プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2014年1月22日(水)
経団連と連合が生春闘 どうなる賃金&雇用

ゲスト

宮原耕治
日本経済団体連合会副会長
古賀伸明
日本労働組合総連合会会長

2014春闘が事実上スタート どうなる賃上げと雇用改善
八木キャスター
「労使の賃上げをめぐる方針について経団連の『ここ数年と異なる対応も選択肢』というのは、ベースアップを容認すると捉えていいのでしょうか?」
宮原氏
「結論から先に言えば、それはこの数年と異なる対応を全て含みますから。その中にベースアップというものも入るというのが結論であります。そこに至る考え方というか、それもお話させていただきたいと思いますが、本当に長い間待ちに待った日本経済の再生に向けた動きが感じられるというか、そういうアベノミクス効果によって日本経済が温まってきているということだと思います。これは個別の会社にとってとても大事なことだと思いますが、何より大事なのが、日本経済がデフレから脱却して、経済再生に向かうという、その本当に大事な転換点と言いますか、そこにまた立っているというふうに、我々経済界は思うわけであります。ですから、そういう認識に立って、これは安倍総理がいつも言っておられることですが、経済の好循環を実現し、この成長の勢いをさらにつないでいくということが是非必要なことだと思いますので、ここで収益の上がった企業はこれを物的な投資だけ、たとえば、研究開発とか、設備投資とかになると思いますが、それだけではなくて、人的な投資に向けていく時が来たということだと思うんですね。その中身を言えば、雇用の拡大、改善とか、また賃金の改善と。それに収益の改善も充てて、回して、振り分けていく。それが次の循環を呼び起こしていくということだと思いますから。そうすると賃金の改善はいったいどうするんだという話になるわけであります。これまで経団連はこの異常な円高が続いた、あるいは諸々の政策がなかなかうまく動かなく、そのためにやはり賃金については抑制気味な路線を取らざるを得なかったわけですけれども、これをここで変えて、ここ何年かとは異なる対応をそれぞれの企業も考えていこうじゃないかということになったわけであります。この過去数年間と異なる対応というのは非常に幅が広いし、含蓄がある言葉だなと。こういう具合に自画自賛しているのですが、ですから、その中に、たとえば、定期昇給というものもある。詳しいことは述べませんが、定期昇給もあれば、いろいろな手当てを改善するというのもあるでしょう。一時金ボーナスというのを弾むというのもあるでしょうし、それからここ何年かずっとやってこなかったベースアップというのをこの基点で検討するということも含まれると。そのどれを取るかというのは各企業の置かれた環境、状況はまちまちです。さらにもっと言えば、業績の上がった企業ばかりではないわけですね。その円安がかえってマイナスになるそういう業種もあるし、賃金を上げたくても上げられない、ない袖は振れないという、そういう経営者もあるわけですが、そう言った対応を含めて、それぞれの企業でとことん議論して決めていっていただきたいということでありますので、非常にそういう意味でこの数年と異なる対応というものを幅広く捉えていただきたいというふうに思います」
八木キャスター
「古賀さんは月例賃金にこだわるのはなぜですか?」
古賀氏
「そもそも現下の情勢はデフレからの脱却をどうしていくかということが非常に大きな日本社会のテーマになっているわけでしょう。我々はこの10年来、現在のデフレとは賃金デフレだと言い続けてきたんです。名目賃金が先進国で下がっているのは日本だけだし。しかも、物価の下落以上に下がっているわけです、賃金は。そういう意味からするとやはり賃金は上げていかなければならないという、賃金デフレをどう解消していくかということを訴え続けてきた。しかし、残念ながらそのことに対しなかなか一緒のテーブルに経営者も乗っていただけなかった。しかし、ここにきて景気は上向き、物価上昇も上向きになってきたということからすれば、デフレを脱却する非常に良いチャンス、好機と捉えるということが、まず大前提としてあるわけで、そのためにはGDPの6割以上を占める個人消費をどう喚起するかということですよ。と言うことになれば、もう経済学者の中では通説になっている、恒常的な所得を上げなければ消費になかなか結びつかないわけです。一時金というのはいずれにしても業績によってものすごくぶれる。極めて重要なポイントは、我々は一般社員のベースアップをする、賃金を上げるということは必要なんだけれども、全体的に処遇の低い非正規とか、あるいは格差がこの間非常に出てきた中小企業で働く仲間とかをどういうふうに底上げするかということが求められているんですね。そういう意味では、月例賃金ということをメインにしなくてはならない。一時金の制度を持たないところもある。あるいは中小の方でも非常に一時金が少ないところが多いということからして、社会性をもっているのは月例賃金ですよ。これを上げることによって全体の底上げにつなげていくということが求められているのではないのか。もう1つ言わせてもらえば、最低賃金を決める基礎データも一時金は含まれないんですよ、現実的に。そういう意味ではこの月例賃金というのが非常に重要な役割を果たしていくし、まさにこれを上げることこそが消費を拡大する道になると。我々はこのように考えて、月例賃金に徹底してこだわろうということにしているわけです」

あるべき賃金体系とは
宮原氏
「ベースアップが行われなければ、その将来に関する安心感といったものが醸成できないということはないと思います。賃金と言うものは、賃金手当、賞与一時金、そういった諸々を総称したものでありますから、それが確実に年収ベースと言っていいし、確実に増えていくことが働く人の安心感になるということであります。ではどうやれば年収ベースの、この賃金の増改善が実現できるかと言うことは、これは企業が収益を増やす、その収益増が継続的に実現できる、つまり、政労使会議で我々が皆で確認したことは、企業の収益の改善が得られた場合、それを賃金の改善にもきちんと配分していくと、それを確認したわけです」

ベアか年収ベースか
反町キャスター
「それぞれの会社の事情があるから、本当はベースアップがいいけれど、そこまで書けないんだよという、そんな感じで受け止めていいのでしょうか?」
宮原氏
「やり方はいろいろあると思うんですよ。ベースアップというものが入らないと、将来に渡ってこの企業に勤めることで安心感を得られないかと言うと、そんなことはないと思う」
八木キャスター
「企業によって様々だし、一律は難しいということはいかがですか?」
古賀氏
「だから、それは難しいんでしょう。ただ、基本はどう考えても月例賃金というのは確かなものであり、それが上がっていく安心感がなければ消費にもつながらないし、それは当然のことでしょう」

連合ベア1%以上の妥当性
八木キャスター
「3.3%の物価上昇に対し、1%以上のベア要求は控えめ過ぎるのではないかという組合の方もいると思いますが?」
古賀氏
「連合の方針も経団連の方針と一緒で、それぞれを全てカバーする必要があるんですね。連合は何かバーンとぶち上げたけど、見たら誰もそんな要求してなかったというのでは何の方針かわかりませんから、現在でも景気の斑模様があることは事実で、業績のまだら模様がある。しかし、我々は月例賃金にこだわって月例賃金を引き上げていきたい。もちろん、2%にしたらどうだとかはありましたよ。しかし、1%と言うのは全ての組合がやろうじゃないかと。しかも、1%以上ですから。キャップは掛けてないんで。2%でも3%でもやったら良い訳ですから。しかも、今賃上げの表にもう一つ足りないのは、我々は1%以上さらに格差是正とか、配分の歪みを是正するためには1%を目安にしながら要求を組み立てるとも置いているわけです。そういう意味では皆がそこでやっていこうよと。要はミニマム的なものにして、それ以上は以上ということですべて含んでいるんですね。それと、もう1つはその3.3%の予想の中には当然ながら消費税が含まれている。消費税の性格と言うのは国民皆がそれぞれ負担しようということ、性格はそういうことですよね。従って消費税が何%上がる、それを自動的に企業に要求していく。しかも、先に上がるということがいくら先に決まっていても要求をし続けていくということは、これまでやったことないんです。1989年から消費税は導入されましたけれど、あの時も上がるからその分も含めて賃金引き上げの要求をという組み立てをしていないわけです。そう言う意味ではこの1%以上というところにその全てが含まれているということです」

あるべき賃金体系とは
八木キャスター
「賃金制度の見直しについて、全体的に上げるというよりはできる人を上げるということなのでしょうか?」
宮原氏
「若年層はそういう査定級は除くと。と言いますのは、若い人は新入社員として入社してきて、30代、40代までは生活的意味合いも非常に強い。能力がどれだけあるか、そう言ったこともまだよくわからないということもありますから、この年功的と言いますか、1年経てばいくら上がるという旧制度が残っているものがあると。ただし、その一定の年代を超えますと、現在特に製造業の場合にはまだこの賃金カーブが残っているところが多いと思いますが、非製造業、サービス業になると、まさに1人1人の能力とか、40代ではないですか、それをどんどん取り入れている企業が実態的には非常に増えてきている」
反り町キャスター
「終身雇用が崩壊となると言われつつも若い人にはその名残りがある。戦力と言うよりは育成と見ているわけですか?」
宮原氏
「その部分がありますね」
古賀氏
「私が思うにこの種の一番の課題というのは、日本のいわゆる『人』に値段がついていく、いろいろな経験をしながら、この人はこういう能力があるからこういう賃金を支払おうという。これは極めて良いところですね。いわゆる、職能給というものですね。ところが、海外はほとんどが仕事に値段がついているんです。この仕事をやったらいくらだという。これを日本の場合もどういうふうにミックスするかと言うことでしょうね」

非正規労働者の格差対策
八木キャスター
「視聴者からですが『正社員になりたい。安定した収入がほしいです。それが見込めないため、結婚もできません。賃上げも大切ですが、雇用形態の改革も実現してほしいです。経営は労働者側で力を合わせて実現していただけたらと思います』とのことですが」
古賀氏
「非正規労働者が38%というと、4割弱。しかも、その人達のほとんどが処遇が低い。正確な統計はないですけれど、不本意に私達は、本当はこういう働き方ではなくて、という人がおそらく4割ぐらいいる。その人達の多くの方々の中で、年収200万円以下の層が1100万人に迫る勢いになる。そうしたら、デフレの状況で消費を拡大していくということは、この人達に安心と将来の安定を与えないと、消費なんて拡大できないわけですよね。そういう意味から、今回、我々はまず時給30円アップ。これは賃上げで言いますと、約2%を掲げるのと同時に、昇級ルールを明確化し、あるいは正社員への転換のルールをきちんと制度として導入しましょうということをやる。また福祉は、たとえば、交通費は非正規労働者には出ないとか。現実あるわけです。そういうことを我々は要求として、1つずつしていって、いわゆる正社員の働き方のようなところにつなげていく。そういうことを春季生活闘争でも取り組まなければならないと思っています。結構、毎年取り組んでいますから、そういうルールをずっと整備したりするところが現に増えてきているんです。そういう意味では、これ以上増やしていくということが必要ではないかと思っています。もう1つは、非正規の方々は極めて残念なんですけれども、能力開発とか、あるいは職業訓練からも除外されていている人が多いんです。そういうのも組み込んでいく。能力開発をすることによってより付加価値の高い仕事をするようになる。そういうことも必要でしょうね」

限定正社員の是非
宮原氏
「最大の問題は、古賀会長もおっしゃった、不本意な非正規の方達をどういう形で、いわば救済という言い方もおかしいですけれど、彼らの希望に沿った道を用意できるかというところで、彼らに能力を磨く機会を、研修とかも含めて、企業とか、組合がやるというのもありますけれども、まず国がもっと力を入れてやっていくというのもあると思います。企業でやる1つのやり方として限定型の正社員。何が限定かと言えば、勤務地であったり、労働時間であったり、あるいは職種です。これを限定して、いろいろな事情、移動はしたくないとか、親の介護があるとか、こういう方にも非正規ではない身分の保障のある正社員への道を用意していくことが大事だと思います」

裁量労働制の是非
八木キャスター
「裁量労働制の拡大については」
宮原氏
「そちらの方は非正規対策ということではなく、正規と言われる、我々のようなサラリーマンは決まった時間を働いて、それを超えればオーバータイムということになる働き方をするんですが、ある種の規格型の業務。たとえば、研究とかに携わる方は、ある程度時間外というものは、あらかじめ組み込んだ給与体系にして、そこから自由に働きなさい、実際の労働時間は問いませんと、より自由な働き方に。これも無限定型の正社員ということになるかもわかりませんが、非正規との関係で言えば、やはり限定型の方が非常に大事ではないかと思います」
八木キャスター
「限定正社員という働き方をどのように見ていますか?」
古賀氏
「多様な働き方を否定するつもりは全くありません。もちろん、いろんなライフサイクルの中で、多様な働き方は当然メニューが多ければ良いわけですから。ただ、この限定正社員というのは、しかも、勤務地や職種を限定しているというのは現在でも企業の50%以上がもう導入しているんです、業種によっては。それはそこの労使がきちんと話をして、人事管理上、処遇上のこととして位置づけながら協議を整えてやっているわけです。だから、そういう意味では私どもはこの制度について真っ向から反対はしません。しかし、それはあくまでも業界、あるいは業種に応じ、労使がきちんと話をし、ルールを決めれば良いことであって、国が何か強制的に全国一斉的に言えるものではないということが1つです。2つ目に国が限定正社員制度というのを出してきたのは、まさに解雇ルールの規制緩和の脈略から出てきたんです。それはどういうことかと言うと、たとえば、勤務地でそこの会社がなくなったら、それは自動的に解雇になるんです。解雇になっても、法律違反ではないんです。会社の中で、もしその仕事そのものが職種限定として、職務限定でなくなったなら、それは解雇になっても仕方ないんです。そういう法律に仕立てるということまでおっしゃっている方々がいらっしゃったから、我々は徹底して反対をしたわけです。現在もしています。あくまでも国とか、行政は何をすればいいかと言うと、限定正社員や、いろんな働き方に対して、うまくルール化をして、経営側も働く者も、それを納得して、イキイキと働いている好事例を紹介すればいいんです。好事例を紹介したことを受けて、それぞれの会社がきちんと労使で話し合えば良いことであって、わざわざ国が一斉にそういう制度を入れる、入れない、あるいは入れた時には自動的に解雇ができるというようなことを言う必要はないんです」

持続的賃上げのために 必要な政策とは
八木キャスター
「デフレを脱却するために、持続的に賃上げが続くことが必要であると思います」
宮原氏
「2013年度、アベノミクスが成果を発揮した初年度です。この1年はいわば成功してここまできている。けれど、この1年で終わったのでは、これは本当に何もならない。2年目の好循環、3年目の好循環が継続的に続くことが絶対に必要だと思います。その好循環というのは、どこからスタートするのかということを申し上げたいのだけれど、これはやはり企業が高収益を上げる、業績を改善させる。これが続くということが好循環の起点になる。ですから、しっかり稼ぐ、しっかり稼げるという環境と言いますか、条件づくりをしていかなければいけない。もちろん、各企業は自助努力をやるわけですけれど、まだまだ政策の面で具体的なことが見えてきていない。いわゆる成長戦略と言われている部分があります。今年の6月までに改訂版を出すということですが、ちょっと遅いのではないか。もっと早く4月に消費税も上がるわけですから、その時点に合わせたぐらいで、完璧なものでなくても良いので、大きな柱として、これとこれはいつまでにやるというものを出していただき、それは起業家マインドを非常に明るくすると思うし、将来の展望も比較できますから。この成長戦略というものをしっかり具現化してもらいたい」
古賀氏
「1つはやはり雇用をつくり出すことです。新しい雇用をどうつくり出すかということを皆が知恵を出し合っていかないと、簡単に持続可能な世界というのはできないわけですから。2つ目は、やっぱり人への投資というのを経営側がしっかり考えていただかないと。短期、利益追求で、株主価値を上げることだけが、企業経営という物差しだみたいなことが暫く続いたわけです、現実的には。従って、コスト削減の中の人件費削減は最たるものだと、どんどん下げてきたのが実態です。人はコストではなく、付加価値を生み出す源泉。持続可能な社会をつくるためには、人に投資をして、付加価値を生み出し、投資をされた人がイキイキと働いて、良い社会をつくる。人というものに対してもっとじっくり見つめながらやらなければならない社会をつくることによって、初めて持続可能な社会につながっていくと思います」

宮原耕治 日本経済団体連合会副会長の提言:『国際競争力の強化』
宮原氏
「安倍総理は、日本の企業が世界一活動、活躍しやすい国にするとおっしゃっているわけですが、この提言の意味は2つありまして、1つは各企業がイノベーションとか、自助努力をする。2つ目はお願いになるわけですけれども、政策の国際競争というのがあると思います。これは為替、TPPの2つは既に改善が進行していますので、これは大変評価するのですが、その他のエネルギーコストの是正化、法人税の25%までの引き下げ。いろんな規制がありますから、その規制を取っ払っていくということ。もう1つは周辺国との関係の改善。これも国際競争力に現在、響いてくるということだと思います」

古賀伸明 日本労働組合総連合会会長の提言:『トリクルダウン型からボトムアップ型政策運営へ』
古賀氏
「トリクルダウン経済政策とか、トリクルダウン社会政策というのは、富める者を富ましたら、強いものを強くしたら、それは時間差があるけれども、各地域、あるいは貧困層にも富が均填をしていって、皆が、社会が豊かになる、そういう政策です。しかし、成熟社会の中では、こういう政策というのは一面に限界がある。それも必要ですけれども、ボトムをどうアップしていくのかということを両方備えた政策運営をしなければ、日本の社会そのものは、豊かにならないと思っています。たとえば、ボトムアップとはどういう政策かというと、最低賃金を上げるとか、非正規労働者の社会保険の適用を拡大するとか、セーフティーネットをもう少し構築するとか。その種のことを、きちんとボトムアップ型の政策も同時に打たなければならない。そのことこそが立法行政府としての政府の責任だと思います」