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2014年7月2日(水)
世界遺産・富士山の今 環境保全と観光の両立

ゲスト

野口健
アルピスト
竹谷靭負
拓殖大学名誉教授・富士山文化研究会長

世界文化遺産決定1年
島田キャスター
「昨年6月22日、富士山は世界文化遺産に登録されましたが、世界文化遺産に登録されたのが富士山の単体ではないんです。どのように登録されたかと言いますと、富士山、信仰の対象と芸術の源泉。このような形で登録されたということで、富士山の構成は単体だけではなくて、周囲にある神社だとか、登山道、人穴や、さらに富士五湖、忍野八海などの富士山信仰の巡礼地や、それから、ちょっと離れた三保松原など富士山をのぞむ景勝地も含まれている。全体で登録されたということなのです。野口さんは長年、富士山の清掃活動に携わってきた経験から、遺産登録されたというニュースを聞いた時に、どう思いましたか?」
野口氏
「正直、アチャーと思いましたね。と言うのが、いろんな問題がある。そういう問題を、世界遺産を目指すということで、世界遺産にするために1個1個解決していこうという形でずっときたのですが、そうしたら1個1個のことを解決する前に、先に世界遺産になってしまったので、皆がワーッと現在の富士山が評価されたと思って、世の中、歓迎ムード一色になって、いろいろある課題が飛んじゃったなと思ったんです」
島田キャスター
「竹谷さんはこのニュースを聞いた時、いかがでしたか?」
竹谷氏
「私は正直に歓迎というと、ちょっと視点が違うんですけれど、一茶流に言えば『めでたさも中くらいになり、おらが富士』ということですが、中くらいというよりも、中の上ぐらいですかね。いわゆる文化遺産、特に信仰という視点で評価されたと。それは我々日本人がほとんど忘れかけている古い富士山のイメージなわけです。それが評価され、世界の宝になったということは喜ぶべきことかなと思っています」

富士山に課せられた宿題
島田キャスター
「今回、登録される前に異例の条件がつけられていたということですが、ユネスコに代わって世界遺産にふさわしいかを実質的に審査するICOMOSが富士山の様々な環境問題を指摘して、2016年2月1日までに、この環境保全のための保全状況報告書を提出しなさいと。これは改善命令ですか、それともどう理解をすればいいのでしょうか?」
野口氏
「これは山梨県とか、いろんな方に聞いたのですが、全部やらなければいけないかどうかというのは、実は山梨県の方も、静岡県の方も、文化庁の方も、皆よくわかっていなくて、こういう条件がつきましたよね。ただ、これを彼らがICOMOSに実際どれだけやればいいんですかと、なかなか全部はできないという質問をした時に、それはあなた方、日本側の問題で、あなた方が考えなさいというふうに、いわゆる大人の宿題みたいなものですよ。そうすると、役所の人もいったい全体どこまでやればいいのかと、いろんな方にお会いしたら皆それと同じことをそう言うんですよね」
島田キャスター
「それは知っていたのですか、地元の方々は」
野口氏
「世界遺産に登録される直前に、こういう条件がつくよというのは4月頃にそういう話になるわけですよね。だから、その前に世界遺産登録運動というのはずっとやっていますので、20年やっていますからね。自然遺産と文化遺産で。特に近年になって、地元のいろんな業者も含めて、世界遺産になっていろんな規制とかがつきませんかという問い合わせがだいぶ山梨県にもあったらしいんですよね。だから、その時に、山梨県の知事は基本、世界遺産は現状維持でいい、だから、新たな規制はしないということを断言されてきて、県の職員の方も、それにあわせて新たな規制はしませんということで、ずっとある意味、説得していたところにきたわけですよね。世界遺産になる直前に、こういう宿題がきたものですから。ですから、地元の人からすると、それは話が違うではないかと言って、現在、こういう宿題の問題は、地元では意外とデリケートな話というか、意外と疑心暗鬼(になっている)という。生活かかっていますのでね」
反町キャスター
「現状あるものに対する多少の制御みたいなね。そういうものがあっても、これから何か新しいもの、景観、歴史遺産という、その感覚から言ったら、マイナスになるようなものをつくらなければ大丈夫ではないかなという、それでは甘いのですか?」
野口氏
「富士山の場合に難しいのが、通常世界遺産というのは、多くの世界遺産は現状維持というのが一般的ですね。たとえば、屋久島だったら、世界遺産に(登録)される前の状況をキープすればいいわけですよね。だから、今回かなりの宿題がついて、ただ現状維持というものではなくて、現状からかなり改善をしなければいけないというのが、今回の富士山の難しい、他の世界遺産との違いだと思うんですね」
反町キャスター
「そもそもが条件つき合格みたいなものだと思った方がいいぐらいですか?」
野口氏
「仮免許みたいなものですね」

富士山・知られざる現実
島田キャスター
「そもそも富士山が登録された経緯というのがどういうものだったか。確認していきたいと思います。古くは1993年に山梨県と静岡県の自然保護団体が、当時の環境庁に自然遺産の候補にするよう要望しました。しかし、2003年、国の検討会が富士山をこの候補から外しました。そこでその後、当時の山梨県知事だった山本栄彦さんが今度は文化遺産にしようじゃないかと。この登録を目指す方針を表明しました。それを受けて、当時の中曽根首相ら政財界の人達が富士山を世界遺産にする国民会議の発起人会を立ち上げました。翌年から文化遺産に推薦する作業が始まったんですね。2013年に政府は富士山と鎌倉の2件を推薦しましたけれど、2013年に富士山の文化遺産の登録が決定したのですが、そもそも富士山が自然遺産から外されたのはどうしてですか?」
野口氏
「自然遺産はもっと定義が明確ですよね。もっと理系と言うんですかね、そこにしかない生態系だったりだとか、あと地形もそうです。富士山のああいう形をした火山というのは世界中にそんなにないわけではないですし」
反町キャスター
「珍しくない?」
島田キャスター
「私達の富士山は素晴らしい形だと思っているんですけれども…」
野口氏
「でも、ああいう山の、ああいう形の火山は別に富士山だけではないんですよ」
島田キャスター
「そこはシビアですか?」
野口氏
「いや、自然遺産は意外と基準が明確なんですよ。あとはそこにしかない生態系とか、たとえば、エベレストも自然遺産ですけれども、世界で一番高いという明確なものがありますよね。となった時に富士山が自然遺産の定義の中に、要するに当てはまらないという判断だったんです。だから、富士山にしかないものが、自然遺産としての見方では、どうやらないぞとなって日本側が下げたわけですよね。自然遺産がダメだったので、どうしようかといろいろ皆考えるわけじゃないですか」
島田キャスター
「そこで諦めたわけではないのですか?世界遺産というのはもう無理だと」
野口氏
「世界遺産は無理。次は文化遺産があって、そこでいろいろ考えて、確かに霊峰富士だし、芸術もあるしというところで、そこは切り替えて文化遺産にしようと」

文化遺産登録の理由
反町キャスター
「自然がダメだから、今度は文化だということについて。日本というか、山梨、静岡両県かもしれないのですが、この場合で言うのだったら、山梨県知事かもしれないけれども、何が何でも遺産にしたかったと」
野口氏
「だって、日本人は世界遺産が大好きではないですか。それは本当に感じますよ、いろんな国に行って。たとえば、アメリカの国立公園に世界遺産があっても…」
反町キャスター
「旅行会社のパンフレットには世界遺産を巡る旅とかがよくありますよね」
野口氏
「そう。(でも)海外の世界遺産に行っても世界遺産だって書いていないし、エベレストは世界遺産ですけれど、地元の方は誰もそれを知らないので。アメリカの国立公園の世界遺産のところに行って、現地の方にここ世界遺産ですねと聞いたら、ん?という顔をして、あれはヨーロッパのブランドでしょうという言い方で言っていたんです。だから、そんなに世界遺産というのは絶対的なものでは意外とないんですよ」
島田キャスター
「先ほど、いろいろな課題が付随したということを、地元の人は案外知らなかったということは、自然遺産と考えていて、文化遺産という認識があまりなかったから、そういうふうに広く課題を課せられたということはありますか?」
野口氏
「おそらく、わかりづらい世界遺産だと思うんですよね。多くの方が富士山だと思っているので、富士山だと山なので皆自然遺産だと思うんです。ところが、今回は文化遺産なので、極めて自然遺産的な文化遺産ですよね。最初10年がんばって、自然遺産だとずっと走ってきて、自然遺産がダメで文化遺産に切り替えたというところの話題があまりないんですよ。ですから、自然遺産にずっと署名し、自然遺産に二百数十万人の署名が集まったんです。自然遺産の時に話題になったまま自然遺産を避けたということが、そんなに報じられなかったので、多くの方は自然遺産のままきていると、未だに思っている人が多い」

富士山信仰の真実
島田キャスター
「たとえば、現在は登山の話題になっていますが、いつ頃から人が登るようになったのか」
竹谷氏
「1つ、富士山の信仰を考えるうえで、原点と私は名づけているんですけれども、『富士山の記』というのがあるんですね。これは、都良香という、現在でいう…」
反町キャスター
「何年頃の人ですか?」
竹谷氏
「9世紀です。834年から879年までの間。その方が『富士山の記』というのは、漢文ですね。三百九十何文字、四百字詰めの原稿用紙1枚に富士山のことが書かれているんですけれども、大きく2つ書かれています。1つは富士山が神仙教として描かれています。道教からきた神仙教です。神仙思想です。富士山には仙人がいると。神仙というのは仙人のことですけれども、仙人がいる山だと伝えられている」
反町キャスター
「修業の場として捉えられたということでよろしいのですか?」
竹谷氏
「そうです。最初に富士山に登ったのはその記の中に書いてあるのですが、役行者だと。役行者は7世紀から8世紀の人ですね。それは伝説だと思いますけれども、その人が山に登った。実際に870年、貞観17年11月5日。この日に吏民共にと。役人と庶民とが一緒になって祭りをいたすと書いてある、その中に。ですから、祭祀が行われていたということがわかります」
反町キャスター
「それは頂上ではないですよね」
竹谷氏
「ええ、頂上ではないです。下です。麓でね」
島田キャスター
「そこで皆が一緒になって登った?」
竹谷氏
「それと同時に、頂上の様子が克明に書かれているんです。広さは一里ばかりだとか、それから、お鉢ですね。お鉢の中に怪しき池があると。当時は池があったんです。水が溜まっていたんです。現在は空になっちゃっていますけれども。それから、そういう虎岩という、実際に頂上にあるのですが、水の中から虎が顔を出していると。ですから、その伝説、説明から虎岩というのが誕生したと思うんですけれども、そういうふうに頂上が克明に書かれているんですね」
島田キャスター
「そういった記録はあるけれども、一般の人がぞろぞろ上がるというのはその時代はなかった?」
竹谷氏
「なかったです。修験者は登っていたわけですね。修験者の報告を都良香がまとめたということです」
反町キャスター
「修験者が登るということは、山頂というのは聖地?」
竹谷氏
「聖地です」
反町キャスター
「聖地だったという。一般の人が登ったりするのは、逆にいうと、それは許されないと」
竹谷氏
「許されないです。修験者だけが中世までは登っていた。なぜかと言いますと、修験道の守護神というのは不動明王です。不動明王を富士山の頂上で拝むという。それが、もともと」

江戸時代の富士山信仰
島田キャスター
「たとえば、江戸時代には富士山というのはどういうものだったのですか?」
竹谷氏
「江戸時代になって庶民が登れるような山になるんですね。この初めは、角行という方が、冨士講というのを興します。富士山の講ですね。これは代参講といいまして、毎年、村々で講を募って、その中で、何人かが選ばれて…」
反町キャスター
「講を募るというのは、皆でお金をちょっとずつ出し合って、くじを引いて当たった人が」
竹谷氏
「くじかどうかはわからないですけれども、順番をある程度決めていたんだと思います。登拝するのですが、私が住んでいる武蔵野はちょうど出発地から3泊4日で富士吉田の御師の家まで参ります。初日は日の出。その次は上野原。その次は尾沼。富士吉田ということで、工程がゆっくりしています。登るのも1泊2日で普通は登っていました。富士山に登る時の装束ですが、白装束ですね」
島田キャスター
「それはどういう意味があるのですか?」
竹谷氏
「死装束です。どういうことかといいますと、御山に登ると非日常の世界を体現できると。極楽浄土、極楽浄土の疑似体験ができる場だという考えがありまして」
島田キャスター
「それが富士信仰だったのですか。極楽浄土を体現するというのが」
竹谷氏
「そうです」
島田キャスター
「藤四郎さんという方が何回も登ったらしいです。何でそんなに登るのと聞かれ、このように答えたと。『三尊の如来現れ給ひ、五色の雲たなびき、其の尊き事譬へんにものあらず。寔に極楽といふは、爰より外にはあらまじと思ひ侍ふ』という表現をしている、庶民の方ですよね」
竹谷氏
「この方は超有名な方で、冨士講の中興の祖と言われている方で食行身禄という方ですが、その愛弟子。江戸に初めて富士塚をつくった人ですね」
島田キャスター
「富士塚とは何でしょう?」
竹谷氏
「富士塚というのは、富士講に行ける方は、成人男子に限定されていたわけです。女人禁制の山ですね」
島田キャスター
「なぜですか」
竹谷氏
「穢れがあるということで女性が登ると山が荒れるという信仰が、変な信仰ですがあったんです。それで富士山に2合目の御室浅間のところまでしか女性は登れなかった。60年に1ぺんだけ、庚申(かのえさる)年、庚申年には、庚申年というのは紀元前、BC301年ですね、その時に富士山が一夜にしてできたという伝説がありまして、その庚申年だけはそういうご縁年ということで緩くなる、女性の登山も」
反町キャスター
「頂上まで行けるのですか?」
竹谷氏
「行けないんですよ、それが」
反町キャスター
「何合目までですか?」
竹谷氏
「4合5尺」
反町キャスター
「5尺。細かく刻むんですね」
島田キャスター
「そこまで厳密に決められていたんですね」
竹谷氏
「実際にはその禁を冒して、頂上まで登った方もいらっしゃいます。有名なのが高山たつと言って、高山彦九郎の子孫の方と結婚する、たつという女性が1832年に登っています。まだ、禁制の時代ですね」
島田キャスター
「そこに登るということに皆さん、すごく憧れていた?」
竹谷氏
「そうです。女性の憧れだったんです」
島田キャスター
「一生に1回の、そういう富士塚で女性は祈ったりしていたわけですね」
竹谷氏
「はい」
島田キャスター
「だから、信仰の本当に象徴のような山だったわけですね」
竹谷氏
「ええ。ですから、富士山の頂上を目指すと国家安泰、家内安全、どうのこうのとご利益がいっぱいあるわけです」

富士山が抱える問題
島田キャスター
「富士山の登山者数は増減があるものの、上限は30万人で推移しているということですが、これは多く問題だと?」
野口氏
「4000m弱なので30万人超えるというのはなかなかないのではないかと思います。特に5合目までの方を入れますと、200万人を超えますので、富士山に入るのが200万人を超えて、そのうち三十数万人が山頂まで行くというのは多い」
島田キャスター
「多いといろんな問題がある?」
野口氏
「いろいろな問題があると思います。たとえば、登山道が削れる。落石の問題がよく指摘されているし、トイレの問題がいろいろとあります。バイオトイレはあまり一気に皆がトイレを使いますと分解できなくなるわけです、そうすると、使用できなくなってしまったりする。あとは弾丸登山の自粛と山梨県は言っていますよね。ただ、弾丸登山を自粛と言っても、山小屋が47軒ありますが、47軒では泊まれる人にどうしても制限があります。となると、いくら弾丸登山を自粛と言っても山小屋をこれから増やすわけにはいきませんから、山小屋に泊まれない人は弾丸登山をせざるを得ない。あとゴミの問題もありますし、あまりにも多すぎるとどうやって管理するのですかと。管理できないですよねということ。あと外国人の方も増えてきて、意外と日本の登山者の方に対してはゴミの持ち帰りに協力してくださいと言ったら納得するのですが、この間ガイドから聞いた話ですとアジア系の観光客に注意したが罰金とかの処罰の対象になるのかと聞いてくる。それに対してゴミの持ち帰りに協力してくださいと伝えるが、協力してくださいというのは極めて日本的でどう切り返されたかというと、逆に言えば協力しなくてもいいのだろうと言う。彼らの(国の)場合はレンジャーがいて、ゴミを捨てたらすぐに注意されるし、言うことを聞かなかったら、レンジャーは逮捕特権を持っていますから、逮捕しますね。ちゃんとルールがあるんですけど、富士山の場合は、日本の場合は、環境省のレンジャーがそこで捕まえることはできないので、だから、持ち帰りはお願い系となる」
島田キャスター
「どれぐらいが適正なのですか?」
野口氏
「山小屋に泊まれる人数とトイレの処理できる能力というのはだいたい現在、言われているのが二十数万人前後だろうと。と言うことは、現在10万人ぐらいオーバーしている。実際に数年前に、結局トイレが処理できなくなって多くの人が使って溢れるということがニュースになった。携帯トイレというのを、地元とかで一生懸命に配っていますが、実際山を専門にやっている人間は使いますけれど、初めてくるような人がこのような紙をもらって、そこにトイレして、くるくるまとめてカバンに入れるのができるかと言いますとなかなかできないですし、そういう場所もないですしね」
反町キャスター
「バイオトイレは増設するわけにはいかないのですか?」
野口氏
「費用の問題もありますし、山頂の場合、トイレの管理に年間5000万円かかると言われています」
島田キャスター
「任意で1000円をいただいいてみることをやりましたけど、それと登山者数は関係があるのですか?」
野口氏
「昨年慌ててやった感があるのですが、入山料ということでやりましたが、静岡県が一生懸命やろうということでしたが、山梨県からすると富士山観光の依存度が大きいものですから、入山料をやると登山者が減るのではないかということでそれに対して嫌だと。静岡は富士山にそこまで依存していないので温度差がある。任意で1000円、確か三千数百万円ですね、三千数百万円で山頂のトイレの…要するにあれは5000万円がかかります…ワンセットにもならないです。ですから、入山料の目的を明確にしなくてはいけなくて登山者を減らすための入山料なら、1000円ではほとんど意味がないですね。しかも、任意ですから、払いたくなかったら払わなくていいし。ですから、もし登山者を減らすということでしたら、いろんな数字があるんですけれど…」
反町キャスター
「富士山に登る人は入山料1万円を払っても減らないものですか?」
野口氏
「日本では入山料の感覚がないのでワオと思うではないですか。海外では入山料は基本的に払うものです」
反町キャスター
「入山する数自体を規制するという方法は?かなり強引ですけれども」
野口氏
「そういう最近入山規制をしようという法律がごく最近できましたけれど、ただ基本的に地元のいろんな関係者の合意がないと実際なかなかできないわけです。となると、入山料もそうですが、なかなか人数制限でバサッと切ることは現実的に厳しいですよね」

富士山マイカー規制の影響
島田キャスター
「5合目まで向かう自家用車が多いのではないのですか?」
野口氏
「マイカー規制は意外と効果があって、昨年の4月は増えたのですが、規制が広がってから登山者が思ったより伸びなかったです。ですから、意外とマイカー規制により、思ったより増えなかった、むしろ少し減ったんですよね」
反町キャスター
「5合目より上に登る人が減ったのですか?」
野口氏
「全体が減ったんです。ただ、これは1つ問題があってマイカーがダメになった代わりにタクシーとバスが増えます。バスもいろんなバスがあって、上高地はバスの基準があって、バス協会からのトリプルAというのがあって、最も排ガスがクリーンなバスはトリプルAです。ある程度基準があってそれ以上超えていないと入ってはいけないという場所があるが、富士山はそれがないものですから、程度の悪いバスが増えたと言うんですね」
反町キャスター
「登り坂で、ふかしますね」
野口氏
「地元の大学で調査した時に、マイカー規制をしてバスが増えたことによって、逆に大気汚染の悪化につながったということが、昨年研究で発表された」
島田キャスター
「そうすると、他に何があるのですか?」
野口氏
「登山鉄道というのがあって、ヨーロッパは鉄道を使うんですね。スイスの登山鉄道の方が調査した時に、道路の中に線路を走らせれば、鉄道はいけると言うんですね。新たに開発をしなくてもいいのと、登山鉄道がいいなと思うのは、登山鉄道に乗らないといけないわけではないですか。そこである程度(数の)コントロールができる。排ガスの問題と、夜電車がなければ夜間登山がなかなかできなくなる。入山規制につながっていくのではないかなと」

富士山を守るために
島田キャスター
「富士山を守っていくために山梨県、静岡県からくるものも多いのですか?」
野口氏
「両県がラブリーかというと、そんなにラブリーな関係ではないんですね。両県で富士山をどうやって守っていくかというところの足並みに温度差があって、静岡サイドはそこまで富士山に依存していない。山梨はできるだけ稼ぎたい。本音としてあるんですね。その違いは仕方がなくて、山梨は人口が84万人で、静岡は370万人です。税収が山梨は800億円、静岡は4000億円。ですから、山梨県は山開きは7月1日で静岡は7月10日ですね。この違いが象徴している」
反町キャスター
「そうすると、山梨県側から登らざるを得ないという状況が10日間続くということですか?」
野口氏
「そうです。山頂の山小屋やトイレは静岡県側が管理していますので。浅間神社の本拠地は静岡県です。山頂は静岡側の神社なりが管理している。そうなると、7月10日まで山頂がオープンしないわけですね。山梨側から登ってもトイレもオープンしていないですよね。となると、そのへんにしなければいけないわけですよね。ですから、山開きは両県一緒に同じ日にやることが一緒に守っていく1つの象徴になると。ICOMOSに最も言われているのが、富士山が素晴らしいのはわかりましたと。どうやってあなた方は富士山を守るんですかと。誰が守るんですか、責任者は誰ですかと言われているのですが、責任者はいないんです。文化遺産ですから文化庁ですが、彼らは手続きだけですからね。では文化庁は完全に富士山を管理できるかと言ったらできないんですね。そもそも山梨と静岡に分かれているし、誰がトータルで守るかという責任者がいないんです。となってくるといろんなところから意見がかかってきて、最終的にバラバラだった地元が一緒にせざるを得ない状況に持っていかない限り、なかなか先に進まない」
竹谷氏
「静岡県側も、山梨県側も登山支援のための講座を開いて、私も招かれたりして富士信仰のお話をするわけですけれど、そういう知識を持ってガイドをすれば、これまでよりは山に対する信仰心や愛着とか、そういうものが生まれてくるのではないかと思うんですけどね」

アルピスト 野口健氏の提言:『管理の一元化』
野口氏
「富士山を誰が守るか、顔ですよね、それがレンジャーかもしれないし、あとは両県の知事でしょう。小笠原があれだけがんばって石原慎太郎さんという強烈なリーダーがいた。ですから、山梨と静岡の両県がもっと顔になってやらないと難しいのではないかと」

竹谷靭負 富士山文化研究会長の提言:『日本人の心性の涵養を!』
竹谷氏
「富士山のことを『心の山なり』と言った方がいらっしゃいますが、富士山に映っているものは、その人の心が映っているんだという考えです。ですから、現在富士山がいろいろ病んでいます。病んでいるのは、日本人各自が病んでいる1つの表れではないか。ちょっと時間のかかる話ですけども、徳育教育というか、富士山学習を通して、そういう心を養っていく。山を敬う心だったり、育てる心だったり、そういうものを養うための教育システムです、そういうものに時間をかけながらやっていき、クリーンな自然遺産としても成り立つような山に、時間をかけながらやっていってもらいたいという思いです」