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2014年5月27日(火)
旅客船沈没事故に見る 韓国政治・社会・文化

ゲスト

小倉紀蔵
京都大学大学院教授
金慶珠
東海大学准教授

韓国旅客船沈没事故 朴大統領の謝罪と涙
島田キャスター
「朴槿恵大統領が談話で『今回の事故にまともに対処できなかった最終責任は大統領である私にあります。高貴な犠牲が無駄にならないように大韓民国が生まれ変わるきっかけに必ずします』と発言し、深々と頭を下げて国民に謝罪をしたのですが、今回の事故は、民間の運航会社が起こしたものですよね。それを韓国のトップの大統領が謝罪をするという、そこのつながりが不思議に見えたのですが、その点はいかがでしょう」
金准教授
「今回の事故のありようが、単なる民間レベルでの事故というふうには簡潔に結論づけられないと。そもそも事故を予防できたはずの監督体制の不備、それから、事故が起きたあとの対応能力。結局、未だに一人も生存者を救出できていないという結果にもつながっているわけですから、今回の事故で見えてきたのは、それこそ韓国社会のあり方そのものが問われたわけですね。朴槿恵政権が始まって、1年2か月ほど過ぎてからの事故だったので、それまで政権運営をしていた大統領としても、当然責任を感じざるを得ない。その意味で、1か月過ぎた段階ではありますが、このような形での談話発表になったということだと思います」
反町キャスター
「かつて橋が崩落したとか、デパートが潰れ500人が亡くなったという、そういう事故がありました。その時にも、時の大統領は、今回の朴大統領がやったみたいに、涙ながらに国民に対して謝罪の会見をしたのですか?」
小倉教授
「涙というのはちょっと。彼女が女性だからです」
反町キャスター
「時の大統領は、こういう大規模な惨事が起きるたびに、これは最終的に、私の責任であると謝罪するものですか?」
金准教授
「ちょっと違うのは、1990年代の初め、当時は金泳三政権でしたけれど、その時の対応は、たとえば、建設会社の手抜き工事だとか、あるいは管理をやるべき会社が手を抜いたとか、つまり、政治権力の責任を認めずに、それを民間とか、そちらの方にある意味押し付ける形でそこを変革するというやり方でやってきたわけです。ところが、今回は(それから)20年が過ぎた。しかし、その事故のありようは全く変わっていない。これまで政府側が民間の取り締まりや管理、監督体制、安全に対する十分な投資をやってきているとばかり思ってきたけれど、実は全く機能不全に陥っていた。そこで20年前とは全く違う意味で政治の責任を求める声というか、責める声が韓国社会で強くなったというわけですよね」
反町キャスター
「たとえば、規制緩和して民間にいろんなことをやれといっても、結局そこで事故が起きれば、規制緩和した政府が悪いということを言い出したら、きりがないのではないですか?」
金准教授
「まさに今回の事故ではそういった批判が起きているんです。規制緩和というのは、日本でも第三の矢で新しくやると。韓国でもちょうど規制緩和を通じた新しい創造経済をやると。ところが、これまでの韓国の規制緩和を見ると、ある意味、独特な悪しき伝統がありますが、1970年代の経済発展の時から、いわば政経癒着というか、規制緩和をやる際に、実はその重点をどこに置くかといった時に、いわゆる財閥を中心とする企業であったり、あるいは業界であったりとなると、今回の事故も蓋を開けてみれば、船舶運航の安全をきちんと規制するはずの海運組合というのは、実は海運業界の、いわゆる一種の親睦団体であった。それから、海運の船舶、船級という、格づけ会社、船に対する。これもいわば、海洋水産部の官僚の天下り先であったと。つまり、全ての規制がいわゆる自主規制という名のもとに、猫に魚を預ける形で業界や企業にあげてしまっていたということですね。ただ、これは何も悪意を持って、そうしたのではなく、韓国の経済発展のあり方自体が非常に強力な政治と財閥との、いわゆる二人三脚のやり方。これが下手をすれば、政経癒着という弊害を生みますけれども、一方では非常に大胆な成長を可能にしてきたのも事実です。ただ、今回そういった狭間で見落とされていた安全に対する規制に、大きな落とし穴があったということですよね」
島田キャスター
「日本の政治家であれば、例え、どんなに悲しいことがあっても公の場でものを言う時にはぐっとこらえるのかなという印象があるのですが、今回、朴大統領は涙を流した。この点についてもちょっとどうしてかなと思ったんですね」
金准教授
「大参事が起きた時に、愛郷というのもありますけれども、一緒に感情を共感しあう。表現しながら共感しあうという文化が一方ではあるわけですね。今回の朴さんの涙についても、一方では遅すぎたとか、あるいは本当に泣いているのか。本当の心からの涙なのかという、むしろ、その真意を疑う声の方が多くて、泣くこと自体に対する批判はないわけですね。結果として、朴さんの政権支持率というのは下げ止まらずに46%ぐらいまで落ちていたわけですけれども、この謝罪のあとは、いずれにせよ、2%、3%ぐらいは持ち直しているというところから、肯定的な評価が多数であると言っていいと思います」
小倉教授
「先生をはじめとして助けた人達もいると。自分の命を犠牲にしてまで、子供達を助けた人達がいる。この人達は誇らしい韓国人という気持ちで、そのことに言及した時に涙が出たんです。つまり、彼女は政治家ですから、ただ単にお母さん達が泣くのとは違って、誇らしい韓国人と一つになりたい。誇らしくない、恥ずかしい韓国人は切り離したいという意識です。だから、徹底的にこれから韓国を変えるぞ。生まれ変わると言っていますよね。生まれ変わるというのは誇らしくない、恥ずかしい韓国人を切るという話ですね」
反町キャスター
「誇らしいというと、自分だけ生き残るのは申し訳ないと言って、自殺した教頭先生がいました。あれは韓国社会においては評価される行為なのですか?」
小倉教授
「それは彼自身の良心の問題です」
金准教授
「明確ないわば線引きというか、それは小倉先生が指摘されたような現象が起きていると思うんです。つまり、生き残った人、全員が悪者とか、そういうことでは当然なく、中には生き残った学生もいっぱいいるわけですから、そうではなく、船長をはじめ、清海鎮(チョンヘンジン)海運という船舶会社。それから、そのオーナーである宗教団体の指導者。こういった悪者としての韓国人と、それからつらい事故の中でも非常に韓国の未来というか、希望を見出せるような韓国人。それをとにかく、この状況の中で、政治的には切り離したいという思いが、省庁再編の構想にまでつながっていったと思うんですね」

海洋警察庁解体の理由
島田キャスター
「韓国の旅客船の沈没事故を受けた国民への談話の中で、朴大統領は、海洋警察庁が業務を全うできなかったとして解体を宣言しました。海洋警察庁の主な業務、管轄として領海の警備、海上犯罪の取り締まり、海難救助ということで、日本の海上保安庁に相当する機関です。しかし、事故直後の救助に当たっては、海洋警察は様々な失態をしたと言われています。主なものでいいますと、遭難信号が発信されてからおよそ30分後に海洋警察の警備艇やヘリコプターが到着したにも関わらず、船内に入って脱出の指示や救出をしなかったと。さらに、海洋警察のダイバーが現場に到着したのは要請からおよそ2時間半も経ってからだったんだと。また、民間企業のダイバーの作業を優先させ、熟練度の高い海軍のダイバーを待機させていたということなのですが、海が荒れていて、ダイバーがなかなか潜れなかったという点もあるのですが、海軍のダイバーが救助したのは結局28時間後ということで、なかなか潜らせてもらえなかった。救助できなかったということが起きました。なぜ、海洋警察はこのような失態を繰り返してしまったのかということですが」
金准教授
「そのためには日本の海上保安庁とは、ちょっと違う韓国の海洋警察の特徴というのがあるのですが、そもそも韓国における海洋警察というのは、1953年に、いわゆる日本では李承晩ラインとして知られている、韓国では平和ラインと言いますけれど、その過程の中で韓国の領海の警備を行うという名目でつくられた組織です。現在ですと、中国漁船の不法漁船の拿捕ですとか、取り締まり。それから、特に竹島、独島(トクト)ですよね、そこの警備にあたっている組織。そういう意味では、どちらかといえば、いわゆる警察の役割に非常に長けていた組織なわけですね。ところが、1996年あたりから省庁再編をする過程で、ここに新しく救難救助の業務。それから、いわゆる環境汚染の取り締まり業務というような、総合的な業務を与える組織に、もう1回改編したと。しかし、その頃、それを改編するにあたり、それに見合った人材と資金の投資と訓練システムの再開などが必要なわけですから、ですけれども、そこらへんが足りなかったわけですね。そこで海洋警察は政府側に救難救助に対しては、我々は専門人材が足りない。なので、いわゆる海洋救助協会という海洋警察を含めた、いわゆる協会組織をつくって、民間も含め、救難救助に関してはこの人達の方が、専門性が高いので、こことの協力体制でやるとしていたわけです。見方によっては、救難救助業務は他の団体に丸投げというふうにも見えるし、ある意味、ちょっと得意分野をすみ分けたとも見えるわけですね。今回の事故が起きたというので、当然救難救助という意味では、海洋警察自体の能力や判断力が、非常に劣っていることが明らかになったわけです。民間企業のダイバーとここで描写されているのは、実は韓国海洋救難協会に所属する会社のダイバー達なんですね。ですから、この人達はそこで優先的にやる権利と義務があったわけですけど、問題は海軍との協力はなぜとれなかったのかということですが、そこは協会自体の判断で海軍を入れて良いとか、悪いとかという権限はないわけで、そこをきちんと調整するべきなのは海洋水産部という省庁なわけですが、そこでも右往左往して、結局は調整をとれずに民間企業のダイバーだけが作業を繰り返すと。結果的に、救難救助が遅れるという事態に至ったわけです。あとでわかったことはこの民間企業がアンディーンという企業なのですが、そこがどうも海洋警察と専属契約を結ぶと、この現場では。専属契約を結ぶので自分達以外のボランティア、民間のダイバー達だとか、あるいは軍とか、そういったところは一応制限をしてくれという、その了解のもとでやったらしいんですね」
島田キャスター
「ビジネスとしてやりたかった?」
金准教授
「ビジネスとしてやった部分があるのではないかと。そこでもう1つ、癒着として指摘されるのは、このアンディーンという会社の総裁というか、社長が実は海洋救難協会のメンバーでもあったと。だから、専属契約という形で入ったという。まだ明らかにはなっていないのですが、とにかく現場でのダイバー同士の協力体制がうまくとれずに、どちらかというと、縄張り争いのような現象が見られたことは否定し難いし、その責任も突き詰めて考えれば、官僚であり、大統領であり、政治であると。その政治の管理と規制をきちんとやるべきだったのに、統制がとられなかったということですね」
島田キャスター
「責任の所在が今回は明らかではなかった。誰もわからない。この段階で海洋警察庁というのを解体する、検証もせずに。これが不思議だなと思うのですが?」
小倉教授
「問題は2つあるんです。つまり、誰が責任を持っているのかということを、突き詰めていないまま海洋警察庁の責任にしちゃった。もう1つは、大統領の責任なのかというところも不問に伏してしまった。両方とも何もできていません。つまり、何も解決されていません。それは統治のやり方の問題だと思うんですけれども、統治のやり方が、韓国では大統領が最高責任者だから全て責任を持たなくてはいけないというのが、国民もそう思っているんだけれど、大統領はそういうふうにはしたくないです、当然ね」
島田キャスター
「朴大統領は、そう思っていない?」
小倉教授
「思っていないです。口とは違います。全部自分の責任になったら、自分が辞めなくてはいけませんからね。だから、結局曖昧にしてしまう。日本のやり方も曖昧なのだけれど、韓国も、お前のせいだ、あんたのせいだとやって、結局は誰のせいでもなくなっちゃうと。その組織を解体して終わりにしてしまう。このやり方に韓国の国民はうんざりしているわけです。あきあきとしている」
反町キャスター
「今回、朴大統領は責任を認めたのではなくて、周りに責任をふりつけしたということですか?」
小倉教授
「そうです」
島田キャスター
「だけど、支持率は上がったといいましたよ。先ほど」
小倉教授
「責任は認めていないですよ」
反町キャスター
「周りに責任をふりつけたうえで涙を流したと。それがあの演説の全てだったと思ってよろしいですか?」
小倉教授
「いや、全てとは言えませんけれども、先ほどおっしゃった共感という、一番重要なのは誰に責任があるかということを突き詰めて考えることではない、一般の国民にとってはですよ」
反町キャスター
「何なのですか?」
小倉教授
「自分達に共感してくれる大統領なのかどうか。そこです」
反町キャスター
「極めて情緒的な部分が大切なんですね」
小倉教授
「その情緒が、情緒だけではなくて、韓国的に言えば道徳です。この大統領、この為政者、この統治者は道徳的な人なのか、そうでないのかということだけを見ているわけです」
島田キャスター
「道徳に共感できることが大切なのですか?」
小倉教授
「共感できるという道徳性を持っていると。国民と一体になってくれる、1つになってくれるという」
金准教授
「どのような政治的なリーダーを求めるのか。社会が求めるリーダー像としてはあり得る話ですが、私は大統領が正面から責任を受け止められない、あるいは受け止めない。その最大の理由は、韓国の権力システムにあると思います。日本の場合は議院内閣制である程度、総理大臣が自ら責任を負って、たとえば、辞めますと言っても同じ党から次の総裁を出すことができる。権力を維持することができるわけですね。ところが、韓国の場合は、先ほど申し上げたように、大統領が代わることによって政党そのものも、政治権力自体も完全に変わることですし、あと日本のように、途中で衆議院を解散するとか、そういったことはほぼせずに5年の任期が保障されている。なので、いったん正面から受け止めてしまうと、もう死に体になってしまうわけですよね、残りの期間が。朴政権に対しては、私が非常に懸念するのは現在1年半ぐらい過ぎた段階で、こういう状況に陥ってしまうと、最後のレームタッグなどを含めると、あと何をやっても2年と。この2年の間にどこまで彼女が本来やろうとしていた創造経済ですとか、あるいは外交における新しいパラダイムの導入ですとか、そういったところに邁進できるのか。それよりはこの事故の対応に追われる形で、安心、安全、国家のシステムづくりの徹底化。こちらに追われて終わる可能性が懸念されると」
島田キャスター
「でも、国民は彼女の中長期的なプランよりも、まずは共感してほしい。道徳的なところを示してほしいということを大統領に迫ったとは見られないですか?」
小倉教授
「それがなければ、もっとドーンと支持率が落ちています」
金准教授
「徹底的に権力というものが強い分、何かが起きた時の権力の責任のあり方というのは社会的に厳しく問われると。そこで正面から、責任を負って辞めますという立場にない大統領としては、涙を流すなり、共感を得る。たぶんね」
反町キャスター
「何かはぐらかすしかないという話ですね」
小倉教授
「はぐらかしているんです。要するに責任をとっているように見えるでしょう。だけど、結局何もやっていません」
反町キャスター
「怖いのは一事が万事とは言わないけれど、セウォル号の事故の責任のとり方で、こういうことになると、たとえば、日韓関係で様々な問題を抱えている時にも、論理的に導かれるべき結論、ないしは責任のとり方がわかっているにも関わらず、韓国国民の世論、受け止めを最優先に考えたうえで意思決定をしているということですね」
小倉教授
「そういうことです」
反町キャスター
「つまり、非常に情緒的な政権運営が常にあの国では行われているのか」
小倉教授
「情緒的なというのは、我々の感覚なんだけれども、向こうで言うと、道徳的です。政治は道徳で動くべきだと考えているんです。法ではなくてね」
反町キャスター
「人治ですね?」
小倉教授
「人治であり、徳治です。徳治は法を超越してくれということですから」
金准教授
「現在の大韓民国がどこまで超法治的な国家なのかについては、疑問があるのですが」
小倉教授
「大韓民国の中枢と、その国民、一般の意識は違うわけです。国民一般の意識はまだ昔の王朝時代の王様を見ているような目で見ているわけです」

政権交代と省庁再編
島田キャスター
「大統領が代わるたびに全然違う国のようになっていて、海洋警察1つとっても、組織そのものが変わっちゃうというのは、私達には理解し難いのですが、この点について問題点は指摘されているのですか?」
金准教授
「当然ですよね。省庁再編がたびたび重なりすぎると。この政治権力がなぜ5年ごとに変わる仕組みになってしまったのかというと、建国以来、1970年代まで続いた、いわゆる、独裁政権の弊害。これをなくしていくため、いわゆる5年の単年制にしたわけです。ところが、5年の単年制に、新しい大統領ができるたびに、韓国はここ40年、50年で急激な発展を遂げた。ですから、誰もが大胆な改革や大胆な発展像というものを掲げて、政権入りするわけですよね。だから、その意欲の反映がまさに省庁再編ではあるのですが、結果としてこういう事故が起きてみると、特に海洋水産部は、実は李明博さんの時に廃止されたものがまた復活した。それから、海洋警察庁も所属がころころ変わって、13ぐらいの部署に分かれていたものを、また1つにし、今度は救助とか、海洋汚染とか、そういう業務をどんどん積み重ねていったというような問題があります。こういう政治権力のもとで、実は中長期的な政策を一貫してやるためには、行政、つまり、公務員の力、あるいは責任、権限というものがある。保障されなければいけないのですが、ここがもう1つの、現在の韓国政治のあり方の問題です」
反町キャスター
「官僚のモチベーションはどうなのですか?5年ごとにころころ組織が変わったら」
金准教授
「日本に比べ、官僚に対する人事権を政治が相当握っているんですね。だから、官僚組織そのものが何か独立的に、日本では政治主導、官僚主導から政治主導というように官僚社会のパワー自体が1つの権力としてあるわけですが、韓国ではそれが非常に弱い。なので、政権が代わるたびに、この人達も入れ替わり立ち替わりしていくし、天下り先を転々とするような弊害が同じ天下りの悪しき伝統を用いながら、より癒着を容易にさせてしまったと言えると思います。たとえば、私がある海運協会に天下った、ところが、所詮、2、3年の命だと。それもだいたい2年ぐらいの命だとなると、私がこの協会を何か徹底的に改革しますとはならないわけですね。むしろ、事なかれではないけれど、安泰に、いいものはいいというような形が現在の悪しき慣行であると言えるでしょうね」

政官民癒着の弊害
島田キャスター
「『官フィア』とはどういうものなのでしょうか?」
金准教授
「官僚とマフィアの合成語ということですが、実はこの言葉は、官僚社会では自分達の間で一種のスラングのように横行していた言葉ですけれど、一般の国民にはなかなか馴染みがなく、今回の事故を機に一気に出てきた言葉。ただ、この実態としては日本のいわゆる天下り官僚とほぼ同じであると見ていただけるといいと思います。韓国の官僚システムそのものが、実は日本の制度をそのまま取り入れている感が強くて、実は未だに世界中でいわゆるキャリアと呼ばれる国家試験を通じて官僚を選ぶ体制をとっているのは日本と韓国ぐらいだと言われているんですね。そういった人達が天下っていくわけですが、単なる官と民の癒着であれば管理する側とされる側が癒着しているという話ですむのですが、一方で、政治も関わってくるわけです。政治というものが業界フレンドリーというか、業界の便宜をさらにあと押しするような形でやっていくというのが、結果業界がある意味、商売しやすい、言い換えると、安全と安心の部分においてはコストを払わない体制というものをつくり上げてしまった。政、官、民の癒着が大きな問題だと思います」
島田キャスター
「政官民の癒着がどんな弊害をもたらしていると考えればいいですか?」
小倉教授
「私は官フィアという言葉を今回初めて知ったんですけれどね。これは、韓国っぽいなと思うわけ。それはどういうことかと言いますと、韓国の文化です、政官民の。朝鮮王朝時代からの文化ですよ。国民のためにしなくてはならないということは、一体にならなくてはいけない、それは文化なんですよね。ところが、官フィアというのは完全に悪者という意味ではないですか。つまり、これまでずっと数百年あった文化なので、突然こういうことが起きると官フィアという異様に気持ちの悪い名前をくっつけて、それを癌のように摘出しようというような韓国の政治文化がありますね。誇らしいところだけをクローズアップして、恥ずかしいところはカットして削除していこうということです。削除していくメンタリティは、韓国社会のダイナミズムにつながっています。韓国社会がこれほどはやくダイナミックに変化できるのはそういうところです。良いもの、悪いもの、善、悪というものをハッキリと分けて悪を摘出するというやり方。だけど、これを続けていくと私は同じことが常に起きる。つまり、悪というのは、あなた達はもういらない人達、私達にとってもう見えない人達です。だから、結局その人達は排除されてもまたうごめきます。だって理由が与えられていないわけですから。あなた達は、こういうしかるべき理由で、こういう役割もしてきたけれど、ちょっと退場してくださいということではなくて、もともと根源的な悪ですと言っている官フィアは韓国社会のダイナミズムでもあるけれども、いつもいつも同じことが繰り返される理由でもあります」

法と道徳の関係
島田キャスター
「起訴のされ方ですが、船長は殺人罪で起訴されました。いきなり殺人罪でというのがなかなか理解できないのですが」
小倉教授
「法というものに対する考え方が韓国は独特なものがあると思います。韓国は法治国家ですね。法治国家であるということは、韓国人は自称しています。ですけれども、法治というものの内容は、日本が考えている法治とは違います。韓国の場合の法治国家というのは、法はもちろん大切で守らなければならないけれど、道徳と法が対立した場合には道徳が優先すべきだという考えがあります。この考えは近代の法の理論で言えば、間違っていますけれど、これはまさに法治を否定する考えですね。道徳の方が優越してしまうというのは。だけど、これはどうしてもメンタリティの中で朝鮮王朝の時代から法よりも道徳の方が上だというのがあるから、そこは乗り越えられないんです」
金准教授
「小倉先生の法と道徳という言葉を、司法と立法と仮に置き換えるとすれば、立法が司法を最終的には上回る権限があります。結局、国民の意を汲んで法律をつくるという意味。そういうあり方は、別にそれ自体が私は大きな問題ではない。要は、法をどう運営するかですよね。社会との状況の中で柔軟に適用していくという考え方はあるんです。ただ、問題はその適用が本当に妥当なのかということを誰が最終的に担保するのか。組織としては憲法裁判所がありますけれども、そこで最終的な判断がどうこうと言う以前に、そこはこれまで随分と法治が権力によって都合のいいように使われてきたという不信感もある。そこである意味、最近の韓国司法は、そう言う意味で自らの正義の実現という意味での発言力を増しているわけなんですね。そこで今回の事件ですけれども、未必の故意。殺人というのは故意に行うものか、あるいは未必であっても、そこに故意制が認められるかという非常に難しい解釈であって、韓国の検察もどうもこの罪で起訴をしたのは、最後まで裁判所で有罪と認められる可能性は確信できないということで、殺人罪で起訴したのではなく、遺棄致死とか、いろんな罪の上に、これをさらに上乗せしているんです。なぜ上乗せしているかと言うと、そこには現在の韓国の司法システムですと、いわゆる業務上過失致死ですと最高刑が5年です。一方で、イタリアでも船長が逃げて32人ぐらいが亡くなった事故がありました。これに関しては2900年ぐらいの求刑があって裁判進行中ですが、韓国の司法システムは、アメリカとか、ヨーロッパのように千年や二千年とかはできない。なので、今回適用され得る最高刑の罪として、これを適用した。そのやり方自体は、ある程度理解できるものがあります」
島田キャスター
「道徳とか、正義とか、その人の主観によるところはないですか?」
小倉教授
「この場合は、国民の総意というものがあるわけですね。こういう時に道徳性が一気に発揮されると。これは非常に珍しいケースだけれども、韓国の特徴がよく表れているケースです」

韓国の政治文化と社会 今後の日韓関係の行方
島田キャスター
「従軍慰安婦問題では解決の糸口が見つからない状態が続いていますが」
小倉教授
「日本の右派の人達があまりにも、私の考えでは韓国化していると思うんですよ。つまり、韓国人と同じようなメンタリティになってしまっていて、相手の歴史認識と自分達の歴史認識を一致させようとする意識が強すぎて、そうすると、相手が言っていることが間違っていると枝葉末節まで、あなたのここが違うとなってしまいます。歴史認識というものは一致させることは絶対に不可能です。国柄も違う、韓国はイデオロギー国家です。そこで抗日というものを全く抜きにした国家の成立、あなた達ももう一度見直してそういうふうにしなさいと言っても絶対無理ですよ。ですから、歴史認識の統一もできていない段階で日本と韓国が全面的に一致させるというのは無理です。でも、そうさせようと思うから、相手の言っていることが間違って見えてしまうわけです。相手の言っていることも、それは一理あるし、相手側の社会の論理からすれば納得できることです。だから、そういう考えもあるのかということで全面的に一致させるのではなくて接点を見つける。そのことしかないと思います。接点は見つけられるんです」
金准教授
「私は、この問題はそんなに解決自体が根本的に難しい話ではないと思います。現在、局長級の会談が2度ほど開かれ、来月も開かれる。どうも私が聞いたところによると、何とか1年ぐらいでお互い合意を見出す必要があるというところまで意見が一致していると思うんですね。賠償のあり方、それから、謝罪のあり方ですが、現実的に共通点を見出せる。領土問題も歴史認識も、昨日今日降って湧いた話では全くないので、そういう意味では日韓の国内政治のあり方が、外交そのものよりは国内のポピュリズムという方向に傾き過ぎているのではないか。そこをまず紐解く1つのあり方としては、日韓の官僚にこういう時は期待するしかないわけですけれども。決定権自体は、日本の外務省の官僚の方がある程度持っているけれども、韓国はその分、大統領と直近の連絡を通じての対応ができるわけですから、その決定をむしろ期待して政治家同士の和解というか、それが何だかんだ言っても、これまで1度も単独で会えていないというのはどう考えてもおかしいので、この状況をまず打破するところからさらに次のステップとなるべきだと思います」

小倉紀蔵 京都大学大学院教授の提言:『精神の違い』
小倉教授
「日本と韓国で精神が違っているから、お互いがそっぽ向いちゃうのではなく、違っているから面白いわけです。私は、日本人は昔から韓国に学べと言っているんです。だんだん学んできましたよ、つまり、先ほど安定という言葉がありましたが、安定だけではダメでしょう。日本も主体性を持たなければいけないでしょうということを言い続けてきたら、韓国人があまりにもダイナミックに主体性を持ち過ぎているから、日本人も圧迫されて、我々も主体性を持たなくてはならないと言って、現在日本がちょっと動き始めているわけです。だから、お互いの相手の姿をちゃんと虚心坦懐に見ることができれば、楽しい日韓関係になるわけですね。そこのところを、自分とちょっと違うからと言って拒絶するというのは間違いです」

金慶珠 東海大学准教授の提言:『As They Are』
金准教授
「アメリカのクリントン政権の時、北朝鮮を訪れた外交官が我々の望む北朝鮮ではなく、ありのままの北朝鮮を見ないとこの国を理解できないと発言したわけですが、同様に、日本と韓国についても言えると思います。特に、韓国という国にとっての日本は良くも悪くも研究の対象であり、学びの対象であって日本社会に対して十分な知識というものも蓄えられているところがあるのですが、日本の皆さんは、まだ韓国が近い国とは言いながらもよくわからない。日本とは違う異質性の部分、日本と歩調を異にする、考えを異にする部分に対して非常に警戒感を抱いているように思えます。また、韓国も一方で、韓国の正義の論理に合わない日本というものを不当な正義と断罪する傾向がある。ただ、これは私達が望む相手の国の姿ではなく、まずはありのままの姿を見せる。すると、そこにはよく言われるように、足して二で割ればちょうどいいというように、むしろお互いのシナジー効果というものにつながるような刺激を得ていいパートナーシップを組めるのではないかと思います」