ドラマスペシャル『北の国から '84夏』

12月28日(水)20:00~21:55



 2年続いた冷夏が嘘のように、今年の富良野の夏は暑い。夏休みに入るとすぐ、中畑(地井武男)のところへ東京で働いている妹のゆり子(立原涼子)が息子の努(六浦誠)を連れて帰ってきた。努はパソコンを自由自在に操って、純(吉岡秀隆)や正吉(中沢佳仁)、それに螢(中嶋朋子)たちをうらやましがらせた。パソコンをいじらせてもらい大喜びの螢と対照的に、純と正吉は面白くなかった。特に純はものすごいショックを受けていた。富良野に移って4年、その間に東京では時代がすっかり進んでしまったようだ。

 富良野の夏のヘソ祭りの日、純たちは久しぶりに町へ出かけた。努も一緒だ。帰りに全員で中畑家に立ち寄った。子供たちはまた努のパソコンに群がった。純と正吉は圧倒的に面白くなかった。二人とも帰ろうと言いながら、その実、パソコンの入門書が気になって仕方がなかった。だが、努に頼んで本を借りることは、純の自尊心が許さなかった。しかし、心とは裏腹に、純の手は入門書へとのびていった。その時背後で、「お前のおやじにはがっかりしちゃったよ」という努の声。純は驚いて手を引っこめた。努は母親から純の父親が風力発電を自力でやるすごい人だと聞かされていた。ところが、純たちの新しい家には電気も通っていなかった。純は深く傷ついた。父を侮辱した努を許せなかった。

 螢を残して先に家に戻った純に正吉があの入門書を差し出した。純が欲しがっているのを察して、正吉が代わりに盗んだのだ。心を見透かされた純はあわてて「オレは絶対盗る気なんてなかった」と否定した。「やっぱりお前はキッタネエ奴だなァ!」正吉の一言が胸に突き刺さった。実をいうと、この言葉がこの春からずっと純の心にひっかかっていたのだ。

 忘れもしない今年の3月29日。その日は父が出稼ぎから帰る日で、2年半ぶりに雪子(竹下景子)も一緒に来ることになっていた。正吉と一緒にスキーに熱中していた純は、約束の時間に遅れて大慌てでバス停に向かった。着替えの時ストーブの上の物干し網に放り投げた下着が原因で丸太小屋が火事になろうとは、その時、正吉も純も思いもしなかった。

 五郎(田中邦衛)と雪子たちが麓郷へ戻ったときは、中畑を中心に村人たち総がかりの消火活動の最中だった。怪我人がなかったのは不幸中の幸いだったが、丸太小屋は焼け落ちた。

 翌朝、村中が総出で後片づけをしている頃、正吉と純は交番で簡単な事情聴取を受けていた。現場検証によれば火元はストーブだという。今井巡査(粟津號)は二人に網の上に何か載せなかったかを聞いた。長い沈黙の後、正吉がポツリと言った。シャツを干したこと、慌てていたのできちんと載せたかどうか確認しなかったことを認めた。本当は正吉よりも自分に責任があることを純は立ち上がって大声で叫びたかった。しかし結局、純は黙って座り続けていた。正吉が本当に自分がやったと思い込んでいるのか、それとも純をかばうために言ったのか、純にはそれさえ正吉に聞いてみる度胸がなかった。驚いたことに交番での事情聴取の模様はすでに村中の噂になっており、しかも正吉の火の不始末という話になっていた。



<出演者>
黒板五郎:田中邦衛
黒板純:吉岡秀隆
黒板螢:中嶋朋子
宮前雪子:竹下景子
北村清吉:大滝秀治
北村正子:今井和子
北村草太:岩城滉一
中畑和夫:地井武男
中畑みずえ:清水まゆみ
中畑すみえ:塩月徳子
笠松みどり:林美智子
笠松正吉:中沢佳仁
 
吉本辰巳:塔崎健二
吉本友子:今野照子
中畑ゆり子:立原涼子
中畑努:六浦誠
こごみ:児島美ゆき
井関利彦:村井国夫
松下豪介:南雲佑介
今井巡査:粟津號
ラーメン屋の定員:伊佐山ひろ子
ほか
<スタッフ>
原作・脚本:倉本 聰
音楽:さだまさし
プロデューサー:中村敏夫
撮影:竹越由幸
美術:根本研二
照明:本間利明
音声:西田貞雄
演出:杉田成道
制作:フジテレビ