問われる高速道路料金/対距離課金システム
日本の高速道路料金として、根本教授は“対距離課金”という制度を案に挙げた。このシステムの目的は2つ。
①現在の道路を前提とした交通需要管理(短期的)
… 混んでいるところには高く課金し、混んでいないところは料金を安くして、需要をコントロールする。
②交通需要に見合った道路整備(長期的)
… 混雑しているところはしかるべき整備をし、長期的には道路整備に見合った料金の収量を得る。
根本教授は、さらに次のように説明する。
「ヨーロッパ、アメリカで議論されている対距離課金では、距離だけでなく、混んでいる場合、環境上問題の多いところを走る場合と、時間と場所などで単価を変えることを含めてきめ細かく料金を払うことになっています。これが混雑の緩和や環境に優しい交通システムを作るのに有効ではないかと着目され、導入する国も増えています。以前このシステムを導入するのは大変でしたが、今はIT技術が進歩し、やりやすくなっています」
高速道路の社会的意義/グローバリズムによる変化
高速道路は今後も作り続けなければならないのか?との問いに、矢野氏はこう答える。
「日本は少子高齢化社会になり、道路を走る人が少なくなっていきます。しかし、それは定住人口が減るということであって、移動人口は変わりないと思います。外国人の旅行者、ビジネス人などを増やす算段をすれば良いと思う。外国では、国の人口より多くの観光客が訪れる国がある。そういった国では、旅行者はまず空港でレンタカーを借りますが、日本に来る外国人は観光バスのみ。これからはレンタカーになる人が増えると思いますし、道路を走る人数が人口比で減るかは相当疑問です。また、道路や飛行場というハード面だけでなく、サービスがよく行き届いているなど、そういったソフトの組織化が必要です。日本人自身が変わらないと、外国人も来ない。それと同時に、対距離課金もやっていく価値はあると思いますね」
新東名高速道路の役割/老朽化する現東名高速道路
現在の東名高速道路の北側を走る新東名高速道路は、2012年には一部開通、2020年には全線開通の見込みとなっている。もう一本並行して高速道路を作る狙いを聞かれた矢野氏は、「これは、ダブルネットワークです」と言う。
「一本だと不安定ですし、直下型の地震の時など、片方が止まった時にもう片方が動くのはすごく大事なことです。また、東名高速も40年経ってだいぶ痛んできました。これには抜本的な修理が必要ですが、それができれば100年もちます。新東名ができれば、現東名を止めて徹底して修理ができる。そして、高速が2本できることで渋滞も減らせます」
新東名高速道路の提案/ITSによる進化
貨物の運営に色々なアイデアを持つ矢野氏から、次のような提案がなされた。
「貨物運搬の新しい方法を新東名で検討しており、この秋からあらゆる面での実証実験をはじめようと思っています。高速道路の中に専用貨物レーンを設けて、ITS技術を活用した貨物車の隊列走行の実験をしてみたいと考えています。貨物車の隊列走行とは、大型貨物車の一番先頭の車にのみ運転手が乗り、2台目、3台目は無線技術で最初の車に追随して走るというもので、連結していない電車のようなものです。これができるようになればドライバーを多く雇わなくて良いし、時速80キロの定速走行をすれば燃費もいいし、かつ大量にモノを運べるようになります。これはほかの国で実験されたことはあるが、実用化されたことはありません。新東名でやれるものならやりたいが、実用化には相当時間がかかると思いますね」
矢野弘典 中日本高速道路株式会社会長の提言 : 『高速道路はQOL(生活の質)を高める』
「道路は街と町をつないで、点が線になり、線が2本になればそれはネットワーク化になり、面になります。そうすると、経済や社会、一人一人の生活にも劇的な変化が生じます。名神と新名神がネットワーク化し、今度は東名と新東名がネットワークを結べば、大きな経済効果があります。モノが動く、人が動くことで世の中が豊かになり、そういう役に立つような仕事をしていきたいと思います。また、あまり知られていないですが、高速道路の方がCO2排出量が減ります。さらに、高速道路の方が死傷者率は一般道路の12分の1、死亡率がは3分の1。まだPRが足りないのかと思いますが、いろいろな点でプラスになることが多い、と申し上げたいと思います」
これに対し、根本氏も、「高速道路の効果は大きいと思います」と言う。
「大型トラックが高速道路を走ることで、市街地の環境を改善することができます。新東名も現国道の混雑緩和に効果があり、費用対効果が大きいです。ただし、費用対効果というテストはパスしましたが、それが経営的にもあまり負担にならない仕組み、財務的なテストもパスできるような工夫が必要かと思います」