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2014年4月16日(水)
続く政治とカネ問題 渡辺・猪瀬問題の本質

ゲスト

田中秀征
元衆議院議員
宗像紀夫
元東京地検特捜部長
伊藤惇夫
政治アナリスト

続く政治とカネの疑惑 みんなの党渡辺前代表8億円問題
島田キャスター
「渡辺前代表の8億円借り入れ問題で、いったい何があったのか、何が問題なのかを確認していきたいと思います。問題が発覚したのは先月のことだったのですが、そもそも何が起きたかというと、2010年、参議院選挙の前、6月に大手化粧品会社DHCの吉田会長から渡辺氏の個人口座に3億円が振り込まれました。これについては借用書もあって2億5000万円が何回かに分けて返済されたと。2010年になりますが、この年には衆議院選挙がありました。この衆議院選挙の前の11月には、今度は5億円が渡辺氏のまたもや個人口座に振り込まれました。2014年3月、吉田会長が週刊誌でこのことを告発し、渡辺氏も借り入れを認めるコメントを発表していますけれども、渡辺氏はあくまで個人的に借りたもので選挙資金ではないとしていて、法には抵触していないと主張しています。ですが、この時点で、まだ未返済が5億5000万円ありまして、この5億円については借用書もなかったのですが、今月7日に全額返済という形をとっています」
田中氏
「私は、渡辺さんに、個人的に大きな期待を持っていた人なので、大変ショックを受けているんですけれど、できることなら全て今回のことにきちんと対応をして、原点に戻ってがんばってもらいたいという気持ちがあるのですが、これまでの説明だと私も納得できない。残念ながらそういう状態にありますよね。実は、彼が自民党を飛び出したその日に、私に連絡して会いたいと言ってきたんですよ。それまで会ったことも話したこともなかったんですよね。おそらく行政改革を、官僚改革を、私もずっと関心を持ってきたので、その件があったからと思うんですけれど、たった1人で飛び出した時の本気度というのには感激しましたよ。それでうまくやってもらいたいと思ってきたのですけれどもね。今回、実は全てを率直に正直に全ての人を納得できるような形にしたら、もう1度立ち直れると私は思うんですけれど、ちょっと遅らせたとか、あるいはそんなことあるかというような説明をしているようだと全然その望みはなくなるので、ここは非常に大事なところで、こういう場所というのは、逆に政治家にとって立ち上がるチャンスでもあると思うので、うまく言い繕うという姿勢を一切とらないでもらいたいですよね」
島田キャスター
「渡辺前代表は選挙資金ではないんだと。政治家として生きていくためのもろもろの費用として使わせていただきましたと。政治家として生きていくためのもろもろの費用というのを解説していただきたいのですが」
伊藤氏
「政治家として生きていくためのということであれば、それは法的な部分は別として、選挙資金であり、政治活動資金」
島田キャスター
「いや、選挙資金ではないんですよ」
伊藤氏
「いや、ですけど、法律的には違いますけれども、最終的にそこに行きつくとしか考えられないですよね。政治家として生きていく。一個人ならば別ですけれども、熊手がすぐに出てくるわけですけれども、熊手を買うだけではそんなにお金は必要ないわけですから。ただ、ある部分、同情すべき点があると思うんですよ。と言うのは、みんなの党というのは渡辺さんの個人商店という言い方をしていますけれど、創業型政党という言い方をするのですが、創業者が1人で立ち上げた政党。結果的に党の運営から、資金集めから何からほとんど渡辺さん1人の肩にかかっていたという意味では、お金の問題も含めて、頭を悩ませていたんだろうな。その延長線上の話だろうとは思いますね」
反町キャスター
「お金の使い方でいうと、たとえば、これまでいろいろと言われているのは、選挙に出る時の供託金とか、ないしはみんなの党の場合には、候補者を落下傘で落っことしているところなんかもあったりして、そうすると、地元の選挙地盤における市議とか、県議とかいうのが、みんなの党系列ではない場合にいわゆる地元の工作費、これも必要だったろうと。新人が全部用意できたのかと。そうすると、供託金とか、地元工作費とか、そういったものに必要だったのではないかという。それがもろもろの費用のうちに入っているのかどうかというふうに想像されるのですが」
伊藤氏
「当初みんなの党は候補者からお金を取っていたんですね。最初の頃の選挙の時には。自分でお金が賄えない人は公認しませんとか。それがどこで変質したのかちょっとわからないんですけれども。ちなみに、これは守秘義務の範囲なんですけれども、過去の政党側から見たお金の使い方という部分でいうと、一番多いのは、1つは供託金、もう1つは公認料、それから、もう1つは宣伝広告費です。新聞、テレビ等の広告費というのは、最近の選挙だとどんどん費用がかかるようなっていて、それこそテレビCMをやらなければいいんですけれどもね。新聞広告をやらなければいいですけれども、そうもいかないということになってくると、そういう費用がどんどん膨らんでいく。みんなの党のような小さな政党でもおそらく大きな政党の縮尺版としてそういうお金が必要だったんだろうなという感じはします」
反町キャスター
「でも、広告費とか、そういうことならば、いわゆる政治資金の報告にきちんと載っけるべき話ですよね」
伊藤氏
「おそらく出費の部分は、政党として載っけているのではないですか。どこから入ってきたのかの部分がちょっと問題だったと」

東京地検は動くか
島田キャスター
「借りたんだと言って、借用書もないで、こんな大きな金額で、法的に通用する話なのですか?」
宗像氏
「渡辺さんの場合は、口座から口座にお金が振り込まれている。支出もそこから口座にいくという流れですから、だから、借用書があってもなくても、金の動きはわかりますのでね。だから、猪瀬さんの時とはちょっと違いますので、だから、それは借りた、あるいは貰った、両方とれるような意味ですけれども、基本的には借りたと見ていいのではないかという気がしますけれどもね」
反町キャスター
「借りたということであると特捜部から見た時の、その色の濃さというのは薄くなってくるんですか」
宗像氏
「全然違います。それはあとで出てくるでしょうから」
島田キャスター
「渡辺さんはこんなことも言っています、今回の騒動の本質は、みんなの党から分かれた江田憲司氏の結いの党が仕かけた権力抗争ですと。こんなようなことを言っているんですけれども、こういう可能性というのは、こんなことはあるのですか?」
田中氏
「江田さんと私は親しいですから。ただ、権力抗争と見ると客観的にはそういうものはずっとあったのかもしれない。だけど、謀略なんてする男ではないですから、彼は。私は時々注意していたんだけれど、表に向かって、批判とか、悪口言い過ぎるということを言っていたの。言うなと。お互いに。お互いがそうだから」
反町キャスター
「みんなの党の中で、喜美さんは江田さんに対しては、要するに、党の会議に出てきて黙っている、あるいは党の会議にも出てこない。外に行って文句ばかり言っていると江田さんに対する批判をずっと言われていましたよね」
田中氏
「だから、彼に一方的に言うことではないことだと。これは昔、武村正義さんと新党さきがけをやった時に、ひと言も私は周りに家族にさえ武村さんを悪く言わなかったですよ。いいと思っていたのかといったら、そうではないんだ。不満もあったし。だけど、それを言っちゃおしまいよと。武村さんもそうだった。だから、2人は本当に仲が良かったかと言ったら、仲良かったけれど、不満を口にしてはダメだよ、外に向かって。そのことがあるから、そういうことはずっと心配だった。権力抗争と言われたって仕方がない」
反町キャスター
「江田さんは、田中さんが注意するほど、渡辺さんへの不平不満を平場で言っていたわけではないですか。それが、要するに、渡辺さんの江田さんに対する、俺をはめたのかという気持ちにつながっていると思うのですが、その可能性がないと感じているのですか?」
田中氏
「だから、彼は悪口を言っているという気持ちはないでしょう、おそらく本人は。だけど、悪口に聞こえるようなことは言うなということですね。一方、いろんなものを見ていると喜美さんもそれなりに言っているわけ」
島田キャスター
「憶測というか、今回DHCの吉田会長という方がいて、お金を貸した。吉田会長が他の人、たとえば、政治家の方々にお金を渡していることもあるのですか?」
伊藤氏
「ですから、それこそ宗像さんの範囲だと思うんですけれども、特捜がそういう部分まで調べているのかどうかということだと思うんですね。ただ、この謀略説のことで、ちょっと言うとなぜ吉田会長が喋ったのかという部分ですが、私が聞いている範囲で言うと、週刊誌の記者がどうも吉田さんと渡辺さんは仲が良かったのに、決別をしたらしいと。何か2人の間でトラブルが起きているらしいという噂が結構広まっていて、それに対して、吉田会長に取材申し込みを何度もしていた。手紙を書き、その手紙を受け取った吉田さんがこの記者になら話をしてもいいということで話したのが発端だという話を聞いていますから、それは別に江田さんがその話をさせたとかということではないような気がします」

猪瀬前都知事との違い
島田キャスター
「今回の問題は、猪瀬前東京都知事の5000万円の借り入れ問題と構図がよく似ているという指摘もあります。金額については、猪瀬前知事は5000万円でしたね。渡辺前代表は8億円でかなり違いますね。利子は、猪瀬さんはなくて、渡辺さんは年0.5%、これは3億円について。お金の所在などで奥さんというワードが出てきて似ているところもあるんですけれど、渡辺喜美前代表が最もご自身で主張していたのが、全然違うところが授受の方法だと。自分の場合は口座への振り込みがきちんとあったんだ。しかし、猪瀬前知事の場合は現金の手渡しだと。こういったところから全然違うと言っているのですが、これは重要なポイントなんですね」
宗像氏
「大きなポイントです。現ナマで金のやり取りをしたというのは消えちゃいますからね。両方とも渡していない、貰っていないと言えば、立証はなかなかできないですよね。ところが、口座へ振り込みはそれだけでわかりますから、だから、借用書があるなしよりもはっきりしているんですよ。貸してくれ、口座へ振り込むと。ですから、そういう意味では違いますし、一番の違いは、猪瀬さんは自分の迫った選挙に使うお金がほしい。渡辺さんは言ってみれば、みんなの党を支える代表としてお金がほしいと。しかも、それは個人として貯めておきたいと。そこから政党に貸しつける。実際に、何個か貸しつけている流れもありますので。だから、似て非なるものなんですよ。表面的に見ると、非常に似ているから、各コメントをする人は同じだと言うけれど、全然違うんですよ。全く法律的に犯罪が成立するか、しないかというと、猪瀬さんの場合は職務権限絡みの贈収賄も含めて成立する可能性というのがある形。しかも、金に秘匿性がある。隠れている。自分でカバンを持って行って、現ナマで受け取って、持ってくるわけ。秘書も立ち会わせてないわけですよ。非常に犯罪性が強い形。渡辺さんの場合はどちらかと言えば、あっけらかんとしていますね、表から表へいって金の流れは全部わかっていますから。そういう意味では、特捜部から見たら、しかも、お金の流れが全部あってどこかに何億が隠れちゃっているということがないものだから、あまり興味を持たないです」
伊藤氏
「猪瀬さんの問題で、略式起訴、罰金50万円でいいのかなというのが、宗像さんがおっしゃったように犯罪性というか、そういうものがうかがわれる案件にもかかわらず、どうして特捜はこの程度で矛を収めてしまったのか。かつて金丸信さんの事件があって、略式起訴で、罰金でという時に非常に世論が激高しています」
宗像氏
「ペンキ事件がありました」
伊藤氏
「それに対して答えるという形で今度は脱税をやったというケースがあるのですが、今回の場合はそういう世論もあまり盛り上がらなかったということもあるんでしょうが、ここで止まっちゃったのかな。たとえば、徳田マネーというのは、我々政治の世界にいる人間は、前から聞いている名前ですね。果たして猪瀬さんのところだけに行ったのか。それ以外の広がりがなかったのか、あったのか。それと、宗像さんがお触れになったように、たとえば、東電病院の問題が果たして職務権限との絡みの中で何らかの影響を与えたのかどうか。そのへんまで特捜が調べないで、さっさと幕引きしちゃったなという印象が非常に強いんですよ」
宗像氏
「それは違うと思います。おそらく特捜は贈収賄事件が成立するかどうかというのをきっちり調べたと思うんですよ。おそらくお金を出す側には猪瀬さんに知事になってもらって、それで東電病院を売却して、自分のところが受け取る時に、いろいろ許認可もありますし、補助金もありますし、いろんな問題があるから、世話になりたいという気はあったと思うんですね。だけれども、贈収賄の流れの立証をひと言、ふた言、言っただけではダメですから。いろいろな請託があったとか、何かを立証しないといかんですから、なかなか立証できない。そうすると、残りは何なのかというと政治資金規制法違反と公職選挙法違反しかない。政治資金規正法も団体とか、何かではありませんし、この選挙しかないんですよね。本人は個人的に借りて、個人的に保管し、個人的に返したんだと言っているわけですから。本来、犯罪が成立しないんですよね」
伊藤氏
「でも、もっと踏み込んで、たとえば、この捜査の過程で徳田マネーというものが、それ以外の部分にも拡散していたかどうかということは特捜が把握されている?」
宗像氏
「それは全部調べているはずですよ」
伊藤氏
「ですよね」
宗像氏
「それが今後、役に立つかどうかは別にして。ですから、現在猪瀬さんの件は、最後までなかなか認めなかったですよね、あの人は。最後まで認めないと公判請求するんですよ。要するに略式で済まない。略式は簡単な手続きで、罰金でいいですよと承諾書を出すんです。そういうふうなことができないと、公判請求。公判請求した方がいいのは、全部証拠が法廷で出て、公開ですから、要するに、徳田さん側が何を言っていただとか、全部わかるわけですね。猪瀬氏がどういう弁解をしていたか。だけれど、略式、罰金ですから、書面審査だけですから、50万円を払って終わりと。この結果は本人が認めて、最終段階でOKをしたという結果ですね」
反町キャスター
「それは検察の方から見ると、知事も辞職したし、本人もそれなりの、社会的な制裁も受けているというのが大きなポイントになりますか?」
宗像氏
「知事が辞職し、その前に全額返して最終的に認めている。それでごめんなさいと頭を下げたということでいうと、懲役にするような話ではないんですね。しかも、選挙に全く使っていないわけですよ。これは本来、選挙違反というのが、選挙の公正を害する、そこへお金を使っていなければいけないんだけれども、全く使っていないんですよ。選挙のお金ともいえるかも難しいぐらいの事案です。本人が最終的に認めたから処罰しましたが、ある意味で認めて罰金というバーゲンみたいなものではないと思うけれども」
反町キャスター
「でも、バーゲンに見えますよ。どう見ても。そこまで言うんだったら、このへんで手打ちしてやろうかというふうに検察が言ったかどうか、僕は知りませんが」
宗像氏
「だから、情状酌量ですよ」
反町キャスター
「なるほど。それは情状酌量という意味において、その部分はあり得るべしと。でも、そこで打ち止めしてしまうと、まさに先ほど、伊藤さんが言われたみたいに徳田マネーの行先の部分というのは、これは見えなくなるでしょう。それはそこも検察は、これは目をつぶっておこう、これは止めておこうと。データだけは取っておこうと。こういう判断になったということですか?」
宗像氏
「特捜は、1つの事件をやると、問題になっている人達以外の政治家も含め、証拠収集をしていますから、いずれ次の時に役に立つと」
島田キャスター
「いずれ」
宗像氏
「うん」

政治資金規正法の抜け道
島田キャスター
「どうとでもできるというか、借金だったと言えばいいし、借金を記載し忘れていても、ごめんとあとから記載すればいいわけで、ザルですよね?」
田中氏
「資産公開法そのものがそんなに必要なものかと思っているんです、最近。そういうものを公開されるのは嫌だから出ないという優秀な人間がいますよ、そこまでさらし者になってもいいのか。それは1つの形式だと思うのできちんとした日常生活をしている人はそんな悪いことはしていないし、そういうものをさらけ出すのも嫌だから、結局何をさらけ出してもなりたいという人しか出てこなくなっちゃう。この法律の時から、首を傾げているんですよ。猛反対をする気はないけれど、そういうマイナス面もあるということ」
反町キャスター
「逆に言うと、透明性を高めることが政治政界に対する、いわゆるいい人材を引きずり込むことの障害になっている?」
田中氏
「ということもたまにはあるということです」
反町キャスター
「政治資金規正法の抜け道については限界とかありますか?」
田中氏
「抜け道はこれからもあるでしょう。ギリシャ、ローマの昔から必ずそういう流れになっていると思うんですけども、昔僕らの若い頃の裏金というのは、うなりを立てて右から左に移っていった。その中に渡辺さんのお父さんはいたわけです。お父さん(渡辺美智雄元副総理)は有力なプレーヤーだったから。そういう感覚がどこか抜けないんだよね。だから、悪意がないんです、今回のことでも。やり方が間違っていた、悪意があったとは私は思えない」
反町キャスター
「渡辺さんは正直に話している?」
田中氏
「そうかもしれないですね」
島田キャスター
「だったら、政党にお金を入れてくださいとお願いをしないんですか?」
田中氏
「それは自分の判断で使えるようにというのがあったんでしょう。政治は難しくて、たとえば、田中角栄さんの場合うんと良いことをした、うんと悪い大きなことをした。差し引き良いことの方が多かったということで人気が現在でも残っている。だから、そういうことは別問題として、政治資金について徹底的に正しい、徹底的に清潔だけれど何もしなかったというのとどちらが良いのかということにもなってくるので、このへんは兼ね合いの問題ということもあるんです。だから、悪いことをしてもいいと言うのではないんだけれども、それこそ本人の政治的道義的な判断の問題、節度の問題になってくると、私は思うんです。簡単に言いますと、清潔でも何もしない人なんて出てきてもらいたくないという感じです」
反町キャスター
「取り締まる側としてはいかがですか?」
宗像氏
「政界で生きて行く人は身綺麗にしないといけないと思うんですよ。ですから、裏金とか、そういうものが飛び交うような状況は利権と結びつきますからね。利権と結びつくところを断ち切るということで政治資金規制法も皆透明性を持った形にしようというのが政治資金規制法のもともとの精神なんですよ。途中からいろいろ変わってきて、いろいろな変なお金が入らないようにしようと。たとえば、外国人の寄付を止めようとか、変わってきているわけです。それにしても政治をやる者が政治の舞台で政策を決めたりする中で、業界なり個々の業者と結びついて利権が発生してお金のやり取りがあるのはいかんと思いますね。普通、企業は見返りを求めないでお金を出すということはないんですよ。見返りを求めないで出すと特別背任ですよ。だから、皆だいたい何かを期待して出す」
田中氏
「私は宗像さんが言うことに全面的に賛成なんですよ。自浄力の問題だから」
伊藤氏
「昔フィリピンに、マルコスさんの時代からアキノさんに変わった時に行ったのですが、向こうの人に話を聞くとマルコスさんは悪党だったと。だけれど、お金を引っ張ってきて、その一部を国民にも分け与えた。アキノさんは善人である。しかし、外国から全然お金を持ってこないから、国民に何もおりてこないという話を聞いて、先ほどの田中さんの話を思い出して、どちらが良いのか判断がつかないんです。現在の政治資金規制法なり公職選挙法なりというのは、国会議員の皆さんが改正をするんですよね。だから、大きなスキャンダルがある度に変える、少しずつでも穴を埋めていこうということで。だけど、結局、相撲取りが自分で土俵の形を変えるという話ですから、必ず徳俵が残るんですよ。徳俵というのはイコール抜け道であり、結果的に常にいたちごっこになっている。一番大きい大改正というのはリクルート事件のあとで選挙制度とセットになった大改正だったと思うのですが、あの時はとにかく入り口を締めようというのが中心でいろいろやりました。入り口を締めようとすると何が起きるかというと、一斉にパーティーが始まるわけです。パーティー収入に移行する。もう1つは政党支部という名の議員個人の財布をつくるわけです。そういう形でどんどん抜け道ができてくるのでこれを全面的に遮断する方法というのは難しい気がします」

問題の本質&改革の必要性
反町キャスター
「資金が狭まることによって、政治家そのものの思考が小さくなっていくということを感じますか?」
伊藤氏
「お金の部分だけではなくて、選挙制度の問題と密接に関連してきていると思うんですね。現在の制度というのは、基本的に政党中心というのを非常に全面に打ち出している制度ですから、本来の理想像は、イギリス型の労働党と保守党と、政党が非常に強い政治形態を目指していたのですが、現在の日本の形態というのは、制度も含めて中途半端なんです。だから、どちらかと言うと目指している方向と現実の間に非常に乖離があって、その間で政治家の皆さんも混乱状態をずっと続けているような気がするんです」
島田キャスター
「それのゴールは見えているのですか?」
伊藤氏
「見えないでしょうね」
反町キャスター
「この時点で選挙制度をいじってもう1回戻そうかという議論については?」
伊藤氏
「その議論は表面化しないと思いますね。現在の制度の中で自民党は圧倒的に勝っているわけですから、その自民党が自ら自分の首を絞めるような制度改革に踏み出すとはとても思えないので、一部でそういう声があがっていることは事実ですけれど、具体的に選挙制度の抜本改革へ動き出すというのは、百年河清を俟つみたいな話」

政党交付金 現状とあり方
島田キャスター
「政党交付金がありますが、足りないのですか?」
伊藤氏
「たとえば、民主党の場合、政党交付金をずっと選挙用のために積み立てていて一時、一番大きい時は170億円、180億円を溜め込んでいた」
島田キャスター
「使い切らなくてもいいのですか?」
伊藤氏
「使い切らなくてもいいんです。そもそも政党交付金制度を発案したのはかつての細川政権の官房長官をされていた武村さんらが中心だったのですが、三分割法だった。スタート時は実はこの倍ぐらいを想定していたんです。個人で3分の1集める、政党が3分の1を集めます。残りの3分の1を税金で賄いましょう。当時の国会議員の地方と中央の政治資金を積算してみると2000億円ぐらいあったんです。3分の1ということは600億円だろうという発想からその金額が出ていたわけですが、途中でいくらなんでも多すぎる、国民の理解が得られないということで半分に値切った。現在でも私は覚えているのですが、国民1人当たり1年間250円の積算根拠は何だと聞かれた時にどう答えようかという議論があって、誰かが発案したのは、国民1人当たり年間コーヒー1杯分のご負担をというのでどうだろうかという発想だったので、実は金額的な部分は曖昧であやふやなんですよね」
田中氏
「現実問題として、財政が健全化するまで交付金をやめるということができればそれがいい。だけど、妥協的に言ったら現在の額の3分の1にして、一方で、企業献金はやめる。それはある意味で、入りの問題なんですよ。入りと出の問題。出の規制を厳しくやればいいんです。総経費を全部申告させて、大物も大物でない人もきちんとした規制をする」

田中秀征 元衆議院議員の提言:『節度』
田中氏
「何でも節度の問題だと思っているので、特に長く政治の世界にいて、自分で心がけてきたことは、自分の発言と行動を縛るようなお金はいただかないと。これに徹してきました。これは自分の問題であって政治資金規制法とは関係ないんですよ。自分の行動、発言を制約するようなことはしてはいけない。だから、自分からお金を寄付してもらいに行ったり、あるいは借りるために行ったり、頭を下げたりしたことは一度もないですよ。どういう制度であっても政治家としてこういう心構えで参加すればいい、そうでなかったらどんな制度をつくってもダメだと言いたいんですよ。必ず抜け道を探すから。だから、ある意味で人材をつくっていくという意味でもあります。フリーハンドというものがなくなったら、政治家は終わりだと思っています」

宗像紀夫 元東京地検特捜部長の提言:『利権に染まらない政治を』
宗像氏
「政治家は1つの業界、あるいは1つの企業のそういうところの利益を代弁して動いてはいけない。そういう利権を代弁するというようなことがあるから、いろんな政治とお金の問題が起きている。過去のスキャンダルは皆そういう流れですので、これを断ち切るということが政治と金をきちんと制約する要素になるだろうということで、政治家というのは国民全体の代表者です、1つの地域、あるいは業種。そういうものの代表ではありません」

政治アナリスト 伊藤惇夫氏の提言:『出と入りの徹底した透明性』
伊藤氏
「入りの方はだんだん締めてきているのですが、出の方が結構緩いんです。昔、非常にクリーンな政治家がいて、自分がいかにクリーンかということを有権者にわかってもらうためにいかにお金がかかるかと言った人がいるんです。要するに、一定程度のお金がどうしてもかかるんですね。人気を高めたり、いろんな意味でも。ですから、一定程度のお金がかかるのは仕方がないと思う。問題はどこからどれだけ入ってきてどれだけ何に使ったかを徹底的に透明化するという方向で少しでも前進すれば多少なりとも状況は改善されるのかなという気がします。第三者機関みたいなものと、政治家の皆さんである程度詰めていく作業が必要なのかもしれないと思っています」