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2014年4月4日(金)
日銀の異次元緩和1年 元日銀幹部が成果検証

ゲスト

塩崎恭久
自由民主党政調会長代理 金融調査会長 衆議院議員
早川英男
富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー

大山泰
フジテレビ解説委員

異次元金融緩和から1年 日本経済はどう変わったか
石本キャスター
「第1の矢は異次元金融緩和とか、バズーカと言われますが、異次元と言われるその理由はなぜなのでしょうか?」
大山解説委員
「黒田総裁が市場参加者、関係者の常識を超えることをやるということで、ちょうど1年前に、安倍政権ができてから100日ぐらいの日にやったものです。既に出ていますが、マネタリーベースと言って現金と、主に銀行が日銀との間で扱う世の中に出る基礎になるお金の部分を2年でいきなり倍にしてしまおうと。そのやり方としては、長期の国債があるんですけれども、国の借金の証書ですが、そういうものを市場で毎月7兆円ぐらい昨年の4月からずっと買い続けています。いわゆるマネタリーベースというのは、昨年の3月は134兆円だったが、現在は208兆円ぐらいに増えています。そういうことをやって、世の中にお金を出して、経済の活性化につなげて、物価を2%に上げて、経済の好循環をしていこうと。量がとてつもなく、びっくりするぐらい突然始まったということで、異次元とか、バズーカと言われています」
石本キャスター
「異次元金融緩和が始まって1年。この1年で何が変わったと感じますか?」
塩崎議員
「将来に対する期待というのが、ガラッと変わったというのが一番だと思うんですね。私の身近なところでも竹細工をやっている友達がいます。1年前に、こういうことをやるだろうと感じ始めてから、作業場を大きくしようと思うがどうだろうかと電話してきた。そのくらいの人達までもが何かやってやろうと考えだしたということ。たとえば、牛肉を扱っている地元の工場がある。4、5月くらいから何も営業努力をしていないのに2割ぐらい前年比で売れるようになっちゃった。何故かというと、牛肉は何かがあった時に
「今日は牛肉を食べてがんばろう」
と。奮発しようという言葉も久しく使っていなかったが、奮発しようというのは皆やる気になってきて、明るくなってきているということです。銀行の経営者に聞いても設備投資をやってみようと思うのだけれど、どうだろうかという相談が昨年4月頃から増えてきたと聞いています。それがどのぐらい結びついているかはだんだんGDPのプラスに、設備投資になりつつある。ですから、皆にやる気を起こさせてきたのではないかなというのが、この1年の一番の大きな変化ですよね」
早川氏
「私も塩崎さんがおっしゃった通りだと思いますよ。皆のマインド、気持ちが変わったのが一番大きいと思います」

株価・為替への影響は
石本キャスター
「株と為替の動向がだいぶ変わりました。これは金融緩和の影響だと考えていいのでしょうか?」
早川氏
「株の方からお話をすると、そもそもいったん金利がゼロになってしまってから、大量に国債を買うとかの金融緩和のやり方をよく非伝統的金融政策と言いますけれども、どれだけの効果があるかというのは実は経済学的には、まだよくわかっていないんです。ただ、これまでに多くの人が調べた結果をならして言うと、おそらく株とか、為替とか、資産には多分影響があるであろうと。一方で、景気みたいな実態経済の影響は実はあまり明確ではないという見解が多いんです。そういうこともあっておそらく金融緩和が、たとえば、株高に効いたことは間違いない。ただ、金融緩和だけかと言うと他の要素もあったと思っていて、1つは景気の転換点ですね。一昨年、戦後2番目の短い景気後退があったのですが、景気後退の谷は一昨年12月だったんです、ちょうど解散の月。だから、ちょうどいいタイミングで景気が転換した」
反町キャスター
「為替はいかがですか?」
早川氏
「為替も金融緩和が効いたことは間違いないです。ただ、為替について言うと、株式以上に明確に実は11月の少し前ぐらいから、そろそろ転換点だねと皆思っていましたね。これは1つにはもともと一昨年の夏ぐらいに欧州情勢が緊迫していた。悪い癖ですが、世界的に何か悪い材料があると、日本円は安全資産だと思われているので、そういう時に必ず日本円が買われるというのがあるのですが、一昨年の秋ぐらいには欧州情勢も落ち着いてきたので、だんだん円高がなくなってきた。1つは貿易赤字。一昨年の前半ぐらいまでは一時的、ないしは原発のせいだと皆思っていたのが、そうではないよ、これはそういう問題でないとはっきり認識されてきたのが一昨年夏から秋にかけて。ですから、どこかできっかけを探していたところに安倍さんが大胆な金融緩和とおっしゃったのはマーケットのきっかけを探していたところにぴったりとフィットした」

インフレ目標2%は可能か
石本キャスター
「日銀と企業物価の見通しを踏まえて、2%という数字は可能であると見ていますか?」
塩崎議員
「私は可能だと思っています。これを見てもそうなのですが、失業率も随分下がってきました、現在3.6まできている。有効求人倍率も1.05。需給ギャップと呼ばれているデータを見るとボトムでマイナスの3.5%ぐらいだったのが、現在は1.6%と内閣府は言っています。自民党はもっと対等になってきていると見ているのかはわからない。ですから、そういうことを考えてみると、そもそも賃金が上がらないと物価も上がってこないのが普通の例です。そうなると、現在のような雇用情勢で人手不足と言われて、外国人の労働者をどうしようかという話をしているぐらいです。ですから、そういう方向であると考えてみると、需給ギャップと物価は連動して動きますから、そういう方向でいくのではないかなと思っています。まだ先行きに自信が持てないという気持ちはわかるが、そこは我々が自信を持ってもらえるようにしていかなければいけない」
反町キャスター
「2%に目標を設定する意味は、どのように理解したらいいのですか?」
塩崎議員
「忘れちゃいけないのは、我々は別にインフレにしようと言っているわけではなくて、物価の安定が一番大事で、それをベースに成長していく。つまり、暮らしを良くしていく。これが一番大事なこと。テクニカルにいろいろあって少しバイアスがかかっていて、いつも物価にかかっていて少し多めにいっても実際は1%ぐらい低いと言われている。もう1つは、グローバルにだいたい2%ぐらいと皆が言っていますよね。そのぐらいが一番コンフォタブルな水準。もう1つは、我々はデフレにしないという決意を表す意味でこのぐらいかなと言っている」

大胆な金融緩和がもたらすリスクとは
石川キャスター
「この異次元緩和にリスクはあるのでしょうか?」
早川氏
「もちろん、当然リスクはありますね。一番気になるのは長期金利なんですよ。現在のところは昨年5月ぐらいに長期金利が乱高下した時期があったのですが、幸い落ち着いてきました。ただ、気になるのは、市場関係者は日銀が大量に買ってくれるというので、何となくリスク感覚が麻痺している感じがあるんです。現在、長期金利10年もので0.6%台です。市場関係者は勝手にこれは2%にいかないと信じ込んでいる。だから、いつもまでも日銀が買ってくれるという前提で0・6%です。だけど、本当に2%に近づいていったらどうなるのだろうか。近づけば、いずれ日銀が買わない日がやってくるわけであり、そうなれば、普通皆3%ぐらいに上がるよねというのが常識です。そういう可能性がないと目をつぶって皆生きているようなところがあるので、それがリスクと言えばリスクだし、逆に2020年にプライマリーバランス黒字化と言っているわけですが、実際に今年1月に政府が決算したものは消費税を10%にし、名目3%、実質2%成長が続くといってもプライマリーバランスが黒字にならないという状態ですね。長期金利がもし3%になったら、利払いが大きく増えるわけですから、大丈夫かというのが最大のリスクですよね」
塩崎議員
「株が下がる局面がありました。でも、何で金融緩和をやめるかと言ったなら、経済が強くなっているからやめるんですから。マーケットというのは、逆にとったりする。そういうことをちゃんとマーケットに伝えていくことをやっていくのがこれから大事なのであって、2%になったからそれで終わりということでは全くないです。物価が安定するというだけの話ですから」
大山解説委員
「アメリカはリーマンショック前の4倍になって、これ以上増やしませんよと言い出して、今年は増やさないようにした。イエレンさんはこれからもジャブジャブな環境は当面続くよみたいなことを言って、安心させているんですよね。来年日銀にそれと似たようなことがくるのか、さらにその先なのかはわかりませんけれど。2%できたら、2%のマイルドなインフレで自然に需要ができてきて、マイルドな景気の前向き感をキープはしたいというところは工夫すると思うんですよね」
反町キャスター
「日銀としては2%になったらどうするのですかという、マーケットからの質問に対しては答えを用意して、示さなくてはいけないのではないですか?」
早川氏
「それは考えていかなければいけない時期だと思います。1つは、いつまでも長期国債を買い続けるのはリスクがある。一方ですぐに金利を上げますという話には当然ならないわけです。今月末には日銀の将来の成長見通し、物価見通しを伸ばす時期があって、現在の政策のフレームは今年末までしか決まっていませんから、それをどうするかというのはいろんな形で出していかざるを得ない局面がくるんだと思うんですね」

第3の矢・成長戦略との連携は
石本キャスター
「成長戦略の進捗状況についてはどう見ていますか?」
早川氏
「まず大前提として、金融政策の立場から言うと、インフレ抑制とデフレ脱却は対称的ではないんですよ。インフレ抑制はある意味中央銀行が独立にやっていけばすむ話なのだけれど、デフレ脱却は政府と一緒に協力してやってく必要がある。そういうことを考えるうえで、3つの矢はある意味で理想的な組み合わせではある。要するに第1の矢、第2の矢で勢いをつけて、その勢いでもって成長戦略を進めると。それが実現したらおそらく第2の矢である財政の方は、今度はむしろ財政出動ではなくて、財政再建の方に向かい、最後に金融緩和も出口に向かっていく。全てがうまく行われれば、そういう段取りなわけですね。残念ながらなかなか必ずしもうまくいくとは限らなく、逆に、たとえば、第3の成長戦略が遅れてしまう。たとえば、なかなか財政の再生の方向に向かわないということになると、日銀がやっていること自体は同じであっても、いつの間にかだんだんそれは、財政ファイナンスでしょという意味合いが変わっていっちゃうという危険があった。そういう意味で、私が一番心配しているのは第3の矢が出てきませんね。財政も出しっぱなしですね。そうすると同じことをやっていても意味合いが変わっていくのではないかというのが一番心配しているところなんですよ」
塩崎議員
「1月のダボス会議の時に、総理が初めて初日に呼ばれて、スピーチをしたわけです。あそこで、明確に第3の矢の中身について具体的に全部発信をしています。これが要するにこれからやっていくことだということで実際にそれを現在次々とやっていますし、我々日本人というのは本来ノーベル賞を山中さんみたいにiPS細胞で若くしてとっちゃう力がある。企業も実は昨年アメリカで特許を取った数をベスト10で見てみると、10番までに4社も日本の企業が入っているんですよね。ところが、この4社の企業の収益を見るとすごく他の国の企業に比べて、韓国を含め、見劣りするわけです。これは何か力を出す、本当に持っている力の邪魔をして出てこないようになっているものがあるねと。その1つが規制ですよね。それを直さなければいけない。それから、電力システムというのも言ってみれば、1つの規制みたいなものですね。女性も力があるのに活躍できてこなかった。企業も本来の力を、特許の数で言ったらアメリカの市場の中でベスト10の中で1番多い4社、アメリカだって3社だから、出せるのに競争力が落ちている。家電メーカーは総崩れですからね。それが4社入っている。だから、そういうのをどうやったら本当にそれらの力を発揮できるようになるのかというのが、コーポレートガバナンスの強化であって、現在も既に会社法としての改正案として昨年の12月に我々がすったもんだの大議論をして出したものなのですが、かなり民主党政権の時に用意していたものよりも強くし、社外の取締役を事実上義務化したという法律を既に出しています。これによって企業が内々の発想だけでなく、内向きの発想だけではなく、外の人も入れてグローバルにこれからやっていこうということができるような体制をつくりましょうということで、それから、これは難しい話ですが、社外取締役を何人ぐらい入れていなければいけないかを、他の国は、アメリカではニューヨーク証券取引所でルールを決めているんですね。韓国は法律で決めています。日本はヨーロッパスタイルで、いわゆるこの約束をして、守れなかったらその理由を言うというComply or Explainというルールにした。Comply、何人入れなければいけませんということを決めているのが、コーポレート・ガバナンス・コードという。企業はこういうふうに行動をしてください、社外取締役はこれだけ入れてくださいというのを、どの国もコーポレート・ガバナンス・コードで入れているのですが、日本だけないんですね」

企業の構造改革の必要性
反町キャスター
「何で社外取締役を入れると日本の企業は変わるのですか?」
塩崎議員
「日本の企業は割と株の持合とか、もの言わぬ株主とか、そういう人達がいるとともに、企業というのはすごく保守的なところがあって、内輪の論理だけで経営をするというようなことがあって、若いけれど力がある人を十分に使いきれていないということが、結果として特許をたくさんとっているのに、競争力にまったくつながっていかないという古い体質のままきてしまっているのではないかということを打破するためには、外の目を入れ、グローバルな発想でもって経営を(する)。そういう経営の発想の転換がないとこのままではどうもうまくないねと。他の国をみると、外の声を聞きながらやる」
反町キャスター
「業界のあり方、産業の方向性について、政府が一定の方向性を持って指導する、圧力をかけるということが本当にいいものかどうかという議論、この場で何回もやっているんですよ、実は。それが今言われたようなことをやるべきだということが、本当に民間の企業の人達にとって、それはいいものだということなら、彼らだって自分達でいいものだと思ったらやっているよと必ず言い訳として出てきます。これについてどのように考えますか?」
塩崎議員
「そもそも政府が、どこどこが一緒になれとか、何とか言うべきことではないんですね。企業経営者は本当にチャンスがあれば買収もする。そしてまた逆に自分の会社を売ってもいいなと思ったら売りますよ」
反町キャスター
「民間企業独自の判断ですよね」
塩崎議員
「それは民間が決めることであって」
反町キャスター
「(社外)取締役を入れるかどうかは個々の企業の判断でしょう?政府はそこまで圧力をかけるべきものかどうかは同じではないですか?」
塩崎議員
「上場企業でグローバルにやろう、もちろん、グローバルでないという企業もあるんですよ。だけど、上場したら地球の裏側からだって投資できるんですから。それはそういうこと言っていてもダメです。上場を目的にするような企業の話であって。従って、業界再編というのは、企業が考えて、これは絶対やった方がいいと思ったらやるんですよ」

異次元金融緩和と成長戦略 規制緩和の進捗状況は
石本キャスター
「政府の規制緩和に関する政策についてはどのように見ていますか?」
早川氏
「首相はドリルで穴を開けるんだというふうに言われましたけれど、残念ながらまだあまり穴は開いていませんよね。成長戦略もご承知のように2006年から各政権が毎年成長戦略をつくっているわけですよ。そういう意味で、残念ながら昨年の安倍政権の成長戦略は過去数年間の成長戦略から異次元なものはないというのが私の理解であって。実際マーケットの参加者の中には、構造改革がなかなか進まないことに対する苛立ちを強めている人も多いので、ここは何らかの形で早急に成果を出してあげる必要があると思いますね」

岩盤規制にどう切り込むのか
反町キャスター
「政府が取り組む農業とか、医療とかの改革のテンポはいかがですか?」
早川氏
「遅いと言わざるを得ないですね。ただし、全部をいっせいにできると言う話ではもともとないと思います。1つ1つ政治力がいる話だし、時間のかかる話。だからこそ、逆に1つでもいいから、これは本当に進んだよねという実績を見せてあげることが大事だと思いますね」
反町キャスター
「特区というのは、全国で規制緩和ができないことの言い訳にしかすぎないという人もいます」
早川氏
「当然抵抗する人達もいるし、抵抗勢力だけではなくて、実は日本の制度はいろんな制度が入り組んでいるので、どこかの規制だけ変えても思った成果があがるかどうかがわからない。よく考えてやらなければいけないことがあるんです。たとえば、典型的なのはかつてやった派遣労働の規制緩和で、私は正しかったと思うのですけれども、セーフティーネットとかが不十分な中でやって、悪いことにリーマンショックがきてしまって、派遣切り批判を浴びて、結局あの規制緩和は悪だったみたいな印象を与えちゃっていますでしょう。もう1度そういうことをやってしまうと、ますます雇用の規制改革ができなくなる。そこは周到に考えてやらないと難しいと思います」

塩崎恭久 自由民主党衆議院議員の提言:『法人税、規制改革、コーポレートガバナンス、GPIF』
塩崎議員
「先ほど申し上げたように、まず法人税の実効税率を下げるということを現在やっています。それと、規制改革が大事ですね。さらにコーポレートガバナンス、企業がやる気を出さなかったら絶対にうまくいかない。だから、余計なことをしないけれども、土俵を整える。そして先ほどの年金のお金をどう運用するか、これは経済のプラスであるとともに同時に、年金も安心していられるようになる。ここのところが私は具体策でいくと、これから大事なメニューだと思いますね」

早川英男 富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェローの提言:『財政依存から構造改革へ』
早川氏
「既に申し上げた通りです。要するにこの金融緩和がどれだけ成果をあげられるかというのは3本の矢の組み合わせにかかっていて、現状の財政依存が強い状況から成長戦略、構造改革へ軸足を移していく。それが、金融緩和が成果を収めるために最も重要だということに尽きると思っています」