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2014年6月13日(金)
裁判官・検事・弁護士 幹部3人が初の生議論

ゲスト

今崎幸彦
最高裁判所刑事局長
三浦守
最高検察庁公判部長
前田裕司
日本弁護士連合会・裁判員本部前副本部長

裁判員制度導入から5年 法曹三者に今後の展望を問う
佐々木キャスター
「裁判員裁判のこの5年をどう見ていますか?」
今崎氏
「5年間が経ったわけですが、お陰様で順調に運営されていると思います。何と言っても国民の皆様の高い協力と意識で制度を支えてくださっているというのが大きいと思います。なお、裁判所も多少得をしていまして、お陰様で裁判官が随分鍛えられました。毎日毎日1つ1つの事件の度に新たな人達と会って信頼関係をつくって、判決までやっていくわけですから、それなりのプレッシャーはかかっていると思いますけれど、そういう経験を積むことによって随分一皮むけたなと、こんな印象を持っています」
三浦氏
「大きな変革である裁判員制度、スタートの5年間としては大変順調に推移してきたというように、何より裁判員として実際にされた、4万9000あまりの真剣な取り組みが、この順調なスタートの大きな力になっていると思います」
前田氏
「現在、最高裁の刑事局長や最高検の三浦部長がおっしゃったように裁判員の方の意識に支えられて法曹三者も努力した結果と思いますが、順調に裁判員裁判が推移しているというように評価しています」

裁判員からみた公判のわかりにくさ
佐々木キャスター
「裁判員を務めた方を対象としたアンケートです。弁護士による説明がわかりづらいという人が多いのですが、この要因をどのように見ていますか?」
前田氏
「結局弁護人の法廷での活動が裁判員の方に評価されていないということの端的な表れだと思うんですね。数年前から指摘をされていまして、弁護人の立場では深刻に受け止める必要があると考えています。要因はいろいろとあると思うんですけれど、簡単に言いますと、裁判員裁判というのは従来の法廷での弁護活動ではない、新たな法廷弁護の技術が必要とされるのですが、そこをまだ習得できていない弁護士層がいるということが1つだと思います。それから、弁護の方針と言いますか、弁護の戦略という言い方をしてもいいと思うのですが、裁判員裁判と従来の裁判官裁判では別個となるところがありまして、特に情状弁護と言われている事実に争いのない事件などについては顕著に表れるのですが、そういう弁護の方針、弁護戦略というのがきちんと確立できていないためにわかりにくいという評価を受けているのではないかというように考えています」

裁判員への理解をどう促す
反町キャスター
「検察側としてはわかりやすさを意識した指導をやっているのですか?」
三浦氏
「もちろん、やっています。たとえば、数字として5%弱という数字が出ていますが、そういう意味でわかりやすい、普通という意見が約九十数パーセントあるので、全体としては肯定的な意見をいただいているのだろうと思います。ただ数%とは言え、わかりにくいという評価をされるということは刑事裁判の質に関わる問題ですし、これはできる限りゼロに近づける努力が必要だろうというように思っています」
反町キャスター
「裁判官の説明がわかりやすいというのがダントツなのですが」
今崎氏
「お褒めいただくのは大変ありがたいのですが、多少、割り引いて考えなければいけないところがあります。もともとこのアンケートは判決が終わった直後に経験者の方々に書いていただいていますので、終わったあとのそれなりの高揚感、達成感のある中で、もちろん、裁判官はそこにいませんけれど、裁判官の質問はどうですかと聞かれれば、多くの人は下の方に丸をつけるんです。そういうような想像もできるので、必ずしもこれが相対的に検察官や弁護人との関係での裁判官が圧倒的に優れているということでは必ずしもないと私は思っています」
反町キャスター
「裁判官に接触する時間が長い?」
今崎氏
「それは圧倒的に長いです。評議室だけで密に意見交換しますので、それは遥かに心理的に近いと思います。もちろん、そういったことも影響しているのだろうと思っています」
反町キャスター
「評決の場において、わかりやすく噛み砕いて説明するのが、裁判官のお仕事だからこそ、こういう評価が出ていると理解してよろしいのですか?」
今崎氏
「それはたぶん違うと思います。そのように思われると思うのですが、本来的には法廷で検察官、弁護人が主張した内容というのを裁判官が噛み砕いて説明するというのはおかしいんですね。むしろ法廷でそれなりにきちんと説明をして、戻ってきたらすぐにこちらの一切の説明なしに裁判官と裁判員が意見交換できると、これが理想ですね」
反町キャスター
「理想ということは、あれはどういう意味だったのですかという、やりとりが裁判官と裁判員の間であったりするのではないのですか?」
今崎氏
「それはそうかもしれません。そういった実態が多少はあるだろうと思います。確かにそれが評議室の前の法廷での検察官、弁護人、裁判所も含めて、わかりやすい説明ができているのかという問題が投影されているのだと思います」

取り調べの可視化の効果
佐々木キャスター
「可視化された取り調べというのは、どのように影響していると思いますか?」
三浦氏
「可視化と言われましたが、我々は録音録画というように読んでいます。要するに、検察官が取り調べをする際に、その部屋に録音録画の装置を置いて、まさにその状況を映していくということをやっているわけですが、裁判員裁判対象事件、その他いくつかの類型についてやっています。特に、この裁判員裁判対象事件について言いますと、対象事件の98%、ほとんどが録音録画をやっています。そのうちの多くは全過程と言いまして、検察官が取り調べる最初から最後まで全過程を多くの事件でやっているということですので、その結果どういうことが起きているかということですが、公判で被告人が、たとえば、犯罪事実を争うという時に、捜査段階での供述と、公判での言い分が違ってくると。捜査段階の供述というのはどうだったんだと言うことで、その信用性といったことを吟味する際に取り調べの録音録画、記録した媒体を法廷で再生するというような形で、捜査段階での取り調べの信用性、信任性を判断するということで大いに役立っているということだと思います」
反町キャスター
「映像が証拠となって、発言が翻って、結果として無罪となったというケースをどう感じていますか?」
前田氏
「取り調べの可視化ということは、弁護士会で広げようということでネーミングしている言い方ですが、我々は、取り調べ全過程の録画というのを取り調べの可視化と呼びましょうと言っているわけです。取り調べの可視化が実現しますと、取り調べに対する不適切な調べというのはおそらくなくなってくると思うんです。供述者が供述した内容に忠実な供述調書というのができてくるだろうと。従って、全過程の録画が行われれば、捜査段階でこう言った、しかし、公判ではこうだという捜査と公判での供述の食い違いというものがおそらくなくなってくるだろうと。だから、捜査での供述を公判で禁止しなければいけないという事態はなくなるだろうと我々は見込んで、取り調べの可視化が裁判員裁判でも先だって必要ではないのかと言ってきました。ただ供述を録取するというスタイル、聞き取って録するという、喋る人と記録する人が違うわけですよ。そうすると、聞き取って記録する方が取調官ですから、取調官の主観がその取り調べの供述調書にはいくら注意しても色濃く反映せざるを得ない側面があると。一方で身体を拘束されて取り調べを受けている人は、その身体拘束を受けていること自体が威圧的な雰囲気の中で取り調べを受けるということになりますよね。そうすると、どうしても取調官に迎合せざるを得ない、そういう雰囲気があります。必ずしもできあがった供述調書が本人の真意に沿わないという書面になってしまうことがありがちですね。それが現在こういう形で法廷で、捜査段階での取り調べ状況の録画をしなければいけなくなっている大きな要因だと私は見ているんです。ただ、かつては一切録画するものがありませんでしたから、客観的にどういう取り調べが行われたかがわかりませんでしたね。いわゆる被告人の言い分と、捜査官の言い分が水かけ論だということもいろいろ言われていましたが、そういうことですと裁判官の方もどういう判断をしたらよいのかわからないけれど、少なくとも取り調べが録画されていれば、取り調べ状況はわかりますので、捜査での供述内容が録画されることによって、そこでつくられた調書の信用性の判断は、断然しやすくなると思うんですね。そういう場面での個別の判断ですから、1つ1つ良いとか、悪いとかは言えませんけれど、そういう結果として有罪、無罪になっているのではないかなと思います」
三浦氏
「公判定で、被告人の側がいろいろな形でこういう調べだったからこういう話になったんだというようなことで、実際の調べはどういうことだったんだということは、昔から問題にはなってきました。今回こういう形で録音録画が広がることによって、実際に検察官がどういう質問をしたか、あるいはそれに対して被告人がどんな発言をしたのか、あるいはその時の表情はどうだったか、そういうやりとりが生の状態で記録されていますので、そういう意味で言いますと、捜査段階の供述の真実味が非常に判断しやすくなった。裁判員の方にとってもしやすくなったということだろうと思いますし、弁護人との間でもその点での争いが少なくなったのではないかという感じはします。それを見れば一目瞭然ということですから、言った、言わないとか、あるいは押しつけられたとか、脅されたという争い方が少なくなったのではないかなという印象を持っています」
反町キャスター
「可視化が広がることによって、検察側としても、証拠をもって有罪にすることが重要になってきたということはあるのですか?」
三浦氏
「供述以外の証拠が大事であるというのは、今に始まったことではないですし、客観的な証拠をできる限り探し、それをもとに取り調べるということは昔からやっていることだと思います。ただ、いろいろな科学的な捜査は広まってきていますので、そういう意味では調べる範囲が広がっているという事実はあると思います」
今崎氏
「二人がお話になったことはその通りだと思っていまして、裁判所としても基本的に取り調べの録音録画がきちんと行われるということは、その供述の経過、取り調べの経過がよくわかりますので、万が一争いになった時にきちんと立証ができるという意味では大変高く評価しています。ただ少しだけ実情をご説明したいことがあるのですが、現在のお話では専ら被告人の自白調書は裁判に出た時のことだったと思いますが、実際の裁判員裁判では自白調書が出ることはかなり少なくなっています。どういうことかと言いますと、被告人に対して、その事件について言い分を聞く手続きとしては被告人質問と言って法廷側が被告人に対して質問する手続きがあります。現在はその調書を調べる前に被告人本人に事件を含めて実情をいろいろ聞くということをやっています。そうすると、その中で、被告人本人が事件に対してしっかり意見して、特段検察官や弁護人に影響がなければ、そのまま被告人調書を出す必要がないんですね。食い違いが生じる、生じないは、これは実際に検察官、弁護人の立場ではあると思いますが、総じてそれぞれから質問することでその内容が出てくることがほとんどですから、そういうこと自体が少なくなってきているということもあります。裁判所はそういう意味でも自白調書よりもむしろ本人の口から話を聞きたい。こちらとしてもその方が良いのかなと思っています」

裁判員の負担をどう考える
佐々木キャスター
「続いて、裁判員が抱える負担について見ていきたいと思うのですが、まず物理的な部分です。裁判員裁判の裁判員は、まず公判前整理手続きから始めまして、平均して7.2か月、ここでかかるのですが、公判が平均4.9回で実審理期間がだいたい平均9.3日という負担を抱えています。さらに、精神的な部分では、こういった裁判が行われています。生々しい証拠を見せられたのがとても精神的な苦痛だったとして、急性ストレス障害と診断された女性、現在も治療中ですが、国を相手に損害賠償を求めていまして、この制度そのものが意に反する苦役だとして、この裁判員裁判自体が憲法違反にあたると主張するということがあるんです。もちろん、物理的な負担、精神的な負担、それぞれに懸念があるわけですけれども、この点、負担についてはどのように考えていますか?」
今崎氏
「現在2つおっしゃいました。最初の方から期日の負担について、お答えします。確かに当初に比べて、自白事件、否認事件を含めて、公判に使う期日、あるいはその心理期日自体は長くなっています。ただ、もうちょっと詳しく見ると、特に自白事件など、1日の法廷に座っている時間というのは短くなっているんですね。それでまた全体として長くなっているのは、どうも話を聞いてみると、裁判員の方々のご希望を入れて、少し余裕をとった日程を取っているという可能性がかなりあるんです。ですので、日程が長くなっているということから、直ちに負担が重くなっているというわけではないように思います。ただ、そうは言っても、全体の期日が長くなると、それだけ参加できる方が減ってきますので、できる限り、コンパクトな審理をするということは大事だろうというふうに思っています。それから、否認事件になると、これは、有名な事件もいくつかありましたけれども、どうしても、大事な審理、どうしてもやらなければいけない審理のために必要なことですね。裁判員裁判だから、必要な証拠を調べないわけにはいきませんから。それは法曹三者の方できちんとできる限り無駄な証拠は省くという努力をきちんとやって、そういう負担を減らしていくべき筋合いかなと思っています」

裁判員の精神的負担
反町キャスター
「無駄かどうかというのはまた微妙ですよね。いわゆる生々しさ、現場のすごさ、酷さというものがきちんとそれを判断するうえで、必要な材料と判断した場合、これを見せるという判断が当然出てくるわけですよね」
今崎氏
「はい。今の質問は、2つ目ですね。精神的負担、特に、写真などだと思います。先ほど、ご紹介いただいた件については、現に裁判中なので、その点については、私から申し上げることはできないので、お許しいただきたいのですが、一般論として言えば以前、裁判官裁判だと、たとえば、被害者のご遺体だとか、あるいは犯行現場、血だらけの犯行現場の写真は普通に出てきました。そういったものを証拠として採用してきました。ただ、裁判員裁判になって、そういういろんな事件もあって、もう一度考え直してみると、そういう訓練といいますか、そういう経験のない一般の方々に、非常に刺激的な証拠をご覧に入れるというのが、大きな負担になる場合が非常にあるということがわかってきました。そうだとしますと、それにきちんと対応しなければいけないというのが、まず1点です。同時に、その時に先ほども言いましたけれど、大事な証拠を調べないのかというと、それはそうではないと思うんです。どんなに刺激的な証拠であっても本当に裁判のために必要であれば、それは調べるべきだと思います。ただ、問題は本当にそれが必要なのかどうかということをきちんと厳選しているかどうかという問題だろうと思うわけです。たとえば、被害者のご遺体にたくさんの傷があるということを立証するため、その写真が提出されたとします。それはいったい何のための立証なのだろうかということを必ず確認しなければいけないと思うんです。たとえば、殺意と言いますけれども、殺人の行為があるかどうかというのを立証するための証拠であるとした時、写真でなければいけないのか。体のどこにどの程度の深さの傷が、たとえば、刃物の刃先がどちらの方向に向っているかといったことを含めて、図や様々な報告書類で証明することは可能です。もし可能だとした時に、敢えて写真を採用するのか。むしろそういう図面で対応するのかということは、真面目に考えないといけない問題だろうと思います」
反町キャスター
「たとえば、図でも代用できるかもしれないけれど、それを敢えて写真で出すか、出さないかの判断であるとか、まさに、これは裁判員にどのように、言葉が難しいな、違っていたらごめんなさい。裁判員にどのようにアピールするかという、裁判員裁判が導入され、裁判員裁判になったことで法廷における演出がどのくらい必要になったのかという、この部分の話だと思うんですよ。そういう意味から見た時、たとえば、現在の写真のケースとか、ないしは検察側の裁判員に対するプレゼンテーションのやり方とかが、そういうところにおける工夫とか、変化というのはどういった感じになっていますか」
三浦氏
「現在アピールとか、あるいは演出という言い方をされましたが、それは違うと思っています」
反町キャスター
「していないという意味ですか、それは?」
三浦氏
「あくまでもそういった証拠が必要かどうかと。あるいは、それはどういう意味で必要なのか。検察官の立場で言いますと、犯罪事実の立証。それは実行行為であったり、行為であったりとか、いろんな要素がありますけれど、そういう犯罪事実の立証にとって必要なのか。あるいは重要な情状事実として必要なのか。そういう観点で、写真なり、何なりの生々しい証拠が、本当に必要なのかどうかということを吟味するということが1つ。それから、裁判員の心理的な負担、精神的な負担を考慮して、別の形の証拠を図面でやるとか、イラストでやるとか、そういう形で変えることができるのかどうか。それは検察官の方で一義的にまず考えて、必要だとなれば、そういう写真であれ、何であれ、そういうものを、こういう理由で必要だという形で、裁判所に説明して請求すると。こういうのが現在の流れだろうと思いますので、裁判員裁判にことさら情に訴えるような意味でのアピールという、そういうことは考えていないということだと思います」

負担軽減と審理への影響
反町キャスター
「前田さんはいかがですか?」
前田氏
「ほとんど、現在二人がおっしゃったことと同じなんですけれどね」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、裁判員裁判になったことによって、敢えて、また演出という言葉を使わせていただいたんですけれども、いわゆる裁判官の方ならば、同じようなケースを何百も何千も見ているが、いわば素人の人達に対してポイントをアピールするためには多少の演出みたいなものが必要だと、そういうことを言うのは、現状において裁判員裁判が始まってから、法廷も演出する手法というものも出てきているということはないのですか?」
前田氏
「演出的手法というのをどう捉えるかということですけれども、今おっしゃったような意味で何か情緒的なところを言ったよという、そういうところはごく一部で、写真の使い方なので、公判前整理手続きの段階で検察官と弁護人との間で結構攻防があったというような話はありますが、法廷で現実にこういうところが問題になったというのは、私自身はあまり体験もしていませんし、聞いてもいないですね」
反町キャスター
「裁判官裁判の時と同じようなやりとりが、現在の裁判員裁判においても、感情的な部分の盛り込み度は変わっていないという意味で言っていますか?」
前田氏
「いや、裁判官裁判の時はあまりそういうこと意識していないで、証拠の採用を決定していたということでしょう。裁判員裁判になって、先ほど二人がおっしゃいましたが、本当に、たとえば、写真が必要なのかどうかということを吟味していますし、必要だとしても代替できる手段はないのかどうかというのを検討するということですね。ただ、必要な証拠を調べないというのは本末転倒ですので、必要な証拠はきちんと調べるというスタンスでなければいけないだろうということです。私自身もどういう方法で、その傷ができたのかということで、ある事件を担当しましたけれども、その際はその傷口の写真を証拠として採用して、取り調べをしたということはありましたので、必要な証拠はきちんと調べるということが前提になければいけない。その分、いくらか裁判員の方に負担が生じるとしても、それは裁判という性質上、やむを得ないというのはあると思いますよ」

判決・量刑の変化は
反町キャスター
「たとえば、裁判員裁判で最も多い罪である強盗致傷の例です。刑の重さは裁判員裁判によって出てきている。つまり、裁判員裁判が始まるようになってから、罪の重さは少し厳しくなる方向の方にブレているのですが、逆に今度、執行猶予の件数は増えています。つまり、裁判官裁判の時代に比べて、裁判員裁判になってからは量刑の幅が広がっていると言えるのではないか。執行猶予の付いた被告に対する更生プログラムの1つとして保護観察を付けることができるんですけれども、これを付ける割合は裁判官裁判時代に比べて大幅に裁判員裁判になって増えていると。この状況、強盗致死傷の場合には、明らかに執行猶予が増えて、一方で量刑の重みは増しているように見える。一方で、保護観察については増えている。これをどう見ていますか?」
今崎氏
「強盗致死傷で執行猶予が増えているという部分ですが、ちょっと調べてみたんですけれども、その中では比較的、事後強盗と我々呼んでいるんですけれども、モノを盗んだ窃盗犯人が、逃げようとして、追いすがってくる人に対して何かケガをさせて、結果的に強盗になったという事件が結構あるんですね。執行猶予になっている類型というのは、そういう事件が結構多いんです。どうもそのような事件は裁判官裁判でも結構あったはずなのですが、かなりの部分がどうも実刑から執行猶予に移行しているように見えるんです」
反町キャスター
「量刑の広がりは犯罪の種類が多様化した結果なのか、裁判官裁判によって市民感覚が導入された結果なのか?」
今崎氏
「それは一口には言えないと思います。なぜかと言うと、裁判員制度が始まった前後で犯罪の類型が変わったのかどうかによりますので、それが変わっていないとすれば、動いたのは裁判員裁判の市民感覚が入ったことの影響によると思います。執行猶予の関係、保護観察が増えたのは傾向としてはっきりしています。これはおそらく裁判員の方々が、執行猶予のあとの保護観察をつけるかどうかということですから、裁判が終わったあとの被告人の行く末に強い関心を寄せていることの表れだと思います」
三浦氏
「同じ罪名でもいろいろな類型がありますし、そういう分析が必要だろうということと、まだ5年でありますので、もう少し年数をかけてこういった傾向がどう変化するのか、そういったことも考えてみる必要があるのではないかと思います」

厳罰化の傾向はあるのか
佐々木キャスター
「裁判員裁判になって求刑を上回る判決が増えたのではないか。数としては少ないのですが、パーセンテージでいうと裁判官裁判に比べて8倍になっているということですが」
前田氏
「2012年の夏だったと思うのですが、裁判員裁判の量刑評議の在り方という司法研究報告というのが裁判所から出されたんですね。それによりますと、量刑の大枠というのは、行為に対する責任で決まるんだと。その人がどういう方だったのかとか、そういうことを一般情状と言っているのですが、そういうものは二次的な考慮の要素になるだろうという、そういう報告が出されましたね。これは刑事弁護人によってはいろいろ評価が分かれるのですが、私は基本的にそういうことでいいのではないかという意見を持っているんですね。求刑を超える判断がなされているということについては、行為責任の考え方についてどういう評議がなされたのかなという思いは間違いなくありますね」

今崎幸彦 最高裁判所刑事局長の提言:『進化、深化、真価』
今崎氏
「裁判員裁判は5年経ちましたがまだ完成途上と言いますか、進化の途上だろうと思っています。それはただ単に表面的な技術の問題ではなくて、裁判の本質をどんどん掘り下げていく、難しい作業、深化、深くしていくという作業であります。そういうことをやることを通じて、本当の意味での刑事裁判というものができていくのだろうと思っていまして、私はそろそろ裁判官を卒業しなくてはいけない年齢になりますので、若い裁判官にそれを託したいと思っています」

三浦守 最高検察庁公判部長の提言:『人』
三浦氏
「裁判員制度は制度でありますので、活かすのも損なうのも人次第ということで、とりわけプロフェッショナル、プロとして関わっている裁判官、検察官、弁護士の協力と努力がこれからも必要だろうと思っています。と同時に、参加していただく国民の皆さんにぜひ裁判員裁判、あるいは刑事手続きというものにも関心を持っていただいて、臨んでいただきたいと思います。先ほどちょっと話に出ていましたけれど、実際に裁判員として経験された方は、自分の感想ですとか、あるいは法廷で行われた実際のやり取りや事件の中身と言ったことについては守秘義務の範囲ではありませんので、そういうことについては周りの方に自分の経験を話していただくということは自由でありますから、こういう形で広めていただく、そういう意味で人が何よりも大事かと。マスコミの方にも法廷を見ていただいて、いろいろな形で報道していただければと思います」

前田裕司 日本弁護士連合会・裁判長本部前副本部長の提言:『公判中心主義の実質化』
前田氏
「刑事弁護人の立場から、裁判員裁判が公判中心の裁判になっているということは間違いなく言えると思いますけれど、さらに本当の意味での公判中心の裁判にしていくための諸改革を不断に続けていく必要があるのではないか。5年、10年と時間はかかるかもしれませんけれども、常に検証を続けて、そのための運用だとか、制度改革をしていかないといけないという思いで書かせていただきました」