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2014年5月7日(水)
高村副総裁に訊く訪中 ▽ ニッポンの逆説③日本は独立国なのか?

ゲスト

高村正彦
自由民主党副総裁 日中友好議員連盟会長(前半)
白井聡
文化学園大学助教(後半)
中野晃一
上智大学国際教養学部教授(後半)


前編

日中議連高村会長に聞く 訪中の成果と課題
反町キャスター
「日中関係というと、安倍さんの第一次政権の時に、戦略的互恵関係という言葉を日中関係のキーワードにおいたのですが、今回、高村さんが中国に行かれて、会談の席上、『戦略的』互恵関係を、『戦術的』互損関係と現在の日中関係を説明されたのですが、この言葉を受けて、中国側ですが、現在の日中関係をどう評価して、秋に首脳会談はどうですかという提案に対しては、どのような反応があったのですか?」
高村副総裁
「戦術的互損関係というのは、安倍内閣になってからつくったのではなくて、民主党政権時代の漁船衝突事件の時に私がつくった言葉」
反町キャスター
「高村オリジナルなのですか?」
高村副総裁
「そうです」
反町キャスター
「これを言った時に、たとえば、中国側は笑ったりするものですか?」
高村副総裁
「笑わないけれど。高徳敬さんが日本に来た時にこの言葉を言ったら、いい言葉ですねと。中国で使わせてもらいますとメモを取っていましたけれどもね」
反町キャスター
「中国側はどうでしたか?日中関係に対する中国側の評価。首脳会談に向けた雰囲気はどんな感じだったのですか?」
高村副総裁
「私達がこの厳しい環境の中で、向こうから見れば、中国に来たということについては一定の評価をしていたわけです。ですから、共産党の序列3位の人が出てきたということは言えるわけですが、中身は大変厳しいことを言っていましたね。たとえば、過去の認識の話をしても、それにまつわる靖国の話にしても、あるいは尖閣の話にしても、非常に、非は100%日本にありと言わんばかりのことを言っていました。ただ、最後の結びのところで、現在のような状態になった原因は、主として日本側にあると言ったので。それはこういう悪い状況になったら、たいていお互い主たる原因は相手方にあると、お互いに思っているもんです。これは普通のことですよ。普通のことですから、あっ、これなら、これからのやり方次第では、望みなきにしもあらずと。こう思ったわけですね」
11月首脳会談 実現性は
反町キャスター
「首脳会談については、どういう反応だったのですか?」
高村副総裁
「首脳会談は、私の方からAPECを中国が主催するのだから、その時は是非、2国間の首脳会談があることが望ましいと。これは私個人が言っているのではなくて、安倍総理自身の気持ちでもあるということを言ったわけですね。ただ、それに対しては習近平主席に伝えると言って、そのうえで、今の言葉が出てくるんです。こうなってしまったのは主として日本側にあるのだから日本側が環境整備をしてくれと。こういうことを言ったわけですね」
反町キャスター
「それは、今回会った主なメンバー、3人だと思うんですけれど、李小林さんは同じような言い方ですか。首脳会談に関しては。主たる原因は日本側にある。それを改善してほしいということなのですか?」
高村副総裁
「主たる原因はというのは、張徳江さんが、まさに言った言葉ですね。それから、唐家璇さんも結論的には同じような反応。李小林さんも大差ない。同じような反応であったということですね」
反町キャスター
「唐家璇さんは、日本の今回の訪中団全員と会いましたが、公明党の北側さんとか、民主党の岡田さんとか、個別に会っていますよね。これは高村さんはやっていませんよね」
高村副総裁
「それは全体の会談は、唐家璇会長と私との間の話になったので、超党派で来ている中で、その中の有力者2人とは、個別にお話したいという気持ちがあったんだと思います」
反町キャスター
「それは別に自民党以外のところに、中国側としてもきちんと嫌な見方をすれば、楔を打って、安倍政権とは離れたところに中国の太いものを打っておきたいと、向こう側からそういう依頼があったのか。それは勘繰りすぎですか?」
高村副総裁
「わかりませんよね。そういうことはね。そういうことはわかりませんが、私が聞いているところだと、岡田さんから直接聞いたのではないのですが、岡田さんとの間では、安倍政権というのは、本当に中国を脅威としている、敵視している政権かどうかというようなことを聞いていたみたいですね」
反町キャスター
「それは、高村さんに聞いた方がよかったのではないですか。高村さんは、そう聞かれたら、何と答えるのですか?聞くのも変なんですけれども」
高村副総裁
「私は正直にとても親中政権ですと答えます」
島田キャスター
「違う党の人から、安倍政権のことを聞いてみたかったんですね」
尖閣、靖国 打開の道筋は
反町キャスター
「向こう側の言い分として、靖国に行く、行かないは別にしても、尖閣についてはこれまでと同じですか。要するに、中国の領有権を主張するのは正しい問題なのかと、日本が現在やっていることは主張も行動も全ておかしいという言い方を向こうは繰り返している?」
高村副総裁
「それはそうです。これは中国固有の領土であると。これは絶対に譲れないと。絶対にという言葉を使いましたね。我が方は、我が方としてこれは誰のものでもないことを確認したうえで、1800年代の末に領有宣言して、その後70年間、中国は全く異議を唱えなかったと。突如七十数年経ってから、中国がこれを主張し始めたと。最初のうちは、それでも割と遠慮していた面もあるのだけれども、最近になって力でもって、現状を変えようとしていると、これは2008年の日中関係を、割といい時から始まっているんですよ。中国側はいかにも日本側が国有化してから始まったんだといいますけれども、そうではないんですよと言うようなことも一応言わせてもらいました。だから、お互いに厳しく、だけど、将来については何とか希望を見出すように話してきたつもりです」
反町キャスター
「全日程一応メンバーと会談を終えたあと、最終日に中国側の日中関係の研究者と学者との懇談会がありましたね。日程だけは公表されているのですが、内容のブリーフも取材もなかったのですけれども、こうした方々と会うのも、それなりに習近平主席のシグナルにはなるのではないでしょうか。意外と最終日に会われた学者の皆さんの方が実は習近平主席に対して、直接日中関係の政策を提言するようなメンバーではないのかという気もするのですが、そのへんの最終日の学者とのやり取りは」
高村副総裁
「それは正確にはわかりません。誰がどれだけ影響力があるのか。たとえば、李小林さんは、よく言われているのは、習近平主席とは幼馴染である。だから、割とこの人に伝わると伝わるのだと。それはどこまで本当かわかりませんよ。我々はそういういろんな情報を、本当かもしれない、違うかもしれないと思いながら、やっているわけですが、少なくとも張徳江全人代常務委員長は、これは、ナンバー3ですから、それははっきりと伝わりますよね」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、尖閣問題についてもいろんな話が出た中で、かつて中国の軍事関係者が、たとえば、シンガポールにおける会議において棚上げ論に言及したこともあるんですよ。棚上げについては今回全く向こうからはなかったわけですか?」
高村副総裁
「棚上げという言葉はなかったのではないかな。昔、棚上げということを言われたこともあるということはあったかもしれないけれども、ここを棚上げで解決しようというような話はなかったと思いますね。だから、我々からすれば、70年も何の異議も唱えないで突然我々のものだと。だけど、棚上げしようと言われてもそれはなかなか棚上げというのは、問題があるということを認め、棚上げするので、なかなか、はい、そうですねとはいかないということですね」
首相、海洋進出の中国を批判 国際社会の懸念事項
反町キャスター
「そうした中で、欧州歴訪ですね。安倍総理ですが、6日、演説を行いまして、その演説の中で中国を名指しで大変厳しく批判をしました。要旨ですが、実はカメラを出されたあとに、総理が演説でここの部分を話されていますが、『中国の対外姿勢、軍事動向については、我が国を含む国際社会の懸念事項になっている。東シナ海では、尖閣諸島周辺の日本の領海への侵入が続いている。南シナ海においては一方的な主張に基づく行動が相次ぎ、地域の国々の間では緊張感が高まっている。日本の
「法の支配」
を堅持し、海洋秩序や上空飛行の自由を擁護していく』と。これはこれまでにない具体的な名指しの中国批判を大展開されたわけなのですが、これに対して中国外務省も、今日の夕方、早速報道官ベースなのですが、反論をしていまして、『安倍総理は、悪意を持って、中国脅威論を宣伝し、中国の顔に泥を塗り、中国を攻撃していると。実力と武力を使って隣国を侵略し、現状を変えようとしているのは中国ではない。安倍総理は日本を軍事大国にしようとしているのである』と。これは大反論をしているんですけれど、まず高村さん、安倍さんの6日のブリュッセルでの発言、演説ですが、これは帰ってきた直後の立場からすると、要するにささくれ立っているところを少し慣らそうと思って行かれた部分がすごく大きいと僕は思っているのですが、その直後に、この言葉というと、何か埋め戻した穴がまた開いちゃったみたいな感じかなと思うのですが、いかがですか?」
高村副総裁
「私の動向を見ながら、安倍総理が行動をしているわけではないですからね。だから、これはもともとこういうことを言うつもりだったのだと思うのですが、この言葉はどうかこうかというのはともかくとして、私が中国の方に申し上げたのはお互いに第三者に対して一方的に相手の悪口を言うよりも、お互い文句があったら、直接言い合った方がよっぽどいいと。だから、間にあらゆるレベルの交流が必要だ。特に、首脳会談が必要だということは申し上げたんですよ。だから、お互いいろいろ言っていますよね。習近平主席がヨーロッパに行った時もかなりのことを言っています。だから、お互いに売り言葉に買い言葉で、自分の言っているのは、買い言葉だと思っていると、あまり幸せな話ではないので、だからこそ、直接お互いに対して懸念があるとお前が反省していないではないかと、それを第三者に言うのではなくて、お互いに率直に言えばいいんですよ。それは、はっきり言って、張徳江さんだって、この人は随分率直に、随分厳しく、随分詳細に言うなと思うぐらい言いましたよ。それは私も率直に厳しくだけれど、簡単に反論しました。だけど、それはお互いに言う分には、この野郎と思うところがあるかもしれないけれども、それでもそのまま自分も言うことはできるわけですよね。だから、なるべくそういうことは少ない方がいいと。ただ、安倍総理がNATOで言ったわけですから、NATOでこういうことを言うのは、それはいわゆるウクライナのクリミア半島の関係もあって、ヨーロッパではこういうことがあるかもしれないけれど、アジアでもこういうことがあるんだよと。それはそんなにおかしいことではないけれども、この部分だけを抜け出されたら、中国は良い気持ちがしないことは事実だと思います」
反町キャスター
「そういう意味で、まさに首脳会談でやるべきと」
高村副総裁
「そうですよ。こういうことをかつて習近平主席が、ヨーロッパに行って、日本の過去に対して隋分厳しいことを言ったと。安倍総理が中国の現在について中国から見ればとても厳しいことを言われたと。これを第三者に言い合うというのは、それよりも直接言うことが大切だと思いますね」
反町キャスター
「ただ、そういう雰囲気に向けて、首脳会談に向けて、お互いが、たとえば、中国にしても、韓国もそうかもしれないです。国際舞台において、対日批判をやりまくるのではなくて、面と向かって、ちゃんと首脳会談やろうよと、韓国にしても、今回中国に行かれて、そういう雰囲気は多少感じる部分はありましたか。手がかりとか、メドとか、光、光明がそこに見えましたか?」
高村副総裁
「それは先ほど言いましたように望みらしきものはなきにしもあらず。それはそれなりにある。少し進んで、このことでちょっと減ったのかなと。また野田さん達が行って、そこはアフターケアをしているんですよ」
反町キャスター
「ただ、野田さん達の心配をするのも変ですが、現在中国に行っている皆さんもつらいですよね。行った初日にブリュッセルで、これを言っているのを、しかも、中国外務省が会見で、我が国の顔に、泥を塗る国の皆さんですかという話になるわけではないですか」
高村副総裁
「だけど、NATOに行って、その話をするという時に、こういう話になるのはそんなにおかしいことではないんです。最初の部分について『中国の軍事動向について、我が国を含む国際社会の懸念事項になっている』と。これに近いことは、私は直接、彼らに言っていますよ。中国みたいな大きな国が、毎年10%ずつ、それを二十数年間も軍事力を伸ばしていると、それは小さな国は懸念をもちろん、持ちますよと。私達は脅威とは思わないけれど、懸念は持ちますよということを、私も直接言っていますからね。だけど、直接言うのと、よそで言われたのはちょっとワケが違う。それは中国もそうでしょうし、我々も言われた時はそうですよね」
反町キャスター
「一方で、集団的自衛権に関してですが、先ほどニュースにありましたが、与党内で憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使の容認という、これまで進めようとしてきた王道というか、真ん中、いわゆる大きな動きよりも、まず武装漁民が、離島に上陸した際の対応など、いわゆるグレーゾーンとか、マイナー自衛権と呼ばれるものから、取り組むべきとの考えが、ニュースにもありましたように自公の間でそういう考えが浮上してきているのですが、この話の進め方は、高村さんとしてはいかがですか?」
高村副総裁
「安保法制懇では、最初から全部平行していやっているんですよ」
反町キャスター
「そういうグレーゾーンと、解釈改憲も」
高村副総裁
「最初から全部平行してやっているんですよ。現在、この国を守るために、あるいはこの地域の安定を守るために何が必要かということ。どういう法整備が必要かと、全体をやっているわけです。皆さんが集団的自衛権だけを取り出して問題にするわけです。たとえば、国会で安倍総理が集団的自衛権と前のめりで言っているという。大間違いです。聞く側が集団的自衛権だけ取り出して聞くから、それに答えざるを得ないではないですか」
反町キャスター
「わかりました」
高村副総裁
「そうなんですよ」
反町キャスター
「そうすると…」
高村副総裁
「だから、そのやらなければいけないことがたくさんある中で、それは意見のあうものからやるというのは、1つの選択肢ですよね。1つの選択肢です」
反町キャスター
「集団的自衛権の議論については、公明党の北側さんと高村さんの間で、大きな流れをつくろうとしている、その主なメインエンジンの1つだというふうに、僕らは見ているのですが」
高村副総裁
「マスコミにそう言われていることは、私も承知しています」
反町キャスター
「違うかどうかは別にして、そのへんのところから入っていくというのが高村さんとしては…」
高村副総裁
「いや、必ずしもそうではないんですけれども。必ずしも、そうではないんだけれど、いわゆるグレーゾーンですか。それは警察権の問題ですよ。警察権の問題ですね。本質的自衛権までいかない、警察権の問題ですよ。だから、ここは意見を一致しますから、ここをわざわざ遅らすという手はないんです、最初から。だから、問題は警察権の問題と明らかに本質的自衛権の問題と。それから、集団的自衛権の問題がある、たとえば、この問題と一緒にやるか、あるいはできる一致するところからやるかと。そういう話ですよ。だから、急にこのグレーゾーンが先に出てきたという話ではない。一番いい形は全部一緒にどんどんやるという形がいいかもしれない。合意ができるのであれば。だけれど、合意はできないだろうと。合意ができるところからやるというのは普通のことですよね。だから、なるべく早く合意ができたらいいなと思っているけれども、できないとすれば、できるところからやるというのが、1つのやり方ではないでしょうか」
反町キャスター
「集団的自衛権を先送りするというか、もうちょっとじっくり話し合っていくということだと思うんですけれども、これは断念とか、そういうことではないんですよね。集団的自衛権の容認に向けた、自民党の動きは断念ではなくて、さらに慎重に話し合いをすると」
高村副総裁
「私達は、国の存立を全うするために必要最小限度のことが集団的自衛権の中にもあると思っていますから、ただし、あるのにやらないということは政治家としての責任放棄ですからね、そんなことできませんよ。できませんが、これは憲法解釈の変更ということになれば、与党全体の合意は必要でしょうということです」

後編

日本は独立国なのか 永続敗戦とは
島田キャスター
「永続敗戦というのは具体的にどういう意味なのですか?」
白井助教
「とても変な言葉ですが、私がつくった言葉なのです。簡単に説明するのは難しいのですが、敢えて簡単に説明しますと、戦争に負けてしまったということをちゃんと受け止めていない。そこのところをしっかり受け止めていないからこそ、逆にずっと負け続ける状態というのが生まれてしまったというのが永続敗戦ということの一番簡単な説明になります」
島田キャスター
「戦争に負けたことを受け止めていないということですか?」
白井助教
「そうですね。もちろん、歴史的事実として、第二次世界大戦で日本は負けてしまったと。これは誰でも知っていますよね。だけど、どうもそこのところを意識のうえでごまかすところがあると思うんですね。どういうことかというと、まず終戦という言葉がまず僕らにとっては普通の言葉として定着していますね。終戦とは戦争が終わったっていう意味ですよね。だけど、戦争は自然に終わるわけではないわけでして、日本は負けたということを認めて終わったわけで、つまり、敗戦です。ところが、敗戦より終戦という言葉の方が明らかに僕らの日本社会においてプレゼンスが大きいということですね。これも1つの僕らが敗戦と言うことを本当に認識していないということの表れなのではないかと思っています」
島田キャスター
「なぜ日本は敗戦という事実を認めたがらなかったのか、認めていないのかなのですが」
白井助教
「ある意味、認めないでいい構造ができちゃったからですよ。もちろん、戦争直後においては国土が大変な損害を受けたわけですし、多くの人達を失ったわけで、敗戦ということのつらさを身にしみて味わっていたはずなのですが、ところが、敗戦を終戦に呼び変えるというプロジェクトは、実は戦後すぐ始まっているんですね。8月15日に玉音放送が流れます。まずこの玉音放送の言葉を読んでみると、なかなか面白いんです。降伏であるとか、敗戦であるとか、要するに、すごくダイレクトに負けましたという言葉は使われていないんですね。これはたまたまでも何でもなく、この原稿を書いた人が注意深くその言葉を避けたわけですね」
敗戦と戦争責任
島田キャスター
「最初から注意深く言葉を使わないようにしてきたと。それはどうしてですか?」
白井助教
「何でこんなごまかしをやらなければいけなかったのかということですよね。それは結局、戦前の支配層、つまり、戦争へと国を導いていった指導層ですけれど、この権力というのを戦後も温存する必要性というものがあったからですね。その必要性は誰にとってということなのですが、それはアメリカにとってということです。アメリカとしては日本がどういう国に戦後なってほしかったかというと、当初はもちろん、民主化ということをやるわけですけれども、それはかなり高い理想主義的な方針を掲げてやるわけですが、あっという間に逆コースと言われる方向へと転じていきますね。逆コースと言われるのは、まず戦前の支配層がまた復権してくるということですが、アメリカにとっては選択肢が2つしかなかったんです。誰に日本を戦後支配させるかといった時に、軍国主義者か、あるいはそれに近かった勢力を使うか、または左翼を使うか。しかし、ソ連に対抗しないといけない。冷戦構造の中でソ連に対抗しなければいけないわけですから、ソ連と仲良くしたいというような連中を権力者にするわけにいかないわけです。だから、アメリカから見ればもともとはファシストということになりますけれども、旧保守支配層というのを使わざるを得なかったと。旧保守支配層としても権力の座に残りたい、だけど、もともと負け戦を導いた人達ですから、何でまたお前らが偉そうな顔をしているんだという話に当然なるわけです。そこで戦争というのが自然災害のようなものだということにしてしまえば、別に誰のせいでもないということになります。ですから、戦争責任という言葉がありますが、しばしばそれは対外関係においてちゃんと処理しているとか、していないということで使われますけれども、実は僕が一番大事だと思っている問題は、負ける戦争しかも対米戦争ということに関して言えば、やる前からまず負けると本当はわかっていたわけですね。これをやってしまったということに関して、誰一人として法的に責任追及されていないんですね」
反町キャスター
「国内で?」
白井助教
「はい」
反町キャスター
「戦争責任をあいまいにするために、終戦という言葉を使った?」
白井助教
「そういうことだと思います。ある種、日米合作で印象操作が行われてきたと」
反町キャスター
「終戦詔書の時に、陛下が敗戦、降伏という言葉を使わなかったところに、自分の戦争責任を回避したかったという想いがあるのか、どうかは?」
白井助教
「おそらく、それは天皇個人ということだけではなく、当時の国家指導層全般の意図だということだろうと理解しています」
敗戦と現代日本 安倍政権の歴史認識
島田キャスター
「安倍さんは『戦後レジームからの脱却』を政治目標に掲げていますが、これは永続敗戦からの脱却を目指していると考えられなくはないですか?」
白井助教
「言葉だけは正しいんですね。と言うのは、永続敗戦レジームというものは、僕の見方では、ずっと日本の戦後の歴史は推移してきまして、何でおかしなものがそれでやってこれたのかというと2つの柱があったと思うんですね。それは何かというと、1つには冷戦構造、もう1つはアジアにおいて日本の国力というのが他国に比べて突出していたということですね。結局この2大要素があるからこそアメリカとしては日本に対して本音ではいろいろ文句があっても、第1の子分ということで遇さなければいけないということでやってきた。対アジアと日本との関係で言えば、日本が敗戦を否認する態度、アジアに対する戦争の敗北を否認する態度に対して内心いろいろむかついてきたけれども、しかし、経済援助はほしいといったような切実な状況というものがあるから、本音のところでは言えないという形で推移してきたわけです。冷戦構造は20年以上前に崩壊しているわけですね。日本がアジアにおいて経済力が突出している、国力として突出しているという状況もかなり相対化されてきました。となると、もう柱が2本ともなくなっちゃった。だから、そういう意味で宙に浮いているような状態にあるわけで、となると、戦後レジームからの脱却というのは確かにやらなくてはいけないのですが、しかし、どうも僕の見るところの、安倍さんのやっていること、戦後レジームというのは、僕に言わせれば永続敗戦レジームだから、そこから脱却しなければけないはずなのに、いわば永続敗戦レジームをより純粋なものにしようとして言っている」
島田キャスター
「白井さんの言うところの、永続敗戦レジームからの脱却は、何をすることが脱却になるのですか?」
白井助教
「特殊な形での対米従属というのを深くしてきたわけですから、これをやめるということは、つまり、対米従属状態を相対化させるということでなければ本来いけないですね。アジアで孤立してきた。これを克服するのが永続敗戦レジームからの脱却となるはずですが、安倍さんがやっているのはこの逆で、対米従属をより強化しつつ、アジアでの孤立をより深めようとしているのですから、言ってみれば永続敗戦レジームの純化ですよね」
集団的自衛権をめぐる議論
反町キャスター
「集団的自衛権の話は、永続敗戦レジームからの脱却にはプラスになるのですか?」
白井助教
「いえ、ならないです。集団的自衛権についてオバマさんは、安倍さんが解釈改憲でやろうとしていることについて歓迎するという発言をしましたが、これはアメリカからすれば肩代わりをさせたいんですね、安全保障の負担を。つまり、やらせることは増やすけれども、アメリカとしては別に何もしてあげませんよと。普通に考えて、尖閣諸島でもしドンパチが起こったとしてアメリカが出てきますかと。僕は出てこないと思います。どうしてあそこで起こる紛争でアメリカの青年が血を流さないといけないのかと。これは説明がつかないですよね。日本の親米保守派の方もようやく認めるようになってきましたが、安保の適用範囲内だと言ったからと言って、即時参戦するとういうことを意味しないよと最近認めるようになってきましたね。政府はあたかも即時参戦するようなことをプロパガンダしていますが、そんなことは大嘘であるということを日本人は認識すべきであると思います」
反町キャスター
「集団的自衛権の容認はアメリカからの従属性から独立性を高めることにはならないのですか?」
白井助教
「周辺といった時に、いったいどこまでを周辺とみるかということがありますよね。たとえば、中東の問題(シーレーンの問題)で見た場合、日本はこれだけ天然資源を中東から買っているわけですから、大変利害関係としては深いということになりますね。単に、距離的に近いから周辺、遠いから周辺でないとは言えないわけですよね。となると、アメリカが追求する中東政策について、日本は基本的に乗かって、軍事作戦があったら、血を流さないかという結論になりはしないかとなるわけです。日本がある程度中東で独自の政策、外交を展開することは可能だし、現にやってきたわけですよね。イランとの関係はそれの代表的な事例です。そこのところは日本の独立した国営の追及があって然るべきなのですが、安全保障において一見独立を強めているように見えて、集団的自衛権の容認をやってしまうとますます追随を深めることになる」
アメリカへの従属
反町キャスター
「永続敗戦からの脱却には日米安全保障条約が障害になっているということですか?」
白井助教
「日本の対米従属の仕方に特殊性がある。特殊性はどういうことかというと、ある種の温情主義みたいなものが入り込む。つまり、アメリカは日本に対して決して悪いようにはしないだろうと。これは国体の護持とつながっているんです。国体が護持されたと言うわけですが、そんなわけはないんですよ。あれだけの大敗北を喫したわけですから、大モデルチェンジをさせられたんです。戦前天皇が占めていた位置を、アメリカが占めているということです。つまり、日本国家の上にワシントンがあるという状況で、その構造自体は普通のことですね。ある程度の従属国になってしまうのは国際政治上しかたがない。問題は何かというと、親分は子分を、かつての天皇が国民を愛してくれたように、愛してくれているはずであると、そんなことありはしないんですね。日米安全保障条約だって、アメリカの国益になる限りにおいて、これを維持したり、強化したりするわけです。別にアメリカが日本のことを愛してくれているから、そうしているわけでは全然ないわけです。ところが、日本には決してドライな利害計算だけではなくて、アメリカと日本との関係は特別だと思いたがる気持ちというのがある。それが日本の対米従属の特殊性であると」
敗戦と現代日本 歴史問題に見る永続敗戦
島田キャスター
「安倍総理の靖国神社参拝をどう見ていますか?」
白井助教
「こういった行動というのは、国際的にはいわゆる歴史修正主義的な言動だと言われているわけです。歴史修正主義は何でしょうかと、簡単に言ってしまえば、自国の歴史、自分達の歴史をできるだけ自分達に都合良く解釈した、あるいは都合の良いところだけを見て嫌なことに関しては見ないようにしたり、あるいは過小評価したりするということを歴史修正主義と言うわけですけれども、日本における歴史修正主義とは何なのと言いますと、結局第二次大戦ですが、これが侵略戦争であったということを認めないということが、日本の歴史修正主義の根幹ですね。しかし、侵略ということをどう定義するかというのは、これは突き詰めればとても難しい問題です。だけども、政治的には簡単な問題です。政治的には簡単というのはどういうことかというと、結局負けた側は侵略をしたと定義されるというものです。あの戦争は侵略戦争ではなかったんだ、悪いことをした戦争ではないのだと言うのであれば、それは敗戦を否認するということになるんです。負けたということを認めないと。これはすごく観念的な話ですよね。本気でそれをやろうとするのだったら、サンフランシスコ講和条約は破棄だと、それから、東京裁判あんなものは認めないと、ポツダム宣言は受け入れたというけれど、あれは受け入れるのやめるんだと、これはどういうことかというと、もう1回戦端を開かなければならないということですね。あらゆる国々を敵に回してもう1回戦争し、今度は勝たなければならない。本気でそんなことしたいのですかという話ですね」
反町キャスター
「靖国に参拝するということは、敗北を認めていないからこそ参拝するという見方になるのですか?」
白井助教
「一番のコアな欲求はそこだろうと思いますね、保守層の。真意を説明すると、安倍さんもしていますけれど、その真意というのは不戦の誓いをするためとおっしゃっていますが、だけど、靖国神社の本義からして、あそこで不戦の誓いをするなんていうのははっきり言ってナンセンスです。本来、靖国神社は宗教法人であって、政治から独立しているべきですから、不戦の誓いをしに来たという政治家に靖国神社が抗議をすべきだと思います。要するに、あそこに参るということはよくぞ戦ったと。そして我々もがんばるぞということですよね。これは平和ということとは相容れないと思いますね」
中野教授
「白井さんの話は、その通りだなと思うところは多々あるのですが、やや説明として国際関係のリアリズムの観点から、地政学のダイナミズムで、反戦と戦後の説明があって、その通りだとほとんど思うのですが、それだけではないんです。敗戦といった時に何を指すか。具体的に負けの事実は何なのかというのにもう少し踏み込みがほしかったなと。地政学的、あるいは国際関係のリアリズムから負けたんだ、それをわきまえなさいということは一番強く出ているし、その条件として、ポツダム宣言から領土の話はわかりやすいですね。ただ、靖国の話になってくると、それだけでうまく説明できるのかというところがあって、負けたというのは単に勝てばよかったのかという話です。そうではないと白井さんもおっしゃっていましたので、その部分がもうちょっと出てくるといいかなというところがある」
反町キャスター
「戦後の日本が歩んできた道として吉田ドクトリンがありました。軍事的な部分はある程度、安保に乗かって、我々は経済発展を目指していこうよと。その延長線上に我々の現在の豊かさがある。戦後の日本の歩みについてはどう感じますか?」
白井助教
「うまくやったのではないですか、ある程度はね。だけど、その豊かさというのもはっきりと失いつつありますね。となると、その豊かさによって、ある種見ないで済んできた問題というのが、現在うわっと全部出てきているんだろうなと。だから、ある種敗戦というすごく昔の話にもう一度取り組まなければいけないという状況になっている」
反町キャスター
「具体的に我々はどこから取り組むべきだと感じますか?」
白井助教
「確かにこれはなかなか難しい問題で、ある程度レジームチェンジをしないとどうしようもないですね」
島田キャスター
「いろいろと考えた先にある日本国というのはどういう状態のことを考えているのですか?」
白井助教
「一言で言えば、永続敗戦レジームというものを打破した国にならなければと。たとえば、1990年代どういう取り組みがされてきたかというと、たとえば、対アジア関係で言えば、村山談話であり、河野談話でありという形で出し、要するに、冷戦構造という世界の大局的な構造が変わった以上、日本の立ち位置というのも少し変えていかなければならないのではという動きは政治の世界でもはっきり出ていたと思うんですね。だけど、結局、2000年代に入っていくと、特に対テロ戦争という文脈が新たに出てきたあたりから、対米従属の傾向というものが非常に強くなってしまって、現在に至るんですね。結局ここのところで考え方を変えないとどうしようもないだろうと思います」
白井聡 文化学園大学助教の提言:『極東のバナナ共和国の脱却』
白井助教
「バナナ共和国は何かと言うと、特に冷戦時代に、アメリカが中南米あたりにたくさん政権をつくったわけです。要するに、社会主義権力の勢力が中南米で有力化するということをアメリカはすごく嫌いましたので、そういう政権が合法的な形で成立をした場合でも、軍人とかを使ってクーデターなどをやって傀儡政権を立てたと。こういう工作をたくさんやってきたわけですね。そういった国々というのは、いわゆる軍事独裁政権で大変な腐敗をしておって、工業・産業も発展せず、つくれるものといったらバナナだけということで、そういう国々のことはバナナリパブリックと呼ばれていたんですね。日本が現在どうなってきているかというと、残念ながら、そういったバナナ共和国みたいなものにどんどん近づいてきているなというのが僕の実感ですね。TPP交渉1つとっても、何をやっているんでしょうか。何をやっているかわからないですからね。かなりの部分が秘密であって、そもそも普通の人達は蚊帳の外に置いた形で行われているわけですから。何で蚊帳の外に置かれなければいけないのか、とてもではないけれど公開できないようなことをお話しているのかもしれないと思わざるを得ないですよね。そういった交渉に、日本の要人達は何をやっているのだろうかと、結局この国を売り渡すということを先頭に立ってやっているのではないですかと。その売り渡す姿というのは、かつて全く自国民の人命を顧みなかった日本の軍隊の姿というのに重なってきますよね。自己保身のためにだったら、どんな他者の犠牲も厭わない」