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2014年9月18日(木)
『地球儀外交』を検証 歴代最多国訪問の狙い

ゲスト

小野寺五典
自由民主党政務調査会長代理 前防衛大臣 衆議院議員
岡本行夫
外交評論家 MITシニアフェロー
西濱徹
第一生命経済研究所主任エコノミスト

“地球儀外交”49か国 安倍政権の狙いと成果
島田キャスター
「歴代総理として最多の49か国ですけれども、1年9か月でまわったということです。どこを回ったのか確認しておきたいと思います。順不同で見ていきますと、アメリカ、カナダ、中南米、オーストラリア、アフリカの方にも行きました。中東諸国、そして、ヨーロッパの主要国。さらにロシア、当然ASEAN諸国とまさにぐるり地球1周で、地球儀外交と言ってもいいと思うんですけれども」
反町キャスター
「たくさんまわるのも、もちろん、それはすごいと思うんですけれども、いくつかの柱がもしあれば、たとえば、アメリカとの関係なのか、独自外交なのか、それとも中国包囲なのか。番組で安倍さんの外交というと、中国の内容を見ているとか、アメリカとの関係だねとか、いろいろ理屈づけをするんですけれど、安倍さんの49か国。岡本さんから見てどういう狙いのもとにいくつかに分類できるものですか?」
岡本氏
「いくつかの柱がおっしゃる通り、あるのでしょうね。それは中国が一生懸命、各国をまわって、しかも、日本に対する反日キャンペーンなんかもやっていますからね。それに対抗するため。それから、中国が現在、勢力を扶植しようとする国を自由主義陣営にとどまらせるための訪問というのもありましょう。それから資源です。オーストラリア、ブラジル、カナダをはじめとしたね。それから、中東諸国を押さえる。そこから、日本の経済の相手国として、安倍さんは大勢の財界人を連れておいでですけれども、日本製品の売り込みをはかるとかね。いろんな柱で区分けできるのではないですか。戦略的には、ASEAN、それから、ミャンマー、スリランカとか、そういったところをきちんと押さえている。個人的にはあとイランと、エジプトに行ってもらいたいかなと思っていますけれど。要するに、中東の中で大きな影響を及ぼすのはイランで、現在ちょうど、イランは新しい大統領のもとで、ロハニ大統領のもとで、アメリカとの関係を修好してこちら側、つまり、テロと対決する自由主義陣営の方にずっと足を踏み出してきている。イランが安全に旧西側諸国との関係を元に戻せば、世界的に随分、安定度が増すと思います。エジプトはもちろん、アラブで最大の政治力を持っていた国ですけれども、これがガタついているので、アラブ全体が、中東全体が弱くなってきている。そこでもう一度、日本が、従来エジプトに対して、非常に大きな経済協力をやってきて、友好国だったんですね。ここのところ、ほとんど行かなくなっちゃっているので、経済協力も落ちて来ているんですね。それも、もう1回テコ入れしてほしいですね」
島田キャスター
「安倍外交の皮切りに、アメリカよりも先に、安倍総理が訪問したのが、ベトナム、タイ、インドネシア。ASEANの3か国だったんですけれども、小野寺さんは、この3か国を最初に選んだという理由、タイミングについてはいかがですか?」
小野寺議員
「時の総理が、初めにどの国に行くかというのは、大変重要なメッセージになります。通常であれば、たとえば、アメリカに行くのが普通。あるいは様々な関係で、たとえば、従前は中国に行った首相もたぶんいるんだと思いますが、今回ベトナムという国を選んだというのは、非常に戦略的だと思います。実は、日本とベトナムはすごく良い関係ができていまして。ベトナムというのは言ってみれば民主主義国であり、現在、経済的な成長が進んでいる国であります。ASEANの中で、ともすれば中国との関係についても非常に微妙な関係の国であります。こういうところを含めて、南シナ海に関係するような国としっかり日本と同じ価値観を持つということは、これは大切なメッセージを持つ、外交的な訪問先だったと思います」

スピード外交と中国の台頭
島田キャスター
「中国の台頭というのを意識されて選ばれたのではないかということで、私達も、そこに注目したのですが。現在、中国を巡る何らかのトラブルなどがある国を色で表したのですが、色のついている国は、安倍総理が訪れた国ですが、中国と境界線を巡って対立している国。港湾整備を進めている国となっているんですけれども、前防衛大臣として小野寺さんは、安倍総理が自ら訪問したことで、この国々から具体的に何らかの外交的な成果というのは得られたと思いますか?」
小野寺議員
「まず防衛協力が大変進んでいる。そして、もう1つ、私どもの共通の価値観というものというのは、決してどこの国を意識するのではなくて、海洋の自由。これをしっかり確保すること。それから、力による現状の変更はあってはならない。この2つのメッセージで、私達は国際的に発信をずっとしてきました。そういう意味では、たとえば、南シナ海に面した国は日本と同じように、例え、領土領海の問題があったとしても、これを力により一方的に変更することはあってはいけない。対話による解決が大事ということで、たとえば海洋警察、日本で言えば、海上保安庁。コーストガードのレベルでありますが、フィリピンやベトナムに様々な支援を、特に、巡視船等の支援を行う。そういうことを行っていますし。それから、日本の生命線。アジアの生命線でもありますが、海洋の航行の自由。この場合には、それぞれインド洋に面している、それぞれの国というのが寄港地を含めて、大変重要なパートナーになります。ですから、そういうところとの関係を結ぶ中で日本の主張というのはあくまでも海洋の自由。これをちゃんと航行の自由を確保するということと、力による一方的な変更はあってはならないというメッセージを持つ、同じ価値観を持つ国をどんどん増やしていくこと。これが安倍外交の基本的なスタンスだと思います」
反町キャスター
「岡本さん、小野寺さんはなかなか露骨に中国包囲網と言わない方ですけれども、中国に対する、安倍外交のこれまでの一手、一手の打ち方。詰み方。まわっている国とか、まさに小野寺さんが言われたみたいに、航行の自由とか、力による現状変更の否定とか、法の支配という、そういう錦の御旗、そういうのを立てながらまわっていくという、これまでの安倍さんの打つ手をどう見ていますか?」
岡本氏
「明らかに、そういう戦略的な意図というのはあるのではないですかね。現在、アジア太平洋地域を見ていますと、大陸アジアと海洋アジア。安全保障の面では、分かれつつあるなという感じがするんですね。大陸アジアと言われているのは中国及びどうしても中国に引っ張られる国々ですね。海洋アジアというのは、それに対して中国の影響力をとにかく最低限にしていこう。どういう国かといえば、日本、台湾、台湾を国というと怒られますけれど、フィリピン、ベトナム、シンガポール、インドネシア、オーストラリア。その背後にアメリカがついているわけですが。そういう国々が非常に、これから、特に、海洋アジアという国々が日本にとって大事になってくるのではないかと思いますね」
反町キャスター
「ここまでわかりやすく中国に対する包囲網をつくり上げた総理というのはいないと思うのですが、こうした安倍政権のやり方について、アメリカは日本のそういう対中アプローチというのをどう見ているのですか?」
岡本氏
「喧嘩はしないでほしいと思っていますね。特に、尖閣がありますから。あんな無人島のおかげで自分達が戦争に巻き込まれるのはかなわんという気は、本音ではあるんでしょう。しかし、だんだん中国の海洋戦略の膨張ということについて懸念を示し始めているのが、第一列島線と言われる、九州、それから、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオを結んだ線ですね。それを越えて、現在中国が太平洋に進出してきている。どこかでまたアメリカと緊張が高まるということで、だから、非常に警戒していますね。日本がそれに対応していくというのは、衝突はしないでほしいけれども、しかし、どこかで日本が毅然とした同盟国として一緒にやってくれないと、中国に対するチェックが効かないという気はあるでしょうね」

外交・安保・経済 安倍外交の成果を検証
島田キャスター
「経済面から見てASEAN諸国に向けた外交をどう評価しますか?」
西濱氏
「外交というと、とかく安全保障だとか、政治の話とか、どうしても前面に出てくるのですが。ただ、安倍政権の要諦は何かというと、アベノミクスと呼ばれる経済政策。これによって、デフレ脱却と安定成長をどう実現するかというところだと思うんですね。国内に対しては確かにいろいろな方策を打たれています。3本の矢と併せて進んでいますが、もう一方の柱として輸出、いわゆる海外の需要をどう取り込むか。その中でも、特に成長している地域とどうつながっていくのかというのは重要な課題になってくる。その中で、中国との関係が昨今悪くなっている中で、次の世界経済の成長センターとして注目されるASEANとの関係をどう深めていくのかというようなところ。特に、ASEANについては、来年、ASEAN共同体という形で、1つの経済地域として統合をしていくという動きもあります。そこに対して日本がどう貢献できるのかというところが非常に重要な要素になってくるかと思います。実は、日本から海外への直接投資といった中で、中国向けとASEAN向けの推移を示したものがあるのですが、中国との関係が悪くなる中で、非常に中国向けというのは減速している。その一方で、非常にASEAN向けというのは、右肩上がりで増えてきているというところです。しかも、ASEANと中国。経済規模で見ると、米ドルべースで見れば、ASEAN10か国をあわせても中国の4分の1程度です。にもかかわらず、これだけ急速に増えてきている。昨年については、とある銀行による地元の銀行の買収という大きな要件がありますので、かなり膨らんでいる部分はありますが、それにしても右肩上がりに増えてきているというのは、経済関係をいかに強化していくのか。そのためにも首脳外交が必要だねという姿勢を前面に押し出していると言えるのではないかと思っています」

中国にらむASEAN諸国
反町キャスター
「政治的な日中間のしこりとか対立とか、抜きにするならば、安倍政権がデフレ脱却と経済成長だけに特化して、政治、政策、政権運営をするならば、こういう形ではなくて、中国に対する直接投資がもっと増えてもいいのではないかということにはならないのですか?」
西濱氏
「中国に関していうと、景気がどうなっているか。実際難しくなってきているという話があります。もう1つは、生産年齢人口、既に減少局面に達しているというようなところですので、中国経済は確かにある程度高い経済成長をする地の力はありますが、頭打ちしつつあるというところ。一方で、ASEANに関していうと、中国、インドで13億人、12億人とそれぞれ人口がいますが、ASEANの10か国トータルで6億人を越えています。しかも、中長期的には安定して人口が増加する。市場として捉えられるという関係にあります。そういう意味で、中国がなかなか難しくなる中で、その先を見据えていきましょう。また、日本の場合には、特に、TPPだとか、RCEP。いろいろないわゆる貿易の取組みを行っていますが。その中でも、実は中心にASEANがあるという関係にあります。ここを突破口にして、それぞれいろんな交渉を進めていこうということも考えられるのではないかと思います」
反町キャスター
「そうすると、直接投資がASEANの方が伸びているというこの話は、ただ単に日中関係が政治的に冷えているからということではなくて、地域的な経済成長の伸びしろを見ても自然の流れであるということでよろしいのですか?」
西濱氏
「中長期で見て、伸びしろが大きいところを狙っていると言えるかと思います」

ウクライナ問題と日露関係
島田キャスター
「安倍総理大臣は49か国の外遊の中で、何度か同じ国を訪れています。そのうち、3回訪れている国があります。それがロシアですね。2013年4月に初めて行きました。モスクワで日露首脳会談を行いまして、プーチン大統領と会いました。その中で、これからも外交、経済面など幅広く日露関係を発展させていくと共同声明を発表しました。そして、同じ年の9月にはG20 がありました。ここではアベノミクスの金融緩和策などへの理解を各国に求めました。2014年の2月、3回目の訪問では、ソチオリンピックの開会式。この時は同性愛者を巡る人権問題や相次ぐ爆破テロなどで治安情勢の悪化から、欧米諸国の首脳陣がソチ五輪の開会式を欠席する中で、安倍総理が訪問しています」
反町キャスター
「プーチン、安倍の関係を、お互いのそれぞれの思惑も含め、どう見ていますか?」
岡本氏
「ロシアは歴史的に西の方、つまり、ヨーロッパに行こうとしている。結局、NATO諸国から拒絶されたわけですね。それで現在、東の方へ来て、海洋国家としての自分達の活路を求めていると。日本は北方領土問題を前進させなければいけないし、ちょうど良いスタート地点にあったんですね。プーチンさんは、大統領にもう1回なる前ですけれども、もう1度北方領土交渉を始めようというメッセージを『勝者も敗者もない、よーい、始め』と言って、始めようということまで言って、こちら側も、何か窓が開くかなと思ったので、大変残念ですね。日本はどういう対応をとるかと。ロシアをとるのか、アメリカをとるのか。それはもちろん、アメリカですからね。ウクライナ問題に対して、毅然とした対処をします。制裁にも参加します。そうすると、ロシアだってそんな日本だったらいいよと。また、中国がその隙を突いて、ロシアと関係を密にしようとする。そういう中で安倍外交は非常にロシアとの関係で動きづらくなっちゃったんですね」
反町キャスター
「ただ、たとえば、最近ラブロフ外務大臣とか、プーチン大統領が発言したとされる、ないしは前回、今回、森さんがモスクワに行かれて、プーチン大統領と会った件なんかも、いろんなこんな話、あんな話と聞いていると、ロシアの日本に対する思いというのは非常に強いものがあるのではないかと思ってしまうんです。これはただ単に、いわゆる西側の制裁で連名、きちんと連合を組んでいる日本から崩そうという、そういう政治的、戦略的な思いなのか。ないしは日露そのものに対する思いが未だにプーチン大統領は強いのか。どういうふうにロシアの日本に対するシグナルを受け止めたらいいのですか?」
岡本氏
「ロシアは、日本が太平洋に入っていくための一番大事な切符というか、まずは日本というところ、中国との間では、どんどんと中国人がウラル山脈の東側に入ってきて、もともとそこには900万人しかロシア人がいないところでも、100万人を超える中国人が入って来ている。中国と手を結んでということにはなかなかならないです。日本もきついのは、ウクライナ問題の出口がどこにあるのか。日本がいくら、夢中になってやったって、ロシアに影響力を与えることもできるわけもないし。それはアメリカとの関係、それから、ヨーロッパとの関係でも制裁はいいですけれども、それはドイツをはじめとするヨーロッパの国々がきちんとロシアとやってくれて、それでこんなことを言うと怒られるけれども、クリミアはしょうがない、諦めるかと。だけれど、ウクライナの東部2州に、さらにちょっかいを出すのなら、これは断固としてことをやるぞと。軍事顧問団もウクライナにもっと送るというようなことで、プーチン大統領を完全にウクライナから引かすということは、ヨーロッパとアメリカがやってくれないと、日本は身動きがとれないですね。だから、日本もそういう意味ではとばっちりを受けているんですね」
島田キャスター
「日本がロシアに対して、経済制裁をこれまで3回ほどしてきているということですけれども、こういったことというのはロシアにダメージを与えているのですか?」
西濱氏
「これ自体がどうかというと、日本そのものが行っていることによる直接な影響というのはそんなにないのだろうと思います」
島田キャスター
「これで、お付き合い程度でちょっと日本も制裁はするけれど、そんなにダメージがないようにしているというメッセージは伝わってはいる?」
西濱氏
「そうだと思うんですね。ただ、欧米が行っていること。特に資金の移動が規制されるとなりますと、特に、ロシアの場合は国内の金融機関が非常に能力が低いですので、はっきり言うと、ほとんどの民間企業が欧米、欧州や米国の金融機関から資金調達をして、事業をまわしているという状態ですね。それがまわらなくなってしまうということがあります。非常にそういう意味では、景気の面で悪影響が出てくることがあります。もう1つ、モノがやってこないということになってくると、消費財の大半は欧州からの輸入に依存していますので、物価が上がってしまう。さらに、資金が入ってこないことによって通貨、ルーブルが安くなりますので、最初のところで、円安が実は、という話がありましたけど、それが輪をかける形に、実はロシア国内ではインフレが懸念されているところがありますので。ただ、問題はウクライナ問題に関すると、プーチンさんが拳を挙げたのはいいけれども、どこに落としどころがあるのかというのが見えてこない。挙げてしまって、実は国内の支持率が高まってしまっているというのがありますよね。はっきり言うとこれで落としどころを間違ってしまうと、おそらく最後のところは、プーチンさんの足場さえも危うくなってしまう可能性がありますので、そこがプーチンさんとしては非常に苦悩なのかなと感じます」
島田キャスター
「まだ拳を挙げたままでいるプーチンさんのロシアに、欧米が、さらに、経済的に追加制裁をしようとしている中で、日本もこれまではこういった一応お付き合いをしている制裁だったのですが、近いうちに、金融分野での制裁を強化する。新たな追加措置を欧米との足並みを揃えてやる可能性も出てきたと。これはロシアにとって、強烈なダメージになるのでしょうか?」
西濱氏
「悪影響がじわじわと出てくることは避けられないのかなと思いますね。ただ、問題は制裁をいろいろと欧米も行っていますが、たとえば、ロシアの国内において、欧米の資源メジャーが全く活動をしていないかというと、そこは実は粛々と行っている。日本にとってロシアというのはエネルギー安全保障の観点からいうととても重要なパートナーですから、そこはおそらく表面的にいろいろやっていることと、あくまでも裏でいろいろと手を結ぶよねということはたぶん別のラインで考えていていいのではないかと思います。ですので、そこは確かにお付き合いはしながら、ただ、首脳外交、確かに直接会うというのは難しいでしょうが、ただし、電話会談などいろいろな形でたぶんつながりというのは出てきますし、そこはちゃんと意図をきちんとつないでおくということが、今後も必要になってくるのではないかなと思います」
小野寺議員
「基本的にウクライナの問題というのは、言ってみれば、力による一方的な現状の変更ということになります。もし日本として正確なメッセージを出さなければ、私どもが、たとえば、南シナ海や東シナ海で言っていること。これと、国際社会に対しての発言が矛盾をしてしまう。これは国際社会から見た時に、日本の考え方についてちょっとクエスチョンが出たら困ると。大切なのは、私どもの前提を出した場合には、基本的にはウクライナの問題というのは、これにロシア側がもし関与したのであれば、力による一方的な現状の変更ということになるのではないか。このことに毅然として対応しなければ、今度は逆に東シナ海、尖閣を巡る問題でも、南シナ海での問題でも、日本の発言や日本の考え方というのが国際社会の中で力を持たなくなってしまう。こういう悩ましいところがあるところで、現在、安倍外交は懸命に努力をしていると思います」

安倍外交の狙いと課題 TPP交渉の行方は
島田キャスター
「TPPの根まわし外交を総理自らがしている。その効果は?」
西濱氏
「全ての国が合意をしないと成立しない話ですから、そういった意味では先進国の立場、新興国の立場、それぞれあると思うのですが、日本も当然ながらどこが譲れて、どこが譲れないのかというラインがあろうかと思います。そこをきちんと前さばきをする。ただし、最終的に日本企業としてもそれぞれの地域に行って商売をしなければいけませんので、最低限守ってもらわなければいけないルールがありますよね。これはおそらく先進国側の論理になっていくと思うんですけれど、そこはアメリカとギッチリ握りますよと。ただし、その一方で、日本も当然農業だとか、いろいろな問題を抱えています。そこに対して同じような意識を持った国々とまずはちゃんと前さばきをして、ここまでは譲れるよということをそれぞれが握手をしあうことによって最終的な平場の議論にきちんと持っていけるというのは、安倍さんが直接行かれる大きな意味なのではと見ています」
反町キャスター
「小国とでっかいアメリカの中で、日本の果たすべき役割とは何なのか。日本のポジションは?」
岡本氏
「日本は遅れて入りましたので、キャッチアップと言うか、追いつくのに非常に精力を使ってきた。でもほぼ追いついているわけですから、これからは何と言ってもTPPがまとまることは、日本にとって得なことですからね。関税水準だって日本とアメリカが一番少ないですからね。工業製品の関税率からいくと。と言うことは皆ゼロにするということですから、相手のもっと高い関税水準がなくなるということですから、日本は相手の国の農産物などが入ってくるというところばかりに目を向けて、反対論もありますけれども、そうではなくて日本の農産品が出ていく。その意味では、非常にいいことですよね。難しいのはこれまでのDoha roundにしても、ウルグアイランドにしても、WTOとか、GATTとか、行事役がいたわけですよね。今度はいないですね、事務局が。結局、個別に参加国が全員で結ばなければいかんというそこが難しい。だから、そこで一番旗を振れる立場にあるんですね、日本は。もちろん、一番に農産物の問題がありますけれども、日本の農業というのも徹底的に守らなければいけない。ただ、守るのはこれまでのように関税ではなく、今度は補助金で守るという制度に移行するわけですから、財政的には思い切ったものをつけて、日本の農業だって競争力がある分野はたくさんあるわけですし、日本の農業は放置すれば現在はもう農業従事者の平均年齢が67歳ぐらいになっちゃって、どんどん悪くなってくるわけです。ですから、このTPPをいい機会と捉えて、政府からお金をとって、構造改革をして、とにかく農業を守りながら、TPP全体をまとめるという旗振り役を日本はぜひやるべきだと思いますね」
小野寺議員
「TPPのアメリカ以外の国がどう見ているかということですが、実は日本の背中を見ています。日本がアメリカに対してきちっと言ってくれるかどうか。アメリカに対してモノを言える日本、そういうことをじっと見ています。日本はそれに対して、一生懸命やっています。それから、これだけの国をまわる1つの理由は最後に入った、遅れてきた日本ですが、現在はフロントランナーに出ています。安倍総理の外交が大きくなっています。さらに、大切なのは、今後もし実際にTPPが動いた時に日本は経済的利益をとる必要があります。当然、それは黙っていてもとれるわけではないので、トップ外交として、あるいは経済外交として経済ミッションを既に見ていただいて、この国とTPPがなった時に何が日本はとれるのか。それをトップセールスの中で実感することが大切だと思います。農業の問題についてですが、かなりの部分は交渉が積み上がっているという報告を私どもは受けています。日本として守るべきところはしっかり守るということ。これはある程度腹に据えて交渉してもらっていると思います。ただし、どうしても競争力が必要な部分も出てきますので、そこをどうこれから強化していくかだと思います」

地球儀外交を検証 安倍政権の狙いと成果は
島田キャスター
「資源・エネルギーを持っている国への外交をどう見ていますか?」
西濱氏
「日本にとってエネルギーというのは、経済の生命線になります。目下のところは原子力発電。これを稼働するか、できないかという非常に難しいところに立っていますが、そうなった時に原油、天然ガスが安定的に入ってこないと日本の経済は立ち行かなくなります。そういった意味では、万遍なく行く。ロシアも含めて、非常に調達先の多様化をはかりながら、ちゃんとバランスをとれるような形にしていくのが望ましいと思います。もう1つ、資源国側にもメリットがあるんですよというのが重要だと思います。資源国側はどうしても経済を資源に依存している。その先がないということをそれぞれの国が認識しています。特に、中東の国々は、資源プラスアルファで新たな産業を育成していかないと厳しいと思います。日本の強みと言うのは何かと言うと、技術があります。資源国側としては、資源プラス新たな産業が醸成されていく。そういった意味ではwin-winの関係を資源国との間で築いていけるのが重要な要素になってくると思います」
反町キャスター
「ジプチとか、エチオピアは石油が出ませんが、訪問する理由は?」
岡本氏
「ジプチは海賊対策で日本の海上自衛隊、航空自衛隊が出ていますので、そこへ日本の総理大臣が行く。そこで勤務している自衛隊員の士気のためにも大事なことですね。エチオピアは現在、アフリカの政治的な中心になりつつある。アフリカ連合の本部もありますし、それは資源外交と別の目的で訪問している」
小野寺議員
「ジプチはすごく重要な港で、ここから現在アフリカへ様々な物資の輸送を、日本も実は拠点を置いているのですが、アメリカもフランスもそうですが、最近中国が目をつけていまして、先般ジプチに行って驚いたのが、ジプチの港に中国がアドバイスして株式会社化して、港の株のかなりの部分を中国政府が持っているんです」
反町キャスター
「日本が使えなくなる可能性があるということですか?」
小野寺議員
「それをきちっと対応しなければいけないということで、現在、外交的な力で、アメリカも含め、ここまで中国に逆に言えば港湾を抑えられてしまうと、アフリカへの大切な窓口が抑えられてしまう。これはまだ多くの日本の方は知らないと思います。外務省にも知っている方は少ないと思うのですが。既にこの港も中国が手をつけている。ですから、はやく日本の外交の中で、この国に対して日本が明確な関係を結ぶことが大事ですし、総理が行ったことは大変重要なことだと思います」
反町キャスター
「行く先々で中国がいる。どうしたらいいのでしょうか?」
小野寺議員
「ぜひ知っていただきたいのは、なぜこの1年9か月の間に総理がこれだけまわっているのか、これは日本外交が失われた何年もあって、その間に中国はずっと手を打ってきたわけです。それを現在から挽回して取り戻すということで、懸命になって、体を気遣うこともなく必死になってまわっていらっしゃいます。失われたこれまでのところをはやくまず追いつくということ。決してそこでバッティングしたから、中国との関係が悪くなるというわけではなくて、既に向こうは手を打ってずっときているわけです。日本がエネルギーの輸入国であっても、失われた何年の間に既に中国の首脳は何度もそこに行っていて、日本が長年築き上げてきた関係をむしろ違う方向にいってしまう可能性もある。ですから、そこをもう一度巻き戻すためにこれだけ短い間に一生懸命まわっているというのが、私は現実だと思います」

安倍外交の課題と展望 中国・韓国との今後は
島田キャスター
「冷え切った日中関係を今後どうして行くべきなのでしょうか?」
小野寺議員
「安倍総理は中国の首脳と何度もちゃんとした会談を行いたいとこちらからメッセージは出しています。私も中国の国防大臣と立ち話をすることはしますが、向こうは正式にお願いしても会談をしてくれない。そういうことがあります。常に言われるのが、日本が初めにあらためるべきだと。これは、尖閣は日本の領土ですが、そのことについて領土問題があるということを認めれば、中国は話し合いをしますよということなので、私どもとしては、これは絶対に譲れない。ですから、私どもとしては問題があったとしても話し合うのが普通でしょうと。日本がこれを譲らなければ話し合いをしませんよというのはおかしいのではないか。ずっとこのスタンスできています」
島田キャスター
「ずっとそのスタンスでいくとどうしても平行線になりますよね。国連総会や、APECがあります。この機会を何とか利用して何とかならないかとも思うのですが」
小野寺議員
「何とか行く方向に向かっているのは、実は直接話をするためには、まさか日本の領土問題について中国に配慮するなんてことはあり得ませんから。ですが、中国が日本に対して対話のチャネルをつくる雰囲気をつくるとすれば、中国以外の国から、そろそろ日中の関係をちゃんとやってくれよと、大事じゃないかと、国際社会のいろんな声がどんどん高まる中で、中国も今回、たとえば、APECはホスト国になりますから、ホスト国で通常来た首脳と会談するのは国際的なマナーになります。そういう中で、何かの形ができないか。そういうことで日本も努力していますし、中国も歩み寄ってくれる。私どもはそれを期待しています」
岡本氏
「習近平主席が国内の基盤をかためるまでは、日本に対して甘い顔はできないということがあった。しかし、彼は、薄熙来という人を粛正し、徐才厚という人を粛正し、周永康を粛正して、さらにターゲットがあるのかという問題が別にありますけども、徐々に権力基盤をかためつつある。そうすると、権力基盤がグラグラしている時は、あいつは日本に甘い顔をしているぞと常に攻撃される原因になっているんですね。だから、かたいことしか言えなかった。尖閣でも何でも妥協は全くできない。妥協というか、譲歩ですね。自信を持ってくれば、もう少し日本とさすがにこれはマズいということで向きあってくる」

小野寺五典 自由民主党政務調査会長代理の提言:『外交力=安定政権』
小野寺議員
「外交力というのは、政権が安定して初めて力ができるものだと思います。北朝鮮が様々な関係を回復してきた。その理由は実は日本の安倍政権の足下をずっと見ていました。半年経って、これは支持率が高いな。こう思うと日本と話し合おう。実は外交で重要なのは国内の政治を安定させること。ですから、消費税の問題を含め、今回の円安の問題でも、経済的な厳しさを含めて、政権安定が外交力の一番のポイントだと思います」

外交評論家 岡本行夫氏の提言:『開放性のある国家を目指せ』
岡本氏
「現在の世界というのは、いろいろな才能とか、技術とか、優れたものを持ち寄って水平線を切り開いていく。安倍外交が非常に良いところまで日本を持ってきていますけれども、国家として一番まだ足りないのは、世界中の良いものを取り入れるためにオープンではない。その開放性を目指す国家。それを、外交を通じて実現してもらいたいです」

西濱徹 第一生命経済研究所主任エコノミストの提言:『ビジネス』
西濱氏
「当然ながら、外交には安全保障だとか、いろんな側面がありますが、安倍政権が安定政権であるための、最大の要件は経済をいかに立て直すか。外交を使って、どう飯を食っていくんだということをもう一段全面に押し出した形で進めていっていただければ、非常に良いものになっていくのではないかと考えています」