山田教授が見る少子化の原因
『若年男性の収入の不安定化』こう思う理由について、山田教授は次のように語る。
「やはり、若い人が結婚して子供を育てるにはお金がかかる。さらに一時的にあれば良いというわけではない。長期的に経済が安定していれば、子供を生む人も出てくると思います。しかし、不安定な人は、ためらうと思います」
八木キャスターは、収入の減少というは年々進行しているのかと質問した。
「そうですね。オイルショックくらいから若年層の収入の伸びが低下し、未婚化が始まった。そして、バブル崩壊後から現在の格差社会と呼ばれる時代になった。今では、男性でも非正規雇用の人が相当増えてきました。」
【図1】1971年以降の男性の年間収入の変化

この図を基に、山田教授は次のように語った。「やはり、若年層の収入が低ければ、将来不安だから結婚や子育てに踏み切れないのでは、ないでしょうか?」
反町キャスターは、中嶋氏に若年層の収入の減少をどう見て取れるかと質問した。
「一つは、非正規雇用の人が増えたことではないでしょうか。 もう一つは、日本経済が低成長になってきたことにあるのではないでしょうか。特に中小企業で働く方々の収入が減ってきている。大企業の方々は横ばいなんです。正社員で、とりわけ20代、30代を見ると300万円未満の低収入の方々の割合が、この10年間で7~8ポイントずつ増えている。これは中小企業の方や高卒の方に見られる」
パラサイト・シングル
山田教授は、10年ほど前に「パラサイト・シングル」という言葉をつくった。その山田教授が、現在のパラサイト・シングルについてこう語った。「当時は、お金はあるのに親元で暮らして、自分の収入をお小遣いにする人々のことを言った。しかし、今は収入が少ないから自立できず、結婚しない人々を指している」
さらに山田教授は、アメリカの格差社会と日本の格差社会を比較して、こう話す。
「アメリカは日本以上に格差社会が進んでいる。もっと若い人の収入が少ない。しかし、結婚の数が多い。これはアメリカでは高校卒業後に自立しなくてはいけない。男性も女性も一人で暮らすよりは、二人で暮らすほうが経済的には、良いですよね。それで同棲したり、結婚する。逆に日本は、未婚者の八割が親と同居しているんです。すると、男性も女性も“待てる”んですよ」
若年層の収入の不安定さと心の不安をどう打破するか!?
山田教授は「若者に結婚して、子供を育てても安心できる経済保障をすることが一番」
この発言に対して、反町キャスターは具体的な策について質問した。
「まずは、職の保障ですね。若い人に希望を持てる仕事についてもらう。また、高くなった生活スタイルを男女の共働きすれば、子供を持つことが出来ると思います。さらに、今の時代は突然の解雇などリスクを伴っている。だから最低の所得保障“ミニマムインカム”を作る必要があると思います」
反町キャスターは、山田教授のいう“ミニマムインカム”の制度について失業保険や生活保護と同じようなイメージを持っていいのかと質問。これに山田教授は「そうではなくて、例えば子供を持った人には、必ず月10万円の収入を保証する。子供を育てている限りは、毎月の収入の保障をする。これは低収入の人に限って適用します。海外でも“子供を持っているという条件つき”であれば、フランスやニュージーランドなどが実質的に行っています。日本の生活保護は、最低限の生活しかできない。そうではなくて、ミニマムインカムは、自分の収入の上に上乗せされる形になりますので、就労意欲が高くなりますし、(貧困から)脱出もしやすくなります」と説明し、こう続ける。
「私は何も全てお金で解決しようと言っているわけではありません。少子化問題で色々なインタビューをした時に、『子供に金銭面で不快な思いをさせたくない』という親の気持ちが伝わってくる。そうなると、やはり子供の数を絞ったりすることあると思います」
社会生活のモデルの変化
若松編集長は、山田教授に今の夫婦生活や社会性のモデルが変化しているのでは、と質問した。
「そうですね。また、私が強調したいのは“親が元気で長生き”という点です。これが結婚して、子供を持つ意欲を減らしていると思う。頼れる、自分を大切に思ってくれる人がいるわけですから・・・」そして、小津安二郎の映画の台詞を引用して、こう話す。
「小津さんの映画の台詞で『父さんは、57歳で長くはないからな一人じゃだめだよ』というシーンがあるんです。昭和20年代の平均寿命が60歳以下だったんですよ。やはり、人間というは独りになることに恐怖を感じる。その恐怖を和らげるために結婚したんですよ」
女性が男性を選ぶ判断基準は?
「やはり女性が見る男性の魅力は、まだまだ“経済力”ですね。女性が男性の収入を頼りに生活するという考え方を踏まえると経済力です。逆の場合は、ほとんど特徴がないんです。色々と調査をしたのですが、経済力があるからできるわけでもないし、容姿がいいからできるわけでもない。本当に特徴がないんです。さらに、結婚相談所の方に話を聞いたところ女性が結婚できる条件は、“相手に求める条件が少なければ、少ないほどいい”みたいです」
女性の社会進出が少子化の原因?
「周りを見ると、確かに仕事をしたいと思う女性は多い。しかし、現実を見るとなかなかそうではないと思います。日本では、ヨーロッパと違って女性の社会進出が遅く起きてしまったため女性がちゃんと正社員の仕事についていない。だから男性の収入に頼るしかないんです」と、山田教授は話す。
反町キャスターはこの発言の理由について尋ねた。
「時代の偶然があると思います。たまたま(日本の)世界的な非正規雇用化と女性の社会進出が重なってしまったんですね。全員が正社員で勤められる状況の中で、女性の社会進出が起きれば、収入が高いまま『将来やっていこう』という方も増えると思います。しかし、現実にはフリーターや派遣労働者として働く未婚女性が増えている。女性の社会進出が進んだ影で“未婚女性の非正規雇用化が進んでいるんです。これはデータに基づいていて、1980年ごろは未婚女性の正社員は八割もあったんです。しかし2005年には、五割になってしまった」
働く女性への政府の支援策は十分だったのか?
反町キャスターは、働く女性への政府の支援策は十分と思うかと、山田教授へ質問した。
「少子化対策としての働く女性への対策は、正社員主義に偏っていたと思います。男性も女性も正社員である家族に一番手厚くやってきた。女性の場合、育児休業などの数々の制度は、正社員じゃないと受けられない。男性の場合も扶養家族の手当ても正社員じゃないと受け取れない。つまり、少子化対策は正社員に偏っていたということになります。」
八木キャスターは、そういう問題をどうしたらいいと思うかと、質問。
「育児対策を企業の正社員のみならず、自営業者などにも拡大するべきと思います。イタリアでは“親保険”というものがあって企業に属していなくても、支援を受けることができる。仕事を休んだ間の営業収益を補てんしているんです」
支援が何故、正社員に偏ったのか?
反町キャスターは、今まで制度が正社員になったのかと、質問した。
「それは、“みんなが正社員になれる”という前提だったからです。日本の社会保障制度は、すべて“正社員になれる”前提だった。だから今までは非正規社員は、学生か主婦、自営業の片手までやる人だったからです。しかし今は、若者を中心とした自立しなければならない人たちが、非正規雇用になってしまった。これが制度とのギャップを深めて少子化を生んでいると思いますね」
この説明を受けて、さらに反町キャスターは正規雇用を増やす流れはあるが、正規雇用だけでなく非正規雇用まで制度を拡大させたほうがいいかと、質問した。
「そうですね。昔のように若い人であれば、誰でも正規雇用につける時代ができるとは思えない。そうなると中高年の方は、みんな会社を辞めなければならない。それもできないので、制度を拡大させたほうがいいと思います」
中島氏が見る女性の社会進出
「経済成長との関係を見ると、人口の増加がある国ほど経済成長率が高い。もうひとつは、女性の社会進出が進んでいる国ほど出生率が高い。だた、これは政策の中身によりますが、平均すると高い。女性が働きながら子供を育てられる。こういう環境が必要です」

「このグラフは、女性が同じ年齢でどれだけの人が働いているか、ということを示すものです。(グラフを見ると)子供を生むと働いている女性の七割が、仕事を辞めてしまう。いわゆる“M字型カーブ”言います。これに対して、フランスやスウェーデンは、女性が働きながら子供を育てる政策をとっていますので、M字型になることはありません。これで仮に、日本の(女性の)労働率が、フランス並みに落ちないことを計算したら300万人増えることになります。そうなると収入が、日本全体で11.2兆円増える計算になります。さらに計算すると、この収入を子育てなどに使うと日本の消費を押し上げ、経済成長率を2%上げることになります」
フランスの少子化対策

中島氏は、国がお金を出している家族関係の対GDP比のグラフを出して説明した。「日本は他の先進国と比べるとGDP比が、圧倒的に低い。これを少子化対策というならば下から数えたほうが早い! 2年前に厚労省がフランス並みの少子化対策をすると10.6兆円の予算が必要と言っていました。今の予算が3兆円程度ですからそれを踏まえると、あと7兆円必要ですから(日本は)まだまだ予選を賭けていないですね。」
【図2】フランスの児童手当

図2の数字を累積すると、このような表になる。
中島氏は、これと日本で同じことをすると、同じことをすると今より6~7兆円あまり必要という。さらに財源は消費税という。「国民全体が支えるという意味では、消費税が適切と思いますね。」この意見に山田教授も同意見を主張した。
反町キャスターは、その日発表となった財務省が試算した福祉目的の財源で消費税にするならば、3%から11%にアップしなければならない。そして、中島氏の試算した3%を上乗せしたら消費税14~15%になってしまうと話した。
これに山田教授は、「それはヨーロッパでは普通のこと」さらに中島氏も「確かに増税ですが、この税は国民に再分配されるもの。またニーズがあるところへの再分配するので、経済成長する見込みがあります」
山田昌弘 中央大学文学部教授の提言 : 『若者に長期的な経済的見通しを』
「今、若者が長期的な経済見通しができないから結婚や子供を作ることためらう。しかし、結婚や子作りの気持ちは弱まっていないのならば、日本の少子化は止められると思いますね」
中島厚志 みずほ総合研究所 チーフエコノミストの提言 : 『高福祉高負担社会の実現』
「高福祉高負担社会の典型は、スウェーデンなんです。税率で言うと消費税率20%、所得税率60%。ところが、日本より一人当たりの国民所得は高いし、成長率も高いです。その理由は、高い税が国民に再分配されているから国民に安心感を与え、希望を持たしているから経済成長に繋がっている」