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    【テーマ】
  • 『歴代首相のNo.1は誰? 首相の資質を徹底検証』
    【ゲスト】
  • 石原信雄 元官房副長官 地方自治研究開発機構会長
  • 八幡和郎 徳島文理大学大学院教授
  • 福田和也 慶應義塾大学教授 文芸評論家
    【解説キャスター】
  • 山本周 フジテレビ解説副委員長

歴代首相を徹底分析!/今求められる首相の資質

 八幡教授が選ぶ、戦後の歴代首相ベスト3は、1.池田勇人 2.吉田茂 3.小渕恵三。
 「私は、総理とは何を今やらなければならないか、そのために具体的に何をやるべきか、を良く分かっていて、それを実行する政治力がなければならないと思っています。
 池田さんは安保闘争下の日本が二つに分かれるような状態にあった時、高度成長・所得倍増という旗を立て、経済面で日本を先進国として位置付ける目標を作ってそれを実現しました。
 吉田さんは明治由来の日本国家の連続性を維持しつつ、西側陣営の国としての位置づけを行った方です。
 また小渕さんは日本がバブルで傷んだ時、経済再建のためにどうすればいいかを非常に実用的に考えた政策を行いましたし、政権基盤安定のために公明党を中に入れました。もう一つ、沖縄に対して愛情を持ってきちんと仕事をしたのは、戦後の総理の中では小渕さんだけだと思います」

 一方、福田教授の選ぶ歴代首相ベスト3は、1.岸信介 2. 佐藤栄作 3. 吉田茂。
 「岸信介は当時経済官僚として満州に渡り、絶対にできないと言われていた満州の重工業化、産業化をやってのけ、そのノウハウを戦後の日本に持ってきました。ですから経済関係の研究では、高度成長は池田隼人ではなく岸が作ったというのが一つの定説になりつつあります。経済が分かっていて、政治的な勘がすごくいい。
 佐藤栄作は戦後、朝鮮戦争や安保騒ぎが起こる日本社会を、安定した穏やかで安心できる社会にしました。今の日本人が享受しているような秩序の安定は、佐藤内閣の中でできたものだと思います。
 吉田茂は、外交官経験しかなかったけれども総理になりました。サンフランシスコ条約までの吉田茂は素晴らしかったですね。日本を西側に位置づけることや、日本のさまざまな制度を保全するということをうまくやったと思います」

戦後の首相徹底分析/長期政権・小泉首相の評価

 戦後3番目に在任期間が長い小泉政権を、石原氏は次のように評価する。
 「小泉内閣にあれだけ高い支持率をもたらしたのは、内閣運営のスタイルを変えたからです。政府与党とまず相談してから法律も予算も決めるというやり方を変えて内閣主導にしたその政治手法が、それまでの与野党癒着というか、それまでと全然違うタイプだということで、国民から見ると新鮮に映ったんだと思います。
 一つ評価するとすれば、小泉さんは一内閣一閣僚という形をとり、かつ閣僚は派閥の推薦ではなく自分が選ぶということを貫いたんです。本来内閣はそうあるべきなのが今まではそうでなかったのを大胆に変えた、ここが小泉内閣の支持率が高かった理由の一つだと思いますね」

戦後の首相徹底分析/短期政権

 八幡教授は、短期政権が続く現状を次のように述べる。
 「三角大福中と言われた時代までは、それなりの人でないと総理候補にもならなかった。ところが鈴木善幸が大平さんの急死を受けて、それまでの総理候補とは全然イメージの違う人が総理になり、それから誰でも総理になれるようになったんです。その結果、それ以降は基本的に沈みかけた人ばかりが総理なっている、というのが一つあります。
 もう一つは小沢一郎さんの存在。海部さん以降、あらゆる意味で小沢さんとどういう関係を保つかで内閣の命運が決まっています。特に福田内閣以来、小沢さんが参議院の多数を頼んで、政治が全く動かないようなことをやっていきました。小沢さんの呪縛を脱しない限り短期政権は続くと思うし、それが今の政局で呪縛から解き放たれるかどうか、ということじゃないかなと思います」

 石原氏は、「竹下内閣以降、与党と内閣の力関係が変わって、総理は与党とのコンセンサスなしには重要な政策がすすめられないという時代が続いたのは間違いない」と言う。
 「派閥のバランスの上に歴代内閣が誕生したという事実は間違いなくありますが、総理となった以上は内閣の主張を強く打ちだす人もいれば、残念ながら党の意向を確認しながらやらざるを得なかった内閣もある。それが一つの問題なんでしょうね。
 しかし総理を選んだ以上は、選んだ与党が総理の決断をサポートする、党が総理に注文を付けるのではなく、内閣総理大臣になった人を支える体制を作らないとダメだと思います。そういう意味では今の民主党の状況は必ずしもそうなっていませんから、そこら辺が問題なんじゃないでしょうか」

戦後の首相徹底分析/菅首相の評価は…





 八幡教授は、「私は、菅さんはそんなに悪くないと思っています」と口を開く。
 「菅さんは厚生大臣として非常に立派な仕事をしたし、志も高いしリアリストなんですが、なぜもたもたしているのかと言うと、野党の党首時代にちゃんと勉強していなかったのが大きいと思います。特に経済政策とか国際問題とか、いくらでも勉強できただろうにどうしてやらなかったのか。自分が苦手な難しい問題をこなすのにアップアップしてるんじゃないか、という気がします」

 また福田教授は、「菅さんは厚生関係のセンスはあるが、幅が狭い」と述べ、次のように付け加える。
 「幅が狭くても勉強しなくても良いんだけれども、経済なり外交なりを分かっている人を周りに置くとかパイプを作るとか対応があってもいいのに、それが全くないですね。
 ただ菅さんが総理にちょっと向いてるなと思うのは、権力欲が強い点。これは政治家、特に総理になるのには大事なことで、この権力欲の強さは鳩山さんより上だと思います。仙石さんと合わせて、2人を1人と考えるのであれば、僕は35点つけてもいいと思います」

石原元官房副長官/“政と官”のあるべき姿

 石原氏は、「過去、大きな仕事をした総理に共通しているのは、自身が一つの政治理念・政策目標を持っているだけではなく、それを実行する上で官僚組織をうまく使っていること」と言う。
 「最終的に決めるのは政治家でなければなりませんが、各行政分野の専門家は官僚組織です。どちらがよりベターか、時代に合っているかという判断を下すには、長年その分野の仕事をやってきている官僚諸君の意見を聞くことが極めて大事なんです。政治主導を前面に掲げるのはいいですが、官僚排除になっているのが一番いけないですね。
 民主党になってから、政務三役だけで議論していることが多い。非常に専門的な分野についても、専門家である役人の話を聞かないで素人の政務三役がやっているという面がなきにもあらず。だから中々決まらない。特に外交や安全保障の問題は非常に大きな問題ですから、どうすればどういう影響が出るというのを読まないといけません。そういう点で、長年やっている者の意見を聞いて対応することが大事だと思うんです。
 まだまだ政務三役と官僚との間のコミュニケーションが十分でないところがありますから、そこを変えていかないと最善の政策選択ができないと思います」

石原元官房副長官/“総理大臣”があるべき姿であるには

 「総理大臣が力を出せるか出せないかは、官房長官に人を得るか得ないかだと思います。総理と官房長官の関係でいうと、中曽根内閣は一番理想的だったと言われています。後藤田という優れた官房長官がいて、難しい政策を軌道に乗せる上で彼の果たした役割は極めて大きい。各省だけでなく与党も含めて、官房長官がかなり睨みをきかせてやっていました。
 官房長官に力があり、かつ総理との名コンビでいけるような人を選ぶことが大事だと思います」

八幡和郎 徳島文理大学大学院教授の提言 : 『国際問題、経済、歴史についての高度な専門的知見/外交を含む重要ポストの経験』

 「いつの時代もそうですが、国際問題、経済、歴史についての高度な専門的知識がない素人がなぜ総理をやりたがるのか、私は理解できません。世界中どこでも総理、大統領は知的な職業で、専門じゃないから分かりません、でいいわけがない。
 もう一つ私が挙げた“経験”については、特に外交の面で、諸外国と厳しい交渉をやった経験がないのに総理をやるのは無茶だと思います。これを最低条件として考えないと、総理として話にならないと思います」

福田和也 慶應義塾大学教授の提言 : 『明確で実現可能なヴィジョン/「活力」/呪文はダメ』

 「明確で実現可能なヴィジョンを持っていることが、非常に大切だと思います。そしてそれをどういう風に育んでいくのかが大事であって、それを作るには政策論争だけでなく、色々な人間に会って色々な経験をすることが大事だと思います。
 原敬にしろ佐藤にしろ、色々な場所に足を運んで本当に多くの人に会って話を聞いて、何が問題なのか把握しています。経験の幅については現代の日本人全体に言える事なので仕方ないですが、明治期が上手くいったのは、政治家たちが非常に多様な経験をしていたからだと思います。軍歴があり、外交をやり、政治もやり、憲法を作るまでやってきた中で得た多様な人間関係と多様な経験が彼らの財産だったし、それが明治を支えて大正までもったんだと思います。そういうことがあって始めて実現可能な分かりやすいヴィジョンが出てくる。
 また“活力”、いわゆるエネルギーは非常に大事です。将来総理になってサミットに行きたいと思うなら、笑われてもいいし誰も聞かなくてもいい、それでもちゃんと話をするなどチャレンジするべきです。自ら海外に出て色々な事をするとか知り合いを増やすとか、そういう意味でもエネルギーは必要になってきます。
 “呪文はダメ”というのは主に鳩山さんなんですが、“友愛”など、分かりやすいどうでもいいことを言ってごまかすのは政治家として最悪だと思います」

石原信雄 元官房副長官の提言 : 『目前の人気に捉われず、国の将来にとって必要な政策を断行すること』

 「総理大臣というのは、ひとたび選ばれた以上はこの国を預かることになります。政治家たるもの、選挙を意識して選挙の影響を考えるのは仕方ないけれど、しかし総理になった以上はほかの議員とは異なります。
 だから目先の人気を気にせず、この国として何を成すべきかの目標を決めて、それを断行してもらいたいと思います。例えば今、我が国の財政はまさに危機的な状況です。消費税を引き上げる以外に大きな効果的な手段はないのに、どの内閣も財政の健全性は訴えるだけでみんな消費税引き上げから逃げています。私は、国民が将来に対する漠然とした不安を持っているのは、財政の不健全さも影響していると思います。だから勇断を持って消費税率の引き上げを言う総理が出てくれば、むしろ国民はその人を信頼するのではないでしょうか。
 そういう意味で、国民が嫌がることであっても国の将来のために必要な事は、総理になった以上は断固やる、という姿勢を打ち出してもらいたいですね」



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