固まって始める準備ができてきたと見ることではないですかね」

林芳正 自由民主党参議院議員の提言:『大国間の大人の関係』
林議員
「何をすべきかというよりも、考え方なのですが、日中友好から戦略的に互恵関係まで来ましたので、そろそろ大国間の大人の関係。過去のいろんなことを当然知りながら、余裕を持って、お互いもっと子供達が見ているから、あまりみっともないことはやめようというような、ヨーロッパ、アメリカとイギリス、日本とアメリカというような関係にだんだんなっていくというような、そういう心構えでやっていくことが望ましいのではないかと思いますね」

岡本巌 日中経済協会理事長の提言:『善隣互恵』
岡本氏
「日本と中国、本当にお隣同士で、私どもは北京の中でも山東省、中国の中でも日本に一番近い距離にあるところですが、経済の現場を預かっている現場をはじめ、市長さん、皆さんと交流しました。北京にもまして日本との経済交流の回復、拡大ということを先方も強く期待しています。日本の経済界の人達もいろいろなビジネスチャンスがある。たとえば、大気汚染の改善協力や、大きな首都の間でのモデル都市プロジェクトについて今後を要するというようなこともありました。そういうことも含めて大きなwin-winの協力のポテンシャルというのが日中間にあろうかと思います。それを伸ばしていく努力を強めていきたいと思います」

朱建榮 東洋学園大学教授の提言:『経済こそ日中の基礎』
朱教授
「日本と中国はここ2年間、あたかも相手が敵のようにお互い罵りあって、喧嘩の場面が多かったのですが、考えてみれば、日本にとって中国は最大の貿易相手国ですね。ちょっと浮き沈みがあっても全体像は変わっていないわけです。最大のお得意さん、お客さんです。中国にとっても日本から環境技術やいろんなところを学び、さらに、中国にとって現在は製造業等発展の段階から、中進国、半ば進む国から、先進国への脱皮が簡単にできないと思うんです。中国国内大改革。現在、習近平主席が公言しているのですが、そこで日本の多くの経験、さらに、日本の協力も必要だと思うんです。日本にとっても、アベノミクスはまさに日本経済の改善ということで復興を狙っていっている。そういう時にまず中国との関係改善が日本にとっても追い風になるわけですね。そういうようなところで、日中が互いに利益になるような経済関係をもっと大事にして、互いに切れないような関係を確実にしていく。それが一番重要だと思います」

現代中国研究家 津上俊哉氏の提言:『日本も中国も20年、30年後を見据えて日中関係を考えよう』
津上氏
「これは私の持論にかかわるのですが、過去の一時、数年前まで中国の高度経済成長があと10年、甚だしく20年続くということを中国だけでなく世界中が信じた一時があったと思うんですけれども、私は、それはあり得ないことだとずっと言っていました。最近のスローダウンというところで、ほら見ろというのがあるのですが、中国の高成長というのがあまりにも誇張され過ぎたということが、日中関係にすごく大きな影を落としたと思うんです。日本にとっては非常に恐い相手になってしまった。朱先生は、自信がなくなっちゃったと言いましたけれども、ある意味では脅威の存在で見てしまうようになってしまったと思いますし、中国も若干、誇張された未来で自信過剰になり過ぎた部分があると思うんですね。それはある意味では、過去150年間、いじめられ、侵略をされ、という苦難の道というのが前史にあるから、力関係が変わった今こそと反動ぶれみたいなところがあるのですけれども、いずれにしても双方が若干平常心を失っている状況というのは、あったと思うんですね。だけど、冷静に将来を見ると、そんなことをやっている場合かということだと思います。だから、20年、30年先を冷静に見て、何が双方のためになるかというのを考え直した方がいいと思っています」