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2014年8月25日(月)
中国が外資をたたくワケ 『反日』の深層を読む

ゲスト

興梠一郎
神田外語大学教授
平野聡
東京大学大学院准教授

独禁法で外資たたき 中国の思惑は
佐々木キャスター
「中国の政府の国家発展改革委員会が、先週水曜日の20日に発表した内容をまとめてみました。日本の自動車部品メーカーなど12社が2000年頃から価格カルテルを結び値上げ行為を行ったと。それに関して、12社のうち10社合計およそ207億円の罰金を科しました。これは、日本企業に対してだけ摘発が行われているわけではないんです。ここ1、2年で、外国企業に独禁法違反で、摘発、調査が続いている現状があるわけですが、この調査、摘発がなぜ起こっていると思いますか?」
興梠教授
「時期的に見て、独占禁止法というのは、2008年ですよね。ここに来て急に始まったでしょう。要するに、習近平氏の政治キャンペーン、権威づけですよね。大虎も捕まえると。国内では政権の中で、いろいろ権力闘争をやっていますよね。周永康氏という大虎を捕まえたと。外資も大虎ですよ。これまで外資に何も手をつけられなかった、外資を優遇してきたと。でも、外資だってやっちゃうんだぞと。そうしたら、非常に国内で受けるわけですね。外資に対するコンプレックスがありますからね。これがまた経済的には、国内の企業を守れるという一石二鳥の狙いがあると。ただ、かなり国民もわかっちゃって、そういう記事が出ると、ワーッと何千件書き込みが入るんですよ、インターネットで。それを読んでいますと、国有企業は独占ではないのかと」
佐々木キャスター
「そういう冷静な批判があるのですか?」
興梠教授
「ほとんどがそうですよ。何で車の値段が高い、輸入車が高いのかと、皆バラしちゃうんですね。たとえば、税金が高すぎると。関税は25%。だけど、代理店がすごくぼろ儲けしているとか、部品の値段まで決めちゃうとか、あとは増値税とか」
反町キャスター
「増値税とは何ですか?」
興梠教授
「付加価値税ですね。車購入税という、これも10%。税金だけで、2倍ぐらいになっちゃうんです。今度は代理店のコミッションを足すと3倍ぐらいになっちゃうわけです。それは全部独占しているんです。国有企業が代理店になっているわけです。それを言わないで、外資だけを叩いているというようなことを言っていましたが、合弁でやっていても、外資だけを摘発すると。合弁のパートナーのところにいかないわけですよ、国有企業に。これをやっている発展改革委員会なんて言っていますけれど、最近かなり権限を縮小されて、危機的状況ですよ。生き残りをかけて」
反町キャスター
「たとえば、そこで働いている中国人もいるわけです。彼らの雇用とか、賃金には悪影響が出る可能性はあるのではないかと」
興梠教授
「そこは巧みです。だから、非常に部品に特化してやっているでしょう。本体の完成車のところにいっていないんです。だから、そこの部品のところというのは代理店が如何様にも値段を決められるところがあって、そこを安くしたって、完成車を輸入した時には、完成車自体がどれだけ安くなるのかということも、皆議論をしているんですよ。ほとんど意味がないのではないかと。雇用には影響しない程度に、ショー的にやっている。一番危険なところには手をつけないですよ」
反町キャスター
「そうすると、国民も政治ショーと割り切って楽しんでいる節もある?」
興梠教授
「いや、楽しんではいない。それは部品が安くなった方が修理をした時に安くなるので、それはそれで人気取りですよ。これだけ安くしてあげたぞとなりますでしょう。ただ、全体的に部品が安くなった分だけ、今度はコミッションをもっと取られてしまうのではないかと。その分だけ、今度上乗せされちゃうのではないかとかね。皆気にしているわけですね。競争原理が働いていないので」

習主席 強硬姿勢の背景 中国夢とは
佐々木キャスター
「ここからは、中国の強気が意味するもの、背景にある思想について考えていきたいと思います。平野さんが先月、出版された本の中で、中国の強気の背景には、中国夢、チャイニーズドリームがあると書いているのですが、この『中国夢』というのは何を指しているのでしょうか?」
平野准教授
「外資叩きの話で、外資も今後は習近平氏、中国共産党の言うことを聞いて、これだけ制裁金を払えよと言っているわけですけれども、これまで中国は近代化、発展を実現するために欧米や日本の言うことを聞いてかなり下手に出て、いろいろ対応していたわけですけれども、しかし、本来は中国こそが世界でも最も古い文明であって、世界に様々な文明の成果をもたらしてきたわけですから、それが結局、19世紀、20世紀と立場が逆転して、欧米日といった国々にいじめられる側にまわったわけですよね。現在でも技術力において、あるいは経済力において、あくまでGDPは巨大になったかもしれないけれども、後塵を拝しているわけです。ですから、それを何とか逆転して、本来、中国こそが世界の平和と発展を実現する。中国こそが世界にプラスの影響を与えるような国家になる。そういう発想だと思います」
佐々木キャスター
「中国こそが世界の中心で、世界に貢献し得るんだという『中国夢』ですけれども、実際に、昨年3月に、習近平氏が国家主席に就任した直後の演説で、繰り返し使っていた言葉ですね。『中国の夢とは、つまり、人民の夢であり、人民と共に実現し、人民に幸せをもたらすものだ』と語りました。事あるごとに、国家主席は『中国夢』を口にしているんですけれど、対外的には非常に強硬な姿勢を示していますが、これはいつ頃からなのでしょうか。また、『中国夢』は、非常に大きく関係しているんでしょうか」
平野准教授
「少なくとも非常にはっきりとしたのは、北京オリンピックが開かれた2008年、2009年頃だと思うんですよね。ちょうどその頃には、一方でリーマンショックみたいなものもあって、他の先進国の経済力が非常に弱かった。そして、アメリカも冷戦終了後、一貫して世界の警察官として大きな存在感を保ってきたわけですが、そのアメリカも中東ですとか、世界の様々な地域において、然るべき役割を果たせなくなっている。従って、全世界的にグローバリズムの中で、パワーシフト、権力の強弱に大きな違いがかつてなく生まれていて、その中で、中国が本当に台頭し得る余地が遂に出てきた。これまで中国は一貫して、19世紀、20世紀は抑えられていたわけですけれども、遂に中国にもチャンスが巡ってきた」
反町キャスター
「聞いていると、帝国主義、阿片戦争とか、そのぐらいの時に列強から植民地化されたり、いろんなところを租借されたりした時の、そういうコンプレックスを、現在こそみたいなと、リベンジとは言いませんけれども、そういう形のナショナリズムの煽り方を、現在、中国共産党はやっているのかと。こういう理解でよろしいのですか?」
興梠教授
「そういうことだと思います。非常にそれは危険なところです。中国の近代史というものは、悲劇の近代史みたいにして語られているわけです。一方的に被害を受けたという。これをいまだに使うわけですよ。なぜかというと、それを救ったのが共産党だという意味づけをしたいからですよ。悲劇でなければいけないんです。ところが、周辺の国から見ると、もはやこれだけ大きくなって、ベトナムにしてもそうです、北朝鮮にしても、周りの国にすごく力を使うようになってきている。もう既に悲劇の国家ではないんですよ。しかし、それを言い続けることによって共産党が中国を救ったという、いわゆるレジティマシーというか、正当性を維持したわけですよね。もう1つは、共産主義、マルクス主義というもので無理やり国をくっつけていたわけでしょう。それがソ連崩壊、天安門事件、いろんなことがあって、特にソ連崩壊が大きかったです。それが看板だけになっちゃったんですよ。中身は全然違うわけですよ。非常に原始的な、日本よりも原始的な資本主義になっているわけでしょ。格差も非常に激しい。新しい求心力としてのイデオロギーというのがないわけです。そこでこうやって探してみたら、中華があるよねと。この古いものを出してくれば、皆文句ないよねと。要するに、これはこれまでの歴史が全部入っちゃうよねと」
反町キャスター
「たとえば、阿片戦争ぐらいまで遡るのなら、イギリスにけしかけるんだから、ヨーロッパを敵視するとか、そういう話にはならないのですか?」
興梠教授
「幸福的要因が出てくると、非常にやっかいだなと。最近の対応を見ていると、昔は大帝国だったわけでしょう、中華帝国という。欧米も足元にも及ばない。そういった時代は記憶として残っていますよね。彼もそれを言いますよね。中華というものを。それは1回没落したわけでしょう、阿片戦争以降。そしてどんどん大きくなってきたわけです。またここで復興してきたぞ。中華民族の偉大なる復興という。これからは言わしてもらうよという。それが2010年の漁船衝突事故であり、最近の、やれることはやる、言うことは言うというのになってきているわけですよ。それがまた習近平になってから、余計際立ってきている。なぜなら、それだけ彼の権力基盤が弱く、求心力がないから、人工的にそういった過去のものを出してきて、中華というもので人工的に統合をはかろうとしている。それが幸福主義とかになってしまうと非常に危ないわけです」
反町キャスター
「幸福主義にならないよう、たとえば、国内世論とかの兼ね合いもあるではないですか。その幸福主義に陥るか、陥らないかのせめぎあい?」
興梠教授
「それはそういうふうにしなければいけないんですよ、本当は。そのためには、たとえば、現在権力闘争の中で激烈なのをやっていますよね。とにかく自分の政権基盤を固めることに精一杯でしょう。そうすると、人気をとらないといけないんですよ。そして、人気を取るためには、外に敵がいないといけないではないですか。そうすると、日本とか、こういった外資系企業とか、こういったものを叩く、皆が喜ぶ大虎なんですね。それは周永康氏もそうです。誰もやれない人間を俺はやっちゃうぞということによって、ああ、そうやるんだ、うちの親分はと。これが一番危ないです。自分の、いわゆる政権基盤を固めるために外交関係を使ったり、国内の内政を使ったり、いわゆる手段として使うということでしょう。これはどこの方向に向かっていくのかということで、これを国民にその度に煽っているわけでしょう。それだけ自信がないし、カリスマ性がない。二世ですから。革命戦争を勝ち抜いたカリスマではないんですよ。毛沢東は、そこにいるだけでカリスマだったんです。彼(習近平氏)は雇われ社長みたいなもんですから。一生懸命メッキを塗って、非常にそういう状況があるので、それがいろんなところで出てきている」

中国夢と海洋進出
佐々木キャスター
「東シナ海、南シナ海の海洋進出も、その『中国夢』の実現の1つと考えていいのですか?」
興梠教授
「一番象徴的なのは、防空識別圏をガーっと引き直したわけでしょう。明らかにアメリカが戦後つくった秩序を、こちらがつくり返しますよと。引き直して何がいけないんだという。非常に象徴的でしたよね。これはアメリカも、その後B52を出して飛んでみたりして、なかなかそういうせめぎあい自体がたまらないわけですよ。大国同士のぶつかりあい。そういうイメージができていくのではないですか」
反町キャスター
「中国がそういうことをやることによって俺達はアメリカと伍しているんだと」
興梠教授
「防空識別圏はもともと尖閣も入れて引いちゃったから、日本が一番の被害者ですよ。ところが、アメリカと中国でやり合っているというイメージですか、飛び越えて。それをやりあっているうちに、じゃあ2人でいろいろ決めていこうという話になっちゃうではないですか。日本がマージナル化されちゃっているから」
佐々木キャスター
「もう1つ象徴的と言えばですけれど、5月末に行われたシャングリラ会談、アジア安全保障会議では王冠中人民解放軍副総参謀長から、このような発言がありました。『南シナ海での中国の主権と管轄権は、2000年前から確立し、国連海洋法条約発効のはるか前なのである』と。この2000年前からというところまで遡っての主張だったのですが、これはどんな考えを背景にしての発言だったのでしょうか?」
平野准教授
「ですから、たとえば、尖閣問題について中国の主張する、いわゆるカギカッコつきの根拠ですが、これも我々がはるか昔から知っていたので、魚釣島は我々の領土の一部分なのであると。ですから、本来、国家主権が成り立つ根拠は、有効に管理をしていることですけど、中国の基準はそうではない。あくまで中国の都合でほしいところについて、我々が昔からここは知っているんだと言えば、その瞬間から我々のものになると言いたいわけですよね。たとえば、尖閣問題について言えば、それと全く同じであって、2000年前と言えば、たとえば、漢王朝とか、そのぐらいの頃でしょうけれど、その当時から、たとえば、漢の地方の役所をここに置いていたとか、あるいは中国に挨拶に来る小国が、このへんにいっぱいあったとか、そういう形でいろいろと我々にはちゃんとこれだけの記録があると。中国の影響が明らかに、これこれこういう地域に及んでいたので、従って、こういう地域は全て現在から考え直してみれば、中国の一部分なのであるということを言っている。尖閣にしても、南シナ海についても、基本的な発想論理は、全く同じだと思います」
反町キャスター
「たとえば、佐々木さんが紹介した王冠中副総参謀長のシャングリラにおける発言、出席した人がこの間言っていたのかな、笑いが会場で湧き起ったと。その笑いだったら、まだいいのですが、笑いどころか、たとえば、他の国から、現在アジアにおいて、中国の領土拡張の意向というのは、いわば総スカンを食っている部分があるわけではないですか」
平野准教授
「おっしゃる通りです」
反町キャスター
「そういう国際的な批判とか、そういう逆風について、中華思想の人達は、それをどう受け止めているのですか?」
平野准教授
「ですから、笑いたければ笑えばいい。とにかく国際社会の現実というものはもちろん、国際法とか、いろいろ国際社会を律する様々なルールがあるわけです。それすら欧米を中心とした西洋が自分達の世界をいじりやすいようにつくったものに過ぎないという考え方が、根強くあるわけですよね」
興梠教授
「細かいことをよく覚えているんですけれども、確か、彼はスピーチの中で、アメリカと日本を比べたんですよ。アメリカの方ははっきりモノを言っていると。中国を名指しでね。けしからんみたいな。でも、日本の側は何かまわりくどく言っている。アメリカを引き寄せて日本を外すみたいなことを。この会議が終わった後、アメリカと会談をやったりして、それも最初はカメラを入れて、アメリカと話し合っているという好ムードを演出したんです。だから、そこが一筋縄ではいかない。ストレートに直球でやっているのではないんですよ。そういう細かい芸をやっているんです。そこに一貫していることというのは、防空識別圏もそうでしたが、アメリカと新大国関係と言われていますけれども、2か国で、太平洋をやっていくのだというイメージを繰り返し、繰り返し、いろんなところで演出している」
反町キャスター
「その話、先ほどの中華思想で、中華思想は、中国が唯一絶対の価値を持っていて、非常に優れた民族と優れた国家であるという考えと興梠さんが言われたように、新たな2大国関係で世界を割りましょうみたいな話はどこから?」
興梠教授
「それは中国の思想の中に(ある)、現実主義と理想主義です。持久戦論というか、現在の自分のサイズを見て、現在アメリカに勝てるとは思っていないんです」
平野准教授
「アメリカとは衝突したくないんです」
興梠教授
「だから、サイバーでいろんなスパイ事件が起きているわけでしょう。相手が、革新的な技術を持っている。いろんな面でね。武力においても完全に負けていると。同じモノをつくれない。それも開けっぴろげに言うんです。アメリカにまず追いついていないというのが現実的にわかっている。そうすると、相手を見て現在戦っても損だなというのがわかっているんですよ。それがしっかり、時間をかけ、だんだん近づいていくと、また変わります」
反町キャスター
「日本に対して強気に出ているのは、この国が、経済力でも軍事力でも全てにおいて(日本に)勝てると思ったから、そう出ている?」
興梠教授
「そうですが、これは毛沢東の時代から、ずっとそうですが、アメリカと話をつければ決まると思っているんです。だから、ニクソンと話をつければ、田中も来たではないかということですよ。だから、アメリカと話をつけたら、日本の話はうまくいくと思っているんです。それは現在でもそう考えています」

中国夢と汚職摘発
佐々木キャスター
「対外的にも非常に強い姿勢を示していますけれども、習近平政権は内政にも強硬な姿勢で、地方の腐敗をどんどん暴いたりしていますけれども、これは何を目的としているのでしょうか?」
興梠教授
「地方の腐敗をどんどん暴いているのは錯覚で、現在、山西省というところの指導部がずたずたにやられています。これは胡錦濤前国家主席の派閥が、あそこのトップが袁純正さんという共産主義青年団、胡錦濤閥ですよね。もう秘書長まで捕まっていますよね。と言うことは、これは腐敗撲滅に名を借り、敵対的な派閥に壊滅的な打撃を与えると。自分の人間をそこにバーッと据えていくんですよ。それは国民から見ていて、よほど人事の、人間関係がわかっていないと、受けますよね。何かやっていますねと。ところが、緻密に計算していて、ここの人間を潰せと選択的にやっています。外資系企業もそうです。自分達がほしい技術だと。自分達より優れている技術、ITであるとか、自動車であるとか、そういうところをターゲットにやっていますよね。何でもかんでもやるのではないんですよ。そこはかなりしたたかに」

中国の強硬姿勢 地方紙が過激報道
佐々木キャスター
「重慶の地方紙『重慶青年報』には『我々はこれまで日本に友好的過ぎたのではないか』という社説が載りました。これをどう受け止めていますか?」
平野准教授
「広告と社説は実は隣り合っていて、日本のメディアでは左側の方(広告)ばかりが注目を受けていて、右側の社説についてどこの会社も注目していなかったのですが、私は実際、重慶青年報のサイトにアクセスして、むしろ右側の社説の方にある意味、ギョッとするような印象を抱いたわけです。これはなぜかと言いますとこれまで日中関係はいろいろ波乱はありましたけれど、総じて中国共産党はこれまでは、毛沢東や周恩来が日中昆交会の時に掲げた、日本の一部の軍国主義と他の善良な日本人民を区別すると。我々はあくまで日本人民と今後、良好な関係をつくっていくんだということを掲げてこれまでやってきたわけです。もちろん、これに対しては当時から中国国内で強い反発というものがあって、要するに、何が何でも日本が立ち直れないぐらい賠償金をとらなければ我々は許せないという発想もあるわけで、特に1980年代以降も様々な形で日中関係がこじれると、日本に対する強硬論みたいな形で出てきたわけですよね。そして今日、かつての毛沢東や周恩来の政策が間違っていたのではないかということを、この社説は言いたいわけですが、それは特に現在の安倍政権を中国は批判しているわけですけれど、安倍政権を選んだのは他でもない日本人民の総選挙なわけですから、従って、日本人民こそが平和愛好的なわけではなく、極右化していて、いつでも中国を再び征服しようと試みている。そういう日本に対する備えを怠るべきではない。そして、日本に対する政策も全面的にあらためるべきであるという社説ですけれども、非常に注目に値するのは、重慶青年報がこれまで総じて日本に対して友好的な勢力であると言われていた共産主義青年団の重慶市の季刊誌なわけですよね。ですから、先ほど興梠先生が共産主義青年団出身である胡錦濤氏の基盤が崩れつつあるような話をされていましたけれども、そういう危機感を抱いた共産主義青年団側が、逆に自分達の存在感をアピールして生き残りをはかるために、逆に彼ら自身がより強硬な日本に関するメッセージを地方レベルで出しているのかもしれないと、ちょっと感じているんです」

習主席の強硬姿勢 日本をどう見ている?
興梠教授
「重慶というのは、よく覚えていないけれど、日本軍の爆撃が一番激しかったところで、私も重慶に行った時に、だいぶ前ですけれども、エレベーターに乗って日本語を喋っていたら『日本人がまた村に入ってきたか』と。いわゆる侵略してきたという言い方ですね。そういったことを言われた記憶があるんだけれど、サッカーのアジアカップの時、重慶ですごかったのを覚えていますか。中国は広いですから、土地柄があるんですよね。だから、これは重慶の読者も意識しているというのもあるでしょう。もう1つは、中国における原爆のイメージというのはある意味でアメリカにおける原爆のイメージに似ているところがあるんです。あれでトドメを指してそれで終わっただろうと。要するに、日本人とは違う感覚を、勝利した方ですから、持っていますので、それが露骨に出たのかなと。またこんなふうになっちゃうよと。ですから、重慶の土地柄と戦争観。もう1つは、これは7月ですよね。そのあと7月に安倍さんが靖国参拝をしなかったでしょう。外相会談があった。あれから1か月以上経って、現在はまただいぶ変わってきていますよね。この頃はかなりそういう状況だったのかなという面がありますので、そういった時間軸を考えると多少テーマが変わってきている。ただ、あの時点においては、今言ったようないろんな要因があったのかなと思います」

国内のナショナリズムは
反町キャスター
「ナショナリズムのうねりは恒常的に続くものなのですか。習近平政権における特徴的なものなのか」
興梠教授
「ナショナリズムは、中国に置いては政治的な道具ですから。非常に国際主義的な時もあるんですよね。たとえば、1980年代の天安門時代が起きる前の中国というのは、非常に国際的にもイメージが良くなりました。そのあと、パタッと経済制裁を受け、ソ連が崩壊し、共産主義体制が崩壊し、統合が変化し、殻を閉じて、今度は愛国主義教育を始めましたよね。これは政治的な、政権を維持するための、一党独裁体制を維持するためのいわゆるイデオロギーという道具です。ですから、これをうまく使い分けますよね。その時期によって、程度の強さが違ってくるわけです。今度は関係を良くしなければいけないなと思ったら、それが今度は薄まっていくんです。現在はそういう時期に入ってきているのかもしれない」

中国の軟化姿勢 日本はどう向き合うべきか
佐々木キャスター
「中国が軟化しているという声もありますが」
興梠教授
「これがもし軟化であれば、その説明の仕方としては、かなり周りと摩擦が生じてしまいましたよね。アメリカともことを構えた。一番大きかったのはベトナム。あの共産主義の兄弟国で場合によって米軍基地がきたらどうしますか。ベトナムとアメリカの距離が非常に近づいてきている。北朝鮮ともあまり関係が良くないと。韓国とは接近している。四面楚歌になり兼ねないではないですか。中国は政治のレベルは現実的なところもかなりあるんです。自分のところが不利だなと思うと変わるんです、かなり柔軟になってくるんです。もしかしたら、そういう時期になっているのかもしれない。特にアメリカと日本が急速に関係を強化し、フィリピンと日本、日本とベトナムの関係が非常に強まってくると、だから、最近モンゴルに行きましたよね。あれも封じ込められている。アメリカと日本が非常にモンゴルと関係が深い。そうすると、北の門、西の門、東の門、南の門が全部囲まれちゃうことになる。これはマズいと。四面楚歌は絶対避けなければいけない。こういった時にどういった態度に出るかと言うと手を差し伸べてくる。その代わり、自分の面子は保ちながらお互いに距離を縮めてくると。もしかしたら、その1つのきっかけとして靖国参拝があがっていましたけれども、安倍総理が行かなかったということで、1つの意思表示と向こうは見たのではないですか。だとしたら、外相で一緒になっても良いよねと。だんだんレベルを上げてきているんです。緊張モードに入らないと、このままでは…中でも権力闘争をして、外でも。外はちゃんと安定させて、中で戦いたいという考え方もする。もしかしたら、そういうモードに入ってきている」
平野准教授
「APEC首脳会談が11月に北京でありますが、その前に、対外環境がめちゃくちゃになってしまうのは避けたいわけですよね。少なくとも、両国とも戦争は望まないと思うんですよね。しかし、意見の相違は限りなく深いわけです。ですから、これまでの日中関係がどの程度友好関係があったのかということについては、私は正直疑問があって、結局、日中友好なんていうのは、1970年代と1980年代の僅かな期間しかなかったのではないかとすら思えるんですけども、しかし、一方で日本も中国もそれぞれお互いの中味がどうなっているのかということを腹の探り合いをしながらなんとか共存してきた。たまにそのバランスが崩れて不幸な戦争も起こりましたけれども、基本的に双方の腹の探り合いで…仲が悪いながらも共存している時代の方が圧倒的に長いわけですから、今後もお互いに、よりお互いの内幕を良く知ったうえで正面からの衝突は避ける。特に、上から目線で相手を従わせるというやり方ではなくて、話し合うところは話し合い、利益を共有できるところは共有するというところを地道に、実務的にやっていけば、それほど大きな問題は起きないということを期待している」

興梠一郎 神田外語大学教授の提言:『必雑於利害』
興梠教授
「必ず利害をまじう、と孫子に出てくるのですが、要するに、必ずメリットを考えたらデメリットも同時に考えましょう。デメリットを考えたらメリットも考えましょうと。中国人は非常に二面指向なので、黒と白を同時に考えるという人達ですね。つまり、中国と付きあう時はあまりウエットな関係というのはやらない方がいい。たとえば、友好を前提にして、それに全部あわせていくとか、対立を前提にするとか。これは片っぽしか考えてないです。両極ではないですか。友好もするけれども対立もある。対立もするけれども友好もある。この緊張感です、この矛盾した状態を常に許容する。それに負けない。そういう感覚を政治家から国民、全ての日本人が持つと。たとえば、共産党はこう言っているけれど、(中国の)国民は日本の漫画が大好きだとか、いっぱい旅行に来るではないかと。こういうのに耐えられるようになるわけです。分裂しない中国像を持つ。要するに、メリットもデリットも全部受け入れましょう。それはデメリットが起きた時にはメリットを考える。いらいらする緊張感に耐えていかないと(いけない)。そういうテクニックが身につくということは、日本の外交的なパワーを高めるということです」

平野聡 東京大学大学院准教授の提言:『軟実力』
平野准教授
「これはソフトパワーという意味です。ご承知の通り日本のソフトパワー、要するに、文化的、あるいは経済的な魅力が、国際社会から非常に高く評価されていて、日本に対して反発している中国も韓国もこの点について日本のことを評価せざるを得ない。これが日本の非常に大きな国益になっていて、我々はこれを引き続き伸ばしていくべきである。そして、中国も現在やっている『中国夢』はあくまでハードパワー。単純に軍事力や経済力が強ければ社会を席巻できると思っているわけですが、それでは逆に反発が国際社会から起こりますから、中国もあくまでソフトパワーで勝負してはいかがですか、そうすれば、日本も中国もプラスの意味でお互い競争して、より豊かな社会、未来を切り拓くことができるのではないかと思います」