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2014年7月30日(水)
中国・期限切れ肉問題 根本原因と残る不明点

ゲスト

髙谷幸
日本食品衛生協会専務理事
興梠一郎
神田外語大学アジア言語学科教授
柯隆
富士通総研経済研究所主席研究員

中国・期限切れ鶏肉問題 根本原因と残る不明点
島田キャスター
「今回の期限切れの食肉問題ですが、これまでの経緯を簡単に振り返ります。今月20日、中国上海市の食品加工会社の福喜食品ですが、期限切れ鶏肉を使うなどしていたことが上海のテレビ局の潜入取材として報道されました。翌日、日本マクドナルドが、チキンナゲットの販売を中止。その翌日、上海の食品監督当局が福喜食品の違法行為を認定したと発表して、ファミリーマートも、チキンナゲットなどの販売を中止しています。23日には、上海の捜査当局が、工場の管理職ら5人の身柄を拘束しました。25日、日本マクドナルドが、中国製チキンの使用を全て中止。こういったことに至るわけですが、食の安全が専門の髙谷さん。またしても中国で食の問題かという印象を受けるのですが、今回のこの問題の背景には、どのようなことがあると見ていますか?」
髙谷氏
「報道の映像で見ると、何か床に落っこちた肉を、また元に戻しているという話ですが、それは管理者がちゃんと見ていればできない話なのに、それでもやるということは、たぶん管理者は見ているはずですね。会社ぐるみでやっているのかなとしか思いようがないですね。だから、そういうふうになぜなったのかということだと思うんですけれども、その会社自身、報道によればHACCP(ハサップ)という衛生管理の認証も取っている施設だというんですけれども、だから、マクドナルドもファミリーマートもここと契約をしていたんですね。HACCPという衛生管理の認証を受けたということと、その通りに衛生管理をやるかという話は別問題ですね。認証を取る時は一生懸命にがんばるわけです。本当に取る気があれば。手続きもちゃんとして、書類もちゃんとつくる。それを見て、認証機関が認証するんです。それを、そのままやるかというのは、また別の話ですね、彼らは。認証を取る時だけは一生懸命にやるけれども、認証を受けてしまったら、それでもう安心で、普段の作業に戻るということもあります」
島田キャスター
「なぜその通りにやらなかったのか。そこに何が隠れているのですか?」
髙谷氏
「面倒くさいからです。手続きが面倒くさい。衛生管理は原料のチェックから始まって、製造工程をずっとチェックをして、それも全部記録をし、最後の製品になるまでちゃんと記録をとるわけです。それぞれのところでどういうチェックをするかは決まっているわけですね。温度管理はどうであるとか、包装の時はどうであるとか、それには金属物は入っていないかとか、異物が入っていないかとか、ちゃんと殺菌は何度で何分やったとか、そういうことを全部記録してつけていかないといけない。面倒くさいではないですか」
島田キャスター
「中国だけではなくて、他のところでも起こり得るのですか?」
髙谷氏
「起こりますよ。日本国内でも起こり得るんですね」
島田キャスター
「興梠さんは、今回の問題をどう見ていますか?」
興梠教授
「私は食品問題の専門家でもありませんので、全然違う角度、政治問題を狙い撃ちですね。もともと上海市当局はこの企業を守りたいはずですよ。地元に来ている外資ですから、大事な会社です。おまけに表彰までしているということですよね。なのになぜ急にね。おまけにこのOSIですか、他にも工場を持っているわけですよ。河南とか、河北とか。何でそちらは問題にならないのか。一番進んでいるはずの上海で起きちゃっているということですよね。そうすると、これを点として見るとよくわからない。最近の一連の、特にアメリカ系の企業叩き。すさまじいんですよ」
反町キャスター
「狙いはアメリカだったのですか。我々は、日本でこんなに大騒ぎしていますけれども」
興梠教授
「アメリカですよ。それと、政治と私は見ているんですね」
柯氏
「こういった話をされるならば、私はエビデンスが必要だろうと思うんです。推察するのはいいのですが、現在の中国は経済成長率が減少している。アメリカ企業を叩いていて、中国に何の得があるのか。問われるわけですから。私だったらやらせませんけれども。私はすごく強い政治的な狙いというのは、私は現在のところは感じない。私はどちらかというと経済をやっているものですから、だから、経済の合理性から」
反町キャスター
「そう言うと、説明がつかないということですか?」
柯氏
「アメリカを叩いて、中国にとって何も得をすることがないので、しかも、ついこの間、米中の戦略対話が終わったばかりなので。むしろ中国とアメリカの現在の関係は悪くないわけですよ、大きく言えば。だけど、こういう時に起きているものですから。説明ができないから、そういう政治的な解釈をするのは、やや私は無理があるような感じです」

外資系企業叩きの狙い
島田キャスター
「とは言え、中国のメディアは、こういう報じ方をしているんですね。中国の英字新聞チャイナ・デイリーは、外資だからといって危険な行為が見逃されるべきではないと。国営の中国中央テレビでは国際的ファストフード企業が中国で相次いで食品安全問題を起こしている。中国人の健康を軽視しているのか。ここでも国際的と。共産党の機関紙、人民日報も外資系企業は海外で法律を守っているのになぜ中国ではそうしないのかと。アメリカという言葉は使っていないのですが、外資、国際的というようなことを言っているのですが」
興梠教授
「これはアメリカ叩きのためのアメリカ叩きではないんです。要するに、国産品を買いなさいということです。それは、だから、習近平氏が中国の肉まん屋に行って、主席セットというものをアピールして、そこに取材を受けたと言われている、一般庶民にコメントさせているんですよ。それが人民日報に載っているんだけれども、中国の伝統的なファストフードはいいね、外資のジャンク、要するに、ゴミみたいな食べ物よりはいいみたいだということを言わせている。あとで書いたのかもしれない。習近平さんというのは、非常に中国の夢とか、中華民族の偉大なる復興とか、一種のナショナリズムを求心力にしているわけ。だから、外資を叩きたくて叩いているのではなくて、最近、こうやって集中的に批判されているのを見ると、たとえば、iPhoneなど中国で最近シェアを上げてきているでしょう。流通産業、スーパーとか、小売とか、ファストフードだと外資に席捲されちゃっているわけですよ。前から業界でも反発があるんです。そうすると、今回、1つ、先ほどエビデンスの話があったけれど、非常に気になったのは、中国のメディア自身が疑問符を提示しているわけです。上海の当局があそこに入りこんで調査したら、リストが出てきたと。A4で何枚かの。そこに150社の名前が載っている。つまり、OSI、福喜が供給している、供給先が」
島田キャスター
「卸先?」
興梠教授
「そう。中国の会社とか、店がいっぱい入っているんですよ。なのに、今回は、ケンタッキーとか、マクドナルドしか名前があがらないではないですか、中国メディアに。その中に中国の皆が知っているお店も入っていると。それを中国が持っていっちゃった。これは機密ですよ。これが全部暴露されちゃうと、今度は中国の地場のファストフード店が(叩かれる)。つまり、選択的な報道をするわけ。これを中国のメディアが報道しているんです。この150社のリストはどこに行ったのか」
反町キャスター
「そういう報道機関もあるのですか?」
興梠教授
「公式に報道されていますよ」
反町キャスター
「一方、マクドナルド、ケンタッキーはけしからんとやっているところもあると」
興梠教授
「人民日報ですよ」
反町キャスター
「政府系報道機関と独立系の報道機関で分かれるのですか?」
興梠教授
「いや、ほとんどが党宣伝部の管轄下に入っていますから。若干の報道の幅が違うんですね」
島田キャスター
「そうすると、興梠さん、アメリカに対しての風あたりが現在強いとのことですが、アメリカだけを狙っているわけではない?」
興梠教授
「当然、経済ナショナリズムというか、自分の産業を守りたい」
島田キャスター
「一番大きいのはアメリカであるから、アメリカに集中しているように見えるということですか」
興梠教授
「たまたまいろんな摩擦もありますから、経済的面で。だから、経済保護主義的な部分というのは前からです」

習近平政権と食の安全 食品安全法の実効性
島田キャスター
「実は現在、中国で政治の最重要課題の1つとして、食の安全をあげているんです。今年3月に開かれました中国の全人代で、李克強首相が食卓への汚染の解決に取り組んで舌の上の安全をしっかりと保障するとして食品汚染問題への取り組み強化に強い意欲を示しました。中国国内でも、たとえば、食の安全を巡る事件が大きな社会問題となってきました。主なものですが、2008年、粉ミルクに有害物質メラミンが混入して、乳幼児6人が死亡し、およそ30万人に健康被害が出ました。2011年には、大手食肉加工会社による筋肉増強剤入りの豚肉の販売が明るみに出ました。2013年には、カドミウムに汚染された米が流通したこと、山東省のスーパーがキツネの肉を牛肉加工食品として販売していました。というようなことがあっての、李克強首相の発言だと思うのですが、なぜ中国がそんなに食の安全に力を入れているんだと思いますか?」
柯氏
「食品が安全ではないから力を入れなければいけないというのがありまして、もう1つが共産党への求心力が低下しているのがありまして、中国のカルチャーの中で最も重要なのは料理ですよね。イギリスは海外旅して、金がなくなったらどうするかというと英語を教えるんです。我々が海外を旅して、金がなくなったらフライパンを買ってきて、中華料理をつくれば、食べていける。だから、料理というのは、我々のカルチャーであるから。でも、ここまで安全性が低下している。もしも高めることができれば、間違いなく共産党への求心力は高まると思うんです。それを狙って、たぶん今年の全人代で、李克強首相の話がありました。それから、中国の経済政策。昔からよく言われることですけれど、西側諸国で経済政策をやる時の目標は、たとえば、物価の安定、経済成長いろいろありまして、我々の場合は、中国の経済政策をやる時の目標は、何かというと、野菜を買うバスケットのプロジェクトとよく言われるんですね、籠で。要するに、インフレーションになったら、野菜の調達ができませんから、家の生活が脅かされる。だから、我々は料理、野菜、食品、このへんは中国人にとって、もちろん、日本人にとっても同じですけれども、それ以上に大きな問題になっているからですね」
反町キャスター
「柯さん、共産党政権は一党独裁、非常に強い政権、そうならば、そこまで国民生活に配慮しなくても、ある意味、食を大切にするというのはポピュリズムでもあって人気とりの政策なわけではないですか。たとえば、経済成長とか、国の安全を守るとかね。そういうことではなくて、食のというところで、ポピュリズムのように、国民に媚びているかのような政策を打ち出すというのは、これは現在の習近平政権、その近年の中国指導部の特長ですか。それとも、昔から代々、中国共産党が政権をとって以来、国民にすり寄ったような政策をスローガン的に打ち上げている部分というのは多いんですかね。
柯氏
「とても重要なご質問なんですけれども、答えは簡単です。昔からありましたが、ただ現在は経済成長率が減速していると。ついこの間まで2ケタ成長をしていたんですね。現在7%だから成長率が下がってくると一般の庶民が不満を持ちますよね。失業率もあがる。生活が苦しくなるから。そこで食品の安全を担保すると言われたら、ホッとしますよね」

食品安全法の実効性
島田キャスター
「中国でも、2009年に食品安全法というのが施行されました。ここにはやってはいけないことが明記されているんです。具体的には腐敗変質した食品、品質保証期間を過ぎた食品などの製造、販売を禁止する。食品の製造、販売にあたっては食品安全基準を満たすとともに、用具および設備などの環境を清潔に保たなければならない。食品の製造、販売企業は、企業内に健全な食品安全管理制度を構築しなければならない。などなどいろいろと書いてあるんですけれど、髙谷さんの専門の方から見て、この法律というのは現在十分に機能しているかどうかということ、この点はいかがでしょうか?」
髙谷氏
「法律で括るのは簡単なんですね。本当に。だけど、本当にその通り、皆さんがやっているかどうかというのは別の話ですから。現在の法律は、日本でとっくの昔にあるんですよ。食品衛生法の第6条に、最初の腐敗変質のやつが書いてありますし、期限及び保証も、当たり前のことがいっぱい書いてあるわけですよ。以前、私が若い頃に聞いた話ですけれど、中国の食品に関する規制は日本の食品衛生法をベースにつくりましたと言われているんです。前からちゃんとあるはずです。わざわざ現在なぜこんな時に言うのかなと。前からあるはずですね、この規制は」
島田キャスター
「何ででしょうね。2009年というのは」
髙谷氏
「わざわざ言ったのは、それまでつくったけれど、全然守られていなかったから」
島田キャスター
「2009年以前にも?」
髙谷氏
「以前にも。もっと前です。まだ2000年に入る前ですよ」
反町キャスター
「食品安全法ができる前も、できたあとも、中国の食品衛生環境事情というのは変わっていない?」
髙谷氏
「変わっていないということです」
反町キャスター
「何も変わっていない?」
髙谷氏
「はい」
反町キャスター
「それは、たとえば、日本だったら厚労省とか、そういうところに食品Gメンとは言いませんが、そういう人達がいて…」
髙谷氏
「現在は都道府県にいるんです、全部。全国の都道府県に保健所があって、その中に(いる)」
反町キャスター
「中国はないのですか?」
髙谷氏
「たぶんそういうのはないのでしょう、組織的に。だから、北京政府は全部の州に指令を出して、ヘルスセンターみたいなものをつくって、保健所をつくって、そういうところに監視員、スーパーバイザーでもいいのですが、監視員を置いて、きちんと監視をさせればこんなことはないです」
島田キャスター
「柯さん、中国人の方の、中国国内に流通している食についてなんですが、信頼しているのですか、中国人というのは。流通しているものについて」
柯氏
「これは答えるの、とても難しいんですけれども、それぞれの所得層の人で、それぞれ食べるものが違っているわけです。ランク付けされているというか、暗黙にですね。たとえば、金持ちの人達が有機野菜を買う。底辺の、ボトムの人達が自由市場で買ったりするわけですから、そこは汚染されているわけですね。ただ、自己防衛として、たとえば、野菜を買ったら、なるべく1時間か、40分ぐらい水につけて、水道水を流し放しで、残留農薬か何か有害物質を流してから食べると。それから、もう1つ重要なポイントは、なるべく加工されたものを食べないようにしようと。たとえば、大豆を食べるのはいいけれども、豆腐になった時に何が入っているかわかりませんよね」
島田キャスター
「所得に関係なく、皆の認識として、中国の方々は思っているのですか?」
柯氏
「高所得の人達は信頼できるところから買う。それは高いわけですから。自由市場で売っている豆腐を見たら疑うよね。それから、もやしなんかちょっと白過ぎるじゃないかと。漂白されているのではないかと。そういうのはなるべく買わないと。そういう自己防衛の部分があるわけです」
島田キャスター
「どの所得の方も信用していない。そういう意識があるにもかかわらず、つくる人達、工場で働く人達に、現在、法律などは全然浸透していない。このギャップは何ですかね」
柯氏
「ギャップが、先生がおっしゃるように、法律の条文はできているけれども、それを執行する、そのメカニズムが用意されていなくて、むしろ、そういう不正をした方が得をするんですよ。たまに見つかるかもしれませんけれど、利益ですから、後ろにあるのが。全てそうだと思うんですよね」
反町キャスター
「そういう意味でいうと、消費者行政みたいな、消費者を保護する政策というのが中国においては、たとえば、食品にしてもそうですし、大気の汚染についてもそうですが、消費者保護の行政というのが、現状では未整備であるという言い方でもいいのですか?」
柯氏
「いや、ありますよ。ありますけれども、3月15日は、消費者保護の日と言われて、中央テレビとか、いろいろなマスコミで大々的にキャンペーンをやるけれど、でも、あれはパフォーマンスですね。経常的に抜き打ち調査というか、ランダムチェックというのは全くなされていませんから。ですから、たとえば、ある会社がこういう不正をやった場合にその後ろに地方政府幹部がいるとすれば、私が消費者で、これはおかしいではないかと言って、告発できるかといったら、できないわけですね。だから、法制度そのものというよりも、司法制度ですね」
反町キャスター
「検査体制?」
柯氏
「そうです。きちんと責任をとらせるという司法制度を強化しなければいけない。でも、最後は一党独裁の政治にぶつかると思うんですね」

日本と中国の現実と課題 食をめぐる依存関係
島田キャスター
「中国から多くを輸入するということは、値段、安さが日本によっては魅力だと考えてもよろしいのですか?」
柯氏
「いや、それだけではなくて、中国に代わるようなサプライヤー、供給してくれる国があればいいのですが、ないんですね。こういう問題が起きると毎回のことですけど、テレビがスーパーにインタビューに行くと、主婦が中国の野菜は買わないとおっしゃるのですが、しばらくするとまた忘れるのですけれども。実はアメリカでも似たような話で、アメリカは9月の大学進学の季節に入ると、(学生が)アパートに入ることになるが、そこでカタログが配られる。ほぼシーツや、枕などがメイドインチャイナになっていて、アメリカのそういった生産業界が頭にきていて、メイドインUSAを入れてもらわないと困るという話があります。あるアメリカの若手の研究者はこういう実験をやってみたのですが、絶対に中国の製品を買わずに生活を2週間続けることができるかとやってみたのですけど、その晩、ガールフレンドの誕生日パーティーをやろうとしてケーキを買ってきたけれども、ロウソクが見つからない。全てのロウソクがメイドインチャイナで、その実験はその日に終わってしまった。中国から離れることはあり得ないのだから、中国の安全性をどう確保するかという次のソリューションというか、解決策を考えないといけないと思うんですね」
興梠教授
「冷凍食品のデータもありますよね。あれをちょっと見た事あるんだけれど、17万トンぐらいが中国から入っているんでしょう。冷凍餃子事件があった時はボコッと下がったんですけれど、2008年、2009年ですかね。また上がってきているんです。次はタイですよね、今回タイに振り向けようかという話もありますが、しかし、冷凍食品業界の方々も言われているけれど、中国のような広大な国で東西南北、気候も違い、食材もごぼうを中国人は食べないのに、日本用につくっている。それを考えると、食材が調達できるわけです。あと中華料理の調理技術、あらゆるものが全部入っているではないですか。醤油を使う文化だし。そう考えたら、私達が冷凍食品を食べないという生活に戻れば別ですけど、そうすると、コストが非常に高くなる。安くて質の良いものを求めているということですが、それが可能かどうかです。現在の生活を維持して、携帯でも(何でも)あらゆるものはメイドインチャイナではないですか。中国人が日本に来てメイドインジャパンを探して歩くわけですよ。ほとんど見当たらないわけですね。メイドインチャイナはいらないと言っているんですが、何も買えませんよと。そういった中国と日本経済の一体化というのは胃袋までいっちゃっている。と言うことを日本の食糧自給率も含め、自分の問題として考え直さないと、向こうの問題ばかり批判しても、そこに頼っている自分はいったい何なのか。最後はそこにいっちゃうんですよ」
髙谷氏
「安いから中国からものを入れてくると思うんですね。日本の消費者に安いものを買ってきて、それなりの値段で売る。企業というのは営業ですから、利益を追求するのは当たり前ですよね、当然のことながら。そうすると、一番良いのは近くて安くてものが仕入れられるところとなってくると思うんです。ただ、日本が世界から1年間に輸入する食品の量の件数を見ると、うなぎのぼりに輸入件数は毎年上がっていくんですね。輸入重量はそんなに増えないんですね。胃袋は同じだからです。日本は人口がそんなに増えない。1億2500万人ぐらいではないですか。それが変わらなければ、胃袋は変わらないから、重量は変わらない。けれど、件数が増える。理由は加工食品が増えてくるんです。原料ではなくて、加工したものを持ってくるということです。加工するというのは相手の国で加工してもらって、持ってくるわけですから。そうすると、加工する過程でどれだけ衛生管理してもらうかという世界。中国からの量はたくさん入ってくるので、4年前の平成22年に日本の厚生労働省と中国が食品の安全について、お互いに添加物も含めて安全を確保しましょうという協定を、覚書を結んだんですが、その通りにやられているかですよね。そうすると、輸入する人が自衛をしないといけない、安い、悪いは一番困るわけですから、安いものを持ってくるのがいいのですが、それが正しく衛生的につくられるようにするには、きちんと向こうに行って自分達の目で衛生的につくられているというのを確認して持ってきてもらわないといけない」

食の安全を守るために 日本の企業・国民の意識
島田キャスター
「中国とは切っても切れないわけですから、監視を厳しくすると」
髙谷氏
「冷凍餃子だけは、他の事件と違うと思うんですね。従業員が故意にやったもの。冷凍ほうれん草の話は、日本の企業側にも結構責任があるんですよ。日本の企業側というのは輸入側ですね。要求が虫食いのない、色の良い、ほうれん草を持って来いと、そうでないと買わない。虫食いがないとなると殺虫剤を使うではないですか。そういう要求を突きつけているわけですよね。そういうものを持ってきて、違反が出たので何回も検査しているわけです。検査して違反するから検査の頻度を上げるわけです。それでも持ってくるんです。どうして輸入するんだろうと、輸入者に聞いたんです。100回持ってきて、1回通れば儲る、だから、持ってくると」
反町キャスター
「それだけ原価が安いということですか?」
髙谷氏
「そういうことです。そういう安い値段で、そういう過酷な条件を付ければ、向こうだってそれなりのことをやるのではないですか。ただ、僕が言いたいのは今回の工場のやっていることが、全ての中国の工場で行われているとは思いたくないですよね。他のところはいいことをやっているところもあると思うんですよ、だから、輸入してきていると思うんです。そこのところは日本の消費者の方々に考えていただいて、それから、企業の人達は自分達が何をすべきかということをきちんと考えてほしいと思います」
柯氏
「アジの開きは、スペインの沖で穫れた魚は、チンタオに持っていって開いているんですよ。なぜかと言うとスペインの人権費がものすごく高いから、中国の安い人件費で開いている」
反町キャスター
「そういうやり方はできる」
柯氏
「やっています」
反町キャスター
「結果的に、それは日本側のメーカーとしては、中国における生産現場の衛生基準を監視していくしかない?」
柯氏
「もちろんです。工場というのは、規模に関して最適化のスケールがあるのですが、今回、OSIの上海子会社を見ると、すごく大き過ぎた。本社から駐在している人は1人もいない。5人の幹部は皆上海の人間に任せっきり。だから、ガバナンスが一切ない中でやらせているわけだから、もしあのビデオが事実だとすれば、それはやはり問題。でも、私は中国でとても良いという工場はだいたい日本から駐在していて、中国人だろうが、日本人だろうが、本社から派遣されて日々指導しているわけですから、そういうところは重要なポイントだろうと思います。任せきりではない」
島田キャスター
「今後は安全というものが、これまでと同じ金額でというのは、考え方を変えていかなくてはいけない」
髙谷氏
「そもそも安全なものを食べる時、無料で安全なものが手に入ると思ってはダメだと思いますよ。安全を確保するというのはそれなりのお金をかけないと、安全にはならないと思います。先ほどの製造工程をどうしようか、それには人手もかかる。チェックにもかかるだろうし、時間もかかるから、当然お金がかかる。考え方を変えていただかないと困る。安全は無料ではありません」

髙谷幸 日本食品衛生協会専務理事の提言:『絶対安全はある?』
髙谷氏
「絶対安全はある?ありません。消費者も食品は絶対安全でなければならないと言いますけれども、そう望むのはまず無理です。必ずリスクがあるんです。大なり小なり、そこをきちんと理解しないとむやみに高いものをかけて求めるようになる。リスクはあるんですよということを考えていただかなければ。なぜかと言うと、ご飯だって安全ですよね。食べ過ぎれば病気になるでしょう。何でもそうです。魚を釣ったら、針がついているかもしれない。それもリスクです。だから、絶対を求めるというのはダメです。そこそこというのを皆さん考えなければいけない」

柯隆 富士通総研経済研究所主席研究員の提言:『法治・監督・透明性』
柯氏
「1つは、司法の制度の強化。法治国家にする。それから、法治国家にするのは中国政府の国家としての役割ですけれど、会社に関して言うと、監督、監視をきちんとやっていかなければいけない。さらに、生産のプロセス、流通のプロセスにおいて言うと、透明性をきちんと高めていく。国家と企業と消費者、この三者が一体となって取り組まないと絶対の安全は担保されません」

興梠一郎 神田外語大学アジア言語学科教授の提言:『物極必友』
興梠教授
「中国の諺で、モノを何でも極端に求めると逆に作用する。絶対というものはない。絶対を求めると逆に損をする。たとえば、中国の食品は全部食べないと決めるのはあり得ない。自分が損をする、物価が高くなる。中国の食品は全部大丈夫だというとガバナンスもやらない。ですから、絶対的に否定もしないし、絶対的に肯定もしない。否定もしながら、肯定もしながら。あそこの食べものは買うけれども、監督をしていく。部分的な調整ですかね。現在の日本の中国に対する食品でも何でもそうですが、非常にブレるんですよ、右から左に。しばらくして全部忘れていて、一個のことで全部を否定したがる。ファミリーマートの社長さんの発言が非常におもしろくて、中国だから輸入しないということではないですよ。相手が誰かと個別の問題として捉えている。科学的だと思うんです。だから、商売がやれているのかなと。マクドナルドもおそらくそうです。今回個別の問題として捉えていて対応しようとしていますね。中国から撤退とは言わないではないですか。非常に大人の対応であり、科学的対応ですので、私達の極端にブレる感覚を調整していかないと、こちらの損になるのではないかなと私は思っています」