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    【テーマ】
  • 『シリーズ「エコ技術」第1弾
    地球温暖化防止の切り札となるか!?
    ヒートポンプ技術の現状と課題』
    【ゲスト】
  • 片倉百樹 日本冷凍空調学会 会長
    【ブレーンキャスター】
  • 小宮山宏 三菱総研理事長
    【編集長】
  • 安倍宏行 解説委員

空気中の「熱」を利用/ヒートポンプ技術とは

 ヒートポンプの仕組みを、片倉氏はこう説明する。
「わずかなエネルギーで多くの熱エネルギーを集めることができるのが、ヒートポンプです。自分の仕事に必要なエネルギーを1とすると、外から(大気中の熱などを利用して)5のエネルギーを集めた場合、最終的に6のエネルギーが生じます。自分のエネルギーと、外の大気の熱を集めたエネルギーの合算したものが最後の熱エネルギーとなり、加熱の逆をすれば冷却もできます。
人類は有史以来化石エネルギーから熱を得ていますが、ヒートポンプを使うと化石資源を燃やして熱を得なくてもすむ、そういう時代になってきています。今時代はそのちょうど真ん中です。燃焼よ、さようなら、という時代に来ているのではないかと思います」

家庭で企業でエコ技術/ヒートポンプの現状

 ヒートポンプ式給湯器は、2001年の普及台数約1万台から、今年2009年上半期には200万台を突破する予定という。これほど伸びると予測していたか、との問いに、片倉氏は「実は2010年には520万台普及の予定でしたので、それには足りていないですね」と残念そう。
「おそらく、2010年には300万台近くにはいくのではないか。2020年には、1千万台を目標にやっていこうと思っています」といい、次のように続ける。
「ヒートポンプは家庭だけでなく、オフィスビルや病院など業務施設、工場での製造過程での冷却・過熱など汎用性が高いため、企業の利用も徐々に増えています。高い温度で給湯できるようになったことから、ホテルやゴルフ場などの給湯も賄えるようになりました。設備費が高いのでまだまだ普及は進捗していないが、オーナーの視線は熱い。
また、自動車の塗装ブースにヒートポンプを使用すると、わずかなエネルギーで塗装工程が済みます。いままで、自動車の製造工程の中に16キロメートルも配管していた蒸気の4分の3はロスになっていました。しかし、それを各工程の必要なところでヒートポンプを使うことで無駄が省けます。農業では夏季栽培、野菜の栽培がボイラーからヒートポンプへ、漁業では魚の乾燥での工程でヒートポンプが使われるなど、用途は拡大しています」

ヒートポンプと蓄熱の仕組み

 ヒートポンプが蓄熱と結びつくとなぜ効率的なのか? 片倉氏は蓄熱の仕組みを解く。
「現状、一日の冷房負荷カーブは、昼間にピークを迎える富士山型です。しかしヒートポンプを利用して昼に使う冷熱の半分を夜にためておくと、熱源給は半分なのに今までと同じ容量で低速運転できるのです。
車でたとえると、高速道路をずっと80キロで走っているのと同じで、一番燃費が良い状態をずっと続けることが可能です。蓄熱は、ヒートポンプのよさをさらに引き出す調味料だといえます」

ヒートポンプ普及に向けての問題点

 実際にヒートポンプを使っているブレーンキャスターの小宮山は、問題点は「コスト、COP(効率)、大きさの3つ」と分析する。
「ヒートポンプの普及はずいぶん増えましたが、日本は4000万世帯があり、それぞれが何らかの給湯器を持っています。普及のためにはもっとコストが下がるべきで、今は一般家庭で30~40万円と以前に比べればだいぶ下がりましたが、もう少し下がらないと手が出にくい。
次に、1の電気で何倍のお湯が作れるかという効率(COP)の面についても、私が買った一番最初のモデルは3倍でした。途中で機種変更したので今は4倍の効率ですが、東京に住む私の家の条件だと、理論的には15倍の効率があるはずです。これに関しても、もっと技術者の方に頑張っていただきたいですね。
大きさについて言うと、1軒家には置けるが、マンションには設置が難しい。これからの普及を考えると、もっと小さくならないと、と思います」

ヒートポンプは普及する?

 ヒートポンプの電源として、原子力発電とのマッチングが一番良いということなのだろうか? 片倉氏は、「究極的には原子力や水力などCO2の出ない電力を上手く使いながら、一方で需要サイドでは導入した一エネルギーに対して何倍のエネルギーを取り出すか、この掛け算ですね」と言う。
「ヒートポンプには低速運転がベースにありますが、水力もピーク時は用水を調整して上手く使うなどが可能です。原子力も技術開発が進んで、ずっと低速運転ではなく若干の負荷調整もできるようになってきました。
供給サイドもフレキシブルに、需要サイドもそれを受けるフレキシビリティがある、その両方を持たなければダメだと思います」

ヒートアイランド現象について

 大都市に熱がこもってしまうヒートアイランド現象について、片倉氏は次のように述べる。
「ある部分を冷却するために、化石燃料の燃焼させて新たに熱を作ることが問題です。
ヒートポンプを使用している、ある地域で行われている地域熱供給の例をあげましょう。最近では高気密、高断熱のビルが多く、コンピューターの普及率も高い。冬場、そんなビルの中で必要な熱エネルギーの8割は冷房です。冷熱を集めるということは、温熱をどこかに捨てるということ。その温熱をどうするかというと、隣の住宅の暖房や給湯に使っています。ヒートポンプを使うと、冷却と加熱、その両方ができます」

CO2排出削減のポテンシャル

 ヒートポンプを使用する利点として、片倉氏は「CO2排出削減」を挙げる。
「現状、家庭用の暖房・給湯、ビルなど業務用空調などあるが、これが全てヒートポンプに置き換わった場合、1.3億トンのCO2削減が可能になる。これは、日本のCO2を10%も削減することになります」

吉本哲郎 地元学ネットワーク主宰の提言 : 『超燃焼』

 「有史以来われわれは化石燃料で熱を得ていましたが、化石燃料はいずれ枯渇するだけでなく、使用することで炭酸ガスを生みます。それを超える技術がヒートポンプであり、せっかくこの技術を手に入れたのだから、われわれは燃焼を超えた新しい段階に向かっていこう、ということです。ヒートポンプこそ、低炭素社会を構築できる基礎技術だと思います。そういう意味で超燃焼を目指して、これからわれわれはまた頑張っていかなければならないと思います」



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