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2014年3月21日(金)
技術流出をどう防ぐ? 日韓企業の情報戦実態

ゲスト

山際大志郎
自由民主党経済産業部会長 衆議院議員
湯之上隆
半導体産業・電機産業コンサルタント
肥塚直人
三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員

技術流出は防げるのか 東芝研究データ流出事件
島田キャスター
「東芝と業務提携をしていた半導体メーカーのサンディスクの元技術者は東芝のサーバーに自由にアクセスすることができた。この当時、東芝の収益の柱であるNAND型フラッシュメモリーの研究データをコピーしたと。この元技術者はサンディスクを辞めて韓国のSKハイニックスという大手半導体メーカーに転職しました。ここで、このコピーした研究データを渡したというふうにされています。また、東芝は同じ日なのですが、機密情報を不正に取得したなどとしてSKハイニックス社に対して損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起しています。請求額は未公表なのですが、1000億円規模の損害が発生していると指摘しています」
肥塚氏
「技術流出という問題自体は古くて新しい問題だと思うんです。既に昔からあるよねとおっしゃる方がいっぱいいらっしゃると思うのですが、実は今回のように刑事事件として報道されているケースは、実は少ないんですね。報道されたことのある事件は、2つ、3つぐらいしかないかと思います。もっと言うと、実際に有罪になったものはほとんどなくて、ちょっと判例のデータベースをたたいてみても24年に地裁判決が1個出ているだけで、同じような有罪判決が出た事件は非常にないものですから、今回非常にセンセーショナルに取り上げていらっしゃるケースもあるでしょうし、少し刑事事件にまで発展したということで注目されているのではないでしょうか」
山際議員
「私個人というよりは、政治に携わっている者として、どうかという話だと思いますが、肥塚さんから話がありましたように古くて新しい話といいましょうか、昔から情報の流出というのはあったわけですね。それに対して、ある程度のルールというものを、当然政治の側でもつくってはきているのですが、まだ不十分だなということをあらためて実感しているというのが、全体としての受け止め方ではないかと思います」
湯之上氏
「内部のデータを持っていくと間違いなく犯罪で、これが明らかになったから逮捕されるのですが、そうではなく、あなたに来てほしいと、スカウトを受けて転職すると。その頭の中にあるものを持っていくことは、前から起きていることで、しかも、これは犯罪とは言えないわけですから、こういう意味での技術流出は日常茶飯事。半導体業界ではごくごく当たり前に起きていることだと思います」
反町キャスター
「特許という形でオープンにし、これはダメだよ、使ったらお金かかるんだよという形にするのと、隠しておくものという、2つの分け方があったではないですか、その意味で、頭の中にあって持っていくもの、それは隠しておくものの方ですか、特許も頭で持っていく。それはバレたらアウトですよね。どのように分けて考えたらいいのですか」
湯之上氏
「特許にできるものとできないもの、要するに、形式値と暗黙値があるんですね。特にドキュメントにできないノウハウがあるんですね。それは、特許にもしないし、できないと。半導体を製造するのに500とか、1000ステップぐらいの工程が必要なんですね。全体像を特許にすることはちょっとできないので、そのプロセスフローは人間の頭に入っているようなものがかなりあるんです。その人間が移籍したことによって、技術流出というのがどうしたって起きるわけで。だけど、それは人間のスカウト、転職をやめろということは、仕事を選ぶ技術者としては、仕事を制限されるに等しいですから」

秘密・技術の流出経路は
島田キャスター
「経済産業省では一番、人を通じた流出というのを懸念していて、懸念が高まっていると報告書でも言っているのですが」
反町キャスター
「人による流出というのは、湯之上さんが言われた通り、暗黙値という特許にできないようなもの。何しろノウハウみたいなもの。そういったものと、いわゆる、特許をそのままコピーして持ちだすようなもの。企業にとってダメージはどちらが大きいものなのですか?」
肥塚氏
「ものにもよりますけれど、特許は法的に保護されていますから、きちんと保護されている権利をお持ちであれば、闘うことができますが、人が転職をしてしまうということについては職業選択の自由がありますものですから、転職をしないでくださいというのはなかなか難しい。もちろん、契約自由の原則もありまして、その方の行動を、過度に制約しない範囲では、うちでこれだけがんばってくれて、これだけ報いているのだから、他社に行かないでくださいねという契約が一定の範囲内で認められることもあるのですが、なかなか一般的には流出を止めるというのは苦労されているみたいですね」

人を通じた流出
島田キャスター
「転職以外にも、たとえば、人を通じた流出の内訳で、辞められた方、退職された方が多いんですよね」
山際議員
「一般的に言えば、失われた20年という言葉が随分使われてきましたけれども、会社としてもリストラをせざるを得ない状況に追い込まれて来たというのがあるわけですね。そこで優秀な技術者であればあるほど、なぜ私がと。その会社が経営が厳しいからといって、首を切られなければいけないんだという不満を持って退職された方が間違いなくたくさんいらっしゃいますよ。そういう方々が、お話をうかがっていたら10万人の技術者の方がいらっしゃるという話で、そういう方が生きていく道をどこかで見つけたいというのは、これは自然な感情といいましょうか、止められないことなのではないかと思います」
反町キャスター
「10万人もいますか?」
山際議員
「という話を」
反町キャスター
「要するに、自分の力量を正当に評価されないまま、首を切られたと思っている人?」
湯之上氏
「ここ数年間、ルネサンスという大手の半導体メーカーが、1万5000人ぐらいをリストラしようとしています。ソニー、シャープ、パナソニックがそれぞれ1万人規模でリストラを行おうとしています。半導体だけで少なく見積もっても5万人ぐらい。電機全部を入れると、10万人が職を失うか、現在失おうとしているんですね。こういう人達にもし韓国、台湾、中国メーカーが、わが社に是非と言われて、誰が止めることができますかと。誰も止めることはできないですね」

海外からの人材勧誘
島田キャスター
「湯之上さんは半導体メーカーの技術者であった時に、海外の企業からヘッドハンティングを受けたこともあるということですが、実際には、どういう状況で、どういうふうに声がかかって、どういう経緯で話し合いが進められていくのか?」
湯之上氏
「技術者であれば、学会発表をしたり、論文発表をしたり、特許を出願したりするんですね。そこから、この技術者は何をやっているというのが特定することができるわけです。それは私に限ってではなくて、珍しいことではなくて、アウトプットを出している技術者にとっては普通に起こっていることだと思います」
反町キャスター
「企業から貰っていた給料の10倍とか、5倍とか、3倍とか?」
湯之上氏
「さすがに、私はそういうのを受けたことがないのですが、実際に韓国、台湾に行った友人、知人に聞くと数倍の年俸を受けて行ったという例が何例かあります」
島田キャスター
「湯之上さんはちょっと行っちゃおうかと悩まれたこともありますか?」
湯之上氏
「早期退職勧告を受けた時は、さすがにいろんな行き先を検討しました」
島田キャスター
「それで、そのあとはどうされたのですか?」
湯之上氏
「同志社大学の先生になりました」
島田キャスター
「なぜ(海外に)行かなかったのですか?」
湯之上氏
「行ったあとの状況をよく知っているからです」
反町キャスター
「どうなるのですか?」
湯之上氏
「たとえば、韓国メーカーから誘いを受けた場合、年俸の数倍を提示される。言葉の問題がありますね。英語で仕事ができますよというようなことで誘ってくるのですが、行ったあとはハングル語ですよ。言葉の壁って非常に高いんです。しかも、入って、韓国企業は横の競争が非常に激しいんですね。40歳で部長になっていないと全員クビなんですよ」
島田キャスター
「40歳で部長。それは(全体の)何割ぐらいなのですか?」
湯之上氏
「ほんの一握りです。いくら日本から行ったといっても、その競争環境の中にさらされるんです。言語というハンデを背負いながら」
反町キャスター
「何ら下駄は履かせてくれないのですか?」
湯之上氏
「その通りです」
反町キャスター
「日本から行った技術者というのは、韓国のエンジニアより高い技術力を持っているからこそ、高い給料で呼ばれているんですよね」
湯之上氏
「はい。だから、2、3年で吸収されて、放り出されるというケースが多いと聞いています」
反町キャスター
「10万人辞めていくといっても、全てがトップの技術者が辞めるのではなくて、いわゆる生産ラインで組み立てている人も含めての10万人かどうか。そのへんのところはどうなのですか?」
湯之上氏
「できる技術者から辞めていくんですね」
反町キャスター
「声がかかる人から辞めていく。そういう意味ですか?」
湯之上氏
「能力の高い技術者から辞めていくという意味ですね。つまり、早期退職募集をやっていると、もう動けない人がいるわけですよ。子供がいて、家のローンもあると。よそに行っても雇ってもらえるあてはないと。そういう人は残る。だけど、自分の能力に自信がある。スカウトも受けている。こういう能力の高い人間から辞めていくという傾向はあると思います」
反町キャスター
「そういう状況に関しては日本の企業というのはやりようがないんですか。良い人から辞めていく状況というのは、これは現状、どのように見ていますか?」
肥塚氏
「かなりやむを得ないところはありますね。できることがあるとすると、会社として漏れちゃいけない技術というのをどれだけ会社として認識していて、見える化ができているかということにかなり関わってくると思っています。だから、この技術だけは絶対に守らなければいけないとか、技術もいろんな技術がありますよね。そこにちゃんとメリハリをつけて判断できるような会社であれば、ここだけはどんなリストラクチャリングをしても絶対コアビジネスとして守っていくんだということであれば、そのケアをもっと手厚くする。そういう方法もあると思うんですよね」
島田キャスター
「サムスン電子の情報収集能力がすごいということですが」
湯之上氏
「先ほど言った、アウトプットをもとに技術者一人一人のファイルをつくっているんです。日本人技術者一人一人の、どこそこ会社の何部署にいる誰と」
反町キャスター
「それはサムスン電子が持っているのですか。ないしは、サムスンから委託されたヘッドハンティング会社が持っている」
湯之上氏
「韓国、サムスンならサムスン、あるいはハイニックスが日本に拠点を持っています。その日本の拠点で技術者一人一人のファイルをつくっているんです」
島田キャスター
「リサーチ課みたいなところがあるのですか。そういう専門の」
湯之上氏
「専門です。日本の技術を収集する専門の部署があって、たとえば、今度韓国の本社でこういう技術開発をすることになった。こういう技術が必要になった。そうすると、それに該当するそういう技術に関わっている日本人の技術者は誰かと。このファイルをサーベイするわけですね。どこそこ会社の誰それだと。こいつをスカウトしよう。こういうやり方だと思っています」

技術開発の意識の違いとは
反町キャスター
「それはまさに必要なものをすぐにというのですか、ここは日本の企業は、そういうものですか?」
湯之上氏
「いや、違います。ここに日本と韓国及び諸外国の技術に対する考え方の違いがあるんです。韓国メーカーを筆頭に、日本以外の諸外国は、日本だけが異質なのですが、ある技術が必要になったとするとまずその技術を持っている会社はないかと。たとえば、ベンチャーなら、それを買収しようということをまず考えます、手っ取り早く、日本以外は。そのベンチャーもない、買収に応じてくれる会社もない。そうだとしたら、その技術を持っている人はいないかと探すわけです。日本の中でプロファイリングをしているわけですね。人を連れて来られたら連れてくると。ベンチャーもない、人もいないとなったら、やむなく自分で技術開発をすることを考えるんです。ところが、日本は全くこれが正反対である技術が必要になったら、まず自分で開発することを考えるんですね」
島田キャスター
「なぜですか?」
湯之上氏
「技術開発が好きなのではないですかね。だけど、今やスピードの時代なので、世界のハイテクメーカーはまず買ってくる。人を連れてくる。これを考えるんですよね。だから、日本だけがかなり異質な環境で技術開発をしているように、私には見えます」
反町キャスター
「好ましいなと思って聞いているのですが、それではダメなのですか?自前でやろうという気持ちは気概がいいではないですか?」
肥塚氏
「経営の考え方によると思うんです。だから、本当にニッチなものをつくって、この技術だけは絶対に他の技術者ではつくれないから、そのコアな技術は自分達でずっと続けていくという考え方はあっていいと思うのですが、グローバル競争をやっている中で、特にエレクトロニクスであるとか、ものづくりの世界のグローバル企業というのは基本的にモジュール型の経営をしていますから、職業経営者がいらっしゃって研究開発をされている方は、研究開発のプロフェッショナルの方がいる。いわゆる経営の資源というのは、必要な市場から、人も含めて調達をしてきて、最適化をし、マネージをしていく。これが欧米的な経営の考え方ですから、そこは経営のスタイルの違いなんだと思うんですね」
反町キャスター
「経営のスタイルの違いで止まるのなら、現在の日本のやり方をやってもいいかなと思うのですが、そのスタイルの違いは完全に勝敗につながっている。100%、それには勝てない。そういう理解でいいのですか?」
肥塚氏
「勝っていないですよね」

企業の危機意識は
島田キャスター
「日本の企業で、現場は何がわかっていて、何をわかっていないのか」
肥塚氏
「現場ではこれだけグローバル競争をやっていますから、非常に危機感を持っています。現場のマネージャークラスの方とお話しても、これは漏れてはダメだよねとか、あそことは日進月歩で争っているからという話があるんですよね。その技術の流出とか、人材の流出は現場だけで防げるかというと仕組みが必要になってきますよね。その仕組みづくりというところで、もう少し考えるところというのは残っているのではないかというような印象を持っています」
反町キャスター
「具体的にはどんな仕組みですか?」
肥塚氏
「たとえば、不正競争防止法にもとづいて刑事事件にもなりましたし、民事訴訟もこれを根拠にやっていくのだと思うのですが、不正競争防止法では、法的保護を受けるために営業秘密、この要件を満たさないと法的保護が受けられないんですね。たとえば、営業秘密としてちゃんと管理できているということを立証しなければならないので、特定の人しか、その情報にアクセスできないようにしてありましたかとか、その人は誰が見ても、これが営業秘密だとわかる状態になっていましたか。たとえば、そういう管理1つをとっても徹底できているかどうか。これは会社によって温度差があると思います」
島田キャスター
「秘密の選別というか、そういうことですか?」
肥塚氏
「そうですね。私が申し上げたのはどちらかというと選別された情報をどう管理できるかというところなのですが、おっしゃっていただいたように、その選別のところも非常に問題になっていまして、全部の情報を漏らさなければいいのか、そんなこと不可能ですよね。事業を行えないと思います。この情報は会社として大事な情報なのかどうなのかの判断、区分をきちんとやっていって、漏れてはいけないものについてはきちんと管理をしましょうと。そうではないものはもう少し現場に柔軟な運用をさせてもいいですよという判断をしていかないといけないと思うんですね。ただ、その判断ができるだけの判断材料を判断すべき人が現在持てていますかというようなところが、現在1つ論点になっているかなと思いますね」
反町キャスター
「つまり、会社が持っている知的財産の価値というものをわかっている人がその会社にいるのかどうか。そういう話ですか?」
肥塚氏
「知的財産の価値が、それもあるかもしれませんけれども」
反町キャスター
「これを漏らしてはいけないと線引きができる人。ここまではしょうがないねという、そこの線引きというのは、会社でいうとどういうセクションとして、日本ではそういう組織が発達しているのですか。欧米と比べてはいかがですか?」
肥塚氏
「発達の度合からいうとまだ途上かなと思っています。現場で、たとえば、研究部門、研究所があります。製造部門や商品開発を行っている部門がありますが、その部門ごとで、これは自分達の虎の子の情報だよねという認識は持っていたりしますけれども、会社によってはコーポレート全体の場合もありますし、分社経営されているところもありますが、管理組織の大きな単位の中で、そういったものを全体として、マネージ、最適化できていますかというと、なかなかできていない会社が多いのではないんですかね」
反町キャスター
「それはどういうことですか?」
肥塚氏
「私も別にガチガチの仕組みが一番いいと思っているわけではないんです。ただ、いろいろな考え方がありますけれども、人の組織が結構あると思うんですね。情報が人に帰属をしていて、その人がいないとわからないことが日本の会社は非常に多いですね」
島田キャスター
「でも、ノウハウを持っている技術者の人に対してリスペクトがあるかというと、そのあたりはどうなのですか。現場を見て」
湯之上氏
「リスペクトされているとは言えないから、人の移動が止まらないんだと思います」
島田キャスター
「技術者の方々、それなりにすごいなと思われるかもしれないけれども、全然違ういろんな層があったりするのですか。日本の企業の中には」
湯之上氏
「そうですね。技術者の中でもあります、ヒエラルキーが。その下の方の層に本当は貴重なノウハウがあるのかもしれないんだけれども、ヒエラルキーの下の方にいる技術者というのは冷遇されていたりもします。そういうところにスカウトの手が伸びると、ホイホイと行ってしまう。どうしてもそれはやむを得ないですね」
反町キャスター
「そのやむを得ない状況というのは、日本の企業のトップにそれは危険だというのは認識は十分広がっている?」
肥塚氏
「広がってきているはずですよね」
反町キャスター
「はずというのは、期待を込めているのですか。それとも実態ですか」
肥塚氏
「認識は変わってきていると思います」

日本企業の現状
島田キャスター
「技術は欧米では持って来ればいいではないかと、それがスタンダードなのを日本だけはやらないというのは、それは昔の栄光というか、日本が素晴らしかった時代のことを、夢を捨てられないからではないのかというふうに素人ながら思ってしまうのですが、そういうことはありますか?」
肥塚氏
「ものづくりに美学を持っていらっしゃる方もいらっしゃるのも事実でしょうね。いわゆるお金で買ってくることに抵抗感を感じていらっしゃる方がいらっしゃるのも事実だと思いますが、手法ですからね。自分で開発するという手法もあれば、他から市場から調達してくる。それは使い分けてもいいのではないでしょうかね」
反町キャスター
「今のお話で、そこの部分は、日本は捨てきった方がいいのですか?」
湯之上氏
「私はかつて技術者だった。現在もう技術者ではないです。辞めろと言われて辞めたから。世界全体では、技術なんてという言葉は嫌なのだけれども、技術はビジネスをするうえでの一前提条件に過ぎないんですよ、世界全体で。ところが、日本ではかなりのハイテク企業は技術が全てだと。だから、技術で勝ってビジネスで負けるという、そういうような言葉が言われたりするんですけれども、世界はそうではない。技術というのはビジネスをするうえで一前提条件なんだと。それをどうやって調達するか。買ってくるか、あるいは自分でつくるかと。買ってくる方が早いのであれば、そうすればいいではないかと。これが世界のスタンダードで、日本も全部自前主義で、全部自分で技術開発するのではなくて、買えるところは買ってきて、ここは肝の競争力を発揮する技術だから、ここは自分でやって守るというふうにするんだったらいいと思うのですが、現在のところそういう企業は少ない。ないことはないのですが、全部自分でやりたい。何か日本は技術に対する愛着とか、技術開発が好きなのではないかと」
反町キャスター
「それに対して良い感じを持ってしまう。これは間違い?」
湯之上氏
「職人の世界で、芸術品をつくっているわけではなく、工業製品をつくる世界なので。だから、これは現在、世界で70億人を相手にビジネスをしなければならないわけです。だから、1億人だけを見て、工業製品をつくっているだけでは勝てないわけですね。世界全体を見て、しかも、スピードが非常に重要視されている時代なので、自分のできるところ、できないところはよそから買うなり、協力するなり、提携するなりというふうにしないと、日本のエレクトロニクスは生き残れない」

国の対策は
島田キャスター
「環境整備はまだまだできることがあるということですが」
山際議員
「大切な情報をオープンにして権利を守る特許の世界の話です、主に言えば。ブラックボックスの話と分かれるのですが、両方に対して制度は法律としてつくってあります。不正競争防止法というのがまさにブラックボックスの部分が漏れた時にどうするのかを決めてある法律なわけですね。その中には、今回の東芝のようなことがあった時に、刑事的な罰と、民事としての訴訟をどういう形でやっていくかの根拠になっている法律になっているわけですね。そういう意味での環境整備というのは一応形としては揃っていると思うんです。問題は、運用の部分なわけです。これが営業秘密である、あるいは大切な技術である、それが本当に営業秘密であるということをきちんと証明していかなければ、何か訴訟が起きた時に企業の方は勝てないわけです。そのために、政府として指針というものを出しているわけです。指針を出していますが、その指針が少し明確ではないのではないかと累次に渡り改正もされてきているのですが、技術の指針はまだ改正されていない部分もありまして、それを現状に沿ったきちんと根拠になるように指針をもう少し明確にしていくということは当然環境整備の1つとしてまずあるでしょうね。それからもう1つは、先ほどからお話が出ているように結局政治の側、あるいは国の側にできることというのは環境を整えることだけなわけですね。実際に各企業の中に手を突っ込んで、こう守りなさい、これをやりなさいというようなことは、『官僚たちの夏』の時代にはあったのかもしれませんけれども、もうそんなことは時代錯誤だと皆わかっているわけです。となると、いかにフェアな競争環境をつくっていくかということに、政治というのは苦心をしていかなくてはいけない。そういう意味で、何がフェアなのかと言うと、それは時と場において変わってきますし、プレーヤーたる民間の皆さんと公とのもっと密なコミュニケーションがないとなかなか現実的なものにはなっていかないと思います。その仕組みが、きちんとした仕組みとしてワークしているかというと、一応その話し合いの場というのがあったとしても、それが本当にワークするようなものになっているかというとなっていないというのもあるんだろうと思うんですね。環境整備に徹するんだろうけれども、環境整備という意味においても、まだまだ国としてやれることはたくさんあるだろうと認識しています」

不正競争防止法
島田キャスター
「海外と比較して、日本の不正競争防止法で十分だと思いますか?」
山際議員
「たとえば、日本の不正競争防止法で厳罰化して、現在起きている問題が解決するんだろうか。我々はきちんと検討をしなければいけないですね。必ずしも、厳罰化をしたからといって情報が漏れていくというようなことが目に見えて減っていくかというと私はそうではない気がするんですね。法律だけに頼るのではなくてもっと違う部分を皆で工夫していかなければいけないんだろうと思います。もちろん、不正競争防止法において、1000万円が高いか低いかというのがあります、もう少し工夫の余地があるのではないか、検討していかなければと思いますし、海外に漏れた時にどうするのか。個人的には海外の企業だろうが、日本の企業だろうが同じことをやった時には同じような罰というのが基本かと思いますが、しかし、海外に対しては厳罰化するべしという議論があってもおかしくないと思うんです。実際に、アメリカだって、フランスだって、ドイツだってやっているわけですからね。それは検討した結果、全体としてそうした方がいいのではないかという流れなら、当然法の改正というものを視野に入れていくべきだろうと思います」

法律は抑止力となるのか
山際議員
「技術者が日本国内だけで見たらあまっていると言われるのかもしれないけど、海外で、グローバルな中で日本の技術者が活躍できる場があるんだとすれば、それは日本の企業が日本だけの企業だけではなくて、海外の企業と組んでその方々が活躍できる場ができてくればいい。我々が目指すべきものは何かと言えば、日本の経済の発展なわけですね。それが結果として日本の経済の発展につながっていくのであれば、敢えてそこに壁をつくる必要なんてないのではないかというのが個人的な考え方なんです。もう1つ、安全保障上の問題が出てきますね。これを国という単位で考えるならば、どうしてもその観点が必要になってきます。経済産業省が担っているものとして外為法というのがありますね。安全保障上、絶対に守らなくてはいけない、まさに国単位で守っていかなければならないんです。それについては出してはいけないというルールをつくっているわけです。純粋に経済の部分でいえば、それをつくる必要はないと思いますね」
肥塚氏
「不正競争防止法ですから、経済法として見れば、その通りなんです。たとえば、アメリカの例ですけれども、経済スパイ法は刑事法です。なぜこんなものをつくったかというとアメリカは州ごとに刑法があり、民法もあります。その中で不正競争防止法に相当する、たとえば、トレードシークレットというのはずっと考えてきたのですが、安全保障上の脅威に直面した時に、連邦レベルで刑事的な抑止力が必要だということでつくられた法律。罰金が事件によって異なると書いてありますが、条文が分かれていまして、1つは、国外への流出に対する刑罰規定になっていまして、もう一条は国内のものになっている。海外に対して流出させたものを伸ばしましょうというコンセプトでつくられていますね」

企業の構造改革の必要性
島田キャスター
「日本の企業が目指すのはどういう方向がいいと思いますか?」
湯之上氏
「オープンにすることだと思います。技術は流出を止めることはできないです。さらに、日本の国だけに閉じこもって全てのことをやるというのはもう時代遅れなんですね。今回の東芝もハイニックスを訴えていますけれど、ハイニックスと次世代のメモリーで提携している。だから、いろんな世界のメーカーと手を組んで、次世代の技術開発していく。その中で日本が強いところは伸ばしていく。世界にオープンな環境をつくることが必要だと思っています。国が出るとすれば、国家プロジェクトとか、コンソーシアムとか、山のように半導体やエレクトロニクスの分野でつくられているのですが、これが問題だと思っています。税金で国家プロジェクトをやるから参加する企業は全部日本にしてくれと。海外企業を全部シャットアウトする傾向があるんです。ところが、欧米のコンソーシアム国家プロジェクトについては、どこの国の企業でも参加していいと。そういうふうにすると、世界の英知がそこに集まり、そこで技術が見出され、産業が興され、雇用が生まれる。結果的に、アメリカのコンソーシアムはアメリカに寄与するという仕組みになっている。ところが、日本は、国家プロジェクトコンソーシアムを鎖国しているので、世界の英知がそこに集まらないんですよ」
山際議員
「できるものは、やればいいということだと思うんです。全ての産業の分野において今のが1つの解ではないということだと思うんです。オープンという意味で言えば、原子力の分野ですら、次世代の核融合技術というのは国際研究をやっているわけではないですか。既に日本も開き始めていることは間違いない。ただ十分かと言えば十分ではないです。ですから、規制改革会議もやり、産業競争力会議もやり、日本最高戦略をつくり、1つ1つこなそうということで進んできたと思うんですね」
肥塚氏
「一概にこうというのは絶対にないですね。分野によってという話は確かにあると思います。結局何を自分達の利益の源泉として考えているんですかといった時に、技術なのでしょうか、そこから生み出される商品なのでしょうか。その商品に付帯した商品の全部なのでしょうか、もっと言うと会社によっては生活のライフスタイルを提案しているんですという会社もありますよね。何を武器にしていくのかというものをきちんと考えて、それにあった組み立てをしていくことは絶対に必要だと思うんです。研究開発も国としてお金を投じて、何か研究開発をやっていこうとした時に出口が明確になっていれば、どこから、エンジニアを呼んできてもいいと思います。だから、結局権利として出てきたもので守るべきものは、たとえば、権利として獲る。ビジネスモデルとして、日本のメーカーがそういったところにちゃんと入り込んでいって、自分達にもお金が落ちる仕組みを皆でつくっていけるということであれば、研究開発の技術のところは、いろいろな国から知恵のある方に集まっていただいて、いいものをつくったらいいのだと思います。あくまで、そこからどういったビジネスを起こして、日本企業がどうやって利益を上げるのか、そこをどう考えるかという問題だと思います」
反町キャスター
「何かやらなければいけないとすれば、国なのですが、民間のマインドチェンジなのですか?」
肥塚氏
「マインドのチェンジなのでしょうね」

湯之上隆 半導体産業・電機産業コンサルタントの提言:『鎖国をやめる』
湯之上氏
「世界の英知を日本に集める。日本人だけで閉じてやろうと思わない。しかも、ビジネスは世界70億人をターゲットに考える。従って、世界全体を考える。鎖国をやめてオープンにすることが日本にとって一番必要なことだと思っています」

肥塚直人 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の提言:『戦略』
肥塚氏
「今日のお話の中で何度か『戦略』という言葉を使わせていただきましたけれど、今日の主題は技術流出でした。技術流出をどうやって防いでいったらいいのでしょうかという話の中で語りきれなかったところもありますけれど、技術もしくは情報にメリハリをつけて、自分達の重要な情報や技術はきちんと守っていかなければいけないですねという話を申し上げたのですが、そこに必要になってくるのは戦略であって会社としてどういうフィールドでお金を儲けていこう、どういうビジネスをやろうと思っているのか、ここの戦略がきちんとあって、その戦略を実現するためにはどうやって技術開発をするか。どういう技術を守っていくのかというマネージメントをしていく必要があると思っています」

山際大志郎 自由民主党経済産業部会長の提言:『情報リテラシーの強化』
山際議員
「技術、情報へのリテラシーが正直申し上げて、我々日本人はかなり低いレベルにあると思うんです。技術、情報なるものが本当に大切なものであるかどうかという判断そのものがつかなければ、先になかなか進まない話ですね。たとえば、個人情報保護法というものがあります。この間までお騒がせをしました特定秘密保護法というのがあります。結局はその情報が大切なものかどうなのかがわからなければ、それを利活用しましょう、これは放っておいてもいいですねという判断もつかないわけです。そこの部分を強化するところから始めないと、戦略的に物事を先に進めていくことはできないのでないかと思います。逆に言えば、それができれば現在起きている問題を解決できるだろうと思います」