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2014年5月1日(木)
観光立国に向けた課題 どう迎えるアセアン客

ゲスト

本保芳明
首都大学東京都市環境学部教授
藻谷浩介
日本総研調査部主席研究員
神田瑞穂
日本アセアンセンター観光交流部長代理
イワン・スティヤ・ブディ
INJカルチャーセンター・インドネシア語主任講師

日本のインバウンド戦略 観光立国10年目の現実
島田キャスター
「日本を訪れる外国人はどのくらいいるのかというと、2003年から小泉政権の下、ビジットジャパンと銘打って、政策がスタートしたわけですが、2003年当時で500万人超ぐらいの外国人の方が日本を訪れていました。そのあと伸びて、途中でリーマンショックだとか、東日本大震災の影響などもありましたが、2013年に年間の訪日外国人数が1000万人を初めて突破したと。1000万人を突破したスピードについていかがですか?」
本保教授
「2003年からちょうど10年で倍になった計算ですよね。500万人増えたわけですが、500万人になるまでにどのぐらいかかったかということですが、50年とか、60年かかってきているんですね。もちろん、明治以来こうなったわけですが、戦後増やす努力をしてきて、やっと500万人に乗っかったのが2003年で、10年で加速してここまできたというのは大変なことだと思っています」
島田キャスター
「観光産業のこれまでの歩みと位置づけをどう見ていますか?」
藻谷氏
「韓国との比較で言いますと、韓国の人口は日本の4割ぐらいですが、よそからいらっしゃっている外国人の数は、韓国と日本では日本ががんばってようやく同じぐらい」
島田キャスター
「そこですよ。旅行者数の国際ランキングで、日本は2013年に836万人。韓国に10位以上開けられているんです。1位はフランスで断トツの8302万人、アメリカ、中国、スペイン、イタリアと続くのですが、(日本の)33位というのはまだまだという感じがしないでもないですね」
藻谷氏
「2009年、シンガポールにちょうど住んでしまして、リーマンショックの頃ですね。人口は外国人も入れて500万人ぐらいの大きさの都市圏で、観光客の数は日本とほぼ同じぐらい。当時まだマーライオンしかメインがなくて、カジノもつくっていない頃です。それでもマーライオン1本で随分日本人のお客さんを呼んできまして、スタッフだとか、政府の力の入れようというのは、横で見ていますと、非常に熱いですね。それに比べて、日本はまだ本腰を全然入れていない、入れようとし始めていた矢先でしたね。そういう感じのところだったと思います」
反町キャスター
「インバウンドは海外から呼び込む前に国内の日本の観光がどうなっているかというところですが、日本国内の観光産業としては現状どうなっているのですか?」
本保教授
「どのくらいお金が使われているかというのが見やすい数字ですよね。これで見ると、だいたい95%が日本人の使っているお金になるんです」
反町キャスター
「国内での観光売上げの95%が、日本人が払っている?」
本保教授
「はい。宿泊旅行に行く、日帰り旅行に行く、海外旅行に行くという3つに分けているのですが、これでだいたい95%でほとんどが宿泊旅行です。直近の数字を申し上げると、2011年が22.4兆円という消費額です。大変大きいですね。そのうちの5%が外国人、正確に言うと4.5%ですけれど、この数字は、実は2006年から毎年縮まっていまして、2006年の数字は、記憶に間違いなければ、30.1兆円ですから、比較すると約26%減っていることになります」
反町キャスター
「それは日本人が国内旅行をしなくなったということですか?」
本保教授
「と言うことです」
反町キャスター
「日本人が国内旅行をしない分、海外に遊びに行っているのでは?」
本保教授
「海外旅行も多くの人が増えているというイメージがあるのですが、急速に増えたあとに2000年でブレーキがかかっちゃいまして、そこからは横ばいかちょっと増えているぐらい」
藻谷氏
「特定のところにしか行っていないんですね。国内の勝ち組では京都ですとか。たとえば、奈良に行きますとあまり増えていない、多くの観光客、要するに、うまく取り込めているところは、実は全体の一部で、あるいは軽井沢とかはうまくいっていますが、日本全体で、たとえば、スキーは非常にお客さんが減っている。海外も一部の方向にしか人が行っていない。現在8兆円の売上げがだいたい5年間でなくなり、消費がなくなったということですが、日本全体の農業生産とだいたい同じぐらいで、あるいはトヨタさんの単独決算の売上げと同じぐらいでしょうか」
島田キャスター
「なぜ旅行をしなくなっているのですか?」
本保教授
「経済のパイ自体が小さくなっているわけではないですね。横ばいかちょっと増えてきているというのが日本経済ですから、と言うことは他の消費に取られてしまったとしか見えようがないですね」
反町キャスター
「デフレが長引いていたという話もありますよね」
本保教授
「でも、それは全産業に影響していますから」
藻谷氏
「小売販売額は横ばいで、減ってはいないですね」
反町キャスター
「観光だけ26%減るというのは、これは観光産業だけに何か特別な事情があるはずですよね」
本保教授
「極論をすると負け組になっていると言ってもいいわけですね。きつい言い方をしますが」
島田キャスター
「どこに使っているのですかね」
本保教授
「1つは、スマホをはじめとする通信に随分比重が移っています」
反町キャスター
「でも、スマホの通信費と言っても、月に使う人はいくらですか、3万円ぐらい使うのですか。1万円ぐらい?それを年間でやると10万円、20万円ぐらいになるか。それが旅行代に消えてしまうという計算ですか?」
藻谷氏
「そうです」
本保教授
「家庭消費のだいたい7%が旅行に使われているんですよ、現在。この割合が下がってきているということですね」

観光立国に向けた課題は
島田キャスター
「訪日外国人の消費動向、国、地域別ですけれども、これを見てみますと全部あわせておよそ1.4兆円、2013年ですが、日本国内で使われています。そのうち、中国や台湾、韓国、香港。東アジアの方々が全体の6割ぐらいを占めている。この方々がお金を使っているんですね。アメリカやヨーロッパの方々もいるのですが、そんなに多くない印象です。この1.4兆円という数字をどう見たらいいのですか?」
藻谷氏
「国内の観光消費が、2006年から11年の5年間で8兆円近く消えたという話がありました。ただ、その中で外国人の方の消費が1.4兆円。少ないと見る方もいるのですがが、ある意味、大きな商品分野である国内旅行がガクッと落ちた時に、新しい分野として、外国人が1.4兆円。8に対して1.4。おそらく多くの企業であれば、減った分の2割近くを補える新分野が出てきたということはすごく大きな規模。もう1つ、中身をちょっと見てみると、たとえば、中国が2800億円、香港1000億円ですよね。人口がどれぐらい違うかというと、中国は13億人、香港は800万人ぐらいですね。100倍以上も違うわけです。と言うことは、仮に中国の中に、香港に近い方向で豊かになっていく人がこれから増えれば、いったい中国マーケットはどれだけ大きくなるのか。現在の50倍になっても、おかしくはない。非常に潜在的に伸びる可能性が高い、しかも、この中にまだASEAN、東南アジアが香港とほぼ同額ぐらいしか出てきていないのですが、実はここには6億人、中国の半分にあたる非常に大きな人口の方がいらっしゃいます。実はだいたい6、7時間で行ける範囲に、これだけ大きい人口がある国を、日本人はあまり考えないが、ヨーロッパ、アメリカにはありません。これはマーケットとして非常に大きいと言えるのではないでしょうか」
本保教授
「我々の世界は、時々5億人という数字を話題にするんです。それは2030年になると、観光の国際機関の予測ですけれども、世界中を18億人の人が海外旅行をすると言われているんです、1年間に。現在約11億人なのですが、18億人になると言われています。そのうちの30%がアジア。だから、18かける0.3で、5億4000万人ぐらいの人が、このアジアの地域を旅行して歩くと。ですから、この5億人のマーケットのどれだけを獲れるかというのが、これから日本を含むアジアの国々の戦いになることだと思うんです」

ASEAN諸国の成長パワー どう掴む 日本の観光戦略
島田キャスター
「日本を訪れる観光客が伸びている国と地域は、どこなのかということですが、2013年のデータですけれども、前年比で中国が減っているんですね。韓国、台湾、香港などもそれぞれ伸びてはいるんですけど、タイがグンと伸びて前年比74%(増)です。タイを筆頭にASEAN諸国からの伸び率が非常に高いというのが目立つんですけれど、ASEAN諸国の方々が日本に訪れる機会が増えたのはどうしてですか?」
神田氏
「そうですね。まず、第1の理由は、経済が堅調だということで、以前は本当に、一部の富裕層の人しか、海外旅行には出られなかったんですけれども、中間層が拡大して、旅行に出かけられる方が多くなったということと、あとLCCですね。LCCが就航してから、特にASEANの方が多く日本に来るようになりました」
反町キャスター
「格安航空会社?」
神田氏
「そうですね。格安航空会社です。タイの旅行者のお話を聞いても、わざわざLCCを乗り継いで日本に来たりというような旅行をしていらっしゃったりします。何と言ってももともと親日的な国民性の国が多いので、たとえば、日本製品、車ですとか、電化製品、バイク、そういったもので昔から日本に馴染みがあって、そのあとで今度は漫画ですとか、音楽というようなカルチャーが入ってきて、非常に日本にもともと興味がある人がいたので、現在たくさん来ていると思いますね。また現地で日本食も非常にブームでして、日本人がやっているのではなくて、現地の方がやっている日本食のレストランが、現在すごく増えているんですね。そんなところからも日本ブームというのがうかがえると思います」
本保教授
「よく言われますのはタイが5000ドルラインに乗ったという絵になっていますよね。1人当たりGDPが5000ドルを超えると、海外旅行が盛んになると。こういうふうに言われていて、その起爆点にタイはまさに立っているんだと言っていいのではないかなと思います。ちなみに、今年は海外旅行が日本で自由化されて50周年です。オリンピックからも50年です。当時の日本の1人当たりGDPを見てみましたら、30万5000円だったんです。100円で換算すると3000ドルですか」
反町キャスター
「当時350円ですよね。なかなかそういう意味でいうと、日本の場合は」
本保教授
「1000ドルちょっとだったんですが、でも、ドル通貨で換算するから、購買力の問題もあって、見えにくいところもあると思いますが、それにしても、日本は3000ドルとか、30万円からスタートして急速に伸びてきたわけですが、そのコースをアジアの各国が、辿っていると。そういう意味で、我々は非常に恵まれた地域にいて、インバウンドに取り組もうとしているんだと見ていいんだろうと思います」
反町キャスター
「もう10年も経たずに5000ドルの壁に到達する国がどんどん出てくると見た時に、爆発的な旅行ブームが、ASEANに起きると。もう既に起きている。これから、さらに活発化すると見ているわけですね」
本保教授
「それが観光の世界での確信です」
島田キャスター
「インドネシア出身で、5年前に日本にいらしたということなのですが、もともと日本に興味を持っていたのですか。もしそうだとしたらどういうきっかけだったのですか?」
イワン氏
「私も中学の頃から確か日本のアニメとか、ドラえもんとか、ドラゴンボールとか、そういうアニメを見て、面白いなと思って。高校卒業したあとなのですが、大学に入って、そこで日本語を選んだんです。日本語学科選んで、目的はそういう文化ではなく、もし日本語ができれば日本企業に入れるので。日本企業に入ったら、ちょっと給料もいいし、理想的な目的ですね。でも、大学卒業したあとは、大学で日本語を教えて。学生に何で日本語を選んだのですかと聞いたら、いや、私は文化が好きで、私はアニメが好きで、漫画が好きで、ゲームが好きで、それを日本語で読みたい、日本語でわかりたいと。そういう気持ちですね。そこが違うんだと思って、目的も仕事だけではなく、もっといろんな文化も探りたい、いろんなことを知りたいとかですね」
反町キャスター
「その話、たとえば、現在韓国のK-POPがインドネシアでも人気が爆発しているみたいな感じですか。要するにイワンさんが中学生、高校生の頃に日本のアニメを見て、日本は何だろうと思ったような気持ちというのは、現在インドネシアの若い人達は、もしかしたら日本だけではなく、韓国の方に向いているとか、中国の方に向いているとか、そのバランスというのは変わってきています?」
イワン氏
「そうですね。ちょっと変わったとは思うんですけれど。ただ、日本はもっと基礎的に強いんですね。強いというのは、いろんな大学で日本語が学ばれていて、それと『ジャパンファウンデーション』とかもしっかり支援してくれて。韓国は、テレビは確かにすごくて、ドラマとか、K-POPが入っているのですが、でも、テレビ以外はあんまりだと思うんですね。日本は、祭りとか、毎年ジャカルタジャパン祭りがあって、それを毎年やって、すごく盛り上がって。でも、ジャカルタだけではなくて、各地方も祭りをやって、大学も毎年やっているんですね。だから、テレビには出てないんですけれど、でも、相当日本への興味がまだまだ強いと」
反町キャスター
「まだまだ強い。こういう現在の憧れだとか、興味を持って日本に来た人達は、生活文化も違うところがいっぱいあるわけではないですか。トラブル対応もたぶん仕事の1つだと思うんですけれども、特にASEANの人達からのお客様はどういうところで戸惑われることが多いのですか?」
神田氏
「ASEANから来る方の多くがムスリム・イスラム教徒でいらっしゃるので、そういう方達は、食事ですとか、そういったいろいろ制限が多少ありますので、そのあたりで…でも、来る方達よりも日本の受け入れる方達の方がむしろ戸惑っていらっしゃるような印象がちょっとします」
反町キャスター
「それはどういうことですか」
神田氏
「ムスリムの方達で、日本に旅行に来るような方達は、自分の意志で日本を旅行しようと決めた段階で、皆さん、だいたい日本のことを調べたりして、ムスリム対応などもそんなに完璧にはないということはわかったうえで、来ていらっしゃるような、寛容な気持ちで来ていらっしゃる方が多いんですね。もしかすると、ビジネスとか、会議とか、そういう目的で来る人達の方が、もう少し要求水準が高いような場合があるかもしれないですが、それで現在の日本の方達から、うちにとても問い合わせが多いですね、ムスリム対応をどうしたらいいのでしょうかと」
反町キャスター
「実際に、たとえば、旅館がイスラム教徒の人を迎え入れてトラブルが起きるにしても、迎え入れるということを聞いただけで日本の旅館側が、言葉が悪いですけれども、ビビるみたいな」
神田氏
「そうですね」
反町キャスター
「どんな人達が何しにくるのか。そんな感じになるのですか?」
神田氏
「そうですね。正直、それに近いような印象を持っている方もいらっしゃいます」

どう迎える ムスリム旅行者 問われる『日本のおもてなし』
島田キャスター
「ASEAN諸国にいる6億人のうちの40%がイスラム教徒だと言われています。食の問題があるんですよね」
神田氏
「皆さんよくご存知なのは豚肉がダメだということですよね。割と抜けてしまうのは、豚由来のものがいろいろありまして、そういったものもやはりダメです」
反町キャスター
「豚由来のものとはどういうものですか?」
神田氏
「わかりやすく言えば、それは豚由来と言うか、豚肉そのものなのかもしれないのですが、ハムやベーコン、ラード等。あとはゼラチンですとか、乳化剤も豚由来のものです。アルコールもいけないものとされているんですけれども、飲酒をする方は非常に少ないのですが、アルコールが入っているものに関しては個人差があるんですね。豚肉に関してはほとんどの方が食べないのですが、アルコールは個人個人で判断の基準が分かれる部分があります。アルコール成分が入った、たとえば、みりんや料理酒もダメだという方もいらっしゃれば、そこまでは気にしないという方もいらっしゃいます。ただ、日本に来ている方達は比較的穏健な方が多いので、日本に旅行に行きましょうという人々は、寛容な気持ちで来ている方達が多いです。私も一時はお醤油も気をつけてくださいとセミナーでお話をしていたこともあるのですが、実際にいらっしゃっている方を見ると、そこまで気にしている方はそんなにいらっしゃらないです」
反町キャスター
「間違えて食べちゃったら、どういうことになるのですか?」
イワン氏
「そうですね、知らなければ0Kです」
藻谷氏
「この話は、日本のアレルギーに話が似ているんです。世界で日中韓は、食に関するタブーがない非常に珍しいエリア。お互い喧嘩していますけれども、はっきり言って似たようなものです。他の国にある食のタブーがほとんどわからない。イギリスだと馬肉を食べちゃいけないとか、アメリカも個人によってベジタリアンの方などいろいろいますが、日中韓だけはいない。実は私は蕎麦の食べ過ぎでアレルギーになりまして、よく田舎に行くと蕎麦が出るじゃないですか。蕎麦を出さないでくださいと言うとあなたまた好き嫌いしてと白い目で見られるわけです。食べると異常が出るから食べられないのに、それを好き嫌いと考える。ムスリムの方が豚肉やアルコールを摂らないというのは、日本人の人からすると好き嫌いと感じてしまっているところがある。ここが一番まずいと思うんですよ。好き嫌い(の問題)ではなくて、その人の倫理の問題で、食い物に生き方があるということを理解できれば、自然に対応できると思うんです」
島田キャスター
「宗教的なことって馴染みがないので、どういうふうにしたらいいのか本当にわからないのですが」
神田氏
「とにかく知っていただくということですよね。イスラム教徒はこういう習慣や決まりがあると基本的なことを知っていただければ、たぶん対応の必要が出てきた時にもスムーズに対応できると思います。100%の対応ができないにしてもこの程度だったら自分達にもできるということを開示して、向こうの方に選んでいただくといいと思うんですね。よく皆さんがどの程度やればいいんでしょうとおっしゃるんですけど、それと同じぐらい皆さんがどの程度できるのかということを考えていただくのが大事だと思いますね」
島田キャスター
「ムスリムの方はお祈りを大切にしているのですが、体を清めるということは省くことはできないのですか?」
イワン氏
「私は、日本ではいつもカバンにペットボトルとか、布巾を持っているんですね。足までは洗面所でやるのですが、そのあとにペットボトルに水入れて、トイレの方で足を洗い布巾で拭きます。ここはムスリムの国ではないのでできれば迷惑はかけたくないですね」
島田キャスター
「国内の旅行産業の中には日本人の方がいいよ。外国の方はちょっとと思う人もいると思うのですが」
本保教授
「実際、中国の団体さんを嫌だと思っていらっしゃる業者の方がたくさんいると思うんです。中国人のお客さんが来ると、日本人との折り合いがあまりよくなく、馴染めずに、日本人のお客さんが逃げてしまうと心配されている方がいます。エクスペディアという世界的に大きな旅行会社があるのですが、そこが2008年に世界中のホテルの業者さんに良いお客さんと悪いお客さんというのを調査したことがあるのですが、ありがたいことに日本は3年連続で一番良いお客さん。一番悪いのが実は中国だったんです。一言で言えば、マナーが悪いというのが一番の問題だと思うのですが、ただ、私達日本人が昔から世界的に最高のお客さんだったかと言えば、これは思い出すところがあると思いますが、決してそうではなく、1960、1970年代に海外旅行に行き始めた頃には超一流ホテルで、ステテコ姿で歩いていた、あるいはサンダル姿で歩いてひんしゅくを買ったこともあったのですが、それがここ20年、30年でこんなに変わってしまった。同じように現在はたまたま中国の方が慣れていなくて評判が悪かったというのがありますけれども、変わっていくものだと信じています。これはお客様自身が変わるということもありますが、受け入れる側も努力をする。たとえば、よく問題になるのが、お風呂の入り方がわからないものだから、タオルを巻いてそのまま入ってしまう。でも、教えるとしなくなるんですよね。こういう努力を重ねていくことが非常に大事だと思っています」
神田氏
「私どもの方でも、日本各地でムスリムの方を受け入れるためのセミナーを開催しているんですけれども、これは地方自治体と共催することが多いのですが、随分多くの自治体から開催の希望がありまして、始めてから40回、日本各地で開催しています。非常に熱心な地方もありますし、またASEANの方に人気があるのが北海道の雪とか、冬への憧れがあるので、北海道はかなりはやくから取り組みをしていて、空港にも礼拝室がありますし、礼拝場を設けたアウトレット・ショッピングモールも千歳にあるなど、そういう取り組みをしています」
反町キャスター
「地方自治体をいろいろ見てまわって、ムスリムに限らず外国人観光客を受け入れる準備は、日本はどうですか?」
藻谷氏
「すごく地域差があります。北海道は本当にがんばっているところが多い。一般的には北海道と九州ががんばっている。九州は中国、台湾、韓国、東南アジアも近いですから、感覚的にも非常に国際化したところが多い。北海道はお客さんがいらっしゃるので、それに応じて差はあるのですが、まさに国内客が減っていますので、北海道ぐらいの規模だと逆に外国人客の多さが国内客の減少を補えるようなペースで、ある程度一対一に近い方向でいけるんですね。ところが、私はむしろ東京に近いところというのは、日本人頼みがまだ通用するので対応が遅いと思いますね。関西もそうではないでしょうか。同じ地方でも、本当に魅力がある地域だと思うんだけれど、四国の方、山陽、瀬戸内海の方はどれだけ外国から見て、魅力的な地域かを自分でよくわかっていないような気がします。山陰の方が取り組みは早いですね。東京はどちらからと言うと全体として遅いような気がする。デパートははやいのですが、飲食店はどうでしょうかね」
島田キャスター
「予算は足りているのですか?」
本保氏
「ここ数年ようやく国際級になったと言ってもいいと思います。追いついてきた。現在は観光庁にプロモーション予算が70億円あると思いますが、地方自治体が取り組んでいる予算を含めて見ると、完全に競争相手と互角に勝負できるリソースが投入できていると思うのですが、この10年の歩みであって、累積投資で言ったら、日本はまだまだ足りていない。一生懸命キャッチアップしようとしているのが現在の日本ではないかと思います」

本保芳明 首都大学東京都市環境学部教授の提言:『日本ブランド確立』
本保教授
「日本全体が現在大きなポテンシャルを持っていることは申し上げましたが、最初にも、たとえば、韓国に比べて遅れていると申し上げたところですが、それは総力戦ができていないということでありまして、韓国は総力戦でモノ、サービスを海外に売り込んでいくことで産業振興をはかり、同時にふさわしい価値。良いものであれば高いお金がとれるというブランド価値を得ていくために取り組んでいます。日本はこれまで実はモノ、サービス、食の3つ挙げていいと思いますが、バラバラでやってきたところがあります。昨年から安倍さんが力を入れまして、総理の主導の下に一体となって動くようになりましたが、一体となって日本のブランドというものが世界にきちんと浸透していけば、5億人と言いましたが、そこから3000万人のお客さんに来ていただき、それが日本のモノ、サービス、食の輸出につながり、同時に日本に対する評価、敬意というものが上がり、我々がそれを実感する時代がつくれるのではないかと思っています。従って、ブランドが大事だと」

藻谷浩介 日本総研調査部主席研究員の提言:『”おもてなし”をするのは私。』
藻谷氏
「『おもてなし』をするのは誰?私ですよと。外国のお客様をおもてなしするのは、日本人1人1人ですよね。沖縄が日本の人気の観光地だと。何で沖縄がこんなにいいのかと言うと、沖縄の人はとにかくよそから来た人をもてなそうという意識が強くて、誰かがふらふら歩いていると、ちょっと(道を)教えたり、連れて行ったりしたがると言われています。同じように日本人も世界の人から褒められたいという意識が本当は強いのだけど、言葉は通じないし。ところが、言葉は通じなくても一生懸命世話してくれたとなると逆に非常に感謝されやすいですよね。道に困っているんだけれども、言葉が通じなくても一生懸命連れていってあげようとして、結局失敗しても、ブログにはこんなに日本人は親切だと。1人1人が外国人に喜んでもらえば結果として経済効果もついてくる。もっと世界に知られる素晴らしい日本になる。もともと素材がすごいのだから、あとは1人1人の行動だと思います」

神田瑞穂 日本アセアンセンター観光交流部長代理の提言:『相手の文化を尊重する』
神田氏
「外国のお客様を迎えるのにとても大切になってくると思いますね。これは私が日頃仕事をしていてもできるだけ意識をするようにしていることですが、日本の方は異質の文化に触れた時に、どちらかと言うとそれを理解しようとしないで、受け入れるのが難しいような反応をされる方が多いように思うんですけれど、そうではなくて少しでも相手のことを理解しようという気持ちで歩んでいければ、たぶんそれが素晴らしいおもてなしにもつながっていくと思いますし、日本の紹介にもなっていくと思いますね。藻谷さんがおっしゃっていた『おもてなしをするのは私』にもつながるんですけれど、そういうふうに広がっていくといいなと思っています」

イワン・スティヤ・ブティ INJカルチャーセンター・インドネシア語主任講師の提言:『心の友』
イワン氏
「これまでインドネシアに行く人は、ビジネスとか、経済だけ考えて、よくINJでインドネシア語を勉強している人はインドネシアの文化が全くわからなくて行くんですね。仕事とか、経済だけではなく、相手の心も掴まないといけないと思うんですね。お金、お金だけではなくて、そういうこともしないといけないです。現在うちの娘は日本の小学校で給食とか、豚肉も入っているので、その時はいつもお弁当を持っていくんです。最初は友達は、何であなただけ違うのですかと。うちの子供も嫌がっているのですけれども、私も少しずつ教えて、それはあなただけのためではなくて、皆周りにも、世界は日本だけではないよとか、そういう理解もしてほしいですね。確かに食事は違うんですけれども、遊びは同じではないですか。勉強も同じではないですか。だから、違うところだけを見るのではなくて、気持ちのところも見た方がいいと思うんですね。心の友になりましょう」