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2014年4月14日(月)
株安連鎖は止まるのか ウクライナ情勢と経済

ゲスト

榊原英資
青山学院大学教授
浜矩子
同志社大学大学院教授
田中理
第一生命経済研究所主席エコノミスト

G20ウクライナ問題 各国協調の背景
島田キャスター
「ウクライナ情勢についてG20共同声明では『経済状況を注視し、経済、金融の安定へのリスクに留意、IMFの支援を歓迎する』。政治的には対立していたのですが、ウクライナへの経済的支援については、ロシアも含めて一致したということです。政治的な対立と経済的な各国の立場には温度差があると見ていいということですか?」
浜教授
「温度差がありますよというメッセージを呼んでほしいという感じだと思いますが、どこまでこの言い方に本気で、この言い方を本気で守っていくことができるかというところがポイントだと思います。とりあえず、この言い方で何となくお茶を濁したというか、逃げ切ったという感じだと思いますけれども、現実に事態が先鋭化していった時に、この自分達のメッセージを忘れずに、平和裏にウクライナの住民達が悲惨にならないように、ここを回避していくと、その決意を示し続けるか、一致団結できるかがポイントだと」
島田キャスター
「ウクライナの経済的な状況ですが、GDPは、2013年で1810億ドル、これは世界のおよそ0.4%。ちなみに日本のGDPがおよそ5兆ドルということで、かなり小さいです。対外債務はGDPのおよそ8割の1400億ドルですが、外国債権者への支払いに必要な外貨準備高が150億ドルで、底を尽きかけているということですね。そこでIMFに、日米欧が2年で総額270億ドル規模の支援方針を表明しました。かなり小さい経済の国なのですが、こういった国にG20の各国がこぞって一致して支援を表明するという背景には、資源の問題があるということですか?」
田中氏
「そうですね。経済的な規模を考えますと、直接的な被害、貿易取引ですとか、金融取引での直接的な被害というところはウクライナ経済が低迷してもさほど世界経済には影響を与えない。ただ、ウクライナにはロシアから欧州に向けてのガスパイプラインが通っているというところで、地政学的なリスクというものが意識され、G20でも大きく取り扱われたということだと思います」

ロシア産天然ガス&欧州経済
島田キャスター
「天然ガスの輸入元の割合ですが」
田中氏
「欧州全体で見ますと、天然ガスの輸入のうちロシアからの占める割合が3割を超えているということでかなりロシア依存度が高いです。ウクライナも100%ロシアに依存していますし、他にもフィンランドなども高いです、ほぼ100%。ギリシャもかなり高い90%近く依存しています。主要国の中ではドイツが3割を超えている。相当依存度が高いと。これは天然ガスですけれども、天然ガスだけではありません。たとえば、原油、欧州全体で見ますとロシアからの輸入依存度は4割ぐらい。あるいは原子力発電も燃料となるウランなどは一部ロシアから輸入しているということで、欧州は基本的には、エネルギーをロシアに依存をしているということです」
反町キャスター
「別にウクライナで天然ガスや原油が採れるわけではないですよね。要するに、ただ単にパイプが通っているという、それだけですね。その国の経済状況を懸念して、これだけウクライナの政治情勢に対し各国がよってたかってロシアにやるなと圧力をかける。IMFに270億ドルという規模の支援をつくるというのは、これはウクライナの不安定化がパイプラインそのものに対する安全保障を毀損する。そこを皆さん懸念したということになるのですか。別にウクライナの経済が破綻したからといって、そこを通っているパイプラインが破綻するわけではないですよね」
田中氏
「ロシアからウクライナを経由して欧州に向かって天然ガスのパイプラインが通っていると。軍事的な緊張が高まってくればそういったパイプラインに損害が起きることも、もしかしたらあるとかんがえなければならないというのが1つ。あとは現在ロシアがウクライナに対する経済的な圧力を強めていますが、その中でウクライナ向けの天然ガスの輸出を停止するとか、そういう話も一部では出てきています。ウクライナの天然ガスの輸出なわけですが、ただ、欧州向けの天然ガスもウクライナを経由していますので、別に、ウクライナ向けと欧州向けに色がついているわけではありません。過去何度もウクライナはロシアに支払いをしなかった、料金滞納のたびにガス供給が停止されます。何度もありますが、その際に欧州向けのガスを一部拝借してしまったということが(ある)」
反町キャスター
「それは盗んだということですか」
田中氏
「そうです。抜き取り行為」
反町キャスター
「そういうことを含めて、ガス供給事情が極めて劣化する可能性があるということを皆懸念しているということでよろしいのですか?」
田中氏
「はい」
島田キャスター
「プーチン大統領がつい先日ですが『代金を滞納しているウクライナが、今後支払い条件を守らなければ供給停止も辞さない』と言っているんですよね。現在も、結構ガス代金未払いが多いんです、22億ドル」
田中氏
「財政状況は厳しいので基本的には支払いは滞っている状態ということです」
島田キャスター
「いつ、止められてもおかしくないという状況なのですか?」
田中氏
「その通りだと思います」
榊原教授
「要するに2月に親欧米政権が成立したでしょう。それに対してロシアは相当懸念していますよね。そういうことで、実は欧米政権を支援しようというようなことで、欧米が現在ウクライナ政権を支援しているという部分はありますよね」
反町キャスター
「ロシアにしてみたらもともとソビエト連邦の一部ですから、それなりにインフラや何やら面倒を見ていたのに、現在親欧米になるということについて、何だというところも含めて、ガス代の取り立ても厳しくなるし、圧力もかけるという状況だと」
榊原教授
「そういう状況だと思いますね。ウクライナというのは旧ソ連邦の中で最も大きなところですよね、ロシア以外では。それが欧米にすっといっちゃうというのはロシアにとっては耐えがたい部分はありますよね」

東部混乱の行方&追加制裁
島田キャスター
「ウクライナ東部で起きている分離独立の動きが世界経済にどのようなリスクになるのか。一部のロシア派住民が暴徒化しているのは、ハリコフ、ルガンスク、ドネツクといったウクライナ東部の都市です。ウクライナのGDPの3割を占める工業は、実はこの東部に集中していて、ロシア向けの軍需産業も盛んで、重要な地域というふうになっているのですが、先日ドネツクで衝突がありました。ウクライナ暫定政権のアバコフ内相らによると複数の死傷者も出ている状況になっているのですが、この3都市では住民投票を求めるデモも発生しているようです。クリミア編入と同じ事態になる可能性は?」
田中氏
「一部政府機関閉鎖などをしていて、死傷者も出るといった形で、緊迫した事態が続いているわけですが、ウクライナとロシアとの国境の間には4万人ぐらいロシア軍が控えているという話もあります。親ロシア派住民の保護という目的でロシア軍が介入してくるといった口実に使われる可能性はあるわけですね」
反町キャスター
「たとえば、現在ウクライナの暫定政府は親ロシア系住民の独立運動があまりにも過激になった場合には治安部隊を派遣するという、派遣しているではないですか、実際に。たとえば、武力衝突で実際に2名、3名の死亡者が出ていると。そういうことをやった時には、いわゆるクリミアであったことと同じようにプーチン大統領がロシア系住民の保護を名目にした武力介入をするのではないかという懸念が続いているのですか」
田中氏
「それがまさにプーチンの狙いなわけですね。軍事的な牽制をすることによって、ウクライナの政権に揺さぶりをかけているということだと思います」
反町キャスター
「対ロシア制裁は、アメリカ、EUから資産凍結と渡航禁止といっても、プーチン大統領やラブロフ外務大臣は交渉相手になるから来ていいよという意味だと思うのですが、その側近など11人とか、ロシア軍、議会関係者ら21人の資産凍結と渡航禁止が出た。日本からのビザ発給緩和に関する協議などの停止は、これも協議がまだ始まったばかりでこれからやるようなところを停止しても痛くもなんともないという話だと思うのですが、この制裁は現在ロシアに効いているのですか?」
田中氏
「直接的な形で効くというものではないですね。ほとんど個人向けの制裁ですし、一部銀行というのはありますが、ただ、こういった経済制裁を強化させるであろうという観測が金融市場の動揺という形でロシアの株価、あるいはロシアの通貨といったものに、下落圧力がかかっているという形で間接的な形ではロシア経済に打撃になってきている」
反町キャスター
「こういう制裁の効果は上がっていないと思うのですが、ロシアの株価とか、将来性に対する不安感をもたらしているという制裁の進め方をどう見ていますか?」
榊原教授
「制裁の効果があると思ってやっていないのではないですか」
反町キャスター
「やる方も」
榊原教授
「やる方も。とりあえず何かをやらなければならないというのでやっている」
浜教授
「そうですね。おっしゃるような面があることは、ある意味期待されるというか、本気でやっているとなる。また、東西冷戦復活ということでおそろしいことになるので、それぐらいの感じならまあまあかなと思いますが、ただし、この資産凍結というのは当面どのくらいの影響があるかもさりながら、国と国の間で戦争を始める時はお互いにお互いの資産を凍結するというところがスターティングポイントなので、そういう意味で、そういうシグナルが出るということを警戒すべき、我々として。そこにはちゃんと注目すべきかなと思います。そもそもこういう大人げないことをお互いにグローバル時代にやりあうというところから卒業してもらいたいですね。このクリミアを巡る状況にせよ、クリミアの中の問題にせよ、現在の問題にせよ、これはロシアを含めて、皆で何とか状況がうまく収まるように、ウクライナの市民達にも働きかけ、その安全を確保するということで、穏当に収まっていくように知恵を出し合うというのが、グローバル時代の政治政策責任者達の役割だと思うんですよね。そこに進んで来られていなくて古典的な喧嘩をやっているなというところに情けなさを感じると。情けなさだけで済めばいいですけれども、非常に危機感を持つところですね」
榊原教授
「G20ではウクライナ支援に合意をしたわけですが、ウクライナ支援はロシアも反対ではないですね。ですから、そういう意味で経済的にウクライナを助けようということで一応一致しているという部分はあるわけです」

5月大統領戦後のリスク
島田キャスター
「5月25日に大統領選があります。結果の見通しと、それがウクライナの国内の政治ではらむリスクみたいなものはあるのですか?」
田中氏
「ウクライナは過去にも大統領選のたびに親欧州派と親ロシア派が交替してきて、かなり支持は拮抗しているわけですね。ただ、今回クリミアにロシアが事実上編入されたということで、ある意味、親ロシア派の大票田を失ったわけです。従って、親欧州派が勝利することは確実だ。それに対してロシアというのはロシア離れ、欧州に近づいていくということに対しての警戒感があるわけですね。従って、この大統領選に向けては、おそらく大統領選をある意味妨害するような形で軍事的牽制ですとか、先ほどの天然ガスような形で経済的な圧力といったものによって現政権、親欧州派の政権に対する揺さぶりといったものをかけると」
島田キャスター
「大統領選を妨害するのですか?」
田中氏
「現在のロシアの論理によると、ウクライナの暫定政権というのは、クーデターによって誕生した政権だ。正当性を持っていないと。ところが、大統領選をやってしまうと正当性を持つ政権ができあがるわけですね。そうすると、ロシアとしては影響力を行使するのが難しくなっていく。どういう形で影響力を行使できるのか。たとえば、地方自治拡大など連邦制のような形で、ロシア寄りの人々が多い、東、あるいは南の州へのロシアの影響力を通じて、ウクライナの政権自体にも間接的に影響を及ぼしていくことによって、ロシア離れをとどめようと」
反町キャスター
「それは連邦制の選択肢になっているわけですね」
田中氏
「はい」

米国の量的緩和縮小
島田キャスター
「世界経済について2014年は成長が強まる見通しです。リスクや脆弱性に対し警戒を続けます。金融政策については、政策調整時は世界経済への影響に留意すること。またIMF改革については、出資比率見直しの進捗の遅れに深く失望している。こういった声明が出されました。アメリカの量的緩和の縮小を念頭にこのような文言が入ったと言われています、アメリカの緩和縮小によってどんな影響が出るのか、出ているのか」
榊原教授
「緩和縮小は既に大きな影響を受けているわけですね。要するに、2009年から3次に渡って金融緩和をやってきたわけですね。それを180度転換ですよね。と言うことは、要するに世界中で流れていた、お金がむしろ逆流するということですね。ですから、今や新興市場国からお金が出ているわけですね。中国とか、インドとか、そういうところからお金が出ているということでドルに戻っているということですから、そのテーパリングと言われていますけれども、テーパリングも非常に大きなインパクトを、現在世界経済にもたらしていて、むしろG20では、コミュニケは一致していますが、おそらく新興市場国は相当文句を言っているはずですよ。アメリカのテーパリングで、悪影響を受けているというようなことを言っていますから。イエレンさんは、あまり世界経済には配慮しないみたいなことを事実上言っているんですけれどもね」
反町キャスター
「金融緩和の速度を落とすみたいな説明をしていますよね」
榊原教授
「ただ、イエレンさんは来年の春には金利を上げるみたいなことを言っているんですね、事実上。と言うことは、金融緩和ではなくて、金融を引き締めるということを示唆しているわけですからね。これは相当なインパクトを持ちますよね」
反町キャスター
「実際に、新興国においてはどういうことが起きているのですか?」
榊原教授
「お金が余っていた時にはずっとお金が入っているわけです。それが出ているから、たとえば、インドは今度総裁になったラングラゼンさんというのがいますけれども、ともかく金利を上げて、できるだけ為替レートが下がるのを抑えようということを懸命にやっているわけですね。どうしても新興市場国は金利を上げざるを得ないです。そういう影響が起きちゃっているわけですよね。あるいは新興市場国の為替レートが暴落する可能性が出てきているということですから、これは相当な問題です。実際インドのRBIの総裁はアメリカを表だって非難していますよ。彼はもともとアメリカが非常に長かったのですが、シカゴ大学の教授をしていた人ですけれどもね。アメリカの金融政策が相当悪影響をもたらしているというようなことを言っていますから。世界的なインパクトは大きいです」
反町キャスター
「景気過熱とか、そういう意味においてインフレがあって、それで金利を上げて抑えるのと違う形が金利上昇ですよね」
榊原教授
「要するに、為替が暴落するのを防ぐため、あるいは資金の流出が過大になるのを抑えるために金利を上げているということですね」
反町キャスター
「それは、たとえば、インド経済においては明らかに強烈なブレーキとなって働いている?もう既にかかっているのですか?」
榊原教授
「かかっている」
浜教授
「振興国が現在金利を上げないと資金が逃げていく。だから、上げざるを得ない。だけど、金利を上げれば経済状態は悪化する。経済状態が悪化することを回避するために、資金が逃げることを回避しなくてはいけないのに、その資金が逃げるのを回避するためには金利を上げなくてはいけないという、ややこしい状態に陥っている。かたやアメリカも悩みが深いわけですよね。アメリカの金融政策がこれほど自立性を失ったということは、いまだかつてないことだと思います。かつてのアメリカ、パックスアメリカーナと言って、偉そうな顔をしていた頃は、アメリカはこういうふうにやるんだと。それにあとは皆さん対応をしてくださいねということが言えていた。それがパックスアメリカーナ。アメリカが世界の親分と言えた時代の状況でしたけれども、今や自分の国の経済の状況から見て、もういい加減そろそろ金融緩和は止めてもいい。あるいは止めなくてはいけないと思ってももう四方八方のことを気にしながらでないと政策転換はできない。だからこそ金融緩和の縮小という、すごく持って回った言い方、要は、金融引き締めだと言えばいいところを、よう言わんという状況になってしまった。これがグローバル時代というものの面白い面でもあり、怖い面でもある。グローバル時代の難しさというのを現在新興国もアメリカも、つくづく身に染みて感じている、今日この頃という感じだと思いますね」
反町キャスター
「その意味でいうと、アメリカも金融緩和の縮小という、もっとわかりやすくいうと、出口戦略ですよ。どういうふうに進めるべきだと思いますか。現在のやり方でいいのですか?速度の低下ではないですかというと、いやそれは止めるんだと、何かいろんな見方としてだんだん締めていくみたいなやり方しかないのですか?」
浜教授
「結局そういうやり方しかないところに、追い込まれてきているというふうに、思います。だけど、それしかないと思います。そこで政策調整時には世界への影響に留意、とG20で言っている」
反町キャスター
「これは一般論で言っているけれども、要するに、アメリカに対して、皆が言っている。19か国がアメリカに対して言っているという構図ですね」
浜教授
「そうではありますけれども、だけど、主役が変わればまた違ってくるわけで、これは本当に皆肝に銘じなければならないことであって、日本だってそうだと思いますし、現在のグローバル経済の状況というのは誰かが風邪をひけば、世界中で皆インフルエンザになるというような一蓮托生、誰も一人では生きていけないという状況がある。そこを本当にG20の出席諸国それぞれが、本当に肝に銘じる必要があると。現在の状況はそれを物語っている」

アベノミクスの現状 円高株安は進むのか
島田キャスター
「円高、株安基調と言っていいのでしょうか?」
榊原教授
「実はこれから1年さらに遡ってみますと、2012年12月から為替は20%以上円安になっているんです。ですから、株価は60%以上上がっているんです。それの調整局面が起こっていると考えるべきです。特に、外国人投資家は、ワーッと株を買ったんですけれども、そこで一度利益を出していますね。まだ戻ってきていませんけれど、もし外国人投資家が戻ってくればもう1回上昇局面ということになるんだと思います。ドル円相場の方も世界情勢が非常に混乱しますと、どちらかと言うと安全な通貨と言われる円にくるわけですね。それで円高になっているんですけれども、しかし、100円を切るような円高はおそらくないと思いますから、世界情勢がおさまってくればもう1度105円の方に戻ってくるということですから、調整局面であってまた戻る可能性はかなり高いと思っています。理由はアメリカの金融引き締めですよ。アメリカが金利を上げていくという局面に入れば、当然ドル高になりますから、日本はおそらく金融緩和を続けるでしょうから、そうなってくればドル高、円安基調でしょうね。ですから、現在101円ですけれども105円、場合によると105円を上回って110円になるような円安になる可能性はありますね。そんなことで外国人投資家が戻ってくる、あるいは日本の機関投資家が少し株を買い出すというようなことになれば株は上がります。その可能性はかなり高いと思います」
反町キャスター
「もう1回株を買うかどうかの材料は何ですか?」
榊原教授
「アベノミクスの第1の矢、第2の矢、金融政策と財政政策がそこそこ成功をしましたね。第3の矢がどうなるかと。いわゆる成長戦略ですね。法人税減税はその1つですね。現在ある意味ではアベノミクスの正念場です」
浜教授
「株がああやって動いてきているのは明らかにドーピング効果が薄れてきているということが非常に見えてきています」
反町キャスター
「踊り場のところではなくて、薬が切れた状態だということですか?」
浜教授
「基本的にそうだと思いますね。ただし、外国人投資家がそれこそもう一発儲けてやろうとすることがあったりするかもしれません。だけれど、それはいずれにしても売るために買っているわけですから、買いものをすればまたドンと売られるということになると思います。要するに、非常に無理をして押し上げているものは、そのツケが必ず巡ってくるということですね。円について言えば、本来は円高に向かうのが自然だとは思いますが、アメリカが金融緩和の縮小に入るということを背景にしていくと、円安というよりは、へたをすれば円暴落になっていくおそれがあると思うんです。日銀はアメリカに対し追随して金融の引き締めにいくわけにはいきませんから、ゆとりがあるか、ないかとかという話ではなく、要は国債を必死に買い支えているわけですから、それをいきなりやめるわけにはいかないということで、為す術がない状態のまま日米間の金利差が広がることになると、彼らが意図した円安ではなくて、彼らにはコントロール能力がない円の暴落。本来は暴落する理由はないですが、結果的に政策の失敗によって暴落にいくおそれが出てくると思います。そうなったら株価も絶対下がりますから」

アベノミクスの現状 どう評価する
榊原教授
「安倍さんが就任してから黒田総裁になり、そのあとのパフォーマンスはいいですよね、これまでのところ。株価も上がり、若干調整局面に入っていますけれども、2012年12月と比べると、まだまだ株価は高い水準にあるわけですね。それから、為替も80円台から100円台に戻ってきていますから、これまでのところアベノミクスは成功していると、少なくとも数字で見た評価ですね。ここからどうなるかというのはもちろんあります。これからも成功する可能性は、少なくとも五分ぐらいはある。これからどういう形で政策を展開していくのか。先ほど言った第3の矢をどういう形で用意していくかということにかかっているんだと思いますね」
反町キャスター
「円安による当面の利益を手に入れようとしている動きが非常に強いという指摘もありますが」
榊原教授
「円安による輸出促進効果というのが小さくなっているんだと思います。なぜかと言うと、要するに日本企業の海外生産比率が増えているからですね。海外生産ということで見ると円高の方がプラスですよね。円安はマイナスです。そういうことで、円安で輸出を促進して日本経済にプラスという構造は変わってきているんだと思います」

アベノミクスの今後 成長戦略は
島田キャスター
「国際社会から承認を得るために、日本の成長戦略として何がポイントとなってきますか?」
榊原教授
「法人税減税が1つのポイントですよね。あとはいろんな形の規制緩和。特に、医療、教育、サービス産業などの規制の緩和をして成長を促進する。今や製造業ではないと思うんですよね。そういうことをどれだけ説得的に提示できるかということではないかと思います」
浜教授
「そもそも成長戦略をやめるべきだと思いますね。そのへんは榊原さんと同意見だと思います。ある時から成熟戦略という言葉を使い始めたと。そもそも成長を目指すという発想から脱却していかないと現在の日本経済はまとまりのあるようにはならないです。成熟戦略とおっしゃることはもっと突き詰めて言えば分配戦略ということになるわけで、日本は非常に豊かな国ですが、富がすごく偏在している、豊かさの中の貧困問題がある。現在の日本経済はできの悪いホットプレートみたいな感じで欠陥商品ですね。あるところに食材を置いておくとすぐ火が通ってしまう。コールドスポットに座らされている人達がいっぱいいる時に、それを無視してすぐに沸き上がるところに金融緩和とかで働きかけているのが、言ってみればこれまでの成長戦略なわけで、円安であと押しされるところも、おっしゃる通りあまりないですけれど、結構算数的には儲るところに、いわば欠陥ホットプレートの熱々コーナーです。この熱々コーナーばかりを焚きつけているというのが安倍政権の成長戦略というものであって、日本経済全体がうまく回っていくことにはならない。欠陥ホットプレートを直して、全体に良い塩梅に火が回っていくようにしていくためには、何をしなくてはいけないかということを真剣に考えるのが現在、最大の経済運営上の課題だと思います。成長戦略という言葉をやめるというのが現在、最も誠意あるまともな政策姿勢だと思います」
反町キャスター
「トリクルダウンというのは嘘ですか?」
浜教授
「それは嘘ですね。トリクルは、ダウンはしなくて、ラウンドするだけですね。同じところにまわるだけで、恩恵に属するところはどんどん回転率が高くなって、下に落ちていくことは、過去のアメリカにおいても、レーガノミックスにおいても、イギリスのサッチャリズムのもとにおいても、トリクルダウンだと言われましたが、結局はダウンしないまま終わって格差が進行したということです。トリクルダウンはまやかしだと」
榊原教授
「私は若干違いますが、ただ、格差が拡大するのは確かなんです。日本だけではないんです。世界的に格差が広がる。グローバル化によって先進国で格差が広がることが起こっています。これはなかなか難しいです。再分配政策をやるしかない、ヨーロッパ型の。日本がこれからアメリカ型で格差拡大を容認するのか、ヨーロッパ型にして、格差の縮小に持っていくのかというのは政策的課題として非常に重要」

どうなる 今後の世界経済
島田キャスター
「世界経済の見通しを下方修正していますが」
田中氏
「年明け以降の世界経済を見ていると、アメリカが天候要因等で非常に行ったり来たりのところがありましたけれど、一方で欧州経済はどうにか底入れし、世界経済全体で見ると、新興国が足を引っ張っている。その背景には、アメリカの量的緩和の減額が始まって、そのイロハといったものが新興国の重しとなっているというところなので、全体としては世界景気、牽引役不在という状況ということですね」
反町キャスター
「世界経済を引っ張る人はいない?」
浜教授
「皆で引っ張らなくてはいけないですよね。かつてはアメリカが引っ張っているとか、日本が引っ張っているという時代がありましたし、現在はグローバル時代に入ってくる。最初の方は中国がすごく育ち盛り、伸び盛りだったから、引っ張っているような感じでしたが急速に剥げ落ちてきている。グローバル時代は基本的にドングリの背比べ時代ですよね、人も、お金も、国境を超えて動いているのだから。誰かがその強さを独占することはできない。従って、皆で支えていかないと、どうしようもないというのが現実だと思います。そういう現実を踏まえて考えた時に、気になるのはここにきて世界的な貿易の伸びがすごく落ちていることがあるんですよね。従来は国々の成長率よりは、世界貿易の伸びの方が大きい状態が続いていたのですが、そうではなくなってしまった。貿易が伸びないということは、どういうことかと言うと、お互いに国々の間で開放的な付き合い方をしていないということですよね。だから、だんだん成長率を全ての国々が自分だけが独占したい、低下してくるとなると、我が身さえ良ければという形で成長を独占しようとする争いが起きてきてしまうという、この見通しよりさらに世界経済の成長率は落ちる可能性があります。そうならないためにも、それこそG20の場で政策協調を本気で実現することが必要だと思いますが、どのぐらい度量の大きいところを示せるかが問われていると思います」
榊原教授
「現在、景気回復局面に入っているのですが、IMFの評価は先進国主導の景気回復局面だと言っているんですね、アメリカが比較的寒波で行ったり来たりしていましたけれど、3月、4月の雇用統計は割によかったんですから。そういうことでアメリカを中心とした先進国が主導するような経済成長ということになっているんだと思いますね。日本の成長率が落ちているのは、おそらく駆け込み需要みたいなものがありましたから、4月の時点での予測では若干2014年が落ちるということで、日本経済に対してIMFが悲観的な見方をしているということは僕はないと思います」

榊原英資 青山学院大学教授の提言:『成熟戦略』
榊原教授
「日本は成長段階から成熟段階に入ってきていますから、おそらく経済成長率が平均して1%ちょっと上回るぐらいですね。ただ、成熟社会、成熟経済として日本を見ると非常に素晴らしいものを持っていますね。たとえば、環境、安全、健康は世界のトップランナーですから。そういうものをいかにうまく使ってこれを維持していくかということに留意すべきですね。おそらく平均的な日本人というのは、先進国の中で一番豊かだと思いますよ。ですから、その豊かさをどうやって使うかということをこれから考えるべきであって、どんどんものを買って豊かになろうという時代ではないですね。成長戦略は古い、20年前の話ですね。だいたい1990年代ぐらいから平均成長率は1%きっていますからね。それでいいと思うんですよ。それを失われた20年と言う人がいますが、僕はそう思わない。それは成熟したということだと思います」

浜矩子 同志社大学大学院教授の提言:『奪い合いから分かち合いへ』
浜教授
「成長機会を奪いあう、ものを奪いあうとか、市場を奪いあうというようなことを考えていてはグローバル時代も一貫の終わりというところです。現在全てのものを全ての人と分かちあおうという発想を全面に打ち出していく時代だと思いますね」

田中理 第一生命経済研究所主席エコノミストの提言:『発信力』
田中氏
「アベノミクスに対するご批判はいろいろあるかと思うのですが、ひとまず萎縮してしまったデフレマインドを動かしたという意味では第一歩だと思います。ただ、現在足下で円安・株高の動きは止まってきている。ここは政府として改革していくんだと、日本のデフレ脱却といったものを確実なものにしていくといったメッセージをいかに国民、企業、海外投資家などに伝えていくのかが問われている」