日本の食料自給率が低下した理由
日本での自給率が高い米や芋などの献立を前にして、反町キャスターは、今の日本の食料自給率が低下した原因を渡辺氏に質問した。渡辺氏は、食生活の内容が変わってきていることを理由の一つに挙げ、その対策について話した。
「食生活のレベルや内容を変えていけば、自給率は動きます。つまり、肉を食べないで穀物を食べ、穀物を食べないで芋を食べれば、自給率は上がっていきます。」
さらに、生産者側の要因について説明した。
「一つの田んぼで、一年間にどれくらい作物を育てたかを示す耕地利用率は、二毛作や三毛作が行われていた昭和35年に133.9%だったのが、平成19年には92.6%まで落ちてきています。これは、年に一度しか作物を作らないだけでなく、使っていない農地があるということです。これを、120%まで引き上げ、使えるようになった農地に小麦を植えると、外国の小麦に替わって約200万トン日本の小麦を生産できるようになります。日本のように耕地面積が小さい国では、二階建て、三階建てで農作物を作ることが大事です。」
家畜の飼料が食料自給率を左右する
昔より肉を食べるようになった食生活の変化が、自給率に影響しているのではないかと反町キャスターは意見を述べた。
これに、末松氏は「穀物を直接食べる食事であれば、この穀物を育てるだけでいいですが、肉を食べるときは、その背後に家畜のエサとして何倍もの穀物を使っています。
今の畜産物の自給率を見てみると、66%は国内で生産されたものですが、その内の50%はエサを海外から輸入しているために、これが止まってしまうと、日本の資源だけを食べて育っている16%だけになってしまいます。」と、肉や油の消費が増えることが、食料自給率を低下させていると説明した。
日本の食料輸入と地球環境への影響
末松氏は「ものを運べば、運ぶためにエネルギーが必要です。日本は遠い国から大量の食料を輸入しています。運ぶ際にはどうしてもエネルギーがかかり、それはCO2の発生につながることになります。」と話した。
さらに、最近よく使われるようになった“フードマイレージ”という言葉について次のように説明した。
「食料をどれだけの距離をかけて運んでいるのか、それによってCO2の排出など環境への負荷がどれくらい大きいかを表す数値です。一番いいのは、そこでできたものをその場で食べれば、他のエネルギーを使わないことになります。しかし、運ぶことによって食の問題だけではなく、地球温暖化にもつながる問題が出てきます。」
この他の環境問題について、渡辺氏は、輸入食料と水の関係について述べた。
「外国から食料を輸入しているということは、その国から大量の水も輸入していることになります。例えば、アメリカの小麦はアメリカの水で育っているわけですから、その小麦を輸入することは、一緒にアメリカの水も持ってきているということです。この概念的な水はバーチャルウォーター(仮想水)と呼ばれています。日本の農産物生産で使われる水の総量は、600億トン弱なんですが、海外から輸入している主要な作物に使われた水は、627億トンにもなります。つまり、国内農業生産に使っている水よりも、輸入農産物に使われている水の方が多いことになり、外国の水を奪っているということになりかねないのです。」
水田の多面的機能
渡辺氏は、日本の水田の水は二次使用しているなど、環境に良い優れた生産装置だと話した。
これに加えて末松氏は、水田で作られた米と、その周りの環境で育っている生物の関係について説明した。
「田んぼで出来ているのはご飯だけではなくて、多くの生き物も育てています。例を挙げると、ご飯1杯は米粒にすると3000~4000粒、さらにそれを稲の株の数にすると3株くらいになります。その周りはオタマジャクシが35匹育める環境になっているということです。こういうことを考えると、私達がきれいだと思う自然は、田んぼの恵みから出来ていると言えますね。」
“食料安全保障”とは?
反町キャスターに、政府の食料安全保障課は何をしているのか?と質問された末松氏は、「我々がきちんと食べていくためにはどうしたらいいか、という考え方のもとに政策を進めています。不測の事態に備えて、国内の生産や輸入相手国との関係を良くする。そして、国内生産と輸入の間をつなぐ備蓄を十分に持つことが大事です。具体的には、世界の食料自給動向を把握したり、食料自給率を計算して、どういうふうにして自給率を上げていけばいいか考えています。」と答えた。
米粉の活用
米粉を使ったパンや、玄米を食べて育った鶏から生まれた卵を前にして、大山編集長は、小麦の替わりに、米の粉を使った商品を作って食べていけば、自給率は上がるのではないか、と意見を述べた。
末松氏は「日本の水田は、お米を育てるのに一番適している。自給率を上げるためにはお米を食べればいいが、今はお米をご飯として食べる量が減ってきています。それならば、水田でできたお米を他の用途に使うことが大切です。今は技術が開発されて、米粉でおいしいパンやケーキを作ることができるようになり、単なる小麦の代替品ではなく、別のおいしいものとして食べられるので、政府としてもこれらの商品が増えるように応援していかなければならないと思います。」と話した。
食料自給率向上のために消費者が出来ること
八木キャスターの、食料自給率向上のために消費者が取り組めることはありますか?という質問に、末松氏は、「日本は、季節に応じて旬のものがあります。旬のものはたくさんとれるので、これを食べるように心がければ、自給率は上がります。しかし、一番は関心を持ち、自分が生産者や環境のことを考えて商品を選ぶということが大事ですね。」と答えた。
同じ質問に渡辺氏は、でんぷんと脂肪とたんぱく質のバランスがとれた“日本型食生活”を勧めて話した。「今の日本人は、お米などのでんぷんが足りなくて、脂を取り過ぎています。これを是正するだけでも食料自給率は上がっていきます。」
渡辺好明 東京穀物商品取引所理事長の提言 : 『水田=life line「米は宝だ…」』
「水田は日本人のライフラインです。食料自給率も大事ですけれども、その背景にある食料自給力を高めることが大事です。水田を120%使って、日本の自給率を高めたいと思います。そうして、昔の唱歌のように『植えよ、植えましょ、みんなのために。米は宝だ。宝の草を。植えりゃ、こがねの花が咲く。』と、こういう時代が来ることを切に祈っております。
結局のところ、水田の利用率を上げる、耕地利用率を高めるということに尽きます。正しい食生活としっかりとした生産力、この二つが相まって最終的に食料自給率というものが出てきます。このどちらが欠けても駄目なんです。
日本では、水を作るのも、エネルギーを作るのも、食料を作るのも、まずは水田です。」
末松広行 農水省食料安全保障課長の提言 : 『食べて支える おいしい日本を』
「農業生産というのは、生産をすればいいものではない。水田があるから、いくらでもお米を作ればいいとわけではなく、これを誰かが食べなくてはいけない。
農業生産をする側は、食べないものを作ってはいけない。食べて支える人に応えるようなものを作っていくということです。私たち消費者は、食べて支えれば日本の農業を支えられるし、日本のものを食べないで外国のものを食べれば、日本の農業はなくなってしまいます。そういう意味で、消費者と農業はつながっているのだと感じます。」