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    【テーマ】
  • 『どうなる日本の株価?
    東京は世界の金融センターになれるのか?』
    【ゲスト】
  • 斉藤惇 東京証券取引所グループ代表執行役社長
    【ブレーンキャスター】
  • 渡辺努 一橋大学経済研究所教授
    【編集長】
  • 安倍宏行 解説委員

東証社長の見る、現在の株価動向

 安倍編集長は、直近の日経平均株価が徐々に上がってきていることから市場では株価も底を打ち、これから上がる兆しがあるのかと質問。
「今回の追加景気対策で、50兆円の株価対策が入っているため、市場に影響があると思う。3月末から上がり出した要因は、アメリカとイギリスの中央銀行が長期債を大量に購入する政策を打ったためですね。」とし、50兆円の株価対策について触れた。「この政策で(株の)空売りから手を引く人も出てくると思う。しかし、これは本来“抜かずの刀・魔法”だと思います。」
また、リートと呼ばれる不動産の投資信託について語った。「東証に約40銘柄ほど上場されているが、これが株価よりも下がっている。これに対しても景気対策の中で資金提供などが記載されているので、これも市場に良い影響を与えています」
更にグリーン産業にも話が及ぶ「日本が今後グリーン産業に本気で力をいれるのであれば、これは本当に今後の産業として良い効果を与えるものと思います。」
これらをふまえて八木キャスターは、今後良い材料が揃ってきたかと質問する。「そうですね。良い産業が伸びれば、その下にある中小企業も潤うので相乗効果が生まれる。だから、今後の日本の産業の大きな軸としてグリーン産業を伸ばすことが、この政策に含まれているなら株式市場は良い反応を見せると思います」。そして、こう続ける。「しかし、この分野は国際競争が激しいので、必ずしも上手くいくとはいえない。だが、日本の技術力は(国際的にも)一つ上をいっているので、もっと伸ばす必要はありますね。」

金融効果、不安の連鎖

 「1970年前後からアメリカの大学などの物理系の教授が、数学を使ってリスクを数理方程式で見つけ出した。そこからリスクを算出して、データ管理するという“金融業のあるひとつの形”になってしまった。そして、ここから市場を通さないで会社対会社の“相対取引”になってしまいました。そうなると個別で算出した計算によって、値段のばらつきが出来てしまう。ここで問題になるのが、買い手がいなくなって値段がつかなくなってしまう。値段がつかないということは“ゼロ”の査定になる、しかし、“ゼロ”と査定するとバランスが崩れ会社が倒れてしまうので、無理にでも査定額を“ゼロ”にしない。これが金融問題になるんです。」
この説明に反町キャスターは、「そういう難しい商品を作った人がいるわけですよね?その人はどういう人なんですか?」と質問。
これに対して斉藤社長は「作った人というのは、アメリカの理工系の人たちが多い。特に熱工学を勉強した人が多くて、彼らに言わせると『熱工学の粒子の動きと金融の動きが似ている』らしいです。彼らは、リスク=変動率と金利、今の価値というものをベースにして、方程式に当てはめると将来の価値がわかるようなんです。」
そして、斉藤社長はそのような計算式を使って作られた金融商品の転売が問題という。また、行政との兼ね合いについても言及した。
「銀行ができることと、証券会社ができることが法律で分かれていた。その為、銀行で作った商品をどこかに隠して解らなくしてしまう。」

日本と海外の景気比較

 八木キャスターは日本はそれほど悪くないと言われていたのに、蓋をあけたら欧米よりも悪かった原因について質問した。
「原因は、よく言われていることですが、日本は重化学工業製品を輸出してきた。そして、景気を復活させた。さらにアメリカの個人消費がそれを助ける形になった。」
また、反町キャスターは日本の輸出企業の株は海外の投資家から見るとお買い得なのではと質問する
「それは、お買い得と思いますね。」と率直に答えた。

斉藤社長が見る日本の株式市場

 「世界中の国が、例外的な手段を用いて(国が呼び水となるような金を流して)信用回復に取り組んでいる。その結果徐々に成果が出てきていると思います。現実的ないろいろな指数が上がり始めています。アメリカの住宅の売れ行きも良くなったし、日本の重機の売れ行きもいい。それらを見ると上向きの方向感は出来てきました。しかし、これには条件があって、アメリカが会計基準を少しいじっている。時価会計のの適用を緩和している。また、多額の不良債権をSIVというところに移している。だから本来やらなければいけないことをしないで、上向きになっていると思いますね」
斉藤社長は、この状態を風邪に例える。「39度か38度の熱があるのに、体温計を少し変えてしまう。39度のときに36度になるようにしてしまって、『あなた健康ですよ』と言っているようなもの。」

日本の貯蓄を投資に回させるには?

 安倍編集長は、日米の貯蓄率を比較に出し、どうしたら日本の貯蓄を投資に回せるかと質問。
「日本の金融人材は乏しい、また、金融に対する知識も乏しい。また、個人貯蓄の14兆円の60%以上が60歳以上の方がお持ちと思う。これはよほど行政の制度がしっかりしていて老後に不安がないというモノが無ければ投資しない。私も年をとって解るのが、安全資産からリスクのある資産にはなかなかいけない。いろいろ計算してみると、150兆円以上、使いきれないで終わることが多い。税金などで国家にお金がいくことがあっても、お金が世の中に回らないですね。私たちは、これらのお金を運用などを使って世の中に回るような制度を作っていくことが仕事と思います」

景気回復への打開策 新興市場TOKYO AIM

 斉藤氏は、TOKYO AIMを次のように説明する。
「TOKYO AIMでは、開示言語を英語可にしたり、会計基準を国際会計基準や米国基準OKにするなど、これまでのものと変えています。今までは東証1部・2部、マザーズに上場するには厳しいルールがあったため、外国企業や新しい成長企業が東証にこなくなり、硬直市場になっていました。日本の場合、トップ企業が10年、50年単位でみても変わらないが、アメリカは銘柄がどんどん変わっている。これは市場に新しい成長企業が入り込んでいるからです。リスクの資金を求めて入ってきて、それにリスク資本が投資という形で入り、企業が成長する。そうしてダイナミックに成長したのです。私は日本にもそんな企業を呼び込みたいと思います」

日本経済・景気上昇へ アジアの需要拡大へ

 市場の倫理観の喪失を問題視する渡辺教授に、斉藤氏は「倫理観がなければ市場主義は成り立たない」と述べる。
「市場主義に必要な、倫理観・情報公開といった要素を、アメリカの経営者、特に金融の経営者は否定し、隠して自己の利益だけを最大化しようとしました。これは市場主義ではありません。本当の市場主義とは、情報は全て公開され、高い倫理観の中でやるもの。宗教的にも、非常に厳しいものが求められるのが市場主義なのです。純粋に市場主義を追求すれば、非常にフェアなリスクリターンがある世界となります。それを違反した者については、市場から罰を受けることになります」

斉藤惇 東京証券取引所グループ代表執行役社長の提言 : 『アジアの内需に参加する』

 「今、アメリカの消費は一気に縮小しており、我々は新しい需要の市場を見つけなければなりません。アメリカは、二台目の車、二件目の家など、少し無理した需要を作りだしていました。生産スピードをどんどんあげていくので世界は完全な生産過剰に陥り、人為的に無理な需要を作ってきたのが今回急に冷えたのです。
インド、中国、インドネシアには、テレビ、洗濯機がほしいという人たちがいます。これらの国には、商業を通して国民の生活を豊かにするという目的で輸出ができます。また中国やインドと協力したり、TOKYO AIMで向こうの企業にファイナンスをつけるなど、アジアにある需要に我々が入っていき、一心同体で一緒に作っていくことが大切です。アジアの需要は、わたしたちから見れば内需です。日本だけにこだわらないでアジアの需要=日本の需要と思って、若者も元気を持って行っていただきたい」

景気回復に向けて、今後何に取り組むべきか?

 「日本には立派な会社はたくさんありますが、株を買った人がリスクを負って会社を信用して投資したお金の使い方が、世界に比べると不明朗・無責任なところがあります。世界の上場会社では、企業献金などの企業犯罪は原則ありません。それは第三者がチェックし、かつ会社側もむしろ外部に情報を開示することによって経営者としての倫理観を上げているからです。日本の株が下がっている一番の原因は、資本の使い方が非常に不明朗だから。答えとしては、経営者の方と我々が一緒になって株主たちに、『あなたのお金はこう使われました』と開示し、第三者の意見を入れるという会社経営をしていただくことですね」と、斉藤氏は言う。



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