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2014年5月26日(月)
伊吹衆議院議長に問う 選挙制度改革と国会

ゲスト

伊吹文明
衆議院議長 自由民主党衆議院議員
河野勝
早稲田大学政治経済学術院教授

伊吹衆院議長に問う 国民主権と国会
伊吹議員
「主権が国民にあって、国家というのは領土と国民と、領土の中で国民の日常生活を営むことを決める権利が国民にあるということ。これが国の最低限の条件ですね。国を決める権利が日本国憲法では国民にあると明確にしているわけですね。国民が日本国のことを決める権利を誰に委ねるかを決める行事が選挙。特に衆議院と参議院と2つの院があるけども、予算、総理大臣の任命その他においては衆議院が参議院の決定をオーバーライドすることが憲法に書かれていますから、衆議院議員を選ぶことは主権を預ける最大の行事ですよ。ですから、それをどういう形で預けるのか。そういうことが一番問題なんです。ですから、憲法にこの預け方、つまり、衆議院議員の選び方、条件、こういうものは本来個別の法律である公職選挙法に書けばいいんだけれども、憲法に非常に細かく書いてありますね。それほど重要なもので、だから、衆議院議員が選ばれて、衆議院議員が指名することで内閣総理大臣が生まれて、内閣総理大臣が生まれることによって、内政・外交の行政権がつくりあげられるというのが、日本の統治の根本ですね。選挙制度というものは大切につくりあげなければいけないし、また主権を預けられた者は緊張して、何のために主権を預けられているかということを考えてもらわないと議長としては困るし、さらに言えば、国民の皆さんも主権を預ける時に、慎重であってもらわないと、一時の雰囲気とかで主権を預けるととんでもないことが過去に起こった。そういうことを前提にして、今日は議論していただいたらと思います」

国民主権と選挙制度改革
反町キャスター
「選挙制度改革は、議会が決めきれずに、第三者委員会でやろうとしています。これについては?」
伊吹議員
「それは言葉を慎重に使ってもらいたいんだけれども、議会が決めきれないのではないんです。憲法には、選挙制度のあり方は国会で議決しなければならないと書いてありますから、議会が決めるんです。しかし、議会が決める前に持っていくのは、これは各政党、各会派ですよ。これは政党の責任であって議会が決められないのではないんです」

選挙制度改革 1票の格差
島田キャスター
「1票の格差に関する流れ、最高裁の判決をどう受け止めていますか?」
伊吹議員
「この前、行われた選挙は旧区割りのまま、2011年3月、最大2.30倍の格差があるという選挙区割りで行われたことです。それについて訴えがあった。選挙が行われたあと区割りの法案を通したわけです。この時は参議院選挙が行われていませんで、衆議院では自民党が大勝していたから通ったわけですが、参議院で否決されたんです。もう1度衆議院に戻ってきたわけです。憲法の規定によって3分の2を採決すれば、通るわけですが、その時には私も随分悩んだけれども、たぶん3分の2で立法府としての努力を示しておかないと、次の選挙も2.30倍の選挙制度でやる可能性があるという印象を最高裁に与えかねないのではないかと。無効という判決が予想されるわけですよ。無効の議員が選んだ、無効の安倍総理大臣となりますね。無効の安倍総理大臣が憲法の規定によって、指名した無効の最高裁の長官ということになって、無効の最高裁長官が人事権を使って、任命した無効の高裁の判決と、堂々巡りになっちゃうんですね。そこで日本の統治の根幹が揺るぐということがあってはいけないというので、私の決断で3分の2の採決という憲法の規定を使って、議決をした。その事実を受けて、11月に違憲状態、つまり、2011年3月に最高裁が判決をしたまま選挙をやっているんだから、結果は違憲状態だけれど、次からは1.998倍だよということをある程度斟酌されたのが、いま説明したことですね。現在瞬時の風速を考えると、人口移動がありますから、2倍を超えているところがたくさんあると思います。ただ、区割り確定審議会法という区割りをつくる法律によると、直近の国勢調査の数字を参考にと書いてあるので、国勢調査は10年間ですからね。その間に、2倍を超えたものについて、法理的には違憲状態と言われないが、政治的にこの2倍を超えている状態を放置しておくことはどうだろうということで、これは別の判断があるので、この2つのことは第三者委員会ができれば、そこで学識経験のある皆さんに考えていただかなければならんでしょうね」
反町キャスター
「一人別枠方式はどう評価されていますか?」
伊吹議員
「現在の憲法の規定で、人は皆平等だと、1票の重みというのは平等でなければいけないと。だから、1人と1票が2人分の役割を果たす、つまり、人口の少ない県の代表を選んでいるところと人口が多いところになりますが、この憲法の規定を置いてある限り、人口の都市集中がどんどん進めば、将来的に代表を出せない都道府県は出てきます。現在既に参議院ではそういうことが起こっているから、県ごとにあわせてという案が出てきているぐらいですから、これは将来、憲法改正の時の抜本的な問題として考えなければいけない。地域代表という面がありますから。しかし、現在の0増5減が一人別枠ということになるのか、そうでないのかというのはものの見方なんですよ。最小の選挙区を1として、1.99にならないように、0増5減と言っても5つだけ減らしたわけではなくて、あと何十という選挙区で人口を少しバランスさせるため、五十ぐらいの選挙区をさわっているわけですね。最小の選挙区を1とするということが別枠方式というものなのか、それとも従来のように1人ずつ割り振って、人口の…これはものの見方ですね」
河野教授
「一人別枠方式については、2013年11月の最高裁の中でこれが1票の格差の原因であると書いてあるのですが、この判決が間違いです。なぜかと言うと、仮に300議席ではなくて、600議席あれば、一人別枠方式ではなかろうが解消されるわけで、一人別枠方式がダメだと司法府が判断していいのか。これはある意味で立法府の裁量を侵しているわけで、これを言うべきではなかったと思います。全然考えなくてよろしいのではないか。1票の格差が是正されなくてはいけないというのはもちろんです。ただ、その原因のつけ方は間違っているし、それを国会に対していうことは間違っていると思います」
伊吹議員
「先生がおっしゃったような意見は、国会議員の中には強くて、選挙のあり方は国会で決めると憲法に書かれているわけだから、その決め方について、司法がいろいろ判断するということについてはどうだろうというのはかなりあります」
河野教授
「言うべきではないだけではなくて、間違っているんです、司法の判断が」

定数削減
島田キャスター
「定数削減についてはどう考えていますか?」
河野教授
「こういう削減が選挙制度改革の主なテーマなのか。国民からするとこういう削減をするとどういう政治が生まれてくるのかが全く見えないわけですね。身を削ることになるのかもしれないけれど、約束したから(やらないと)いけないのかもしれませんが」
反町キャスター
「各党が預ける第三者委員会なら、各党が言っている公約を1回チャラにしなさいという話もできるのではないですか?」
伊吹議員
「憲法の前文から言うと、主権を預かるために我々はこういうことをやりますという約束をしているわけでしょう。語弊があるけれど、宣伝文句ですよね。それが虚偽宣伝であったということを常に許していったら、選挙の公約とはいったい何だということになるから。今回の選挙については言っちゃったわけだからしょうがないわけだけれど、第三者委員会の皆さんから、反町さんの言ったような意見が出るかどうか、それはやってみなければわかりませんね。それは現在の政治家なら減らしてもらわなければいけないという意見が出るかもわからないし、そんなことをする必要がないのではないかと。ただ、次の選挙は選挙制度のことにかかわらず、これを言えば大衆的人気がとれるのではないかということを言って票を獲るという姿勢だけはもうそろそろ卒業した方がいいのではないかと思います」

現行選挙制度の問題点
島田キャスター
「選挙ごとに振れがあるのですが、選挙区比例代表並立制の影響ですか?」
伊吹議員
「比例代表並立制と言うよりも、小選挙区制ですね。小選挙区制は1つの選挙区から1人しか当選しませんので、たとえば、近畿地方の方はよくおわかりになるのですが、あの選挙の時は維新の会がかなり力を持っていましたね。民主党、共産党、自民党がいるということになると、票が割れるわけですね。割れて一番の票を獲った候補者が当選をしますから、極端なことを言うと3割ぐらいでもトップになり、当選します。だから、その時のいわゆるマスコミふうに言えば、風によって選挙結果が大きく違ってくるという要素がある。しかし、それを目指してフジテレビもそういうことをおっしゃったと思うのですが、政権交代が可能な選挙制度をつくるんだと。自民党長期安定政権は腐敗をするというのでこの制度を入れたわけですね。ところが、非常に不安定になる。そのことからもわかるように完全無欠な選挙制度というのはないんですよ。長所もあれば、短所もある。だから、その長所、短所を理解して有権者が現在ある選挙制度をお使いになるのか、それともあまりスイングが激しくないような制度にするのであれば、そういう制度もつくれるんですよね。たとえば、完全比例制にすれば、1票の格差はなくなりますよね。ところが、現在のように価値観が多様化してシングルイシューといって、1つのことだけを掲げ、それが大切だという政党も出てくるわけですよ。そうすると、多党化という現象が進んで政権を担う過半数のグループ、つまり、与党をつくれないと。これはヨーロッパで現実にいろいろなところで起こって、経済が不安定になったりしているわけです。だから、どの制度がいいのかというのは、そう簡単には言えないんです。だから、いったん制度を決めればその制度をいかにうまく使うか。使うために、有権者に何を考えていただくか。政党の方も、有権者がうまく投票しやすいように、いろいろと苦いことも、もう少し率直に話する。いろいろなことが絡んで選挙結果が出てくるので、制度だけで良いとか、悪いとか言うのはちょっとどうかなと僕は思いますけどね」

衆院選挙制度改革 どうあるべきか
河野教授
「私は選挙制度改革について衆議院だけを変えても意味がないとずっと言っています。なぜかと言うと、衆議院だけでも分裂状態で、小選挙区制と比例代表という全く異なる制度を接ぎ足したようなことになっているわけですけれども、参議院もまた2つ異なる制度を追求していて、なおかつ地方議会まで見てみると、これは中選挙区、大選挙区でやっている。首長選挙は大統領制の小選挙区制でやっている。こういうふうに異なる選挙制度がいくつも重なり合っているのが日本の特徴であって、そういう制度を採用しているから、いつまでたっても政党が有権者に根を張っていくようなものになっていかないと思うんですね。だから、政党の中でも鞍替えがよく行われる。有権者の方も選挙ごとに違う政党に投票するようなことが起こる。それが1つの問題。ですから、今日のテーマは衆議院制度のあり方ですが、実は選挙制度改革を果たして衆議院だけでやって抜本改革になるのか。もしかすると、先ほど憲法のことを何度かおっしゃられましたけれども、たとえば、首長選挙は現在、直接選挙で決めなければならないとなっているわけですね。そうすると、小選挙区を、投票を全部統一せざるを得ないんじゃないかと言うのが、もし憲法を変えないとしたらですよ、昔は直接選挙でも地方議会の多数派の党首が知事になっても、それは合憲だという判断があったらしいのですが、現在はマイノリティな意見で、それは採用されないので、現在の憲法を守るとすると、比例代表ならば比例代表、小選挙区なら小選挙区で統一しようとすると、おそらく小選挙区にいかざるを得ないと考えられます。どちらにしても、何が言いたいかと言うと、どこか1つだけいじったとしても投票する人が同じ人なら、いろいろな選挙に投票しているわけですから、ある時に二大政党制になるように投票したって、大選挙区が地方で残っていれば全く違った投票行動になる。いつまでたっても政党が育っていかないというのが私の意見です」
伊吹議員
「河野先生がおっしゃっていることは、ある意味では正論だけれども、現在のことを担保するには、政党というものにはいかなる規律の下でも動かなければならないかという法律というか、政党法というものが必要ですよ。現在あるのは、政党助成法はある。ところが、政党というのはいかにあるべきか。たとえば、比例で党名だけ書いてもらって当選をした人は、その選挙の時に、他の比例の政党には移れないんです。しかし、新しい政党をつくるということについては自由。たとえば、結いの党というものができました。これは構わないんですよ、みんなの党から分かれても。だから、政党というものは長い命を持っているものであって、政治家というものはその中で常に新陳代謝を繰り返すものであるという政党を確実につくるためには、良く言えば言葉は適当かどうかわからないけども、政党というのはいかにあるべきか、どのようなお行儀を守るべきかという法律が必要だけれども、これについては結局、法律をつくった限りは所管をつくらないといけないわけです。そうすると、これが大統領制でやっていたらもっと困ったことになるんだけど、議員内閣制でやっていますから、内閣、あるいは大統領が所管のトップなわけですね。どこかの政党の代表ですよ。こういう言葉はあまり好きではないけれども、公権力による政治介入を呼ぶと言って、政党法をつくることには反対意見がかなりあってまとまらないんですね。だから、何事も副作用というのは必ずあるんです。薬を飲めば病気が治るようにみえるのだけれども、別の副作用が出てくる。効果を最大限に引き出して副作用を最小限に抑える。これを言っちゃったら議論がそこで終わるんだけれど、1人1人の有権者から選ばれた政治家の矜持と良識しかないんです。私は時々苦いことを言って煙たいと思っている政治家もいると思うんだけれど、そこのところをきちんとしてもらわないとこの問題はいくら言っても解決しません」

三権分立のあり方
島田キャスター
「2つの訴訟の判決が出ました。厚木基地騒音訴訟、大飯原発再稼動差し止め訴訟です。かなり踏み込んだ判決だったと思うのですが、立法府の長としてどう受け止めていますか?」
伊吹議員
「立法府の長として答えにくい、三権分立の立場がありますから。答えにくいことですが、一般論として言いますと、たとえば、福井地裁の判決については従来、このような判決が地裁、このような高裁レベルでかなりあるんだけれども、最高裁の判決は、また違う判決がほとんどと言うか、全てと言ってもいいと思います。判決というのは何だという根本論ですが、たとえば、封建時代、日本でも、諸外国でも、おそらく領主が自分の判断でお前は打ち首だとか、お前は許してやるとかを決めていたと思うんです。そういう封建的な領主が決めていても、あるいは王が決めても、暫くすると万人に適用される基準、つまり、法律をつくろうと(なる)。だから、民主主義ではなくて絶対君主制であっても万人に適用される法律をつくろうと。その法律と現実に起こった事象を突き合わせて誰かが判断を下す。民主主義国家では三権分立だから、裁判官が下す。だから、刑事事件については刑法、経済活動については商法、我々の日常生活では民法。判決というのが正しいかどうかと言うのは、裁判官というのは、私は本当に汲々と毎日を送り、自分が間違ったことを決めないかなということを考えておられると期待をするし、そうでなければなりませんね。これは判決によって、その人の生命が失われたり、国家の大きな方向が違ったり、会社が倒産したりするわけですから。袴田さんは、死刑の判決を最高裁まで受けたけれども、再審が出てくる、一審はそういう判決だけれども、最高裁にいけば違う、これは裁判官によって違う。だけど、違うものを受け入れることによって、社会秩序を守っていくという暗黙の了解で近代国家は成り立っているわけですね。これが法の支配と言われるものです。民主主義の多数決もよく似ているんです。多数決が正しいという保障なんて何もありません。一番失敗した例は、誰もが投票できるワイマール憲法の下で投票させたら、ナチスドイツが権力を握ってしまったという例があるわけですから、民主主義のもとでの多数決の行使、国会議員が賛成、反対をする。何よりもその国会議員に1票を投じて主権者が多数決を行使して、代表をおくる。この時に怖いなという気持ちを持っていないと三権分立というのは成り立たないんですよ」

伊吹文明 衆議院議長の提言:『主権を預かる 怖さ 謙虚さ』
伊吹議員
「国民から多数決で主権を預かって国のことを最後に決める多数決を行使するわけですから、主権を預かるということは非常に怖いことで、謙虚さを持ってやらないと後世、歴史の批判を受ける。皆お互いに主権者のために主権を預かっている。政党のために主権を預かっているわけではないという気持ちで選挙制度に取り組んでもらいたいと。各党、各派への思いを込めて書きました」

河野勝 早稲田大学政治経済学術院教授の提言:『政党を育てる制度』
河野教授
「私がアメリカに行った時に、最初に寮生活をしまして、最初は他愛のない話で始まるんですけれども、暫く経ってくると、政治の話になってアメリカ人同士が会話でAre You Republican?とAre You Democratica?というのが日常の会話で入ってくるわけですね。自分は共和党派である、あるいは民主党派であるという感覚で政党が捉えられていて、日本では捉えられていないなと思うわけですね。自分のお爺さんも共和党だった、お父さんも共和党、私も共和党。共和党であることにアイデンティティを持つ。そういう草の根までおりた政党制というのを育てるような選挙制度をぜひつくっていただきたいというのが私の願いです」