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2014年1月27日(月)
再注目2014オウム公判 再拡大?後継団体現状

ゲスト

中村裕二
オウム真理教犯罪被害者支援機構副理事長
高井康行
弁護士
西河素史
公安調査庁 情報分析官(後半)
平松秀敏
フジテレビ社会部デスク

オウム・平田被告公判 裁判員制度適用の是非
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平田信被告の起訴内容
・逮捕監禁罪
・爆発物取締罰則違反罪
・火炎瓶処罰法違反罪
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八木キャスター
「平田被告の裁判に裁判員裁判が適用されましたが、これまでのオウム裁判との違いというのは?」
中村氏
「これまでのオウム裁判というのは麻原死刑囚も含めて書証と言って、紙の証拠がたくさん出てくる。おそらく数万点、証拠物も含めるとそのぐらいになると思うのですが、今回は裁判員裁判ということで、直接、当事者から話を聞こうということで、書証の数は本当に限られています。刈谷事件と自作自演事件と分けているのですが、それぞれ20点ずつぐらいと言っても過言ではないと思うんです。証拠も見取り図だったり、拉致に使われた車の写真だったり、当事者から話を聞くための、手助けとなる紙としての証拠です。実は、麻原裁判の時には二千数百人の被害者がいるということで、二千数百人分の診断書が証拠として出てきたのですが、弁護側が全部、不同意と言って裁判官は見ちゃいけないという訴訟戦術に出たために、全部のお医者さんを呼んでこないといけない羽目になったわけです。そんなことをやっていると10年も20年も裁判がかかってしまうので訴因変更と言って、起訴する内容を取り下げて重い障害を負った人とか、亡くなった人だけの診断書とか、死亡死体検案書とか、そういったものだけで裁判を進めるということになった。今回は裁判員裁判ということで、紙ベースのものがすごく少ないです」
八木キャスター
「そのことは真相を知るうえでどのような影響があると見ていますか?」
中村氏
「傍聴席から見ていても話が見えやすくなっています。それだけ裁判所の準備もしっかりできていたと思うのですが、弁護側と検察側の公判前整理手続きにたっぷり時間をかけて、争点を絞りこんで、証人を絞り込んで非常にわかりやすくなっているなというのが印象です」
八木キャスター
「平田被告の裁判に裁判員裁判制度が適用されたことをどう受け止めていますか?」
高井氏
「条件的に当然これは裁判員裁判が適用されるわけですけれど、ここでちょっと裁判員裁判と通常の裁判とどう違うかということをお話させていただきたいと思います。これまでの通常の裁判、私に言わせると精密司法だから国民がわからないわけではないんです。事件の全体像をきちんと法廷で立証するためには、精密司法の方が良いと思います。たとえば、富士山を裾野から頂上まで全部綺麗に書くという作業が精密司法における立証作業だと思ってください。それに対して裁判員裁判で使われている、ある意味、核心証拠。どういうものかと言うと裾野まで書いているとなかなか大変だ、頂上だけ書こうじゃないかと。富士山というのは頂上だけ書けばだいたいわかるでしょう、これが富士山と。ですから、頂上の部分だけ書けば富士山だとわかるのだから裾野はいらない。頂上だけの部分を書くのだったら時間もそれだけ少なく済むし、証拠もすれだけ少なく済みますというのが現在の裁判員裁判だと思います。ですから、事件の全体をきちんと国民の前で明らかにするという観点から言うと裁判員制度というのはなかなか適していないんです。今回のように大きな組織的な事件でかつ背景もある。長い間、前の事件の時に審理されましたが、たまたま起きた事件を単発で切り取って立証しているために、オウムとは何者だったのか、どういう目的でサリンをつくっていたのかわからないわけですよね。地下鉄事件を起こすために彼らはサリンをつくっていたわけではないんですよ、何かもっと別の目的のためにサリンをつくっていた。結局何のためにつくっていたのか、さっぱりわからないまま一応、終結している状況になっている。今度の事件は本来なら、1つは時間が経っていて昔だったら言えないんだけれど、現在だったら言えるということもあるかもしれないです。ですから、できれば普通の手続きでしっかり全容を解明する、あるいは立証するというような手続きが望ましかったのではないかと思います。現在の法制度では裁判員制度の条件を満たしていますから、適用される。あとは除外例が適用されるかどうかということです。私は除外例が適用されるべき案件ではなかったのかと思うんですけれども、除外例にはあたらないという判断で、裁判員裁判で行われているというのが現在の状態です」
中村氏
「確かに除外条件にあたるように思えるのですが、実際裁判員制度のメリットというのをどこまでいかせるのかということを試されている裁判ではないかと思っています。先ほど高井先生がおっしゃったようになぜオウムはサリンをつくったのか、本気で彼らが千年王国をつくろうと思っていたのかどうか。そういうことについては、これまでの裁判では出てきていないのですが、裁判員がどこかの機会に質問するのではないか。またなぜ優秀な大学を出たエリート達が坂本龍彦ちゃんの口を塞いで窒息死させることができたのか。あるいは地下鉄でサリンをまくことができたのか。人間の謎とか、心の闇の部分について、裁判員がどういう質問していくのか。これまで職業裁判官の人達は、判決に必要なことは必ず聞いたのですが、それ以外の周辺的なことはなるべく捨象してきています。マインドコントロールで刑が軽くなったという例もありません。裁判とは直接関係なくても、私達が知りたいことを率直に聞いている制度としては、私としては見直しも含め、今後裁判員制度というのは予定されているわけですけれども、今後どういう形でより改善されていくのか、そういうことの議論の種を集めるための試金石となるケースではないかなと私は考えています」

被害者参加の影響は
八木キャスター
「被害者参加制度が適用されたことをどう見ていますか?」
高井氏
「検察官は公益の代表者です。公益の中には被害者の利益ももちろん入っているわけですけれども、被告人、あるいは被疑者の利益も入っている。ですから、検察官が聞かなければいけないこと、あるいは聞くべきだと思うことと、遺族の方が聞きたいと思うことと聞くべきだと思うこととは必ずしも一致しないんです。被害者参加によって、遺族の方は限られた範囲ですけれども、被告人質問ができることになっています。ですから、これまでだったら、これも聞いてほしいと歯ぎしりしていたはずのことが、ご本人の口できちんと質問できることは非常に良いことだと思います。これがまた我々としては、被害者の方、あるいは遺族の方が立ち直っていかれる1つの過程の一助になると思っています」
反町キャスター
「判決に影響しますか?」
高井氏
「その質問に対して、被告人がどのように答えるかですね。裁判員にも影響を与えるのは間違いないです」

法廷での死刑囚証人尋問
八木キャスター
「死刑囚による証人尋問をどのように評価していますか?」
高井氏
「なぜわざわざ東京地裁でやったかが理解できない。東京拘置所の方でそういう法廷がつくれないということであればやむを得ないのですが、東京拘置所の方できちんと裁判員の方も含めて法廷のような場所を提供できるのであれば、拘置所でやるのが筋ではないかと。死刑囚をわざわざ拘置所から出して、東京地裁まで連れてきて、物々しい警戒をして、証人尋問の証言台に立たせる必要性はどこまであったのか、やや疑問だとかねてから思っています。一部の報道では、裁判員裁判ですから、法廷で直接、裁判員の目の前で証言してもらうべきだという意見があったとのことです。それは拘置所の中でも、裁判員の方に行ってもらって、そこで証言を聞いてもらえばいいわけで、なぜ東京地裁でなければならなかったのか、なかなか理解しにくいところです」
中村氏
「確かに物々しい警備で、麻原死刑囚の裁判も見ましたけれど、法廷の中はそれ以上の警備だったと思います。ただ、私の考えとしては裁判は公開されなければならない。憲法上の保障されているものなので、そうなってくると現在東京地方裁判所の104号法廷を使っているのですが、裁判所の法廷で傍聴人も入れて裁判をするというのは大原則だと思います。確かに拘置所でもできなくはないのでしょうけれども、そこに裁判員に臨んでもらって、傍聴人が入れない状態でやるというのはやはり原則から外れる気がします」
八木キャスター
「視聴者からですが、『オウム裁判は長引いているわりに、エリート達がなぜ狂気に走ったかという真相が見えません。死刑囚が証人として裁判に出廷した場合は少しでも真相を語り、少しでも事件の真相が明らかになることを願います』とのことですが。死刑囚から新たな事実が出てくる期待というのはいかがですか?」
高井氏
「私もそのように期待したいですね。自分達の法廷の時にはまだ争っていて、刑が確定する前。でも、現在は確定してしまった。そういう精神状態の中で証言する場合に、自分の刑が確定する前の証言と違ってきても不思議ではないなという期待は持ちますね。そこでなぜ自分がそういう世界に入っていってしまったのか、そういうことについて虚心坦懐にもし語ってくれるのであれば、我々にとっても参考になり、期待したいところですが、そうはいくのかなという気持ちも一方ではあります」
八木キャスター
「中川死刑囚を見ていて、そのへんの期待についてはいかがですか?」
中村氏
「冷静には語っているのですが、19年の時の流れが重いなという気がします。彼はとてもスマートな証言をしたのですが、突然の質問に対しては記憶が定かではないと。それは本当にそうなのだろうと思わせる印象です。だから、本人が本当のことを話したいと思っていても、19年という歳月は壁になるかもしれないというところを心配しています」

アレフ、ひかりの輪 公安調査庁の対応は
八木キャスター
「どのような観察を日々行っているのでしょうか?」
西河氏
「最初に観察処分についてですが、団体規制法に基づいて処分にふしています。観察処分にふされると大きく2つあります。何をしているかと申しますと、1つは3か月に一度、観察処分にふした団体から報告を義務づけるということが1つあります。もう1つは、公安調査庁長官が必要と認める時に立ち入り検査を行う。立ち入り検査と申しますのは、教団の施設に入って物品等を検査するということになります」
八木キャスター
「必要だと思われることは、これまでに何回かあったのですか?」
西河氏
「これまで観察処分にかかっていますのは、平成12年2月からになるのですが、これまでに述べ19都道府県になりますけれども、261回に渡って、オウム真理教が所有、または管理する施設に立ち入り検査を実施しています」
反町キャスター
「強制力はどのくらいあるのですか?」
西河氏
「強制ではないです。間接強制になるのですが、検査官の五感で検査する。必要があれば施設にいる信徒に質問する。最近は質問をしても答えない信徒が増えていまして、答える義務はないというような対応をしてくる信徒もいます」

オウム後継団体の現状
反町キャスター
「組織内における教育の手法が変わってきたのですか?」
西河氏
「オウム真理教の沿革的なことからお話しますと、オウム真理教はご存知の通り麻原死刑囚がつくった団体ですね。平成12年に団体規制法に基づく観察処分にふされるのですが、その直前に上祐氏が国土利用計画法違反で逮捕された、上祐氏が広島刑務所から出所します。出所して直ちに上祐氏は教団に復帰し、何を行ったかと言いますと、抜本的教団改革を打ち出しました。名称を変えるということです。観察処分にふされると同時に『アレフ』と名称を変えました。名称を変えたことによって、観察処分を免れようということで始まったのです。上祐氏は平成17年、18年頃に観察処分を免れるために、さらに麻原隠しを徹底しようということで『ひかりの輪』というものを立ち上げますが、平成24年頃の写真では、アレフの祭壇の真ん中に麻原死刑囚の写真が掲げられる。なぜかと言うと麻原原点回帰が進んだ。より先鋭化しているというのが現状です」

オウム後継団体の教義
西河氏
「表立った、昔のような化学兵器とか、生物兵器というような顕在化したものの危険性はないのですが、昨年公安調査庁が立ち入り検査をしました。その時に確認されたものですが、日本刀のようなもので紙を串刺しにしています。そのうしろ側には『タンカ』(神様の絵)が掛けられている。この白い紙は何かと申しますと、写真ですね。串刺しにされている16枚の写真の人達は、我々公安調査官だったり、敵対する弁護士の方だったり、警察官が串刺しになっていました。タンカの前で、日本刀で串刺しにする行為を専門家の方に見ていただきますと、呪い殺す呪詛行為であると。このような呪詛行為がアレフの施設で確認されました。この行為の背景に何があるかと申しますと、麻原死刑囚は平成6年2月に中国に旅行をするんです。その時に、タントラヴァジラヤーナ。地下鉄サリン事件当時の時に耳にされたことがあろうかと思うのですが、殺人を肯定する教えです。タントラヴァジラヤーナの教えとして『真理に仇する者は殺せ』と麻原死刑囚は説きました。さらに目的のためには手段を選ぶなというのがタントラヴァジラヤーナの教えの集約された部分です。そうした教えが背景になければまさに真理に仇するもの、我々公安調査官とか、アレフに敵対する弁護士というのはまさに真理に仇なす者です。オウム真理教の教えを広めるのに障害となる者。その人間はまさに呪い殺してもいいというような麻原死刑囚の教えが背景にあったのではないかと見ています」
反町キャスター
「圧力をかけるとか、取り調べを強化するとか?」
西河氏
「現行法で対応します。団体規制法に基づく観察処分を適正かつ厳格に実施していく形で臨んでいます」
反町キャスター
「信者の数を見ると激増しているわけではないですね。組織的な広がりの頭打ち感をどのように見ていますか?」
中村氏
「彼らとしてみれば、入った人には全部残ってもらいたいということなのですが、昔のように逃げた人を拉致してきて教団に戻すとか、あるいはお金持ちの信者になった人をそのままお布施させて全財産を教団に寄付させるような強烈なことを現在やってしまうと、団体規制法の再発防止処分という強烈な法的制裁を受けることになりますので、そこは彼らも慎重に様子をうかがいながらやっていると思います」
反町キャスター
「と言うことは、危険性はあまり高くないという話にはならないのですか?」
中村氏
「危険性という意味では、また地下鉄サリン事件のようなことが起こるかという意味ではすぐそういった危険に直面していることはないと思います。ただ、彼らの持っているポテンシャルをどんどん大きくしてしまうことによって、たとえば、1000人が2000人になれば、2000人が今度はスカウトマンになるわけですし、それが4000人になることは容易なことです。ねずみ算式に増えていった場合にどうなるのか。もともとは麻原尊師の命を助けるために信者を増やさないといけないということで、勧誘されている子供達もいますし、そういう意味ではいつ変質するかという危険はつきまとっていると考えていいと思います。その象徴が串刺し写真ではないかなと思います」

公安調査庁の対応は
平松氏
「25の自治体が連絡会をつくり、国に対して定期的に申し入れをしているんです。団体規制法は5年ごとに更新するのですが、更新の期限を撤廃してほしいとか、アレフとひかりの輪は不動産を取得するので不動産を取得する時には報告義務を課してくれというのを国に要望しています」
八木キャスター
「公安調査庁としての対応はどのようになっているのでしょうか?」
西河氏
「公安調査庁としては地域住民の方々の恐怖感、不安感というのは良くわかっていまして、要望も法整備を求める声も理解しています。現行法、団体規制法の施行状況を踏まえて必要性、要否を検討していかなければいけないと考えています」

オウム後継団体と近隣住民
中村氏
「各地で、住民との間でトラブルが起きているのは事実です。たとえば、足立区でも入谷のビルを取得して、初めてと言っていいと思うのですが、アレフが自前で土地と建物を取得して、実際には合同会社という会社を使っているのですが、そういう形でこれまで賃貸だったものが所有権化してきている。そういう意味で、永久的な拠点となる危険があって、それを住民の人達は非常に不安に思う。これは当然のことだと思うんですね。ですから、不動産取得情報に関しては早めに自治体に教えてほしいというのは当然の要求だと思います」
反町キャスター
「入谷のビルの資産価値はどのくらいあるものなのですか?」
中村氏
「私が聞いている限りでは、土地が1億円ぐらい、建物が改修費などを含めて8000万円ぐらい」

オウム後継団体による賠償は
反町キャスター
「それだけの資産をつくるぐらいの余力があるなら、賠償金はきちんと納入されているのですか?」
中村氏
「滞納状況にあります。現在、私達支援機構の方でアレフを相手方として、東京簡易裁判所で調停をやっています。調停が進行中なので調停の詳細については、この場ではお話できないのですが、残りのお金をどうやって払うのかということで、我々としては支払い条件を決めるように協力を求めて話し合いを進めているところです」
八木キャスター
「賠償総額は約38億円ですが」
中村氏
「38億円は生命・身体の被害を受けた方々です。たとえば、坂本弁護士一家殺害事件とか、仮谷さんの事件や松本サリン事件、地下鉄サリン事件、信者の方でも殺されてしまった人達、そういう債権者の分です。アレフが言っている賠償済みの18億円というのは、オウム真理教の破産事件によって配当された分も含まれているんです。そのうちの15億円以上は破産手続きで配当されたものですから、アレフが直接被害者に賠償したものではありません。現時点では債務は引き受けたということで、それを払いますと言っているのですが、具体的にいつまでにいくら払うかということについては、これから話し合いをしないといけないというのがベースにあります。私達が調停を起こしたあと、たとえば、昨年の例で言えば、アレフの方が5000万円、共助基金というところに振り込んでいますし、ほったらかしにしていればだんだん減っていたということもありますので、やはり何らかの形で、どこかで合意をきちんとして、それができないならば債務名義が取れるように、法律家が大勢集まっていますので、皆で考えていかないといけないことだと思っています」

中村裕二 オウム真理教犯罪被害者支援機構副理事長の提言:『自分の頭で考える』
中村氏
「この間、裁判を傍聴した時にも感じたことなのですが、自分の頭で考えないといけない。楽をして教祖に心を盗まれていく、そのパターンがオウム事件の本質の1つと考えています。特に若いお子さん達が自分で考える機会をどんどん奪われているのではないか。人の命がいかに大事なのか、人の命より大切なものがあるのか、ないのか、そんなことすらわかっていない。たとえば、オウムの信者と話をしていて、死ぬのは怖くなかったのと聞いた時に、死ぬのは怖くなかったと言うんです。何が一番怖いのと聞くと、地獄に落ちることです、それが一番彼らの心を縛りつけるキーワードなんです。だから、地下鉄にサリンも撒くし、住宅街にサリンを撒いて松本サリン事件を起こすし、坂本さんの家に入って、1歳2か月の龍彦ちゃんの口を塞いで窒息させることができる。エリート達が凶悪な犯罪に臨んでいかないようにするためにも、大人が、子供の時からきちんと自分の頭で考えようねと伝えていく必要があると思います」