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2014年8月18日(月)
就活戦線の異端児登場 週休4日のゆるい就職

ゲスト

若新雄純
慶応義塾大学特任教授
海老原嗣生
独立行政法人経済産業研究所コア研究員
大山泰
フジテレビ解説委員

雇用問題解決策 仕掛け人
島田キャスター
「今夜のゲストの若新雄純さんは、なかなかプライムニュースにはいらっしゃらない感じの見た目の方ですが。福井県若狭町に生まれました。2005年になりますが、就職困難者向けの就労支援サービス会社を大学の先輩と共同創業していますけれど、これはどういった会社で、なぜ興味を持ったのですか?」
若新氏
「これは、先輩がそういう分野の活動をずっとやっていて、精神障害者手帳を持っている人も企業の法定雇用率といって、障害者を何人雇っているというようにカウントされるようになってきたような流れの時に、先輩がこれはこれから大きな事業になるし、社会的な需要もあるし、ビジネスとしても継続的なものができるのではないかということで、私としては、障害者の就労支援以上に、そういう新しい働き方をいろいろと模索できる良い機会かなと思って一緒にやることを決めて、やっていました」
島田キャスター
「現在は業界最大手企業に成長し、うまくいったと」
若新氏
「そうですね、現在1000人近くいるらしいです。社員さんが」
島田キャスター
「らしいということですが、2007年に拡大した組織に適応できずに取締役を退任、自身もつくった1人なのに、適応できなかったというのは具体的にはどういうことですか?」
若新氏
「たぶん最近流行の中二病ということだと思うんですけれども、中学生ぐらいの時に、ビジュアル系バンドの全盛期だったんですよ。あまりにも屈折した世界観がすごく衝撃的で、それにはまって、そこから髪の毛にしても、見た目にしても、過剰にこだわるようになって。だから、就職できないだろうと思っていて、先輩と会社をつくったんですね。でも、会社が大きくなっていくにつれて、だんだん転職してきた、年上で経験ある人に、会社とはこういうものなので、こうしてくださいみたいな。障害者の就労を支援するということは、いろんな方が来るわけですよ。障害も個性だと捉えることが大事だということを謳っていたわけなので。私の髪の色がちょっとどうなんだと。別にそんなもの障害でもないわけだし、個性じゃないかと思っていたんですけれど、組織の士気が下がるとか、なかなかうまく売上げが上がらない時に、それは若新さんの見た目が絶対マイナスな方に作用しているのですよみたいな」
島田キャスター
「ここ(髪の毛)に集中しちゃったわけですね」
若新氏
「そういう議論もあっていろいろ譲っていたんですよ。いろいろ譲っていったのですが、最後、髪を切った方がいいでしょうと言われた時にそこはちょっと越えられない一線でして…」
島田キャスター
「そんなわけでこの会社を辞めました。2009年に慶応義塾大学の大学院で産業・組織心理学を研究し、独立して、様々な企業の人材・組織開発コンサルティングなどを行うということですけれども、具体的な研究内容というのは、これはどういうことでしょうか?」
若新氏
「特に、ワークモチベーションというのを最初やって、仕事における労働の動機づけというか、モチベーションの研究と、あといかに多様な素質を持った人、多様な能力を、才能を持った人が画一的にならずに、それぞれ1人1人の可能性を発揮できるような組織づくり、人材育成のやり方、いわゆるキャリア開発のやり方の新しいモデルみたいなものを研究していました」
島田キャスター
「それは自身が仕事の内容とは別に、見た目だけで非難されるというか、これをしたら、あれをしたらというのに馴染めなかったというところが原点ではありますか?」
若新氏
「そうですね」
島田キャスター
「ちなみにですが、関係ないんですけれども、年齢は何年に生まれたというのは、はてな年というのは?」
若新氏
「いつもお願いしているのですが、もともとビジュアル系バンドが好きだったので、ビジュアル系の人達は、年齢を非公開みたいにして、たとえば、GACKTさんとかね」
海老原氏
「聖飢魔Ⅱとか、2万歳とか言っていますものね」

NEET株式会社とは
若新氏
「はっきりいってすごく非生産的な行動だと思うんですよ。歳を隠すとか。でも、いいと思う。無駄なこだわりみたいなのが大事だなというのを現在になって、やたら強調しているのと、ニートだけの会社というのをやっていて…」
島田キャスター
「2013年のNEET株式会社」
若新氏
「ヒエラルキーというものを全部壊してみようという実験が1つあって、会社に集まっているメンバーは年齢も皆わからないです。もっと言うと、本名もみんな明かしてなくて、明らかに年下のメンバーも皆、私とタメ口だったり、呼び捨てしたりするのですが、そういうことも含め、歳もいくつだからということは(関係ないので)、そういう概念に縛られやすいので」
島田キャスター
「そうですね。特に日本社会は先輩後輩、先に生まれた、後に生まれたというのを、必ず自分の中で覚えて、敬語を使うかどうかと決めますものね」
若新氏
「意識しちゃうじゃないですか」
島田キャスター
「それはダメなのですか?」
若新氏
「いいかダメかはわからないんですよ。いいかダメかはわからないけど、敢えて、そこも1回なかったことにしてみようというか、リセットしてみたらどうなるかなという、そういう実験ですよね。それもあるので、徹底して私も年齢非公開にして」
島田キャスター
「NEETの皆さんといいますか、何人ぐらい集まっているのですか?」
若新氏
「165人」
島田キャスター
「165人、ニートが集まったんですよね。それは上は何歳ぐらいから下は何歳ぐらいまでですか」
若新氏
「一応、国が決めているのは35歳となっているので、それぐらいの人までで、下は20歳ぐらいからいます」
島田キャスター
「ニートの人に呼び掛けた。どんな会社ですか。何をしているのですか?」
若新氏
「一番の特徴は、全員取締役です。NEET株式会社は」
島田キャスター
「165人が取締役なのですか?」
若新氏
「はい。全員取締役で、かつ、私以外は全員株主ですよね」
島田キャスター
「株を持っている?」
若新氏
「はい。私だけ株がないんです。つまり、それは結構、危険な話ですよね。組織で、全員平等で、株を持っていて、そこの統治をできる人がいないわけですよ」
島田キャスター
「そうですよね。誰が責任を持つかという」
若新氏
「責任は私にある。一応代表取締役なので。問題が起きて逮捕されるのは私ですが、経営権は全員にあるという。それも、そういう実験をしてみようと思って。ニートというとこれまでの社会の枠組みの中ではうまく働けなかった、仕事にたどり着けなかった人達は思い込みがあるではないですか、いろんな理由があると思うのですが、敢えてそのものを問題にするのではなくて、彼らがいきなり事業をつくる側というか、自分達で自由に会社を経営する側にいったら、何か大きなブレイクスルーが生まれるのではないかと」

就活問題の解決策 アウトロー採用とは
島田キャスター
「若新さんは2012年に就活アウトロー採用というのを開始したと書いてあるのですが、今年も行っているんですね」
若新氏
「そうですね、これは、結構、安定的に」
島田キャスター
「アウトローというと、辞書的な感じで言うと、秩序の外とか、法の外みたいな」
若新氏
「犯罪者という意味ですからね」
島田キャスター
「これはどういう人達を対象にしているのですか?」
若新氏
「就活は現在、結構、固有名詞なぐらい、皆さんの中で就活といえば、イメージできるものがあるわけではないですか。だから、就活と言えば、こうじゃなきゃいけないという、その決まりというか、枠がすごく強いと思うんですよね」
島田キャスター
「確かに、私達の思い浮かぶ就活というのはリクルートスーツのようなものを着て、皆で一斉に並んで、エントリーシートを出して、いわゆるそういう就活ですよね」
若新氏
「たとえば、問題があるとか、変えていかなければいけない議論をした時に、何だかんだ言っても、ちゃんと就活をしちゃうやつを集めても、意味がないと思うんですよ。だから、就活が変だとか言っておきながら、でも、親が心配するので、明日行ってきますと。昨日言っていたのは何なのという話ですよ。だから、実験的に新しいものを模索していくのだったら、完全に就活なんかバカらしくて止めてしまったやつが、全然できなくて、内定がないというやつだけを集めようと思って」
島田キャスター
「どこがバカらしいと思っているのですか、その人達は?」
若新氏
「結構、彼らの話にはリアリティがあって、たとえば、渋々行ったらしいんですよ、説明会に。大きな何とかメッセみたいなところでやっている。彼は1時間ぐらい遅刻して行ったらしいんです。そうしたら、皆ちょうど、1つのプログラムが終わって、学生がバーッと建物から出てきたらしいんですね、皆同じスーツ姿で。彼は、映画の何か撮影のエキストラか何かと思うぐらい画一的で、ハッと思ったらしいんです。映画のエキストラなのか。普段は1人1人、自分達、いろんなこと思っているねと議論をしているわけですよね。高校生的な人生を歩みたいとか、仕事で自分らしさを出したいと言っている若者が、急に向こう側に行った瞬間に、映画のエキストラですよ。台本も誰も用意してないのに、台本通りに歩いているぐらいの勢いで出てきたらしくて、やばいと。彼はやばいと思って、そのまま就活できなくなったと。彼も有名な大学行っているんですよ。だけど、何か、気持ち悪いと思って入れなかったらしいんですよね」
島田キャスター
「有名な大学に行っているということは、アウトローの人達というのは、たとえば、勉強が嫌いだったり、できなかったり、いわゆる有名大学ではない就職に不利なところに行っている人達が集まっているわけではないのですか?」
若新氏
「そうなんですよ。いろんな人達がいますけれども、軒並み、平均的に言えば、高度な教育を受けてきている。だから、いい大学、有名な大学。親から、親戚からすれば、そんなところに入れたのだから、普通に就職すればいいじゃないという大学に行っている人もたくさんいます」
島田キャスター
「そういう人達がどれぐらい、どういうふうな形態で採用が行われるのですか?」
若新氏
「どこから説明したらいいのかアレですけれども、このサービスはウェブサイトから見てもらえればわかるんですけれども、面接に、普通のリクルートスーツとか、そういうスタイルというのは、全部撤廃をして、私服でも何でもいいと。エントリーシートというのもない。エントリーシートもなく、企業説明会もやらないんです。完全にオープンな場をつくって、彼らが自由な議論をする中に企業の人に1人の人間として来てもらって、ぐちゃぐちゃ喋る。選考するのではなく、一緒に時間を過ごすというコミュニケーションの場を重視しているので、何か答えを導き出すようなディスカッションとかそういうことをするのではなく、お互いに時間を過ごすというか、お互いにもっと時間をかけて、自然と出会って、自然と知り合うというような時間を設けるようにはしているんですよね」
海老原氏
「私も公的なところにずっと言っていたんですよ。だから、そんなものお互いに新入社員で、2週間とか、3週間とか、ゆるく入ってみるのもいいではないですか。それで、その時にあうかあわないかで決まるわけじゃないですか。面接の15分で人柄がわかるわけがないですから」
島田キャスター
「でも、それをずっとやってきたのが日本の社会、日本企業ですよね」
海老原氏
「そう。だから、3割が辞めて、それは昔からずっとなんですよ。要は、40年前から3割辞めているのは、そのせいですよね」
島田キャスター
「3割辞めたとしても、これを続けているということは企業にとってメリットがあったわけですよね?」
海老原氏
「それは、粒ぞろいの人を採って、大企業にとっては、いろいろな所に働く場所があるから、どこかしらにポジションはある。こういう形で考えれば、非常にリーズナブルではあるわけです。ところが、この人がやったことで、いろんなことがわかると思うんですけれども、日本の中堅、中小企業は千差万別ですから。たとえば、ヤンキーみたいにすごく目力の強い、メンチ力採用をやっている企業だって、たくさんあるんですよ。そいうところにちょっと型破りな人がうまく入る可能性もあって、あれ、こういう人でも普通に就職できるんだという事例が、口でいつも点で話している話がこの人(若新さん)が拾ってきて、面になるかもしれないと思っているんですよね」

ナルシスト採用とは
島田キャスター
「どうしても気になってしまう、今年7月にナルシスト採用がスタートしたということですが、ナルシストというのは、自己愛の強い人達という意味でよろしいのですか?」
若新氏
「もうちょっと、プロジェクトにあわせて言えば、自意識過剰な人達」
島田キャスター
「この人達を採用する会社とのマッチングをするということでしょうか」
若新氏
「だんだん若者の一部が、自分が置かれている環境というか、社会を疑い始めていて。社会を疑った時に基準になるのが自分自身しかないわけです。自分という軸がないと、むしろ社会を疑うことはすごく怖いですよね。社会を疑える人。もう1つは、すごく物事を客観的に見られる人が多いだろうと思っていて、自意識過剰になるということは、自分も含めて物事を俯瞰しなければいけないので、そうすると、すごく社会を、メタ認知と言うんですけれども、客観視できている、賢い若者。社会システムに安直に盲信しない人たちが集まるのではないかと思って、実験的にやってみたんです。そうしたら、すごく物事を構造的に捉えて、哲学的に考える人もいるし、すごくシステマティックに考える人もいるし。何せとにかく目の前にあるものが全てではないということをちゃんとわかっている人達が結構たくさん集まって。もちろん、それだけ言われると大きな会社からしたら、そんなやつ面倒くさいではないですか?」
島田キャスター
「それを言おうと思っていたんですよね。ちょっと面倒くさそうだなと。だって個人的に付きあうのもナルシスト、自意識過剰な方は何となく気を使ったりしますよね」
若新氏
「大きな会社とか、官僚的な組織が採用するにはすごく使いづらいと思うんですけれども、その分、彼らは、物事を疑ってみられるし、常に多様な角度から考えられるので、そういう人が、むしろ中小企業とか、ベンチャー企業に入っていけば組織を強くしていける。彼らも活躍できるのではないかと思って…」
大山解説委員
「たとえば、世の中に出るとどんな中小企業でも取引先とのつながりとか、お客さんとのつながりとか、もう古いかもしれませんけれど、礼儀を知らなければいけないし、相手のことも考えなければいけない。ビジネスはビジネスだから、それなりに論理的にも考えなければいけない。そういうよく言われる企業が採用する時に大事にしているのは、やたら尖がって、頭が良いよりもいわゆるコミュニケーション能力と言いますけれども、きちんと世間様、人様ときちんとやっていけるかどうかのベースがあるということをよく言われます。そういう点から言うと、尖がっていたり、ナルシストだったりすると、そこの部分の条件というか、人物像に適わないような、本当に突き抜けてしまったような人も多いのですか?先ほどから実際どんな人がどういう形で社会に出てくるのかをちょっと知りたいなと」
若新氏
「これは面白くて、つまり、人を組織に対してパーツとして採用するかどうかと考えると難しいと思うんですよ。パーツとしては適合しにくいと思うんです。彼らは、1人1人が人間なので、自分がパーツとしてあうかあわないか、まさにマッチするかしないかというところでいうと彼らは引かれてしまうのですが、その分、深く人と関わりたい、理解しあいたいという気持ちが強いんですよ。だから、普通の就活エントリーシステムの中だとすぐに引かれちゃっても、ここに来るような企業さんは時間をかけて、じっくりと話しあってくるところが多いので、ちゃんとお互いに理解しあうと。何が尖っていて、ズレていて、なぜ偏屈なのかというのをきちんと話し合って、理解してくれるような企業、もしくは経営者が現れると、こんな僕を受け入れてくれる。こんな僕と一緒に仕事をしたいと思ってくれているんだということにすごく喜ぶんですね、若者側も。そうなると、むしろ僕はこういう会社でがんばって働きたいと、こんな僕を受け入れてくれるだから、むしろ深いコミットメントが生まれるんですよ。でも、忠誠心と言っても、完全な主従関係ではなく、じゃあ、僕も是非、ここでがんばるので一緒に会社を盛り上げていきたいという、そういう気持ちになるというのが多くて、始めて2年しか経っていないですけれど、そういう意味では就職したあとも、うまくというか、いい感じで働いている。企業にとっても、どうなるかちょっとわからなくて、怖かったけれども、どんどん自分なりに新しい仕事を見つけてくるし、会社の雰囲気も面白くしてくれているという人が多い」

大卒就活雇用問題 解決策を探る
島田キャスター
「具体的な名前はいいですが、たとえば、どんな業種の企業がそういう人を採用するのですか?」
若新氏
「実はあまり学生側からも、業種はあまりこだわりがなかったのですが、現在のところ多いのはIT企業ですよね。IT企業は、ITにあうかあわないかではなくて、歴史が浅い企業だから柔軟に対応してもらえたと思うんですけれど、なかなか製造業のメーカーとか、そういうところは難しいかもしれないですね」
大山解説委員
「現在B to Bの製造業はあまりないとおっしゃったんですけれども、技術や研究の積み重ねがあったり、顧客との商材のニーズのやりとりがあったり、製造業に限らず、石の上にも3年とか、10年はやいとか、先輩の背中を見て、お客さんや業務のやりとりを見て、ようやく何年かかけて覚えていくというような、そういうところには、必ずそぐうかどうかというのはちょっと疑問なのですが、そのへんはどうですか?」
若新氏
「まだまだ世の中の仕事は先輩から継承する、まさに技術とか、知識を継承してやれるようになる仕事が多いと思います。大工さんはわかりやすいですよね。この割合は、今後、日本で言えば減っていくと思います。だんだんと新しくなるか、つくり出さないといけない。市場そのものを考えていくという仕事が現在はまだ少ないですけれども、今後は増えていくはずなんですね。製造業とか、技術を継承して、大量生産すればいい仕事は減っていくし、アジアにどんどんとって代わられてしまうわけです。日本の社会はこれまでなかった何かに価値をつくるという仕事を増やさなければいけなく、そういう会社はまだ割合は少ないですけれども、そういうところとの相性がいいかなと思っていて、現在比率的には少なくてもこれから増えるであろう、石の上にも3年ではなく若い時からどんどん常識を疑って、失敗しながら模索していくというようなことができる会社にそういう若者を送り込んでいきたいなと」
大山解説委員
「ソフト系、新たなB to C市場を開拓する、そういうことに向いているという、そういうふうに受けとったのですが」
若新氏
「そうですね。そういう会社のところが、現在のところ相性がいいですけれども、そういう会社でなくても、経営者の方はそういった若者をとり入れて、人を画一的に使うのではなくて、人が入ってくることで組織が変わるということを実践される方がちょっとずつ増えてきたんですよね。組織も人と一緒に変えていくという方にはすごくいい評価をしてもらっているので、そういう会社が増えればいいなと思っています」

ゆるい就職とモラトリアム
島田キャスター
「ゆるい就職とは何ですか?」
若新氏
「日本人は週5日働くのが普通ですね。それを週休4日にしようと。最初は首都圏に限ってですが、月15万円の給料をもらう。最低限の生活ができる。仕事の時間を最低限にして、仕事以外の時間にも十分費やせるのような若者向けの就職サービスということですね。来月から始めます」
島田キャスター
「モラトリアム(猶予される期間)の見直しとは?」
若新氏
「簡単に言うとモラトリアムが短すぎると僕は思っているんです。1人前の社会人になるまでに許されるフラフラしていてもいい時間というのが日本の社会は短すぎると。現在、確か日本だと新卒で就職する平均年齢は23歳ぐらいですよ。僕はこれを28歳か29歳ぐらいまでに上げたいと思っている。日本みたいにある程度社会インフラが整ったヨーロッパ、北欧とかの成熟した社会では、実は新卒で就職するというのは、平均で30歳手前ですよね。しかも、大学へ入学する平均年齢も、たとえば、ノルウェーとか、フィンランドとか、国の規模は小さいですけれども、ああいうところは政策を打っていて、大学へ入る平均年齢も22歳、23歳ですよ。高校出て何年間もフラフラしている」
島田キャスター
「何をしているのですか?その人達は」
若新氏
「一言で言えば、ブラブラしている。バイトしたり、旅行したり、目先の生活に追われなくてもいいような豊かな環境なので、稼ぐために働くのではなく、いろいろ体験すると。新しい出会いを生み出すと。高校生まででは体験できなかったこととか、行ったことのなかった場所とか(に行き)、多様な経験を(積む)。答えは見つからなくてもいい。もしかしたら、こういうことなら夢中になれそうだということを見つけてから、大学に入って、大学も平均5年以上行くらしいんですね。休学とか、留年が普通です。遠まわりをいっぱいしたうえで、この仕事ならがんばってみようと、30歳手前で新卒として就職するというのが北欧では平均です」
海老原氏
「私はこの仕組みはすごく好きで、ただ、モラトリアムの考え方を、ヨーロッパのことを礼賛するのは嫌いですよ。ヨーロッパは悲惨だから。たとえば、北欧系がどうなっているかと言うと、日本以外の国は未経験で採用なんて言うとんちんかんなことをやってくれないわけですよ。中途採用でポストが空いたところに採用するんです。たまたま下の方が空いた時は学生が入れる可能性があるけれども、それだって中途採用の人と並列で採用を競わされると言うと、ほとんど職業訓練校にまず入るんですよ。15歳から18歳の時に職業訓練校に入る人の比率がすごく多いんですよ。どちらかに入っているんです。入って徴兵逃れした場合は、2倍ボランティアしなければいけないんです。こういう形で年齢ですごくいっちゃうんですよ。15歳から18歳でもう職業を選んでいるんですよ。中小企業に勤めて、ある職群の職域以上になる時にはカードル(ホワイトカラー上層部)とかの検査があって、学位を問われるんです、向こうでは。酷い差別的。そういう意味で大学に入り直さないといけないと言うので、20代後半で入り直す。それも30歳までに学位をとっていないとエリートコースにいけないので30歳までに何とか入り直すという人が非常に多いんですよ。こんなに苦労している社会で、一概にヨーロッパ型のモラトリアムで良いというのはあまり…ただしこの仕組み(ゆるい就職)は感心している」

ゆるい就職とワークスタイル
島田キャスター
「ワークスタイルの多様化とはどういうことを狙っているのですか?」
若新氏
「日本人の若者がぜんぶ高齢で就職すればいいと思っているわけではないので、そういう働き方もあっていい。そもそもこれだけ人がいれば毎年何十万人と就職していくわけではないですか。たとえば、2日だけ働いてみるとか、昼間だけとか、夜中だけとか、働くという形にいろんなものが出てきていいと思うんですよね。それは別に皆が皆でなくて、少数の人がそういうマニアックな働き方、マニアックな会社を探せればいいと思うのですが、あまりにこうでなくてはいけないというのが強すぎ、その選択肢をとれなかった人、もしくはそれをやりたくない人が肩身の狭いというか、ワークスタイルを描きづらい。たとえば、週4日でどんな若者が来ているかというと、もちろん、ちゃんと教育を受けている有名大学を出ている人も多いし、普段音楽をやっているとか、絵を描いているとか、小説家になりたいとか、ネット上でゲームをつくっているとか、仕事以上の文化的な活動をやっている人が多いですよね。そもそも週2日の休みでやればいいのではないかという話なのですが、そもそも人生というのは働くためにあったのかと。現在の若者は、人生の目的を、仕事を通じてやらなければいけないということ自体がおかしい。労働をして労働の対価として報酬を得るということによって、人生が全部設計されるということは無理があると思うんですよ。労働も必要だと思いますよ。お金もある程度必要だと思いますが、お金を得ても一緒に遊ぶ時間もないし、遊ぶ相手もいないと意味がないと思うんですよ。貨幣がないと手に入らないものは15万円で稼ぎながら、それ以外の時間で一緒に出かける友達ができ、自分のやりたいことができる仲間が見つかれば消費しなくても充実した時間を過ごせるかもしれないし、そういうようないろんな暮らし方、ワークスタイル、ライフスタイルをつくっていかないと何のために勉強してきて、働いているのか」
島田キャスター
「週休4日で、自分のやりたいことに費やすと?」
若新氏
「たとえば、絵描きになりたい。アトリエに入って師匠に教えてもらわなければいけない。師匠さんも、週5日修行に来ますと言ったところで食べさせるだけのお金が払えるかというと、そうではないところはたくさんあると思うんですよね。でも、どこかに弟子入りしたいと。これだったら3日間は生活のために仕事をして15万円稼いで、残りの4日間は、たとえば、絵描きのための弟子入りをする。そうしたら4日間の弟子入り期間で、たとえば、月に貰える手間賃が3万円ぐらいだったとしても足したら18万円ではないですか。絵描きの修行もできるし、自分の生活もできる。こういうスタイルが全くなかった。建築家もそうですよ」
島田キャスター
「しかし、いつかはその生活は終わりを告げるということなのではないですか?モラトリアムだから」
若新氏
「そうですね。だから、ずっとこの生活をするわけではないです。納得するまで修行をして、何か芽が出るかもしれないし、やるだけ、やって自分はこれで食べて行くのは難しいと気づくのか…昔はキャリアアップと言いましたけど、別にアップしていかなくても、納得するまでやって大きくキャリアチェンジしてもいいし、キャリアストレッチとしていますが、上がっていくだけではなくて、もっと柔軟でいいと思うんですよね」
海老氏
「結局、3日、4日間休めるということで、何かに投資をして、それも、ある時が来たら一生真面目な仕事に就かなければいけないという概念が日本人的なのではないかと思っちゃうんですけどね」
若新氏
「安心してください。ゆるい就職はそうなのですが、一生遊んで行くという発想のためにニート株式会社がある。全員がこれということではなくて、ある程度、親も心配している人もいると思うんですよね。だから、労働という概念を超えて人生を描いている人もいるし、労働の中で多様性をつくりたいという人もいると思うので、いろんな選択肢を出したい」

仕事観&雇用のあり方 目指すべきは…
大山解説委員
「日本は生産労働人口が減って行って、でも企業がこれをやりたいという需要がどんどん出ているのに、それにあわせる労働力がないということになればせっかくの収益のチャンスを逃すわけですよ。そういうことはやっちゃいけないということも含め、優秀な女性の方も家庭にいた人も働くべきだし、女性の社会参加もすべきだという、ある意味マクロ経済的な労働経済的な観点からきている。それはやがては日本のGDP、国全体の儲け、企業の儲けみたいなものですが、それの6割が個人消費ですよね。そうすると、女性が新たに働いたりして旦那さんと一緒に働いて収益が増えれば、もっと個人消費も増えて、税収も増えてGDPも増えて、というのが経済としては1つの方策です。もう1つ、たとえば、月収15万円で年収200万円以下になると、場合によって住民税を払わないでよかったとか、所得税もほとんどかからないぐらいになると税収も落ちてしまう。この人達にも月1万3000円ぐらいの国民年金の基礎年金保険料も払ってもらわないと、国の借金は1000兆円もあって、これから高齢者も爆発的に増えて年金医療介護とか付加方式であるというシステムを日本国がつくっている以上はそういうところは賄えないという現実もあるわけですよ。国全体が外貨も稼いで付加価値をつくっていかなければいけないというところ。そこから言うと、私は政府の代弁人ではないですけれど、そういうところの社会的感覚と日本社会で働くことの参加意識。たとえば、皆さん就職して税金を払わなくても行政サービスを受けるんですよ。タダで消防車、救急車が来たり、生ゴミも回収してくれる。そういうところで働いたところでお金もきちんと払わなければならない。そういう概念を感じないのですが、その辺はどうなのですか?」
若新氏
「もちろん、社会保障の制度も大事だし、僕らは公共サービスに貢献する必要もあると思うんです。それは当たり前です。ただ、現在つくられているシステム、現在施工されているシステム。経済がGDPで上がり続けて、人が増え続けて、市場が増え続けて、子供もどんどん生まれてという時代に設計されているわけで、それが完全に真逆になったわけなので、どこからどうとってどこに再分配するかという話は全部つくり直さなければいけないではないですか。あまりにも若い人の数が減っているのに、若い人からとって、高齢者がもらうという昔計算された制度をいろんな事情で、面倒臭いなのか既得権があるからなのかはわからないですけれど、変えずに、それでも若者に云々とやっていくのは難しい気がすると思うんですよね。もちろん、現在の人口の構造や、これからゼロ%成長が続いていくという時代にあわせた社会保障の仕組みとか、ゼロからつくり直して、それで若者に負担しろと言うのならわかりますけれど、若者も納得した計算式で貢献、負担していくのはあったらいいなと思うのですが」

若新雄純 慶応義塾大学特任教授の提言:『全部リセット』
若新氏
「私の取り組みはハッキリ言ってやり過ぎ、試行錯誤、行き過ぎなところもあるかもしれないですね。でも、とにかく大事なのはこれまで普通就職だったり就活だったり、こうだったというものを引っ張ってもあまり意味がない。それは何十年も前に設計されたものなので社会環境は大きく変わっているわけです。人口構造も若者の気持ちも変わっているわけなので、何が答えなのか完璧にわかっているわけではないんです。ただ、できるだけリセットして何もない状態からつくっていけば、次の何かが見えてくると思うので、とにかくリセットした方が良いとは思っているんです」

海老原嗣生 独立行政法人経済産業研究所コア研究員の提言:『脱 誰もがエリートを夢見る社会』
海老原氏
「日本は1本ですよ。壊してほしいんですよ。壊してほしい時にこういうことを言う人しか壊せないんですよ。壊せやしないです。しかも、良いモノは残るんですよ。皆さん壊れちゃうと言いますが、全部は壊れない。そう言う意味ではチャレンジして何とか新しい芽を見せてほしい」
大山解説委員
「今日2時間、若い世代をいじめる旧世代の代表のように見られちゃったかもしれませんけれど、若新さんがおっしゃっていることも、海老原さんがおっしゃっていることも、たぶん変化する社会の本質を突いている議論ができたと思うんです。若い人がお年寄りを助けるのかどうかの社会のあり方とか。非常に若新さんは純粋で熱っぽく述べていただいて、若い人達に限らず、世界中の人は自分が奴隷のような気持ちで働きたいという人は1人もいないと思うんですよ。そういう中で、日本の社会が変化していく中で政治の方も、今日のような議論にもっと深くコミットして表面的な働き方ばかりではなくて、皆が自尊心を持って前向きにどんどんエネルギーが出てくるような、いま時の若い人はダメではないので、そういうのを実現してほしい。新しい基軸ができてほしいなと思います」