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2014年9月12日(金)
デングそしてエボラ 日本の弱点と対応策は

ゲスト

岡部信彦
川崎市健康安全研究所長
押谷仁
東北大学大学院医学系研究科教授

国内感染者増えるデング熱 現状と背景をどう見る
佐々木キャスター
「およそ70年ぶりに国内での感染が確認されたデング熱なのですが、あらためて特徴を確認しておきましょう。潜伏期間は短くて2日、長くても15日。多くは3日から7日と言われています。症状は発熱、発疹、筋肉痛、関節痛。いずれも1週間程度で回復するということですね。主な流行地域は東南アジア、南アジア、中南米、アフリカなどで、治療法に関しましては、現在のところ、重症化は防げるのですが、病気を完全に治すことを目的に行う根治療法はないということですね。現在までに国内感染の方がどのぐらい広がっているかと言いますと、1人目の国内感染が確認されたのは、先月26日です。それ以来、東京都で70人の感染者を出しているのをはじめ、全国17都道府県で114人と感染者が増えてきています。岡部さんは今回、一番注目されるのは、海外に行っていない、渡航歴がない人が日本国内で感染しているということですけれども、どういう経路で感染したと考えられますか?」
岡部氏
「デング熱というのは、人から人へ直接うつるわけではなくて、そこに蚊が介在するわけですね。媒介する。そうすると、ある病気の人がいて、そこに蚊がいて、別の人を刺した蚊がこちらの方に、別の人を刺してしまうというところで発症するので、感染の患者さんが、新たに見つかっているというのは、もとの、おそらく病気になっている人が複数いて、たくさんの蚊がそのウイルスを持って、いろんな人に刺しているということだと思いますね。ただ、刺した人が全部、発病するわけではないので、見つかっているのは、その中で症状が明らかになった人ということになると思います」
反町キャスター
「経路というのは蚊だけなのですか、感染経路は?」
岡部氏
「たとえば、血液に直接触れた場合ですね。たとえば、僕が現在、デング熱であって熱が出ていると。それでその血液を直接触ったような場合は、蚊が媒介しなくてもうつる可能性はあると思うんですね」
佐々木キャスター
「たとえば、輸血とか、そういうことですか?」
岡部氏
「そうですね」
反町キャスター
「最初、代々木公園、そこだけではないかというのがどんどんいろんな公園に広がっていっていますよね。これは、どう見ていったらいいのですか?」
岡部氏
「1つは、そこに人がいなくてはいけないので、ある人がここにいて、たぶん外国から来て発病した人がここにいて。でも、それは非常に人数が少ないので、密集しているところに蚊がいて人がいれば、そこから広がって複数の人が持つことがあると思うんですね。人は動きますから。そうすると、他のところに行ったところでまた別の蚊に刺されるとかですね。蚊の移動範囲というのは、そんなに広くはないけれども、人は広いですからね。ですから、主に動かすのは人だと思うんですね」
反町キャスター
「蚊から蚊への伝染、ないしは卵とか、遺伝。蚊の中の遺伝というのですか。よくわからないですけれど、それは?」
岡部氏
「蚊から蚊にうつるということは、まずないと言われているし、それから、実験的には、卵にウイルスがいるとか、そういうことは実験的に極めて少数の報告はあるけども、自然界において蚊の卵にウイルスがいて、その卵が孵化して、次世代の蚊にウイルスがいくということは一応ないということになっています」
押谷教授
「デングが大きな流行を繰り返しているような国では、ネッタイシマカカが割と中心になって、デングを媒介している。これに対して現在おそらく日本ではネッタイシマカカではなくて、ヒトスジシマカカが媒介しているだろうと、日本にネッタイシマカカは、常駐はしていませんので、そういう意味で、そんなに東南アジアとか、他の熱帯地域で起きているようなことは、日本で起きているというわけではないと」
反町キャスター
「重症型になるためのトリガーみたいなものはあるのですか。そうなると、単なるデング熱で済まなくて、重症型に変異する何か引き金みたいなものはあるわけですか?」
岡部氏
「特別なウイルスに関わるのではないんですけれども、いろんな理論的なことがあって証明されていないのですが、一番多く言われているのは、デング熱はⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳとタイプが4つあるわけですね、ウイルスの。たとえば、現在日本で見つかっているのはⅠ型ですけれども、東南アジアではⅡ型、Ⅲ型というのも見つかっている。このⅠ型にかかった人は、これで免疫ができるわけですね」
反町キャスター
「2回同じⅠ型の蚊に刺されても大丈夫?」
岡部氏
「防げるだろうと。そこでⅡ型の感染をすぐに受けなくても何年か経って感染を受けた時に、たぶんⅠ型の免疫が逆に悪さをしてしまって、逆にカウンターパンチみたいにバーンとやっつけるということになって、症状が強く出てくる、これがデングの出血熱型の仕組みで、あるいはデングショックというような病態が引き起こされるのではないかというような説があります」

デング熱 その正体と今後のリスク
反町キャスター
「昨年までは国内の分という数字で表をつくらざるを得ないデータしかなかったんですね。これはどう見たらいいのですか?」
押谷教授
「海外で感染して、日本で発症したという人がこういう形で100人以上、毎年、感染者が出ていたわけです。ただ、日本で感染した人というのはこれまで調べてなかったわけですね。海外に、東南アジアとかに行って、日本で熱が出ればデングを調べてみようかということになりますけれど、一応、日本ではデングはないと一般的に考えられていたので、日本国内にしかいなくて海外旅行も行かずに、そういう熱が出たという人は調べてなかったということは(ある)」
反町キャスター
「推測ですよ、推測で言うと、13年も14年も同じぐらい、12年、13年、14年と同じぐらいの高さがあることを考えると、だいたい同じ、このぐらいの割合で国内感染、海外感染の疑いがあったのではないかという想像があっていいものですか?」
押谷教授
「ここに出ているデータは海外の渡航歴、海外に行ったということがはっきりしていて、おそらく海外で感染しただろうと考えられる人達の数です」
岡部氏
「もう1つで、今年の14年というのは…まだ現在の数字、途中ですよね。13年は、12年は1年間全部が…」
反町キャスター
「最終的に全部足して伸びる可能性がありますね」
岡部氏
「ありますよね。そのうちに、これまでの渡航者数、渡航した人で感染した人は一定数だけれど、それを上回って国内での感染者が見つかったというグラフにはなる可能性はあると思うんですね」
反町キャスター
「その意味でいうと、今年の年末ないし、年度ごとに切っているのかな。年度ごとにやっているとしたら、来年の3月までですか」
岡部氏
「ごめんなさい、これは年ごとです」
反町キャスター
「今年の12月までの分でやった時に、もしかしたら日本の今年の数字というのは大きくなる可能性は十分あるわけですか?」
岡部氏
「十分ありますね」
反町キャスター
「そうすると、今年はデング熱が日本で劇的に広がった年という、最初の年だと、こんな位置づけになってくるのですか?」
岡部氏
「患者数が見つかったということでは大きい数になると思うんですよ。これまで、たとえば、検査をするきっかけになるのは、自分は熱が出て目が痛いけれども、どこにも(海外に)行ったことがないというとデング熱とか、マラリアとかの検査もまずやらないですよね。お金もかかる。しかも、その検査、健康保険や何かでできないから、そうすると、医者が持ち出すか、あるいは患者さんにいっぱい検査代を払ってもらうかしなければいけないというと、やらないですよね」
反町キャスター
「わかったところで特効薬があるわけではない?」
岡部氏
「治っちゃう。特効薬がないけれど、治っちゃう」
反町キャスター
「デングかもしれないと思って検査したところで、結果が出た時には、治っている可能性は高いし、そもそも特効薬もないと考えると番組で扱っておいて何ですが、あまり騒がない方がいい?」
岡部氏
「患者さんの側からすれば、知らない病気が出てきてビックリしているかもしれないけれども」
反町キャスター
「そうです。名前もおどろおどろしいではないですか?」
岡部氏
「ただ、病気というものを冷静に見た場合は、この病気は基本的に自然に治ってしまう病気なので、それはそんなに心配する必要はないと思うんですよね。でも、ただ、現在、その不明の熱が、原因不明の熱が出ちゃった。でも、治っちゃたんだよというだけの話ではなくて、いや、これはそういう病気であって、心配ないと言われたとかですね。あるいは治療の場合でも、これはアスピリンを使うと出血しやすくなるというのがあるんだけれども、アスピリンというよく使われている薬は使わない方がいいですよとか、それでポジティブに捉えるならば、病気の原因がよくわかってきて新たに検査をすれば、不明の熱と区別ができる。その中には違う病気のこともあるので、その場合はちゃんと治療をするとか、そういう意味ではかえって良いことではないかと思いますけれども」

国境を越える感染症リスク
佐々木キャスター
「国内感染が広がるデング熱への日本のこれまでの対応についてですが、岡部さん、まず日本がやったことというのは発生源と思われる現場の公園を封鎖して、一部、殺虫剤を散布するというような方法を取りましたが、これは感染拡大を防ぐためにどれほど有効な手立てだったと思われますか?」
岡部氏
「運ぶのが蚊だとすれば、この密度を下げるという意味では有効だと思うんですよね。ただ、なかなか蚊の対策というのが難しくて、たとえば、デング熱が流行しているきれいな国といわれるシンガポールでは、あるいは東南アジアの国々でも発生が多くなると消毒をやっているんですけれども、それは一時的に蚊を減らして、患者数をちょっと減らすことができるけれど、結局繰り返しになるので、ボウフラ退治を徹底的にやるというのは実はなかなか難しいことだと思うんです。たとえば、私のいる川崎市では、ポイントで蚊の調査というのは十何年もやっているんですね。その間、ネッタイシマカという別のデング熱を運ぶ蚊はいないし、それから、採れているヒトスジシマカで、デング熱というウイルスを持っている蚊はいないとか、ということは調査されて、川崎市だけではなくて、あっちこっちでやっているんですよね。ですから、広範に、現在の段階でやるというのは、もしやれば、それはそれなりにいいかもしれないけれども、その人と恐怖感と実効性から言うとやってもしょうがない」
佐々木キャスター
「現在、感染を媒介しているヒトスジシマカは冬は越せないと聞いていますので、現在は広がっていますけれども、秋までには収束すると思っていいですか?」
押谷教授
「はい。いったんは収束すると思います。ただ、来年、また同じようなことが起こる可能性は十分あると。だから、起きたからと言って先ほどから出ているように、すぐ日本で大流行になるかというと、来年はもっと大きな流行になって、東南アジアで起きているようなことになるかというと、それはならないですし、日本で重症化するような、先ほど岡部先生が説明されたような形の重症患者が出る可能性は非常に低いと思います」
岡部氏
「同じ現象が出た時に、現在みたいな騒ぎにならずに、患者さんへの対応であるとか、あるいは検査方法であるとか、あるものはあるということを前提に対応を取る必要があると思うんです。一般の方も重症になった場合は、治療方法がないと言っても、たとえば、血が少なくなって血小板減少となった時の治療ができるし、それから、点滴のやり方、補液ですね。点滴の中の成分を変えることによって、血管の透過性を変更するという、ショック症状の段階に対しては、原因が何であれ、治療はできるわけです。そういう意味では、救命率は非常にいいと思うんですね。病気があることが前提だけれど、リスクを減らすということではデング熱という病気はたいしたことがない病気だから、そういう意味で良かったけれども、こういったものをきっかけにして、もう一度環境を整えるとか、それから、新しい病気が出た時の対応であるとか。そのためには、常に病気を知るという、あるいは治療法の工夫とか、そういった研究に対してもっと力を注いでいく必要があると思うんですね。これはデング熱ではなくて、他の病気だってくる可能性はあるわけですよ」

深刻化するエボラ出血熱 なぜ止まらぬ?感染拡大
佐々木キャスター
「西アフリカで感染拡大が深刻になっているエボラ出血熱について。まず現在までの感染の状況を確認しておきましょう。今年3月にギニアで、エボラ出血熱の発生が確認されて以来、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネを中心に広まり、WHO(世界保健機関)の調べによりますと今月6日までに感染者は4293人です。そして、感染者の半分以上の2296人が亡くなっていると。非常に致死性が高いことがわかります。そんな中で、先月28日。WHOは、エボラ出血熱の今後の見通しについてこのような予測をしています。今後2万人を超えて、感染国もさらに増える可能性があるということですね。まず基本的なところから教えていただきたいのですが、エボラ出血熱はデング熱に比べて、何がどう危険な病気なのでしょうか?」
岡部氏
「危険度から言えば、いったん感染した場合の致死率が非常に高いですね。それから、一方では感染が広がりやすいかというと、デング熱は蚊を介して人の中で、人から蚊、蚊から人へと広がっているんですけれども、エボラ出血熱の場合は、たとえば、インフルエンザように、喋っていてうつるようなものではなくて、触っただけでもうつらないし、血液とか、吐物とか、吐いたものですね、そういうものに接触して、なおかつそれが体の中に入り込んだ時にうつるわけですから」
反町キャスター
「皮膚に乗っけただけではうつらない?」
岡部氏
「通常の状態ではうつらないけれど、傷があったりすると入りやすい。それから、吐物もかぶってしまうと、たとえば、目から入るとか、そういうようなことがあるので、注意深さが必要ですけれども、当然ながら。デングであるとか、それこそインフルエンザのような広がりを見せるような病気ではないということは言えますね」
反町キャスター
「ただ、その意味でいくと、たとえば、飛沫とか、蚊がとか、そういうのと違って、感染経路が非常に限定されているとも思うんですけれども、犠牲者の中には、たとえば、医療従事者の方もいます。当然そういう方というのは、リスクを知って、その治療にあたっているはずですけれど、プロが何で感染するのか。そこはどうしてですか?」
岡部氏
「それは情報が入ってきていないので、実情はよくわかりませんけれども、最初の段階で、その病気が何かというのがよくわからない時に、厳重な格好はできないので、うっかりすると言うこともあるし。たとえば、1人の医師が診る患者さんというのはすごい数であり、また、その時に、たとえば、日本ならば手袋を全部取り替えるけれど、その数が極めて少なければ、取り替えることはできないとなれば、どんどんリスクが高くなっていくと思うんですね。そうすると、うっかりすると針を刺してしまうとか、あるいは緊急でやらなければいけないので、バーッといった時にかぶったというような事故的なものがあると思うんです。ただ日本の現在の医療で、たとえば、エボラ出血熱の患者さんが1人いたとして、そこで院内感染でバーッと広がる、病院の中でですね。わからないうちに広がるというのはまず考えられないと思うんですね」
反町キャスター
「普通の風邪かと思っている時にはこうだけれど、SARS(重症急性呼吸器症候群)とわかった時点で、たとえば、手袋とか、ユニフォーム、体制が変わったりするものですか?」
押谷教授
「SARSは、SARSもと言うべきかもしれないけれども、医療機関の中でかなりの感染が広がってしまって、医療従事者、看護師とか、医師ですとか、そういう人達が、かなり感染したんですね」
反町キャスター
「そうすると、今回のエボラで、医療従事者が感染したのと同じように、初めは何もわからないまま対応をしていたら、感染したと。こういう理解でよろしいですか?」
押谷教授
「ええ。ある程度どう対応をしたらいいのかと。どうすれば感染が防げるのかということがわかってからは、院内での感染、病院内の感染は減ってきているのですが、それでもSARSの場合は感染経路が違いますので、血液ですとか、体液を介して感染するのではなくて、飛沫感染、いわゆる咳をしたり、くしゃみをしたり、そういうもので感染してきますので、より病院内での感染を防ぐのも難しい感染症で、まだどちらかというと、エボラは、むしろ感染拡大を防ぐのが非常に、本来は容易な感染症であるはずですよね」
反町キャスター
「何でこうなっていると見ていますか。医療従事者からも犠牲者が出ている現状はどういうことでしょうか」
押谷教授
「まず今回の流行が起きている国がなかなか、政情が不安定ですね。医療体制がきちんとしていないと。そういう中でいつのまにか広がってしまったと。あともう1つは、いろんな対応も初期の対応。こういう感染症は、一番大事なのは初期にきちんと対応して、感染拡大をなるべく防いでいくということが大事ですけれども、ある程度広がってしまうと、なかなか難しくなってくる」
反町キャスター
「祈祷師がお祈りで治すと言って、遺体とか、病人に触る。こんなことをやっていると、どんどん広がっていく。本当ですか?」
岡部氏
「直接見ているわけではないですけれども、行った人の話では、そういうことを言っていますよね。ただ、伝統を無視して、何か強烈な医療をやろうと思うとこれは抵抗に遭いますから。地域の信仰であるとか、あるいは習慣とか、ある程度大事にしながら、なおかつ我々が持っている手段を広げていく必要があるので非常に難しいですよね。ああいう現場でやっているのは」
佐々木キャスター
「エボラ出血熱に有効な治療、手立てなどは見つかっているのですか?」
押谷教授
「いや、現時点ではいろんな新しい薬が試されるとか、していますけれども、確立した治療法というのはないというのが現状です。ただし、先ほどから言っているように、岡部先生も言われたように、感染拡大を防ぐ手立てはあるんですよね」
反町キャスター
「それはどういう」
押谷教授
「きちんと患者を隔離し、患者から感染を広がらないようにすると。そういう対応をきちんととれば、本来は感染拡大を防げると。封じ込められる、感染症であるはずです」
佐々木キャスター
「ウイルスがいったん体に入ると、それはなくなっていくものなのか。それとも、HIVのように一生体に残るものなのか。それはどちらなのですか?」
押谷教授
「治った人も回復した人達もいますので、回復した人達は、ウイルスを体の中から排除できると考えられています」
反町キャスター
「体の中に抗体ができるのですか?」
押谷教授
「そうですね。免疫ができて、それを排除していく」

必要な対応と今後の展望は
反町キャスター
「その抗体から薬をという考えはどうなのですか?」
岡部氏
「抗体をつくると、その抗体を治療に使うという方法は他の病気でもやるんですね。それを製剤化すると、免疫グロブリンというものがある、場合によっては緊急の時に輸血をやるというのもありますけれども、ただ、治った人に免疫ができるからと、その人の血液を使うと、血液の成分を使うと、治療には応用できるというような、これは古典的な方法としてはあります。ただし、輸血そのもの全てでやるというのは別の危険性もありますから」
反町キャスター
「たとえば、どういう?」
岡部氏
「たとえば、その人がHIVの持ち主であって、こちらの人はそうではないということになれば、エボラは治ったかもしれないけれども、HIVがうつるというようなことがあるので、易々とはできないけれども、製剤としてそういうものをつくることはできますね」
反町キャスター
「その抗体部分だけを抜き出して、血液製剤として注射するみたいな。それは技術的には可能?」
岡部氏
「技術的には可能だと思いますけれども、ただ、そういう製剤をつくれる状況か、あるいは非常に患者さんが全体から言ったら少ない時に、そういうものに膨大な投資するのかということにかかってくると思うんですけれども」
反町キャスター
「2万人ということは現在の割合でいくと1万人以上の死者が予測されているこの状況というのは、いわゆる欧米、日本を含めて、結構ですけれども、医療や製薬会社がこれはエボラに向けての特効薬をつくって売れば、売れるし、株価が上がるという、そのビジネス的なモチベーションまでいく規模としてはまだまだ小さいのですか?」
岡部氏
「いや、それは日本のある薬が効果があるかもしれないと。これはもともとそのために開発されたものではないけれど、理論的に言えば、そういうウイルスもやっつけることができるとか、そういう基礎研究があるからこそ、できるのであって、最初からこれだけと言っても、なかなかできないけれども、裾野の研究というのは非常に重要で、これを持っているか、持っていないかという時、緊急的に対処できるかどうかという分かれ目になってくると思うんですね。
反町キャスター
「押谷さんいかがですか。その薬の可能性をどう見ていますか?」
押谷教授
「今おっしゃったような、どのくらいの規模があったらマーケットとして成り立つのかということですけれども、感染症の難しいところ、薬のマーケットとして考えた時に難しいところは、毎年同じように流行が起こるわけではないと。エボラは今年は流行していますけれども、来年また起こりますかというと、ここはわからないわけですね。そうすると、製薬会社としてはそういうものにどこまで投資できるのかというところがあって、同時に、エボラはアフリカに現在、限局して起きている感染症で、アフリカのマーケットと言っても、まだまだそれほど大きなものではないということになると、こういうあまり頻回に起こるわけではないけれども、起きたら重篤な結果が起こるようなものに対しては、マーケットだけに任せるのではなくて、国際社会が協力して、こういうものの薬の開発を進めるとか、そういうような対応が必要だと思います」
反町キャスター
「それは、つまり、WHOがつくるのかという意味で言っているのですか?」
押谷教授
「WHO自身にお金があるわけではないですから、WHOとかが主導して、そういう国際的な協調体制というのをつくっていくというようなことも必要だと思います」
反町キャスター
「エボラが日本で一例でも出たら、デングの比ではないですよね?」
押谷教授
「ええ」
反町キャスター
「メディアが騒ぐかという見立てを聞くのは変ですけれど、でも、医療従事者の側の皆さんにしてもインパクトが全然違うのではないですか?」
岡部氏
「正直なところ、デングでこの騒ぎならば、たった一例のエボラが出ただけで、もっと世の中ひっくり返っちゃうような大騒ぎになると思うんですけれども、ただ、もうちょっと冷静になって見るとエボラの方がデングより広がりは少ないわけだし、2009年のパンデミックが起きた時の広がりはもっと長いわけだし、あるいはSARSのような広がりもないわけです。しかも、SARSは不明の病気だったけれども、今度は相手はわかっているわけですから。ですから、そういうことが今回、逆に、我々にとっては知識であり、経験であり、そういうようなもののきっかけになってくるということになれば、現在のデング騒ぎがあっても、現在のところは海外ですけれども、エボラというものが、自分のものとして取り入れ、我々の方の守りを固めるというか、攻撃も当然ですけれど、やらなければいけない。でも、それは自分達だけやったってできないので、感染症というのは、相手があって、他の国があって、交流があるわけですから。他の国のこともよく見なくてはいけないし、我々が持っているものは出さないといけないと思うんですね。」

あるべき感染症拡大防止策 国際社会と日本の役割は
佐々木キャスター
「地球温暖化が進むとなぜ感染症のリスクというのは上がっていくのですか?どういう因果関係があるのでしょうか?」
岡部氏
「たとえば、先ほどのデング熱であるとか、マラリアなんかもそうですけれど、媒介する動物の生息域が広がってくるということは、だんだん病気が広がってくるというのがあります。それから、食料の問題も出てくるでしょうし、そうなると食糧危機のために、日本にいるとあまり感じないかもしれませんけれども、たとえば、干ばつが起きれば一気に食料がなくなるという国もあるわけですし、そういったような影響も多いと思うんです。それから、気候そのものの変動が人の体調とか、免疫機能にどういう影響を与えるか、これはわからないことが多いわけですけれども、気候変動によって、病気のバランスが崩れてくるということもあり得るので、感染症だけではなくて、病気というのは非常に問題が出てくるということがあるし、その中でわかりやすいのは、感染症の広がりということに十分注意する必要があると思うんです」
反町キャスター
「地球温暖化によって感染症が広がってきているというのは、実際10年で感じるほどのテンポですか?」
押谷教授
「デングは感染域が広がっていますけど、ただし、これまでデングがなかった台湾の南部とか、新たにデングの流行が見られるとか、これはある程度地球温暖化ということが影響しているのではないかと考えられますけれど、それよりもグローバル化とともに広がっていくと。このことの方がインパクトとしては大きいのではないかと。特に現在問題になっている、エボラにしても、そういう新興感染症という新たな感染症、2003年に起きたSARSもそうですけれど、そういうものに関してはグローバル化、人、モノの動きがより活発になっている、このことがリスクを上げているということが重要なのかなと思います」

感染症リスクにどう向き合う? 国内の体制&対策のあり方
佐々木キャスター
「日本国内での感染拡大を防止していくためにはどういう体制をとるのがいいと思いますか?」
岡部氏
「3つのうちの2つは意味がないということではないんですよね。発生地域で防ぐというのは重要ですし、仮に日本で出るのだとすれば、日本でやらなければいけないけども、幸い日本で発生するというのは極めて稀なことでむしろ外国ですから、そうだとすると外国の情報であるとか、外国に対する貢献。これは貢献だけではなく結局こちらに返ってくることですからね。それをやるということ。それから、水際で防ぐことは無理ではあるんだけれど、それをスルーさせるわけにはいかないので、そこでのチェックであるとか、あるいは場合によっては留め置くというようなことがあるかもしれないけれど、そこで徹底的にはできないので、入って来た時にその広がりをどうするか。感染症はよく山の図が出てくるのですが、何もしないでおくとずっと増えちゃうのですが、それをいろんな対策をとれば、少しでも山を減らすことができる。高さを減らしていく。でもピタンとすることは無理だというのが、新型インフルエンザの時もよくそういう図が出てきたわけですけれど、そういうように普段からチェックポイントをつくっておいて、どういう異常があるかないかというのをまず見分けなくてはいけないし、それから、特に病気というのは医療機関に当然ながら行くわけですから、医療機関での不思議な病気とか、あるいは普段と違うような状況、これを病院だけで対策をとるのではなくて、情報をシェアしなくてはいけない。なかなか臨床にとっては大変なことですね。不明な病気を取り扱いながら、どこかで連絡して、これをどこに搬送しようかとかいうのは難しいことですが、それをシステムとして確立し、あまり負担のかからないような形にしながら、情報を共有しながら、なおかつ病気は人ですから、あまり誰々さんのどこそこがどうなっているとならないよう、そこは皆で注意しながら、しかし、病気が広がらないようなための情報交換。これは第一にやらなければいけないところだと思うんですね」
反町キャスター
「日本の政府、官庁、政治家の感染症に対するマインドをどのように感じていますか?」
押谷教授
「日本に入ってこないようにすればいいんだという発想は変えていかなければいけないと。これだけ国際化が進んで、いろいろな感染症が入ってくるリスクというのはどんどん増えていく。これを全部防ぐのは鎖国でもしない限りは不可能なので、そういうことはできないと。だから、入ってきた時にどうするのかということを本当は考えていかなければいけないんだと思うんですね。入ってきた時にどういうことが起こるかというと、感染症は必ず地域で起こるんですね。今回のデングの場合は東京だったですけれど、東京ではないかもしれない。他の地域で起こるかもしれなくて、そういう地域の体制の強化。保険所とかも人員削減とか、そういうので、だんだん体制がむしろ弱体化しつつあると。こういう感染症への備えをするためには、まず地域のそういう体制の強化ということも考えていかなくてはいけないし、同時に、中央がきちんと正しい戦略を立てられるかどうかということ。政府がきちんとした、これに対してのリスクを、きちんとデングならデングに対してリスクをきちんと評価したうえでどういう対策をすることがベストなのかということを地域にきちんと指示していかなければいけないわけですね、都道府県とかですね。そういう体制が本当に現在日本にあるのかどうかというあたりはかなり問題で、デングの対応でも厚労相が中心になってやっていますけれど、それでいいのかどうかと。アメリカだったらアメリカのCDC(米国疾病対策予防センター)という非常に巨大な組織があって、ここに非常にたくさんの専門家がいて、その人達が対策の指導をしているわけですよね。本当に専門知識が必要なわけですよね、感染症対策には。専門知識も必要だし、それなりの経験が必要なわけですよね。そういう経験と知識を持った人達を地域にも、中央でももっと育成していかないと、いろいろな感染症、デングの対応とエボラの対応とは全く違うわけですよね。共通する部分もありますけれど、そういうこの感染症がきた時どういう対応をしたらいのかというような知識と経験を持った人達を育てていかないといけないということだと思います」

岡部信彦 川崎市健康安全研究所長の提言:『手のうちを作っていく』
岡部氏
「本当は手のうちがあると言いたいのですが、手のうちを、起きないうちに少しずつためていく。こういうことをいろんな意味でやっていかなくてはいけないと思います。自戒の意味も込めて」

押谷仁 東北大学大学院医学系研究科教授の提言:『グローバル/ローカルな対応強化』
押谷教授
「これだけグローバル化が進んでいく中での感染症対策というのは、自分の国だけが良ければいいという対策というのはあり得ないです。そういう意味で、グローバルな視点で、アフリカで起きてきている感染症が日本に波及する可能性もあるんだと。そういう視点でアフリカの感染症対策、アジアの感染症対策ということに取り組んでいくと。そういう視点が必要だと思います。一方、感染症が入ってくるのは地域に入ってくるわけで、日本のもう1度地域の感染症対策、その国の対応の仕方ということも含めて、入ってきた時にどういう対応をしたらいいのかということを、もう1度考え直すきっかけにできればと思っています」