プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2014年6月12日(木)
データでみる景気動向 反動減影響とW杯効果

ゲスト

宅森昭吉
三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミスト
松野利彦
SMBCフレンド証券投資情報部チーフストラテジスト
永濱利廣
第一生命経済研究所主席エコノミスト
大山泰
フジテレビ解説委員

消費増税で日本経済は 反動減の実相をデータ分析
島田キャスター
「今月中に取りまとめられる見通しのいわゆる骨太の方針ですが、その政府案の骨子が今週月曜日に明らかになりました。それによりますと消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減からの回復過程を注視しつつ、今年中に消費税率10%への引上げを判断するとしているのですが」
大山解説委員
「今年は非常に日本の長期の経済運営をどうするかという点において大事な年です。景気がどうなるかという。骨太の方針は、今月末に決めて、日本の政府が経済運営の基本方針を中長期的なものを見据えて、拘束力のある考え方を決めるものです。案が出ているのですが、それに今年、消費増税を17年ぶりにやって、駆け込み需要と反動減の状況をちゃんと見ましょうというのも入っていますし、これは一昨年の夏に、消費税を来年10%に上げるというのは民主党野田総理の時の政権で国会で決めたこと。これは景気に異常な変動があれば考えるというのは担保されています。いずれにせよ、日本の1000兆円の借金とか、これからお年寄りがどんどん増えて、爆発的に社会保障費が増える中で、財政破綻しないようにどうするか。最初の道筋みたいなものも含めて景気を見る。大事な年」
島田キャスター
「駆け込み需要と反動減の状況を教えていただけますか?」
宅森氏
「まず今回の増税ですが、1997年の学習効果もあるので企業の方はほぼ想定通りに動いているかなと思います。ESPフォーキャスト調査という、民間エコノミストのコンセンサスを聞いている調査ですね。月初に調べているんですけれども。消費税の増税の前と後、2月調査と5月調査を出してみました。ほとんど形的には一緒ですね。エコノミスト全員が、景気が上向きであると100、悪いと0、分岐点が50になっているものです。もともと昨年から言われていた形ですが、駆け込みがあって、その後4-6月期はGDPでいうと前期比、年率でマイナス4%、5%の落ち込みになるかもしれないと。景気判断も下向きだと、ほとんどの人が下向きだと言っていて、でも、それは一過性だと。7-9から戻ってくるということで。それを見ると、80ぐらいの数字に、7-9月期は、2月も5月もなっているんですね。しっかり戻ってきている。しかも、さらに上向いていくという形になっています」
島田キャスター
「ほぼ想定通りということなんですね」
宅森氏
「はい。だから、消費税を上げても、駆け込みがどうしてもありますので、一時的な反動はあるけれども、それは一時的に終わると。そういうことだったと思うんですね」
反町キャスター
「1997年に痛い目にあって、それに懲りてというか、慎重な運営をした企業というのが、萎縮したままに終わっていく危険性、そこからきれいに戻っていけるのかどうか。そこはどう見ていますか」
宅森氏
「そこは戻っていると思っているんですね。萎縮していない。本当に景気が悪くなるという意味で萎縮はしていないと思っています。広告費の統計が出てないので…」
反町キャスター
「広告費の統計が出ていないと言って、相撲の懸賞本数で見るのですか?」
宅森氏
「そうです。いちはやく掴めるのでね。景気の予告信号ということで」
反町キャスター
「これは景気の先行指数みたいになるのですか?」
宅森氏
「広告費の先行指数。広告費ですね。だから、企業が節約しようと思うと、企業の出す、広告というか、懸賞を出す本数を落とすわけですね」
島田キャスター
「広告費から削るといいますものね」
宅森氏
「ええ。懸賞が1166本だったんですね。その1100本台が3場所続いたというのは初めてなのですが、夏場所、1165本で、1本しか減っていないんですよ。しかも、値段が1本、春場所までは6万円だったのですが、夏場所は6万2000円に上がっているんですね。消費税が上がった分の対応だと思うのですが。というようなことで(景気が悪ければ)金額が上がったら、少し落としてもおかしくないですよね。ところが、企業は同じ本数を出したわけです。だから、広告費はそのまま使っているということです」

最新データを独自分析 日本の経済情勢2014
島田キャスター
「消費増税前後の日本企業の動向というのはどう見ていますか?」
永濱氏
「先ほど、宅森さんのお話にある通り、企業は萎縮していないと思うんですね。私が見ているデータですね。機械受注というデータで一般的に企業の設備投資の先行指標というデータでして、これは景気の先行きを見るうえで、一番先行するということで見ているのですが、一般的に見られているのは、船舶、電力を除く民需というのが、設備投資はだいたい3か月から半年ぐらい先行するんですね。実はこれ一番直近、実質ではなくて4-6月のいわゆる機械受注というのは、機械メーカーの人達が受注額を集計して出すデータなのですが、直近については機械メーカーの人達のいわゆる見通しを集計したものですね。これを見ると高水準を維持している4-6月期まで。ということは少なくとも年内の設備投資は結構、調子良くいくのかなというのが読めるんです。さらに付け加えると代理店というデータがありまして、これは何かといいますと、代理店を経由して受注が入っているということなのですが、中小企業が機械を発注する時に代理店経由というのが多いんですね。なので、中小企業の設備投資も先行すると言われていまして、実は、私もこういう仕事をしていますので、だいたい現在平均して2日に1回ぐらいは講演をどこかでやっている。中小企業の経営者の方々とお会いする機会があるんですけれど、設備投資に前向きな発言を聞いている」
反町キャスター
「つまり、景気が良い?」
永濱氏
「はい、具体的には何が効いているかというと政府が打ち出した、真水で5.5兆円の景気対策。あれで結構、中小企業向けに、補助金とか、優遇税制措置が出ているんですね。それを有効活用して設備投資をやるという経営者の方が多かったんですけれど、直近、1-3月期、実績はそんなに良くなかったのですが、4-6月期が増えているので、中小企業も設備投資強そうだと」

駆け込み需要と反動減
島田キャスター
「外需はどうですか?」
永濱氏
「外需はだいたい過去の原則でいうと輸出で1四半期ぐらい先行するのですが、4-6月のところはすごく増えているんです。3割ぐらい増えていて。実際に今日発表された機械受注の外需も前月比で70%以上伸びているんですよね。内訳を細かく見ると、実は特殊要因も入って内訳の多くが化学工業系の受注なので、たぶん一時的な大きな受注が入ったので、さすがに輸出がこんなに増えるわけではないとは思うんですけど。ただ、これまでの輸出があまり伸びない状況から比べると、特殊要因はあるにはあるにはせよ、これだけ伸びているということは、輸出は結構期待できるのではないかと。さらにいろんなところで話を聞いても実は昨年度については消費増税の前の駆け込み需要もあって、本当は輸出向けにつくったのに国内の引き合いが強かったので、輸出はしませんでしたと言っている中小企業の多くの経営者の方に話を聞いたんです。これは消費増税、今年度から始まっていますので。となると、本来輸出したいものを、普通に輸出できるという環境が戻りつつあるので、それを考えるとこの夏場ぐらいから結構輸出も期待できるのかなと」
島田キャスター
「日本企業に対する増税の影響というのは、どう見ていますか?」
松野氏
「経済的な影響は、事前に駆け込み需要というのは想定以上だったと。しかし、想定以上であれば、当然反動減も想定以上になるべきだと思うんですけれど、これが想定内だったと。ちょっと考えるとおかしいかなと思うのですが、人件費が上がっていることですとか、あるいは一部の業種に限られてはいるんですけれども、雇用が逼迫しているということがあったのと、それから、ベースアップが少しづつでも進んでいるということで、消費がそんなに落ち込んでいないようだということもありますので、ある程度の影響は、限定的という見方がだんだんマーケットの方に広がり始めてきましたね」
反町キャスター
「海外投資家から見た時に、日本はどう見えているのか?」
松野氏
「現在、日本も海外の投資家から見て、様子見の状態ですね」
反町キャスター
「様子見。今のお二人の話を聞いた後、右肩上がり、いけいけどんどんに聞こえたんですね。海外の投資家から見ると、日本というのは、まだ本当に踏み込んで、投資していいのかどうかわからない状態ですか?」
松野氏
「そうですね。私だけ悪者みたいな話になっちゃいますけれど、株の方はご承知のように昨年56%ぐらい日経平均株価上がりましたので、この反動もあって今年に入って日本株はピーク時のマイナス10%まで下がっています。先進国とか、諸外国の株価の中で、マイナス10%まで下がったのはせいぜいロシアぐらいなんですよね。ウクライナの問題があるロシアだからこのくらい下がっています。日本も同じように下がっている、その理由は昨年がそれだけ上がり過ぎたのと、アベノミクスに対する期待が剥がれてきちゃったというのがあって、次が見えてこないというのがあったのですが、最近、ようやくちょっとですが、1万4000円が1万5000円まで平均株価が上がってきましたし、どちらかというと買ったところが、たぶん年金だと思われますので」
反町キャスター
「日本の年金、GPIFのことですね」
松野氏
「GPIFではないのですが、たぶんゆうちょ銀行、簡保生命あたりだと思うのですが、デフレからインフレの方向に向かうにあたっては運用スタイルを変えていかなければいけないということがあって、まだまだ金額ベースですごく低いんです。たとえば、簡保生命保険の場合は、運用総額86兆円ぐらいあって、今回増やしても、全体の1%ぐらいにしかならないです。日本株のウエイトというのは」
反町キャスター
「そんなものなのですか?」
松野氏
「そんなものなのです、簡保生命保険の場合には。今度、GPIFがいよいよ、これを現在12%の基準にして、どのぐらいまで上げようかという話です。たとえば、5%上げて17%にしようといっても先ほど申しましたように株価が昨年で50%以上も上がっていますから、その分ウエイトが増えちゃって現在事実上17%、確か16%ぐらいまで増えちゃっているので、場合によっては5%ぐらい上げても現状追認という格好になるのであれば新しい資金がマーケットに投入される可能性が少ないだろうということですので、たとえば、20%、22%という話でどっと膨らんでいくのであれば、それは期待できるのでしょうけれども。にしても軌道修正はたぶん年に1回ぐらいでしょうから、来春からみたいな話になりますので、将来的には期待は十分あるかもしれませんが、現在のところ、それほど大きくは、外国人投資家はここに来ていないですね」
反町キャスター
「法人税はどうですか。現在20%台という議論になっていますけれども」
松野氏
「そもそも35%台だったのが、これを10%下げて25%にするという話がいつのまにか20%台。しかも、どうやってその財源を確保するのという話。たとえば、外形標準課税みたいな話になってくると、もともとは法人税減税をする本来の目的は企業負担を少なくして海外移転を減らす。あるいは海外から法人を呼ぶための措置なわけですが、それに対してまた負担が増えるような話。だから、本末転倒みたいな形になっちゃいますので、ここは現状伝わってくる分ではちょっと期待をするのは難しいのかなというところはありますね」
島田キャスター
「消費税増税に伴う駆け込み需要と反動減、消費面からというのはどう専門家は見ているかということなのですが?」
永濱氏
「足元までのデータを見ると、1997年ほどは落ち込みはやや大きくないのかなと見えると思いますね。実際にデータで見てみますと、発表が早いデータとしては百貨店の販売額と新車販売台数ですが、前回の増税の時というのは、1997年の4月にどちらも前年比14%落ち込んだんです。それが今回、百貨店については結構、落ち込んだのですけれど、マイナス12%ということで、前回もそうだったのですが、5月は結構戻っていますと」
島田キャスター
「でも、百貨店はそんなに変わらないというか」
永濱氏
「そうですね。変わらないのですが、ただ、内訳を見ると、面白いことがあって。と言うのも、これだけ全体でマイナスなのに、そんな中でも、前年比で4月プラスだったところとか、銀座三越さんとかね」
反町キャスター
「どういうことですか?」
永濱氏
「なぜかと言うと、外国人観光客。たぶん消費というよりも小売の反動減の影響という意味でいうと、1997年と今回の違いというのは、外国人観光客というのが非常に大きいと思います」
島田キャスター
「環境が全然違うのですかね」
永濱氏
「はい。実はエコノミストの多くが懸念していたのは新車の方で、実はその駆け込みの大きさが、1997年よりも今回大きかったので、反動も大きいのかと思ったら、蓋を開けてみたら、4月はマイナス5%ぐらい。5月はマイナス1%ちょっとぐらいしか落ちていないんですね。これはいろいろあると思います。魅力的な新車が出ているとかがあると思うのですが、1つは、大きな支えになっているのが何気に家計の収入が増えているということが大きいと思いますね。たとえば、大企業の春闘賃上げ率で見ても、15年ぶりの水準が、今年は達成されるわけですよね。さらに最近出たデータでいうと帝国データバンクのアンケート調査によれば、中小企業も6割の企業は賃上げをしたというデータがあります。さらには、公務員の給与というのが、昨年度までの2年連続で平均7.8%ぐらい下がったのが元に戻ったとか、さらには、派遣の時給も前年比で3%ぐらい上がっていると。あまり言われていないのですが、家計が受け取るのは給料だけではなく、株の配当もあるわけですね。これが結構、増えているみたいで、私の試算ですと今年度だけでもたぶん兆円単位の家計の配当の受け取りが増えるという試算もできますので、それを考えると、何だかんだと、家計の収入が増えていくということが個人消費の下支えになっているという意味で、駆け込みの反動というのは、1997年よりはややマイルドになっていると」
宅森氏
「先ほど、百貨店の売上げがあって、その中で高額品のデータですよね。美術、宝飾、貴金属というのがあるんですけれども、これの駆け込みと反動がどうなったのかというのを見たものです。それまではだいたい20%前後で、ずっと2月まで来ていたのですが、3月はすごいですね。もう倍以上ですね。113.7%という」
反町キャスター
「これは高額だから、その3%分を、何とか安く買っておこうというので、こう爆発した」
宅森氏
「それもあると思いますね。それまでに資産効果で相当プラス、株が上がったりしているので、そういうのが買いやすくなっていたということもあるかもしれないですね。その反動が心配だったんですけれども、約4割弱の減少に済んでいる」
島田キャスター
「この4割はどう見たらいい数字なのですか?」
宅森氏
「これは足して2で割ると、3月、4月と。30%台後半ぐらいになると思うので、これまでの20%よりも高いんですよ。だから、全体的には割としっかりした動きが続いているという、駆け込みの反動もそれほど大きくはないのかなという感じですね。おそらく百貨店全体が12%の4月のマイナスから一桁のマイナスになった。絶対値が半分ぐらいに、5月なっていると思われるので、これの方もマイナスが5月は小さくなっているのではないのかなと思いますね」
島田キャスター
「消費の動きについてどのようなデータで注目されていますか?」
松野氏
「3月から4月にかけて、値上がりしたものというものをピックアップしてみたのですが、増税前、便乗値上げみたいな話がありましたけれども、実際に消費者物価指数も、3月から4月にかけて前年比で上がっていますよね。確かに3月が1.3%で、4月が3.2%と。これはコアのところの消費者物価指数なのですが、消費増税分を除いても1.3%から1.5%に上がってきているということは値段が上がっているのかなと。特にどんなものが上がっているのかというと、円安の影響で輸入チーズですとか、あるいはワインですとか、こういったものが上がっているのと、ドッグフード、園芸用肥料やカラオケルームですね」
島田キャスター
「ドッグフードは何か関係あるのですか?」
松野氏
「生活に余裕のある層の使うもの。あるいは利用するものといったところ。そこらへんはあまり消費増税の影響は受けないというんですかね。そのようなところであれば、多少値段が上がったところで、趣味のものですから、あるいは、ペットも嗜好品と言ってはあれですけれども、それほど、多少値段が上がったからと言ってペットフードの数を減らすかとか、あまりそういう話にはたぶん頓着しない人達のところですから」
島田キャスター
「そこに便乗がある?」
松野氏
「割と値段が上がってきているというのが一応あって、出ていますね」
島田キャスター
「トレーニングパンツというのは?」
松野氏
「これもジムへ行かれる方は、割と富裕層の方がジムの利用は多いかと思いますので、そういった関係かと思いますね」
反町キャスター
「総じて3月、4月にかけてというのはいろいろ理由をくっつけてはあるけれども、原価が上がっているけれど、それにプラス、便乗という値上げはあちらこちらでよく見えてきているということでよろしいのですか?」
松野氏
「であれば、普通は落ち込むはずですけれど、そこがない。理由はいろいろありましたが、もう1つが値段の表示の仕方です。外税表示から内税表示に結構変えていますので、意外と前の外税表示が内税表示に変わったところで値段があまり変わっていない」
島田キャスター
「よくわからなくなっちゃいますよね、買う時」
松野氏
「意外ともしかしたら落ちているのではないのかぐらい差がありますので、ここは心理的なトリックではあるのですが、商品に相当影響を与えているのかなという感じはしますね」
島田キャスター
「物価は割とぐんぐん上がっていくようなイメージですけれども、このまま物価だけが上がり続けるということはあるのですか?」
永濱氏
「基本的に経済的な理論で考えると、賃金が上がらないで物価だけ上がるということはたぶんないと思います。逆に、賃金も足元の労働需給は逼迫していますよね。賃金も上がっていくし、そのペースでたぶん物価も上がっていく。そういう状況だと思いますね。足元の物価のデータを見ていくと実は上がることは上がるんですけれど、やや消費税を除いた分だと、値上がりがどうも鈍化していく可能性があるのではないかというような見通しが立てられているんですね。と言うのも、要は、一般的に見られている消費者物価です。日銀が消費税を除いた分で2%を目指していると。直近3月までのデータしかなくて、4月は3%上回っているのですが、ただ、消費税を除いた分ですとそれでも4月はちょっと上がっているんですけれど、これに先行するデータというのが、川上の物価のデータですね。いわゆる企業物価の最終財というデータですが、消費者物価に先行するけれど、これは実は昨年の後半から伸びが鈍化していまして。なぜかというと、要は、円安のペースが上回ってきているので。昨年の前半にすごく上がりましたね。それが鈍化していますから、円安の価格転嫁の部分の効果が剥落してくるので、そうなると、これから消費税を除いた分の物価はやや鈍化していくのかと。実際に今日データ持ってこなかったのですが、先行きのデータとして実は東京都区部の消費者物価って、もう5月分まで出ているんですね。これを見ると消費税を除いた分を見たら鈍化が始まっています」
島田キャスター
「そうなのですか?何だろう、この痛税感は」
永濱氏
「それはたぶん消費税が乗かっているからなんですけど、そういうのを除くと…」
島田キャスター
「でも、モノの物価は鈍化しているということなんですけれど、日銀で確か目標を出していますよね。そのへんをエコノミストの方々はどう見ているのですか?」
永濱氏
「これも日銀の想定通りにはなかなかいかないのではないかなと考えています。と言うのも、私だけではなくて、多くのエコノミストはそう思っているんですけれども、と言いますのも、日銀のいわゆる展望レポートで発表している、そのインフレ率の見通しを線形でこんな感じになるのかなと。それに対してESPフォーキャストと言って、世の中のシンクタンクの経済見通しの集計ですね。平均したものが物価の数字ですね。消費税を除いたものですが、そうなると、今年度ぐらいからちょっと伸びが減速してくるのかなと。減速してもデフレには陥らないのですけれども、そうなると、日銀が目標としている2%というのはなかなか難しいかなということからすると、日銀は金融緩和を今年の年末までにマネタリーベースを170兆円までにすると言っていて、それ以降のフォワードガイダンスを明確には示していないわけですね。こうなってくると、今年のどこかのタイミングで2015年以降のフォワードガイダンスは出してこなければいけなくなるわけですね。そうすると、一方で実は外国人投資家の中には、2015年以降は、日銀金融緩和を止めちゃうんじゃないかと思っている投資家もいるわけでね。そうなると、2015年以降のフォワードガイダンスをある程度明確に出すだけで、追加の緩和の効果みたいなものが期待できるのではないかなと思います」

海外経済のリスクは
島田キャスター
「松野さんがリスクに関して目が離せないと注目しているデータというものはありますか?」
松野氏
「いくつかありますけど、1つはヨーロッパですね。ウクライナ問題かと言うと、決してそういうわけではありません。ヨーロッパ経済が上向きではあるんですけれども、非常に低空飛行であるということと、失業率も高いのですがやはり何と言っても、物価が低水準であるということです。現在、ヨーロッパの消費者物価指数は、平均で0.5%です。平均ですのでところによって、マイナスになっているところはギリシャやキプロスがありますので、ちょっとここでデフレ懸念が出てきているというところが心配で、これは先日、ヨーロッパ中央銀行のECBがこれに対応し、てんこ盛りの政策をいっぱい出してきましたが、それによって若干ユーロが下がってきているというところがあります」
反町キャスター
「デフレ懸念。日本がずっと20年苦しみ続けたデフレに、ヨーロッパもこれから入ろうとしているのですか?」
松野氏
「まだそこまで完全に入っていないのですが、確実に現在、物価が下がり続けてきている。このトレンドでいくとマイナスになることも当然あり得ますので、この状態が恒常化するとどうしてもそうなっちゃいますよね」
島田キャスター
「マイナス金利とは何ですか?」
松野氏
「市中銀行が中央銀行にお金を預けるのに金利をつけるのですけど、それをマイナスにするということですから、預けるとお金をとりますよという施策ですね。ですから、預けなくなるだろう。預けなくなればその分のお金は貸し出しにまわっていくという大義名分があるのですが、経済が低空飛行で、デフレに近いような状態になってくると、それほど資金需要もないわけで、そうなってくると、どこにまわっていくかというと中央銀行に相当するような安全度の高い国債ですとか、マイナスすることによって、ユーロを安くしたい。ユーロは極端な言い方をすればドイツの輸出だけで食べているような感覚がありますので、ユーロ高はまずいのですが、デフレになるとユーロ高になる可能性がありますので、ここは何としても押えたいということで、国債を買わせる方向へ向かわせる。あるいはユーロを安くしたい。これを真の目的にこういった施策をとってきたのではないかと思います」

経済リスクを総点検
島田キャスター
「宅森さんはどのようなリスクに注目されていますか?」
宅森氏
「天候要因ですね。エルニーニョ現象が現在、起こりつつあります。海面水温の温度を見ると4月下旬からエルニーニョの領域に入っているんです。ペルー赤道域の海面水温が高い状態を、ある程度のルールによってエルニーニョと言うわけです。エルニーニョが起こっている時と、そうではない時と比べてみると、夏は冷夏になりやすいんですね。夏物の製品の需要が落ちるんですね。消費が落ちてしまう。一時的な落ち込みから立ち上がっていかなければいけないところ、冷や水を浴びせられる形で天候要因が効いてしまうのが心配です。あまり酷い冷夏にならないと私は思っているのですが、東京と大阪で桜の開花日の差を調べると、コメの作況指数が不良以下になるような酷い時というのは開花日が開くんですね。今回は平年並みの2日間で済んでいますので、ジンクスからいうと普通の冷夏だろうと。あまり酷いことにはならないかと思っています」
永山氏
「宅森さんのおっしゃる通りで、冷夏になるとやはり影響があるんですね。実際、7-9月の個人消費の前年比と7-9月の日照時間の前年比のグラフを重ねて書いたんですね。驚くほど連動しているんですね。夏は天気が良ければ良いほど、景気的にはプラス、悪ければマイナスという関係があるんですね。実際この関係からすると、だいたい夏場の日照時間が10%減るだけで、その期の個人消費は0.4%~0・5%押し下げる関係があります。たとえば、過去に記録的な冷夏で、代表的なものが1993年だったと思うのですが、あの時はコメが不作になってタイ米を輸入しなければならないことがあった。その時は、平年に比べて日照時間が3割ぐらい減った。仮にそのぐらいの冷夏が今年来ると仮定すると昨年と比べて日照時間が50%以上減っちゃうので、そうすると、7-9月のGDPの成長率を0.9%押し下げてしまう」
大山解説委員
「注目していたリスク要因で、今年に入りアメリカが金融緩和をこれ以上しないとなった時に新興国が少し揺れました。それ以外でも新興国経済で揺れ、ブラジルとか、いくつか新興国が注目されるところが今後どうなるかというのもあって、そういう中でワールドカップが始まるわけですけれど、そういう話も聞きたい」
宅森氏
「開催国と優勝国の成長率ですが、今回ブラジルは開催国であってもダメかなと。成長率は高くないですね。ただ、優勝すると変わるかなと」
反町キャスター
「開催国が優勝した例が過去にあるのですか?」
宅森氏
「フランスです。フランスはこの時は前年が2.2%の成長だったんです。1998年が3.4%、開催国が優勝するとすごいんです。ブラジルは優勝すると元気が出る国なのではないか。今回も優勝候補の筆頭にあげられています。たとえば、1994年のアメリカ大会でブラジルが優勝した時は5.3%。強いですよね。2002年の日韓(大会)の時は(優勝したブラジルは)2.6%ですね」
島田キャスター
「たとえば、10%の増税ですが、日本がもし先送りしたなら、世界の目はすごく厳しいことになってきますよね?」
松野氏
「そうですね。プライマリーバランスをちゃんと整える話が順調に進んでいるかどうかというのを世界は見ていますので、それがあるために国債がすごく安く抑えられているところが、うまくいかないとなると国債価格が急騰する可能性がもちろんありますので、いわゆる株の暴落ということで、そういったところは避けていきたいと思いますから、順調に増税していく。それでもし景気が悪いような状況であれば無理くりでも景気を良くするために対策。永濱さんがおっしゃられていたような格好でフォワードガイダンスを同じタイミングで出してくるとか、そういった策を打ってくる可能性はありますね」

日本経済回復の見通しは
反町キャスター
「税収が伸びるんだから、2%の分はいつでも上げられるという権利だけ担保しておいて、とりあえず2%を先送りしよう、統一地方選挙もあると。その議論、マーケットはどう反応すると見ていますか?」
永濱氏
「それはネガティブに反応する可能性があると思いますね。マーケットの想定で物価が上がっていたら金利が跳ね上がる。リスクがあるとお話をしましたけれども、一方で同じように財政のところで想定通りの財政再建の決断ができないということになると、ネガティブに効いてくる可能性はあると思います」

宅森昭吉 三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミストの提言:『活用』
宅森氏
「これから成長戦略の第2弾も出ますし、3本の矢ということで、アベノミクスをやっているわけですが、それを何となく他人事ではなくて各経済主体が自分のこととして活かしていく、活用する。それができるかどうかというところが、結構年度の後半の景気に影響を与えると思うんです。たとえば、第1の矢の金融政策。異次元緩和をやっているわけですが、知らないという人が結構多いんです、一般的にアンケートをとると。しかも、それがどんどん調査するごとに知っている人が減っている感じです。そうすると、現在、せっかく実質金利が下がっているとか、そういうことで投資活動とかした方がいいのに、それもなかなかやっていない。ちょっと様子を見よう、これまでのデフレと同じではないか。だから、そういうことでしっかりと政策、これから出てくる成長戦略とは何かを自分でどうしたらいいかを考えてもらうということが大事だと思っています」

松野利彦 SMBCフレンド証券投資情報部チーフストラテジストの提言:『インフレヘッジ』
松野氏
「デフレかインフレ方向に物価が向かっているにあたって、アベノミクスを享受するためにはこのインフレヘッジ。つまり、インフレに向かっていくので資産運用のあり方を現金、あるいは債券ではなくて、株式不動産で運用しないと享受できませんね。たとえば、株主優遇で企業が利益を上げればそれをどんどん配当に回す。あるいは自社株買いで株価を上げていくスタイルは最近流行になってきましたから、それを享受する意味でも株式を買う。あるいは不動産を買うという格好で自分のやり方を変えていかないとアベノミクスは享受できない。あるいはインフレをヘッジしていくことができないと思いますので、生活防衛の意味でもありますけれど、こういった格好のスタイルが必要になってくるかなと。たぶんこれは年金が追随していく方向だと思いますので、その先回りをするべきだと思います」

永濱利廣 第一生命経済研究所主席エコノミストの提言:『短期 米長期金利 長期 人口政策』
永濱氏
「短期はアメリカの長期金利です。と言うのも、今後の日本経済を短期で考えるとアメリカ次第かなというところはあると思います。どうも日本の株価はアメリカの長期金利に連動しますので、となると、現在アメリカの長期金利は低いですね。これが本格的に上がってくるかどうか。私は上がると思うんですけれど。と言うのは、アメリカは現在のところマーケットの水準が経済的には良くなってきていると思うんですけれど、たぶん寒波の影響からの反動に過ぎない的な見方をしていると思うんですね。ただ、本格的に3%成長にこれからいくと思うので、そうなると予定通りテーパリングが今年の秋に終わって来年の早い段階で利上げという観測が出てくると思うんです。そのぐらいのタイミングで長期に上がってくると思うので、そのタイミングで日本の株も上がりやすくなって、日本経済に追い風が吹くかなと。アベノミクスが全くないところからドーンと出たのに対して、そこからさらに追加でというのはなかなか同じようなことは難しいですから。目先はアメリカの経済に注目だと思います。長期的に言うと、日本の経済は構造問題を考えたら最大のポイントは財政の維持可能性をどう担保するかどうかだと思うんですね。それを考えた場合アベノミクスというのはデフレ脱却が目標ですが、それは単なる第1工程でしかないと思う。要はデフレの状況だとどんなに健全化しても難しい。まずはデフレから脱却して、それは成功すると思うんですけれど、その後ポイントの第2というのは社会保障の効率化。最終的にはようやく政府も人口政策。何だかんだ長期的に考えたら人口が減っちゃう国は厳しいわけですね。50年後には1億人をきらないという政策を打ち出してくると思うのですが、たぶん具体策はあまり出てこないと思うので、いかに具体策をこれから出していくかというところがポイントだと思います」