プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2014年5月14日(水)
農協のあるべき姿とは JA改革案を徹底検証

ゲスト

山田俊男
自由民主党参議院議員
山下一仁
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

規制改革会議の農協改革案 中央会制度の廃止
島田キャスター
「農協の組合員数は約998万人、職員は約23万人です。ピラミッド型の組織になっています。規制改革会議の主な農協改革案ですが、JA全中を中心とした中央会制度の廃止(全中はシンクタンク化)、JA全農の株式会社化、地域農協の金融事業を農林中央金庫などに移管があります。この改革案が実現しますと、賦課金78億円がなくなると」
山田議員
「78億円が莫大かどうかということがあるんですね。だいたい地域農協が下にあって、JA全中が上にあって、いかにもこれを取り仕切っていて、賦課金を集めて仕事をしていますよという印象になるのですが、JA全中と地域農協は入れ替えてもいいくらいの話でありまして、主人公はあくまで組合員であって、それから、地域の農協が主人公なんです。それに対してJA全中はいろいろなサービスを提供する。たとえば、経営管理で問題が生じたら残業をするとか、場合によって隣の農協との間でトラブルがあったらその調整に入るとか、監査が必要ですから監査事業は別の組織をつくって仕事をしていまして、私はそんなに78億円で、700農業ありますから1農業1000万円になりますから、1000万円は大きいと言ったら大きいかもしれませんが、やっているサービスから見ますとそれほど大きいものではないと思うんですよ」
反町キャスター
「たとえば、パーティー券の購入とか、全中の大きな仕事だと思いますが、この実態はどのよう見ていますか?」
山田議員
「これは、農選運動という別の組織をつくって、そこから会費を集めてやっていますから、この78億円とは全く別のものなんです。組織も別ですから」
反町キャスター
「全中は政治性を帯びていないと」
山田議員
「政策要求はたくさんありますからね。組合の要望はいっぱいありますから、それらの要望をきちっと伝えるという役割は、東京にいる分だけ、それから全国の組織である分だけ当然の役割ですね。それはやっています」
島田キャスター
「賦課金を集められないようにすると、困りますか?」
山田議員
「自主的に集めるということはもちろん、できると思いますが、現在も嫌々で払いたくないけれど、払っているということはほとんどないと思います」
島田キャスター
「これがなくなってしまうと、どうなるのですか?」
山田議員
「本当に弱くなってしまいますね。どうするかをあらためて考えなければいけません」
あるべき農協の姿とは JA全中の問題点
反町キャスター
「全中の事実上の解体ですよ、目的は何なのですか?」
山下氏
「農業の利益ではなくて、農協という組織の利益を代弁するのではないかということで、別の組織をつくろうとしたわけですね。これはできなくなった。現在の全中の方はまさに農協組織の意見を代弁する機関ですね。だから、たとえば、関税がなくなったとしても、直接支払いをすれば農家の所得は保障されるわけなんです。価格が下がるとこれによって販売手数料が決まる農協が困るわけです。従って、農協が全中を中心に関税、TPPに反対するという行動をしやすいんですね」
反町キャスター
「全中から政治力を奪う狙いというのは」
山下氏
「要するに、これまで農業基本法というのを1961年につくって、農業の構造改革をやったわけですね。農業の構造改革ということは、農地面積が一定で規模を拡大しようとしたわけですね。そうすると、農家の戸数を減らさないといけない。それは農協の組織からすると必ずしも好ましくないことですね。農家戸数を維持すれば政治力も維持できるだろうといろいろな要素があって、これに反対したわけです。そのように農業構造の改革をやろうとすると必ず農協が反対する。しかも、いろんな価格を維持しようとすると消費者にとっても必ずしも良くないことになると。そのようなことを排除しようと、政治力を排除しようとしたことが、今回の意図ではないかと」
JA全農の株式会社化
島田キャスター
「JA全農の株式会社化については」
山下氏
「2つの意味があると思います。1つは農協については協同組合だという理由から独占禁止法を適用除外されているんです。協同組合というのは、小さな事業者が集まって組織をつくれば、それは大きな企業に対して対抗するためにつくるので、それについては皆一緒になって、価格を決めて、モノを買ったり、あるいは売ったりしても、独占禁止法上カルテルではないとか、そういうようなことで適用除外を認められてきたわけですね。実は現在は末端の協同組合についてはいいんですけれども、全農全体からいうと、肥料については8割のシェアを持っているわけですね。肥料が全体のマーケットの中で販売は8割です。それから、農薬、農業機械についても6割のシェアを持っているわけです。そういうような本当に大きな独占事業体に対して独占禁止法が適用されないというのはやはりおかしいのではないかと」
農業関連事業と金融事業
島田キャスター
「農協の部門別損益では農業関連事業は赤字です。単体でやっていくのは難しいのでは」
山下氏
「ただ、なぜこの農業関連事業が赤字になってくるかというと、農協の組合員というのはほとんどが米中心の兼業農家です。極めて零細な規模でやっているわけですね。従って、肥料とか、農薬を届けるということになるとすごくコストがかかるということになります。規模の大きい農家になると横にトラックを横づけにして、そこにおろせばすぐに出せるから、物流コストが削減できるのですが、この場合にはいろいろな小さな農家がいますから。ある笑い話のようなものなのですが、肥料を一袋頼んだら、トラックに一袋だけ積んで、農協職員が2人乗ってやってきたというように、コストがかかってしまうんですね。だけど、農協にとっては実は兼業農家がたくさんいるということは実は農業所得でもほとんどないんですね。ほとんどがサラリーマンとしての兼業所得だということです。この兼業所得をJAバンクに預けてくれるわけです。それが農林中金に行って、農林中金が海外で運用して、すごく利益が生じる。それがここの信用事業の利益です」
反町キャスター
「事業のビジネスモデルを改善することによって、農業事業単体を黒字化することはできるのですか?」
山下氏
「たとえば、零細な兼業農家、この人達に退出してもらって、規模の大きい主要農家中心の効率的な農業の姿を描ければ、それを農協が組織するということになればここの赤字というのはなくなると思います」
山田議員
「私は、(山下さんを)若い時から良く知っているんですけどね。これだけよく悪口ばかり言えるなというくらいです。農協というのは組織大きいですし、事業の規模も大きいわけですから、いろいろなところで、地方も、県の段階でも、全国でもいろいろなところでご不満があるのは仕方ないのですが、今おっしゃっているのは不満のところだけをよくこんなに集めて批判されるなというのが率直なところですね。私は当たってないとは全部言いませんが、ほとんどは当たっていないと言わざるを得ないです。農業関連事業、その他のところはもっと規模の大きい農業形態がつくれて、そこにドンと運べばそういう赤字は出なくて済みますよ。だけど、小規模な農家、それも中山間地に運ばなくてはいけない。トラックで一袋だけを2人で運んだなんていうのは、悪口だと思いますけれども、そういう実態を取り上げて言うのは間違っているわけで、我が国の農業全体の形そのものがどうしても小規模な経営体の中にあるというのは事実だから、そこにコストがかかっているのは間違いないわけです。だからと言って、そういう零細な形をそのまま維持しようとは毛頭思っていなくて、どうしたら規模拡大ができるか、重労働から解放できるようにしていけるか。体質という言い方が適切かどうかということはありますけれど、そういう規模を拡大して、より効率的な経営をしたらどうなるだろうか、できないだろうかということについては、これほど現在末端で努力している組織はJAしかないです。成果が上がらない理由をよく考えなければいけないですけどね」
島田キャスター
「地域農協の金融事業を農林中央金庫などに移管とあるのですが」
山下氏
「これは昔から信用事業と共済事業が実は農協のドル箱なわけですね。それは先ほども言ったように、農協事業の赤字を補填している。従って、兼業農家主体の農協運営でも別に構わないと。むしろ、そちらの方が信用事業も利益が出ていいんだと。兼業所得の方はJAバンクに預けてくれるから。そういうようなことに対して昔から批判があって、実は昭和30年に河野一郎という農林大臣が、この信用事業を分離しようというようなことも言ってきたわけです。ところが、当時農協の力がまだ強かったわけですから潰さされた。それから、小泉内閣の規制改革の時にそういう議論も出されて、やろうとしたのですが、実はやろうとしたら自民党の農林族の方々が勝手に押しかけて、これを潰してしまったというようなことがあって、なかなかうまくいかなかったわけですね。これを今回その信用事業の分離ということではないのですが、若干それに近いようなことをやろうとしたと。ただ、実際は現在どういうことが起こっているかというと、まず地域農協にお金が集まるわけですね。これを都道府県段階、農林中金のところに上げていくわけですね。農林中金は実はその7割くらいを海外で、ウォールストリートで運用して、そこで得た利益を、1%程度金利を上乗せすることによって農協の下部の組織に戻しているわけですね。そういうことで損失補填のようなことをやっているわけなんですけれど、今回の代理店業務にするということで、地域農協が農林中金の代理店とか、支部になるわけなのですが、代理手数料を払うということで、これまでの1%の金利上乗せ、これが4000億円から5000億円のお金を農林中金が下におろしているわけなんですけれど、このシステムは実はそれほど変わらないのではないかなと。これについては、山田さんに受けられるのではないかなと思っているのですが」
山田議員
「いや、まったくもうダメですね。やはり地域の農協は協同組合という組織で、組合員共同で業務に当たるというのをベースにしているわけです。一方、販売事業生産をやりながら、販売は農協にお世話になっていますと。さらに貯金はその農協の販売が振り込まれて、そこへ来ていますよと。それから、貸し付けもそこで相談しながらできますねということです。まさに生活の全てを農協と一緒になって考えながら進むということで、そういう原則で地域の農協は運営されてきているんです」
肥大化した金融事業
島田キャスター
「農協の貯金は90兆円もあるんですね」
山下氏
「これで見ると、農業生産額の10倍も預金額があるわけですね」
山田議員
「当たり前の話で、農業生産をやっておられる人の数はずっと減ってきているわけでしょう。規模も小さかったりするわけです。日本の農業の特色として圧倒的に兼業農家になっているわけではないですか。農地をもって、米をつくりながら、野菜をつくりながら、農業生産額は小さいけれど、兼業所得があるわけですね。そうは言いながらも、農業とはお付きあいがあるわけね。そこで貯金は増えているし、農業生産額よりも貯金の方が上になっているわけです」
島田キャスター
「ゆうちょ銀行、三菱UFJファイナンシャルグループに次いで、3位の規模ですが」
山田議員
「全国の地域で700も農協がありまして、全国の隅々にまであるわけですから、だから、そこも儲けるためだけに貯金を預けているみたいな話だけではなくて、お金の出し入れは当然いろいろなところに必要になりますから、ATMの設置や支店の設置も含めてきめ細かくユニバーサルサービスというのですか、いろいろなところで努力しているわけですよ」
反町キャスター
「農協に金融機能を設けた最大の理由はウォール街で投資するためではないですよ。独占的な権益を持っている。それがフェアな競争ですか?」
山田議員
「長い歴史と、現在の地域の生活の中で貯金を集めるのにも努力しています。それから、農協がいろんなところで努力しているから、皆が信頼し、他にも銀行があるんだから、それでも農協をちゃんと利用してくれているという事実があるんだから。そこはちゃんと見といてもらわないといかんと思います」
検証、JA自己改革案 新規就農支援策
島田キャスター
「全国基金の創設が農協改革につながると」
山田議員
「そうですね。一番大事なことは、農業者が高齢化していますので、跡継ぎをしっかりつくらないといけないんですね。新規就農者をきちんと確保するのは当然のことです。地域で農業高校に通っている子供達がいるわけです。そうするとその子供達の就職先をどうするかといった時に、農業に就かないか、条件は整備するよと。最初は働くのがなかなか難しければ、農協の職員として採用して、一定の農業経営を訓練したあとで就く。そのための基金をしっかりつくらないといけないと思います」
島田キャスター
「零細な農家の方々を生き延びさせるということにつながらないのか」
山田議員
「情けなくなるほど、地域で農業に就職して働くという若い人がいなくなってしまった。現在30代、40代で、地域で農業をやるぞと言うと、田んぼがいっぱい集まってくる。高齢化でできなくなって、無理してやっていたけど、これ以上機械に投資できないから、やってくれるならやってくれと。農協もまとめてくれるのなら農地もまとめてくれと。ぜひやりたいという人がいっぱいいるわけです。JAはそういうところに、一生懸命意を尽くしてきたつもりなんだけれれども、足りなかったということだと思います。もっとそれをやらなければいけないと思う。今度の改革の一番の柱がこの担い手づくりだと思います。だから、そう言う意味で、全国基金を平成27年度からつくろうではないかと言っているわけです」
反町キャスター
「若い人が来ないのは所得の問題ですよね?
所得を上げるためには大規模化しかないですよね」
山田議員
「農地を利用してやるとすれば、大規模化」
山下氏
「若干、我々の感じからすると今さらという感じでもないんですね。と言うのは、これまで担い手が、農業を本当に真剣にやりたいという人が農協を通じて売ると平均的な価格しかもらえないわけですね。だから、いいものをつくって売ろうとすると、どうしても農協を通じないで売ろうとするんです。そうすると、農協に手数料が落ちない。農協を通じて販売しませんから手数料がない。肥料、農薬を少なく節約してやろうとすると農協から肥料を買わないので手数料がまた落ちない。と言うことで、これまでは独禁法の適応除外だったんですけれど、不公正な取引方法だということで農協が何回も警告を受けたりがあったわけです。そういうこともあったのですが、山田さんがおっしゃるように、これからは農協も規模を拡大して、農地を集積して担い手を育成していただけるということであれば、それはいいことなので、農協も立派な農家に対して肥料、農薬を販売するということであれば効率的です。だから、赤字も減少していくのではないかと思います」
検証、JA自己改革案 輸出額10倍超戦略
島田彩夏
「2020年まであと6年ですが、10倍超輸出を増やすということが可能ですか?」
山田議員
「可能ですね。何と現在、生鮮品野菜や肉を中心にしながらJAグループ全農が売っているのは34億円しかない。全国で、日本中で輸出している金額が5000億円なんだから、その中のごくわずかしかない。ただ、生鮮品というふうに考えてみると、全国で230億円ぐらいしかない。そう考えてみると、その中の35億円というのは大きいわけ。ただ、この程度では全然ダメ。もっといいモノを売っていく努力が必要です」
反町キャスター
「10倍が10分の1になる可能性はありますよね。経団連も慈善事業ではないのだから」
山田議員
「それはリスクをとった方がいいのではないですか」
山下氏
「これまで最初の安倍内閣の時も、輸出倍増と。今回も輸出倍増で全然成功していないんですね。ほとんど横ばいです。なぜかと言うと外国に輸出しようとすると、日本の農産物は品質がいいのですが、価格が高いんですね。だから、価格を下げていかないと輸出ができないんです。いくらマーケティングをやったからといって、コンスタントには売れないわけです。価格競争力をつけないとダメだと。僕が日本で一番売れるものはコメだと思うんですよね。コメについては減反政策で米価を高く維持して、そのままでは輸出は増えないわけですね。価格を下げる。そこを農協が踏み越えることができるのか。これはこれまでの農協のやり方と180度の転換になるわけです。そこまで踏み込まないと価格が下がる時にアメリカもEUも直接支払いでやっているわけですから、それは政府に減反の補助金ではなくて、そういう形の直接支払いをやってくれという提言を農協としてやるべきだと思います」
あるべき農協の姿とは 改革の先にあるもの
山田議員
「農業共同組合という名前をつけていますから、そういう面からすると農業者が集まった組織だと思いますが、農協よりも、日本全国の地域の方が高度経済成長の中で圧倒的に都市化するというか、変わってきたわけですね。そこに共同組合の組織があったわけだから、当然農業以外の分野の問題に取り組むようになった。それから、当然農家も高齢化していますから、農家の高齢化に対応して高齢者介護の仕事もちゃんとやるようになってきているんですね。だから、事業の内容を地域の変化にあわせて変えてきているというところがあるわけ、JAは。だから、それはそれで存在意義が皆さんに認められて存在しているわけだから、私はそういう変化していくのは、それはそれでいいと思います」
山下氏
「現在の農協という組織は、地域協同組合と、本当の農業だけをやっていこうとする本当の農業共同組合、本来の姿。そういう主要農家だけの農家らしい農家の協同組合と地域の人が皆参加できる、これは現在でも、組合というのはそういうことなんですよ。それは金融事業とか、共済事業、保険事業、生活物資の供給。これは中間山地の間で相当困っていますから、現在市町村合併して、市町村のサービスを受けられないような地域が地方にあるわけです。そういうところには、地域協同組合が出て行って、介護をやるとか、バスの提供をするとかをやる。地域協同組合と農業共同組合の2本立てで、将来はやっていかないと日本の地域を守れないと私は思います」
山田俊男 自由民主党参議院議員の提言:『美しい農村と集落営農』
山田議員
「アジアモンスーンの中における零細な、小規模、かつ雨の多い国土の狭い中での農業はどうしても限界があるんです。その中で日本の農協は発展してきたと思います。担い手が本当に高齢化しちゃって、担い手がいない。さらにまた一定の競争力をつけて食べて行ける経営をつくらないといけないということになってくると、それは集落で規模を拡大してそこへ定着できる。それから、野菜もつくれる、他の作物もつくれるという複合的な取り組みを日本的にやっていくというのには、集落営農しかないと思う。美しい農村だけれども、これが自慢で、これがあることによって地域の農業者や住民の皆さんも自信を持って加わる。そこの役割を自由にやってほしい。美しい農村づくりと集落営農づくり。これをJAがスマートにやって、必要な施設を整備しながら、集落地域の中にちゃんと存在していますというのを描きたいと思っています」