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2014年6月9日(月)
中露接近でどう変わる 世界秩序の行方を検証

ゲスト

城内実
自由民主党外交部会長 衆議院議員
山内昌之
東京大学名誉教授 明治大学任認教授
畔蒜(あびる)泰助
東京財団研究員・政策プロデュ―サー

G7首脳宣言 安倍外交の成果は
島田キャスター
「今回のG7首脳宣言の抜粋として、ウクライナ問題について、ロシアによるウクライナの主権と領土の継続的な侵害を非難。情勢次第ではロシアへの追加制裁を実施する用意があると。情勢次第という文言がつきました。海洋航行及び飛行については中国を念頭に、東シナ海、南シナ海の緊張を深く懸念。さらに、威嚇、強制、力によって領土や海洋の権利を主張する一方的な試みに反対にしました。北朝鮮については核と弾道ミサイル開発の継続を強く非難。拉致問題を含めた人権侵害に対処するための措置を要請といったことが盛り込まれたわけですが、G7における安倍外交をどう評価していますか?」
山内教授
「今年は第二次世界大戦の終結、ノルマンディーの上陸から70年目とか、そこだけが強調されがちですけれども、実は第一次世界大戦が発生してから今年はちょうど100年にあたるわけですね。どこから文明論的、歴史的にものを見るかということで、様々なものの見方の重なりが必要なわけです、時間の軸でも。空間の軸でも同じで、ヨーロッパで行われた会議ですが、明確にアジアという要素を入れることによって、安倍首相によって指導されている日本の外交や、世界的な責任というものについてきちんとアジアとヨーロッパを結びつけたという。これはグローバル化の時代において非常に必要なことであります。もう1つだけ申し上げておきますと、さらに時間軸を広げますと、クリミア戦争という、ロシアとイギリス、フランスが対決した。その戦争から160年目にあたるんですね。こういう長い軸で見ると、ロシアと欧米、西欧との対立というようなものが歴史的にどう位置づけられるのかと。こういう軸。それから、第一次世界大戦というドイツ対他の連合国。第二次世界大戦における連合国対枢軸国という様々な歴史の軸というものを多重化することによって、物事が1つのことだけに、極端に強調され、局所にある政治目的で利用されるということをできるだけ避けていくというようなことが、歴史家である私にとっては非常に大事なことで、その点、今回日本の存在感は十分にあったと思います」

G7首脳宣言 どう評価する
島田キャスター
「G7首脳宣言に盛り込まれた『情勢次第ではロシアへの追加制裁』と、条件つきのような形ですが、これはどう読めばいいのですか?」
畔蒜氏
「これはプロセスがありまして、オバマ政権、オバマ大統領が、これを明確に、具体的にこういう事案があれば制裁をすべきだということを明確に決めようと主張したんですね。それに対し、実は欧州と日本は反対をしたと。その結果が『情勢次第で』という言葉になったんですね」
島田キャスター
「アメリカが引かざるを得なかった?」
畔蒜氏
「そうです。つまり、アメリカは一貫してウクライナ問題に対しては、ロシアに極めて強い態度で出ていると。ただし、軍事行動まではいかないまでも、特に経済制裁というレベルでは一貫して世界をリードしてきていると。これに対して実は欧州ももちろん、我が国も、アメリカと比べると、ロシアとの経済的な関係が全く違う、深いわけですね。そういう意味で実は欧州も日本も、これ以上経済制裁が強化をされてしまった時に、特にこのエネルギー問題、環境を含めてどうなるのか。特に欧州側は、その懸念が強いので、これに実は反対をし、日本も、もちろん、エネルギー問題もあるし、日本は、また別の問題、日ロ関係という別の文脈もあって、おそらく欧州の立場を支持するという形で、実はアメリカをちょっと抑制して、ここまで戻したというのがこの『情勢次第』という言葉だと思います」

米中露の思惑は 新世界秩序の行方
島田キャスター
「G7が閉幕した翌日の金曜日、フランスで行われたノルマンディー上陸作戦の70周年記念式典における、プーチン外交についてですが、かなり積極的に、各国の首脳らと会っていることがわかります。まず式典前日6月5日、フランスの空港に着いてすぐですよね、イギリスのキャメロン首相と会いましてウクライナ情勢の沈静化に向けて、ポロシェンコ大統領と対話を進めるように要請。フランスのオランド大統領と夕食会で話しました。フランスがロシアへ売却契約を結んでいる強襲揚陸艦2隻について、プーチン大統領が契約の履行を求めたと見られています。翌日、式典当日の6月6日ですけれども、ホテルでドイツのメルケル首相を会いました。そこでポロシェンコ政権承認と2国間対話を迫ったとされています。ウクライナ東部のポロシェンコ大統領との非公式の会談といいますか、会った時にはウクライナ東部での危機収拾には平和的で政治的な解決しか選択肢はないとの認識で、プーチン大統領とポロシェンコ大統領が一致したとされていますが、実はフランスとドイツの首脳がここで話さないかと呼びかけたということですね。最後はアメリカのオバマ大統領。これも非公式ですけれども、昼食会で会いました。ウクライナ東部の武力衝突を直ちに停止する必要があるとの認識でここでも一致したと。これもフランス大統領のお膳立てがあって実現したのではないかと報じられました。G7ではロシアは省かれたが、しかし、その直後ですよ、ここで直ちに、このG7のメンバー達と会って、次々と会談というか、話を重ねていった。これについてはどう捉えていますか?」
城内議員
「これは5日ですね、フランスのオランド大統領がわざわざ、最初アメリカと夕食会をやって、そのあと9時ぐらいから、ロシアのプーチン大統領と2度目の夕食会をやって、そこでじっくりと話をした。そういう意味でフランスのオランド大統領、ドイツのメルケル首相もそうですけれども、プーチン大統領をプッシュして積極的に今後のいろんなプロセスに関与するように促した。結果、ウクライナのポロシェンコ大統領と会って、ウクライナ東部の流血を即時停止するということで、まさに意見が一致し、ポロシェンコさんの申し出を歓迎するという意味で一定程度、細部ではもちろん、ポロシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領は、クリミア問題については全く意見が対立するわけですが、ある程度の歩み寄りを示すことができたという意味では、フランス、ドイツを中心とする、いわゆる仲介的な外交が功を奏したのではないかなと思うのですが」
島田キャスター
「評価をされているわけですが、G7でロシアを外した意味がなかったと見えるのですが」
城内議員
「いや、それはまた別の問題です。ですから、ウクライナ問題について、いろいろ議論をするわけですから、ロシアが入るとどちらかというと異分子として、どうしてもその中に入るわけにいきませんので、今回のこのノルマンディー上陸記念の機会を経て、当然、別にプーチン大統領が乗り込んできた。プーチン外交というより、この機会を利用してフランス、ドイツを中心に、どちらかというとより先鋭的なアメリカよりもやや融和的な立場で、今後のプロセスに関与していく」
反町キャスター
「そう見ていますか?」
城内議員
「私はそういうふうに見ています」
島田キャスター
「プーチンさんのしなやかさというものが、すごく浮き彫りになっているなと思うと同時に、オバマ大統領はどういう気持ちで臨んだというのが知りたいのですが」
畔蒜氏
「まずプーチン氏が今回、どういう形でこのプロセスに、このノルマンディーに入っていったかということですが、1つの大きな転換点は、実は5月7日にOSCEの議長がモスクワを訪問した。と言うのは、その直前にオデッサで悲劇があったんですね。いわゆるウクライナの過激派といわれる、政府側の過激派といわれる人達が、東部とか、オデッサは南部ですけれども、南部の人達を言ってみたら、ビルに40人ぐらい追い込んで、火炎瓶を投げて、要するに焼き殺してしまうという。具体的に誰がやったのかというのはまだ明確になっていないのですが、ただ、いわゆるウクライナのナショナリスト達が相当関与しているのではないかというのが」
反町キャスター
「殺されたのは親ロシア派?」
畔蒜氏
「親ロシア派。という事態を受けて、実は一番、この事態に対して敏感に反応したのがドイツのシュタインマイヤー外相だったんですね。ドイツ含め、欧州は極めて、このウクライナ問題で経済的にも、ロシアとの関係含めて、極めて敏感で、現在の状況というのは、ある意味、ウクライナのナショナリストの人達と、過激な人達と、言ってみたら、そこに、さらに、反応するロシアの過激なナショナリストの人達もどんどん、ウクライナ東部に来るという形で、まさに、これがぶつかり合うという状況が一歩間違えたら起こってしまうと。そういう中で、シュタインマイヤー外相がその事態に対し、実はOSCEの議長を動かして、プーチンさんと会談をさせて、そこで、いわゆるキエフの政権と、この東部の、いわゆる分離主義者と言われる人達、親ロ派の分離主義者といわれる人達を直接会談、直接対話させなきゃいけないんだという形で、実はOSCEの議長は、プーチン大統領に対していわゆる円卓会議をやろうということを含めた、いわゆる和平に向けたロードマップというのを提案。それに対してプーチン大統領が当時ウクライナの国境地帯にいたロシア軍を撤退させるということを明言した。もう1つ、当時ウクライナ東部の分離主義者の人達はいわゆる独立の宣言をするための住民投票をやると。5月の11日にやると言っていたのを、それを延期しろと。延期を要請したというプロセスがあって、そこから、プーチン大統領の和平に向けたというか、ヨーロッパとの連携の中で、安定化に向けたプロセスというのが実は始まっていて。14日に実際、円卓会議が開かれ、その後、大統領選まで3回、開かれたのですが、残念ながら、ウクライナ東部の分離主義者の人達は参加しなかった。もう1つ大きなのは、ロシア側も一貫して求めたウクライナの政権のウクライナ東部に対する軍事攻撃を停止するべきだと言った、これも止まらなかったという中で、非常に半ば不透明な中で、いわゆる大統領選が行われて、何とか大統領選が成立して、ポロシェンコ大統領が当選をしたと。ここからプーチン大統領は、ポロシェンコ大統領という人は実はドイツと意外と関係が深かった、あるいはポロシェンコ大統領のいわゆる支持者の、財閥の人達が実はエネルギーに関係が深いということで、欧米のメディアでも、もしかしたら、ポロシェンコという人は、プーチン大統領にとってアクセプタブルな人なのではないかと。実は、報道が当時からあって。ただ、私が見ていたところ、最終的に大きな転換点がどこになるかと。軍事攻撃を、現在の政権がどのタイミングでストップするのかというところが1つの大きなポイントだと思っていたのですが、まさにそのプロセスがノルマンディーで、まさに欧州の仲介の下で始まったということで、実はそのあとポロシェンコ大統領が、今度、国に帰って、就任演説をやってですね、停戦に向けたプロセスを開始するということで、そのプロセスの中でロシアも実は初めてウクライナに大使を正式に派遣をし、このウクライナと、ロシア大使とOSCEが実は3つのグループをつくって、和平案をつくっていきましょうと。現在そこまできているということですね」
反町キャスター
「プーチン大統領のノルマンディー行きというのは、プロセスに乗ったということですか?」
畔蒜氏
「乗ったということです」
反町キャスター
「そこで仕掛けたわけではなく、その流れの中の1つの出来事ぐらいに見た方がいいと」
畔蒜氏
「そうです」
島田キャスター
「アメリカのオバマさんはどういう立場なのですか?」
畔蒜氏
「そこですが、残念ながら、このプロセスの中でオバマ大統領、あるいはオバマ政権が積極的にこのプロセスをつくったというのは、少なくとも私が見る限り、見えないということですね」

中露接近 ロシアの思惑は
島田キャスター
「ロシアと中国の関係についてですが、今回のG7に先立ちまして、5月20日に中露首脳会談が行われました。この大国同士が、どういった内容で合意したのかといいますと、まず歴史問題に関しましては歴史の改ざんと戦後秩序の弱体化、戦後秩序を弱体化させようとする動きには対抗するんだと。第二次世界大戦と抗日戦争終結70周年の記念式典を合同で開催しようということに合意しました。その他に、ロシア産天然ガスの中国への供給契約を調印しましたが、10年越しの交渉が結実したということなのですが、売却総額がおよそ4000億ドル。これは40兆円を30年間ということですが」
城内議員
「まさにロシアはウクライナで力による現状変更を試みているわけですよね。中国も同じく南シナ海、東シナ海で力による現状変更を試みている。それによってロシアはアメリカ、欧州、日本も含めて批判されているわけですね。同じように中国にもこの問題について日米欧から批判の矛先が向けられているわけです。当然両者、ロシアと中国が接近するというのは、これは自然なことであって、ただ、歴史的に見てもロシアと中国は領土問題で争っていましたし、はっきり言うと、お互い現在も仮想敵国です。軍事演習をするけれども、お互いのいろんな歴史的な経緯を見るととても仲良く一緒にということができにくい環境にあります。ロシアの中央アジアを始めとするユーラシア経済連合というのを提唱しているんですね、その経済圏に組み入れようとしています。中国は同じようにシルクロード経済ベルト構想といって、ある意味利害が対立している部分もあるわけですね。ですから、そう簡単に中露蜜月時代ができた、お互いが緊張関係での中にありながら、力による現状変更の試みに対する国際社会の非難があるので両者がちょっと接近していると、それは米欧、日本に対する牽制ということに過ぎないと、私は見ています」
反町キャスター
「そうすると、中露の現在の関係というのは、敵の敵は味方みたいな、玉突きの関係だけであって、本質的に中露がお互い求めあっているものではないという話だと思っていいですか?」
城内議員
「全くその通りです」
畔蒜氏
「1つは、基本的には、私も同じ考えなのですが、ただ、1つ条件がある。と言うのは、それは東アジアで、我が国がロシアとの関係を断ち切らなければというのが、私は条件として付くと思うんですよ。面白いのは日ロの関係でいうと、直後にサンクトペテルブルグで経済フォーラムというのがあって、そこでプーチン大統領による11か国の通信社との対話というのがあったんです。この時に中国の新華社の記者がまさに70周年を共同で祝うという、これが世界に今後どういう影響を与えるかという質問を、あからさまにプーチン大統領にしたんですね。それに対してプーチン大統領の反応が面白くて、まずその際には一切その問題に対しては答えなかったんです。つまり、中露の経済協力、最初の質問だけ答えて、その何人かあとに日本の共同通信の記者が質問をした。それは、中ロ関係、日ロ関係、あるいは北方領土の問題について聞いたんです。まさにこの時にプーチン大統領がおもむろにその話を持ち出し、いや、歴史認識を正しく認識するというのは大事だけれども、このことが日ロが新しい関係をつくるということに対して、何ら障害になるものではないと。その時はっきり言ったんですよね。と言うことは、要するに、プーチン大統領も、中国の意図はわかっているんですね。ロシアがアメリカとの関係で中国に接近しなければいけないと。中国はそれを東アジアの文脈でこちら側に引きずりこんで、対日で使いたいと。ところが、プーチン大統領は、そこはノーですよと」
島田キャスター
「両国は違うところを見ているということですね」
畔蒜氏
「特に、東アジアの文脈では、違うところを。ただし、日本が扉を閉ざしてしまったら、違うんじゃないかと」

中露接近 中国の思惑は
島田キャスター
「先月21日、CICA(アジア信頼醸成措置会議)で、習近平国家主席は『アジアの国はアジアの問題を自分で解決する能力を持っているはずだ』と発言しました。この発言をどう受け止めていますか?」
山内教授
「日本の抗日戦争と日本の侵略ということで、中国の苦難が始まったわけではないので、それは特に19世紀以来、イギリスやフランスを始めとするヨーロッパの中国の領土侵略、戦争までした。しかも、アヘン戦争というのがありました。アヘン戦争というのは非文明的な人道に反する物品というものを、貿易黒字を出すために、イギリス、フランス、特にイギリスが、インドを介して輸出したというのはあまりにもよく知られたことですが。そういうプロセスの中で中国の領土と人々が蝕まれていった。こういう中で中国というアジアの大国が、自分達自身はアジアのものだと思っている国がヨーロッパ、もちろんアメリカも含めて、蝕まれていったということに対して歴史というものを見てアジアの被害、苦難というものについて自分達はきちんと正当に要求する権利がある。つまり、文明的に言うとアジアの問題はアジアの人によって解決する。と言うことは、このアジアの人というのは実は中国人、中華民族のことを言っているので、中国がリーダーシップをとっていく。あるいは中国の下でアジア文化がつくられ、それによって守られているということを言っているわけですね」

中国の思惑 アジアの秩序は
島田キャスター
「そことどう対峙していけばいいのか」
山内教授
「中国の持っている独特の世界観と文明論というものを理解しないといけないんですね。法の支配や人権、あるいは自由の概念というのは基本的に我々はグロティウスという国際法、それから、ルソー以来の人権、モンテスキューによる法の精神というような形の文脈でだいたい理解する。しかし、それは西洋のつくった規範ではないかと。西洋の規範を有利な武器として、むしろアジア、中国への侵略や分割の道具に使ってきたのは誰なのかと。従って、そういうルールとは別な形で中国は自分のルールをつくり、それを普遍的に打ち出していく、権利を留保するということを言いたいわけですね。その根拠にあるのは、1つは中国が、2000年以来、自分達が南シナ海の…」
反町キャスター
「あり得ないですよね」
山内教授
「私達はそう思うのですが、これが中国の華夷意識(かいいしき)とか、いわゆる中華思想というもの。自分達は世界の中心である。他は周辺地域等というのは、夷的であり、中国の文明や徳というものを開花し、周辺に及ぼしていく。そういう義務があると。これが義務であり、そういう世界観です」
城内議員
「そういう文明論も確かにあると思うのですが、私は中国共産党の体質というか、たとえば、先般、我が国の航空自衛隊と海上自衛隊の飛行機に対する異常接近。これを日本が悪いと言ったし、過去日本の航空自衛隊の飛行機が中国機に10m以上接近という話は、全くの捏造です。昨年の海上自衛隊の船に対するレーダー照射。あれもそんなことはやっていません。悪いのは日本だと言う。ハッキリ言って捏造・歪曲というのは、文明史論ということ以上に、中国共産党の自分のやった悪さを日本が悪い…」
山内教授
「捏造・歪曲とおっしゃったことは事実に近いと思うのですが、そういうものが起きてくる揺るぎのない自信。中国外報部は確信しているわけですね。確信がどこから出てくるかと言うと、バツが悪くて話をしているとか、それを言いくるめているということだけではない、自分達中心に歴史や世界や国際政治を見ていくと、どういう構図ができてくるかということは、自然にと私は思うけれども、あのような構図になる、先生からご覧になられたら捏造や嘘で言いくるめてということになる。彼らにとって、それはそれほど不自然なことを言っているわけではない」

今後の世界秩序 米国の変化は
反町キャスター
「対立の軸は今後どうなると見ますか?」
山内教授
「対立の軸というのはあからさまに現在、民主主義を否定するとか、あるいは人権を否定するとか、法の支配を否定するとか、そういう国は実はないんですよね。私達から見ると、特に中国、ロシアに関してもかなり疑わしい面もある。しかし、ともかく、大統領選挙が行われているロシアにおいて、ウクライナもそうですが、シリア、エジプトも今回大統領選挙が行われます。そういう意味で言うと、民主主義の基本的な基盤としての選挙というものが実現しているという点で言えば、民主主義というものをあからさまに否定する国は少ないです。中国は例外で、共産党の一党独裁国家だということを我々忘れがちですね。あたかも自由市場を無制限に許し、自由がそこに担保されている民主主義国家であるような印象を持つのですが、それは正確ではないと思うんです。いずれにしても、中国もそこへ近づいていくでしょう、言葉のうえでは。そうすると民主主義というものは基軸になるのかどうかということが疑わしくなる。問題は、選挙というものを1つとってみても、選挙で全て多数を得たら、それは政策や政権に全て万能性として委託、委任を受けたと。悪い言葉だけれども、大統領であれば何をしてもいいんだと。こういう形は実は民主主義国家ではないんですよね。ところが、選挙が行われれば、民主化の基準だという、他ならぬアメリカがイラク戦争、あるいは今回のシリア、リビア等々においてそれを言っている。結果、組織、多数派が絶対的に1つの政治を行っている権利をもらったんだという考え方。これは実は違うので、大事なことは、プルラリズムという考えです。複数の意見、相対しあう政党が自由にものを発言し、人々が自由をもって議論をしあうことができるような考え。これがプルラリズム、多元主義ですよね。これが民主主義として大事なわけです。ですから、世の中的に政治のレベルで言えば、そういう多元主義的に人々の異なった意見を変えていくような方向の人々と、そうではなくて、手法や体裁は民主主義というものをこれからも使うでしょう。北朝鮮も朝鮮民主主義人民共和国と。かつての東ドイツもドイツ民主共和国、民主主義と言っていたわけです。だけれど、民主主義の内容が恣意的に考えられ、圧倒的多数派の意見が全部委任されたら何でもできると言った。これに近いことを言ったのは、エジプトのモルシ大統領です。こうしたことの間に私は大きな溝や亀裂がこれから生じてくる、もう生じつつある。ただ、そういう亀裂をつくり出している責任の一端というのはアメリカにもあるということを反省しなければいけないと思っているんです」

城内実 自由民主党外交部会長の提言:『受身から積極』
城内議員
「まさに安倍外交、積極的国際協調主義に基づいた積極的平和主義ということで、日本は傍観者ではなくて、もちろん、集団的自衛権についても憲法の許される範囲でしっかり役割を果たしていくことをやるべきであって、国益をしっかり守る。国民の生命財産を守るということが国益であり、また、外からの侵入に対抗する。同時に自由主義、民主主義、法の支配。基本的人権という同じ価値観を持つ国とタッグを組んで国際社会の全体の平和、安定、幸福の増進に向けて、積極的に貢献していくことが私は大事だと思います」

畔蒜泰助 東京財団研究員・政策プロデュ―サーの提言:『対露外交が試金石』
畔蒜氏
「アメリカが力を徐々に衰えさせている。中国が後退している中で、日本としては東アジアにおいてどういう選択肢をもっていくのかというところが、日本外交の最大の焦点だと思うんですね。そういう中で、もちろん、日本にとって日米同盟が基軸であるのは言うまでもないわけですけれども、それプラス、どういう形の柔軟な形のオプションをつくっていくのかという時の1つの試金石が、まさにウクライナ情勢で米露関係が微妙なところだけれども、実は中露の接近という中で、日露がどういう関係をつくっていくか。まさに日露関係をどうつくっていくかというのが今後の外交の試金石になると思います」

山内昌之 東京大学名誉教授の提言:『文明論と戦略論の明示』
山内教授
「お二人の考えに賛成ですが、私なりにまとめさせていただきました。ものを体系的に、長期的な視野で組み立てていく戦略というものの考え方。その中に、ロシアというユーラシア国家とどのように日本が関係を結ぶかという重要な戦略性。また、中国に関しても非常に重要な最大の隣国として中国に対していつもドアを開く。これは戦略性と同時に文明論も持たなくてはいけない。中国文明というものから我々は多くを学んでいるけれども、中国文明の波及によって、それがどう変容したかという受身ではなく、むしろ中国の文明的な影響を受けつつ独自の芽を出していった。そういう積極性を見ていくような大きな俯瞰。その2つについて明示するような骨太なものの見方が必要になってくると思います」