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2014年6月24日(火)
人間ドック新基準案の波紋 ▽ 骨太の方針閣議決定

ゲスト

山門寛
日本人間ドック学会副理事長(前半)
楽木宏実
大阪大学大学院医学系研究科教授(前半)
西村康稔
内閣府副大臣 自由民主党衆議院議員(後半)


前編

人間ドック新基準案 健康基準が変わる
島田キャスター
「今年4月、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が、人間ドックで検査を受けた150万人のデータをもとに、新基準範囲を作成しました。たとえば、血圧だったりだとか、中性脂肪、肥満度を表すBMI、中性脂肪だったりだとか、コレステロール、こういった27の検査項目があるのですが、たとえば、新しい数値で注目されたのが、血圧の基準ですね。最高血圧が129以下。最低血圧が84以下だったのが、今回、新しく、これはどうでしょうかと言って公表されたものが、上が147未満、最低は94未満と。これで異常なしにしたらどうだというような基準が発表されました。また、LDLコレステロールの基準範囲も新しくなりました。現在まで男性、女性に関係なく、年代も関係なく、60から119という数値だったんですけれども、新たに細かく分けて、男性については72から178以下が異常なし。女性については年代でいろいろあるんですけれども、このように比較してみますと全体的に上振れしていまして、大幅に緩和されているような印象です。今回、新基準を示した理由は何ですか?」
山門氏
「私どもの人間ドックというのは、任意型検診と言って、受診者の方がお金を払って検診を受ける。一方、国が行うような対策型検診、特定健康診断等とは全く異なると、私達は考えています。今日、島田さんと反町さんのお二人にドックに来ていただきます。検査を受けます。その結果を、島田さんと反町さんを同じ物差しで診てよいのかというのが基本的な考え方です。すなわち年齢に応じて、性別に応じて、それぞれ基準範囲というものを持つべきだと。その物差しにおいて、男性は男性、女性は女性。若年者は若年者、高齢者は高齢者。それぞれ分けて、私達はテーラーメイドという言葉を使いますけれども、本当に個人個人にあった、きめ細やかな、健康診断をするべきであろうというのが基本的な発想です」
反町キャスター
「147未満ですか。そのへんのところの基準というのは全国の人間ドックは一律に受け入れることになるのですか?」
山門氏
「現在はなりません。そこが難しい。現在、混乱を来している大きな点、すなわち一応健常人の95%の基準範囲の求め方。人間ドックを受診した150万人のデータを集めました。それで健常人と、病気がない、薬も飲んでいない。もちろん、高血圧、糖尿病、脂質異常、尿酸ですね。タバコも吸っていない。お酒も1合未満。かなり厳しい設定をした健常人を34万人選びました。さらに難しいのですが、ある値に異常があると非常にバラつきが出てしまうので、9項目。たとえば、肝機能とか、脂質とか、尿酸だとか、そういうものに1つでも異常がある人を、さらに削除をする。それで、さらに厳しくして、本当に全く病気がないと思われる人を選び出したわけです。基準範囲というのをつくったわけです。だから、今回は非常に健康と思われる人。他に何も病気のない人の95%の範囲を定めたということになります」
反町キャスター
「今回の88から147の基準の範囲というのは、超健康人?」
山門氏
「おっしゃる通り」
反町キャスター
「選りすぐりの人達の平均、そのバラつきの範囲を決めたものであるという理解でよろしいですか?」
山門氏
「そうです。例えが難しくなってしまいますが、たとえば、先ほども言いましたが、肥満もない、薬も飲んでいない、タバコも吸っていない、お酒も1合ぐらいだという人達は、この基準であうかもしれない。ただ、一方、肥満がある。タバコを吸っている。お酒を飲んでいる。そういう人はこの基準には適合をしないということなんです」
島田キャスター
「この基準は、適合しない人達はどの基準を見ればいいのですか?」
山門氏
「ちょっと話が飛んで申し訳なかったんですけれども、その基準範囲というのと、もう1つは疾患判別値という、高血圧を判断するための値というのがあるわけです。これが140。高血圧学会で定めていますが、終始血圧が140以上は高血圧と定められています。だから、基準範囲が140を超えても、140を超えた人は高血圧と。だから、基準範囲の中には、疾患の方が個人範囲の右側の方に寄っていきましたね。そういう人達は一部、疾患の患者さんであるということがあり得るわけです」
反町キャスター
「多少そういうトラブルの兆候、ないし注意しなくてはいけないという人も、今回適正値の中に敢えて組み込んだという理解でよろしいのですか?」
山門氏
「うん、そうですね」
反町キャスター
「飲み込んだと。広げたと」
山門氏
「飲み込んだ。広げた」
反町キャスター
「その人達にもいわゆるA判定を下すのですか?147以下だったらA判定。そういうわけでは?」
山門氏
「肥満がない」
反町キャスター
「えっ?だって項目ごとにAとか、Bとか、肥満度AとかBとか、血圧Aとか、Bとか?」
山門氏
「おっしゃる通りです」
反町キャスター
「血圧に関しては147以下だったら、上がですよ、その時点でAが出る?」
山門氏
「Aが出る」
反町キャスター
「でも、140以上147以下の人だったならば、ちょっと気をつけた方がいいよと、リスクはあるとドック学会側がわかりながらも、Aをあげる?」
山門氏
「いや、Aをあげたとしても、その方にはコメントがつきます、必ず」
反町キャスター
「コメント付のAなの?」
山門氏
「そうです。もちろん、コメントがつきます」
島田キャスター
「でも、判定はA、B、Cとか、そういうものですよね。それではAですよね」
山門氏
「Aですね」
島田キャスター
「Aのコメント付?」
山門氏
「そうです。Aのコメント付」
島田キャスター
「この新基準というのをどう考えていますか?」
楽木教授
「非常に国民に混乱をもたらしたものである。今のお話を伺っていてもA判定になるのかどうかといったことが取り沙汰されていますけれども、140を超えたら病気だと言ったら、それははっきりしていただいた方がわかりやすいと思うんですね。A判定とつくものの、いや、コメントがつくんですと言われたら、なかなか患者さんは、あるいは検診を受けられた方はわかりにくいだろうと」
島田キャスター
「そこで判断しますよね」
楽木教授
「そうです。A判定がつかない。あるいは要注意というような話で、要注意から、僕らはまず主治医の先生というのですか、また医療機関で受診をされて、そこで判断していただくというのが必要だろうと。検診とはあくまでもスクリーニングだと僕らは理解をしていますので、スクリーニングの段階で疾患判別値と言っていただいた方が患者さんはわかりやすいでしょうし、その結果全員がお薬を飲む必要はないわけで、その中であなたは飲む必要がありますよとか、もっと生活をどういうふうにしましょうという話を、指導していただくことの方が重要だと思います。こういう基準が出されたこと自体、値がどうこうというよりは、値が違った時にその擦り合わせをせずにお話をされてしまったところに一般の方の理解が非常に難しくしてしまったのではないのかなという」

医学界に広がる波紋
島田キャスター
「人間ドック学会と健康保険組合連合会が新基準案を出したことで、各専門分野の学会から批判の声が相次ぎました。日本動脈硬化学会は、誤解を生じる可能性のある人間ドック学会の基準範囲は日本国民の健康に悪影響を及ぼしかねない危険なものと、かなり強い言葉で批判しているのですが」
山門氏
「だから、現在一番の誤解は我々の基準範囲。健常人の95%の幅であって、それは何ら疾患を診断するものではないと。この基準範囲は健常と思われる人の95%の幅です。たとえば、血圧です。一方、高血圧学会の140以上を高血圧とします。これが疾患判別値です。私達の基準範囲です」
反町キャスター
「疾患判別値とは何ですか?」
山門氏
「高血圧と診断するための数字。140以上で高血圧を判断するんです。私達の基準範囲の最上限が147です。私達は、147をもって高血圧と言っているのではありません。高血圧は疾患判別値に基づいた140であります。すなわち現在一番混乱させて申し訳ないと思っているのは、この140を超えて147までの間の人達。どうするんだということです。そこは私達も真摯に反省をしなければなりませんが、健常の人の基準範囲は147であるという事実です。そうであって、病気を診断するツールではないということです」
島田キャスター
「2種類の考え方ということですか?」
山門氏
「そうです」
島田キャスター
「健常人の数値を…」
山門氏
「分けて…」
島田キャスター
「出したけれど、病気というか、こういう症状を判断するにはまた違う」
山門氏
「そうです」
島田キャスター
「専門の数値がありますよという理解でよろしいですか?」
山門氏
「そうですね。ここで一番問題になっているのは147があたかも私達が高血圧と診断を変えましたというふうに理解されちゃったんですね」
島田キャスター
「そう考えちゃいました」
山門氏
「高血圧の診断はあくまでも140ですね。従来の基準範囲というのは、肥満度、高血圧等は入っていなかったんですね。脂質は当然入っていました。脂質を見ますと世界の基準範囲はほぼ今回、私達が出した数値とほぼ同じ、一致します」
反町キャスター
「人間ドック学会側としては、我々は今回、グローバルスタンダードにあわせたんだという理解が強い?」
山門氏
「ええ。基準範囲としてはですよ」
反町キャスター
「たとえば、僕が血圧147出て、ドックからはA判定。だけれど、何かごにょごにょって書いてあるんだけど、それによって僕は治療した方がいいと思っても、高血圧外来に行くのかといえば、そのモチベーションは薄いですよ。Aを貰って医者に行く人はたぶん地球上にあまりいません。そのへんはどうですか?」
山門氏
「そこは人間ドック検診の良いところで人間ドックは検査をしっぱなしではない。結果を、紙ベースで置くのではなくて、医師が1対1で、対面で結果を説明します。それに基づいて、生活指導をする。それがあって初めて人間ドックと言うんですね。従って、147です、あなたは明らかにもう一度、高血圧ですというお話をしています。A判定だけども、高血圧という判定。本当に難しくなっちゃいます」
島田キャスター
「ようやくわかりました。楽木さんに説明いただいたようにこの新基準。健康な人の基準が1つスタンダードとしてあるんだと、世界の。しかしながら疾患判別値というのは別のものだと、この違いが専門家の方はわかっていらっしゃると思うのですが、私達みたいな人間は、今ようやくわかったんですけれど、このことについてはどう思いますか?」
楽木教授
「だから、それはまずいということを各学会が言っているんですね。各学会は、一般の患者さんにはわからないだろうというか、その基準範囲というものの考え方、事実は事実であると。でも、専門の立場からすると、スーパーノーマルと言っている、超健康と言っている方達は明日、本当に病気にならない。10年後に病気にならないという保障はどこにあるのですかという話はあるんですね。もっとたくさんの集団のところから集めた、疫学と呼ばれる、前向きにいろんな人達の調査をしていくと、10年間追いかけると、こういう人達が病気になりやすいというのがわかってきて、現在の基準範囲をつくった、基準範囲ではなく、疾患判別値をつくっているわけですね。それと別のものが出てきてしまうと、どちらが正しいんだろうというものの考え方に皆さんなっちゃうから、それぞれ混乱をしてしまうといって…もう1つ、とても大事なのは140から147の間にいる方がすごく多いんです。高血圧人口の中で140から150ぐらいの人というのは多いわけですね。ですから、この形で言われてしまいますと治療から漏れる方が増えていく」
反町キャスター
「人間ドックの皆さんは、健康を見つけるのが仕事で、学会の皆さんは、病気を見つけるのが仕事だから、見つける対象が違うから、判定が違うのかなみたいに見てしまうんですよ。そのへんのところというのは人間ドック側と、いわゆる現場の医師の皆さんとの間では明らかに病気とか、健康に対するコンセプトがもともと違うのではないですか?」
楽木教授
「僕の感覚では人間ドックの方も早くスクリーニングをしたいと、これが大事だと思われていることは一緒だと思うんですね。ただ、その判別値というのを、基準値を、大きい患者さんを対象につくりたいという思いからつくられたのであって、公表される時の言い回しで誤解を生んでしまったんだろうと。少なくとも、僕が思うのは高血圧であるとか、脂質異常症とか、何年もかけて大きな病気を、脳卒中とか、心筋梗塞に至るような病気に関しては基準範囲を出さない方がいいのではないかというのが私どもの考え方ですね」
反町キャスター
「それほど個別の状況がいろいろあるという意味でもありますか?」
楽木教授
「個別にではなくて、基準範囲というのと、疾患判別値と全く違うものだと。基準範囲を当てはめてもいい検査値と、当てはめてはいけない検査値というのがあるんだという理解ですね」
反町キャスター
「でも、基準範囲はドック学会から言えば、健康な人をスクリーニングして調べていって、それを出した」
楽木教授
「現在の健康だけですね。10年後に大きな病気に出てくるかどうかを保障している集団ではないんです」
島田キャスター
「それはあまり意味がないと」
楽木教授
「全くではなくて、ないだろうと」
島田キャスター
「そうすると、スクリーニングというのは、もうちょっと数値を厳しくした方が病気の予備軍の方も見つかるのではないのですか?」
山門氏
「それは現在、お話が横断面という、一辺で、2011年の人を1年間集めましたというのではなく、私達は危険度の予知予防ということで、一番やりたいのは今回年齢階層別の検査ができたという、基準範囲ができたということは皆さんが経年的に人間ドックを受けていただくと、この経年的な変化がわかりますね。そうすると、いわゆる基準範囲内の経年的な変動であれば、これは正常な加齢変化。それが2年目、3年目にだんだんずれていくということがわかれば、たとえば、血圧が次の年に140を超えると高血圧になりますよということが予知できるわけです。推測できるわけです。2回、3回受けていただければ。そうすると、その時点で積極的に生活習慣病の修正をしていただければ、薬を飲む前に、それを元の正常の加齢変化に戻し得る可能性がある。それを私達は一番やりたいわけです」

医療費抑制につながるか
反町キャスター
「医療費は現在、年間、日本で35兆円を超えていますよね。年間1兆円ずつ増えていくのではないかと言われている中で、医療費の抑制が国の大命題です。その点から、たとえば、今回人間ドック学会が捉えたスタンスの面と、楽木さんの言うようなスタンスと、お金の面、医療費の点から言うと、どちらの方がセーブする形になっていくのですか?」
山門氏
「それは難しいんですけれど、医療費という考え方からすれば、私達の基準範囲を用いた方が当然、薬物投与が減りますね」
楽木教授
「だから、10年後に脳卒中になった人にかかる医療費のことは見ていないですね。私どもが見ているものは最終的に脳卒中、心筋梗塞になる病気の医療費がかかるだけではなくて、経済的な損失というのは、その方が倒れることによって、社会が失うものはすごく大きいんです。たとえば、働き盛りの人は現在健康で良かったです。10年後、退職してから、あなたはもう脳卒中になっても大丈夫ですと言われても困りますよね。だから、大事なのは、定年してから、あるいは70歳、80歳になってからも元気でいていただくために、将来の命を守るための基準だと思っています」
島田キャスター
「ひねくれた考え方をすれば、人間ドック学会と健康保険組合ですよね、だから、医療費がかからない方がいいのではと。そういう意味で基準を緩和したと思っちゃったんです。そういう点というのは、少し考慮されたのですか?」
山門氏
「考慮しています。これは両団体での研究テーマがありまして、これは2年間にわたるものですが、始めに基準範囲をつくる。1年目の作業。2年目は、人間ドックという健康診断が本当に有用であるか。お金がかかる、かからないのか。それを他の検診、特定健康診断とか、あるいは企業検診、その他の検診と医療費の必要度。先ほど言われました、今後5年、10年の医療費がどのくらいかかるかというのを見ていくという計画の一部です。最終的にはいろいろなご意見、医師会等からもご批判がありますけれども、対医療費効果というのも一応は念頭においているんです」

予防と医療のバランス
島田キャスター
「厚労省によると、血圧を下げる薬だけで年間およそ2兆円もかかっているということですが、お二人は健康のリスク、危険リスクということと、医療費のバランスというのをどう考えていますか?」
楽木教授
「心筋梗塞になった方にかかる医療費。脳卒中になった方にかかる医療費は、その場でかかる医療費。それから、医療費というのはその場のものですけれども、先ほど言われた、最終的にその人が、たとえば、働けなくなることによる介護が必要になることプラスアルファの医療費、あるいは介護、社会保障費です。そういうものを全部考えれば、大きな疾患を予防していくといったことの概念が大切であろう。そこにかかっている医療費がいくらかといったことに関しては慢性疾患で言われている高血圧にしても、脂質異常症にしても、ジェネリックと言われる薬も出ていますし、医療費全体では、そこにかかる薬剤費というのはだんだん下がってくるはずですね。だから、そういったことからすれば、しっかり薬剤治療をする。あるいはもっと前に、先ほど、山門先生がおっしゃられた通り、予防のための生活習慣の修正をはやい段階から入れていくことをすれば、医療費の抑制はもっとできると思いますし、だから、予防としっかりとした治療の両方をやっていくことで、全体の医療費の抑制につながると思いますので、診断基準を高めることで、それを果たすのではなくて、よりはやい段階からスクリーニングして、よりはやい段階から介入をしていく。介入は生活もあれば、薬もありますよという考え方でいいと思っています」
山門氏
「私も今の点に関しては、楽木先生と全く同感であります。医療費というのは、ある程度、高齢化に伴って伸びるものは伸びる。必然的にですね。それは抑えるのはなかなか難しい。一方で、楽木先生おっしゃった予防ということによって、疾患の発症を早期から予防できれば、それ以後の医療費は明らかに減らせるということで、私達も予知予防に全力をあげる。だから、健康寿命を延ばせますね」
反町キャスター
「人間ドックで悪い判断をもらうことが自分に対する、戒めというか、抑止力になるとすれば、そういう考えに人間ドック学会は立っていないのですか。厳しい判断をすることが健康意識を増進するという立場に立つのであれば、今回147までというのは逆行していると思うんですよ。それと、先ほど医療費全体の総額を押し下げたいと。それからいけば147というのはぴったり同じ方向性です。両方をやろうとするところに、説明上の無理があると思うのですが、いかがですか?」
山門氏
「それはご指摘の通りです。だから、最終的には、楽木先生も先ほど言いましたように、私どもは生活習慣病学会が定めている疾患判別値は変えるつもりはありません。それを優先するということは、それはエビデンスがあるわけですから。それ以上放置することは脳梗塞、心筋梗塞を発症する。各学会からのご指摘の通りなので、私たちもそれを変えるつもりもありません」


後編

骨太の方針 閣議決定 西村副大臣に問う
反町キャスター
「たとえば、社会保障とか、年金とかのモデルというのは、専業主婦と旦那さんと子ども2人みたいな、政権として目指す家庭像のようなもの、共働きなら共働きの家庭というのを日本は1つの基本にしたい。これは価値観の押しつけになってしまうから、政府としては言えないのですか?」
西村議員
「そうですね。そこは選択ですから、自分の家族と相談して、夫と妻の話の中で、妻は暫く子育てに専念する専業主婦にしようという選択もあるでしょうし、一緒に働いて一緒に育てようというのも1つのスタイルです。これは選択です。1つだけ言えることは、男性中心で男性が無尽蔵に長時間働く世界というのはもう終わりにしようということです。ですから、長時間労働の抑制というのも、今回ブラック企業のチェックも含めて入っていますし、男性の働き方も変わってくる。その中で、妻も働きたい人は働けるような選択ができるように、専業主婦なら専業主婦を選択できるように、その時に、税制、社会保障に差が出ないように中立的なものを目指そうと。そのための検討を始めるということも今回入れていますので、そういう意味では専業主婦ではないとダメとか、共働きでないとダメだとかの押しつけはやりませんけれども、中立な中で自然な形で選択がなされて、女性も活躍できる環境も整ってくる」
反町キャスター
「たとえば、正規、非正規の間にジョブ型正社員みたいな、いろいろな形での働き方というのを提案している部分も今度の新しい政府の提案の中に入っているではないですか。ただ、日本の労働組合というのは企業別です。労働組合が企業別になっている限りにおいては、たとえば、仕事を1つ選んで自分はプロフェッショナルな道を選ぶというのは、非常に日本ではやりづらいというのはおわかりだと思うのですが、労働組合の在り方とか、労働慣行の在り方については、あまり踏み込みがないように思うのですが、そこはいかがですか?」
西村議員
「働き方はいろいろ提案しています。(年収)1000万円以上の方は時間ではなくて成果ではかって評価していこうという仕組みも提案しています。これらも労働政策審議会で具体的な制度設計をしてもらいますので、そこに労働組合の方も入っています。ですから、これから議論を突きあわせていきながら制度設計をしていくということになります。一方、昨年から今年にかけて、政労使会議というものをやり、我々は強く働きかけをして、異例のことですけれど、賃金上げを経済界に促した。政労使の場でやっていったわけです。この枠組みそのものを維持するのではないのですが、新しい働き方、フレックスタイムもそうですし、限定正社員もそうですし、1000万円以上の方は成果ではかろうではないか、その方が自分で時間をコントロールできるようになるという新しい働き方。こうしたものについて、こういった仕組みも含め、何らかの形で政労使会議でいろんな議論を戦わせることが必要だと思います」
反町キャスター
「連合は組織率30%を切っていますよね。連合の代表と話すことが政労使の話し合いになるのですか?」
西村議員
「確かに非正規の方々、サービス業は別の組織をつくられていますので、ここは我々もウイングを広げてやらなければいけません。全体として連合の話を聞いてやっていくということになりますし、いろんな形で、政労使として制度面について議論をやっていきたいと思います」
反町キャスター
「集約や戦略と言うと、実際の合併が思い浮かぶんですけれども、集約というのはそういう意味もあるのではないですか?過疎が進む中で町の機能を集約させることによって、機能化、合理化という、平成の大合併があちらこちらであって、自治体がぐっと集約されましたよね。結果何が起きたのか。そのへんのところは、どう感じますか?」
西村議員
「そうですね。平成の大合併の評価もしっかりしなければと思うんです。集約と活性化と、もう1つプラスするとすればネットワーク化ということですね。1つの町でもいくつか集落がありますので、その集落ごとにできるだけ集約化した方が、いろんな行政のコストが下がりますし、救急の時の医療や道路やバスも含めても下がりますし、集約化した方がいろんなサービス業を含めて、飲食店もそうですし、いろんな産業も出てきますので、活性化していきます。しかし、単体だけですと人口は少ないですし、厳しいものがありますので、もう少しネットワーク化をしていき、同じような施設を持っていても仕方がないので施設の共同利用であるとか、マネージメントを一体的にやっていくとか、こうしたことでネットワーク化、あるいは交流人口も増やすことも含めて考えています。今回行政を無理にインセンティブをつけて合併させるというよりは、まずはそれぞれの集落の集約化、コンパクトシティ化と、それによる活性化とネットワーク化ということで既存の施設も含めて利用できないかということを考えています」
反町キャスター
「総理は会見で、法人税の引き下げと消費税の引き上げは全く関係ないと言っていましたが、本当に関係ないのですか?」
西村議員
「関係ありません。と言うのは、よく誤解されるのが法人税を下げると、その分税収が減るではないかと。その分の税収を確保するために消費税を上げるのではないか。よく誤解されるのが、法人税の税収が下がった分、消費税を上げて企業からとるところを一般の消費者からとるというような(もの)。税収の面では基本的に関係ありません。別の話です。消費税は消費税で、法人税を下げる、下げないに関係なく、社会保障のためにも、財政再建のためにも必要ですので、そういう意味で関係ないとおっしゃったと思います。一方で、消費税が上がる時に先ほども議論になりましたけれど、上がるだけで収入、所得が上がらないと家計は苦しくなりますので、消費は増えません。今回も復興特別法人税2.4%分を前倒しして廃止した時に、その分はちゃんと賃金に反映してくださいと、我々は政労使会議の場で言いました。そういう意味では法人税を下げた分は賃金に反映させる、あるいは投資してもらうということで還元をしてもらわないと溜め込まれてしまうと何も変わりませんから、そこのところを強く促しながら、消費税10%に仮になったとしても、その同等分ぐらいの賃上げになって、消費が減らないということで好循環が維持できて、成長軌道に乗っていくというのを是非つくっていきたいと思いますので、そういう意味では関係がありますけれども、税収をカバーしあうという意味ではないということです」
反町キャスター
「基本的に代替財源の割合は何%?」
西村議員
「この点が年末に向けて大きな議論になると思います。もちろん、所得、いわゆる租税特別措置、いろいろな減税措置もありますので、もう使われていないもの、政策的にもう意味がないもの、いろんなものがあると思います。これは全部整理をして、必要でないものはやめていく格好になると思いますし、それから、税収が増えていきますので、その分を何に使うかというところも、2020年にプライマリーバランスの財政の黒字化も、10%に上げたとしても10兆円以上のマイナスがありますし、それも減らさないといけないですし、あるいは上がってきた分を法人税下げに使って、さらに企業が良くなれば、税収が上がるということも考えられますので、我々はそのあたりもしっかり分析をして、どういう財源で考えていくのか。しかも、法人税の世界だけではなく、全体でどういったことが考えられるのかということも含めて、年末まで我々もしっかり議論して、法人税の世界だけでトントンとなるというのは、企業にとってはプラスかマイナスかわからなくなってきますので、基本的に企業が活動しやすい、投資をしやすい、あるいは賃金を上げやすい環境をつくっていくには一定の減税になることが必要だと思いますし、そういったところを年末に向けてしっかりと議論していきたいと思います」