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2014年8月19日(火)
130兆円は誰のもの? 年金積立金と運用改革

ゲスト

小幡績
慶應義塾大学ビジネススクール准教授
熊谷亮丸
大和総研執行役員 チーフエコノミスト
大山泰
フジテレビ解説委員

年金積立金130兆円 運用するGPIFとは
大山解説委員
「GRIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、年金、国民のお金であり、国民の財産ですが、長い間、積み重なってきたものです。だから、毎月毎年使われるお金とは別に積み立てがある」
島田キャスター
「それはずっと前から積み立てられていたわけですね」
大山解説委員
「年金制度は昭和36年に皆年金になって、当初は一部積立てというプランのような形でスタートしたということです」
島田キャスター
「現在は賦課方式という積立てですね」
大山解説委員
「現役世代が払ったお金を、受け取る、給付される、高齢者の方に流しているというのは変ですが、そうやって使われていると」
島田キャスター
「だけど、昔は違ったんですよね」
大山解説委員
「と言うこともあって、年金制度は五十数年経って、特に昭和60年ぐらいから現在の年金制度の骨格が固まったと言われて、もともとは大蔵省という現在は財務省の前身の資金運用部というところで運用を頼んで、一部利子を受け取っていました。1996年から、特殊法人とか、行財政改革とか、そういうのを経て、2001年ぐらいになってからは、年金積立金の運用基金の枠組みができて、2006年に独立行政法人でGPIFというようなのができた。そこで、2001年から見ていくと、2006年にGPIFができて、これは積立金自体のお金ですけれど、これがちょっと減ったりしている。と言うのは、いよいよ年金をいっぱい出さなければいけなくなるので、それを積立金の中から、5兆円とか、数兆円を使っている。その積立金の中で株式だったり、債権だったりで、運用をしている額というのはほぼほとんど使うような形でここ数年きているという形です」
島田キャスター
「GPIFはどんなことをしているか。運用委員会というものがありまして、金融や経済などの専門家による運用委員会の審議や意見を受けて、理事長に意見をしますね。そこでは中期計画の作成や運用受託機関の管理を理事長が行うことになっています。これが基本的な構図だと思うんですけれども、この4月まで運用委員をされていたわけですが、どんな議論をするのでしょうか」
小幡准教授
「GPIFだから運用専門機関としてやっているわけですから、130兆円をどう運用するかということを常に議論しているわけです。運用委員会というのは、普通の企業で言うと社外取締役の集まりみたいなものですね。取締役会だけど、全員社外役員みたいなもので、ただ、政府の審議会と似ていて、私も大学の教師ですし、他のシンクタンクの人とか、そういう他にメインの仕事を持っている人が、一応有識者として、知見をもって、外からGPIFの動きを監視したり、チェックしたりするというのが運用委員会の役割です」

GPIF改革とは
島田キャスター
「今年6月に閣議決定されました安倍政権の新たな成長戦略で、『日本の“稼ぐ力”を取り戻す』として、政策としてGPIFの改革が盛り込まれているわけですが、まずGPIF改革が、どうして成長戦略につながるのかということですが、その点はいかがでしょうか?」
熊谷氏
「最初に申し上げたいのは、PKOという話があるんですね。Price Keeping Operation と言って、要するに、GPIFがお金をたくさん持っているから、どんどん株を買って、株を上げて、それが目的ではないかという誤解があるのですが、ここは全く違うということを最初に申し上げたい。たとえば、1回目の有識者会合の中で、有識者全員が合意したんですね。これは決してPKO、株価対策ではありませんと。そのことは1度目の議事録の要旨の中に明確に書かれている。それから、最終報告の中でも、決して株価対策ではなくて、この改革を行うことが専ら被保険者、年金の保険者の利益になると。これがまず基本的な考え方なんですね。ですから、運用することで良くなって、そのことによって被保険者が利益を受けることが、これがまず基本的な考え方である。他方で同時にこの結果として、こういう金融資本市場を活性化することが、結果的にはこれまでGPIFが使っていなかった資金を有効活用するわけですから、そのことによって、日本の成長力が上がり、もしくは資本市場が活性化することによって、結果において、日本の成長に資するところがあるだろうという考え方ですね」
島田キャスター
「結果としてそうなるということで、それが目的でも何でもないと」
熊谷氏
「PKOが目的ではない。それで具体的にどこがポイントかということをちょっと申し上げると、1つはコーポレートガバナンス。企業に対する統治ということがあるのですが、これまでGPIFはこれだけのお金を持ちながら、言ってみれば、モノを言う株主ではなくて、要するに、本来はちゃんと経営をしていない企業経営者に対して、このGPIFのような株主は、しっかりとそれではダメだということを言わなければいけないわけですね。これを言ってこなかったということがある。今度の改革の中では、スチュワードシップコードというのがあるのですが、株主がダメな企業に対してちゃんとモノを言わなければいけませんよという指針を金融庁がつくって、GPIFが採用することになったんです。それを受けて日本の中で、120社以上の機関投資家が、このスチュワードシップコードというものを採用することになっていると。諸外国から見ると、これまでの日本の企業だと資本市場というのはコーポレートガバナンスが効いていない。要するに、株主がちゃんとモノを言わないから改革が進んでいなかったわけですね。そこでちゃんと、コーポレートガバナンスを効かせて、スチュワードシップコードのようなものを入れ、そのことによって、日本の資本市場の効率がもっと良くなってくるのではないか」
小幡准教授
「問題は年金、GPIFのお金は、誰のものかといった時に、国民のものですよ。安倍政権は国民の信任を得ているから、国としては一体だけど、国民がGPIFに貯まっている積立金、年金、自分達の年金をどういうふうに運用してもらいたいか。蚊帳の外に置かれて、勝手にどういうふうにやるか決めて、それはもしかしたら結果的に国民のために役に立つからと思っていると思うのですが、それだったらまず国民に、オーナーに、持ち主ですから、お伺いを立てて、我々はもうちょっとリスクをとりたいと。それはなぜかというと、今説明された理由で、こうこうこうで遠くまわりまわっていくと、コーポレートガバナンスが良くなって、日本も良くなる。だから、そうしてくれないかとお伺い立てるのが先なのに、先にダボス会議に行ったりだとか、世界の投資家に説明をし、政府の中でぐちゃぐちゃやるというのは、それは本末転倒なので、改革の筋からすると間違っていると思いますね」

ポートフォリオの見直し
島田キャスター
「今回の新成長戦略で出されたGPIF改革ですが、基本ポートフォリオ、資産構成割合の見直し。そして、ガバナンス体制の強化というものを挙げているのですが」
大山解説委員
「これが現在のGPIFの基本ポートフォリオです。国内債券が6割ぐらい占めていますね。それから話題になっている国内の株式は12%。これは基本ルールというか、基本の基準みたいなもので、プラスマイナスの6%の許容範囲があるんですね。3月末に発表されたものだと、国内株式は16%ありまして、先ほど、小幡さんも言っていましたけれど、21兆円あります。その後、ちょっとどう変わっていくかというのはこれからの議論であると思いますが」
島田キャスター
「でも、もうちょっと比率を高めるということも」
大山解説委員
「という議論が現在出ていますよね。多くの関係者というか、政治家の方から、与党の政治家の方からも増やしていくという、これはGPIFのポートフォリオ改革であり、あとで話のある、ガバナンス改革もありますけれども、ポートフォリオの改革は、ちゃんとやろうということです」
小幡准教授
「基本、ポートフォリオ改革という言葉自体、100%、間違っているんですよ。これは改革する必要はないわけ。全く関係ないの。なぜかというと、GPIFは何をするかというと、お金を預かりました。130兆円預かりました。それを運用します。どうやって運用するのと言われると基準がないでしょう、方針が。それは国民、オーナー、持ち主だから、持ち主の意向で決めるわけです」
島田キャスター
「意向と言っても、これまで聞かれたことはないですよ」
小幡准教授
「それが一番の問題ですが、国民の側もこれまで政府に苦情を言わなかったのが問題ですけれども、これまでは法律上は、安全かつ効率的と言う言葉で定められていたわけです。安全かつ効率的というのは、一生懸命ベストを尽くせと。テクニカルにも、効率的という意味も1つあるんですけれども、効率的にやるということは誰も文句はないのですが、安全と言われても、どの程度安全かというものがあって、全く安全にするためには運用できないわけですよ。現金だって日本円で持っていれば、ドルが値上がりしたら、日本円は値下がりするということですから、値下がりリスクがあるわけです。インフレになったらお金の価値下がる。と言うことは、運用する以上、必ずリスクというものがあるんですよ。だから、問題、安全というのは、どの程度安全かということです」
島田キャスター
「だけど、これまで安全かつ効率的にというのが目標として定められていたわけですよね。この文言があった時に、どういうふうにそれを解釈したのですか?」
小幡准教授
「だから、これが困った。困ったからどうしたかというと歴史的経緯も関係してくるんですけれど、全額、日本国債で運用したという状況を想定しましょうと。130兆円、全部、日本国債だったと。それってある種の考え方で、国債が安全。国債は理論的には一応安全資産だと言われています。最近、リスクが上がってきたのではないかという議論がありますが、理論的に、あるいは伝統的にも国債、相対的に言えば、一番安全度が高いと。100%国債だというのが一番運用する中では安全でしょうと。国民のコンセンサス、国民に直接聞いてもいないし、どういうコンセンサスが得られるかわからないけれども、日本人は基本的に安全志向が多いから、政治的にもあまりリスク取りすぎるのもどうかということで、じゃあ、100%日本国債と同じだけ安全だったらいいじゃないかと」
島田キャスター
「そんなことできるのですか?」
小幡准教授
「それがこの結果なのね。一応ポートフォリオ理論というファイナンス理論が経済学上ありまして、いろんなものに分散投資すると、値動きが逆方向にいったりするから、よく同じ籠に卵を全部のっけちゃうと、その籠を落としちゃったら全部われちゃうけれども、籠が10個あって、卵を1個ずつやれば、1個の籠が割れても9個の卵が残る。こういうことで分散すると安全度が高まると。リスクが下がるということ。だから、いろんなものに投資をしても、国債100%の時と、ほぼ同じぐらいのリスク。だけど、国内株式の外国債券、株式の方がリターンは高いと、平均的には言われている。過去はそうだった。だから、分散することによってリターンが上がると。それは効率的ということですけれども、それがこういう結果です。基本ポートフォリオ改革というのが間違っていると言った意味はどういう意味かというと、そこはリスク許容の議論をするという改革をしなければいけない。つまり、国民がどこまで自分達のお金だから、どれだけリスクにさらしていいですよという判断をして、それを受け、ここまでリスクをとっていいという国民が言っているんだったら、GPIFとしてはベストを尽くそうと。それだったら、もっとリスクがある国内株式とか、外国の資産もどんどん買いましょうと。あるいは新興国も買ってもいいのではないかと」
島田キャスター
「そこの議論がないままに、調整のところだけ言っているのはおかしい」
小幡准教授
「そうそう、それはおかしくて、まず国民のリスク許容度はどれぐらいだという議論をして」
島田キャスター
「安全というのは、何をもって安全かというのは国民が考えていないということですか?」
小幡准教授
「そうです。まず考え、それで低リスク、中リスク、高リスクとか、大雑把に言えば、そういう議論があったとしたら、これまで低リスクだけれど、中リスクぐらいまで上げましょうと。その議論がある。では、中リスクというのは、どう解釈しようかという、それにあわせて、リスク上がるんだったら、国債よりも株をもっと増やして大丈夫だと。では、基本ポートフォリオの株式のウェイトを増やしましょうと。新興国、中国、インド、あるいは南米、アフリカへの投資を増やしましょう。そういう議論が出てくるので、基本ポートフォリオについては改革する必要は全くない」

株式運用増加のリスクは
島田キャスター
「株式にもう少し割合を割くという話の中で、株は値上がり、値下がりの動きが激しいと思うんですけれど、これは危険なことかどうか。素人ながら思うのですが、これはいかがでしょうか」
熊谷氏
「有識者の会合の中では、具体的な数字は、まず出していないというのがあるんですね。ただ、これまでの資産配分というものが、小幡さんおっしゃったように安全かつ効率的という、ある種の虚構のようなものですね。国債は安全かつ効率的だという、虚構です。ですから、本当に国民がそう思っているのかどうか。このポートフォリオがベストな選択なのかどうかというところが明らかではない」
大山解説委員
「虚構ということは、安全ではないということですか?」
熊谷氏
「安全ではない部分が、私は当然あると思いますね。要するに、たとえば、私達が計算すると、現在日銀が出てくる国債の7割を買っているんですね。買うことによって、長期金利は1%ぐらい押し下げられているんですね」
小幡准教授
「国債が安全かどうかではなくて、運用すること自体が安全ではあり得ないという意味ですか?」
熊谷氏
「いや、国債が安全ではないですね。それはたぶん同意されると思います」
小幡准教授
「株式は妥当な範囲であれば、むしろ安全だという認識ですか?」
熊谷氏
「株式のウエイトについては、たぶんいろんな議論があるのですが、私自身はですね、今ある日本の株は、基本的には、割安なのではないかと思っていますね。これは、私個人の見解です。ここでお示ししているのがTOPIX、株の時価総額が、GDPの何倍あるかというのを、過去の1970年以降を100としているんですけれども、高くなれば株が割高である。低くなれば株が割安ですね。たとえば、バブルの時は、過去の平均と比べると、これは240ぐらいあったわけですから非常に高かった。他方でオイルショックの時だとか、日本の金融危機、それから、リーマンショック。このあたりは、ずっと安かったわけですが、現在だいたいこの数字は、90台ぐらいです。過去の平均よりもちょっと低いわけですから、たとえば、小幡さんが株はバブルだから止めろというのであれば、それは1つの考え方だと思いますが、たぶんそういう考え方ではないですよね。分散投資の意味で止めろという考え方ですね」
小幡准教授
「だから、国債にするか、株にするかという議論は、最初にそれが出てくること自体が明らかにおかしいわけですよね。リスクをどの程度とるかを決めたら、自然にポートフォリオが出てきて、その中に専門家によってという議論もあるんです」

どう運用すべきか
大山解説委員
「現在のマーケットの状況から見たポートフォリオの議論をしているので、GPIFの本旨とは何かというのとはちょっと分けて話を聞きたい」
小幡准教授
「いや、だから、GPIFが投資するとしたら、私は実は運用に関しては、非常に積極派ですよね。すごく積極的すぎるぐらい。4年前のGPIFの会議の時はもっとリスクをとれるようにしてリスクの方向に舵を切った方がいいという議論をずっとしてきたわけです。ただ、そういう議論であったとしても、それって買うものは、日本株ではなくて、世界の株だと思うわけですよ。つまり、分散投資というのは広くあまねく幅広くいろんなものに投資することによって、リスクを落としてリターンをとるという考え方なので」
島田キャスター
「こちらに小幡さんが考えるポートフォリオがありますが」
小幡准教授
「これは難しいですよね。グローバルインカムとキャピタルゲインと書いてあるのですけれども、要は、現在グローバル経済ですから、日本とその他で分ける分け方自体が時代錯誤ですよね。世界に幅広く投資するといったらグローバルインカムですね。インカムと大雑把に言うと債権で、キャピタルゲインは株式が多くなると思うのですが、投資の考え方でやるべきだということで、債権か、株かということではなくて、インカムという、ずっと持ち続けることによって、利子とか、不動産だったら賃料をもらうもの。それから、キャピタルゲインというのは売買することによって儲けるもの。そういうふうに性質によって変わるべきだということだけれども、それは置いておいて、グローバルに投資するわけだから、日本の株式市場が世界の株式市場全体に占める割合は8%です、たかだか。私のポートフォリオも、現在のポートフォリオも、国内株式は12%で、外国株式は12%ですよ。だから、現在は株式のうち半分を日本に投資しているわけ。これは明らかに、ホームバイアスと言うんですけれども、日本に偏り過ぎているわけです」
大山解説委員
「よく証券関連の取材をしていると、日本株もまだまだ割安感というような話があるので、ちょっとそのことも聞きたいと」
熊谷氏
「小幡さんの考え方は、世界の株のウエイトに応じて投資をしましょうという考え方だと思うのですが、ただ、そういう投資というのは、私は必ずしも一般的ではないと思うんですね。たとえば、振興国で仮にバブルが起きていた時にその高いウエイトで投資をしてしまう。もしくは振興国の政治リスクをどういうふうに考えられるか。もう1つは、ホームバイアスでもって、この点は有識者の会合でもかなり議論になって結局は両論併記で結論は出なかったんですね。どういうことかというと、海外に投資をした方がまず分散投資のメリットが得られる。それから、資産を取り崩して、海外資産を売る時に、日本の国内市場に対する悪影響を避けられるというような、こういうメリットがある。他方で、国内に投資するというのは、そのことによって国内経済をいろんな意味で活性化する部分があるわけですから、その両者を比較考慮した時に、日本に投資するかどうかというのは、それほど軽々に決められることではなくて、少なくとも、私は時価総額のウエイトでやるというよりは、日本に投資するプラスの部分を一部考えたうえで、ウエイトを考えるべきではないかと思います」
小幡准教授
「だから、日本株12%、外国株式12%は間違っているんです。つまり、日本株が現在買うべきだと思えば、日本株をドバーッと買えばいいし、買うべきではない時はドバーッと売ればいいわけで、つまり、グローバルに投資する。その時に一番チャンスだと思う国に投資をすればいいわけで、今日12%にして、明日20%にして、明後日もう1回12%に戻すという話ではなく、基本ポートフォリオは5年間の基本計画だから、この5年間の基本方針として基本的にターゲットも、目標として、たとえば、12%、現在の話だと20%だとか、25%だとか、そこの数字を目指して、ずっと5年間投資をしましょうという話だから、枠組みが逆に、GPIFを縛るわけですよ。つまり、GPIFは、悪く言えば、国民が頼んでいる運用機関だから、国民の意向に沿って運用をするわけだから、国民の意向として、国内株20%と決めたら、GPIFは一生懸命20%を目標にやらなければいけないから、現在、日本(株)をもっと買った方がいいんじゃないかなと思っても、そう簡単に自由には売れないんです。許容幅ってありますけれども。それだったら、グローバルにすれば、その時々、チャンスのものに投資すれば…」
島田キャスター
「枠組みの中で、自由にいろいろできる」
小幡准教授
「そうです。日本がいいと思えば買えばいい。だから、基本の枠組みとしては、日本株とか、国外株とか、そういう枠組みは全く意味がないです」
島田キャスター
「長期の投資ですよね。それで素早い動きがあまりできないわけですよね。その問題はどうしたらいいのですか?」
小幡准教授
「できないです。全くできない」
島田キャスター
「そうすると、どうすればいいのですか?」
大山解説委員
「現在、大金融緩和時代に先進国が入って、アメリカはリーマンショックの前の4倍のドルをつくって出していますよね。ECB(ヨーロッバ中央銀行)もゼロで、大量に金融緩和をして、日本も現在金融緩和をしていますね。そのお金でリスクがあれば、債券も買われちゃっているし、株にも一部行っているし、ちょっとひずみの中にいるので、たとえば、振興国に行ったお金がすっと出ていくとか、中長期で見た場合には、なかなかリスクはあって、常に抱えているように思うんですよ」
小幡准教授
「既に日本株は買いとか、買いではないという議論は全く関係ないわけですよ。だから、そういう議論は、別に枠組みとして、考え方として議論をしないといけないと。そうなると分散投資が基本だから、グローバルに、私の意見ですけれども、国内株は現在、買いか、売りか、現在日本国債が危ないとか、危なくないとかということが、基本ポートフォリオの議論として出てくること自体間違っている」

GPIFのガバナンス改革
島田キャスター
「ガバナンス計画において、一番重要なポイントとは?」
小幡准教授
「生かすも殺すも、統治する側の能力の問題」
島田キャスター
「統治する側?」
小幡准教授
「オーナーですね。オーナーは企業で言えば、株主だし、日本の経営がイマイチなのは経営者ががんばっても、方向が間違った時に株主が直さない。年金の場合は、まさに国民で、国民がこれまでやる気がなさすぎです。だってGPIFのこと知らなかったでしょう?130兆円も知らなかったし、国民の半分以上は株式を増やすということは、いつの間に勝手に株なんて買っていたんだと思った人がいるぐらい。ガバナンスの体制が悪いのも、現状は体制にすらなっていないですよ」
大山解説委員
「自分のお金を、投信を信託銀行の窓口に行ったり、証券会社の窓口に行ったりして、銀行に行って買う時に、国民はお金をどこかに委託しますよね。信託銀行はそこでも運用しますけれど、そこからいろんなファンドが世界にいくつもあるので、また別のところで運用したりして、また戻したりしますよね。国民のお金であるのと、個人のお金は違いますけれども、イメージ的には誰を信用して、どういう形でやっていくのかというのは、GPIFの議論の中でどこかで考えなければいけないと思います。誰が責任をとるのかとか」
小幡准教授
「前のガバナンス対策は、理事長が1人で、理事は他にもう1人しかいないです。そんな体制で、しかも理事長が勝手に決めても良いのか」
島田キャスター
「理事長は誰が決めるのですか?」
小幡准教授
「政府が閣議で承認しますけれど、厚労大臣が決めるのですが、理事長1人、理事1人の体制に何でなったのかと言うと、独立行政法人だから、独法改革で行政改革の一貫としてコスト削減ですよ。独法の理事長や理事は官僚の天下りだろうと、とにかく減らせ。理事長ポストも理事ポストも減らすし、給料も制限するし、行革で組織もとにかく縮小しろという方向で一緒くたに議論をして、GPIFも他の無駄遣いが多かった、いろんなところに一緒にとにかく倹約、縮小方向で来た。でも、そこに130兆円も預けていたわけだから…、預けるんだったらちゃんと組織をつくらないといけないし、信用しないのなら預けない。難しいですけれど、考え方としては委託するのをやめるという手もあるんですよね。ガバナンスを良くするためには、国民が自分達のものだという意識を持って、オーナーをしっかりと見るという意識を持たないといけない」

運用の現状と今後の展望
島田キャスター
「誰が責任をとっていくのか?」
熊谷氏
「問題は、現在の時点で誰が責任をとるかというのが非常に曖昧であるところが問題ですよね。結局理事長が独任制ということで1人で決めていて、失敗した時に本当に責任がとれるのか。どういう責任のとり方をするのか。それから、厚労大臣は資金を委託しているわけですから、委託している責任というのがあるわけです。その意味で広い意味での政府とGPIFが責任をとるわけですが、現在の時点で非常に責任の所在が曖昧である。これが問題ですね。ですから、そこをハッキリと先ほどの合議制のようなものをつくってちゃんと責任を明確にしていくということですね」
大山解説委員
「個人のお金だったら自己責任ではないですか、投資行動は。国民全体の自己責任というふうにはつながらないのですか?つまり、国民全体の自己責任で委託して損が出たら改革案に残る理事会の意思決定期間等に大きな責任がくるか。そのへんが曖昧で、本当にわからないなというのが多いんですね」
熊谷氏
「問題は、国民に対する説明をちゃんとしてこなかったわけですね。ですから、国民の方が確かに怠けていたところもあるんだけど、他方で政府もやるべきことをやってこなかった。これは何をやらなかったというと、まず国民に対して真実の状況を語ることですね。真実を語ったうえで、わかりやすい選択肢を提示して、国民に対して、意思決定を委ねるということをやるべきである。具体的にどういうことかと言うと、これまで年金に対する説明というのはまず国民を安心させたい。結果先に有りきで安心するような数字が先に出てきた。ところが、実際はそうではなくて、これだけ厳しい財政状況の中なので、将来がどうなるかということ。将来がそのまま悪くなるのであれば、どういう改革の選択肢があるのかということを提示することが必要です。実際、厚労省も変わってきているのであって、先日の財政検証の時はいろいろなシナリオを出したわけです。たとえば、労働参加率が上がった時、下がった時、物価が上がった時、賃金が上がった時。さらには運用利回りが上がった時に所得代替率と言いますが、現役世代の所得の50%を維持するということが目標ですけれど、それが維持できるシナリオ、維持できないシナリオというものを複数提示してきているわけですね。そういう意味では、安全だということが先にあるのではなくて、真実を国民に語る。そのうえでわかりやすい選択肢を示し、これを選択してもらうということが私は重要だと思います」
島田キャスター
「視聴者からですが『どちらにしても損失が出なければOKです。損失が出た時に誰がどうしてくれるのかだけです。その時、税金と赤字国債を使わないと法律に書いてくれればOKです。当たり前の話ですが』とのことですが」
小幡准教授
「だけど、当たり前な話ではなく、それは国債か税金で補うしかない。大山さんが冒頭で言ったように、年金積立金運用というのは年金制度全体の一部ですと。制度の中で積立てておいたものを運用している。ただ、全体は賦課方式で、払い込んだ人から給付の人に流れていく。その中で現在5兆円ぐらい毎年取り崩している。これが減るわけですから、将来貰える年金が減る。それに尽きるわけです、結局は。だから、国民全体ではその責任から逃れられない、自己責任なわけです。だけど、専門的なことでわからないから、ベストを尽くすためにどうしようと、自分達のお金だから責任を持って信頼できる機関をまずつくる。GPIFが信頼できなければ、新しい機関をつくればいいわけだし、極端な話、誰も見つからなければ運用をやめるという選択肢しかないわけですけど。つくったうえであとは任せる。出た結果は自分達が任せた以上、しょうがないと納得するためには最初に任せ得るような組織をつくる。これがガバナンス改革です。そのためにいい人を選んでいく。理事長とか、理事会があれば理事です。ファンドマネージャーという運用担当者も選んでくる。そのうえでその人達が暴走しないようにいろんな制度をつくって、あとは任せるしかない」

小幡績 慶應義塾大学ビジネススクール准教授の提言:『国民の胆力』
小幡准教授
「オーナーである国民が自分の意見を要している。そこで肝を据え、どんな運用でも国債にもリスクあります、株にもリスクあります。いずれにせよ130兆円持っているから運用しなければいけない、現実的には。それでリスクは出るんだけれども、そのリスクは…現在改革したらいいです。私が恐れているのが、株をしても何をしてもいいのだけれども、株価が上がると思っていたらドンと下がって、損が出たらいきなり責任追及で、全員がGPIFを辞めさせろと。辞めさせるぐらいならいいんだけど、株を全部やめてしまえとなると良くない。たとえば、リーマンショックの時には大暴落したわけですね。もしあの時、GPIF改革をあの前にやっていて株を買っていれば、損が出たではないですか。国民が気づいて、株は禁止となったら大損です。なぜかと言うとリーマンショックの時に、9兆円ぐらい損をしたんですけれど、そのリカバーで昨年は10兆円以上、利益が上がったということで、大暴落したあとは逆に言えばチャンス。つまり、市場は揺れ動きますから、それに振り回され、結果的に肝が座っていないと一番損をしてしまう。肝が座っていないなら、リスクをとるなという話です。それにあった運用の仕方をしましょうと。国民だけではなくて、むしろ懸念しているのは政治サイドです。改革したら肝を据えて、長期でということです」

熊谷亮丸 大和総研執行役員 チーフエコノミストの提言:『ポートフォリオとガバナンスの一体改革』
熊谷氏
「ポートフォリオで言えば、国債のウエイトが高すぎるわけですから、しっかりと下げていく。加えて、コーポレートガバナンスという話をしましたが、そういうものをしっかり日本で規律を効かせることによって、ある意味で金融サイドから日本の企業経営者に対していろんな形で働きかけ、日本の生産性が上がっていくような形で、日本の成長戦略にもなっていく。加えて、ガバナンスの部分で言えば、責任の所在が非常に曖昧ですから、ポイントとして常勤の専門家の合議制による機関をつくっていく。この2つを一体でやることが必要であると」