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2014年6月23日(月)
どうなるイラク情勢 米国の思惑と日本の道

ゲスト

佐藤正久
自由民主党安全保障調査会副会長 参議院議員
宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
高岡豊
中東調査会上席研究員

どうなるイラク情勢 過激派組織ISISとは
島田キャスター
「現在イラクで何が起きているのかということを聞いていきたいのですが、まずイラクの民族や宗教の構成がどうなっているのか。イラクは、アラブ人が多いのですが、中でもイスラム教のシーア派アラブ人が60%ぐらい。現在のマリキ政権もシーア派ですね。イスラム教のスンニ派のアラブ人が20%ぐらいいまして、今回の混乱を引き起こしている過激派集団のISIS(イラクシリアのイスラム国)はアラブ人のスンニ派です。また独自の国家を持たない世界最大の民族といわれるクルド人がスンニ派ですが、およそ15%いて、このイラク北部に自治区を持っていると。こういった構成ですけれども、ISISが今回の混乱を起こしていると。これはどういう集団で、何を目指しているのですか?」
高岡氏
「最近、報道が増えて、にわかに注目された感がありますけれど、このイスラム国は突然、現れたわけではありません。と申しますのは、まずイスラム国なり、その前進になった団体というのはもともとは1980年代にアフガニスタンでソ連と戦っていた。あるいは戦おうとしていた、イスラム過激派の活動家達です。2003年になりますと、イラクに潜入していきまして、そこで反米武装闘争に加わってきたわけです。ですから、確かに、彼らは宗派に分類しますとイスラム教スンニ派ということになりますけれど、彼らの思考や行動の様式というのは別にイラクのスンニ派の間で土着の者であるというわけではありませんので、イスラム国がそもそもイラクのスンニ派の何かを代表としているという発想で、今回の動向を理解するというのは間違いの元ではないかと思います。イスラム国は、そもそもイラクの一般の人達にとっては、非常に馴染みの薄いというか、むしろ、よそ者の団体ですから、活動を続けていく間にイラクの中では活動の足場を失います。そうしていく過程で指導者なり、創始者というものがどんどん殺害されるということになりまして」
反町キャスター
「それはいつの時代ですか。サダム・フセインの時代とかですか?」
高岡氏
「いや、イラク戦争のあとです。2006年から2007年にかけて、どんどん活動の地盤を失っていきまして、何人か指導者が殺されます。現在はアブバクル・バグダディと名乗る人物が指導者になっていますが、彼も形式的にはイラク人ということになりますが、彼のイスラムの理解であったり、実践であったりというのはイラクの普通の人達が思っているイスラムの実践とか、理解とはかけ離れたものだろうと思います。彼らの主張というのが、そもそもイラクという枠組みそのものに対して非常に否定的であると。おそらく、イスラム国の存在とか、活動というのはお隣のシリアでの紛争と深く関わりがあるのですが、シリア、イラク、あるいは東アラブと呼ばれる地域といったところにある国家や国境というものをそもそも打倒したうえで、そこにイスラム国家をつくろうというところまで目標にしている団体です」
佐藤議員
「高岡先生が言われたように、彼らはそんなに認識がなかった。まさに、現在は支持があるわけですよ。おそらくスンニ派の人達はマリキ政権憎しということで、一緒になって、実は食料とか、武器とか、一緒に応援している部分があるのかもしれません。ただ、もともと非常にテロリストと言われる集団で、アルカイダからダメ出しを食らった集団ですから。アルカイダにしてもあまりにも過激すぎる。非常に厳格なイスラムの教えをおしつけるために、非常に制裁も厳しいということもあってダメ出しを食らった。ISISを見る時、イラクだけではダメです。シリア、イラクに跨がっているんです。アサド政権がおさえる地域と、反政府、特にISISがおさえる地域。実は、昨日ですか、アサド政権が空爆しているんですよ、ISISを、シリアの中で。ラッカというあたりをやっていますけれども、イラクの中でISISがイラク軍から戦車とか、装甲車を分捕っちゃった。それが現在シリアの方に流れてきて、それがアサド政権にとって非常に脅威になっている。だから、シリアがイラク情勢に及ぼす影響もありますが、イラク情勢がシリアに及ぼす影響。まさに、この国境地帯がまさに無法状態、無政府状態」
高岡氏
「彼らがもともと何だったかといいますと2004年10月に日本人の旅行者の誘拐殺害事件を引き起こした団体です。彼らの苛烈な闘争方針といいますか、極端なイスラム実践というのは、イラクの地元の人達からも嫌われまして、いくつかの武装勢力、イラクで活動している武装勢力の今や不俱戴天の敵です」
反町キャスター
「お互いに?」
高岡氏
「戦闘にまで至っていたわけです。彼らが復活する契機になったのは、シリアでの紛争でして、一時期、2011年、2012年ぐらいに、イスラム国がシリアでも活動するためにフロント組織にあたるような団体をつくるわけです。その団体がシリアで、外国から入ってくる資源の主な受け取り手となって、再び力を蓄えたわけですけれども、ここで問題が生じてきました。イスラム国、ISISはシリアでの活動なり、海外との間で気づかれた兵站拠点に自信を深め、フロント組織を解消して、イラクとシリアを股にかける。イラクとシリアのイスラム国という、現在の名称に改称しようという方針を打ち出すわけです。ところが、俗に言うアルカイダの本部なり、ハードコアな活動家、アイマン・ザワーヒリーが現在、指導者になっていますけど、彼らの方針というのはシリアにおいてはあくまでアルカイダの名義を隠して、その後もシリアにおいてはフロント組織を維持して、彼らにシリアを任せると。イスラム国はイラクに専念するようにという指示を出したわけです」
反町キャスター
「その時まではISISはアルカイダの下部組織だったのですか?」
高岡氏
「そうですね。フランチャイズというような位置づけ。看板を借りていると。系列」
高岡氏
「そうです。まさにブランド名を借りているという状態でした。実際にイスラム国は現場の力が強くなってしまいましたので、イスラム国はあくまでもこの方針。つまり、ここにある国境は関係ないという態度をとり、さらに、返す刀でアイマン・ザワーヒリーに、この国境に基づいて闘争を運営するというのは侵略者の押しつけた国境を認めることではないかと激烈な非難を浴びせた。実際にインターネットで、世界にいるイスラム過激派のファン層ではイスラム国の方が、ウケがいいです。そんな形でイラクとシリアの国境を跨いだ活動をどのように経営するかについて対立が高じまして、波紋というかちょっと宗教的な意味が出て、きつ過ぎるのではないのかと言われる場合もありますが、ともかく両者は、事実上の絶縁状態になったということだけは事実です」
反町キャスター
「ビジネスの話のように聞こえて、ある企業がシリアでお店を開いたが、うまくいったので、イラクでも展開をしようと思ったら、もともとのれん分けした、古いお店の方から、それはダメだと言われたんだけれど、絶縁したみたいな。アルカイダとISISの関係というのは、最初は人的交流みたいな、ないしは武装闘争のやり方、お金の集め方、組織のつくり方、武器の提供、入手の仕方というノウハウは全部アルカイダが育てた組織みたいなイメージでよろしいのですか?」
高岡氏
「もともとアルカイダそのものではなかったものが、イラクでの武装闘争の過程で、看板を借りるというような経緯がありましたけれど、おっしゃった通り、活動のための資源をどう調達して、どこでどう使うかという発想というのはまさに武装闘争に限らず、ビジネスなり、あとは正当な活動なりといったものと通じるものがあります」

歴史的背景は
島田キャスター
「1914年のオスマン帝国ですが、このあたりから話を聞いてもよろしいですか」
宮家氏
「オスマン帝国というのは何百年も続いたものですけれど、1922年に潰れる。最後の段階でトルコとシリア、現在の地域でいえばイラクとヨルダン、サウジアラビアの一部を持っていたわけですね。ここで今度は、ヨーロッパの国々がオスマントルコと戦おうとするわけですね。その中で、力が足りないから、アラブの連中にも協力をさせようと思って、メッカの大使フセイン、メッカにいたアラブ人に『あなたには王国を差し上げます。アラブの王国をあげますよ』と言って『だから、トルコと戦ってね』というわけです。ところが、片方で今度はユダヤ人に対して、ユダヤ人のホームグラウンドをパレスチナにつくりましょうと、イスラエルをつくりましょうとこういうわけですね。一方でフランスとイギリスは、シリアとイラクをだいたい分割しちゃうわけですよ。自分達のものにしちゃう。ところが、細かい話になりますけれど、メッカの大使フセインは、本当はメッカで全部のアラブの王国をつくるはずだったんだけれども、サブドクにやられちゃったものですから、サブドクがメッカとディーナをとっちゃったわけです。しようがないから、シリアとイラクとヨルダンに、メッカの大使フセインの子供達を王様にしたと。極めて人工的な、そこに住んでいた人達のことも考えずに線が引かれた。それを王政と、打倒したバース党の独裁制で押さえてきたわけですよね。本来、独裁制だからうまくいっていたのかもしれないけれども、それを皆自由にしましたら、それは昔とは違った感情、利益が出てくるわけですよ。どうしても、スンニ派はスンニ派同士で固まる。シリアはシリア同士で固まる。信用できない。しかも、変な政権ができて、マリキ政権のようにえこ贔屓をすれば、こいつらも信用できないということになって、どんどん、打倒、独裁性が倒れたことによって、宗派性が高まってきちゃった。おそらく、これがシリアでも、イラクでも、場合によっては中東で、このようにいろんな民族、ないし宗派が住んでいるところは、これからこういう方向に動いていく可能性がある。もし力が無くなればね」
反町キャスター
「そうすると、先ほど言われた、アラブ統一国家みたいな話というのとは違う方向により拡散する、進んでいると見た方がいいのですか?」
宮家氏
「はい。中東では、これは高岡先生の方が詳しいかもしれないけれど、私の理解は、オスマントルコが壊れました。そのあと、この地域をどうやって統治していきますかという議論があった時に、2つの考え方があって、1つはアラブ主義。アラブ皆でまとまりましょうと。もう1つは、イスラム主義でやりましょうと。そういう議論が実際にあったんですよ。ところが、その議論の一番の中心は、実はレバノンあたりでやっていて、その中にはクリスチャンもいましたから、イスラム主義というより、アラブ主義でいくということで、ナセル氏はアラブ主義をやり、また、サダム・フセインにせよ、シリアにせよ、アラブのバース党、アラブ社会主義政党というものが強くなって、アラブ主義で、1960年代、1970年代ぐらいまでは、それが一世を風靡したわけですよね。ところが、アラブ主義ではありながらも、実際には非常に非効率な、もしくは独裁をやるばかりで、民政は安定しない。そうしたら、アラブはダメだと、イスラムの原点に戻らなければいかんと。今度はイスラム主義が1980年代以降出てきて、逆に言うと、この地域の人達はヨーロッパ的な議会主義もやった、アラブ主義もやった、イスラム主義もやった。どれもうまくいかないということで苦悩している最中ですよね。その中で強い中央政府がばらけちゃいますから、従って、皆が言いたいことを言い出すようになって、収拾がつかなくなっていく。これは次の均衡点に移っていかないと、収まらないと思います」

ISIS勢力拡大の背景
反町キャスター
「たとえば、民主主義も、アラブ主義も、イスラム主義もダメだという国。その地域住民の人が失望する中で、ISISが支持規模を広げていく。何主義ですか、彼らは」
宮家氏
「イスラム主義なんだけれども」
反町キャスター
「何をもって、人々の心を引き寄せているのですか?」
宮家氏
「反感ではないですか。中央政府への」
反町キャスター
「反感?」
島田キャスター
「マリキ政権への?」
高岡氏
「不平不満であり、単に、彼らは地元の人から何かを待たれているとか、支持をされているということではなくて、外部から潤沢に、彼らに供給されるいろいろな人員であったり、資金だったりというものを持っていると」
島田キャスター
「ISISの統治方法というか、制圧したあとのその地域というのはどんな感じなのですか?」
高岡氏
「必ずしも領域として広い地域を抑えているわけではないと思います。むしろ、彼らはインターネットで、短い動画を盛んに使って宣伝をしますけれども、もしかしたら、その町の中で象徴的な建物に、彼らの旗を立てる。あるいはイラク軍の基地に旗を立てる。短い画像を撮って、そこからすぐにいなくなり、インターネットでばら撒く。それにより、少なくともインターネットを見ている人の間では、イスラム国は広範な領域を押えているかのように錯覚させているという作戦を使っているかと」
宮家氏
「もう1点は恐怖ですよ。ああやって無差別のような形で、人をどんどん殺していく。これは、サダム・フセインがやった方法と同じですよ。イラクだけがそうだと言うつもりはないけれども、相手が弱いと思ったらね、戦いますよ。ただ、相手が何をするかわからないとなれば、怖くなったら、それは言うことを聞きますよ。ああいう体質の、1つの手法は、確かにスンニ派の広範な支持があるのかもしれないけれども。もう1つは恐怖。あとは、彼らは結構、統治をしようと努力をするのではないですか。たとえば、交通整理をやるなど」
佐藤氏
「私が聞いた話は、高岡さんが言われたように、宣伝戦が上手なんです。すごく映像をうまく使って、パーッと訴える能力があるのと、あと、もう1つは統治能力はもともとありませんから、テロリストですから。それで押さえた地域を地元の部族長に任せているという話もあるんです」
反町キャスター
「たとえば、水とか、食糧とか、教育制度とかというもので地域住民の、支持を得る。そういう、いわゆるちゃんとした政治形態をとっているとか、そんなことは全然ないのですか」
高岡氏
「たとえば、教育活動であったり、援助活動であったり、やっていると称する動画というのはたくさんあります。ただ、彼らが制圧していると称する地域で、たとえば、より大きな規模で経済を営む、産業を興す、税金をとる、司法制度を機能させるという意味の統治とか、支配というのは、おそらく彼らにそれをやる、意志や能力はないと思います。仮にあったとしても、最終的な裏づけというのは恐怖と暴力しかないわけですから、そこには地元の人間はついてこないと」

米国の対応&思惑は
反町キャスター
「アメリカにとってはシリアのアサド政権はやっつけなければいけないはずですよね。そこに力を入れるとISISを強めることになる?」
宮家氏
「皆、イラクしか見ていないのですが、イラクについて言えば、ここでアメリカ軍が介入するとなると、マリキ政権を助けている、もしくはイランを助けている、つまり、加担していると思われている。スンニ派の連中から言えば、またアメリカがやってきて、スンニ派をやっつけている。やりたくないわけですよ。かといって放っておけば、今度はアメリカの識者が困っているのは、進んでも引いてもろくなことがない。どちらにいっても、どちらかの立場を支援することになるから、それをやりたくないし、中立でいたいと」
島田キャスター
「オバマさんはイラクとどう関わろうとしているのですか?」
宮家氏
「オバマさん個人の考え方と、アメリカの利益というものの間で、彼はおそらく揺れていると思うんですよ。オバマさん個人としては要するに前の政権、すなわちブッシュ政権共和党の時代に戦争を始めてアメリカの国内で犠牲者がいっぱい出て、厭戦気分が高まっているわけですよね。その中で自分は、この2つの戦争をやめさせるんだということで選ばれた大統領。ですから、当然大統領の仕事を黙々とやる。たとえば、シリアで何が起きようが、エジプトでクーデターが起きようが知ったこっちゃないわけです。なぜなら戦争を始めるのは簡単ですが、やめるのは大変ですから。やめられないのをわかっているだけに、オバマさんはずっと不介入をしてきた。そこで、本当であればアメリカの利益を考えたらイラクについて言えば、日本、韓国とまで言えませんけれども、ある程度の最低限の部隊を置いておいて、駐留をして、ある意味では重しになって治安を維持しながら、イラクを再建していこうと思っていた部分があると思いますよ。ところが、実際にはイラクのナショナリズムと言いますか、反米の感情が非常に強かったので、結局、イラクとアメリカの戦略的な関係には合意できたんだけれど、米軍をイラクの国内に置いておくということについては、これは日本にもあります地位協定を結べなかった。地位協定を結べないということは、イラクの国内にいる米軍の兵士が法的に保護されないということですから」
反町キャスター
「それはマリキ政権が署名をしなかったということですか?」
宮家氏
「そうです」
反町キャスター
「マリキ政権はアメリカの支援でここまできたのではないのですか?」
宮家氏
「そうです。ですから、マリキさんはアメリカに助けられて実は2期目もやったんだけれど、国内の反米感情というのがすごく強かったので、板挟みになって最後は断念したんです。いろんな手を使ったんですよ、人数を減らすとか、条件を少し緩和するとか。しかし、結局、地位協定は結べなくて、アメリカはそうですか、それでは出て行きますと言って出て行った。これが2011年です。従って、現在の段階はある意味で、起きるべくして、起きたんです。だって、力の空白が起きているわけですから、米軍が抜けちゃったわけですから。米軍が後ろにいて、もしくは横にいて手とり足とりとは言わないけれども、情報やいろんな支援をすることによって、イラクの治安部隊は戦えたわけです。それが、米軍がいなくなっちゃったわけですから、ある意味でこんなに酷いとは思わなかったけど、起こるべきことが起きた。本来、アメリカからすれば、ISISがイラクを全部とっちゃうのも困るし、かといってこのままマリキさんに続けてもらっても、紛争はいつまで経っても終わりませんから、スンニ派も、シーア派も、クルドも仲良くできるいい政権をつくってねと…ところが、実際にはISISが強く、どんどんバクダット近くまで来るでしょう。そうしたらマリキさんが何て言ったかというと、今更何を言うかと私は思うんだけれど、空爆してくれ、やっつけてくれと。しかし、地上の支援がない空爆なんてできないんですよ」
佐藤議員
「まさに地上目標のデーターがないと空からの攻撃はできないんです。しかも、空母からトマホークなら、相当な長距離を撃つわけですから、地上の目標情報がないと撃てない。しかも、撃ったあと、それが本当に当たったか、当たらなかったのかという評価もしない。特殊部隊が地上にいて、米軍だけでなくても協力者がいて、情報がないとなかなかできないし、全部上空から見ればと思うのですが、そんなものではないです。今回、オバマ大統領が苦しいのは2期目を当選した時の公約は米兵の撤退だったんです。それで当選したわけです。そういう公約の中で当選した中でも、もう1回地上部隊を送るというのは、アメリカの厭戦気分もあり、これはいくら共和党が言っても、なかなか彼にとってはできないですよね」
反町キャスター
「イラクとシリアにおけるアメリカの使い分けをどのように見ますか?」
高岡氏
「もっともねじれているのは、イスラム国をどう扱うかということです。イラクで彼らを攻撃すると、彼らはテロリストですが、シリアで彼らを攻撃すると、彼らは正義の反体制派ですから。ここの評価のねじれを…」
宮家氏
「一貫性がないということですよ」
島田キャスター
「イラク国民はアメリカに何か期待しているのですか?」
高岡氏
「これまでの経緯からすると介入することへの反感の方が強く、何かしてほしいという期待感はないのではないか」
佐藤議員
「(アメリカは)アサド政権がシリア国内で、ISISを空爆するのは歓迎なんですよ。変でしょう」

日本が果たすべき役割は
島田キャスター
「この状態で日本が何か関われることはありますか?」
佐藤議員
「非常に限定されますよね。自衛隊を派遣するわけにもいきませんし、実際に良く言われるのは難民に対する支援。これがシリアの方の難民、2200万人のうち1000万人近くが国内難民や国外難民になっていますので、トータルでこれまで4億ドルの支援をやっている。イラク国内で50万人の避難民が出ている、もっと出ているかもしれませんが、それに対する難民支援を国連機関も、国際機関が出しているアピールができれば、それに対して支援するというのが一番あり得るべき。もう1つ、今回の外交という面でいうと、マリキ政権に対してはイラン。ISISに対して関係、影響があるのは、もしかしたらサウジやトルコなので、そういう面について、アメリカは出にくいところを代わりに日本が外交的に手助けをするという部分はあるのかもしれません」

どうする? 邦人救出
島田キャスター
「たとえば、イラクにも邦人がいると思います。外務省からは退避勧告が出ています。何人かいる邦人は紛争が激化したらどうやって逃げるのか。自衛隊が救助に行くことはあり得るのか?」
佐藤議員
「こういう状況で自衛隊が中に入っていくのは非常に難しいと思いますので、できれば状況が悪化する前に退避が基本でしょうね。現在、大使館の方々がバグダッドにおられますから、彼らの安全確保が最優先でしょうし、一部クルド人地区の方にもいますから、クルド人地区の方には、そういう戦火は現在のところありませんけれど、いつでも外に出られるという体制をとっておくのは非常に大事だと思います」

日本の対応は
反町キャスター
「トルコのエルドアン首相と安倍総理は親密な関係だと僕は思っているのですが、そういうツテを伝って何かやっていく。やれるか、やれないのか。やったことによって長期的に日本の外交の可能性が、そこから先に見えてくるのかどうか」
宮家氏
「私は冷たいんですよね、若干。ここは土地勘のない地域ですよ。我々はアジアのことはかなりわかっているし、知ったかぶりかもしれないけれど。そういうものがない地域であまり複雑なハードボールと言いますか。火遊びとは言いませんが、難しい政治的な判断を求められるようなことをやるというのには、実は慎重です。従って、佐藤さんがおっしゃったのは正しいんですけれども、たとえば、アメリカとイランが話していないかというと、たっぷり話している。彼らもこの1年ぐらい、特にこの数週間は緊密に連絡をとりあっていると思いますよ。そういうことを考えると日本ができることには限界がある。日本にしかできない仕事というのはあるわけですから、そこをうまく判断を間違えないでやれるところからやっていくという方があまりヤケドをしなくていいのではないかなと。消極的に見えるかもしれませんが…」

佐藤正久 自由民主党安全保障調査会副会長の提言:『イ・サ・ト←積極外交』
佐藤議員
「中東において影響力のあるイラン、サウジアラビア、トルコは非常に日本といい外交がありますから、難民支援含めていろんな面で中東地域全般のことを考えた場合、外交をまず積極的にやる。たまたまイランをとっても、岸田外務大臣が訪問し、向こうの外相が日本に来たと。今月も岸外務副大臣がイランを訪問しているんですよね。そういうパターンもありますから、日本として慎重なうえに立っても積極的な外交というものを中東大国のイラン、サウジアラビア、トルコと積極的にやっていただきたい。希望的願望も含めて」

宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言:『国造り支援』
宮家氏
「日本はあまり政治的にけれんみのある外交をする国でもないですから、ここは渦中の栗を拾うような華々しいことはできないなと。しかし、各国が評価してくれるのは、地道かもしれないけれども、国造り、町造り、地域造りをやる。そういう形で日本が貢献を地道にするということを続けていく方が、もちろん、大戦争が起きて、どうしても世界全体の平和のために何かしないといけない時があると思いますが、それを除けば、日本が誇れるのは各国の国造り支援だというのが私の考え方であります」

高岡豊 中東調査会上席研究員の提言:『知る』
高岡氏
「これは政府としてとか、何か組織云々という問題ではありませんけれど、今日の議論の中でも、日本としてイラクや中東方面には土地勘が乏しいという話もありましたし、イスラム国にしても実は前進の組織まで興味を持って遡れば、我々にとってすごく縁のある団体だったわけです。そういったものに対する興味や関心というのはある段階から失われて、6月になってにわかに知らない、知りたいと、安直な答えを求められるという場面に多々遭遇していますけれども、そういう発想からですと、具体的に何をしますかという時の妙案というのが出てこないのではないかと思っています」