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2014年5月9日(金)
国家防衛の理想と現実 集団的自衛権で何を守る

ゲスト

北岡伸一
安保法制懇座長代理
西部邁
評論家

安保法制懇報告書 来週提出 北岡座長代理に聞く理念
佐々木キャスター
「安全保障に関する法制の不備について、報告書を提出することになっています。なぜこのタイミングでとりまとめることになったのですか?」
北岡氏
「これはもともと2007年からやっているわけです。私は、ずっと前から安全保障制度に不備がいっぱいあると思っていますし、そう思っている人は安全保障の専門家には非常に多いんですね。ただ、なかなか安全保障制度というのは政治家も触れたがらない。そのような中、安倍さんが2007年に触れたけれど挫折したと。そういう中で2007年から今回再開するまで6年間、この間に日本の安全保障環境はまた悪くなっているわけです。2007年時はまだ尖閣への中国の公船の侵入もなかったですし、北朝鮮のミサイル開発も進んでいます。だから、なぜこれまでやらなかったのだというのが私の感じです」
佐々木キャスター
「集団的自衛権の行使容認については」
北岡氏
「我々のやろうとしていることは、いろいろな安全保障制度の不備を点検して、これはこうした方がいいのではないかと提言するところにあるんです。そうやっていくと、集団的自衛権の行使はできませんという伝統的な解釈にぶつかるんです。だから、そこにアプローチしているわけで集団的自衛権の行使を可能にしようということは我々の主たる目的ではないんですよ。結局そこにたどりつくからしょうがないからそれを議論しているということです」
集団的自衛権行使容認はなぜ必要か
反町キャスター
「なぜ集団的自衛権を整えておかなければいけないのか?」
北岡氏
「集団的自衛権の行使の禁止というのは、実はそれが非常に膨張していまして、あれもダメ、これもダメということになっているんです。もともとの起源は、集団的自衛権というのは全ての国が自分の国を一国で守れるわけではないと。自分の国を個別的自衛権だけで守れるのは大国だけです。現在の世界で言えば、アメリカ、ロシア、中国くらいではないですか。多くの国はどこか他国と手を組んで自分を守るわけです。だから、そう考えると国連憲章の中の51条の中の『武力行使はダメ』というのが世界の大前提です。しかし、自衛は別ですと言っている。その自衛の中には個別的自衛権、集団的自衛権の両方とも入っている。世界中そうなっているんです。日米安保条約にも、サンフランシスコ講和条約にも、日本は自衛権を持つと書いてあるんですよ。しかし、日本は行使できませんという解釈がきたので、そもそもちょっと変ではないかというのはあるわけですね」
憲法解釈変更かそれとも 行使容認に向けた方向性は
反町キャスター
「集団的自衛権の行使容認への手続きには①憲法改正②解釈変更③政策変更の3つあると思いますが、北岡さんの考えではどの道ですか?」
北岡氏
「3番目から説明しますと、現在のお話は政策変更ではなくて法律変更です。法律変更というのはだいたい内閣が法律を出すわけです。それが法制局の審査を通るわけですよ。そうすると伝統的な法制局の『集団的自衛権の行使はできない』という解釈からそういう法律は出てこないですよ」
反町キャスター
「自民党が野党時代に出そうと思っていた法律です。議員立法として出そうとしていたんですよね」
北岡氏
「それは一理ありますね。その場合は、それは必要ありませんけども、ただ、私どもの提案も結局自衛隊の任務がABCとあって、DEFをできるようにしようと法律を変えなくてはいけないんですよ。だから、法律を出しますと、議員立法という手もありますが、日本の法律はほとんど内閣が出しているわけですよ。これだけ政府が関与しないで、議員立法が出てくるというのはどうかなと思って、その意味では3番ではないだろうと。法律を出す時に根っこにある解釈を変えないと法案がつくれないから解釈変更で。なぜ1番(憲法改正)でないかというと、日本が自衛権を持っているということも憲法に書いてないです。そんなことを憲法に書くのですかと、私はおかしいと思います。そんなの常識で主権国家たるもの自衛権をもっているのは当たり前だと、そんなこと書く必要はない。それが1954年の解釈変更ですよ。だから、必要最低限の軍隊をもって、行使してよろしいと1954年に解釈を変えたんですよ。その9条2項の解釈、自衛隊も一切の軍備はダメだというところから1954年の必要最低限の軍備を持っていいというのはジャンプです。正しいジャンプだと思います。正しい解釈変更だけれども、それに比べれば今度の必要最小限の中に集団も入りますよというのは大した変化ではないんです」
憲法改正か解釈変更か
佐々木キャスター
「集団的自衛権容認を憲法解釈の変更でやっていこうというのをどのように考えますか?」
西部氏
「これまでの解釈に問題があったとすると、その場限りの、世界情勢の転変に連れて、こういうふうに変化しとけば当座はしのげるというようなことを繰り返すと、それが蓄積されると全くつじつまのあわない憲法意識というものが、日本人の中にできてしまって、そのうち憲法のことは、中身については全うな理解をしていないという一般国民どころか、学者までもがそういう調子になっているということです。僕は解釈というものがいかに大事かということが言いたいんだけれど、憲法解釈ではなくて問題は日本国家の根本規範が憲法でしょう。だから、憲法の前に自分達日本人及び日本国家の根本規範はどうあるべきかということを歴史的省察なり、現在の世界情勢なりのことを含め、本当はそういう解釈が定着すればいい、一貫性を持てばそれこそが憲法であって、成文憲法で六十何年前に日本の事情もよく知らない連中が、たった6日間で書き散らかしたものを、家紋に掲げていつも手を合わせているよりか、自分達の国家はどうあるべきかという解釈、議論と言ってもいいんだけれど。しっかりとつじつまをあわせていくという意味での相手は解釈学ですけれども、国家についての解釈学が根本だと」
反町キャスター
「本当ならば理念のところから立て直していけば、解釈変更という議論は起きないのではないかというのはいかがですか?」
北岡氏
「私は、やや挑発的に内閣法制局長官経験者に集団的自衛権なしに日本は個別的自衛権のみで守れるのですかと聞いたことあります。そうすると、わかりませんと言うんですよ。私は専門家ではないからわかりませんと言うんです。私は、明らかに一度はそういう経験があります。それはちょっとひどいのではないかと思いますね。いやしくも国家公務員一級を通って入れるような官僚がわかりませんと言うんです。これはある程度法律が続いていて必要最小限はいいというのを1954年に認めた。ところが、1972年になって必要最小限は個別だけで集団はないと。何が必要最小限かというのは憲法学者ないしは法制官僚が決めることですかね。これは安全保障の専門家が議論して決めることなので、それを法律的に線を引くということ自体間違っていると思うんですよ」
反町キャスター
「そこまで言うなら、憲法改正の道というのが王道ではないのか」
北岡氏
「そういった誤った解釈を正せばいいんですよ」
発動手順と歯止め
佐々木キャスター
「集団的自衛権行使の発動の手順は?」
北岡氏
「その通りにはなっていませんけれど、だいたいその通りには書いてあります。集団的自衛権の行使は世界でだいたいこういうものですよと、日本バーションはちょっとそれを抑制的にきつめにやっておいたらどうですかと、説明なので。どういう時にやるかと言うと、ポイントは『放置すれば日本の安全に大きな影響が出るかどうかの判断』、それから『首相が総合的に判断する、これに日本が自衛隊に対してどれくらい出して何をして事態の解決に貢献できるかという判断』この2つがポイントですよ。あとは形式要件で、そこのところでトップリーダーの判断が問われると」
西部氏
「たとえば、密接な関係にある国、アメリカだとしましょう。反米で言うわけではないんですけれど、ここ十数年、イラク問題が典型ですけれどね。数年経ってとんでもない破壊兵器があるというミスジャッジメントのもとでの侵略だと言われてもしかたないことを、これはアメリカだけではありませんけれど、そういう国家というものはやりがちですね。そうだとすれば、密接な関係にある国だからと言って、必ずその国がやることにはくっついていきましょうということにはいかない。放置すれば日本の安全に大きな影響がある。この場合で言うと、アメリカの対イラクの侵略戦争に、こんなものにやすやすとついて行ったら、むしろ長期的に見たら日本の世界にとっての安全のポジションというのは危うくなって、日本の名誉なりメンツも失われて厄介だと判断すれば、対米協力しないとか、ほどほどにするとか、適当にお飾り程度にやっておくという自主的な判断を日本はしないといけないということが重要だというように、僕は北岡さんの発言をとるし、そのことを含めて首相なり首相周辺の人達がそういうことを総合的に判断すると。確かに具体的な事例を挙げたらきりがないけれど、そのことをしっかりと考えなければ、単に手続き的な政治問題で収めちゃいけないんだと思うんですね」
北岡氏
「たとえば、アメリカの言ってきたことがどれくらい本当かということ。密接な関係にある国が攻撃を受けるとあるでしょう。これも戦前の日英同盟でも日本とイギリスは一定地域で助けあうんです。だけど、それは事態の発生がその国が原因で起こった場合は助けに行かなくていいんですよ。それは同盟の原則です。事態を引き起こしたのがその国だったら何も助けに行く必要はないので。小泉内閣の時でもブーツオンザグラウンドというのをやっていないんですよ。最後に国連が復興支援という形で自衛隊を滑り込ませたわけです。その時の総合的な判断にはアメリカに対する支持を言うことは、北朝鮮問題を抱えている日本には大量破壊兵器の疑惑があるイラクに対する行動にノーとは言えない、支持をすると。しかし、どこまで支持するかというのは実は中でいろいろ検討したんだと思うんです。最後小泉さんは決めたんだと思います。最近で言うと、シリア事件があった時にオバマさんは最初日本に支持を要請しました。しかし、安倍さんは国連決議をとってくださいと言ったんです。これはなかなか結構な重い反撃です。だから、そうやすやすとアメリカの言う通りになるものではないと。反対派の人は日本のリーダーは必ずアメリカの言うことは何でも聞くと思っていますよね。そんなことありませんよ。政治家にとって一番大事なのは次の選挙で勝つことですから。泥沼になったら当面政権に復帰できませんよ、そんな政党は」
反町キャスター
「総理の資質が最大の歯止めになると」
北岡氏
「それに対する国民の判断ですよね。ですから、これに日本はずっと頬被りしてきたんですよ。これは実はいろいろ判断しているんです、これまでに。戦後日本の外交史の研究も日本の外交文書が出る度に明らかになってきて、日本の外交は結構したたかにやっているところはあるんです。そう考えますと、結局、国民の声を憚ってどうするか決めると。それはデモクラティック・コントロールだと私は思います」
佐々木キャスター
「個別的自衛権の法整備の不備の是正を提言するとありますが」
北岡氏
「典型的に言えば、たとえば、グレーゾーンと言われますけど、日本の自衛隊の防衛出動というのは最高ですが、これは他国が正面から正々堂々攻めてきた時に対応するようになっているんですよ。これは冷戦時代のソ連の北海道侵攻を念頭に置いたものです。グルジアでも、ウクライナ、クリミアにおいても…正々堂々攻めてくるのはサダム・フセインぐらいのもので、普通侵略かどうかわからないようなことが起こるんですよ。だから、軍事用語で言うと、低烈度紛争とか、そういうものがあって、これに対する備えが法制度上ないんです、日本には。大きな空白があるんです。たとえば、それはどこかにあったかも知れないけれども、尖閣にかかわらずどこか離島に突然武装しているか、していないか、わからない集団がやってきて、これを占拠するというとなかなか厄介なことになるんです」
法整備の不備の是正とは
反町キャスター
「現状ならどう対応するのですか?」
北岡氏
「非武装なら警察ですよね。武装して入れば、自衛隊でしょうね」
反町キャスター
「自衛隊が出動するためには防衛出動などの命令が必要なのではないのですか?」
北岡氏
「必要です。現在他国の武力攻撃というのは組織的、計画的な侵略と定義されているんです。これは組織的、計画的な侵略かわからないではないですか。その場合は対応方法がなかなか難しいんですよ」
西部氏
「具体状況を考えてみましょう。人民解放軍が漁民の姿に変わって、漁民が武装しているのではなくて、武装兵が漁民に化けてきている。それはどうなのか、こうなのかということは、それはその時の現場の軍事情報なり機密情報なりを待たなければ、そんなことまで法律でもって準備して、こういうふうにもってこういうふうに見えたら軍隊を出していいですよなんて、法律はそこまで具体的に決められないし、決めてはいけないし、決められると考えること自体が実は将来とか、危機とかを全部合理的にすぐできるはずという間違ったそういう科学的な判断を法律まで持ち込んではいけないと。あとは優秀な首相と能力のある軍人を何とか手当てして、あとは現場の奴らが適当にやれと。あとで問題が起きたら、もちろん、そこにミステイクがあるわけですよ。でも、重大なミステイクならば、それは事後的に裁くなり、反省するなりしますと。どの国会だってそうしているわけです」
日本は何から何を守る
佐々木キャスター
「集団安全保障への柔軟な参加について見ていきたいと思いますが、これは国連主導のPKO、PKFのことを指すと思われますが、どんな事例を想定されているのですか?」
北岡氏
「PKOというのはご承知の通り、最初は国連憲章になかったものですから、国連軍をつくって、制裁するというのが考え方だったんですけれども、それはほんどできないというので、PKOみたいなのができてきたわけで。だから、集団安全保障と指す時に、PKOを含めていう場合と、含めない場合があるんですよね。だから、我々は一応PKOについてはこれこれ、集団安全保障についてはこれこれという言い方になると思います。それから、集団安全保障といった時に、我々はすぐ戦闘だけを考えますけれど、実際のところ、国連憲章第7章というのは経済制裁から始まるんです。しばしば経済制裁、戦前の日本がそうであったように石油とか、何とかを止められる方が痛いこともあるんですね。日本はそれをやっているんですよ。やっていないのは戦闘に参加することだけなんですね。先ほど言った通り1990年のサダム・フセインのクェート併合に対して何もできなかった。だから、あれに参加するという時に、それは戦闘に参加するのか。あるいは後方支援なのかというのはいろいろなバリエーションがある。でも、現在のところ、現在の法制度では何もできないんですよ。何もできないのはまずいのではないでしょうかという提言になっていると。そこから先どこまでやるかは政府が判断するということですね。私どもは法律のベイシスを議論しているわけで、その先にどういう法律をつくるのかは、それは政府の方で考えてくださいという提案です、基本的に」
反町キャスター
「俗にこういう、たとえば、PKOとか、PKFとか、多国籍軍はちょっと先の話なのですが、そういうところに参加する時に、サマワに行った時にも自衛隊はそうだったのですが、現地における行動規範において、やるべからず集と、これをしなさいというポジティブリスト、ネガティブリストと、俗に言われますけれども、これはやってはいけないというリストを与えられて派遣される部隊と、これはやっていいですと言われて派遣される部隊とでは、現地における拘束の問題は全然違うのですが、そのへんの議論は今回ありましたか?」
北岡氏
「サマワはPKOではないのですが、PKOの場合でもREと言って、ルールオブエンゲージメント、こういう時に何をするかというのがあって、日本の場合非常に限定的ですよね。だから、先ほど言ったように、隣の部隊を助けに行けない等々があって、自分達を、広い意味の自分達を守ることにしか、武器使用をしてはいけないんです。目的達成のために使ってはいけない、周りを助けてはいけないというので、これはちょっと限定が過ぎるんですよね。だから、サマワの時も最初はオランダ、次はオーストラリアに守ってもらっているわけですよね。これは周りのお荷物の話。オーストラリア、オランダあたりは立派な国だけれど、人口で言うと日本の5分の1、6分の1の国に守ってもらっているのはちょっとそれは変ではないかと思うので、そういうところを変えて、国連の普通の平和主義的な文明国がやっている標準にしてもいいのではないのという議論はあるわけです」
判断基準と行使の条件は
佐々木キャスター
「参加する、参加しないの判断基準をどこに置くことになるのですか」
北岡氏
「参加しない、できないのはおかしいということを言っているわけですよ」
反町キャスター
「それは国連の国連軍、PKOとか、PKFとか、そういうものに対してという意味ですか?」
北岡氏
「それは、国連軍は正式には朝鮮戦争の時に1回できただけですよ。そんな何十年もできていないものに、それはあるのかというのは、そんなこといちいち議論するのは、私はあまり生産的だとは思わないですよね」
西部氏
「賛成。これは元日本の国連代表の北岡さんの前で言うのは、さすがの僕も憚るけれども、日本人の常識として、常識が普及していないというので、敢えて言うのだけど、確かに現在の国際秩序をいろんな意味で形成する中心の場所は、あるとしたなら国連しかないから、国連を中心とする言葉による集団安全保障、あるいは国際警察。それは大事なことだと思いますよ。でも、常識としてわきまえておかないといけないのは、国連というものは第二次世界大戦の戦勝国がつくりあげた世界支配の、言ってみれば、秩序の中心にあるものであって、そうであればこそ、当たり前のことですが、常任理事国は第二次世界大戦の戦勝国がやっていると。もう1つは、国連が実際に力がないんだけれども、国連がほとんど機能障害に陥らざるを得ない最大の理由は第二次世界大戦の勝利国の間に、米ソに始まって、今なお常任理事国には拒否権がありますから、ロシア、中国が、それを発動すると。そうすると世界秩序の中心部分でありながら、世界秩序を簡単に形成できないと形づくれない。勝者のことしかできないということを常識としてわきまえておかなければいけない」
北岡氏
「国際法は万能ではありませんよ。それは明らかなので。昔、岩倉使節団が米欧回遊してビスマルクに会ったんです。ビスマルクは、先進国、当時ドイツから見た先進国は英仏です。先進国は都合の良い時は国際法を持ってくる。都合の悪い時は大砲を持ってくると言ったんですよね。だから、法規範だけで全てがジャッジできる。そんな甘いものではありません。それは一定の力の裏づけがなければできない。しかしながら、法規範も意味を持つんですよ」
西部氏
「そりゃそうだ」
北岡氏
「たとえば、東南アジアで、力だけを信奉するんだったら、東南アジアでの中国の膨張は周辺諸国を脅かした時に、日本はうちに関係ないという立場もあり得るわけです。しかし、それはそうではない。国際法を守ろうという連帯をつくることが一定の力があると。同時に力も必要なので、そういう力が自国の安全のために必要だったら、たとえば、昔の日本の、海上保安庁の船など、そういうものを出しましょうということも必要なわけですよ。あるいは世界に力による現況変更はやめましょうということをアピールすることは一定の意味があるわけですよ。だから、それは無力ではない。私は意味があると思っています。それから、多国籍軍云々の方で言いますと、確かに安保理でブロックされているんですよ。ただ、それでも国際世論の中で、ブロックしかねて譲歩する時もあるんですよ。たとえば、スーダンにPKOをつくって、私が行っている時に起こったケースで、私も参加したケースなのですが、中国はスーダン政府を擁護していたんです。だから、ダルフールというところで紛争があって国際社会が非難した時に中国はなかなかうんと言わなかったのですが、最後は折れてダルフールにPKOを展開することを受けたんですよね。それから、PKOで何とかなる、PKOだけで何とかなるということはありませんし、平和、安定というのはいろんな努力の組み合わせでようやくできるもので、たとえば、ルワンダという国で、かつて人口の1割、100万人の人が虐殺されたわけですよ。あれなんかももう少し早く展開できたら、もっと防げたかもしれないですよね。そういうことで万能ではありませんが、これがたまたまいろんな条件がうまくいって、いろんな国がここにPKOを出しますというようなことになった時に、日本だけできませんというのはおかしい。日本もやるべきだと」
米中新型大国関係 日本の安全保障政策の方向性は
佐々木キャスター
「3月24日に、オランダ、ハーグでの米中首脳会談で、習近平主席がオバマ大統領に、書簡によって中国との『新しい形の大国関係』に取り組むと、米中関係強化するということをアピールしたわけですよね。裏を返せば、世界のパワーバランスの中で、中国がどんどん力をつけて膨張している。アメリカが縮小しているということがあると思うのですが、そのような中で長期的な視点に立った時に、日本の安全保障の基軸というのはどこにあるのがいいと思いますか?」
西部氏
「日米同盟、北岡さんがどういうお立場かは詳しくは存じ上げないんだけれども、日米同盟などという戯言はそろそろ止めてもらいたいと。同盟というのは、英語で言えば、アライアンスですからね。ある意味では一線に並ぶということですよ。他の言葉で言えば、イコールパートナーシップという、もちろん、この前のイコールというのは、別に軍事力の単に物量の問題ではなく、それぞれの国が自分にかかわることは、いわば自主的に判断するという、準備と力量、そういうものを持った国同士がある種のアライアンスを結べるのでしょうけれども、戦後も68年経っているんですよ。わかりやすく時間節約のために言うけれど、日本がどれだけアメリカに依存してきたか。依存ということは独立していないということですよ。もっと言うと従属しているということ。そういうことを、アメリカは日本を従属させてもあまり得をしないなら、そろそろ見捨てますよ。そうと言って、そういうことを露骨に先に言っても何も得しないから、この前の尖閣なり、共同宣言のように、日本の方がすり寄ってくるから、それなりに頭を撫でてやるが、実は俺達はお前達のことなんかもはや本気で考えていないと。俺達が本気で取り組もうとしている相手は中国ですよとね。アメリカが堂々とメッセージを発しているのに、日本人がそれを感じている人もいるけれども、感じると怖いから、そういうことをダチョウか何だかは知りませんけど、怖くなったら砂地に頭を突っ込んで恐怖を見ないようにする。それをやっている。非文学的表現で恐縮だけれど、本当ドン詰まりまできているということを、そろそろ反町さんか、佐々木さんがこういうところで大声で言ってくれなくてはしょうがないではないですか」
佐々木キャスター
「新しい形として何を基軸にするのがいいと思いますか?」
西部氏
「現在からでも遅くはない。それに5年かかるか、50年かかるかは、そんなことは方向性の問題ですけどね。基本的に言うと、自主防衛イコール単独防衛とは限らない。最悪の場合は、単独ででもギリギリまでがんばるけれども、単独でやるか、ある種の集団で、あるいは結ぶかどうかは自分達の力量で自主的に準備するという。それを半世紀以上、怠ってきたのは我が列島民族だということ。そういうことだということを、政治家は言えないと思うんだけれど、せめてインテリの世界でそれを堂々と、大前提にしながら、さて、アメリカとどういう協力関係を結ぶか。中国をどうチェックするか、あるいは中国の言うこともしゃあないと当分聞いておく。僕は何も反中ではないですからね。そういうふうな自主的判断をするための前提条件を、日本国は68年で壊しちゃった、磨滅させちゃったんですよ。だから、どうするかは北岡さんに聞くなり、防衛大臣に聞いてくださいよ。僕に聞いたってしょうがないよ」
北岡氏
「新型の大国関係、言っている中身はオバマさんと習近平さんでは、中身は違います。ですから、中国は盛んに、我々はアメリカと特別な関係であって、世界の2つの超大国だと言いたいのだけれど、オバマさんはそれに対して留保をつけている。そんなことを言ったら、これまたデモクラティック・コントロールで中国とそんなに仲良くできるのかと言って国民の反発もある。そんなことは額面通り受けることはない。ただし、重要なのは、中国は近隣諸国以外には良い方の顔をするんですよ、世界中に。だから、アメリカとは安定させ、ロシアとは安定させると。しかし、近隣において我々は一番だという態度で臨んでいるわけで、それをアメリカやヨーロッパに知らせ、こういう国が世界にあっていいのですかということを我々は言う必要があると。アメリカにとって、アメリカは確かにシリアでも腰が引けていたという人がいるし、ウクライナでもそうですよ。だけど、アメリカはアジアで将来、利益を上げていこうと思っているんですよ。それから、世界の中で横須賀、佐世保、嘉手納は、これほどアメリカにとって便利で有効な基地はないですよ。だから、これは引き上げないですよ。アメリカは中国と将来やっていくにしても全面的に信頼はしていませんよ。だから、中国に対して牽制をする。バランスも取る。そのためには日本がしっかりとしてくれる方がいいんです。どこかの時点で日本が本当にどうしようもない、あてにならない国になったら、態度が変わるかもしれませんが、日本がしっかりしている限りは、アメリカが日本と組んでいくというのは最初に重視していると思います」
反町キャスター
「日本がこれから先50年、100年を考えた時、これまでの60年やってきた対米、西部さんの言葉で言えば対米従属の安全保障の形で、本当に日本の国の安全は守れるのか。中国における海洋進出の状況を見ると、嫌でも膨らんでくるものを見た時に、この人達とある程度の関係を持つことが、逆にリスクをヘッジすることになるのかどうか」
北岡氏
「どういう意味ですか?」
反町キャスター
「アメリカだけを頼っていいのですか?」
西部氏
「中国を頼りましょうということをおっしゃりたいんでしょう」
反町キャスター
「いや、そういう意味ではないですよ」
北岡氏
「いや、それは集団的自衛権のもとをよく見てください。自衛権ですよ。日本を守ることです。これは日本の安全のためにやることです。アメリカの利益に協力するためにやっているわけではありません。これは日本の自衛力をアップする1つのステップです」
反町キャスター
「なるほど。それはもしかしたら、戦後これまできた安全保障体制が、片務的な日米安保体制のもとにおけるものだと、そこから少し双務的なものに、日米の力関係が変わっていくプロセスにあると思ってよろしいのですか?」
北岡氏
「1950年代の日米関係の力関係と現在は同じではないでしょう。同じというのはおかしいし、それは変えなくてはいけない」
北岡伸一 安保法制懇座長代理の提言:『抑止と均衡』
北岡氏
「安全保障の常識に戻ろうということで、抑止。軍事力を持つから攻めるなんて、日本ではあり得ないですよ。周りに核兵器を持っている大国にこちらから戦争を仕かけるなんてあり得ない。でも、抑止がなければ、日本が重要視している国際法機関、法秩序は維持できないと。均衡というのはある程度バランスがないと、バランスのパワーというのが、コンベンショナルリーズナブルというかな、安全保障の伝統的な知恵ですよね。この反対は、我々が平和主義的になって非武装になれば、世界平和になりますと、誤った考え方なので。それを何とか変えたいというので積極的平和主義という言葉を安倍さんは使うようになったんですけれども。だから、安全保障の常識に帰りましょうということです」