＜午後の名作ドラマ劇場＞『鍵師』

　どんな仕組みの錠前でも、研ぎすまされた指先の技術で開けてしまうロックスミス（鍵師）の物語。その特殊な腕を見込まれて政界贈収賄摘発に一役買ったばかりに甥が危険にさらされる事件を、義姉との恋をからめて展開していく。
　浩二（渡辺謙）はアメリカで修業を積んだ名うての鍵師。一つ家で母親のふみ（岸田今日子）と浩二の鍵屋、半分を甥の貴一を抱えた義姉幸枝（萬田久子）の喫茶店という暮らしだ。ある夜、検察庁の特捜部検事に頼まれて、ひそかに悪徳業者の社長室の金庫を開ける。中には検事お目当ての、右翼大物から政治家たちへの贈答リストの手帳が入っていた。翌日、検事は業者を摘発、有力証拠としてその手帳を押収する。怒った右翼大物は、悪徳業者らに命じ、貴一を誘拐、貴一の身柄と引き替えに浩二に検察庁の倉庫から問題の手帳を盗み出させる。だが、貴一は新しい大型金庫に閉じ込められてしまった。ダイヤル設定前の金庫で、開ける手段は皆無に近い…。